【解決手段】熔解部、清澄部、撹拌部、成形部を少なくとも構成として有し、各構成間を接続して熔融ガラスを流通させる流通管104を有し、流通管104には少なくとも一端に、通電加熱して熔融ガラスを加熱するフランジ104aが設けられる、ガラス板の製造装置であって、フランジ104aに隣接する流通管の一部104cと、流通管104に隣接して延在するフランジ104aの一部とが、同一の熱膨張率からなる材料で構成されるガラス板の製造装置。
熔解部、清澄部、撹拌部、成形部を少なくとも構成として有し、前記各構成間を接続して熔融ガラスを流通させる流通管を有し、前記流通管には少なくとも一端に、通電加熱して前記熔融ガラスを加熱するフランジが設けられる、ガラス板の製造装置であって、
前記フランジに隣接する流通管の一部と、前記流通管に隣接して延在するフランジの一部とが、同一の熱膨張率からなる材料で構成される、
ことを特徴とするガラス板の製造装置。
【背景技術】
【0002】
ガラス板を製造する際、ガラス原料を熔解炉で熔融して熔融ガラスをつくり、この後熔融ガラスを清澄管で清澄し、清澄後の熔融ガラスを、例えば成形体を用いてシートガラスに成形し、ガラス板を製造する。熔解炉でつくられた熔融ガラスは移送管を通して清澄管に送られる。
【0003】
特許文献1には、熔解炉、移送管及び清澄管のそれぞれの当接する端部を通過し、端部の間にある空隙に進入する熔融ガラスを、端部が冷却固化することにより熔解炉と移送管と清澄管とを熔融ガラスの流路として形成することを特徴とするガラス板の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、白金もしくは白金合金に金属酸化物を分散させてなる強化白金製の中空管の外周に白金または白金合金製のフランジを気密接合する方法が記載されている。
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載されたガラス板の製造方法では、熔解炉と移送管と清澄管とを接続し、さらに、清澄管以降、熔融ガラスからシートガラスをつくるための成形装置までの熔融ガラスの流路を確保した後、ガラス板の製造が開始される。このとき、白金又は白金合金で構成された通電加熱に用いるフランジ部分と強化白金又は強化白金合金で構成された熔融ガラスが流れる管部分が接合されて構成された移送管は、フランジ部分の通電加熱により千数百度に昇温される。フランジ部分と管部分とが構成された材質の違いによって熱膨張が異なるため、フランジ部分と管部分の接合面における引っ張り強度差による応力集中により破損を生じる場合がある。この破損は、移送管からの熔融ガラスの漏れ、及び破損した移送管からの異物混入により、製品の歩留り低下等の原因となる。
【0005】
図6は、上記特許文献1における移送管がフランジ204a及び管204bからなり、角部Iを有する移送管204の形状の一例を示す図(
図6(a))、及び、
図6(a)における部分Aの拡大図(
図6(b))である。
移送管204は、フランジ204aの通電加熱により千数百度に昇温されるので、フランジ204a及びフランジ204aを介して熱の伝播を受ける管204bは共に熱膨張する。ここで、フランジ204a及び管204bは、異なる2種の材料から構成されており、引っ張り強度が異なるため、フランジ204a及び管204bとの接合面における角部Iで応力集中が生じる。角部Iとは、移送管204のフランジ204a及び管204bとの接合面が角度を有する部分であり、角部Iにおいては、その形状により応力集中を緩和することができないため、フランジ204a及び管204bの接合面において破損を生じる。この破損は、移送管204からの熔融ガラスMGの漏れ、及び破損した移送管204を介した熔融ガラスへの異物混入の原因となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、ガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法の実施の形態について説明する。
【0015】
(ガラス板の製造装置)
図1は、本実施形態における熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行うガラス板の製造装置の一例を模式的に示す図である。当該装置は、
図1に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解炉101と、清澄管102と、攪拌槽103と、流通管104、105、106と、を有する。
