【解決手段】高い薬剤−抗体比率(DAR)を有するトランスグルタミナーゼ介在性の抗体−薬剤コンジュゲートであって、1)グルタミン含有タグ、内因性グルタミン、および/または抗体の操作もしくは操作されたトランスグルタミナーゼによって(例えば、基質特異性の変化によって)反応性にされた内因性グルタミンと、2)アミンドナー単位、リンカーおよび作用物質部分を含むアミンドナー物質とを含み、DARが少なくとも約5である、抗体−薬剤コンジュゲート。
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ダイアボディまたは抗体断片である、請求項1に記載のコンジュゲート。
反応性の内因性グルタミンが、脱グリコシル化によってまたは抗体の別のアミノ酸のアミノ酸修飾によって反応性にされている、請求項1から3のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
アミンドナー物質が、1)軽鎖、重鎖または軽鎖および重鎖の両方のいずれかのカルボキシル末端、2)軽鎖、重鎖または軽鎖および重鎖の両方のいずれかのアミノ末端、ならびに3)S60〜R61、R108、T135、S160、S168、S190〜S192、P189〜S192、G200〜S202、K222〜T225、K222〜T223、T223、L251〜S254、M252〜I253、E294〜N297、E293〜N297、N297、および/またはG385からなる群から選択される抗体の少なくとも1つまたは複数の位置でグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、グルタミン含有タグが、抗体に挿入されているか、または抗体中の1つもしくは複数の内因性アミノ酸と置き換わっている、請求項1から8のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
a)N297Q位およびK222R位でのアミノ酸置換であって、アミンドナー物質が、295位の内因性グルタミンおよび297位の置換グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミノ酸置換と、
b)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグ(1つまたは複数)に部位特異的にコンジュゲートしているグルタミン含有タグと
を含み、薬剤−抗体比率が約5〜7である、請求項8に記載のコンジュゲート。
アミンドナー物質が、S60〜R61、R108、T135、S160、S168、S190〜S192、P189〜S192、G200〜S202、K222〜T225、K222〜T223、T223、L251〜S254、M252〜I253、E294〜N297、E293〜N297、N297およびG385からなる群から選択される1つまたは複数の位置でグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしており、グルタミン含有タグが、抗体に挿入されているか、または抗体中の1つもしくは複数の内因性アミノ酸と置き換わっており、薬剤−抗体比率が少なくとも約6である、請求項10に記載のコンジュゲート。
アミンドナー物質が、抗体重鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしており、薬剤−抗体比率が約6〜9である、請求項10に記載のコンジュゲート。
アミンドナー物質が、抗体重鎖中のアミノ酸位置T135の後に挿入されたグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしており、薬剤−抗体比率が約6〜9である、請求項10に記載のコンジュゲート。
アミンドナー物質が、抗体軽鎖のアミノ酸位置G200〜S202でグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしており、内因性アミノ酸残基がグルタミン含有タグに置き換えられており、薬剤−抗体比率が約6〜11である、請求項10または13に記載のコンジュゲート。
グルタミン含有タグが、Q、LQG、LLQGG(配列番号1)、LLQG(配列番号2)、LSLSQG(配列番号3)、GGGLLQGG(配列番号4)、GLLQG(配列番号5)、LLQ、GSPLAQSHGG(配列番号6)、GLLQGGG(配列番号7)、GLLQGG(配列番号8)、GLLQ(配列番号9)、LLQLLQGA(配列番号10)、LLQGA(配列番号11)、LLQYQGA(配列番号12)、LLQGSG(配列番号13)、LLQYQG(配列番号14)、LLQLLQG(配列番号15)、SLLQG(配列番号16)、LLQLQ(配列番号17)、LLQLLQ(配列番号18)、LLQGR(配列番号19)、LLQGPP(配列番号20)、LLQGPA(配列番号21)、GGLLQGPP(配列番号22)、GGLLQGA(配列番号23)、LLQGPGK(配列番号25)、LLQGPG(配列番号26)、LLQGP(配列番号27)、LLQP(配列番号28)、LLQPGK(配列番号29)、LLQAPGK(配列番号30)、LLQGAPG(配列番号31)、LLQGAP(配列番号32)、およびLLQLQG(配列番号36)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1から15のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
グルタミン含有タグが、LLQGA(配列番号11)、LQG、GGLLQGA(配列番号23)、LLQGPA(配列番号21)、LLQGPP(配列番号20)、GGLLQGPP(配列番号22)、LLQGSG(配列番号13)、LLQG(配列番号2)、LLQYQG(配列番号14)、LLQLLQG(配列番号15)、LLQLQG(配列番号36)、LLQLLQ(配列番号18)、LLQLQ(配列番号17)、LLQGR(配列番号19)、LLQYQGA(配列番号12)、SLLQG(配列番号16)、またはLLQLLQGA(配列番号10)である、請求項16に記載のコンジュゲート。
アミンドナー単位−リンカー(X−Y)が、Ac−Lys−Gly(アセチル−リジン−グリシン)、アミノカプロン酸、Ac−Lys−β−Ala(アセチル−リジン−β−アラニン)、アミノ−PEG2(ポリエチレングリコール)−C2、アミノ−PEG3−C2、アミノ−PEG6−C2、Ac−Lys−Val−Cit−PABC(アセチル−リジン−バリン−シトルリン−p−アミノベンジルオキシカルボニル)、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC、アミノ−PEG3−C2−Val−Cit−PABC、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC、[(3S,5S)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC、プトレシンおよびAc−Lys−プトレシンからなる群から選択される、請求項18に記載のコンジュゲート。
細胞傷害物質が、アントラサイクリン、オーリスタチン、カンプトセシン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ−ベンゾジアゼピン二量体、マイタンシン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、タキサン、ビンカアルカロイド、ツブリシン、ヘミアステリン、スプリセオスタチン、プラジエノライド、またはそれらの立体異性体、アイソスター、類似体もしくは誘導体から選択される、請求項20に記載のコンジュゲート。
アミンドナー物質が、Alexa 488カダベリン、5−FITCカダベリン、Alexa 647カダベリン、Alexa 350カダベリン、5−TAMRAカダベリン、5−FAMカダベリン、SR101カダベリン、5,6−TAMRAカダベリン、5−FAMリジン、Ac−LysGly−MMAD、アミノ−PEG3−C2−MMAD、アミノ−PEG6−C2−MMAD、アミノ−PEG3−C2−アミノ−ノナノイル−MMAD、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAD、アミノ−PEG3−C2−Val−Cit−PABC−MMAD、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAD、アミノカプロイル−MMAD、Ac−Lys−β−Ala−MMAD、アミノ−PEG2−C2−MMAE、アミノカプロイル−MMAE、アミノ−PEG3−C2−MMAE、アミノカプロイル−MMAF、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAE、アミノ−PEG−6−C2−Val−Cit−PABC−MMAE、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAE、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAF、アミノ−PEG−6−C2−Val−Cit−PABC−MMAF、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAF、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−0101、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−0101、プトレシニル−ゲルダナマイシン、Ac−Lys−プトレシニル−ゲルダナマイシン、アミノカプロイル−3377、アミノ−PEG6−C2−3377、アミノカプロイル−0131、アミノ−PEG6−C2−0131、アミノカプロイル−0121、アミノ−PEG6−C2−0121、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−MMAD、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−MMAE、2−アミノエトキシ−PEG6−NODAGA、およびN2アセチル−L−リシル−L−バリル−N5−カルバモイル−N−[4−({[(2−{[(3R,5S,7R,8R)−8−ヒドロキシ−7−{(1E,3E)−5−[(2S,3S,5R,6R)−5−{[(2Z,4S)−4−ヒドロキシペンタ−2−エノイル]アミノ}−3,6−ジメチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]−3−メチルペンタ−1,3−ジエン−1−イル}−1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタ−5−イル]アセチル}ヒドラジニル)カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミドからなる群から選択される、請求項1から18のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
複数の抗体−薬剤コンジュゲートを含む医薬組成物であって、少なくとも1種の抗体−薬剤コンジュゲートが、請求項1から22のいずれか1項に記載のコンジュゲートであり、平均薬剤−抗体比率が少なくとも約4.1である、医薬組成物。
それを必要としている対象において癌を治療する方法であって、請求項23から25のいずれか1項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与するステップを含む、方法。
それを必要としている対象において腫瘍の成長または進行を阻害する方法であって、請求項23から25のいずれか1項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与するステップを含む、方法。
癌を患っている疑いがある対象において癌を診断する方法であって、a)対象の試料を請求項1に記載のコンジュゲートと、コンジュゲートと癌関連タンパク質との結合をもたらす条件下で接触させるステップと、b)癌関連タンパク質へのコンジュゲートの結合を測定するステップとを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は一般に、高い薬剤−抗体比率(DAR)を有するトランスグルタミナーゼ介在性の部位特異的な抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)であって、1)グルタミン含有タグ、内因性グルタミン(すなわち、操作されていない天然グルタミン、例えば、可変ドメイン、CDRなどにおけるグルタミン)および/または抗体の操作もしくは操作されたトランスグルタミナーゼによって反応性にされた内因性グルタミンと、2)アミンドナー単位、リンカーおよび作用物質部分を含むアミンドナー物質とを含み、DARが少なくとも約5である抗体−薬剤コンジュゲートに関する。DARが2〜4である従来のマレイミド連結を利用する抗体−薬剤コンジュゲートは、より高ロードのそれらの対応物よりも、インビボでの有効性、耐容性および薬物動態に関して優れており、より高い治療指数をもたらすことがこれまでに分かっている。本明細書中に記載するのは、従来のより高ロードのADCと比較して、インビボでの効力が高く、かつインビトロでの非特異的な細胞傷害性が少ない、より高ロードの部位特異的ADC(例えば、DARが少なくとも5以上)である。本明細書中に開示するより高ロードの部位特異的ADCの単回用量は、長期腫瘍成長静止に関して、同様なDARを有する従来のADCより有意に性能的に勝っている。さらにまた、これらのより高ロードの部位特異的ADCは、マウスにおいては、コンジュゲートしていない野生型抗体と類似した薬物動態プロフィールを有し、ラットにおいては、同様なDARを有する従来のより高ロードのADCに比べて改善されたPKプロフィールを有する。これらのより高ロードの部位特異的ADCはまた、等しい薬物ロード量で、従来のADCと比較して同等の安全性プロフィールを維持する。
【0032】
したがって、より高ロードの部位特異的ADCであって、各ADCが、式:抗体−(T−(X−Y−Z
a)
b)
c[式中、Tは、1)特異的部位で操作されたグルタミン含有タグ、2)内因性グルタミン、および/または3)抗体の操作もしくは操作されたトランスグルタミナーゼによって反応性にされた内因性グルタミンであり、Xはアミンドナー単位であり、Yはリンカーであり、Zは作用物質部分であり、X−Y−Zは、グルタミン含有タグ、内因性グルタミンおよび/または反応性の内因性グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミンドナー物質であり、aは1〜6の整数であり、bは1〜6の整数であり、cは1〜20の整数であり、a、bおよびcの積(薬剤−抗体比率)は少なくとも約5である]を含むADCが提供される。
【0033】
それを必要とする対象において、癌を治療する方法、腫瘍の成長もしくは進行を阻害する方法、がん細胞もしくは腫瘍の転移を阻害する方法、または腫瘍退縮を誘発する方法であって、本明細書中に記載するADCを含む医薬組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法もまた、提供される。
【0034】
本明細書中に記載するADCを調製するための方法であって、a)抗体およびグルタミン含有タグ;ならびに/または内因性グルタミンおよび/もしくは反応性の内因性グルタミンを有する抗体を含む抗体−T分子を提供するステップと、b)アミンドナー物質をトランスグルタミナーゼの存在下において抗体−T分子と接触させるステップと、c)抗体−Tをアミンドナー物質に共有結合によって連結させて、ADCを形成するステップとを含む方法もまた、提供される。いくつかの実施形態において、トランスグルタミナーゼは、操作されたトランスグルタミナーゼである。
【0035】
一般的な技術および定義
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有する。さらに、文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。全体として、本明細書において記載される細胞培養および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質化学および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名、およびその技術は、当技術分野において周知であり、一般的に用いられる。
