(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-208141(P2015-208141A)
(43)【公開日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20151023BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
H02G3/16 Z
B60R16/02 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-87906(P2014-87906)
(22)【出願日】2014年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】永井 護
(72)【発明者】
【氏名】堺 達郎
(72)【発明者】
【氏名】蜂矢 賀一
(72)【発明者】
【氏名】上 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】岩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】石 文杰
【テーマコード(参考)】
5G361
【Fターム(参考)】
5G361BC01
5G361BC03
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で浸水後の車両火災の発生を防止することができる、新規な構造の電気接続箱を提供すること。
【解決手段】ケース16内に内部回路20が収容されて構成される電気接続箱10において、ケース16に設けられて通常時には閉塞された状態に保持されている非常排水口30と、車両の浸水時にケース16内に水が浸入した後に水が引いた際において水の自重によって非常排水口30を開口するような開口機構32とを備えているようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に内部回路が収容されてなる電気接続箱において、
前記ケースに設けられて閉塞状態に保持された非常排水口と、
前記ケース内に水が浸入した際に該水の自重により前記非常排水口を開口する開口機構とを備えている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ケースが有底筒体状のアッパケースと有底筒体状のロアケースを含んで構成されており、前記アッパケースの周壁と前記ロアケースの周壁がそれらの突出端部側から重ね合せて組み付けられている一方、
前記アッパケースの前記周壁と前記ロアケースの前記周壁の重ね合せ部分には、周方向の一部に前記非常排水口が貫設されていると共に、
前記内部回路を保持する内部ケースが、前記ロアケースの底面上に付勢手段を介して上方に付勢された状態で支持されている一方、前記内部ケースの周壁部によって前記非常排水口が覆蓋されており、前記付勢手段と前記内部ケースによって前記開口機構が構成されている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記ケースの一部に前記ケースの外方に向かって変形可能な変形壁部が設けられており、該変形壁部は、前記浸水した水の自重により前記ケースの外方に変形することで前記非常排水口を形成すると共に、非変形状態では非常排水口を形成しないようになっており、前記変形壁部によって前記開口機構が構成されている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記ケースが、有底筒体状のアッパケースと該アッパケースに連結部を介して連結されて前記アッパケースの下方開口部を覆蓋するロアケースを含んで構成されている一方、前記連結部が水溶性材料によって構成されており、前記アッパケースの下方開口部によって前記非常排水口が構成されている一方、前記連結部によって開口機構が構成されている請求項1に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の電装系の適所には、プリント基板等の内部回路が収容された電気接続箱が搭載されており、バッテリーから各種負荷への電源分配が、スペース効率よく行われるようになっている。
【0003】
ところで、このような電気接続箱の内部に水が浸入すると、端子付回路基板のショート等が発生するおそれがあるため、電気接続箱には、車両使用時に想定される水かかりを考慮したある程度の防水対策がなされている。例えば、特許第4585980号公報(特許文献1)に記載のように、電気接続箱のケースの隙間をシール材等で封止したり、ケース内の適所に排水斜面を設けて内部に浸入した水の排水を促すようにしたものが知られている。
【0004】
しかしながら、従来の電気接続箱の防水構造は、あくまで車両使用時を想定したものであることから、東日本大震災の如き災害時に津波や洪水等で浸水する想定外のケースにおいて、十分な防水効果が発揮され得ないことは当然である。そして、想定外の浸水後に、車両のバッテリー付近に搭載された電気接続箱が発火し車両火災が発生する事例が多数報告され、問題視されるようになってきている。
【0005】
