【解決手段】切残し判定方法は、被切断物5の切断面5aに沿って切断部3を移動させながら前記被切断物5を切断加工した際の切残し部5cの有無を判定する。この方法は、切断部3の移動方向に対して後方に切断面5aに沿って移動して切残し部5cを検知する切残し部検出手段4を配置し、予め切残し部5cで反射する切残し部検出手段4から送信された送信波の反射波の切残し部戻り時間を算出し、予め算出した切残し部戻り時間で反射して戻って来る反射波の信号の有無に基づいて前記切残し部が存在するか否かを判定する。
被切断物に対してノズルからウォータージェットまたはレーザービームを発射しながら前記ノズルを切断面に沿って移動して前記被切断物を切断するウォータージェット加工またはレーザー加工における切残し部の有無を判定する切残し判定方法であって、
前記ノズルの移動方向に対して後方に前記切断面に沿って移動する超音波センサを配置し、
予め前記切残し部で反射する超音波の切残し部戻り時間を算出し、
前記予め算出した前記切残し部戻り時間で反射して戻って来る超音波の信号の有無に基づいて前記切残し部が存在するか否かを判定すること、
を特徴とする切断加工における切残し判定方法。
前記ウォータージェットまたはレーザービームが前記被切断物を切断する切断出口に向けて、かつ、前記超音波センサの焦点を前記切断出口に合わせて当該超音波センサを支持していること、
を特徴とする請求項2に記載の切断加工における切残し判定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載された切断監視システムでは、特に、残存する未切断部分(以下「切残し部」という)が小さな場合、切残し部を検知することができず、切残し部の有無を正確に判定することができないという問題点があった。
【0007】
例えば、二重配管の切断で切残し部がある場合は、内側の切断鋼管を引き抜くことが不可能となる。このような場合は、再度切断する作業を行って、切残し部を除去しなければならない。その際には、最初の切断ラインに位置合わせをしてから切断を行うことは極めて困難となるため、新規に切断をやり直さなければならなくなり、大変な労力を費やしてしまうだけでなく、工期が遅れるという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、切残し部の有無をさらに正確に判定することができる切断加工における切残し判定方法及び切断加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る切断加工における切残し判定方法は、被切断物の切断面に沿って切断部を移動させながら前記被切断物を切断加工した際の切残し部の有無を判定する切残し判定方法であって、前記切断部の移動方向に対して後方に前記切断面に沿って移動して前記切残し部を検知する切残し部検出手段を配置し、予め前記切残し部で反射する前記切残し部検出手段から送信された送信波の反射波の切残し部戻り時間を算出し、前記予め算出した前記切残し部戻り時間で反射して戻って来る前記反射波の信号に基づいて前記切残し部が存在するか否かを判定することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、切断加工における切残し判定方法は、切断部の移動方向に対して後方に切断面に沿って移動する切残し部検出手段を配置していることにより、切残し部検出手段が切断加工を行う切断部に所定間隔を介して追随して移動する。この切残し判定方法では、予め切残し部で反射する反射波の切残し部戻り時間を算出し、予め算出した切残し部戻り時間で反射して戻って来る反射波の信号に基づいて切残し部が存在するか否かを判定することにより、切残し部の有無を正確に判定することができる。このため、本発明の切残し判定方法を利用して切断加工を行った場合は、切断加工を行いながら切断した箇所の切残し部の有無を追随して確認することができるので、切断作業後に被切断物の切残し部の有無を検査して再度切断作業を行うことを不要にすることができる。その結果、切断加工の作業の作業効率を向上させて、切断作業時間を短縮させ、工期の遅延を解消することができる。
ここで、「切断部」とは、被切断物を切断加工するアブレシブウォータージェット加工装置の場合はノズルが相当し、レーザー光を発射して切断加工を行うレーザー加工装置の場合もノズルが相当し、プラズマ切断、EDM(放電加工)による非接触切断を行う切断加工装置の場合は放電部が相当し、ディスクソー、レジノイド砥石等による機械的切断を行う切断装置の場合は砥石等の切削加工部が相当する。
【0011】
本発明に係る切断加工における切残し判定方法は、被切断物に対してノズルからウォータージェットまたはレーザービームを発射しながら前記ノズルを切断面に沿って移動して前記被切断物を切断するウォータージェット加工またはレーザー加工における切残し部の有無を判定する切残し判定方法であって、前記ノズルの移動方向に対して後方に前記切断面に沿って移動する超音波センサを配置し、予め前記切残し部で反射する超音波の切残し部戻り時間を算出し、前記予め算出した前記切残し部戻り時間で反射して戻って来る超音波の信号の有無に基づいて前記切残し部が存在するか否かを判定することを特徴とする。
ここで、「ウォータージェット」とは、高圧水のみから成るいわゆる「ウォータージェット」と、高圧水に研磨材を混入した「アブレッシブウォータージェット」と、ノズルから噴射された高圧水の液体噴流内にレーザービームを導入させて被切断物を切断加工するのに使用される「ウォータージェット」と、を含めたものをいう。
また、レーザービームにおける「ノズル」とは、レーザービームとアシストガスを発射するノズル、及び、レーザービームのみを発射する発振器を含めていう。
【0012】