【0036】
本発明の方法および技術は、全体として、別段の指示がない限り、当技術分野において周知の従来の、ならびに本明細書を通して引用および議論される様々な一般的なおよびさらに具体的な参考文献において記載されているような方法に従って行われる。例えば、Sambrook J.& Russell D.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2000);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Wiley,John & Sons,Inc.(2002);HarlowおよびLane Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1998);およびColiganら、Short Protocols in Protein Science、Wiley,John & Sons,Inc.(2003)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書において記載されるように、製造者の説明に従って行われる。本明細書において記載される、分子生物学、生化学、免疫学、分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および薬化学に関連して用いられる命名、ならびにその実験手順および実験技術は、当技術分野において周知であり一般的に用いられるものである。本明細書および特許請求の範囲を通して、語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変型は、言及された整数または整数群を含めるがいかなる他の整数または整数群も排除しないことを意味すると理解される。
【0037】
本明細書において使用する用語「グルタミン含有タグ」、「グルタミンタグ」、「Q含有タグ」、「Qタグ」または「トランスグルタミナーゼタグ」は、トランスグルタミナーゼ反応においてアミンアクセプターまたはアシルドナーとして作用する1つまたは複数のGln残基を含有するポリペプチドまたはタンパク質を指す。
【0038】
本明細書において使用する用語「アミンドナー物質」または「アシルアクセプター」は、1つまたは複数の反応性アミン(例えば、第一級アミン)を含有する作用物質を指す。例えば、アミンドナー物質は、アミンドナー単位(例えば、第一級アミンNH
2)、リンカー(例えば、アミンドナー単位と連結され、ペイロード、例えば、低分子、ポリペプチドまたは生体適合性ポリマーへの結合のための追加の官能基を含有する分子)、および作用物質部分(例えば、ペイロード、例えば、低分子)を含み得る。アミンドナー物質はまた、1つまたは複数の反応性リジン、N末端または反応性アミンを含有するポリペプチド(例えば、抗体)または生体適合性ポリマーであり得る。
【0039】
明細書において使用する用語「部位特異性」、「部位特異的にコンジュゲートしている(された)」、または「部位特異的に架橋している」は、グルタミン含有タグ、内因性グルタミン、および/または抗体の操作もしくは操作されたトランスグルタミナーゼによって反応性にされた内因性グルタミンを介する、特異的部位(例えば、表1に列挙される様々な部位)での、抗体へのアミンドナー物質の特異的なコンジュゲーションまたは架橋を指す。部位特異性は、限定はしないが、質量分析(例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)、タンデム質量分析(MS−MS)、および飛行時間型質量分析(TOF−MS))、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、部位特異的突然変異生成、蛍光標識、サイズ排除クロマトグラフィー、およびX線結晶学を含む、様々な技術によって測定することができる。
【0040】
本明細書中で使用する用語「反応性にされた内因性グルタミン(Q)」は、トランスグルタミナーゼの存在下で抗体の操作(例えば、酵素的脱グリコシル化および/またはアミノ酸修飾)によってまたは操作されたトランスグルタミナーゼによってアミンドナー物質にアクセス可能にされ、曝露されまたは反応性にされた内因性グルタミンを指す。
【0041】
本明細書において用いられる場合、用語「生体適合性ポリマー」は、レシピエント(例えばヒト)においていかなる望ましくない局所的または全身的な影響も引き起こすことのない、レシピエントにおける治療または医療的処置に適切なポリマー(例えば、反復している単量体単位または構造単位)を指す。生体適合性ポリマー(合成の、組換えの、または天然の)は、水溶性のまたは水不溶性のポリマーであり得る。生体適合性ポリマーはまた、直鎖状または分岐鎖状のポリマーであり得る。
【0042】
本明細書において用いられる場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、糖質、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的結合し得る、免疫グロブリン分子である。本明細書において用いられる場合、文脈によって別段の指示がない限り、この用語は、無傷のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけではなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fvなど)、サメおよびラクダ抗体)を含む一本鎖(ScFv)抗体およびドメイン抗体、ならびに、本明細書において記載される、抗体部分、多価抗体(例えば、COVX−BODY(登録商標))、多重特異的抗体(例えば、それらが所望の生物学的活性を示す限りの、二重特異的抗体)、および抗体断片を含む、融合タンパク質、ならびに、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された立体構造も包含するものである。抗体は、IgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、また抗体は、何らかの特定のクラスのものである必要はない。抗体の重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体構造は周知である。1つの態様において、免疫グロブリンは、ヒト、マウス、サル、またはウサギの免疫グロブリンである。
【0043】
本明細書において用いられる用語「Fab含有ポリペプチド」は、Fab断片、Fab’断片、または「(Fab’)2断片を含むポリペプチド」を指す。Fab含有ポリペプチドは、野生型ヒンジ配列の一部または全てを含み得る(通常は、ポリペプチドのFab部分のカルボキシル末端で)。Fab含有ポリペプチドは、任意の適切な免疫グロブリンから、例えば様々なIgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプ、もしくはIgG4サブタイプの少なくとも1つから、またはIgA、IgE、IgD、もしくはIgMから得ることができるか、または誘導することができる。Fab含有ポリペプチドは、1つまたは複数のポリペプチドがFab含有ポリペプチドに連結している、Fab含有融合ポリペプチドであり得る。Fab融合体は、免疫グロブリンのFabポリペプチドを通常は任意のタンパク質、ポリペプチド、または低分子であり得る融合パートナーと組み合わせる。事実上任意のタンパク質または低分子が、Fabポリペプチドに連結して、Fab含有融合ポリペプチドを生成し得る。Fab含有融合パートナーには、限定はしないが、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、またはいくつかの他のタンパク質もしくはタンパク質ドメインが含まれ得る。
【0044】
「Fab断片」は、1つの軽鎖およびCH1および1つの重鎖の可変領域を含む。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成し得ない。
【0045】
「Fab’断片」は、1つの軽鎖ならびにVHドメインおよびCH1ドメインを含有する1つの重鎖の一部、また、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域を含有し、その結果、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’断片の2つの重鎖の間で形成されて、F(ab’)2分子が形成され得る。
【0046】
「F(ab’)2断片」は、2つの軽鎖およびCH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の一部を含有する2つの重鎖を含有し、その結果、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間で形成される。F(ab’)2断片は、したがって、2つの重鎖の間のジスルフィド結合によって共に結び付けられている2つのFab’断片からなる。
【0047】
本明細書において用いられる「抗体断片」は、無傷抗体の一部分のみを含み、前記部分は好ましくは、無傷抗体内に存在する場合に前記部分に通常は関連する機能の、少なくとも1つ、好ましくはほとんどまたは全てを保持する。
【0048】
「多重特異的抗体」は、2つ以上の抗原またはエピトープを標的化する抗体である。「二重特異的な(bispecific)」、「二重特異的な(dual−specific)」、または「二官能性の」抗体は、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異的抗体は、多重特異的抗体の種であり、限定はしないがハイブリドーマの融合、Fab’断片の連結、または抗体ヒンジおよびCH3ドメインにおける突然変異体を含む、様々な方法によって生産することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315〜321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148:1547〜1553(1992);およびStropら、J.Mol.Biol.420(3):204〜219(2012)を参照されたい。二重特異的抗体の2つの結合部位は、同一のまたは異なるタンパク質標的上に存在し得る2つの異なるエピトープに結合する。
【0049】
本明細書において用いられる用語「モノクローナル抗体」は、ほぼ均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個別の抗体は、微量に存在し得る、考えられる天然の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原に対するものである。さらに、異なる抗原決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の抗原決定基に対するものである。
【0050】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、一部の実施形態において、所望の生物学的活性を示す限りの、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一であるかまたは相同であり、一方、鎖(1つまたは複数)の残りが、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一であるかまたは相同である、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体の断片を具体的に含み得る(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851〜6855(1984))。
【0051】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化された」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。ヒト化抗体は、さらに、レシピエント抗体またはドナー抗体において見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに向上させるために行われる。通常、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインのほぼ全てを含み、超可変ループの全てまたはほぼ全ては、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたはほぼ全ては、ヒト免疫グロブリン配列のFRに対応する。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでいてもよい。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature 332:323〜329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596(1992)を参照されたい。また、総説:VaswaniおよびHamilton、Ann.Allergy、Asthma & Immunol.1:105〜115(1998);Harris、Biochem.Soc.Transactions 23:1035〜1038(1995);HurleおよびGross、Curr.Op.Biotech.5:428〜433(1994)、およびそこで引用される参考文献も参照されたい。
【0052】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、および/または本明細書において開示されるヒト抗体を作製する技術のいずれかを用いて作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に排除する。
【0053】
本明細書において使用する「ヒンジ領域」、「ヒンジ配列」、およびその変型は、例えば、Janewayら、ImmunoBiology:the immune system in health and disease、(Elsevier Science Ltd.、NY)(第4版、1999);Bloomら、Protein Science(1997)、6:407〜415;Humphreysら、J.Immunol.Methods(1997)、209:193〜202において説明されている、当技術分野において知られている意味を含む。
【0054】
本明細書において使用する用語「Fc含有ポリペプチド」は、免疫グロブリン重鎖のカルボキシル末端のポリペプチド配列を含むポリペプチド(例えば、抗体またはイムノアドヘシン)を指す。Fc含有ポリペプチドは、天然Fc領域または変異Fc領域(すなわち、配列)を含み得る。免疫グロブリンのFc領域は一般に、2つの定常ドメイン、すなわちCH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、CH4ドメインを含んでいてもよい。Fc含有ポリペプチドは、野生型ヒンジ配列の一部または全てを含み得る(一般に、Fc含有ポリペプチドのアミノ末端に)。Fc含有ポリペプチドはまた、二量体であり得る。Fc含有ポリペプチドは、任意の適切な免疫グロブリン、例えば、様々なIgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプもしくはIgG4サブタイプの少なくとも1つから、またはIgA、IgE、IgDもしくはIgMから得ることができるか、または誘導することができる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、例えば、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、Glu216位のアミノ酸残基から、またはAla231から、そのカルボキシル末端まで伸びていると定義される。Fc領域における残基のナンバリングは、KabatにおけるようなEUインデックスのナンバリングである。Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991。
【0055】
