特開2015-209164(P2015-209164A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-209164(P2015-209164A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20151027BHJP
【FI】
   B60C11/00 D
   B60C11/00 B
   B60C11/00 C
   B60C11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-93036(P2014-93036)
(22)【出願日】2014年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 光司
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗性能を向上しつつ、操縦安定性と乗り心地との両立を実現しうる。
【解決手段】トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7と、このベルト層7のタイヤ半径方向の外側に配されたトレッドゴム2Gとを具える。トレッドゴム2Gは、トレッド部2の外面をなすキャップ部11と、該キャップ部11のタイヤ半径方向内方に配され、かつ損失正接tanδが0.03〜0.10のゴム材からなるベース部12とを含む。ベース部12は、タイヤ軸方向の最も外側に配され、かつ、少なくともベルト層7のタイヤ軸方向の外端を覆う一対の外側部12Aと、この外側部12Aの間をのびる内側部12Bとを含む。外側部12Aの複素弾性率E*aが20MPa〜50MPaであり、かつ内側部12Bの複素弾性率E*bが2MPa〜15MPaである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されたベルト層と、このベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されたトレッドゴムとを具え、
前記トレッドゴムは、前記トレッド部の外面をなすキャップ部と、該キャップ部のタイヤ半径方向内方に配され、かつ損失正接tanδが0.03〜0.10のゴム材からなるベース部とを含み、
前記ベース部は、タイヤ軸方向の最も外側に配され、かつ、少なくとも前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端を覆う一対の外側部と、この外側部の間をのびる内側部とを含み、
前記外側部の複素弾性率E*aが20MPa〜50MPaであり、かつ
前記内側部の複素弾性率E*bが2MPa〜15MPaであることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記外側部は、前記ベルト層の外端をタイヤ軸方向外側に越えて、前記カーカスに沿ってタイヤ半径方向内側にのび、
前記外側部のタイヤ軸方向の外端は、ビードベースラインからのタイヤ半径方向の高さが、タイヤ断面高さの0.6倍〜0.9倍である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記内側部は、タイヤ軸方向の幅が、トレッド接地幅の0.4倍〜1.1倍である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記内側部は、前記複素弾性率E*bがそれぞれ異なる複数の分割片がタイヤ軸方向に並んで形成される請求項1乃至3の何れかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記分割片は、タイヤ赤道に近いものほど、前記複素弾性率E*bが小さい請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記分割片は、タイヤ赤道に近いものほど、前記複素弾性率E*bが大きい請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッドゴムの構造、損失正接、及び複素弾性率を規定することにより、転がり抵抗性能を向上しつつ、操縦安定性と乗り心地との両立を高いレベルで実現しうる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗り心地と操縦安定性とを両立させるために、トレッドゴムを、トレッド部の外面をなすキャップ部と、該キャップ部のタイヤ半径方向内方に配されるベース部とを含む2層構造とし、該ベース部を、タイヤ軸方向の最も外側に配される一対の外側部と、この外側部の間をのびる内側部とに区分した空気入りタイヤが提案されている。
【0003】
