(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-209312(P2015-209312A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】位置決め方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/88 20060101AFI20151027BHJP
B65G 25/08 20060101ALI20151027BHJP
B65G 43/08 20060101ALI20151027BHJP
【FI】
B65G47/88 D
B65G25/08
B65G43/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-92476(P2014-92476)
(22)【出願日】2014年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰嗣
【テーマコード(参考)】
3F017
3F027
3F036
【Fターム(参考)】
3F017EA01
3F017FA03
3F017FB01
3F017FE03
3F017FG01
3F027AA03
3F027CA01
3F027DA02
3F027EA01
3F027EA07
3F036BA02
3F036DA09
3F036DD07
(57)【要約】
【課題】搬送物が高温物体である場合にも、熱影響による搬送物の停止位置のずれ量を矯正して正確に位置決めすることができる方法および装置を提供する。
【解決手段】本発明の搬送物の位置決め方法は、コンベヤ11上をピッチ送りされる搬送物1の側面に形成された凹部4に、位置決め装置12の先端に設けた楔状の位置決めライナ3を係合させる位置決め方法である。位置決めライナ3は角度の大きい楔先端部14と、角度の小さい楔根元部15とを備えた形状とし、先ず楔先端部14で短いストロークで搬送物停止位置の矯正を行ない、次に楔根元部15で大きな矯正力で搬送物の把持を行なう。
【選択図】
図4c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤ上をピッチ送りされる搬送物の側面に形成された凹部に、位置決め装置の先端に設けた楔状の位置決めライナを係合させる搬送物の位置決め方法であって、前記位置決めライナを角度の大きい楔先端部と、角度の小さい楔根元部とを備えた形状とし、先ず楔先端部で短いストロークで搬送物停止位置の矯正を行ない、次に楔根元部で大きな矯正力で搬送物の把持を行なうことを特徴とする搬送物の位置決め方法。
【請求項2】
搬送物がピッチ送りされるコンベヤの側方に、搬送物の側面に形成された凹部に係合する楔状の位置決めライナを進退可能に設けた搬送物の位置決め装置であって、この位置決めライナは、角度の大きい楔先端部と、角度の小さい楔根元部とを備えた2段階の角度を有する楔形状であることを特徴とする搬送物の位置決め装置。
【請求項3】
搬送物の側面の凹部を分割構造のライナで形成し、楔状の位置決めライナは、搬送物を移動して位置決めする必要がある個所には厚い楔、ずれ防止のみでよい個所には薄い楔を使用し、搬送物側のライナの摩耗を低減することを特徴とする請求項2に記載の搬送物の位置決め装置。
【請求項4】
楔形状に形成した平面を利用して、摩耗を生じる楔先端部の搬送物と接する面と直角な面に摩耗限界を溝で刻み、先端楔の交換時期を明確にしたことを特徴とする請求項2に記載の搬送物の位置決め装置。
【請求項5】
コンベヤに対する楔状の位置決めライナの位置を、調整可能としたことを特徴とする請求項2に記載の搬送物の位置決め装置。
【請求項6】
位置決めライナを両ロッドシリンダにより進退可能としたことを特徴とする請求項2に記載の搬送物の位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物の位置矯正量および矯正力を大きく取る事が可能な位置決め方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鋳物製品の自動鋳造ライン等においては、多数の金枠をコンベヤ上に一列に並べてプッシャ装置によりピッチ送りし、所定位置で停止させて金枠に対して必要な作業を行なう。このためには、金枠等の搬送物をコンベヤ上の正確な位置に確実に停止させる必要がある。
【0003】
そこで特許文献1に示すように、搬送物との接触面に円錐型の楔を使用した位置決め装置をコンベヤの側方に配置し、この楔を搬送物の側面に形成されたガイド穴に係合させて搬送物を停止させる位置決め装置が提案されている。
【0004】