Fc含有ポリペプチドは、1つまたは複数のポリペプチドがFc含有ポリペプチドに連結している、Fc含有融合ポリペプチドであり得る。Fc融合体は、免疫グロブリンのFcポリペプチドと、一般に任意のタンパク質、ポリペプチドまたは低分子であり得る融合パートナーとを併せ持つ。ほとんど全てのタンパク質または低分子が、Fc領域に連結して、Fc含有融合ポリペプチドを生成し得る。Fc含有融合パートナーには、限定はしないが、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、またはいくつかの他のタンパク質もしくはタンパク質ドメインが含まれ得る。
【0056】
本明細書において用いられる場合、用語「イムノアドヘシン」は、異種タンパク質(「アドヘシン」、例えば、受容体、リガンド、または酵素)の「結合ドメイン」を免疫グロブリン定常ドメイン(すなわち、Fcドメイン)のエフェクター成分と組み合わせる抗体様分子または免疫グロブリン様分子を指す。構造的に、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識および結合部位(抗原結合部位)以外の(すなわち「異種の」)、所望の結合特異性を有するアドヘシンアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合体を含む。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプ、もしくはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0057】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さの、好ましくは比較的短い(例えば、10〜100アミノ酸の)アミノ酸鎖を指すために、本明細書において区別せずに使用する。鎖は、直鎖状または分岐鎖状であり得、これは、修飾されたアミノ酸を含み得、かつ/または非アミノ酸によって介在され得る。この用語はまた、天然にまたは介入によって、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションによって修飾されている、アミノ酸鎖を包含する。同様にこの定義に含まれるものは、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つまたは複数の類似体、および当技術分野において知られている他の修飾を含有するポリペプチドである。ポリペプチドは、一本鎖または会合鎖として生じ得ることが理解される。
【0058】
本明細書において用いられる場合、用語「野生型アミノ酸」、「野生型IgG」、または「野生型mAb」は、ある集団(例えば、ヒト、マウス、ラット、細胞など)内で天然に生じるアミノ酸または核酸の配列を指す。
【0059】
本明細書において用いられる場合、用語「コンジュゲーション効率」または「架橋効率」は、本明細書において記載されるADCの実験的に測定された量を、ADCの最大期待量で割った値の間の比率である。コンジュゲーション効率または架橋効率は、疎水性相互作用クロマトグラフィーなどの当業者に周知の様々な技術によって測定することができる。コンジュゲーション効率はまた、室温または37℃などの異なる温度で測定することができる。
【0060】
用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例としては、限定はしないが、抗体依存性の細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、Fc受容体の結合、補体依存性の細胞傷害性(CDC)、食作用、C1qの結合、および細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方調節が挙げられる。例えば、米国特許第6,737,056号を参照されたい。このようなエフェクター機能は通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを要し、このような抗体エフェクター機能を評価するための当技術分野において知られている様々なアッセイを用いて評価することができる。エフェクター機能の典型的な測定は、Fcγ3および/またはC1qの結合を介する。
【0061】
本明細書において用いられる場合、「抗体依存性の細胞介在性細胞傷害性」または「ADCC」は、Fc受容体(FcR)(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を生じさせる、細胞介在性の反応を指す。目的の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または米国特許第5,821,337号において記載されているような、インビトロADCCアッセイを用いて評価することができる。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)およびNK細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynesら、1998、PNAS(USA)、95:652〜656において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することができる。
【0062】
「補体依存性の細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下での標的の溶解を指す。補体の活性化経路は、同族抗原と複合した分子(例えば抗体)への補体系(C1q)の第1の成分の結合によって開始される。補体の活性化を評価するために、例えばGazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163(1996)において記載されているような、CDCアッセイを行うことができる。
【0063】
本明細書において用いられる場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載する。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)を結合するものであり、対立遺伝子変異体を含むFcγRIサブクラス、FcγRIIサブクラス、FcγRIIIサブクラス、およびFcyRIVサブクラスの受容体を含み、あるいは、これらの受容体のスプライシングされた形態を含む。FcyRII受容体には、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する、FcyRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれる。FcRは、RavetchおよびKinet、1991、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92;Capelら、1994、Immunomethods、4:25〜34;de Haasら、1995、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41;Nimmerjahnら、2005、Immunity 23:2〜4において概説されている。「FcR」にはまた、胎児への母親IgGの移入に関与する新生児受容体FcRnが含まれる(Guyerら、1976、J.Immunol.、117:587;およびKimら、1994、J.Immunol.、24:249)。
【0064】
本明細書中で使用する「治療(処置)」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の解釈上、有益なまたは所望の臨床結果には、限定はしないが、以下の1つまたは複数が含まれる:新生物細胞もしくは癌性細胞の増殖低減(もしくは破壊)、新生物細胞の転移阻害、腫瘍の縮小もしくは腫瘍サイズの減少、癌寛解、癌症状の減少、癌を患っている人のクオリティオブライフの向上、癌の治療に必要な他の医薬品の用量の減少、癌進行の遅延、癌の治癒、および/または癌患者の生存期間の延長。
【0065】
本明細書中で使用する、薬剤、化合物または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、任意の1つまたは複数の有益なまたは所望の結果をもたらすのに充分な量である。予防的使用に関しては、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的症状、組織学的症状および/もしくは行動症状、その合併症ならびに疾患の発症中に見つかる中間の病理学的表現型を含む疾患の、リスクの排除もしくは低減、重症度の低下または発生の遅延が含まれる。治療的使用に関しては、有益なまたは所望の結果には、様々な癌関連疾患もしくは状態(例えば、胃癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌および膵臓癌)の1つもしくは複数の症状の発生率の低下もしくは寛解、疾患の治療に必要な他の医薬品の用量の減少、別の医薬品の効果の増強、および/または患者における癌の進行の遅延などの臨床結果が含まれる。有効投与量は、1回は複数回の投与で投与し得る。本発明の解釈上、薬剤、化合物または医薬組成物の有効投与量は、直接的または間接的に予防的処置または治療的処置を行うのに充分な量である。臨床に関連して理解されるように、薬剤、化合物もしくは医薬組成物の有効投与量は、別の薬剤、化合物もしくは医薬組成物と併用して達成してもよいし、または達成しなくてもよい。したがって、「有効投与量」は、1種または複数の治療薬の投与との関連において考慮することができ、単剤は、1種または複数の他の作用物質と併用した場合に望ましい結果が達成され得るまたは達成されるならば、有効量で投与されると考えることができる。
【0066】
用語「精製する」およびその文法上の変型は、組成物内のADCの純度レベルを向上させる(すなわち、組成物内の不純物(1つまたは複数)の量(ppm)を減少させることによって)、ADCおよび1つまたは複数の不純物を含有する混合物からの少なくとも1つの不純物の完全なまたは部分的な除去を意味するために用いられる。
【0067】
本明細書における「約」値またはパラメーターへの言及は、それ自体がその値またはパラメーターに向けられた実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。
【0068】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。哺乳動物にはまた、限定はしないが、家畜、スポーツ用の動物、ペット、霊長類、ウマ、犬、猫、マウス、およびラットが含まれる。
【0069】
「含む(comprising)」という記載を用いて実施形態が本明細書において記載されている場合は全て、「からなる」および/または「から基本的になる」と言う用語で記載されているそれ以外の類似の実施形態もまた提供される。
【0070】
本発明の態様または実施形態がマーカッシュグループまたは選択肢の他のグループ分けに関して記載されている場合、本発明は、列挙されたグループ全体をまとめて包含するだけではなく、グループの各メンバーを個別におよびメイングループの全ての考えられるサブグループも包含し、しかしまた、グループメンバーの1つまたは複数が欠けているメイングループも包含する。本発明はまた、特許請求の範囲に記載の発明におけるグループメンバーのいずれかの1つまたは複数を明確に排除することも想定する。
【0071】
本出願における残基の呼称は、定常ドメインのEUナンバリングスキームに基づく(Edelmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、63(1):78〜85(1969))。
【0072】
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。典型的な方法および材料が本明細書において記載されるが、本明細書において記載されるものに類似または同等の方法および材料もまた本発明の実施または試験において用いることができる。本明細書において言及される全ての刊行物および他の参考文献は、参照することによってその全体が組み込まれる。一致しない場合には、定義を含む本明細書が優先される。多くの文献が本明細書において引用されるが、この引用は、これらの文献のいずれかが当技術分野における一般常識の一部を形成することを承認するものではない。本明細書および特許請求の範囲を通して、語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変型は、言及された整数または整数群を含めることを意味するが、いかなる他の整数または整数群も排除するものではない。文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。材料、方法、および例は例示的なものにすぎず、限定するためのものではない。
【0073】
薬物ロード量が高い抗体−薬剤コンジュゲート
本明細書中における抗体−薬剤コンジュゲートは、操作されたグルタミン含有タグ、内因性グルタミン(すなわち、操作されていない天然グルタミン、例えば、可変ドメイン、CDRなどにおけるグルタミン)および/または反応性の内因性グルタミンを介して、アミンドナー物質(例えば、アミンドナー単位によってリンカーに結合している低分子)に部位特異的にコンジュゲートしている抗体であって、薬剤−抗体比率(DAR)が少なくとも約5(例えば、抗体1つ当たり少なくとも5つの薬剤/ペイロード)である抗体を含む。内因性グルタミンは、抗体中の1つもしくは複数のアミノ酸の修飾(例えば、アミノ酸の欠失、挿入、置換、または突然変異)によって、酵素的脱グリコシル化によってまたは操作されたトランスグルタミナーゼとの反応によって、反応性(すなわち、アミンおよびトランスグルタミナーゼの存在下でアシルドナーとして共有結合を形成する能力)にされ得る。したがって、一態様において、式:抗体−(T−(X−Y−Z
a)
b)
c[式中、Tは、1)特異的部位で操作されたグルタミン含有タグ、2)内因性グルタミン、および/または3)抗体の操作もしくは操作されたトランスグルタミナーゼによって反応性にされた内因性グルタミンであり、Xはアミンドナー単位であり、Yはリンカーであり、Zは作用物質部分であり、X−Y−Zは、グルタミン含有タグ、内因性グルタミンおよび/または反応性の内因性グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミンドナー物質であり、aは1〜6の整数であり、bは1〜6の整数であり、cは1〜20の整数であり、a、bおよびcの積(薬剤−抗体比率)は少なくとも約5である]を含む抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)が提供される。抗体上のグルタミン含有タグ、内因性グルタミンおよび/または反応性グルタミンと、本明細書中に記載するアミンドナー物質(X−Y−Z)はいずれも、トランスグルタミナーゼの基質であり、グルタミン含有タグおよび/または内因性/反応性グルタミンと、アミンドナー物質との間の連結は、式CH
2−CH
2−CO−NH−[式中、NH−は、リンカーおよび作用物質部分に連結されている]を有する。
【0074】