また、上記空気入りタイヤは、ベース部の前記外側部の損失正接tanδが小かつ複素弾性率E*が大に設定される一方、内側部の損失正接tanδが大かつ複素弾性率E*が小に設定される。これにより、外側部は、低発熱性及び高弾性を有するため、発熱による内部損失を抑制しつつ、旋回時においてトレッドショルダー部の剛性を高めて大きなコーナリングフォースを発揮させて、操縦安定性を向上しうる。また、内側部は、可撓性及び振動減衰性を有するため、直進走行時において、路面からの入力を吸収し、乗り心地を向上しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−263175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、地球環境問題などに関連して、燃費性能を向上させるために、転がり抵抗を小さくした空気入りタイヤに注目が集まっている。しかしながら、上記特許文献1の空気入りタイヤでは、直進走行時、常時大きな接地荷重を受ける内側部の損失正接tanδが大きいため、転がり抵抗が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ベース部の内側部の複素弾性率E*を抑えつつ、損失正接tanδを小さく限定することを基本として、転がり抵抗性能を向上しつつ、操縦安定性と乗り心地との両立を実現しうる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されたベルト層と、このベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されたトレッドゴムとを具え、前記トレッドゴムは、前記トレッド部の外面をなすキャップ部と、該キャップ部のタイヤ半径方向内方に配され、かつ損失正接tanδが0.03〜0.10のゴム材からなるベース部とを含み、前記ベース部は、タイヤ軸方向の最も外側に配され、かつ、少なくとも前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端を覆う一対の外側部と、この外側部の間をのびる内側部とを含み、前記外側部の複素弾性率E*aが20〜50MPaであり、かつ前記内側部の複素弾性率E*bが2〜15MPaであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記外側部は、前記ベルト層の外端をタイヤ軸方向外側に越えて、前記カーカスに沿ってタイヤ半径方向内側にのび、前記外側部のタイヤ軸方向の外端は、ビードベースラインからのタイヤ半径方向の高さが、タイヤ断面高さの0.6〜0.9倍である請求項1に記載の空気入りタイヤである。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記内側部は、タイヤ軸方向の幅が、トレッド接地幅の0.4〜1.1倍である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤである。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、前記内側部は、前記複素弾性率E*bがそれぞれ異なる複数の分割片がタイヤ軸方向に並んで形成される請求項1乃至3の何れかに記載の空気入りタイヤである。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、前記分割片は、タイヤ赤道に近いものほど、前記複素弾性率E*bが小さい請求項4に記載の空気入りタイヤである。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、前記分割片は、タイヤ赤道に近いものほど、前記複素弾性率E*bが大きい請求項4に記載の空気入りタイヤである。
【0013】
ここで、前記トレッド接地幅は、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷である正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときのトレッド部の接地端間のタイヤ軸方向の距離とする。また、タイヤの各部の寸法等は、特に断りがない場合、前記正規状態での値とする。
【0014】
また、前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
【0015】
さらに「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【0016】
また、本明細書において、損失正接及び複素弾性率は、JIS−K6394の規定に準じ、次に示される条件で(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて測定した値である。