かかる構成によれば、切断加工における切残し判定方法は、ノズルの移動方向に対して後方に切断面に沿って移動する超音波センサを配置していることにより、超音波センサが切断加工を行うノズルに所定間隔を介して追随して移動する。この切残し判定方法では、予め切残し部で反射する超音波の切残し部戻り時間を算出し、予め算出した切残し部戻り時間で反射して戻って来る超音波の信号の有無に基づいて切残し部が存在するか否かを判定することにより、切残し部の有無を正確に判定することができる。ウォータージェット、レーザービーム及び超音波センサは、水等の液中でも使用することができるので、液中が切粉や研磨剤によって濁り、水中カメラで被切断物の切残し部の有無を確認することができない状態であっても、切残し部の有無を正確に確認することが可能である。
このため、本発明の切残し判定方法を利用して切断加工を行った場合は、切断加工を行いながら切断した箇所の切残し部の有無を追随して確認することができるので、切断作業後に被切断物の切残し部の有無を検査して再度切断作業を行うことを不要にすることができる。その結果、ウォータージェット加工またはレーザー加工による加工作業の作業効率を向上させて、切断作業時間を短縮させ、工期の遅延を解消することができる。
【0013】
また、前記ウォータージェットまたはレーザービームが前記被切断物を切断する切断出口に向けて、かつ、前記超音波センサの焦点を前記切断出口に合わせて当該超音波センサを支持していることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、ウォータージェットまたはレーザービームは、超音波センサの焦点が被切断物を切断する切断出口になるように、超音波センサが支持していることにより、超音波センサの焦点を切残し部が形成される位置に合致させることができる。このため、切残し部を正確に検知することができる。
【0015】
また、前記切残し部が存在すると判定したときは、前記切残し部戻り時間で反射して戻って来た超音波を検知した時間から前記切残し部の位置を特定し、前記特定した切残し部の位置に前記ノズルを移動して当該切残し部の除去を行うことができる。
【0016】
かかる構成によれば、切断加工における切残し判定方法は、切残し部が存在すると判定したときに、切残し部戻り時間で反射して戻って来る超音波の反射波を検知した位置から切残し部の位置を特定することによって、切残し部がある位置を正確に検知することができる。切残し部を検知した場合は、特定した切残し部の位置にノズルを移動し、切残し部に向けて的確にウォータージェットまたはレーザービームを発射させて効率よく除去することができる。
【0017】
また、前記被切断物が管体から成る場合、前記管体の内側に前記ノズル及び前記超音波センサを配置して、前記管体の内壁面に前記ノズルから前記ウォータージェットまたはレーザービームを発射して前記管体を切断しながら前記切断面に沿って前記ノズル及び前記超音波センサを移動させ、前記ウォータージェットまたはレーザービームで切断した切断溝内にある前記切残し部を前記超音波センサで検知することができる。
【0018】
かかる構成によれば、管体をウォータージェットまたはレーザービームで切断する場合は、管体の内側にノズル及び超音波センサを配置して、管体の内壁面にウォータージェットまたはレーザービームを発射して切断しながら、超音波センサで切断溝内にある切残し部を検知することにより、切残し部が無い状態に切断することができる。
【0019】
また、液中において、前記ノズルから前記ウォータージェットまたはレーザービームを発射して前記被切断物を切断することができる。
【0020】
かかる構成によれば、液中でウォータージェットまたはレーザービームによって被切断物を切断することで、切断加工時における振動や騒音、ウォータージェットの飛散等を防止して円滑に加工することができる。
【0021】
また、本発明に係る切断加工装置は、被切断物に対して切断部を切断面に沿って移動させながら前記被切断物を切断する切断加工装置であって、前記切断部の移動方向に対して後方に前記切断面に沿って移動して、前記切断部で前記被切断物を切断した際の切残し部を検知する切残し部検出手段と、前記切断部及び前記切残し部検出手段を移動させる移動手段と、前記切残し部検出手段及び前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、予め前記切残し部で反射する前記切残し部検出手段から送信された送信波の反射波の切残し部戻り時間を算出する演算部と、前記演算部で予め算出した前記切残し部戻り時間を記憶する記憶部と、前記記憶部で記憶している前記切残し部戻り時間で反射して戻って来る前記反射波の有無に基づいて前記切残し部が存在するか否かを判定する判定部と、前記判定部で前記切残し部が存在すると判定したときに、前記切残し部戻り時間で反射して戻って来た前記反射波を検知した時間から前記切残し部の位置を特定する特定部と、前記特定部で特定した切残し部を除去できる位置に前記切断部を移動させて当該切残し部の除去を行わせる除去駆動部と、を備えていることを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、加工装置の制御手段は、演算部で予め算出して、記憶部で記憶している切残し部戻り時間で反射して戻って来る反射波の有無に基づいて切残し部が存在するか否かを判定部で判定する。その制御手段は、判定部で切残し部が存在すると判定したときに、特定部は、切残し部戻り時間で反射して戻って来た反射波を検知した時間から切残し部の位置を特定して、除去駆動部が、切残し部を除去できる位置にノズルを移動させて切残し部の除去を行わせることができる。
【0023】