図1に示す熔解炉101では、ガラス原料の投入がバケット101dを用いて行われる。熔解炉101は熔解部として機能する。清澄管102では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスMGの清澄が行われる。清澄管102は、清澄部として機能する。さらに、攪拌槽103では、スターラ103aによって熔融ガラスMGが攪拌されて均質化される。攪拌槽103は、攪拌部として機能する。成形装置200では、成形体210を用いたオーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスMGからガラス板SGが成形される。成形装置200は、成形部として機能する。
なお、
図1では、流通管104は熔解炉101と清澄管102とを接続する移送管であるが、流通管104は、熔解炉101に接続された処理槽と清澄管102を接続する移送管であってもよい。処理槽として、例えば、酸素ガスを熔融ガラスMGに供給するとともに、熔融ガラスMGの温度を低下させて清澄剤に上記酸素ガスの一部を吸収させる処理槽が挙げられる。
【0016】
(流通管)
次に、本発明の特徴である、流通管104について詳述する。なお、流通管105及び106については、後述する。
図3は、本発明にかかる流通管104の形状の一例を示す図である。
【0017】
流通管104は、本発明のガラス板の製造装置において使用される。流通管104は、熔解炉101及び清澄管102を接続する。流通管104は、熔解炉101においてガラス原料を熔解してつくられた熔融ガラスMGを、清澄管102へ搬送する役目を果たす。流通管104には、例えば、1600℃以上の熔融ガラスMGが流れる。このような高温の熔融ガラスMGを流通管104に流すためには、熔融ガラスMGが流れる流通管104を加熱するが、加熱した流通管104は熔融ガラスMGの流れ方向(軸方向)に膨張する。流通管104は清澄管102との間で固定されているため、流通管104は、清澄管102から圧縮応力を受け、この応力を受けた流通管104が歪み、湾曲すると、破損の原因となる。
【0018】
流通管104は、フランジ104a、及び、フランジ104aから延びる管の一部として、管部104cを有する。フランジ104a、管部104cは、白金又は白金合金から選ばれた一種の材料から構成される。ここで、管部104cは、フランジ104aとの接合面を有する流通管104の一部である。流通管104の一端又は両端の外周面にはフランジ104aが溶接され、流通管104とフランジ104aとが溶接された部分である接合面、つまり、従来の移送管204における角部I(
図6(b))に相当する部分がある。また、フランジ104aの周囲には、通電加熱用の電極(図示せず)を備える。通電加熱の方法については後述する。
流通管104は、フランジ104a、及び、フランジ104aから延びる管部104cの他に、管残部104bを有する。ここで、管残部104bは、フランジ104aから延びる管部104cを除く流通管104の一部、つまり、フランジ104aとの接合面を有さない管の一部をいう。管残部104bは、強化白金又は強化白金合金から選ばれた一種の材料から構成される。
【0019】
図3は、流通管104の一端に、フランジ104a及び管部104cがある場合を示すが、流通管104は、少なくとも一端に、フランジ104a及び管部104cを有していればよい。よって、流通管104は、両端に、フランジ104a及び管部104cを有していてもよく、この場合にも、一端にフランジ104a及び管部104cがある場合と同様の効果が得られる。
【0020】
(フランジ104a、管部104c)
管部104cとは、上述のとおり、流通管104におけるフランジ104aから延びる管の一部である。フランジ104a及びフランジ104aから延びる管部104cが、白金又は白金合金から選ばれた一種の材料から構成されている。すなわち、フランジ104a、管部104cが同一の材料で構成されていることにより、材質が異なることにより生じる引っ張り強度差による、従来の移送管204における角部I(
図6(b))に相当する部分への応力集中の問題が発生しないため、流通管104の破損を防止することができる。特に、流通管104に軸方向の応力が付与されている場合に、引っ張り強度差による破損を防止することができる。
【0021】
流通管104における管部104cの軸方向の長さは、
図6(b)の移送管204における角部Iへの応力集中の問題が発生しなければ、いずれであってもよいが、好ましくは、10mm〜200mmであり、より好ましくは、50mm〜100mmである。
【0022】
また、フランジ104aと管部104cとの接合角度は、例えば、90度、120度等、任意である。フランジ104aと管部104cとの接合面は、応力が集中する部分であるが、フランジ104aと管部104cとを同一の材料で構成することにより、任意の接合角度であっても、引っ張り強度差による破損を防止することができる。
【0023】
また、白金とは、元素Ptを意味する。白金合金とは、これに限定されないが、例えば、白金−金合金、白金−ロジウム合金(例えば、PtRh10、PtRh20など)などの、白金と他の金属の合金である。
【0024】