このような想定外の浸水後に、電気接続箱が発火しないよう何等かの対策を考案することは急務であるが、津波や洪水等による浸水まで想定した防水構造を電気接続箱に施すことは、電気接続箱の大型化やコスト高を招くばかりでなく、通常の車両使用時における電気接続箱の機能に支障を来すおそれもあり、現実的な対策とは言い難い。それ故、浸水後に電気接続箱の発火を防止し得る有効な対策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4585980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、簡易な構造で浸水後の車両火災の発生を防止することができる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両浸水後の発火原因について本発明者が鋭意研究した結果、特にバッテリーに直結された電気接続箱内の内部回路において、電源ラインに直接又は間接的に接続された銅製のプラス側端子とグランドラインに直接又は間接的に接続された銅製のマイナス側端子が隣接配置された部位において、発火が起こることを見出した。すなわち、車両が塩水等の電解質を含んだ水に浸水した際には、比較的電位差の大きなプラス側端子とマイナス側端子の間で電気分解が生じ、陽極に銅の酸化物である亜酸化銅(Cu
2 O)が析出する。水が引いた際に、析出した亜酸化銅がプラス側端子とマイナス側端子の間に堆積することにより、両者の間に亜酸化銅の堆積物による短絡路が形成され、ある程度温度が上昇した際に亜酸化銅が低抵抗化することでショートが発生する。その際の発熱により絶縁板が燃焼することにより火災が発生することを新たに見出したのである。そして、かかる新たな見地に基づき本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
本発明の第一の態様は、ケース内に内部回路が収容されてなる電気接続箱において、前記ケースに設けられて閉塞状態に保持された非常排水口と、前記ケース内に水が浸入した際に該水の自重により前記非常排水口を開口する開口機構とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、津波や洪水等による車両の浸水時に電気接続箱の内部に水が浸入した場合でも、その後水が引いた際に、開口機構が内部に浸入した水の自重によって非常排水口が開口され、そこから速やかに内部に浸入した水を排出することができる。従って、水が引いた後に電気接続箱の内部に貯留した水により電気分解が進んで亜酸化銅等の析出物の堆積量が増大することを防止できる。その結果、浸水後に電気接続箱が発火することを回避して車両火災の発生を防止することができる。
【0011】
しかも、開口機構は、浸水によりケース内に浸入した水の自重により非常排水口を開口するものであるから、通常使用時には非常排水口は閉塞状態に保持されており、非常排水口を設けても通常使用時の電気接続箱の性能等は従来と同様に安定して保持される。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記ケースが有底筒体状のアッパケースと有底筒体状のロアケースを含んで構成されており、前記アッパケースの周壁と前記ロアケースの周壁がそれらの突出端部側から重ね合せて組み付けられている一方、前記アッパケースの前記周壁と前記ロアケースの前記周壁の重ね合せ部分には、周方向の一部に前記非常排水口が貫設されていると共に、前記内部回路を保持する内部ケースが、前記ロアケースの底面上に付勢手段を介して上方に付勢された状態で支持されている一方、前記内部ケースの周壁部によって前記非常排水口が覆蓋されており、前記付勢手段と前記内部ケースによって前記開口機構が構成されているものである。
【0013】
本態様によれば、アッパケースとロアケースの周壁の重なり部分の一部を貫通して非常排水口が設けられており、内部回路を保持する内部ケースと該内部ケースをロアケースの底面上付勢する付勢手段によって開口機構を設けることができる。従って、付勢手段の付勢力を適時設定することにより、水の自重により非常排水口を開口する開口機構の作動安定性を有利に達成することができる。なお、付勢手段としては、コイルばねや板ばね等のばね部材が有利に用いられ得る。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記ケースの一部に前記ケースの外方に向かって変形可能な変形壁部が設けられており、該変形壁部は、前記浸水した水の自重により前記ケースの外方に変形することで前記非常排水口を形成すると共に、非変形状態では非常排水口を形成しないようになっており、前記変形壁部によって前記開口機構が構成されているものである。
【0015】
本態様によれば、ケースの一部に浸水時の水の自重により外方に向かって変形可能な変形壁部を設ける簡単な構造により、浸水した際に、変形壁部が変形して非常排水口を形成して内部に浸入した水を速やかに排水することができる。すなわち、電気接続箱のケースの一部を水圧で外方に変位可能にする簡単な構造により、非常排水口と開口機構を同時に設けることができる。それ故、少ない設計変更で浸水時の火災の発生を防止できる電気接続箱を提供できるのである。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記ケースが、有底筒体状のアッパケースと該アッパケースに連結部を介して連結されて前記アッパケースの下方開口部を覆蓋するロアケースを含んで構成されている一方、前記連結部が水溶性材料によって構成されており、前記アッパケースの下方開口部によって前記非常排水口が構成されている一方、前記連結部によって開口機構が構成されているものである。
【0017】