また、本発明に係る切断加工装置は、被切断物に対してノズルからウォータージェットを発射しながら前記ノズルを切断面に沿って移動して前記被切断物を切断する切断加工装置であって、前記ノズルの移動方向に対して後方に前記切断面に沿って移動して、前記ノズルから発射したウォータージェットまたはレーザービームで前記被切断物を切断した際の切残し部を検知する超音波センサと、前記ノズル及び前記超音波センサを移動させる移動手段と、前記超音波センサ及び前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、予め前記切残し部で反射する超音波の切残し部戻り時間を算出する演算部と、前記演算部で予め算出した前記切残し部戻り時間を記憶する記憶部と、前記記憶部で記憶している前記切残し部戻り時間で反射して戻って来る超音波の有無に基づいて前記切残し部が存在するか否かを判定する判定部と、前記判定部で前記切残し部が存在すると判定したときに、前記切残し部戻り時間で反射して戻って来た超音波を検知した時間から前記切残し部の位置を特定する特定部と、前記特定部で特定した切残し部を除去できる位置に前記ノズルを移動させて当該切残し部の除去を行わせる除去駆動部と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、加工装置の制御手段は、演算部で予め算出して、記憶部で記憶している切残し部戻り時間で反射して戻って来る超音波の有無に基づいて切残し部が存在するか否かを判定部で判定する。その制御手段は、判定部で切残し部が存在すると判定したときに、特定部は、切残し部戻り時間で反射して戻って来た超音波を検知した時間から切残し部の位置を特定して、除去駆動部が、切残し部を除去できる位置にノズルを移動させて切残し部の除去を行わせることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る切断加工における切残し判定方法及び切断加工装置によれば、切残し部の有無をさらに正確に判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る切断加工における切残し判定方法及び切断加工装置を説明する。なお、本発明で使用する切断加工装置は、液中または空気中において、高圧水にアブレシブ(研磨材、被膜アブレシブ)を混入したアブレシブウォータージェットを噴射するアブレシブウォータージェット加工装置1や、高圧水を噴射するウォータージェット加工装置や、ノズルから噴射された高圧水の液体噴流内にレーザービームを導入させるウォータージェットレーザー加工装置や、レーザービームを発射するレーザー加工装置や、プラズマ切断、EDM(放電加工)による非接触切断加工装置や、ディスクソー、レジノイド砥石等による機械的切断加工装置等であってもよい。
以下、切断加工装置として、液中で使用するアブレシブウォータージェット加工装置1を使用する場合を例に挙げて説明する。
また、切断加工における切残し判定方法及び切断加工装置を説明する前に、切残し部5cを判定するのに使用されるアブレシブウォータージェット加工装置1と、その装置によって切断加工されるワーク5について説明する。
【0028】
≪ワーク≫
図1及び
図2に示すように、ワーク5(被切断物)は、例えば、適宜な材質のものからなる適宜な形状の材料から成る部材、構造物等である。つまり、ワーク5は、材質及び形状は特に限定されない。アブレシブウォータージェット加工装置1に使用されるワーク5は、例えば、金属製等の板材、鋼管、二重管、コンクリート、ガラス、石材、合成樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の複合材料などの加工性が悪い材料に切断加工を施す場合にも適用することができる。
【0029】
≪アブレシブウォータージェット加工装置≫
図1に示すように、アブレシブウォータージェット加工装置1は、超高圧ポンプPによって加圧された高圧水に研磨材(アブレシブ)を混入したアブレシブウォータージェット(以下、「ウォータージェットWJ」という)をワーク5に噴射しながらノズル3を切断面5aに沿って移動させて、液中でワーク5を切断する切断加工装置である。アブレシブウォータージェット加工装置1は、研磨材が混入されたウォータージェットWJをワーク5の切断面5aに向けて噴射するノズル3と、水流を高圧水に加圧する超高圧ポンプPと、超高圧ポンプPで生成した高圧水をノズル3に送るホース6と、ノズル3に適量の研磨材を供給するアブレシブ供給装置(図示省略)と、ノズル3及び超音波センサ4(切残し部検出手段)を移動させる移動手段2と、高圧水で切断加工したワーク5の切残し部5cを検知する超音波センサ4と、超高圧ポンプP、移動手段2、及び超音波センサ4を制御する制御手段7と、アブレシブウォータージェット加工装置1の駆動状況を表示する表示手段8と、電源9と、を主に備えた構成されている。アブレシブウォータージェット加工装置1は、高圧水を高速で噴射させてワーク5を切断するため、金属等の硬い材質であっても、合成樹脂等の比較的柔らかい材質であっても、切断加工が可能である。
【0030】
研磨材(アブレシブ)は、アブレシブウォータージェット加工装置1でワーク5を加工する際に、ウォータージェットWJ中に混入される砥粒である。研磨材は、従来のものであっても、また、複数種の材質、形状のものを使用しても構わない。
【0031】
超高圧ポンプPは、超高圧の高圧水(加圧液体)を生成できる液体供給源であればよく、種類、形式等は特に限定されない。
ホース6は、基端部が貯留タンク(図示せず)に接続され、先端側が超高圧ポンプP及び電磁バルブ(図示省略)を介してノズル3に接続されている。ホース6は、高圧水を送ることができる高圧配管であればよい。
【0032】
ノズル3(切断部)は、超高圧ポンプPからの高圧水をワーク5に向けて噴射する噴射口である。
図2に示すように、超高圧ポンプPは、後記する超音波センサ4と共に、移動手段2によってワーク5の切断面5aに沿って移動されながらウォータージェットWJを噴射してワーク5を切断する。なお、ノズル3は、ワーク5を切断できるウォータージェットWJを噴射できるものであれば、その形状及び種類は特に限定されない。
【0033】
≪移動手段≫
図1に示すように、移動手段2は、ノズル3及び超音波センサ4をワーク5の切断面5aに沿って移動させるための装置であり、例えば、ワーク5がある液中に浸した状態で使用される。移動手段2は、ノズル3を保持して上下動させる把持吊上装置21と、把持吊上装置21を前後左右の水平方向に移動させるノズル移動装置(図示省略)と、から主に構成されている。
【0034】
<把持吊上装置>
図4(a)に示すように、把持吊上装置21は、ノズル3を把持するノズル把持部21aと、超音波センサ4を把持するセンサ把持部21bと、センサ把持部21bを回動させるセンサ旋回アクチュエータ21cと、ノズル把持部21aを上下動させる吊上装置部21dと、を備えている。