また、強化白金とは、白金又は白金合金に金属酸化物を分散させてなる強化白金を意味する。金属酸化物は、Al
2O
3、ZrO
2又はY
2O
3に代表される周期表(IUPAC(1989))による)における3族、4族又は13族の金属酸化物である。強化白金合金とは、これに限定されないが、例えば、強化白金−金合金、強化白金−ロジウム合金などである。強化白金は、層状の白金粒界構造を有し、白金又は白金合金と比べて、高温下におけるクリープ強度及び引っ張り強度が高い。
【0025】
(引っ張り強度差)
引っ張り強度差とは、2種の異なる材料の引っ張り強度の差の絶対値を意味する。
従来の移送管204においては、フランジ204aは白金又は白金合金で構成され、管204bは強化白金又は強化白金合金で構成されている。すなわち、フランジ204a及び管204bは2種の異なる材料で構成されており、フランジ204a及び管204bの引っ張り強度差が、1400℃では15MPa以上であり、移送管204が通電加熱により高温となった場合に、フランジ204a及び管204bとの接合面への応力集中を緩和することができず、移送管204、より具体的には角部Iが破損する原因となる。
本発明によれば、流通管104におけるフランジ104a及びフランジ104aから延びる管部104cが白金又は白金合金から選ばれた一種の材料、すなわち同一材料で構成されていることにより、引っ張り強度差が生じないため破損を防止することができる。また、高温下におけるクリープ強度及び引っ張り強度が強化白金より低い白金等で構成された管部104cにおいて、流通管104に軸方向に発生する応力が吸収されるため、流通管104の破損を防止することができる。
【0026】
(通電加熱)
通電加熱とは、電極に給電(通電)するとジュール熱により電極が発熱し、この発熱を利用して加熱することを意味する。
流通管104は、熔融ガラスMGを通電加熱するために、フランジ104aの周囲に取り付けられた電極(図示せず)を備える。電極に給電するとジュール熱により電極が発熱し、発熱により生じた熱が、フランジ104a、フランジ104aから延びる管部104c及び管残部104bを伝播する。伝播された熱は、流通管104内を流通する熔融ガラスMGに供給され、熔融ガラスMGの温度が上昇する。
熔融ガラスMGの温度は、高い粘度を保つために、千数百度に維持する必要がある。よって、通電加熱により加熱される移送管204は、熔融ガラスMGの温度より高温となる。ここで、フランジ204a及び管204bを有する、従来技術における移送管204は、通電加熱により千数百度より高温となる。すなわち、通電加熱により高温となったフランジ204a及び管204bは熱膨張し、角部Iに引っ張り強度差による応力集中が生じるが、角部Iの形状では、引っ張り強度差による応力集中を緩和することができず、フランジ204a及び管204bの接合面において破損を生じる。
本発明では、流通管104におけるフランジ104a及びフランジ104aから延びる管部104cが白金又は白金合金から選ばれた一種の材料、すなわち同一材料で構成されていることにより、従来の移送管204における角部Iに相当する部分及びフランジ104aと管部104cとの接合面において、引っ張り強度差が生じないため破損を防止することができる。
【0027】
(流通管105及び106)
流通管105及び流通管106について説明する。
上述の流通管104が、熔解炉101及び清澄管102を接続するものであるのに対し、流通管105及び流通管106は、それぞれ清澄管102及び攪拌槽103、並びに攪拌槽103及び成形体210を接続するものである点において異なる。しかしながら、上記点を除き、流通管105及び流通管106は、流通管104と同様の構成であり、その効果についても同様であるので、説明を省略する。流通管105及び流通管106は、流通管104と同様の構成であるため、流通管105及び流通管106において、フランジ104a及びフランジ104aから延びる管部104cを備えることにより、接合面における破損を防止することができる。
【0028】
(ガラス板の製造方法)
次に、本発明のガラス板の製造装置を使用したガラス板の製造方法について、以下に説明する。
図2は、本実施形態のガラス板の製造方法の工程の一例を示す図である。本発明のガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス基板は、納入先の業者に搬送される。
【0029】
熔解工程(ST1)は熔解炉101で行われる。熔解炉101では、ガラス原料を、熔解炉101に蓄えられた熔融ガラスMGの液面に投入し、加熱することにより熔融ガラスMGを作る。さらに、熔解炉101の内側側壁の1つの底部に設けられた流出口から下流工程に向けて熔融ガラスMGを流す。
熔解炉101の熔融ガラスMGの加熱は、熔融ガラスMG自身に電気が流れて自ら発熱して加熱する方法に加えて、バーナーによる火炎を補助的に与えてガラス原料を熔解することもできる。なお、ガラス原料には清澄剤が添加される。清澄剤として、SnO