初期歪:10%
振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:30°C
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気入りタイヤは、トレッドゴムが、トレッド部の外面をなすキャップ部と、該キャップ部のタイヤ半径方向内方に配され、かつ損失正接tanδが0.03〜0.10のゴム材からなるベース部とを含む。このようなベース部は、その全幅に亘って、損失正接tanδが小さく設定されるため、走行時の発熱を抑制してタイヤの損傷等を防ぎうるとともに、エネルギーロスを抑え転がり抵抗を小さくしうる。
【0018】
さらに、ベース部は、タイヤ軸方向の最も外側に配され、かつ、少なくともベルト層のタイヤ軸方向の外端を覆う一対の外側部と、この外側部の間をのびる内側部とを含み、外側部の複素弾性率E*aが20MPa〜50MPa、かつ内側部の複素弾性率E*bが2MPa〜15MPaに設定される。
【0019】
このように、外側部は、その複素弾性率E*aが20MPa〜50MPaと大きく設定されるため、トレッドショルダー部のタイヤ半径方向内方の剛性を高め、主として接地荷重を受ける旋回時において、大きなコーナリングフォースを発揮させて操縦安定性を向上しうる。しかも、外側部は、ベルト層のタイヤ軸方向の外端を覆うため、該外端での歪みを減じて、ベルト層の損傷を抑制しうる。また、内側部は、複素弾性率E*bが2MPa〜15MPaと小さく設定されるため、主として接地荷重を受ける直進走行時において、路面からの入力を吸収し、乗り心地を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の空気入りタイヤを示す断面図である。
図2図1のトレッド部の部分拡大図である。
図3】(a)は外側部がバットレス部で終端する空気入りタイヤの無負荷状態の断面図、(b)は(a)の空気入りタイヤに荷重が作用した状態を示す部分断面図である。
図4】(a)は本実施形態の空気入りタイヤの無負荷状態の断面図、(b)は(a)の空気入りタイヤに大きな荷重がかかった状態を示す断面図である。
図5】本発明の他の実施形態の空気入りタイヤを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7とを具え、乗用車用のラジアルタイヤとして構成されている。
【0022】
前記カーカス6は、少なくとも1枚以上、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aにより構成される。このカーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aからのびてビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含む。また、本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびかつ硬質ゴムからなるビードエーペックス8が配され、ビード部4が適宜補強される。
【0023】
また、カーカスプライ6Aは、タイヤ赤道Cに対して例えば80度〜90度の角度で配列されたカーカスコードを有する。このカーカスコードとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどの有機繊維コードが好適に採用される。
【0024】
前記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道Cに対して例えば10度〜40度の小角度で傾けて配列した少なくとも2枚、本実施形態ではタイヤ半径方向に内、外2枚のベルトプライ7A、7Bを、ベルトコードが互いに交差する向きに重ね合わせて構成される。本実施形態のベルトコードには、スチールコードが採用されるが、アラミド、レーヨン等の高弾性の有機繊維コードも必要に応じて用いることができる。また、ベルト層7の外端7tを含む端部とカーカス6との間には、該ベルト層7のタイヤ軸方向の外端7tにおける応力集中を緩和する断面略三角形状のクッションゴム9が配されている。なお、本実施形態におけるベルト層7の外端7tは、幅広の内のベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の外端となる。
【0025】
ベルト層7のタイヤ半径方向の外側には、トレッドゴム2Gが配される。本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッドゴム2Gが、サイドウォール部3のタイヤ半径方向の外側部分であるバットレス部10において、サイドウォールゴム3Gに覆われるSOT(Sidewall Over Tread)構造が採用される。