トランスグルタミナーゼは、リジン残基によるグルタミン残基のpH依存的アミド基転移を典型的に触媒するタンパク質−グルタミンγ−グルタミルトランスフェラーゼ(EC 2.3.2.13)である。本明細書中に記載する本発明に使用するトランスグルタミナーゼは、様々な供給源から得るか、もしくは作製して、または操作して、1つもしくは複数のリジン残基によるまたは1つもしくは複数の反応性アミンを含有するアミンドナー物質による1つまたは複数の内因性グルタミン残基のアミド基転移を触媒することができる。いくつかの実施形態において、トランスグルタミナーゼは、酵素の立体構造の変化を誘発するためおよび酵素活性を可能にするためにカルシウムを要する、カルシウム依存性のトランスグルタミナーゼである。例えば、トランスグルタミナーゼは、モルモットの肝臓に由来することができ、市販の供給源(例えば、Sigma−Aldrich(St Louis、MO)およびMP Biomedicals(Irvine、CA))を介して得ることができる。いくつかの実施形態において、mTGaseポリペプチドは、真菌タンパク質(例えば、卵菌(Oomycetes)、放線菌(Actinomycetes)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、モナスカス属(Monascus)またはクモノスカビ属(Rhizopus)トランスグルタミナーゼ)に由来する。いくつかの実施形態において、mTGaseポリペプチドは、粘菌(Myxomycetes)に由来する(例えば、真正粘菌(Physarum polycephalum)トランスグルタミナーゼ)。いくつかの実施形態において、mTGaseポリペプチドは、細菌タンパク質、例えば、ストレプトベルティシリウム属(Streptoverticillium)の種またはストレプトマイセス属(Streptomyces)の種(例えば、ストレプトマイセス・モバレンシス(Streptomyces mobarensis)またはストレプトベルティシリウム・モバレンシス(Streptoverticillium mobarensis))からのトランスグルタミナーゼに由来する。いくつかの実施形態において、mTGaseポリペプチドは、細菌タンパク質、例えば,限定はしないが、ストレプトベルティシリウム・モバレンシス(Streptoverticillium mobarensis)、ストレプトベルティシリウム・グリセオカルネウム(Streptoverticillium griseocarneum)、ストレプトベルティシリウム・ラダカヌム(Streptoverticillium ladakanum)、ストレプトマイセス・モバレンシス(Streptomyces mobarensis)、ストレプトマイセス・ビリディス(Streptomyces viridis)、ストレプトマイセス・ラダカヌム(Streptomyces ladakanum)、ストレプトマイセス・カニフェルス(Streptomyces caniferus)、ストレプトマイセス・プラテンシス(Streptomyces platensis)、ストレプトマイセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)、ストレプトマイセス・ネトロプシス(Streptomyces netropsis)、ストレプトマイセス・フラジアエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトマイセス・ロゼオベルチビラツス(Streptomyces roseovertivillatus)、ストレプトマイセス・シンナマオニウス(Streptomyces cinnamaoneous)、ストレプトマイセス・グリセオカルネウム(Streptomyces griseocarneum)、ストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces lavendulae)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・リディカス(Streptomyces lydicus)、ストレプトマイセス・シオヤンシス(Streptomyces sioyansis)、アクチノマズラ属(Actinomadura)の種、バチルス属(例えば、バチルス・サークランス(Bacillus circulans)、枯草菌(Bacillus subtilis)など)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロバクター属(Enterobacter)の種、ミクロコッカス属(Micrococcus)、プロビデンシア属(Providencia)の種またはそれらの分離株からのトランスグルタミナーゼに由来する。いくつかの実施形態において、トランスグルタミナーゼは、酵素の立体構造の変化を誘発するためおよび酵素活性を可能にするためにカルシウムを要しない、カルシウム非依存性のトランスグルタミナーゼである。いくつかの実施形態において、mTGaseポリペプチドは、S.モバレンシス(S.mobarensis)に由来する。ACTIVA(商標)(味の素、日本)などの市販されているカルシウム非依存性のトランスグルタミナーゼもまた、本発明に適している。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載する本発明において使用するトランスグルタミナーゼは、1つもしくは複数のリジン残基またはアミンドナー物質中の反応性アミンによる、抗体中の1つまたは複数の内因性グルタミン残基のアミド基転移を触媒する、操作されたトランスグルタミナーゼである。例えば、天然トランスグルタミナーゼ中の1つまたは複数の野生型アミノ酸残基を、欠失させ、または別のアミノ酸残基(1つまたは複数)に置き換えるもしくはそれで置換して、操作されたトランスグルタミナーゼを作製することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される、本発明において用いられるトランスグルタミナーゼはまた、当業者に知られている組換え技術を用いて生産された組換えタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される、本発明において用いられるトランスグルタミナーゼは、精製タンパク質であり得る。例えば、精製トランスグルタミナーゼは、少なくとも約50%の純度である。本明細書において用いられる場合、「純粋な」または「精製」タンパク質は、他の汚染タンパク質を有さないタンパク質(例えば、トランスグルタミナーゼ)を指す。いくつかの実施形態において、精製トランスグルタミナーゼは、少なくとも約55%〜60%、60%〜65%、65%〜70%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、95%〜98%、または99%の純度のいずれかである。いくつかの実施形態において、精製トランスグルタミナーゼは、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度のいずれかである。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるADCのグルタミン含有タグは、抗体の反応性Lysに空間的に隣接していない。例えば、グルタミン含有タグは、ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、またはカルボキシル末端およびアミノ末端の両方において反応性Lysに空間的に隣接していない。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明のADCは、抗体の操作によるまたは操作されたトランスグルタミナーゼによるアミド基転移反応において反応性にされた少なくとも1つの内因性グルタミンを含む。いくつかの実施形態において、抗体の操作は、抗体の脱グリコシル化(例えば、酵素的脱グリコシル化);または抗体におけるアミノ酸の欠失、挿入、置換、突然変異もしくはそれらの任意の組み合わせを含むアミノ酸の修飾である。例えば、抗体の297位の野生型アミノ酸Asn(N)を、アミノ酸Ala(A)で置換するか、またはアミノ酸Ala(A)に置き換え、その結果、297位に非グリコシル化をもたらし、295位に反応性の内因性グルタミン(Q)を生じる。別の例において、抗体中のアミノ酸修飾は、297位での非グリコシル化、295位での反応性の内因性Q、ならびにトランスグルタミナーゼの存在下でN297QおよびQ295と1つまたは複数のアミンドナー物質との間に部位特異的なコンジュゲーションをもたらす、297位でのNからQへのアミノ酸置換である。
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明のADCは、限定はしないが、1)軽鎖、重鎖または軽鎖と重鎖の両方のいずれかのカルボキシル末端;2)軽鎖、重鎖または軽鎖と重鎖の両方のいずれかのアミノ末端;ならびに3)S60〜R61、R108、T135、S160、S168、S190〜S192、P189〜S192、G200〜S202、K222〜T225、K222〜T223、T223、L251〜S254、M252〜I253、E294〜N297、E293〜N297、N297、および/またはG385を含む少なくとも1つまたは複数の位置で操作されたグルタミン含有タグを含み、グルタミン含有タグは、抗体中に挿入され、または抗体中の1つもしくは複数の内因性アミノ酸と置き換わり、薬物−抗体比率は少なくとも5である。特異的なグルタミン含有タグおよび対応する操作された位置の例を、表1に示す。したがって、いくつかの実施形態において、本発明のADCは、少なくとも約5(例えば、抗体1つ当たりの薬剤/ペイロードが5)のDARおよび表1に列挙された任意の1つまたは複数の位置において操作されたグルタミン含有タグを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明のADCの抗体は、同一の位置の野生型抗体と比較して、222、340および/または370位(EUナンバリング)に第2のアミノ酸修飾をさらに含む。いくつかの実施形態において、修飾は、アミノ酸の欠失、挿入、置換、突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、置換は、野生型アミノ酸を別のアミノ酸(例えば、非野生型アミノ酸)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型)アミノ酸は、Arg(例えば、K222R、K340RまたはK370R)である。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型)アミノ酸は、Ala、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValである。
【0083】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明のADCは、a)N297Q位およびK222R位でのアミノ酸置換であって、アミンドナー物質が、295位の内因性グルタミンおよび297位の置換グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミノ酸置換と、b)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグ(1つまたは複数)に部位特異的にコンジュゲートしているグルタミン含有タグとを含み、ここで、薬剤−抗体比率(DAR)は約5〜7である。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグは、GGLLQGA(配列番号23)またはGGLLQGPP(配列番号22)である。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明のADCは、a)N297Q位およびK222R位でのアミノ酸置換であって、アミンドナー物質が、295位の内因性グルタミンおよび297位の置換グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミノ酸置換と、b)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグ(1つまたは複数)に部位特異的にコンジュゲートしているグルタミン含有タグと、c)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体の、S60〜R61、R108、T135、S160、S168、S190〜S192、P189〜S192、G200〜S202、K222〜T225、K222〜T223、T223、L251〜S254、M252〜I253、E294〜N297、E293〜N297、N297およびG385からなる群から選択される1つまたは複数の位置でグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしているグルタミン含有タグとを含み、ここで、グルタミン含有タグは抗体に挿入されているか、または抗体中の1つもしくは複数の内因性アミノ酸と置き換わっており、薬剤−抗体比率は少なくとも約6である。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のADCは、a)N297Q位およびK222R位でのアミノ酸置換であって、アミンドナー物質が、295位の内因性グルタミンおよび297位の置換グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミノ酸置換と、b)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグ(1つまたは複数)に部位特異的にコンジュゲートしているグルタミン含有タグと、c)1つまたは複数のグルタミンタグであって、アミンドナー物質が、抗体重鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしているグルタミンタグとを含み、ここで、薬剤−抗体比率(DAR)は、約6〜9である。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグは、GGLLQGA(配列番号23)またはGGLLQGPP(配列番号22)であり、抗体重鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグは、LLQGA(配列番号11)またはLLQGPP(配列番号20)である。
【0085】
一変形形態において、本発明のADCは、a)N297Q位およびK222R位でのアミノ酸置換であって、アミンドナー物質が、295位の内因性グルタミンおよび297位の置換グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミノ酸置換と、b)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグ(1つまたは複数)に部位特異的にコンジュゲートしているグルタミン含有タグと、c)1つまたは複数のグルタミンタグであって、アミンドナー物質が、抗体重鎖のアミノ酸位置T135の後に挿入されたグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしているグルタミンタグとを含み、ここで、薬剤−抗体比率(DAR)は、約6〜9である。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグは、GGLLQGA(配列番号23)またはGGLLQGPP(配列番号22)であり、抗体重鎖のT135の後に挿入されたグルタミン含有タグは、LLQG(配列番号2)である。
【0086】