2、As
2O
3、Sb
2O
3等が知られているが、特に制限されない。しかし、環境負荷低減の点から、清澄剤としてSnO
2(酸化錫)を用いることが好ましい。
【0030】
清澄工程(ST2)は、少なくとも清澄管102において行われる。清澄工程では、清澄管102内の熔融ガラスMGが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれるO
2、CO
2あるいはSO
2を含んだ泡が、清澄剤の還元反応により生じたO
2を吸収して成長し、熔融ガラスMGの液面に泡は浮上して放出される。さらに、清澄工程では、熔融ガラスMGの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスMGに残存する泡中のO
2等のガス成分が熔融MGガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスMGの温度を制御することにより行われる。なお、清澄工程は、減圧雰囲気の空間を清澄管につくり、熔融ガラスMGに存在する泡を減圧雰囲気で成長させて脱泡させる減圧脱泡方式を用いることもできる。この場合、清澄剤を用いない点で有効である。なお、清澄工程では、酸化錫を清澄剤として用いた清澄方法を用いる。
【0031】
均質化工程(ST3)では、清澄管102から延びる流通管105を通って供給された攪拌槽103内の熔融ガラスMGを、スターラ103aを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。
供給工程(ST4)では、攪拌槽103から延びる流通管106を通して熔融ガラスMGが成形装置200に供給される。
【0032】
成形装置200では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスMGをガラス板SGに成形し、ガラス板SGの流れを作る。成形は、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるガラス板SGが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置300において、成形装置200から供給されたガラス板SGを所定の長さに切断することで、板状のガラス板SGを得る。切断されたガラス板SGはさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。この後、ガラス基板の端面の研削、研磨が行われ、ガラス基板の洗浄が行われ、さらに、気泡等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0033】
本発明のガラス板の製造方法は、流通管104を有するガラス板の製造装置100を使用する。流通管104は、上述のとおり熔解炉101と清澄管102とを接続する。流通管104は、通電加熱のための電極をフランジ104aにおけるフランジの周囲に備えており、電極に給電するとジュール熱により電極が発熱し、発熱により生じた熱が、フランジ104aからフランジ104aから延びる管部104c及び管残部104bを伝播する。伝播された熱は、流通管104内を流通する熔融ガラスMGに供給され、熔融ガラスMGの温度が上昇する。通電加熱により、流通管104の温度は千数百度に達する。
本発明のガラス板の製造方法では、流通管104を有するガラス板の製造装置100を使用するため、通電加熱により、流通管104の温度が千数百度に達しても接合面への応力集中による破損を回避することができ、効率よくガラス板を製造することができる。
【0034】
本実施形態のガラス板の製造方法では、あらゆるガラス板の製造に適用可能ではあるが、特に液晶表示装置、有機EL表示装置及びプラズマディスプレイ装置などのフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、あるいは、表示部を覆うカバーガラスの製造に好適である。
【0035】
(ガラス原料、ガラス組成)
本実施形態のガラス板の製造方法に従ってガラス板を製造するには、所望のガラス組成となるようにガラス原料を調合する。例えば、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板を製造する場合は、以下の組成を有するように原料を混合するのが好適である。
(a)SiO
2:50〜70質量%、
(b)B
2O
3:5〜18質量%、
(c)Al
2O
3:10〜25質量%、
(d)MgO:0〜10質量%、
(e)CaO:0〜20質量%、
(f)SrO:0〜20質量%、
(g)BaO:0〜10質量%、
(h)RO:5〜20質量%(但し、Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス板に含有される成分)、