しかし特許文献1では、位置決め装置の搬送物との接触面に円錐型の楔を使用しているため、搬送物が高温であるような場合には、稼動開始直後の冷えた金枠と長時間稼動後の温度上昇により熱膨張した金枠の停止位置のずれ量を矯正して位置決めする場合の矯正代が大きく取れない問題点、および停止位置のずれ量を矯正する際に搬送物側のガイド穴との接触面が点当たりとなる事による搬送物側のガイド穴の接触面、および位置決め装置側楔に偏摩耗が発生する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭51−54400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、搬送物が金枠のような高温物体である場合にも、稼動開始直後の冷えた搬送物と長時間稼動後の温度上昇により熱膨張した搬送物の停止位置のずれ量を矯正して正確に位置決めすることができる方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の搬送物の位置決め方法は、コンベヤ上をピッチ送りされる搬送物の側面に形成された凹部に、位置決め装置の先端に設けた楔状の位置決めライナを係合させる搬送物の位置決め方法であって、前記位置決めライナを角度の大きい楔先端部と、角度の小さい楔根元部とを備えた形状とし、先ず楔先端部で短いストロークで搬送物停止位置の矯正を行ない、次に楔根元部で大きな矯正力で搬送物の把持を行なうことを特徴とするものである。
【0008】
また上記の課題を解決するためになされた本発明の搬送物の位置決め装置は、搬送物がピッチ送りされるコンベヤの側方に、搬送物の側面に形成された凹部に係合する楔状の位置決めライナを進退可能に設けた搬送物の位置決め装置であって、この位置決めライナは、角度の大きい楔先端部と、角度の小さい楔根元部とを備えた2段階の角度を有する楔形状であることを特徴とするものである。
【0009】
なお請求項3のように、搬送物の側面の凹部を分割構造のライナで形成し、楔状の位置決めライナは、搬送物を移動して位置決めする必要がある個所には厚い楔、ずれ防止のみでよい個所には薄い楔を使用し、搬送物側のライナの摩耗を低減する構造とすることができる。また請求項4のように、楔形状に形成した平面を利用して、摩耗を生じる楔先端部の搬送物と接する面と直角な面に摩耗限界を溝で刻み、先端楔の交換時期を明確にした構造とすることができる。また請求項5のように、コンベヤに対する楔状の位置決めライナの位置を、調整可能な構造とすることができる。さらに請求項6のように、位置決めライナを両ロッドシリンダにより進退可能とした構造とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の搬送物の位置決め方法及び装置によれば、位置決めライナを角度の大きい楔先端部と、角度の小さい楔根元部とを備えた形状とし、先ず楔先端部で短いストロークで搬送物停止位置の矯正を行ない、次に楔根元部で大きな矯正力で搬送物の把持を行なうことにより、位置決めする搬送物との当たり面を大きく確保して、搬送物側の接触面および位置決め装置側楔の偏摩耗を防止することができるとともに、搬送物の位置矯正力と位置矯正量を大きく取る事が出来る。
【0011】
また請求項3のように使用箇所によって厚い楔と薄い楔を使い分ければ、搬送物側のライナの摩耗を低減する構造とすることができる。また請求項4のように楔先端に摩耗限界を溝で刻む事により、先端楔の交換時期を明確に管理できる。さらに請求項5のように、コンベヤに対する楔状の位置決めライナの位置を、調整可能とした構造とすれば、位置決め精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1a】厚い楔を用いた先端を有した位置決め装置の部分断面正面図である。
【
図1b】薄い楔を用いた先端を有した位置決め装置の部分断面正面図である。
【
図2a】
図1a、bにおけるA−A矢視図であって、搬送物の位置がずれた状態で位置決め装置が開いている状態を示す部分断面平面図である。
【
図2b】
図1a、bにおけるA−A矢視図であって、搬送物の位置が正しく矯正された状態で位置決め装置が閉じている状態を示す部分断面平面図である。
【
図3】
図1a、bにおけるB−B矢視図であって、搬送物の側面図である。
【
図4a】搬送物の位置がずれた状態で位置決め装置が開いている状態を示す部分断面の平面詳細図である。
【
図4b】搬送物の位置を矯正途中で位置決め装置が閉じ途中の状態を示す部分断面の平面詳細図である。
【
図4c】搬送物の位置を矯正途中で位置決め装置が閉じ途中の状態を示す部分断面の平面詳細図である。
【