ノズル把持部21aは、例えば、ノズル3をワーク5の被切断部位に向けて位置決めした状態で把持する略筒状部材から成る。
センサ把持部21bは、ノズル把持部21aの外周部に一体に設けられ、超音波センサ4をワーク5の切断溝5bに向けた状態に把持している。
センサ旋回アクチュエータ21cは、例えば、歯車減速伝達機構(図示省略)を介在してセンサ把持部21bを回動させる電動モータから成る。
吊上装置部21d(
図1参照)は、例えば、ワーク5の切断面5aに対してノズル把持部21aを上下動させる電動駆動装置である。
なお、センサ旋回アクチュエータ21c及び吊上装置部21d(
図1参照)は、油圧を利用して駆動させる油圧駆動装置であってもよい。
【0035】
<ノズル移動装置>
ノズル移動装置(図示省略)は、ノズル3と超音波センサ4とをワーク5との距離を把持吊上装置21で一定に保ちながらそれらを水平方向に移動させる装置である。ノズル移動装置は、移動機構によってノズル3及び超音波センサ4を切断予定線方向へ予め設定された切断の最適な移動速度で移動させる。その移動速度は、超高圧ポンプPと共に制御手段7で、ワーク5に合わせて最適値に制御される。
【0036】
<超音波センサ>
超音波センサ4(切残し部検出手段)は、ノズル3の移動方向に対して後方に前記切断面5aに沿って移動して、ノズル3から噴射したウォータージェットWJでワーク5を切断した際の切残し部5cの有無と、超音波センサ4から切残し部5cまでの距離を検知するためのセンサである。超音波センサ4は、非接触超音波探触子から成る。超音波センサ4は、超音波を送信する送波部と、送信して戻って来る超音波の受信波を受信する受波部とを一体化した超音波受送波機から構成されている。超音波センサ4は、ノズル3の移動方向(切断方向)に対して、ノズル3の後方に配置されて、切断面5aに沿って移動するように配置されている。その超音波センサ4は、ワーク5の切断溝5bに向けて超音波を発信し、切断溝5b内に切残し部5cがある場合に、切残し部5cによって反射された超音波を受信できるように把持吊上装置21に取り付けられている。なお、超音波センサ4は、液中でも、空気中でも使用可能である。
【0037】
図3に示すように、超音波センサ4は、ウォータージェットWJがワーク5を切断した切断溝5b内の切断出口5dに向けて発信され、かつ、超音波センサ4の焦点4aの位置を切断出口5d付近に合わせて把持吊上装置21に支持させる。この場合、超音波センサ4は、超音波センサ4からワーク5までの距離、ワーク5の厚さから焦点4aの位置が切断出口5d付近になるものを選定して使用する。
【0038】
<表示手段>
図1に示す表示手段8は、アブレシブウォータージェット加工装置1の駆動状況を表示するモニタであり、ノズル3及び超音波センサ4から離れた場所に配置されている。表示手段8は、作業者がいる場所に配置される。
【0039】
<制御手段>
制御手段7は、超音波センサ4、移動手段2、及びノズル3へ供給する高圧水を制御する制御装置から成る。制御手段7は、後記する演算部71と、記憶部72と、判定部73と、特定部74と、除去駆動部75等を備えている。
【0040】
演算部71は、超音波センサ4からワーク5の切断溝5b内に向けて送信された超音波が、予め切残し部5cで反射されて戻って来た超音波の切残し部戻り時間を算出しておくと共に、ワーク5の切断溝5b内に向けて送信され超音波センサ4からの超音波が、切残し部5cで反射されて戻って来るまでの時間を算出する。なお、予め算出しておく超音波の切残し部戻り時間は、演算部71以外のコンピュータで予め計算したデータを記憶部72に記憶させておいてもよい。
【0041】
記憶部72は、超音波センサ4から発信された超音波が、ワーク5の切断溝5b内の切残し部5cによって反射されて超音波センサ4に戻って来るまでの切残し部戻り時間を予め演算部71で算出してデータとして記憶している。
【0042】
判定部73は、記憶部72で記憶している切残し部戻り時間で反射して戻って来る反射波の有無に基づいて切残し部5cが存在するか否かを判定する。具体的には、判定部73は、記憶部72で記憶している切残し部戻り時間で反射して戻って来る超音波の反射波を超音波センサ4によって検知した場合に、切残し部5cが存在すると判定する。判定部73は、超音波センサ4から発信した超音波の反射波を受信しない場合、ワーク5の切断溝5b内に超音波を反射する切残し部5cが存在せず、完全に切断されていると判定する。
【0043】
特定部74は、判定部73で切残し部5cが存在すると判定したときに、超音波センサ4から送信した超音波の発信時間から切残し部戻り時間で反射して戻って来る超音波を検知したときの時間(位置)から切断溝5b内にある切残し部5cの位置を特定する。
【0044】
除去駆動部75は、特定部74で切残し部5cが存在すると特定された場合、移動手段2を駆動させて、特定部74で特定した切残し部5cを除去できる位置にノズル3を移動させ、ノズル3から切残し部5cに向けてウォータージェットWJを噴射させて切残し部5cを切断して除去する作業を行わせる。
【0045】
<電源>
電源9は、移動手段2、超音波センサ4、制御手段7、超高圧ポンプP及び表示手段8に電力を供給するものである。電源9及び制御手段7は、表示手段8がある液中外の地上等に配置される。
【0046】
≪作用≫
次に、添付図面を主に参照しながら本発明の実施形態に切断加工における切残し判定方法を作業工程順に説明する。
【0047】
<準備工程>
まず初めに、
図1に示す超高圧ポンプPをONにして高圧水を生成し、把持吊上装置21に保持されるノズル3及び超音波センサ4の位置及び向きを調整する準備工程を行う。
【0048】
<穴開け工程>
続いて、
図4(a)、(b)に示すように、液中にある板材等のワーク5を切断する前に、ワーク5の切断面5aに対して、ノズル3からウォータージェットWJを噴射してワーク5に切断開始点となる穴を開ける穴開け工程を液中で行う。
【0049】
<切断工程>
続いて、穴開け工程で形成した穴を基点に、切断方向にワーク5の切断工程を行う。切断工程では、