【0026】
また、トレッドゴム2Gは、トレッド部2の外面をなしてトレッド幅方向にのびるキャップ部11と、該キャップ部11のタイヤ半径方向内方に配されてトレッド幅方向にのびるベース部12とを含んで構成される。
【0027】
本実施形態のキャップ部11は、ベルト層7の外端7tを越えてタイヤ軸方向外側へのびる。図2に拡大して示されるように、このキャップ部11のタイヤ軸方向の外端11tは先細状をなし、サイドウォールゴム3Gのタイヤ半径方向の外端3Gtよりもタイヤ半径方向の内側に位置して、該サイドウォールゴム3Gに接続される。このようなキャップ部11は、路面と直接接触するため、例えば、損失正接tanδが0.10〜0.30、複素弾性率E*が4MPa〜12MPaに設定されるのが望ましい。これにより、耐摩耗性能及びグリップ性能が効果的に発揮される。なお、本実施形態のキャップ部11は、1種の配合ゴムから形成されているが、異なる配合を組み合わせて構成されても良い。
【0028】
前記ベース部12は、ベルト層7とキャップ部11との間に配され、損失正接tanδが0.03〜0.10に設定された発熱及びエネルギーロスが小さいゴム材からなる。また、ベース部12は、タイヤ軸方向の最も外側に配され、かつ少なくともベルト層7の外端7tを覆う一対の外側部12Aと、この外側部12A、12Aの間をのびる内側部12Bとから構成される。
【0029】
本実施形態の外側部12Aは、ベルト層7の外端7tよりもタイヤ赤道C側に位置するタイヤ軸方向の内端12Aiと、前記ベルト層7の外端7tをタイヤ軸方向外側に越え、かつカーカス6に沿ってタイヤ半径方向内側にのびて終端するタイヤ軸方向の外端12Atとを有する。この外側部12Aは、ベルト層7の外側ではほぼ一定の厚さをなし、かつ、そこから前記外端12Atに向かって先細状で形成される。そして、外端12Atは、キャップ部11の外端11tよりもタイヤ半径方向の内側の位置で、サイドウォールゴム3Gに接続されている。さらに、外側部12Aは、複素弾性率E*aが20MPa〜50MPaに設定された高弾性のゴム材からなる。
【0030】
前記内側部12Bは、ほぼ一定の厚さでトレッド幅方向にのび、そのタイヤ軸方向の外端12Btが、外側部12Aの内端12Aiに接続される。また、内側部12Bは、本実施形態では1種の配合ゴムからなるとともに、その複素弾性率E*bが2MPa〜15MPaの低弾性のゴム材からなる。
【0031】
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、ベース部12が、その全幅に亘って、損失正接tanδが0.03〜0.10と小さく設定されるため、走行時のトレッド部内方での発熱を抑制して損傷等を防ぐとともに、エネルギーロスを抑えて転がり抵抗性能を向上しうる。ここで、ベース部12の損失正接tanδが0.10を越えると、発熱が大きくなる他、転がり抵抗が増大するおそれがある。なお、ベース部12の損失正接tanδは、小さければ小さいほど好ましいが、0.03未満とするには技術的に限界がある。
【0032】
なお、前記ベース部12において、外側部12Aの損失正接tanδAと、内側部12Bの損失正接tanδBとは同一でも良いし、また異ならせてもよいことは言うまでもない。
【0033】
また、ベース部12の外側部12Aは、その複素弾性率E*aが20MPa〜50MPaと大きく設定されるため、主として接地荷重を受ける旋回時において、大きなコーナリングパワーを発生させて操縦安定性を向上できる。しかも、外側部12Aは、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端7tを覆うため、該外端7tでの歪みを減じて損傷を抑制しうる。
【0034】
ここで、外側部12Aの複素弾性率E*aが20MPa未満の場合、旋回時において、大きなコーナリングパワーを十分に発生させることができないおそれがある。逆に、複素弾性率E*aが50MPaを越えると、外側部12Aの剛性が過度に高まるため、乗り心地を損ねるおそれがある。このような観点より、外側部12Aの複素弾性率E*aは、好ましくは25MPa以上、さらに好ましくは30MPa以上が望ましく、また、好ましくは45MPa以下、さらに好ましくは40MPa以下が望ましい。
【0035】
なお、トレッド部2のショルダー側には、旋回時に大きな荷重が作用するため、外側部12Aの複素弾性率E*aは、キャップ部11の複素弾性率E*と関連付けて定められるのが望ましい。具体的には、外側部12Aの複素弾性率がE*aとキャップ部11の複素弾性率E*との比E*a/E*は、好ましくは1.6以上、より好ましくは4.0以上であり、また、好ましくは12.5以下、より好ましくは10.0以下である。前記比E*a/E*が1.6未満になると、キャップ部11の複素弾性率E*との差が小さくなり、操縦安定性を十分に向上できないおそれがある。逆に、比E*a/E*が12.5を超えると、外側部12Aとキャップ部11との界面に著しい歪みが生じ、境界剥離を誘発しやすいという不具合がある。
