【実施例】
【0016】
実施例に係るふき取り材は、元の厚みより圧縮した状態に成形された軟質ポリウレタンフォームから構成されている。ふき取り材は、半導体、コンデンサー、プリント基板、太陽電池、液晶パネルなどを製造するクリーンルーム、または工業的な用途に限られず、食品や医療や生物工学分野などの低塵性が要求される環境において、異物の除去などの各種のふき取りに用いられるものである。なお、ふき取り材は、異物として溶剤をふき取ったり、該ふき取り材に溶剤を付けて異物をふき取ったりするなど、様々な形態で用いられる。ふき取り材は、ふき取り対象や使用形態などに応じて様々な形状で形成され、例えば矩形状のシートであっても、シートを巻き取ったロール状など、特に限定されない。また、ふき取り材の厚みは、ふき取り対象や使用形態などに応じて適宜設定すればよいが、0.8mm〜5.0mmの範囲、好ましくは1.0mm〜3.0mmの範囲がよい。ふき取り材の厚みが0.8mmより薄くなると、必要な強度を得ることが難しくなり、5.0mmよりも厚くなるとふき取り対象の形状に合わせて変形する追従性が悪化してしまう。そして、軟質ポリウレタンフォームからなるふき取り材は、ふき取り部位の形状に追従し得る可撓性と、適度に圧縮変形する弾力性と、元の形状に復元する復元性と、ふき取り相手に傷付け等の悪影響を与えない柔軟性とを備えている。
【0017】
前記ふき取り材を構成するポリウレタンフォームは、連続気泡構造であり、溶解などの除膜処理によりセル膜を除去したものや、セル膜が残っているものの何れも用いることができる。ふき取り材を構成するポリウレタンフォームとしては、除膜処理を行って骨格のみからなる三次元網状構造とするのが、液体を保持し得る量の多寡を示す吸液性や、異物の除去性能を示すふき取り性(ワイプ性)や、引張強度および伸びなどの強度や、アルコール等の溶剤への耐性を示す耐溶剤性などの観点から好ましい。ふき取り材を構成するポリウレタンフォームとしては、ポリオール類としてエステル基を有するポリオールを少なくとも含むウレタン原料から発泡成形されたエステル系ポリウレタンフォームを用いるのが望ましい。エステル基を有するポリオールとしては、例えばポリエステルポリオールや、ポリエーテルエステルポリオールなどが挙げられる。エステル系ポリウレタンフォームは、エーテル系ポリウレタンフォームと比べて、耐溶剤性、耐油性、耐摩耗性、機械的強度などに優れているメリットがあり、アルコール等の溶剤に接するふき取り材として適している。
【0018】
前記ふき取り材は、元の厚みの1/1.3倍以下の厚みになるように、好ましくは元の厚みの1/1.3倍〜1/3.5倍の範囲の厚みとなるように圧縮成形したポリウレタンフォームで形成されている。ポリウレタンフォームは、その厚み方向に潰すように圧縮成形することで、連続気泡構造を構成する骨格が圧縮方向(厚み方向)に折り畳まれるように塑性変形することにより、セルが圧縮前の元の状態よりも厚み方向に密に配置された状態となる。そして、ふき取り材は、圧縮成形したポリウレタンフォームにおける厚み方向に密に並ぶセル構造によって、ふき取り性および異物保持性を向上させることができる。なお、異物保持性とは、ふき取り材でふき取った異物が、ふき取り時にふき取り材からふき取り対象に戻らない(ふき取り材から離脱しない)ことを示す性能をいう。ここで、ふき取り材は、圧縮成形後のポリウレタンフォームが元の厚みの1/1.3倍の厚みより大きいと(元の厚みの1/1.3より大きく(厚く)なるように圧縮成形することを意味する)、ふき取り性が悪化してしまい、この場合は、比較的細かい異物を除去するときのふき取り性が特に悪化する。また、ふき取り材は、圧縮成形後のポリウレタンフォームが元の厚みの1/3.5倍の厚みより小さいと(元の厚みの1/3.5より小さく(薄く)なるように圧縮成形することを意味する)、前記異物保持性が悪化すると共に、得られたふき取り材の伸びおよび伸び保持率が悪化してしまう。
【0019】