図4(a)、(b)に示すように、ノズル3からウォータージェットWJをワーク5の切断面5aに向けて沿直方向に噴射し、切断面5aに沿ってノズル3及び超音波センサ4を移動手段2によって切断方向に移動させて、ワーク5を切断する。この切断工程において、ワーク5は、ウォータージェットWJによって切断されて、切断溝5bが形成される。移動手段2によるノズル3の送り速度は、ワーク5の材質や厚さに適合した加工条件に調整しながら切断加工を行う。
【0050】
<切断確認工程>
次に、ノズル3に追随して移動する超音波センサ4からワーク5の切断溝5b内に向けて超音波を発信させながら切断溝5b上を移動手段2で移動させて、切断溝5b内に切残し部5cがあるかを確認する切断確認工程を切断工程に平行して行う。
図5(a)〜(c)に示すように、切断確認工程では、超音波センサ4から送信された超音波(発信波t)が、ワーク5の板厚付近の深さで超音波が反射されて超音波センサ4に戻って来た超音波(受信波r)を受信した場合は、超音波(発信波t)が切残し部5cによって反射されて受信波rとして受信されたものとして、判定部73(
図1参照)が切残し部5cが存在すると判定する。
【0051】
なお、判定部73(
図1参照)は、
図4(c)に示すように、超音波の反射波が超音波センサ4で受信されない場合、切残し部5cが存在せず、完全に切断されていると判定する。
切残し部5cの有無を確認する切断確認工程は、超音波センサ4を利用して切残し部5cが形成されるワーク5の切断出口5dの付近を確認することにより、従来、液中で濁りによって切残し部5cを確認することができなかった水中カメラによる問題点を解消することができる。
【0052】
また、
図6(a)〜(c)に示すように、ワーク5の切断面5aの切断溝5b以外の切断加工されていない部位に、超音波センサ4から送信された発信波tを当てた場合は、ワーク5の表面の切断面5aの位置で反射した受信波r1aと、ワーク5の裏面の切断出口5dとなる位置で反射した受信波r1bとが受信される。このため、ワーク5の切断加工されていない部位に、超音波センサ4から発信された発信波tが当たっている場合は、切断加工されていない部位であることを受信波r1a,r1bの受信の有無から判断することができる。
【0053】
<切残し部特定工程>
図5(a)〜(c)に示すように、判定部73で切残し部5cが存在すると判定された場合は、特定部74によって超音波センサ4から送信された超音波の発信時間から切残し部戻り時間で反射して戻って来た超音波を検知したときの時間(位置)によって、切断溝5b内にある切残し部5cの位置を特定する切残し部特定工程が自動的に行われる(
図1参照)。特定されたワーク5の切残し部5cの座標位置は、記憶部72に記憶される(
図1参照)。
【0054】
<切残し部除去工程>
次に、特定部74で切残し部5cの位置等が特定された場合は、記憶部72に記憶された座標位置に基づいて移動手段2を駆動させ、特定部74で特定した切残し部5cを除去できる位置にノズル3を移動させて、ノズル3から切残し部5cに向けてウォータージェットWJを噴射させて切残し部5cを切断して除去する切残し部除去工程が行われる(
図1参照)。
【0055】
このようにして、切残したワーク5の切残し部5cを切断する切断加工を行うことにより、切残し部5cを確実に除去して、ワーク5を完全に切断することができる。このため、切断されたワーク5を移送させる作業が行い易くなる。ワーク5を移送が完了すると、アブレシブウォータージェット加工装置1による作業が終了する。
【0056】
本発明に係る切断加工における切残し判定方法は、切断加工が行われる液中が濁っている場合であっても、液中の濁りに左右されない超音波センサ4によって、ワーク5の切残し部5cを検出するため、切残し部5cの有無を正確に判定することができる。この切残し判定方法を利用して切断加工を行った場合は、切断加工を行いながら切断した箇所の切残し部5cの有無をノズル3の移動に追随して確認することができる。このため、切断作業後にワーク5の切残し部5cの有無を検査して再度切断作業を行うことを不要にすることができる。その結果、アブレシブウォータージェット加工による加工作業の作業効率を向上させて、切断作業時間を短縮させることができる。
【0057】
≪ノズルを直線方向(または曲線方向)に移動させてワークを切断する場合≫
次に、
図7(a)〜(g)を主に参照して、アブレシブウォータージェット加工装置1のノズル3を直線方向(または曲線方向)に移動させてワーク5を切断する場合を作業工程順に説明する。
【0058】
まず、
図7(a)に示すように、超音波センサ4から超音波を送信させて、超音波センサ4によるワーク5の切断面5aの超音波探傷検査をスタートさせる(ステップS11)。続いて、
図7(b)に示すように、ノズル3からウォータージェットWJをワーク5に向けて噴射させる(ステップS12)。
【0059】
次に、
図7(c)に示すように、ノズル3を移動手段2(
図1参照)によって移動させて、ワーク5の切断面5aを切断する切断加工を開始する(ステップS13)。このとき、超音波センサ4は、ノズル3との間の距離L2を保ちながら一体的に移動手段2によって切断方向(矢印a方向)へ移動するので、ノズル3が距離L2移動した後、切残し部5cの有無を確認する。
【0060】
そして、
図7(d)に示すように、ワーク5に切残し部5cがある場合は、超音波センサ4から送信された送信波が、切残し部5cで反射されて戻って来た受信波rを受信することにより、切残し部5cを検知することができる(ステップS14)。
ステップS14で切残し部5cが検出されたときは、
図7(e)に示すように、移動手段2を切断方向と反対方向(矢印b方向)に駆動させ、ノズル3を距離L2逆走させて戻し、ノズル3からウォータージェットWJで切残し部5cを切断する(ステップS15)。
【0061】
そして、
図7(f)に示すように、ノズル3及び超音波センサ4を移動手段2(
図1参照)で切断方向に移動させて、切断加工を逆走させた地点から再スタートさせる(ステップS16)。