別の変形形態において、本発明のADCは、a)N297Q位およびK222R位でのアミノ酸置換であって、アミンドナー物質が、295位の内因性グルタミンおよび297位の置換グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミノ酸置換と、b)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグ(1つまたは複数)に部位特異的にコンジュゲートしているグルタミン含有タグと、c)1つまたは複数のグルタミンタグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のアミノ酸位置G200〜S202のグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしているグルタミンタグとを含み、ここで、薬剤−抗体比率(DAR)は、約6〜9である。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグは、GGLLQGA(配列番号23)またはGGLLQGPP(配列番号22)であり、抗体軽鎖のアミノ酸位置G200〜S202のグルタミン含有タグは、LLQG(配列番号2)である。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明のADCはまた、a)N297Q位およびK222R位でのアミノ酸置換であって、アミンドナー物質が、295位の内因性グルタミンおよび297位の置換グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミノ酸置換と、b)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグ(1つまたは複数)に部位特異的にコンジュゲートしているグルタミン含有タグと、c)1つまたは複数のグルタミンタグであって、アミンドナー物質が、抗体軽鎖のアミノ酸位置G200〜S202のグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしているグルタミンタグと、(d)1つまたは複数のグルタミン含有タグであって、アミンドナー物質が、抗体重鎖のアミノ酸位置T135の後に挿入されたグルタミン含有タグに部位特異的にさらにコンジュゲートしているグルタミン含有タグとを含み、ここで、薬剤−抗体比率(DAR)は、約9〜11である。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグは、GGLLQGA(配列番号23)またはGGLLQGPP(配列番号22)であり、抗体軽鎖のアミノ酸位置G200〜S202のグルタミン含有タグはLLQG(配列番号2)であり、抗体重鎖のT135の後に挿入されたグルタミン含有タグもまた、LLQG(配列番号2)である。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明のADCはまた、a)抗体軽鎖のカルボキシル末端で、b)抗体重鎖のアミノ酸位置T135の後で、およびc)抗体軽鎖のアミノ酸位置G200〜S202でグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしているアミンドナー物質を含み、ここで、内因性アミノ酸残基はグルタミン含有タグに置き換えられており、薬剤−抗体比率は約5〜7である。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖のカルボキシル末端のグルタミン含有タグは、GGLLQGA(配列番号23)またはGGLLQGPP(配列番号22)であり、抗体軽鎖のアミノ酸位置G200〜S202のグルタミン含有タグはLLQG(配列番号2)であり、抗体重鎖のT135の後に挿入されたグルタミン含有タグもまた、LLQG(配列番号2)である。
【0089】
本発明のADCの薬剤−抗体比率(DAR)は、約5〜約720である。いくつかの実施形態において、DARは、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700および710のいずれかである。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載するADCのグルタミン含有タグは、アミノ酸配列XXQX(配列番号37)[式中、Xは、本明細書中に記載する従来のまたは非従来のアミノ酸であり得る]を含む。例えば、いくつかの実施形態において、Xは、L(Leu)、A(Ala)、G(Gly)、S(Ser)、V(Val)、F(Phe)、Y(Tyr)、H(His)、R(Arg)、N(Asn)、E(Glu)、D(Asp)、C(Cys)、Q(Gln)、I(Ile)、M(Met)、P(Pro)、T(Thr)、K(Lys)またはW(Trp)である。いくつかの実施形態において、グルタミン含有タグは、Q、LQG、LLQGG(配列番号1)、LLQG(配列番号2)、LSLSQG(配列番号3)、GGGLLQGG(配列番号4)、GLLQG(配列番号5)、LLQ、GSPLAQSHGG(配列番号6)、GLLQGGG(配列番号7)、GLLQGG(配列番号8)、GLLQ(配列番号9)、LLQLLQGA(配列番号10)、LLQGA(配列番号11)、LLQYQGA(配列番号12)、LLQGSG(配列番号13)、LLQYQG(配列番号14)、LLQLLQG(配列番号15)、SLLQG(配列番号16)、LLQLQ(配列番号17)、LLQLLQ(配列番号18)、LLQGR(配列番号19)、LLQGPP(配列番号20)、LLQGPA(配列番号21)、GGLLQGPP(配列番号22)、GGLLQGA(配列番号23)、LLQGPGK(配列番号25)、LLQGPG(配列番号26)、LLQGP(配列番号27)、LLQP(配列番号28)、LLQPGK(配列番号29)、LLQAPGK(配列番号30)、LLQGAPG(配列番号31)、LLQGAP(配列番号32)、およびLLQLQG(配列番号36)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、グルタミン含有タグは、アミノ酸配列LLQGA(配列番号11)、LQG、GGLLQGA(配列番号23)、LLQGPA(配列番号21)、LLQGPP(配列番号20)、GGLLQGPP(配列番号22)、LLQGSG(配列番号13)、LLQG(配列番号2)、LLQYQG(配列番号14)、LLQLLQG(配列番号15)、LLQLQG(配列番号36)、LLQLLQ(配列番号18)、LLQLQ(配列番号17)、LLQGR(配列番号19)、LLQYQGA(配列番号12)、SLLQG(配列番号16)、またはLLQLLQGA(配列番号10)を含む。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、LGGQGGG(配列番号38)、GGGQGGL(配列番号39)、GXGQGGG(配列番号40)、GGXQGGG(配列番号41)、GGGQXGG(配列番号42)、およびGGGQGXG(配列番号43)[式中、XはG、A、S、L、V、F、Y、R、NまたはEである]からなる群から選択されるアミノ酸配列を含まない。また、他の典型的なタグは、例えば、US20130230543およびUS2013/0122020に記載されている。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載するADCの抗体は、同一の位置の野生型抗体と比較して、カルボキシル末端の最後のアミノ酸位置にアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、アミノ酸の欠失、挿入、置換、突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、置換は、野生型アミノ酸を別のアミノ酸(例えば、非野生型アミノ酸)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態において、挿入は、1つまたは複数のアミノ酸を挿入する(例えば、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸を挿入する)ことを含む。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型)または挿入されるアミノ酸は、Argである。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型)アミノ酸は、Ala、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValである。例えば、いくつかの実施形態において、抗体(例えば、抗体の重鎖)のカルボキシル末端の最後のアミノ酸は、欠失させることができ、ポリペプチドのC末端に対して操作されたグルタミン含有タグは、アミノ酸配列LLQGA(配列番号11)またはLLQGPP(配列番号20)を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、抗体は、同一の位置の野生型抗体と比較して、アミノ末端の最初のアミノ酸位置にアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、アミノ酸の欠失、挿入、置換、突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、置換は、野生型アミノ酸を別の(例えば、非野生型)アミノ酸に置き換えることを含む。いくつかの実施形態において、挿入は、アミノ酸を挿入することを含む。いくつかの実施形態において、非野生型のまたは挿入されるアミノ酸は、Argである。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型のまたは挿入された)アミノ酸は、Ala、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValである。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載するADCは、完全長の抗体重鎖および抗体軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載する抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ダイアボディまたは抗体断片である。
【0094】
いくつかの実施形態において、抗体はIgGである。いくつかの実施形態において、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態において、抗体は、IgA、IgE、IgD、またはIgMである。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるADCのエフェクター機能(例えば、Fcγ3および/またはC1qの結合によって測定される)は、野生型抗体と比較して、約1倍以上に増加する、または最大約2分の1、3分の1、4分の1、または5分の1のいずれかまで低下する。いくつかの実施形態において、ADCの抗体はIgGであり、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して最大約2分の1まで低下する。他の実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約2分の1に低下する。他の実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約2分の1未満に低下する。いくつかの実施形態において、ADCの抗体はIgGであり、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約1倍以上に増加する。他の実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約1倍である。いくつかの実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約1分の1、3分の1、4分の1、または5分の1のいずれか未満に低下する。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるADCのエフェクター機能(例えば、Fcγ3および/またはC1qの結合によって測定される)は、野生型抗体と比較して、少なくとも約1倍から3000倍に増大する。いくつかの実施形態において、ADCのエフェクター機能は、野生型抗体と比較して、少なくとも約1倍から5倍、6倍から10倍、11倍から15倍、16倍から20倍、21倍から25倍、26倍から30倍、31倍から35倍、36倍から40倍、41倍から45倍、46倍から50倍、51倍から55倍、56倍から60倍、61倍から65倍、66倍から70倍、71倍から75倍、76倍から80倍、81倍から85倍、86倍から90倍、91倍から95倍、96倍から100倍、101倍から200倍、201倍から300倍、301倍から500倍、501倍から1000倍、1001倍から1500倍、1501倍から2000倍、2001倍から2500倍、2501倍から3000倍のいずれかに増大する。いくつかの実施形態において、ADCの抗体はIgGであり、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して、約1倍から300倍に増大する。いくつかの実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、40倍、60倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、1500倍、2000倍、2500倍、または3000倍のいずれかに増大する。
【0098】
いくつかの実施形態において、アミンドナー物質は、式:X−Y−Zを有し、式中、Xはアミンドナー単位であり、Yはリンカーであり、Zは作用物質部分である。
【0099】
抗体にコンジュゲートし得るアミンドナー物質の数は、1)抗体に連結/挿入されるグルタミン含有タグの数およびグルタミン含有タグ上のグルタミンの数、ならびに/または2)抗体の内因性グルタミンの数(すなわち、操作されていない天然グルタミン、例えば、可変ドメイン、CDRなどにおけるグルタミン)、ならびに/または3)本明細書中に記載する抗体の操作もしくは操作されるトランスグルタミナーゼによって反応性にされた内因性グルタミンの数によって異なる。例えば、2つのアミンドナー物質が、2つの軽鎖のカルボキシル末端で抗体に部位特異的にコンジュゲートすることができ、4つのアミンドナー物質が、Q295位およびN297Q位で抗体に部位特異的にコンジュゲートすることができる。いくつかの実施形態において、アミンドナー物質は、各コンジュゲーション位置において同一であっても異なっていてもよい。
【0100】
本発明のアミンドナー単位は、グルタミン含有タグ、内因性グルタミンおよび/または反応性の内因性グルタミンを介する抗体への作用物質部分へのコンジュゲーションを可能にするトランスグルタミナーゼの基質を提供する第一級アミン(NH
2)である。したがって、グルタミン含有タグ、内因性グルタミンおよび/または反応性の内因性グルタミンとアミンドナー単位との間の連結は、式CH
2−CH
2−CO−NH−[式中、1つのNH−は、1つのリンカーおよび1つまたは複数の作用物質部分に連結している]を有する。
【0101】
本発明のリンカーは、切断可能なまたは切断不可能なリンカーであり得る。例えば、リンカー(アミンドナー単位を有する)またはアミンドナー物質は、抗体から放出され得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、ペプチドリンカー(例えば、従来のおよび/または非従来のアミノ酸(1つまたは複数))および/または非ペプチドリンカーであり得る。非ペプチドリンカーの例としては、アルキルリンカーおよびPEG(ポリエチレングリコール)リンカーが挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、アミンドナー単位−リンカー(例えば、X−Y)は、作用物質部分を含む直鎖状の単位である。他の実施形態において、アミンドナー単位−リンカーは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の作用物質部分を含む、分岐鎖状の単位(例えば、少なくとも2つの単位)である。一変形形態において、分岐鎖状リンカー上の作用物質部分は、同一のまたは異なる作用物質部分であり得る。
【0103】
典型的なアミンドナー単位−リンカーには、限定はしないが、Ac−Lys−Gly、アミノカプロン酸、Ac−Lys−β−Ala、アミノ−PEG2−C2、アミノ−PEG3−C2、アミノ−PEG6−C2、Ac−Lys−Val−Cit(シトルリン)−PABC(p−アミノベンジルオキシカルボニル)、アミノ−PEG3−C2−Val−Cit−PABC、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC、[(3S,5S)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−、Ac−Lys−プトレシンまたは2−アミノエトキシが含まれる。
【0104】
本発明の操作されたポリペプチドの作用物質部分には、低分子、タンパク質またはポリペプチド、および生体適合性ポリマーが含まれる。
【0105】
いくつかの実施形態において、低分子は、細胞傷害物質、免疫抑制物質またはイメージング剤(例えば、フルオロフォア)である。いくつかの実施形態において、細胞傷害物質は化学療法薬である。
【0106】
細胞傷害物質の例としては、限定はしないが、アントラサイクリン、オーリスタチン、ドラスタチン、コンブレタスタチン、デュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、インドリノ−ベンゾジアゼピン二量体、エンジイン、ゲルダナマイシン、マイタンシン、ピューロマイシン、タキサン、ビンカアルカロイド、カンプトセシン、ツブリシン、ヘミアステリン、スプリセオスタチン、プラジエノライド、およびそれらの立体異性体、アイソスター、類似体または誘導体が挙げられる。