前記ふき取り材は、セル数が58個/25mm〜100個/25mmの範囲にあるポリウレタンフォームを圧縮して形成されている。なお、セル数は、JIS K 6400の規定に基づいて、拡大鏡を用いて測定したものである。圧縮前のポリウレタンフォームのセル数が58個/25mmより少ないと、圧縮成形して得られるふき取り材の表面に臨むセル径が比較的大きくなり、ふき取り性が悪化してしまう。この場合は、比較的細かい異物を除去するときのふき取り性が特に悪化する。圧縮前のポリウレタンフォームのセル数が100個/25mmより多いと、圧縮成形して得られるふき取り材の表面に臨むセル径が小さくなり過ぎてしまい、異物保持性が悪化しまう。また、圧縮前のポリウレタンフォームのセル数で示すふき取り材のセル構造は、該ふき取り材の吸液性にも相関している。そして、セル数が58個/25mm〜100個/25mmの範囲にあるポリウレタンフォームを、前記圧縮条件で圧縮成形することで、ふき取り材において適度な吸液性が得られる。
【0020】
前記ふき取り材は、その厚み方向に密度が均一になるよう設定されている。ふき取り材を構成するポリウレタンフォームは、圧縮前の状態において、15kg/m
3〜90kg/m
3の範囲のものが用いられ、前述した圧縮条件でポリウレタンフォームを圧縮成形したふき取り材の密度は、60kg/m
3〜225kg/m
3の範囲になっている。なお、ポリウレタンフォームの密度は、JIS K 7222に規定に準拠して、はかりを用いて測定したものである。ここで、密度は、前述したセル数と密接な関係を有しており、ポリウレタンフォームのセル数が58個/25mm〜100個/25mmの範囲にあれば、該ポリウレタンフォームの密度を15kg/m
3〜90kg/m
3の範囲に設定し得る。すなわち、ふき取り材は、圧縮前密度が15kg/m
3より小さい場合(圧縮後密度<15kg/m
3)に、セル数が少なくなることでセル径が大きくなり、ふき取り性が悪化してしまう。また、ふき取り材は、圧縮前密度が90kg/m
3より大きい場合(圧縮後密度<90kg/m
3)に、セル数が多くなってセル径が小さくなり過ぎてしまい、異物保持性が悪化しまう。
【0021】
前記ふき取り材を構成するポリウレタンフォームは、圧縮前の状態において、その通気性が、10〜120L/minである。通気性は、ASTM D3574に規定する測定法に準拠して測定したものである。
【0022】
前記ふき取り材は、ポリウレタンフォームの発泡成形に用いられて該ポリウレタンフォームに残留している整泡剤や触媒などの化学的物質やポリウレタンフォームの製造過程で付着した不純物が、水による洗浄によって除去されている。ふき取り材は、不織布等の繊維で構成したものと異なって自身の一部が脱落し難いポリウレタンフォーム特有の低パーティクル性と、水洗浄による不純物除去による低不純物性とにより、気中パーティクル試験による0.5μm以下のパーティクルが3520個/m
3以下になるよう構成されている。すなわち、ふき取り材は、JIS B 9920で規定する清浄度クラス5(ISO14644−1のクラス5:米国連邦空気清浄度基準209Eで規定するクラス100相当)を満たしており、低塵性が要求される環境で用いることができる。なお、前記気中パーティクル試験は、JIS B 9923の規定する測定法に基づいて測定したものである。低パーティクル性と低不純物性とを合わせて、低汚染性という。
【0023】
前記ふき取り材は、イソプロピルアルコール(IPA)の付着後の引張強度が5kPa以上である。ふき取り材の引張強度が、5kPa未満であると、ふき取り時にふき取り材が破損するおそれがある。ふき取り材は、前記セル数の範囲のエステル系ポリウレタンフォームを前記圧縮条件で圧縮成形することで、前記引張強度を達成することができる。また、ふき取り材は、イソプロピルアルコール(IPA)の付着後の引張強度保持率が50%〜100%の範囲にあるのが好ましい。イソプロピルアルコール(IPA)の付着後の引張強度保持率が50%より低いと、溶剤の存在により引張強度が大きく変化して溶剤に対する耐性(耐溶剤性)が低いことから、溶剤を付与してふき取りを行うふき取り材として適していない。また、ふき取り材は、イソプロピルアルコール(IPA)の付着後の伸び保持率が60%〜100%の範囲にあるのが好ましい。イソプロピルアルコール(IPA)の付着後の伸び保持率が60%より低いと、溶剤の存在により伸びが大きく変化して溶剤に対する耐性(耐溶剤性)が低いことから、溶剤を付与してふき取りを行うふき取り材として適していない。