図4d】搬送物の位置を矯正完了し位置決め装置が閉じた状態を示す部分断面の平面詳細図である。
【
図6】ローラコンベヤ上の搬送物を示す概念的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図6に示すように、搬送物1は、ローラコンベヤ等のコンベヤ11上を、プッシャ装置20と図示しないクッション装置で複数個挟み込まれ、プッシャ装置20にてピッチ送りされ、クッション装置にて、慣性力を吸収して所定の位置に停止する。本実施形態では搬送物1は鋳造用の金枠であり、温度変化による長さの変化が生じる場合があるため、搬送物1の停止位置は熱の影響を受けて微妙に変化する。このように変化する搬送物1の停止位置を正確に矯正するために、楔状の位置決めライナ3を備えた本発明の位置決め装置12が用いられる。
【0014】
図2、
図3に示すように、位置の矯正および位置決めがなされる搬送物1は、その搬送方向の側面2となる1面、又は対向する2面の側面2に、楔形状の位置決めライナ3が差し込まれる形状の凹部4を有する。この凹部4は、摩耗時に交換できる様に分割構造のライナ5となっている。
【0015】
楔形状の位置決めライナ3は、シリンダ6の正面7及び背面8の両側に配置される図示しないブッシュを貫通したロッド9の正面7側に取り付けられ、
図1a、bに示すように押え10にて、回り止めを施されている。
【0016】
図2a、bに示す様に、位置決め装置を構成するシリンダ6は、コンベヤ11に取付けられたブラケット18に両側から押しボルト19で挟み込み、搬送物1の進行方向に対し、取り付け位置を調整出来る構造としている。
【0017】
楔形状の位置決めライナ3は、位置決めする搬送物1との当たり面13を大きく確保しつつ、短いストロークで位置決めする搬送物の位置矯正力と位置矯正量を共に大きく取るため、楔先端部14の角度(
図4bに示す角度α)を大きく取り、楔根元部15の角度(
図4cに示す角度β)を小さくした、異なる2段階の角度を有する形状としている。図示の実施形態ではαは略90度、βは略50度であるがこれに限定されるものではなく、αは70〜120度、βは60〜30度の範囲で適宜設定することができる。
【0018】
楔形状の位置決めライナ3は、搬送物1を移動して位置決めする必要がある個所には厚い楔(
図1aのa寸法)、落下防止等、ずれ防止のみでよい個所には、薄い楔(
図1bのb寸法)を使用して、搬送物側のライナ5の摩耗を低減することが好ましい。
【0019】
図4に、本発明による搬送物1の位置の矯正、位置決め工程を示す。
プッシャ装置20でピッチ送りされた搬送物1が位置決め装置12の前で停止する。その停止位置は、熱影響にて、ずれた位置となることがある。
【0020】
位置決め装置12のシリンダ6のロッド9が搬送物1の凹部4に向かって前進すると、
図4bに示すように、まず楔形状の位置決めライナ3の角度が大きく(
図4bの角度α)、位置矯正量が大きい楔先端部14が凹部4のライナ5に当たり、搬送物1の進行方向に位置を矯正し始める。このため位置を矯正できる範囲を大きく取ることができ、搬送物1の停止位置が熱影響によりずれた場合にも、位置の矯正が可能である。
【0021】
隣接する搬送物1同士の図示しない隙間を詰めながら位置を矯正する搬送物1の位置決めの終わりには、大きな矯正力が必要なため、
図4cに示すように、大きな矯正力を発生する角度が小さい(
図4cの角度β)楔根元部15がライナ5に当たり、搬送物1の位置を矯正する。位置決め装置12の閉じ端では、角度が小さい楔根元部15を用いて、大きな位置決め力で、搬送物1を把持する(
図4d)(
図2b)。このため、ライナ5の内側面には楔根元部15と等しい角度βを付けておく。
【0022】
このように本発明によれば、搬送物1の位置矯正力と位置矯正量を大きく取る事が出来るので、搬送物が金枠のような高温物体である場合にも、熱膨張した搬送物の停止位置のずれ量を矯正して正確に位置決めすることができる。
【0023】
なお本実施形態では、
図5に示すように、摩耗を生じる位置決めライナ3先端の搬送物1と接する面と直角な面16に、摩耗限界(
図5のγ寸法)を溝17で刻み、位置決めライナ3の交換時期を明確にした。これにより位置決め精度の低下を防止することができる。また前記したように、押しボルト19を調整して位置決め装置12側の位置を修正することもできる。
【符号の説明】
【0024】
1 搬送物
2 側面
3 位置決めライナ
4 凹部
5 ライナ
6 シリンダ
7 正面
8 背面
9 ロッド
10 押え
11 コンベヤ
12 位置決め装置
13 当たり面
14 楔先端部
15 楔根元部
16 直角な面
17 溝
18 ブラケット
19 押しボルト
20 プッシャ装置