【0107】
アントラサイクリンは、ストレプトマイセス属(Strepomyces)の細菌に由来し、広範な癌、例えば、白血病、リンパ腫、乳癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌の治療に使用されている。典型的なアントラサイクリンには、限定はしないが、ダウノルビシン、ドキソルビシン(すなわち、アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシンおよびミトキサントロンが含まれる。
【0108】
ドラスタチンならびにそのペプチド類似体および誘導体、オーリスタチンは、抗癌活性および抗真菌活性を有することが示されている、非常に強力な抗有糸分裂物質である。例えば、米国特許第5,663,149号、およびPettitら、Antimicrob.Agents Chemother.42:2961〜2965(1998)を参照されたい。典型的なドラスタチンおよびオーリスタチンには、限定はしないが、ドラスタチン10、オーリスタチンE、オーリスタチンEB(AEB)、オーリスタチンEFP(AEFP)、MMAD(モノメチルオーリスタチンDまたはモノメチルドラスタチン10)、MMAF(モノメチルオーリスタチンFまたはN−メチルバリン−バリン−ドライソロイイン−ドラプロイン−フェニルアラニン)、MMAE(モノメチルオーリスタチンEまたはN−メチルバリン−バリン−ドライソロイイン−ドラプロイン−ノルエフェドリン)、5−ベンゾイル吉草酸−AEエステル(AEVB)および他の新規オーリスタチン(例えば、米国特許出願公開第2013/0129753号に記載されているもの)が含まれる。いくつかの実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0109】
【化1】
を有する0101(2−メチルアラニル−N−[(3R,4S,5S)−3−メトキシ−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−3−{[(1S)−2−フェニル−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン−1−イル}−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0110】
いくつかの実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0111】
【化2】
を有する3377(N,2−ジメチルアラニル−N−{(1S,2R)−4−{(2S)−2−[(1R,2R)−3−{[(1S)−1−カルボキシル−2−フェニルエチル]アミノ}−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]ピロリジン−1−イル}−2−メトキシ−1−[(1S)−1−メチルプロピル]−4−オキソブチル}−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0112】
いくつかの実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0113】
【化3】
を有する3377−OMe(N,2−ジメチルアラニル−N−[(3R,4S,5S)−3−メトキシ−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−1−メトキシ−3−{[(2S)−1−メトキシ−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]アミノ}−2−メチル−3−オキソプロピル]ピロリジン−1−イル}−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0114】
他の実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0115】
【化4】
を有する0131(2−メチル−L−プロリル−N−[(3R,4S,5S)−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−3−{[(1S)−1−カルボキシ−2−フェニルエチル]アミノ}−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]ピロリジン−1−イル}−3−メトキシ−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0116】
他の実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0117】
【化5】
を有する0121(2−メチル−L−プロリル−N−[(3R,4S,5S)−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−3−{[(2S)−1−メトキシ−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]アミノ}−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]ピロリジン−1−イル}−3−メトキシ−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0118】
カンプトセシンは、酵素トポイソメラーゼIを阻害する細胞傷害性キノリンアルカロイドである。カンプトセシンおよびの誘導体の例としては、限定はしないが、トポテカンおよびイリノテカンならびにそれらの代謝産物、例えば、SN−38が挙げられる。
【0119】
コンブレタスタチンは、腫瘍における血管破壊性を有する天然のフェノールである。典型的なコンブレタスタチンおよびその誘導体には、限定はしないが、コンブレタスタチンA−4(CA−4)およびオンブラブリンが含まれる。
【0120】
デュオカルマイシンおよびCC−1065は、細胞傷害性能力を有するDNAアルキル化剤である。BogerおよびJohnson、PNAS 92:3642〜3649(1995)を参照されたい。典型的なデュオカルマイシンおよびCC−1065には、限定はしないが、(+)デュオカルマイシンAおよび(+)デュオカルマイシンSA、(+)CC−1065、ならびに国際出願PCT/IB2015/050280に開示されている化合物、例えば、限定はしないが、構造
【0121】
【化6】
を有するN
2−アセチル−L−リシル−L−バリル−N
5−カルバモイル−N−[4−({[(2−{[({(1S)−1−(クロロメチル)−3−[(5−{[(1S)−1−(クロロメチル)−5−(ホスホノオキシ)−1,2−ジヒドロ−3H−ベンゾ[e]インドール−3−イル]カルボニル}チオフェン−2−イル)カルボニル]−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e]インドール−5−イル}オキシ)カルボニル](メチル)アミノ}エチル)(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド、構造
【0122】
【化7】
を有するN
2−アセチル−L−リシル−L−バリル−N
5−カルバモイル−N−[4−({[(2−{[({(8S)−8−(クロロメチル)−6−[(3−{[(1S)−1−(クロロメチル)−8−メチル−5−(ホスホノオキシ)−1,6−ジヒドロピロロ[3,2−e]インドール−3(2H)−イル]カルボニル}ビシクロ[1.1.1]ペンタ−1−イル)カルボニル]−1−メチル−3,6,7,8−テトラヒドロピロロ[3,2−e]インドール−4−イル}オキシ)カルボニル](メチル)アミノ}エチル)(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド、構造
【0123】
【化8】
を有するN
2−アセチル−L−リシル−L−バリル−N
5−カルバモイル−N−[4−({[(2−{[({(8S)−8−(クロロメチル)−6−[(4−{[(1S)−1−(クロロメチル)−8−メチル−5−(ホスホノオキシ)−1,6−ジヒドロピロロ[3,2−e]インドール−3(2H)−イル]カルボニル}ペンタシクロ[4.2.0.0
2,5.0
3,8.0
4,7]オクタ−1−イル)カルボニル]−1−メチル−3,6,7,8−テトラヒドロピロロ[3,2−e]インドール−4−イル}オキシ)カルボニル](メチル)アミノ}エチル)(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミドが含まれる。
【0124】
エンジインは、9員環および10員環またはコンジュゲートした三重−二重−三重結合の環状系の存在を特徴とする、1つのクラスの抗腫瘍細菌産物である。典型的なエンジインには、限定はしないが、カリケアマイシン、エスペラマイシン、ウンシアラマイシン、ダイネミシンおよびそれらの誘導体が含まれる。
【0125】
ゲルダナマイシンは、Hsp90(熱ショックタンパク質90)に結合するベンゾキノンアンサマイシン抗生物質であり、抗腫瘍薬として使用されている。典型的なゲルダナマイシンには、限定はしないが、17−AAG(17−N−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン)および17−DMAG(17−ジメチルアミノエチルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン)が含まれる。
【0126】
ヘミアステリンおよびその類似体(例えば、HTI−286)は、チューブリンに結合し、正常な微小管ダイナミクスを破壊し、化学量論量で微小管を脱重合する。
【0127】
マイタンシンまたはその誘導体であるマイタンシノイドは、チューブリンの重合の阻害を介して有糸分裂の間の微小管形成を阻害することによって、細胞増殖を阻害する。Remillardら、Science 189:1002〜1005(1975)を参照されたい。典型的なマイタンシンおよびマイタンシノイドには、限定はしないが、メルタンシン(DM1)およびその誘導体ならびにアンサミトシンが含まれる。
【0128】
ピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD)およびインドリノ−ベンゾジアゼピン二量体(IGN)は、二本鎖のDNAに結合する、1つまたは複数のイミン官能基またはそれらの等価物を含有する抗腫瘍薬である。PBD分子およびIGN分子は、天然産物アントラマイシンをベースとし、配列選択的様式でDNAと相互作用し、プリン−グアニン−プリン配列が好ましい。典型的なPBDおよびその類似体には、限定はしないが、SJG−136が含まれる。
【0129】
スプリセオスタチンおよびプラジエノライドは、スプライシングを阻害しかつスプライセオソーム、SF3bと相互作用する抗腫瘍化合物である。スプリセオスタチンの例としては、限定はしないが、スプリセオスタチンA、FR901464、および構造
【0130】
【化9】
を有する(2S,3Z)−5−{[(2R,3R,5S,6S)−6−{(2E,4E)−5−[(3R,4R,5R,7S)−7−(2−ヒドラジニル−2−オキソエチル)−4−ヒドロキシ−1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタ−5−イル]−3−メチルペンタ−2,4−ジエン−1−イル}−2,5−ジメチルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]アミノ}−5−オキソペンタ−3−エン−2−イルアセテートが挙げられる。プラジエノライドの例としては、限定はしないが、プラジエノライドB、プラジエノライドDおよびE7107が挙げられる。
【0131】
タキサンは、抗チューブリン物質または有糸分裂阻害物質として作用するジテルペンである。典型的なタキサンには、限定はしないが、パクリタキセル(例えば、TAXOL(登録商標))およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))が含まれる。
【0132】
ツブリシンは、微小管を脱重合して有糸分裂停止を誘発することが示されている、粘液細菌の菌株から分離される天然産物である。典型的なツブリシンには、限定はしないが、ツブリシンA、ツブリシンBおよびツブリシンDが含まれる。
【0133】
ビンカアルカロイドもまた、抗チューブリン物質である。典型的なビンカアルカロイドには、限定はしないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンが含まれる。
【0134】
いくつかの実施形態において、作用物質部分は免疫抑制物質である。免疫抑制物質の例としては、限定はしないが、ガンシクロビル、エタネルセプト、タクロリムス、シロリムス、ボクロスポリン、シクロスポリン、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート、ならびに糖質コルチコイドならびにその類似体および誘導体が挙げられる。
【0135】
いくつかの実施形態において、作用物質部分は、イメージング剤(例えば、フルオロフォアまたはキレート剤)、例えば、フルオレセイン、ローダミン、ランタニド蛍光体およびそれらの誘導体、またはキレート剤に結合した放射性同位体である。フルオロフォアの例としては、限定はしないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(例えば、5−FITC)、フルオレセインアミダイト(FAM)(例えば、5−FAM)、エオシン、カルボキシフルオレセイン、エリスロシン、Alexa Fluor(登録商標)(例えば、Alexa 350、405、430、488、500、514、532、546、555、568、594、610、633、647、660、680、700または750)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)(例えば、5−TAMRA)、テトラメチルローダミン(TMR)およびスルホローダミン(SR)(例えば、SR101)が挙げられる。キレート剤の例としては、限定はしないが、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N’’’−四酢酸(DOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン、1−グルタル酸−4,7−酢酸(デフェロキサミン)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)および1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸)(BAPTA)が挙げられる。
【0136】
いくつかの実施形態において、作用物質部分はポリペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗体、例えば、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体またはマウスモノクローナル抗体である。
【0137】
いくつかの実施形態において、作用物質部分は、毒素ポリペプチド(または毒素タンパク質)である。毒素ポリペプチドの例としては、限定はしないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖、リジンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、ツルレイシ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア オフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、阻害剤シスチンノット(ICK)ペプチド(例えば、セラトトキシン)、およびコノトキシン(例えば、KIIIAまたはSmIIIa)が挙げられる。
【0138】
いくつかの実施形態において、放射性同位体または他の標識を、キレート剤を有するアミンドナー物質への抗体のコンジュゲーションのための作用物質部分内に(キレート剤への結合によって)組み込むことができる。放射性同位体または他の標識の例としては、限定はしないが、
3H、
14C、
15N、
35S、