【0036】
一方、内側部12Bは、複素弾性率E*bが2MPa〜15MPaと小さく設定されている。内側部12Bは、直進走行時に主な接地荷重を受けるため、この内側部12BのE*bを上記範囲に限定することにより、路面からの衝撃力を吸収し、乗り心地を向上させる。ここで、内側部12Bの複素弾性率E*bが2MPa未満であると、内側部12Bの剛性が過度に低下し、転がり抵抗性能が低下するおそれがある。逆に、内側部12Bの複素弾性率E*bが15MPaを越えると、衝撃力の吸収効果が得られない。このような観点より、内側部12Bの複素弾性率E*bは、好ましくは2MPa以上、さらに好ましくは4MPa以上であり、また、好ましくは15MPa以下、さらに好ましくは12MPa以下である。
【0037】
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ベース部12の損失正接tanδ、外側部12Aの複素弾性率E*a、及び、内側部12の複素弾性率E*bが、上記範囲に限定されるため、転がり抵抗性能を向上させつつ、操縦安定性と乗り心地との両立を高いレベルで実現することができる。
【0038】
また、内側部12Bの複素弾性率E*bも、キャップ部11の複素弾性率E*と関連づけて規制することができる。内側部12Bの複素弾性率E*bとキャップ部11の複素弾性率E*との比E*b/E*は、好ましくは0.17以上、より好ましくは0.33以上であり、また、好ましくは3.75以下、より好ましくは1.0以下である。前記比E*b/E*が0.17未満になると、旋回時におけるコーナリングフォースが過度に低下する傾向がある。逆に、比E*b/E*が3.75を超えると、十分な衝撃吸収効果を得ることができないおそれがある。
【0039】
本実施形態の外側部12Aは、厚さを減じながらカーカス6の外面に沿ってサイドウォール部3の比較的内方までのびている。このため、外側部12Aは、バットレス部10を広範囲に補強できる。なお、外側部12Aのタイヤ半径方向の外端12Atは、ビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の高さH2が、タイヤ断面高さH1に対して小さすぎると、サイドウォール部3の剛性を過度に高めて、乗り心地を損ねるおそれがあり、逆に、タイヤ断面高さH1に対して大きすぎても、バットレス部10やサイドウォール部3を十分に補強できず、上記のような作用を十分に発揮できないおそれがある。このような観点より、外側部12Aのタイヤ半径方向の外端12Atの高さH2は、好ましくは、タイヤ断面高さH1の0.6倍以上、さらに好ましくは0.7倍以上であり、また、好ましくは0.9倍以下、さらに好ましくは0.8倍以下である。
【0040】
図3(a)、(b)には、外側部12Aの外端12Atの前記高さH2(図2に示す)を、タイヤ断面高さH1の0.9倍とした空気入りタイヤの無負荷状態、及び荷重が作用した状態を示す断面図が示される。このような空気入りタイヤに荷重が作用すると、剛性が比較的小さいバットレス部10近傍が、局部的に変形し、それに伴いカーカスコードにピンチカットが生じやすい。これに対し、外端12Atの高さH2(図2に示す)を、例えば、タイヤ断面高さH1の0.6倍とした空気入りタイヤでは、図4(a)、(b)に示されるように、バットレス部10近傍での局部的な変形が抑制され、該バットレス部10、サイドウォール部3及びビード部4が全体で荷重をバランス良く支持することができる。従って、本実施形態の空気入りタイヤ1は、ピンチカット等の損傷や、トレッド面が平らに変形するフラットスポットを抑制しうるとともに、乗り心地及び転がり抵抗性能をさらに向上しうる。
【0041】
さらに、外側部12Aにより、バットレス部10からサイドウォール部3にかけて広範囲に補強されるので、バットレス部10やサイドウォール部3等のゴム厚さを小さくして、タイヤ質量の軽量化を図ることもできる。また、空気入りタイヤ1が横置き状態で積重ねて(横積みして)保管されると、バットレス部10やサイドウォール部3がタイヤ軸方向内側に屈曲した変形が残り易いが、外側部12Aをサイドウォール部3内方へとのばすことにより、このような形状変形をも抑制しうる。
【0042】