図7(g)に示すように、超音波センサ4は、ステップS15で切残し部5cを切断した位置を通過する際に、超音波センサ4から送信された超音波の反射波が無いことで、切残し部5cを確実に除去したことを確認することができる(ステップS17)。
【0062】
このようにワーク5の切断箇所が直線方向(または曲線方向)に延びている場合は、
図7(a)〜(f)に示すようにノズル3及び超音波センサ4を移動させてワーク5の切断面5aを切断しながら切残し部5cを確認し、切残し部5cがあったときに、ノズル3及び超音波センサ4を逆走させて切残し部5cを除去して、切残し部5cの有無の確認を行いながら確実にワーク5を切断する。このため、切断作業の工程を1工程で行うことが可能となる。その結果、ワーク5の切断作業の作業時間を大幅に短縮させることができる。
【0063】
≪ノズルを直線方向から直角方向に変更させて移動させながらワークを切断する場合≫
次に、
図8(a)〜(e)を主に参照して、アブレシブウォータージェット加工装置1のノズル3を直線方向から直角方向に変更させて移動させながらワーク5を切断する場合を作業工程順に説明する。
【0064】
図8(a)に示すように、直線状にノズル3及び超音波センサ4を移動させて、ノズル3からウォータージェットWJをワーク5に向けて噴射させて切断しながら、超音波センサ4によるワーク5の切断面5aの超音波探傷検査を実施する場合(ステップS21)は、前記した
図7(a)〜(g)のステップS11〜ステップS17と同様に行う。
つまり、
図8(a)に示すように、アブレシブウォータージェット加工装置1は、細い二点鎖線で示す切断予定ルートf上を、ノズル3と超音波センサ4とを距離L2の間隔を保って切断方向(矢印a方向)に平行移動させながら、超音波センサ4による超音波探傷検査を実施する(ステップS21)。超音波センサ4は、ノズル3から噴射したウォータージェットWJで切断しながら移動した太実線で示す切断済みルートg上を追随するように、探傷済みルートhを移動する。
【0065】
図8(b)に示すように、ノズル3がコーナー部に到着すると(ステップS22)、ノズル3の進行方向(矢印a方向)を直角方向(矢印c方向)に変更する。次に、
図8(c)に示すように、超音波センサ4を太実線で示す切断済みルートgに沿って直角方向側に向くように、ノズル3に対して矢印d方向に旋回させる(ステップS23)。そして、
図8(d)に示すように、超音波センサ4がコーナー部に到着すると、超音波センサ4がさらに旋回されて、ノズル3及び超音波センサ4が、直角方向(矢印c方向)を向いた状態になる(ステップS24)。
【0066】
図8(e)に示すように、ノズル3及び超音波センサ4が、直角方向(矢印c方向)を向いた状態で、その方向に前進させて、ノズル3からウォータージェットWJを噴射してワーク5の切断加工を行いながら、超音波センサ4でワーク5の切断加工処理部位に切残し部5cがあるか切残し検知を行う(ステップS25)。
【0067】
このように、アブレシブウォータージェット加工装置1は、切断予定ルートfが直角等に曲がっていても、ノズル3及び超音波センサ4が、切断予定ルートf上を切断する方向に向けて移動されて、ノズル3で切断加工を行いながら、その切断状況をノズル3の後を追随して移動する超音波センサ4で確認しながら行うので、ワーク5を確実に切断することができる。
【0068】
≪変形例≫
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0069】
前記実施形態では、加工装置の一例として
図1に示すアブレシブウォータージェット加工装置1を例に挙げて説明したが、ワーク5に高圧水のみから成るウォータージェットWJを噴射してワーク5を切断するウォータージェット噴射加工装置や、ノズル3から噴射された液体噴流内に導かれたレーザービームをワーク5の切断面5aに噴射してワーク5を切断するウォータージェットレーザー加工装置等の切断装置(切断方法)であってもよい。
【0070】
また、レーザービームを使用する切断加工装置は、空気中で、ウォータージェットWJを利用せずに、レーザービームだけを使用して加工するレーザー加工装置であってもよい。
この他、加工装置は、プラズマ切断、EDM(放電加工)による切断等の非接触切断工法や、ディスクソー、レジノイド砥石等による機械的切断等による切断加工装置であってもよい。
なお、超音波探触子を気中で使用する場合は、超音波センサ4とワーク5との間に液体の媒体が介在させて加工することが望ましい。
【0071】
また、前記実施形態で説明したアブレシブウォータージェット加工装置1のノズル移動装置は、ノズル3でワーク5を切断できるように、ノズル3を移動させることができるものであればよく、例えば、水平方向や噴射方向が自在に変化するロボットアームの先端部に装着するものであっても、把持吊上装置21とノズル移動装置(図示省略)とが一体化された装置であってもよい。
【0072】
前記超音波センサ4は、ワーク5(被切断物)を切断加工した際の切残し部5cの有無を検知することが可能なセンサであればよく、例えば、光学式センサ、あるいは、レーザー光線式センサ等の他の切残し部検出手段であってもよい。
【実施例1】
【0073】
図9は、本発明の実施形態に係る切断加工における切残し判定方法の実施例1を示す図であり、(a)はアブレシブウォータージェット加工装置で配管を切断するときの状態を示す横断面図、(b)は縦断面図である。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0074】
次に、
図9(a)、(b)を参照して、アブレシブウォータージェット加工装置1で比較的小径な配管51を切断する場合の実施例1を説明する。
図9(a)、(b)に示すように、配管51(管体)から成るワーク5を切断加工する場合、その配管51の内径が小さいときは、超音波センサ4を軸方向に斜めに配置して、超音波の向きを切断溝51bに向けるようにして使用する。なお、配管51の内径が大きい場合には、前記したノズル3を直線方向(または曲線方向)に移動させてワーク5を切断する場合と同じように、超音波センサ4を配管51の軸直交方向に向けて使用する。