(i)R’
2O:0.10質量%を超え2.0質量%以下(但し、R’は、Li、Na、およびKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス板に含有されるアルカリ金属成分)、
(j)酸化スズ、酸化鉄、および、酸化セリウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を合計で0.05〜1.5質量%。
【0036】
なお、(i)R’
2Oは必須ではないため、含有させなくてもよい。この場合、R’
2Oを実質的に含まない無アルカリガラスとなり、ガラス板からR’
2Oが流出してTFTを破壊するおそれを低減することができる。他方、あえて(i)R’
2Oを、0.10質量%を超え2.0質量%以下含有させることによって、TFT特性の劣化やガラスの熱膨張を一定範囲内に抑制しつつ、ガラスの塩基性度を高め、価数変動する金属の酸化を容易にして、清澄性を高めることができる。さらに、ガラスの比抵抗を低下させることができるので、熔解槽101にて電気熔融を行うためには好適となる。
【0037】
(変形例1)
図4は、流通管106の変形例1を示す図である。なお、上述と共通する構成については説明を省略する。
変形例1の流通管106において、フランジ104aは、強化白金又は強化白金合金から選ばれた一種の材料から構成され、フランジ104aのうち、従来の移送管204における角部Iに相当する部分104d、つまり、管部104cに隣接し応力が集中する部分104dは、白金又は白金合金から選ばれた一種の材料から構成される。ここで、従来の移送管204における角部Iに相当する部分とは、フランジ104aと管部104cとが接合し、引っ張り応力が集中する部分であり、フランジ104aと管部104cとが接合した接合点又は接合面の近傍、又は、接合点又は接合面からの距離が、所定の距離(例えば、20cm)の範囲内を意味する。また、フランジ104aから隣接して延びる管部104cのうち、応力が集中する部分104dに隣接して接合している部分104eは、白金又は白金合金から選ばれた一種の材料から構成され、管部104c及び管残部104bは、強化白金又は強化白金合金から選ばれた一種の材料から構成される。このように、熱膨張による引っ張り強度差から生じる応力が集中する部分104d、104eを、同一の熱膨張率からなる白金又は白金合金から選ばれた一種の材料で構成することにより、フランジ104aと管部104cとの接合面への応力集中による破損を回避することができる。
【0038】
(変形例2)
図5は、流通管106の変形例2を示す図である。なお、上述と共通する構成については説明を省略する。
変形例2の流通管106において、フランジ104aは、白金又は白金合金から選ばれた一種の材料から構成され、フランジ104aのうち、従来の移送管204における角部Iに相当する部分104f、つまり、管部104cに隣接し応力が集中する部分104fは、強化白金又は強化白金合金から選ばれた一種の材料から構成される。また、フランジ104aから隣接して延びる管部104cは、強化白金又は強化白金合金から選ばれた一種の材料から構成される。このように、熱膨張による引っ張り強度差から生じる応力が集中する部分104f、管部104cを、同一の熱膨張率からなる強化白金又は強化白金合金から選ばれた一種の材料で構成することにより、フランジ104aと管部104cとの接合面への応力集中による破損を回避することができる。
【0039】
(実施例)
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
本実施例では、フランジ104a及びフランジ104aから延びる管部104cが白金合金(PtRh20)で構成され、管残部104bが強化白金合金(PtRh20にZrO
2を分散させたもの)で構成された流通管104を作製し、流通管104を有するガラス板の製造装置100を使用した。白金合金と強化白金合金との引っ張り強度差を測定した結果、約20MPaであった。そして、流通管104は、フランジ104a及びフランジ104aから延びる管部104cが白金合金(PtRh20)のみで構成されているため、1600℃で100時間の通電加熱後も破損しなかった。
一方、同様の条件において、従来の移送管204を有するガラス板の製造装置を使用した場合には、フランジ204a及び管部204bが同一材料で構成されていないものであるため、24時間の通電加熱後に移送管204の角部Iが破損した。
以上により、本発明のガラス板の製造装置100及びガラス板の製造方法によれば、流通管104の破損を防止することができ、問題なくガラス板を製造することができた。
【0040】
以上、本発明のガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいことはもちろんである。