特開2015-209283(P2015-209283A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-209283(P2015-209283A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】ウインチドラム
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/30 20060101AFI20151027BHJP
【FI】
   B66D1/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-89951(P2014-89951)
(22)【出願日】2014年4月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慎二
(72)【発明者】
【氏名】奥村 高好
(57)【要約】
【課題】 高負荷でウインチを使用する場合でもキッカーの摩耗を抑えることができるウインチドラムを提供する。
【解決手段】 ロープを巻き取る巻胴33の両側にフランジ34,35をそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラム31において、前記キッカー36を、フランジ内周側に設けられた断面形状が三角形状の内周側キッカー36aと、該内周側キッカーの外周側に設けられた断面形状が台形状の外周側キッカー36bとで形成する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、前記キッカーの断面形状を台形状に形成したことを特徴とするウインチドラム。
【請求項2】
ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、前記巻胴に巻回されるロープを2層目から3層目にガイドする部分を有する一方のフランジの内面に設けられる前記キッカーの断面形状を台形状に形成したことを特徴とするウインチドラム。
【請求項3】
ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、前記キッカーは、フランジ内周側に設けられた断面形状が三角形状の内周側キッカーと、該内周側キッカーの外周側に設けられた断面形状が台形状の外周側キッカーとで形成されていることを特徴とするウインチドラム。
【請求項4】
前記断面形状が台形状のキッカーにおけるフランジ内面に対するロープ巻入れ側の斜面角度とロープ巻出し側の斜面角度とが異なる角度に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のウインチドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインチドラムに関し、詳しくは、クレーンや杭打機、アースドリルなどの建設機械に使用されるロープ巻取用のウインチドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種建設機械に使用されているロープ巻取用のウインチドラムは、一般に、ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有している。ロープは、両側がフランジに挟まれた状態で巻胴の周囲に多層巻状態で巻き取られる。また、巻胴の外周面には、第1層のロープを整列させるためのロープ溝が螺旋状に設けられるとともに、各フランジの内面には、巻胴の外周面からフランジの外周端までにわたって断面が略三角形状キッカー(ロープキック)が内側に突出して設けられており、このキッカーによって2層目以降のロープの巻方向を切り替えるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−23995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の前記キッカーは、断面が略三角形状に形成されているため、ロープの巻出し、巻入れを繰り返している間にキッカーの頂点部(最高部)が次第に摩耗してしまい、頂点が低くなってしまうため、ロープを所定の位置にガイドすることができなくなるおそれがある。特に、高負荷(ハイラインプル)でウインチを使用するアースドリルでは、キッカーの摩耗が顕著である。
【0005】
そこで本発明は、高負荷でウインチを使用する場合でもキッカーの摩耗を抑えてロープのガイド機能を長期間にわたって維持することができる構造を備えたウインチドラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のウインチドラムの第1の構成は、ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、前記キッカーの断面形状を台形状に形成したことを特徴としている。
【0007】
また、本発明のウインチドラムの第2の構成は、ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、前記巻胴に巻回されるロープを2層目から3層目にガイドする部分を有する一方のフランジの内面に設けられる前記キッカーの断面形状を台形状に形成したことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明のウインチドラムの第3の構成は、ロープを巻き取る巻胴の両側にフランジをそれぞれ有するとともに、各フランジの内面に2層目以降のロープの巻方向をガイドするためのキッカーをそれぞれ有するウインチドラムにおいて、前記キッカーは、フランジ内周側に設けられた断面形状が三角形状の内周側キッカーと、該内周側キッカーの外周側に設けられた断面形状が台形状の外周側キッカーとで形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、前記第1の構成乃至第3の構成において、前記断面形状が台形状のキッカーにおけるフランジ内面に対するロープ巻入れ側の斜面角度とロープ巻出し側の斜面角度とが異なる角度に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウインチドラムによれば、キッカーの断面形状を台形状にしているので、断面が三角形状のキッカーに比べてキッカーの最高部の摩耗量を少なくすることができる。したがって、高負荷でウインチを使用するアースドリルにおいても、キッカーの最高部の高さを長期にわたって維持することができる。また、ロープに負荷がほとんど作用しないフランジ内周側部分のキッカーを断面三角形状とすることにより、内周側のロープを従来と同様に確実に層状に巻回することができる。さらに、フランジ内面に対するロープ巻入れ側の斜面角度とロープ巻出し側の斜面角度と異なる角度、例えば、巻入れ側の傾斜角度を巻出し側より鋭角にすることにより、ロープを巻き出す際にキッカーとロープとの接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のウインチドラムの一形態例を示す正面図である。
図2】同じく断面図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4図3のIV−IV断面図である。