図2に示されるように、前記内側部12Bの外端12Bt、12Bt間のタイヤ軸方向の幅W2については、適宜設定できる。なお、幅W2が小さすぎると、直進走行時において、路面からの入力される衝撃を十分に吸収できないおそれがある。逆に、幅W2が大きすぎると、外側部12Aの占める部分が小さくなり、大きなコーナリングパワーを発生させることができないおそれがある。このような観点より、幅W2は、好ましくは、トレッド接地幅W1の0.4倍以上、さらに好ましくは0.6倍以上であり、また、好ましくは1.1倍以下、さらに好ましくは0.9倍以下である。なお、本実施形態では、内側部12Bの外端12Btの位置は、タイヤ赤道Cについて対称に設けられているが、タイヤの装着位置などに応じて、非対称の位置に設けることもできる。
【0043】
さらに、ベース部12の厚さT2についても、適宜設定できる。なお、厚さT2が小さすぎると、上記作用を十分に発揮できないおそれがある。逆に、厚さT2が大きすぎても、摩耗中期にトレッド部の外面に露出して接地性を損ねるおそれがある。このような観点より、ベース部12の厚さT2は、好ましくは、トレッドゴム2Gの全厚さT1の0.1倍以上、さらに好ましくは0.2倍以上であり、また、好ましくは0.5倍以下、さらに好ましくは0.3倍以下である。なお、トレッドゴム2Gとベルト層7との間には、小厚さのアンダートレッドゴムや、バンド層などが配されても良いのは言うまでもない。
【0044】
図5には、本発明の他の実施形態の空気入りタイヤ1が示される。
この実施形態の内側部12Bは、複素弾性率E*がそれぞれ異なる複数の分割片13がタイヤ軸方向に並んで形成される。本実施形態の内側部12Bは、タイヤ軸方向の両側に配される一対の外の分割片13Aと、この外の分割片13A、13Aの間に配される一つの内の分割片13B、13Bとを含む合計2種類の分割片13から構成される。
【0045】
また、本実施形態の分割片13は、タイヤ赤道Cに近いものほど、複素弾性率E*が小さく設定される。具体的には、内の分割片13Bの複素弾性率E*b2が、外の分割片13Aの複素弾性率E*b1よりも小さく設定される。即ち、ベース部12の複素弾性率E*は、内の分割片13B<外の分割片13A<外側部12Aの関係を満たす。
【0046】
このような内側部12Bでは、外の分割片13Aよりも剛性の小さい内の分割片13Bが、直進走行時の接地荷重を主に受けて、路面からの入力を効果的に吸収しうる。また、ベース部12は、タイヤ赤道Cからタイヤ軸方向の外側へ向かって、その剛性が滑らかに大きくなるため、例えば、直進走行から旋回走行への過渡時などコーナリングフォースの発生がスリップ角に応じてリニアに変化し、操縦安定性が大幅に向上する。
【0047】
各分割片13A、13Bの複素弾性率E*については、内側部12Bの複素弾性率E*bの上記範囲内であれば適宜設定できるが、外の分割片13Aの複素弾性率E*b1が小さすぎると、外側部12Aとの剛性変化が過大となり、直進時から旋回時への移行時の操縦フィーリングが悪化するおそれがある。このような観点より、外の分割片13Aの複素弾性率E*b1は、好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上が望ましい。同様に、内の分割片13Bの複素弾性率E*b2は、好ましくは2MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上が望ましい。
【0048】
さらに、内の分割片13Bのタイヤ軸方向の幅W3についても、適宜設定できるが、小さすぎると、路面からの入力を効果的に吸収できないおそれがある。逆に、大きすぎると、外の分割片13Aの割合が小さくなり、操縦フィーリングが悪化するおそれがある。このような観点より、内の分割片13Bの幅W3は、内側部12Bのタイヤ軸方向の幅W2の好ましくは0.2倍以上、さらに好ましくは0.3倍以上が望ましく、また、好ましくは0.7倍以下、さらに好ましくは0.6倍以下が望ましい。
【0049】
また、内側部12Bは、上記実施形態とは逆に、タイヤ赤道Cに近い分割片13ほど、複素弾性率E*を大きくすることもできる。この場合、ベース部12の複素弾性率E*bは、外の分割片13A<内の分割片13B<外側部12Aの関係を満たす。
【0050】
このような実施形態では、内の分割片13Bが、外の分割片13Aよりも複素弾性率E*が大きいため、旋回時のコーナリングフォースの発生の過渡特性や、レーンチェンジ時の安定性を向上させる点で望ましい。
【0051】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0052】
図1の基本構造を有し、かつ表1の仕様としたベース部を有する空気入りタイヤが製造され、それらの性能がテストされた。なお、共通仕様は以下のとおりである。
タイヤサイズ:225/55R17
リムサイズ:17×7.5J
トレッド接地幅W1:174mm
タイヤ断面高さH1:122mm