【0075】
比較的小径な配管51を切断する場合は、アブレシブウォータージェット加工装置1のノズル3及び超音波センサ4を配管51の内部に配置して、ノズル3から配管51の内壁面51aに向けてウォータージェットWJを噴射し、超音波センサ4から配管51の内壁面51a側から外周面にある切断出口51d付近に向けて焦点4aを合わせて超音波を送信させる。そして、把持吊上装置21を回転駆動させてノズル3及び超音波センサ4を内壁面51aに沿って円周方向(矢印e方向)に回転移動させながら、切断加工と超音波センサ4による切残し部51cの検知を行う。
【0076】
ノズル3は、配管51内に挿入された把持吊上装置21のノズル把持部21aに固定されて噴射口が配管51の内壁面51aに直交するように配置させる。
超音波センサ4は、把持吊上装置21のセンサ把持部21bによって切断溝51b内の切断出口51d付近に向けて焦点4aを調整して超音波が送信されるように保持させる。超音波センサ4は、探傷時の外乱を極力避けるために、配管51の周方向の切断部と位相をずらして配置させる。
【0077】
つまり、超音波センサ4から水中の配管51の切残し部51cが形成される切断出口51dに向けて斜めに送信された超音波は、例えば、ステンレス製の配管51の場合、水中で音速1,480m/sで送られて内壁面51aに到達する。その超音波は、内壁面51aで一部が反射されながら、内壁面51aで屈折して配管51のステンレス材料内を音速5,900m/sに速度を上げて送られる。その超音波は、切断出口51dに到達すると、切断出口51dに切残し部51cがある場合、切残し部51cの切断出口51dで一部の超音波が反射されて超音波センサ4側へ戻ると共に、他の超音波が切残し部51cを通過して配管51外に出る。切断出口51dで反射された超音波は、配管51の内壁面51aに到達すると、屈折しながら水中を減速された音速1,480m/sで超音波センサ4に反射波として戻る。なお、切断出口51dに切残し部51cが無い場合、超音波は、切断出口51dから配管51外に出る。
【0078】
このように超音波センサ4を斜めに配置した場合は、超音波が屈折して戻る方向がズレることを考慮して超音波センサ4の向きを設定することにより、配管51の切残し部51cを正確に検出することが可能である。つまり、アブレシブウォータージェット加工装置1は、
図9(a)、(b)に示すように、ノズル3及び超音波センサ4を配管51の内部に配置することにより、板状のワーク5の場合と同様に、ノズル3による切断加工と、超音波センサ4による切残し部51cの検知を行うことが可能である。
【実施例2】
【0079】
図10は、本発明の実施形態に係る切断加工における切残し判定方法の実施例2を示す図であり、(a)はアブレシブウォータージェット加工装置で配管を切断するときの状態を示す横断面図、(b)は縦断面図である。
【0080】
前記実施例1では、アブレシブウォータージェット加工装置1で配管51を切断する場合の一例として、
図9(a)、(b)に示すように、超音波センサ4をノズル3から上下方向のずらした位置の把持吊上装置21に設置して、超音波センサ4を切断溝51bの切断出口51dに対して斜めに向けて設置した場合を説明したが、
図10(a)、(b)に示すように、超音波センサ41は、水平に切断形成された切断溝51bに沿って水平に配置してもよい。
【0081】
その場合、超音波センサ41は、ノズル3に対して180°相違する位置である把持吊上装置21の反対側の位置に配置する。このように超音波センサ41の向きを水平に向けて把持吊上装置21に取り付けることによって、超音波センサ41から送信された超音波が切断溝51b内を通過することができるように配置されているため、切残し部51cを正確に検出することができる。
【0082】
超音波センサ41は、
図10(a)に示すように、配管51内を矢印e方向へ回転移動しながら切断加工を行うノズル3から180°後の位置を追随して配管51内を回転移動する。このため、超音波センサ41は、ノズル3から噴射されたウォータージェットWJで切断中の切断溝51bから180°反対方向の位置にある切断済エリアA内の切断溝51b内に超音波を送信して切残し部51cの有無を検出することができる。
なお、
図10(a)、(b)に示す超音波センサ41は、切断加工を行うノズル3から後ろの位置を通して、ノズル3に追随して配管51内を回転移動することができる構造であればよく、ノズル3から180°後ろの位置に配置されるものに限定されるものではない。
【実施例3】
【0083】
図11は、本発明の切断加工における切残し判定方法の実施例3を示す図であり、配管と超音波センサの配置状態を示す概略図である。
【0084】
前記実施例2(
図10(a)、(b)参照)では、配管51を切断するノズル3(図示省略)と、切残し部51cを検知する超音波センサ41と、を配管51の内側に配置して、切断加工の切残し部51cを検出したが、
図11に示すように、切断する配管52の外側に、配管52を切断するノズル3(図示省略)と、切残し部52cを検知する超音波センサ4と、を配置してもよい。
【0085】
この場合、配管52の外側に配置した超音波センサ4から送信する超音波は、切断面52aに開けられた切断溝52b(配管52の内壁面52e)に向けて送信する。超音波センサ4は、配管52に切残し部52cがある場合、切残し部52cによって超音波が反射されて戻って来るので、反射波を受信することにより、切残し部52cが有ることを検出することができる。
【0086】
このように、配管52が小さい場合や、超音波センサ4及びノズル3を配管52内に配置することができない場合は、超音波センサ4及びノズル3を配管52の外側に配置して切断加工を行いながら切残し部52cを検出してもよい。
【0087】
なお、配管52を切断加工する場合は、配管52を固定させて超音波センサ4及びノズル3を配管52の外周に沿って移動させながら切断加工を行ってもよいし、配管52を回転させて超音波センサ4及びノズル3を固定させてもよい。
【実施例4】
【0088】