本態様によれば、非常排水口であるアッパケースの下方開口部を覆蓋するロアケースのアッパケースに対する連結部が水溶性材料によって構成されていることから、浸水した際に、連結部が溶解し且つアッパケースからロアケースが水の自重により離脱させられることにより非常排水口が開口して、内部に浸入した水を速やかに排水することができる。すなわち、従来構造のアッパケースとロアケースの連結部を水溶性材料によって形成するだけで、非常排水口と開口機構を既存の電気接続箱の適用できる。それ故、少ない設計変更で浸水時の火災の発生を防止できる電気接続箱を提供できるのである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両浸水時に電気接続箱の内部に水が浸入した場合でも、その後水が引いた際に、開口機構が内部に浸入した水の自重によって非常排水口が開口され、そこから速やかに内部に浸入した水を排出できる。それ故、水が引いた後に電気接続箱の内部に貯留した水により電気分解が進んで亜酸化銅等の析出物の堆積量が増大することを防止できることから、浸水後に電気接続箱が発火することによる車両火災の発生を防止できる。しかも、開口機構は、浸水によりケース内に浸入した水の自重により非常排水口を開口するものであることから、通常使用時には非常排水口は閉塞状態に保持されており、非常排水口を設けても通常使用時の電気接続箱の性能等は従来と同様に安定して保持される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての電気接続箱を示す断面図((a)通常時、(b)浸水後に水が引いた際)。
【
図2】本発明の第二の実施形態としての電気接続箱を示す断面図((a)通常時、(b)浸水後に水が引いた際)。
【
図3】本発明の第三の実施形態としての電気接続箱を示す断面図((a)通常時、(b)浸水後に水が引いた際)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1には、本発明の第一の実施形態としての電気接続箱10が示されている。電気接続箱10は、アッパケース12とロアケース14から構成されるケース16内に、各種電気部品18等が配設されて内部回路を構成するプリント基板20が収容された構成とされている。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、上方とは、アッパケース12が位置する
図1中の上方、下方とは、ロアケース14が位置する
図1中の下方をいうものとする。
【0022】
図1に示されているように、アッパケース12及びロアケース14はいずれも、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されており、互いに相手側に向けて開口する略矩形浅底の有底筒体形状を有している。すなわち、アッパケース12及びロアケース14はいずれも、その外周縁部から全周に亘って連続する略矩形枠体状の周壁22、24が、相手側に向って突出して一体形成された構造とされている。そして、プリント基板20の上下両側からアッパケース12の周壁22とロアケース14の周壁24がそれらの突出端部26、28側から重ね合わされて組み付けられることにより、ケース16の内部にプリント基板20が収容された電気接続箱10が提供されるようになっている。なお、ケース16は、例えば、アッパケース12に設けられた図示しない係止爪が、ロアケース14の対応する箇所に設けられた図示しない係合枠に挿通されて係合されることで、相互に組み付けられるようになっている。
【0023】
また、アッパケース12の周壁22とロアケース14の周壁24の重ね合せ部分であるそれらの突出端部26、28には、周方向の一部(本実施形態ではケース16の長手方向で対向する2箇所)において略矩形断面形状の非常排水口30が貫設されている。
【0024】
加えて、ケース16内には、プリント基板20を保持する内部ケース32が収容されている。
図1に示されているように、内部ケース32は、上方に向けて開口するロアケース14より小型の略矩形浅底の有底筒体形状を有しており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって形成されており、その底面34の外周縁部から全周に亘って連続する略矩形枠体状の周壁部36が、上方に向って突出して一体形成された構造とされている。プリント基板20は、内部ケース32の底面34に突設された基板支持部38に対して図示しないボルト等により保持されるようになっている。そして、かかる内部ケース32が、ロアケース14の底面40上に付勢手段たるコイルばね42を介して上方に付勢された状態で支持された状態でケース16内に収容されている。ここで、内部ケース32とアッパケース12によって囲まれた空所44の体積が、内部ケース32とロアケース14によって囲まれた空所45の体積よりも大きくなるように構成されている。
【0025】
このような構造とされた電気接続箱10は、通常時(浸水前の状態)において、
図1(a)に示されているように、非常排水口30が内部ケース32の周壁部36によって覆蓋されている。一方、津波や洪水等による車両の浸水時に電気接続箱10のケース16の内部に水が浸入し、その後水が引いた際には、空所44の体積が空所45の体積よりも大きくされていることから、ケース16の内部すなわち空所44、46に浸入した水の自重差によってコイルばね42が縮むことにより、非常排水口30が開口される(
図1(b)参照)。それ故、ケース16の内部に浸入した水を速やかに外部に排出することができる。しかも、コイルばね42による付勢力を適時設定することにより、水の自重により非常排水口30を開口する機構の作動安定性を有利に達成することができる。なお、付勢手段としては、本実施形態で例示のコイルばね42の他、板ばね等のばね部材が有利に用いられ得る。以上の結果、水が引いた後に電気接続箱10のケース16の内部に貯留した水により電気分解が進んで亜酸化銅等の析出物の堆積量が増大することを防止できるのである。従って、浸水後に電気接続箱10が発火することを回避して車両火災の発生を防止することができる。なお、本実施形態では、ケース16の内部に貯留した水すなわち内部ケース32の内部に貯留した水により電気分解が進んでプリント基板20上に亜酸化銅等の析出物の堆積量が増大することがないように、内部ケース32の周壁部36の突出端面46はプリント基板20の表面47に対して上下方向で同じ位置もしくは下方に位置するように構成されている。