【0024】
ここで、「イソプロピルアルコール(IPA)の付着後」とは、JIS K 6401に規定するダンベル形状に形成された試験片の平行部分に、イソプロピルアルコールをスポイトで10滴(0.5ml)滴下して、常温で1分間放置した状態をいう。引張強度および伸びは、JIS K 6401に規定する測定法に基づいて測定したものである。引張強度保持率は、IPAを付着させる前にJIS K 6401に規定する測定法に基づいて測定した付着前引張強度からの、IPAを付着させた後にJIS K 6401に規定する測定法に基づいて測定した付着後引張強度の変化を示すものであり、(付着後引張強度/付着前引張強度)×100の値である。伸び保持率は、IPAを付着させる前にJIS K 6401に規定する測定法に基づいて測定した付着前伸びからの、IPAを付着させた後にJIS K 6401に規定する測定法に基づいて測定した付着後伸びの変化を示すものであり、(付着後伸び/付着前伸び)×100の値である。
【0025】
次に実施例に係るふき取り材の製造方法について説明する。エステルポリオールを少なくとも含むポリオール類と、イソシアネート類と、発泡剤や整泡剤や触媒などの補助成分と、適宜の第3成分とからなるウレタン原料を、スラブ発泡法やモールド発泡法などにより発泡成形して、エステル系の軟質ポリウレタンフォームを得る。得られたポリウレタンフォームを平板状にスライスして、平板状のポリウレタンフォームを、プレス機によって厚み方向に潰して、元の厚みの1/1.3〜1/3.5の範囲になるように加熱しつつ圧縮成形する。ここで、圧縮成形工程は、加熱温度が180℃〜230℃の範囲に設定されると共に、圧縮時間が0.5分〜8分の範囲の範囲に設定されている。
【0026】
次に、圧縮成形して得られたポリウレタンフォームを、水で洗浄する。洗浄工程は、ドラム式洗濯機などの公知の洗浄機器によって、1回または複数回繰り返して行い、少なくとも最終回に当たる洗浄工程では、イオン交換水等の純水によって洗浄が行われる。すなわち、複数回洗浄を行う場合は、最終回を除く回において、水道水などで洗浄してもよい。なお、1回当りの洗浄時間は、10分〜30分の範囲に設定され、洗浄水の温度は、15℃〜60℃の範囲が好ましい。純水で洗浄した後に、乾燥機によって、ポリウレタンフォームを乾燥することで、ふき取り材が得られる。乾燥工程は、40℃〜80℃の温度で、30分〜120分かけて行われる。そして、得られたふき取り材は、真空パックされる。
【0027】
〔実施例の作用〕
次に、実施例の作用について説明する。 実施例のふき取り材、ポリウレタンフォームで構成されているので、不織布や織布等の繊維で構成されたもののように繊維の脱落がなく、ふき取り材に由来する異物の発生を抑えることができ、低パーティクル性を達成し得る。そして、気中パーティクル試験による0.5μm以下のパーティクルが3520個/m
3以下であるので、JIS B 9920で規定する清浄度クラス5を満たし、低塵性が求される環境で用いることができる。また、ふき取り材は、セル数が58個/25mm〜100個/25mmの範囲にある軟質ポリウレタンフォームを、元の厚みの1/1.3以下の厚みになるように圧縮して形成することで、非圧縮品では得られない好適なふき取り性と最低限必要な強度とを併有させることができる。また、ふき取り材は、前記軟質ポリウレタンフォームの元の厚みからの圧縮度合いを、1/1.3倍〜1/3.5倍の範囲に設定することで、溶剤付着後であっても所要の引張強度を得ることができるだけでなく、伸びおよび溶剤付着前後の伸び保持率も向上させることができる。特に、ふき取り材は、イソプロピルアルコールの付着後の引張強度が5kPa以上であり、溶剤が付着しても必要な引張強度を保っているから、溶剤をふき取ったり、溶剤を付けて汚れをふき取ったりすることができる。また、ふき取り材は、イソプロピルアルコールの付着後の引張強度保持率が50%〜100%の範囲にあり、溶剤が付着しても引張強度の変化が小さいので、溶剤の存在したもとでのふき取りに好適に用いることができる。更に、ふき取り材は、イソプロピルアルコールの付着後の伸び保持率が60%〜100%の範囲にあり、溶剤が付着しても伸びの変化が小さいので、溶剤の存在したもとでのふき取りに好適に用いることができる。更にまた、ふき取り材は、ポリウレタンフォームとしてエステル系ポリウレタンフォームを用いることで、溶剤付着前後の引張強度保持率および伸び保持率がよくなり、溶剤に対する耐性を大幅に向上させることができる。このように、実施例のふき取り材は、低汚染性、耐溶剤性および強度を兼ね備えているので、低塵性が要求される環境において好適に用いることができる。