図12は、本発明の切断加工における切残し判定方法の実施例4を示す図であり、二重配管と超音波センサの配置状態を示す概略図である。
図13は、本発明の切断加工における切残し判定方法の実施例4を示す図であり、二重配管と超音波センサとノズルの配置状態を示す斜視図である。
【0089】
次に、
図12及び
図13を参照しながら実施例4を説明する。
実施例4は、アブレシブウォータージェット加工装置1で、
図12及び
図13に示すように、二重配管54を形成する配管52,53にノズル3からウォータージェットWJを噴射して円周方向に延びるスリット(切断溝52b,53b)を形成しながら、超音波センサ4で内側の配管53の切残し部53cと、外側の配管52の切残し部52cと、を検知する方法である。
【0090】
二重配管54は、外側に配置される大径の配管52と、その内側に配置される小径の配管53から成る。
ノズル3は、二重配管54の外側に二重配管54の中心に向けて水平に配置し、二重配管54の外側から大径の配管52の外面に向けてウォータージェットWJを噴射して、配管52の円周方向に切断溝52b,53bを形成する切断加工を行う。
【0091】
超音波センサ4は、外側の配管52から外側に離れた位置に、二重配管54の中心に向けてノズル3の近傍に水平に設置する。超音波センサ4は、水に浸漬した配管52,53及び二重配管54の外周に沿って移動するように設置する。超音波センサ4の焦点4a,4aは、内側の配管53の超音波センサ4側の内壁面53e(切断溝53b内の切断出口)付近と、外側の配管52の超音波センサ4側の内壁面52e(切断溝52b内の切断出口)付近との二箇所に合わせる。
【0092】
二重配管54外に配置した超音波センサ4で切断溝52b,53bに超音波を通して配管52,53の切残し部52c,53cが存在する位置に向けて送信すると、切残し部52c,53cによって反射して戻って来る反射波の受信の有無により、切残し部52c,53cが存在するか否かを検知することができる。戻って来た反射波が、外側の配管52の切残し部52cによって反射されたものか、内側の配管53の切残し部53cによって反射されたものかは、超音波センサ4から超音波が送信されて超音波センサ4に戻って来るまでの時間が、外側の配管52の切残し部52cによる反射波の場合、時間が短く、内側の配管53の切残し部53cによる反射波の場合、時間が長いため、反射波を受信したときの時間によって判別することができる。
【0093】
なお、二重配管54の外側から超音波センサ4で切残し部52c,53cを検出する場合、内側の配管53が切断されていれば、外側の配管52も切断されているので、超音波センサ4の焦点は、少なくとも内側の配管53の超音波センサ4側の内壁面53e付近に合わせればよく、内側の配管53の超音波センサ4側の内壁面53e付近にのみ、一つの焦点を設けるようにしてもよい。
また、実施例4では、二重配管54を切断加工するのに、二重配管54を固定させて超音波センサ4及びノズル3を配管52の外周に沿って移動させる場合を説明したが、二重配管54を回転させて超音波センサ4及びノズル3を固定させて切断加工を行ってもよい。
【実施例5】
【0094】
図14は、本発明の切断加工における切残し判定方法の実施例5を示す図であり、二重配管と超音波センサとノズルの配置状態を示す斜視図である。
前記実施例4では、配管の大きさと、超音波センサ4及びノズル3の大きさとの都合から超音波センサ4を配管52,53の外側に配置したが、配管52,53内に超音波センサ4及びノズル3を配置可能な二重配管54の場合は、
図14に示すように、超音波センサ4及びノズル3を二重配管54の内側に配置してもよい。
その場合、超音波センサ4及びノズル3は、前記
図10(a)、(b)で説明した方法と同じ方法で二重配管54内に設置する。
【0095】
例えば、超音波センサ4は、
図14に示すように、配管52,53内を矢印e方向へ回転移動させながら切断加工を行うノズル3から180°後の位置を追随して配管52,53内を回転移動させる。超音波センサ4は、ノズル3から噴射されたウォータージェットWJで切断中の切断溝52b,53bから180°反対方向の位置にある切断済エリアA内の切断溝52b,53b内に超音波を送信して、切残し部52c,53cで反射して戻って来る反射波を受信することができるように設置する。
これにより、二重配管54の場合であっても、切残し部52c,53cに向けて送信した超音波の反射波の受信の有無によって、切残し部52c,53cが有るか、無いかを確認することができる。
なお、実施例5の超音波センサ41は、実施例2(
図10(a)、(b)参照)と同様に、切断加工を行うノズル3から後ろの位置を通して、ノズル3に追随して配管51内を回転移動することができる構造であればよく、ノズル3から180°後ろの位置に配置されるものに限定されるものではない。
【0096】
≪実施例4,5について≫
実施例4,5の結果から、二重配管54の超音波探傷検査を行う場合、小径の配管53、大径の配管52の切残し部52c,53cを検知するためには、超音波センサ4の焦点を二箇所に設定する必要がある。この場合、その方法としては二つの方法がある。
一つ目の方法は、小径の配管53の焦点4aと、大径の配管52の焦点4aの二箇所の焦点4a,4aを網羅して検知することが可能な超音波センサ4を使用する方法である。
二つ目の方法は、二つの超音波センサ4を使用して配管52,53のそれぞれの切断部位に焦点4a,4aを合わして検査する方法である。
【0097】
実施例4,5から本発明に係るアブレシブウォータージェット加工装置(切断加工装置)によって配管52,53および二重配管54を切断加工した場合も、切残し部5cの有無を確実に検知することができる。このため、二重配管54を切断加工した場合、切残し部5cがあるときは、切残し部5cの有無を正確に検知して、切残し部5cを除去できるため、未切断部分があることによって内側の配管53を外側の配管52から引き抜くことができないという不具合や、従来、切断作業後に行っていた切断確認作業を解消して、二重配管54の切断作業の作業工数を削減して作業の効率化を図ることができる。