【0026】
以上述べてきたように、本実施形態では、付勢手段たるコイルばね42と内部ケース32によって開口機構が構成されている。開口機構が、浸水によりケース16の内部に浸入した水の自重により非常排水口30を開口するものであり、通常使用時には非常排水口30は閉塞状態に保持されていることから、非常排水口30を設けても通常使用時の電気接続箱10の性能等は従来と同様に安定して保持されるのである。なお、開口機構は、水の自重で起動する機構であるため、本実施形態におけるアッパケース12/ロアケース14は、車両装着状態において、上方、下方に配設されるケースをそれぞれアッパケース12/ロアケース14というものとする。
【0027】
次に、
図2を用いて、本発明の第二の実施形態としての電気接続箱48について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、ケース16の一部にケース16の外方に向かって変形可能な変形壁部50が設けられている点に関して、上記実施形態と異なる実施形態を示すものである。
【0028】
より詳細には、
図2に示されているように、アッパケース12の周壁22の突出端部26の一部に変形壁部50が一体的に形成されている。変形壁部50は略矩形薄板状とされており、上端部においてのみアッパケース12の周壁22に対してヒンジ連結されていることから、アッパケース12の外方に向かって変形可能とされている。なお、プリント基板20は、上記実施形態と異なり、ロアケース14の底面40に突設された基板支持部54に対して図示しないボルト等により固定されている。
【0029】
このような構造とされた電気接続箱48は、通常時(浸水前の状態)において、
図2(a)に示されているように、非常排水口52が変形壁部50によって覆蓋されており、非常排水口52が形成されないようにされている。一方、浸水時には電気接続箱48のケース16の内部に水が浸入し、その後水が引いた際には、ケース16の内部に浸入した水の自重により変形壁部50がアッパケース12の外方に向かって変形することにより、非常排水口52が形成されるようになっている(
図2(b)参照)。それ故、本実施形態によれば、ケース16の内部に浸入した水を速やかに外部に排出することができることから、上記実施形態と同様に、浸水後の車両火災の発生を防止することができる。加えて、本実施形態によれば、非常排水口52と開口機構たる変形壁部50を同時に設けることができることから、少ない設計変更で浸水後の車両火災の発生を防止できる電気接続箱48を提供できるのである。
【0030】
続いて、
図3を用いて、本発明の第三の実施形態としての電気接続箱56について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、アッパケース12の下方開口部58を覆蓋するロアケース14とアッパケース12との連結部60が水溶性材料によって構成されている点に関して、上記実施形態と異なる実施形態を示すものである。
【0031】
より詳細には、
図3(a)に示されているように、アッパケース12の周壁22の突出端部26とロアケース14の周壁24の突出端部28の対向する位置にそれぞれ一対の係合穴62,62、64,64が設けられている。そして、かかる一対の係合穴62,62、64,64にコの字状の一対の連結部60,60の長さ方向の両端部を嵌合することにより、アッパケース12とロアケース14が組み付けられて、ロアケース14によってアッパケース12の下方開口部58が覆蓋されるようになっている。
【0032】
このような構造とされた電気接続箱56においては、通常時(浸水前の状態)において、
図3(a)に示されているように、非常排水口を構成するアッパケース12の下方開口部58がロアケース14によって覆蓋されている。一方、浸水後、水が引いた際には、浸水時に開口機構たる連結部60が溶解されることにより、アッパケース12からロアケース14が水の自重により離脱させられてアッパケース12の下方開口部58が開口することにより、ケース16の内部に浸入した水を速やかに排水することができるようになっている。なお、連結部60は、例えば、ポリビニルアルコール等の熱溶融成形可能で水溶性を有する合成樹脂によって形成されている。要するに、連結部60を水溶性材料によって形成するだけで、非常排水口と開口機構を既存の電気接続箱の適用できる。それ故、少ない設計変更で浸水時の火災の発生を防止できる電気接続箱56を提供できるのである。
【0033】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、上記第一の実施形態では、非常排水口30は対向する2箇所に設けられていたが、任意の箇所に任意の個数設けられていてもよい。また、上記第二の実施形態では、変形壁部50は1箇所にしか設けられていなかったが、複数箇所に設けられていてもよいし、ロアケース14に設けられていてもよい。さらに、上記第三の実施形態では、連結部60は対向する2箇所に設けられていたが、2箇所のうち一方がヒンジ連結部とされていてもよいし、あるいはまた連結部60が3箇所以上に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10,48,56:電気接続箱、12:アッパケース、14:ロアケース、16:ケース、20:プリント基板(内部回路)、22:周壁、24:周壁、26:突出端部、28:突出端部、30,52:非常排水口、32:内部ケース(開口機構)、36:周壁部、40:底面、42:コイルばね(付勢手段)(開口機構)、50:変形壁部(開口機構)、58:下方開口部(非常排水口)、60:連結部(開口機構)