キャップ部の損失正接tanδ:0.20
キャップ部の複素弾性率E*:6.6MPa
タイヤ赤道でのトレッドゴムの全厚さT1:10.0mm
タイヤ赤道でのベース部の厚さT2:2.0mm
【0053】
また、実施例5の外側部の配合A及び内側部の配合Bについては、表2に示した。詳細は次の通りである。
天然ゴム(NR):RSS#3
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のVCR412
カーボン(N351):東海カーボン(株)製のシーストNH
カーボン(FEF):三菱化学(株)製のダイヤブラックE(FEF、N2SA:41m2/g、DBP吸油量:115ml/100g)
ステアリン酸:日本油脂(株)製の椿
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
老化防止材:住友化学工業(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
不溶性硫黄:四国化学工業(株)製のミュークロンOT
なお、他の実施例については、上記薬品の割合を適宜増減させることにより、損失正接tanδ及び複素弾性率Eの異なる外側部及び内側部を得ることができる。
テストの方法は次の通りである。
【0054】
<転がり抵抗性能>
転がり抵抗試験機を用い、下記の条件での転がり抵抗を測定した。評価は、比較例1を100とする指数で評価した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく良好である。
内圧:230kPa
荷重:4.5kN
速度:80km/h
【0055】
<タイヤ質量>
タイヤ1本当たりの質量を測定し、比較例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど軽量である。
【0056】
<乗り心地>
供試タイヤを上記リムにリム組みし、内圧230kPaを充填して、排気量2500ccの国産FR自動車の4輪に装着し、ドライアスファルト路面の段差路、ベルジャン路(石畳の路面)、ビッツマン路(小石を敷き詰めた路面)を走行させた。そして、ドライバーの官能により、ゴツゴツ感、突き上げ及びダンピングを総合評価した。評価は、比較例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0057】
<耐ピンチカット性能>
試験路上の側方に設けた高さ110mm、巾100mm、長さ1500mmの鉄製突起に対して、各試供タイヤが上記条件で装着された上記車両を、前記突起の長さ方向に対して15°の角度で進入させ該突起を乗り越す突起乗越しテストが行われた。このとき、進入速度を15km/hから1km/hのステップで逐次上昇させ、パンクが発生したときの速度を、比較例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0058】
<耐フラットスポット性能>
各試供タイヤを上記リムにリム組みし、内圧200kPaを充填して、直径1.7mのドラム試験機上を縦荷重4.5kNかつ速度120km/hで2時間走行させた後に、荷重6.4kNを負荷した状態で平面に接地させ自然冷却させた。しかる後、上記条件で再度走行させ、フォースバリエーション(振動)が収まるまでの時間が測定された。評価は、比較例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0059】
<横積み保管性能>
各供試タイヤをリムに装着せずに地面に横向き(タイヤ回転軸を垂直として)10本横積みした状態で14日間保管をした。しかる後、最も下側の供試タイヤのバットレス部の変形残りを観察し、比較例1の変形量の逆数を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0060】
<操縦安定性>
各供試タイヤを上記リムに上記条件でリム組みしかつ上記車両に装着して、ドライアスファルト路面のテストコースを実車走行し、直進性、旋回時の安定性、制動時の車両の挙動などを総合的にプロドライバーによる官能評価によって評価した。結果は、実施例1の評点を100とする指数で表示している。数値が大きいほど良好である。
テスト結果などを表1及び表2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
テストの結果、実施例の空気入りタイヤは、乗り心地を維持しつつ、転がり抵抗性能を向上しうることが確認できた。
【符号の説明】
【0064】
2 トレッド部
2G トレッドゴム
3 サイドウォール部
6 カーカス
7 ベルト層
11 キャップ部
12 ベース部
12A 外側部
12B 内側部
図1
図2
図3
図4
図5