18F、
32P、
33P、
64Cu、
68Ga、
89Zr、
90Y、
99Tc、
123I、
124I、
125I、
131I、
111In、
131In、
153Sm、
186Re、
188Re、
211At、
212Biおよび
153Pbが挙げられる。
【0139】
いくつかの実施形態において、作用物質部分は、生体適合性ポリマーである。抗体は、抗体の生物学的特性を向上させるように、例えば、血清の半減期および生物活性を増大させるように、ならびに/またはインビボでの半減期を延長させるように、グルタミン含有タグ、内因性グルタミンおよび/または反応性の内因性グルタミンを介して生体適合性ポリマーにコンジュゲートし得る。生体適合性ポリマーの例としては、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体および両性イオン含有生体適合性ポリマー(例えば、ホスホリルコリン含有ポリマー)が挙げられる。
【0140】
いくつかの実施形態において、アミンドナー物質(X−Y−Z)は、
【0141】
【化10】
であり、式中、Xは、NH
2であり(すなわち、CH
2−CH
2−CO−NH−としてグルタミンと共有結合を形成する)、mは0から20であり、nは1から8であり、pは0から3であり、qは0または1であり、アミノ酸は、任意の従来のまたは非従来のアミノ酸であり、Zは、細胞傷害物質またはイメージング剤である。
【0142】
従来のアミノ酸または天然アミノ酸は、共通の側鎖特性に基づいていくつかの群に分けられる:(1)非極性:Met、Ala、Val、Leu、Ile、(2)電荷を有さない極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、(3)酸性(負に荷電している):Asp、Glu、(4)塩基性(正に荷電している):Lys、Arg、および(5)鎖の方向に影響する残基:Gly、Pro、および(6)芳香族性:Trp、Tyr、Phe、His。従来のアミノ酸には、LまたはDの立体化学が含まれる。
【0143】
非従来のアミノ酸は、非天然アミノ酸である。非従来のアミノ酸の例としては、限定はしないが、アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、アミノ酪酸、ピペリジン酸、アミノカプロン酸、アミノヘプタン酸、アミノイソ酪酸、アミノピメリン酸、シトルリン、ジアミノ酪酸、デスモシン、ジアミノピメリン酸、ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、および他の類似のアミノ酸およびアミノ酸誘導体(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。
【0144】
いくつかの実施形態において、アミンドナー物質は、反応性アミンおよび作用物質部分を含む生体適合性ポリマーである。
【0145】
いくつかの実施形態において、アミンドナー物質は、Alexa 488カダベリン、5−FITCカダベリン、Alexa 647カダベリン、Alexa 350カダベリン、5−TAMRAカダベリン、5−FAMカダベリン、SR101カダベリン、5,6−TAMRAカダベリン、5−FAMリジン、Ac−Lys−Gly−MMAD、アミノ−PEG3−C2−MMAD、アミノ−PEG6−C2−MMAD、アミノ−PEG3−C2−アミノ−ノナノイル−MMAD、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−β−Ala−MMAD、アミノカプロイル−MMAD、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−0101、アミノ−PEG3−C2−Val−Cit−PABC−MMAD、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−0101、アミノカプロイル−MMAE、アミノ−PEG3−C2−MMAE、アミノ−PEG2−C2−MMAE、アミノカプロイル−MMAF、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAE、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−MMAF、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAF、アミノ−PEG2−C2−MMAF、アミノ−PEG3−C2−MMAF、プトレシニル−ゲルダナマイシン、Ac−Lys−プトレシニル−ゲルダナマイシン、アミノカプロイル−3377、アミノカプロイル−0131、アミノ−PEG6−C2−0131、アミノ−PEG6−C2−3377、アミノカプロイル−0121、アミノ−PEG6−C2−0121、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−MMAD、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−MMAE、2−アミノエトキシ−PEG6−NODAGA(または2,2’−(7−(1−アミノ−28−カルボキシ−25−オキソ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサ−24−アザオクタコサン−28−イル)−1,4,7−トリアゾナン−1,4−ジイル)二酢酸)、およびN−2−アセチル−L−リシル−L−バリル−N〜5〜−カルバモイル−N−[4({[(2{[(3R,5S,7R,8R)−8−ヒドロキシ−7−{(1E,3E)−5−[(2S,3S,5R,6R)−5−{[(2Z,4S)−4−ヒドロキシペンタ−2−エノイル]アミノ}−3,6−ジメチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]−3−メチルペンタ−1,3−ジエン−1−イル}−1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタ−5−イル]アセチル}ヒドラジニル)カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミドからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、アミンドナー物質は、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−0101またはアミノ−PEG6−C2−MMADである。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、アミノ酸配列GGLLQGA(配列番号23)またはGGLLQGPP(配列番号22)、およびさらにLLQGA(配列番号11)、LLQGPP(配列番号20)またはLLQG(配列番号2)を含み、アミンドナー物質は、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−0101および/またはアミノ−PEG6−C2−MMADである。アミンドナー物質の典型的な構造を、表2に列挙する。
【0153】
より高ロードの抗体−薬剤コンジュゲートを作製するための方法
本明細書中に記載するADCを作製するための方法もまた、提供する。一態様において、本発明は、式:抗体−(T−(X−Y−Z
a)
b)
c[式中、Tは、1)特異的部位で操作されたグルタミン含有タグ、2)内因性グルタミン、および/または3)抗体の操作もしくは操作されたトランスグルタミナーゼによって反応性にされた内因性グルタミンであり、Xはアミンドナー単位であり、Yはリンカーであり、Zは作用物質部分であり、X−Y−Zは、グルタミン含有タグ、内因性グルタミンおよび/または反応性の内因性グルタミンに部位特異的にコンジュゲートしているアミンドナー物質であり、aは1〜6の整数であり、bは1〜6の整数であり、cは1〜20の整数であり、a、bおよびcの積(薬剤−抗体比率)は少なくとも約5である]を含むADCを作製するための方法であって、a)抗体およびグルタミン含有タグ;ならびに/または内因性グルタミンおよび/もしくは反応性の内因性グルタミンを有する抗体を含む抗体−T分子を提供するステップと、b)アミンドナー物質をトランスグルタミナーゼ(例えば、操作されたトランスグルタミナーゼまたは精製されたトランスグルタミナーゼ)の存在下において抗体−T分子と接触させるステップと、c)抗体−Tをアミンドナー物質に共有結合によって連結させて、抗体−薬剤コンジュゲートを形成するステップとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、抗体−T分子は、CHO細胞において発現される。
【0154】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載する方法を用いて調製されたADCは、少なくとも約51%のコンジュゲーション効率を有する。いくつかの実施形態において、ADCは、少なくとも約51%〜60%、61%〜70%、71%〜80%、81%〜90%または91%〜100%のいずれかのコンジュゲーション効率を有する。いくつかの実施形態において、ADCは、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%のいずれかのコンジュゲーション効率を有する。
【0155】
いくつかの実施形態において、接触されるアミンドナー物質と接触される抗体−T分子との間のモル濃度比率は、約4:1〜約10000:1である。例えば、トランスグルタミナーゼによって触媒されるコンジュゲーション反応のためにロードされるかまたは用いられる、アミンドナー物質(例えば、細胞傷害性薬剤)と抗体(例えば、グルタミン含有タグに結合したまたは天然/反応性のグルタミンを含有している)との間のモル濃度比率は、約20:1であり得る。いくつかの実施形態において、接触されるアミンドナー物質と接触される抗体−T分子との間のモル濃度比率は、約5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、2000:1、3000:1、4000:1、5000:1、6000:1、7000:1、8000:1、9000:1または10000:1のいずれかである。
【0156】
いくつかの実施形態において、抗体が特異的部位においてグルタミン含有タグ、内因性グルタミンおよび/もしくは反応性の内因性グルタミンを介してアミンドナー物質とコンジュゲートしている場合、ADCはより安定であり(例えば、インビボでのADC半減期がさらに長く)かつ/またはより高い曝露量を有する。例えば、N297QおよびK222Rのアミノの修飾;抗体軽鎖および/または抗体重鎖のカルボキシル末端のならびに/または本明細書中に記載する抗体軽鎖および/もしくは抗体重鎖の1つもしくは複数の位置(例えば、表1を参照されたい)のグルタミン含有タグ(1つまたは複数)を含むADCは、マレイミド連結を有する従来のADCより安定である。
【0157】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法はさらに、精製ステップを含む。本明細書において記載されるADCは、様々な精製方法、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、透析、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(例えば、HICでの分画)、硫酸アンモニウム沈殿、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール誘導体沈殿、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、ゲル濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、および弱分割クロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。
【0158】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの精製ステップは、アフィニティークロマトグラフィー方法のステップを含む。タンパク質Aリガンド(合成の、組換えの、または天然の)を、本明細書において記載される操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートをアフィニティー精製するために用いることができる。合成のまたは組換えのタンパク質Aリガンドは、GE Healthcare(Piscataway、NJ)、Pierce(Rockford、IL)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)、またはApplied Biosystems(Foster City、CA)から商業的に購入することができ、天然タンパク質Aリガンド(例えば、MABSELECT(商標)、PROSEP(商標)Va、およびPROSEP(商標)Ultra Plus)は、GE Healthcare(Piscataway、NJ)またはMillipore(Billerica、MA)から商業的に購入することができる。
【0159】
いくつかの実施形態において、精製ステップから生じる、精製された本明細書において記載されるADCは、非常に純度が高く、すなわち、少なくとも約70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、95%〜98%、または99%のいずれかの純度である。例えば、精製されたADCは、約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のいずれかの純度である。
【0160】
薬剤ロード量が高い抗体−薬剤コンジュゲートを使用する方法
本発明のADCは、限定はしないが、治療的処置法および診断的処置方法を含む様々な用途において有用である。
【0161】
一態様において、本発明は、対象において癌を治療するための方法を提供する。したがって、いくつかの実施形態において、それを必要としている対象において癌を治療する方法であって、本明細書中に記載するADCを含む組成物(例えば、医薬組成物)の有効量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。本明細書中において使用する癌には、限定はしないが、固体癌(例えば、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、絨毛癌、結腸癌、食道癌、胃癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌および皮膚癌)、および液性癌(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病(HCL)、T細胞性前リンパ性白血病(T−PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)(濾胞性リンパ腫(FL)およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)を含む)、および成人T細胞白血病)が含まれる。
【0162】
いくつかの実施形態において、それを必要としている対象において腫瘍の成長または進行を阻害する方法であって、本明細書中に記載するADCを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。他の実施形態において、それを必要としている対象において癌細胞または腫瘍(例えば、固形腫瘍または液状腫瘍)の転移を阻害する方法であって、本明細書中に記載するADCを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。他の実施形態において、それを必要としている対象において腫瘍退縮を誘発する方法であって、本明細書中に記載するADCを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0163】