【0028】
前記製造方法によれば、圧縮成形したエステル系ポリウレタンフォームを水によって洗浄して、該ポリウレタンフォームの発泡成形後に残留した整泡剤等の化学物質などの不純物を除去することで、JIS B 9923に規定する気中パーティクル試験による0.5μm以下のパーティクルが3520個/m
3以下として、低塵性が要求される環境で使用可能なふき取り材を簡単に得ることができる。ここで、洗浄工程において、仕上げとして少なくとも純水で洗浄することで、ポリウレタンフォームに存在する不純物をより減らすことができる。
【0029】
次に、ふき取り性および強度について試験を行った。試験例1〜10および比較例1〜2は、株式会社イノアックコーポレーション製のポリウレタンフォームを用い、表1および2の素材の括弧書き内に製品型番を示している。比較例3は、不織布からなるふき取り材(旭化成せんい株式会社製;商品名ベンコット)である。そして、試験例1〜10および比較例2について、縦140mm×横140mmの平板状のポリウレタンフォームを用意し、このポリウレタンフォームを表1および表2に示す圧縮倍率で圧縮後の厚みが2.5mmとなるように圧縮成形した。圧縮は、加熱温度200℃で2分間行った。比較例1は、縦140mm×横140mmの平板状で厚み2.5mmのポリウレタンフォームを用意し、圧縮成形を行っていない。比較例3は、縦200mm×横200mmの平板状のものを用意し、圧縮成形を行っていない。試験例1〜9および比較例1〜2は、エステル系ポリウレタンフォームからなり、試験例10はエーテル系ポリウレタンフォームを用いている。試験例2を除く試験例1,3〜10および比較例1〜2は、溶解による除膜処理が施されてセル膜が除去されており、試験例2はセル膜が残っている。表1および2に示すセル数は、素材を圧縮する前のセル数であって、JIS K 6400の規定に基づいて、拡大鏡を用いて測定したものである。
【0030】
ふき取り性は、以下のように試験を行った。直径50mmの金属円盤にサンドペーパーを貼り付け、この金属円盤に500gのおもりを載せて、400rpmの回転速度で金属円盤を回転し、サンドペーパーをアルミ板に1分間に亘って擦り付けた。研磨によって発生したアルミ板上のアルミ粉を、イソプロピルアルコールで湿らせた比較例3でふき取り、アルミ板上にアルミ粉が見えなくなるまでふき取りを行った。次に、試験例1〜10および比較例1〜2の夫々について、イソプロピルアルコールで湿らせ、比較例3でふき取った後のアルミ板を更にふき取りを行った。そして、試験例1〜10および比較例1〜2のふき取り面を目視で確認し、アルミ粉の付着が認められるときはふき取り性を「○」と評価し、アルミ粉の付着が認められないときはふき取り性を「×」と評価した。なお、400番手のサンドペーパーによって研磨して粗いアルミ粒子(粗い粒子)を作った場合と、1000番手のサンドペーパーによって研磨して細かいアルミ粒子(細かい粒子)を作った場合との夫々について評価した。その結果を表1および表2に示す。
【0031】
異物保持性(逆汚染性)は、以下のように試験を行った。前述したふき取り性の試験と同様に、直径50mmの金属円盤に400番手のサンドペーパーを貼り付け、この金属円盤に500gのおもりを載せて、400rpmの回転速度で金属円盤を回転し、サンドペーパーをアルミ板に1分間に亘って擦り付け、粗いアルミ粒子(粗い粒子)を作った。アルミ板上に、研磨によって発生したアルミ粉を、イソプロピルアルコールで湿らせた試験例1〜10および比較例1〜2の夫々の試験片でふき取り、その後の試験片をふき取り面の逆側の面を軽くたたいて、アルミ粉の脱落を目視で確認した。そして、アルミ粉の脱落が認められるときは異物保持性を「×」と評価し、アルミ粉の脱落が認められないときは異物保持性を「○」と評価した。その結果を表1および表2に示す。