図5】本発明のウインチドラムを適用可能な建設機械の一例を示すアースドリルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、図5は、本発明のウインチドラムを適用可能な建設機械の一例であるアースドリルを示している。このアースドリル11は、走行装置を備えた下部走行体12の上に上部旋回体13を旋回可能に設けたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に装着されたブーム15と、上部旋回体13の後方上部に設けられた折り畳み可能なガントリ16と、上部旋回体13の後端部に設けられたカウンタウエイト17と、上部旋回体13の幅方向中央に搭載された複数のウインチ18a,18b,18cと、上部旋回体13の右側前端部に設けられた運転室19とを備えている。
【0013】
前記ブーム15の前方には、アースドリル用の機器として、複数のアーム21a及びシリンダ21bを介してケリーバ駆動装置21が保持され、ブーム15の上端に設けられたトップシーブブロック22から垂下する主巻ロープ23aには、ケリーバ駆動装置21を貫通したケリーバ24が垂下されており、ケリーバ24の下端には、掘削バケットや拡底バケット25が取り付けられている。さらに、トップシーブブロック22からは補巻ロープ23bが垂下しており、ブーム15の後部側には、ペンダントロープ26を介して起伏ロープ23cが連結されている。
【0014】
前記主巻ロープ23a、補巻ロープ23b及び起伏ロープ23cは、前記ウインチ18a,18b,18cにそれぞれ巻回されており、掘削作業は、ケリーバ駆動装置21によりケリーバ24を介して掘削バケットや拡底バケット25を回転させながら、第1のウインチ18aを操作して主巻ロープ23aにより、ケリーバ24を介して掘削バケットや拡底バケット25を昇降させることで行われる。したがって、主巻ロープ23aには、掘削した土砂を取り込んだ掘削バケットや拡底バケット25を上昇させる際に、大きな荷重が作用し、第1のウインチ18aは、高負荷での使用状態となる。
【0015】
図1乃至図4は、前述のように高負荷で使用されるアースドリルの第1のウインチ18aに用いるウインチドラムとして適した構造を有する本発明のウインチドラムの一形態例を示している。本形態例に示すウインチドラム31は、基本的に従来のウインチドラムと同様に形成されており、外周面に第1層のロープを整列させるためのロープ溝32を螺旋状に設けた巻胴33と、該巻胴33の両側にそれぞれ設けられた一対のフランジ34,35とを有しており、巻胴33の一側には、巻回するロープの端部を固定するロープ固定部33aが設けられるとともに、一方のフランジ34の外面側や巻胴33の内部には、油圧モータなどの駆動源との連結部やブレーキ部などが設けられている。
【0016】
アースドリルの第1のウインチ18aに巻回されるロープの長さは、前記ケリーバ24の昇降に必要な長さだけであることから、通常、ウインチドラム31の巻胴33に3層目まで巻回する長さで十分である。この場合、ロープ固定部33aから巻胴33の外周に引き出されたロープは、従来と同様に、ロープ溝32にガイドされて1層目から2層目へと巻回される。一方、巻胴33のロープ固定部33a側に位置する一方のフランジ34の内面には、2層目のロープを3層目にガイドする部分からフランジ外周にわたる部分に、ロープの巻方向を2層目の方向から3層目の方向に切り替えるためのキッカー36が設けられている。
【0017】
キッカー36は、断面形状が三角形状に形成された内周側キッカー36aと、断面形状が台形状に形成された外周側キッカー36bとをフランジ内外方向に連設した形状を有している。内周側キッカー36aは、巻胴33のロープ溝32に巻回された1層目から2層目のロープが巻回されるまでの範囲に設けられており、外周側キッカー36bは、内周側キッカー36aの外周側の3層目からフランジ外周縁にわたって設けられている。
【0018】
外周側キッカー36bは、フランジ内面部を台形における幅広の下底37aとし、突出端の最高部を上底37bとした形状を有しており、ロープを巻胴33に巻き取る際にロープが接触する側の脚、すなわちロープ巻入れ側斜面37cにおけるフランジ内面に対する斜面角度αは、反対側の脚である巻出し側斜面37dの斜面角度βとは異なる角度、本形態例では、巻出し側斜面37dの斜面角度βより小さな角度で形成されている。外周側キッカー36bの最高部となる上底37bは、内周側キッカー36aの最高部となる頂点37eより高く形成されており、上底37bのフランジ周方向の寸法は、巻胴33の直径及びロープの直径に応じて設定された寸法、例えば100mm程度に設定されている。
【0019】
このように、フランジ34の内面に設けた外周側キッカー36bの断面形状を台形状に形成することにより、ウインチ操作によってロープを巻出したり、巻入れたりする際にロープと外周側キッカー36bとが接触して巻入れ側が摩耗しても、外周側キッカー36bの最高部となる上底部の摩耗の進行を抑えることができる。これにより、外周側キッカー36bにおける最高部の高さを長期にわたって維持することができるので、本来の位置へロープを確実にガイドすることができ、乱巻の発生を防止できる。
【0020】
また、フランジ内周側には、断面三角形状で、最高部である頂点の高さが外周側キッカー36bの上底より低く形成された内周側キッカー36aを設けているので、2層目のロープを巻胴33の周囲に確実に巻回した状態にすることができる。さらに、外周側キッカー36bの台形状における巻入れ側斜面37cの角度αを巻出し側斜面37dの角度βより小さな角度に設定することにより、ロープを巻き出す際にキッカー36とロープとが接触することを防止できる。
【0021】
なお、本発明のウインチドラムは、前記アースドリルに限らず、杭打機やクレーンなど、ウインチを搭載した各種建設機械の各種ウインチに適用可能であり、さらに、単独で使用されるウインチや、ロープ状物を巻き取る各種機器にも適用可能であり、キッカーにおける台形状及び三角形状の各部の寸法や角度は、ウインチの使用目的、ロープの直径、巻胴の直径、巻胴へのロープ巻回数などの条件に応じて適宜に設定することができる。また、前記形態例で示したキッカー36と同様の形状を有するキッカーを両フランジの内面にそれぞれ設けることができ、さらに、キッカーの断面を全て台形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0022】
11…アースドリル、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…ブーム、16…ガントリ、17…カウンタウエイト、18a,18b,18c…ウインチ、19…運転室、21…ケリーバ駆動装置、21a…アーム、21b…シリンダ、22…トップシーブブロック、23a…主巻ロープ、23b…補巻ロープ、23c…起伏ロープ、24…ケリーバ、25…拡底バケット、26…ペンダントロープ、31…ウインチドラム、32…ロープ溝、33…巻胴、33a…ロープ固定部、34,35…フランジ、36…キッカー、36a…内周側キッカー、36b…外周側キッカー、37a…下底、37b…上底、37c…ロープ巻入れ側斜面、37d…巻出し側斜面、37e…頂点
図1
図2
図3
図4
図5