【0032】
引張強度および伸びは、JIS K 6401に規定する測定法に基づいて測定した。加熱圧縮成形した得られた各試験片について引張強度および伸びを測定し(IPA付着前)、また各試験片をイソプロピルアルコール(IPA)を付着させた後の引張強度および伸びについても測定した(IPA付着後)。IPAは、JIS K 6401に規定するダンベル形状に形成された試験片の平行部分に、イソプロピルアルコールをスポイトで10滴(0.5ml)滴下して、常温で1分間放置した後に引張強度および伸びを測定している。そして、IPA付着後の引張強度をIPA付着前の引張強度で割って百分率で表した引張強度保持率を求めると共に、IPA付着後の伸びをIPA付着前の伸びで割って百分率で表した伸び保持率を求めた。その結果を表1および表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表1に示すように、セル数が58個/25mm〜100個/25mmの範囲にあるポリウレタンフォームを素材として用い、元の厚みの1/1.3以下になるよう圧縮成形した試験例1〜10は、比較例3と比べてふき取り性がよく、IPA付着後の引張強度が5kPa以上を担保し得ることが確認できる。試験例9から判るように、ポリウレタンフォームを元の厚みから1/4倍となるように圧縮することで伸びが悪化して、ポリウレタンフォームの元の厚みからの圧縮度合いを1/1.3倍〜1/3.5倍の範囲に設定することで、適度な引張強度と伸びとを担保できることが確認できる。試験例10から判るように、エーテル系ポリウレタンフォームを素材として用いると耐溶剤性が悪化し、ポリウレタンフォームとしてエステル系ポリウレタンフォームが好ましいことが確認できる。また、試験例1と試験例2との関係から判るように、セル膜の有無によってふき取り性や強度に大きな影響は見られなかった。試験例と比較例1との関係から、ポリウレタンフォームを圧縮しない(圧縮倍率が小さい)と、引張強度が低下する傾向があることが判る。試験例と比較例2との関係から、ポリウレタンフォームのセル数が40個/25mmより少なくなると、細かい粒子のふき取り性が悪化することが判る。
【0036】
試験例1について、水洗浄による不純物等の変化を確認した。水洗浄は、水道水による洗浄工程を20分間2回繰り返した後に、純水によって15分間1回洗浄した後に、60℃で30分乾燥させた。気中パーティクル試験は、JIS B 9923に基づいて、水洗浄を行っていない試験例1に係る試験片(未洗浄品)と水洗浄を行った試験例1に係る試験片(洗浄品)との夫々を測定した。液中パーティクル試験は、IEST−RP−CC005.3の規定に基づき、前記未洗浄品および前記洗浄品について行った。抽出試験は、前記未洗浄品および前記洗浄品の夫々について3gのサンプルを取り、サンプルに溶媒を50ml加えて20回押し洗いした洗浄液を蒸発皿に移し、蒸発乾固させた後に残留物の重量を測定した。ここで、抽出試験は、溶媒として、蒸発水、イソプロピルアルコール(IPA)およびアセトンの夫々について行った。揮発性有機化合物(VOC)試験は、前記未洗浄品および前記洗浄品について、ドイツ自動車工業会VDA278に規定されるVOC測定法にて、加熱時に発生したガスをガスクロマトグラフ質量分析計(商品名:ガスクロマトグラフ質量分析計)により分析、総VOC値を算出した。具体的には、前記未洗浄品および前記洗浄品の夫々について7mgのサンプルを取り、このサンプルをガラスチューブに入れて、90℃で30分間に亘り熱脱着装置にかけて、発生したガスをガスクロマトグラフ測定し、総VOCについて確認した。その結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
試験例1は、水洗浄前の0.5μm以下のパーティクルが5948個/m
3であったのに対して、水洗浄後の0.5μm以下のパーティクルが1478個/m
3であり、JIS B 9920で規定する清浄度クラス5を満たしていることが確認できた。また、抽出試験およびVOC試験からも判るように、水洗浄によって洗浄品の不純物が大幅に減少していることが確認できる。