別の態様において、インビボまたはインビトロで癌関連タンパク質(例えば、Trop−2、BRCA1、BRCA2、HER2、VEGF、CD20、CD25、EFGR、5T4、CD22など)と関連する状態を検出、診断および/または監視する方法が提供される。したがって、いくつかの実施形態において、癌を患っている疑いがある対象において癌を診断する方法であって、a)対象の試料を本明細書中に記載するADCと、ADCと癌関連タンパク質との結合をもたらす条件下で接触させるステップと、b)癌関連タンパク質へのADCの結合を測定するステップとを含む方法が提供される。
【0164】
本明細書中に記載するADCの作用物質部分は、検出可能な部分、例えば、イメージング剤および酵素−基質標識であり得る。本明細書中に記載するADCはまた、インビボ診断アッセイ、例えば、インビボイメージング(例えば、PETまたはSPECT)または染色試薬に使用し得る。
【0165】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載する方法は、追加の治療法形態で対象を治療するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、追加の治療法形態は、限定はしないが、化学療法、放射線、手術、ホルモン療法および/または追加の免疫療法を含む追加の抗癌療法である。
【0166】
いくつかの実施形態において、追加の治療法形態は、本明細書中に記載するADCに加えて、1種または複数の治療薬を投与するステップを含む。治療薬には、限定はしないが、第2のADC(例えば、従来のADC、例えば、ブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(登録商標))およびado−トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標)))、抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗HER2抗体、抗CD25抗体および/または抗CD20抗体)、血管新生阻害薬、細胞傷害物質(例えば、ドセタキセル、シスプラチン、ドキソルビシン、マイトマイシン、タモキシフェンまたはフルオロウラシル)、および抗炎症薬(例えば、プレドニゾンおよびプロゲステロン)が含まれる。
【0167】
医薬組成物
本発明はまた、本明細書中に記載するより高ロードのADCを、薬学的に許容できる賦形剤または担体中に含む医薬組成物を提供する。ADCは、単独で、または本発明の1種もしくは複数の他のADCと組み合わせて、または1種もしくは複数の他の薬剤と組み合わせて(またはその任意の組み合わせとして)投与することができる。例えば、本発明のADCは、従来のADC(例えば、DAR1〜4)または本明細書中に記載するトランスグルタミナーゼ−介在性コンジュゲーション技術を用いるDAR1〜4の部位特異的ADCと組み合わせて投与することができる。したがって、本発明の方法および使用はまた、以下に詳述されるように、他の活性物質との組み合わせ(同時投与)の実施形態を包含する。
【0168】
本明細書において用いられる場合、用語「同時投与」、「同時投与された」、または「と組み合わせて」は、(i)本明細書において開示されるADCおよび治療物質(1つまたは複数)が、このような成分を治療を必要としている患者にほぼ同時に放出する単回投与形態に共に製剤されている場合の、前記成分の組み合わせの、前記患者への同時投与、(ii)本明細書において開示されるADCおよび治療物質(1つまたは複数)が、治療を必要としている患者によってほぼ同時に摂取される(その際、前記成分が前記患者にほぼ同時に放出される)個別の投与形態に、互いに分かれて製剤されている場合の、前記成分のこのような組み合わせの、前記患者へのほぼ同時の投与、(iii)本明細書において開示されるADCおよび治療物質(1つまたは複数)が、各投与間の十分な時間間隔を伴って治療を必要としている患者によって連続的な時点で摂取される(その際、前記成分が前記患者に実質的に異なる時点で放出される)個別の投与形態に、互いに分かれて製剤されている場合の、前記成分のこのような組み合わせの、前記患者への連続投与、ならびに(iv)本明細書において開示されるADCおよび治療物質(1つまたは複数)が、制御された様式で前記成分を放出する(その際、これらの成分が、治療を必要としている患者に同時におよび/または異なる時点で同時放出、連続放出、および/またはオーバーラップ放出される)単回投与量に、共に製剤されている場合の、前記成分のこのような組み合わせの、前記患者への連続投与を意味するものであり、これを指す。
【0169】
全体として、本明細書において開示されるADCは、1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせた製剤として投与されることに適している。用語「賦形剤」は、本発明の化合物(1つまたは複数)以外の任意の成分を記載するために本明細書において用いられる。賦形剤(1つまたは複数)の選択は、特定の投与態様、溶解度および安定性に対する賦形剤の影響、ならびに投与形態の性質などの因子に大きく依存する。本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容できる賦形剤」には、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容できる賦形剤のいくつかの例として、水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組み合わせがある。いくつかの実施形態において、限定はしないが、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、または塩化ナトリウムを含む等張剤が、医薬組成物内に含まれる。薬学的に許容できる物質のさらなる例としては、限定はしないが、抗体の保存期間または有効性を増強させる、湿潤剤または微量の補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤、または緩衝液が挙げられる。
【0170】
本発明はまた、本明細書中に記載する複数の本発明のより高ロードのADCを含む医薬組成物であって、平均薬剤−抗体比率が約5.0〜約720.0である医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、平均DARは、少なくとも約5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、80.0、90.0、100.0、110.0、120.0、130.0、140.0、150.0、200.0、250.0、300.0、350.0、400.0、450.0、500.0、550.0、600.0、650.0または700.0である。
【0171】
一変形形態において、本発明は、複数のADCを含む医薬組成物であって、少なくとも1種のADCが、本明細書中に記載する本発明のより高ロードのADCであり、平均薬剤−抗体比率が約4.1〜約720.0である、医薬組成物をさらに提供する。いくつかの実施形態において、平均DARは、少なくとも約4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、80.0、90.0、100.0、110.0、120.0、130.0、140.0、150.0、200.0、250.0、300.0、350.0、400.0、450.0、500.0、550.0、600.0、650.0または700.0である。例えば、医薬組成物は、本明細書中に記載するDARが少なくとも約5の、1種または複数の部位特異的ADCと、DARが1、2、3または4の1種または複数の部位特異的ADC(本明細書中に記載するトランスグルタミナーゼ−介在性コンジュゲーション技術を用いる)とを含むことができる。別の例として、医薬組成物は、1)本明細書中に記載するDARが少なくとも約5の1種または複数の部位特異的ADCと、2)DARが1、2、3または4のDARの1種または複数の部位特異的ADC(本明細書中に記載するトランスグルタミナーゼ介在性コンジュゲーション技術を用いる)と、3)DARが1、2、3、4またはそれ以上の、マレイミド連結を有する1種または複数の従来のADCとを含むことができる。
【0172】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるADCは、例えばPCT公開WO98/52976およびWO00/34317において記載されているような既知の技術を用いて、対象への投与の際に免疫原性を低減させるために脱免疫化することができる。
【0173】
本発明の医薬組成物およびその調製方法は、当業者に容易に明らかとなる。このような組成物およびその調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第22版(Mack Publishing Company、2012)において見ることができる。医薬組成物は、好ましくは、GMP条件下で製造される。
【0174】
本発明の医薬組成物は、大量に、1つの単一単位用量で、または複数の単一単位用量で、調製、包装、または販売することができる。本明細書において用いられる場合、「単位用量」は、所定の量の活性成分を含む、医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、通常、対象に投与される活性成分の投与量、またはこのような投与量の都合の良い画分、例えば、このような投与量の2分の1または3分の1に等しい。当技術分野において認められている、ペプチド、タンパク質、または抗体を投与するための任意の方法を、本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲートに適切に採用することができる。
【0175】
本発明の医薬組成物は、典型的には、非経口投与に適している。医薬組成物の非経口投与には、対象組織の物理的破壊および組織内の破壊を介する医薬組成物の投与によって特徴付けされる、したがって通常は、血流内、筋肉内、または内臓内への直接的な投与をもたらす、任意の投与経路が含まれる。例えば、非経口投与には、限定はしないが、組成物の注射、外科的切開を介する組成物の適用、組織を貫通する非外科的な創傷を介する組成物の適用などによる、医薬組成物の投与が含まれる。特に、非経口投与には、限定はしないが、皮下の、腹腔内の、筋肉内の、胸骨内の、静脈内の、動脈内の、髄腔内の、脳室内の、尿道内の、頭蓋内の、滑液嚢内の注射または注入、および腎臓透析注入技術が含まれると考えられる。いくつかの実施形態において、非経口投与は、静脈内経路または皮下経路である。
【0176】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、典型的には、通常、滅菌水または無菌の等張生理食塩水などの薬学的に許容できる担体と組み合わされた活性成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で、調製、包装、または販売することができる。注射可能な製剤は、単位投与形態で、例えばアンプル、または防腐剤を含有する多回用量容器で、調製、包装、または販売することができる。非経口投与のための製剤には、限定はしないが、懸濁液、溶液、油性媒体または水性媒体内のエマルジョン、ペーストなどが含まれる。このような製剤はさらに、限定はしないが懸濁剤、安定剤、または分散剤を含む、1つまたは複数のさらなる成分を含み得る。非経口投与のための製剤の1つの実施形態において、活性成分は、適切な媒体(例えば、発熱性物質を有さない滅菌水)で再構成して、その後、再構成された組成物を非経口投与するために、乾燥(すなわち、粉末または粒状)形態で提供される。非経口製剤にはまた、塩、炭水化物、および緩衝剤(好ましくは3から9のpHまで)などの賦形剤を含有し得る水性溶液が含まれるが、一部の適用では、非経口製剤は、無菌の非水性溶液として、または発熱性物質を有さない滅菌水などの適切な媒体と組み合わせて用いるための乾燥形態として、さらに適切に製剤することができる。典型的な非経口投与形態には、無菌の水溶液、例えば水性プロピレングリコール溶液またはデキストロース溶液内の、溶液または懸濁液が含まれる。このような投与形態は、必要に応じて、適切に緩衝することができる。有用な他の非経口投与可能な製剤には、微晶質形態のまたはリポソーム調製物内の活性成分を含むものが含まれる。非経口投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出となるように製剤することができる。調節放出製剤には、制御放出製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、標的放出製剤、およびプログラム放出製剤が含まれる。例えば、1つの態様において、無菌の注射可能な溶液は、所要の量の操作されたFc含有ポリペプチド、例えば抗体−薬剤コンジュゲートまたは二重特異的抗体を、上記に列挙された成分の1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒内に組み込み、必要であればその後、濾過滅菌することによって、調製することができる。通常、分散は、活性化合物を、塩基性分散媒および上記に列挙されたもののうち所要の他の成分を含有する無菌媒体内に組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末のケースでは、好ましい調製方法は、活性成分の粉末と、先に滅菌濾過されたその溶液からの任意のさらなる所望の成分とをもたらす、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を用いることによって、分散のケースでは所要の粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を用いることによって、維持することができる。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物内に含めることによってもたらされ得る。
【0177】
投与レジメンは、最適な所望の応答をもたらすように調節することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができるか、複数の分割用量を経時的に投与することができるか、または用量を、急迫的な治療的状況によって指示されるように比例的に低減もしくは増大させることができる。投与の容易性および投与量の均一性のために、非経口組成物を投与単位形態に製剤することが、特に有利である。投与単位形態は、本明細書において用いられる場合、治療される患者/対象のための単位投与量として適した物理的に個別の単位を指し、各単位は、所要の薬学的担体と組み合わされた、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の仕様は、通常、(a)作用物質部分(例えば、細胞傷害物質などの低分子)の固有の特徴および達成されるべき特定の治療的効果または予防的効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためのこのような活性化合物の配合の当技術分野に特有の限定によって、およびこれらに直接的に応じて、決定される。
【0178】
したがって、当業者には、本明細書において提供される開示に基づいて、用量および投与レジメンが治療分野において周知の方法に従って調節されることが理解されよう。すなわち、最大耐用量を容易に確定することができ、検出可能な治療的利益を患者にもたらす有効量もまた、検出可能な治療的利益を患者にもたらすための各作用物質を投与するための時間的要件が可能であるように、確定することができる。したがって、特定の用量および投与レジメンが本明細書において例示されるが、これらの例は、本発明の実施において患者に提供され得る用量および投与レジメンを限定するものでは全くない。
【0179】
投与量値が、軽減されるべき症状のタイプおよび重症度で変化し得、単回用量または複数回用量を含み得ることに留意されたい。さらに、任意の特定の対象について、具体的な投与レジメンが、個体の要求および組成物を投与するかまたは投与を監督する人の専門的な判断に従って経時的に調節されるべきであること、ならびに本明細書において説明される投与量範囲は典型的なものにすぎず、本発明の組成物の範囲または実施を限定することを意図したものではないことも理解されたい。さらに、本発明の組成物を用いる投与レジメンは、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、症状の重症度、投与経路、および採用される特定の抗体を含む、様々な因子に基づき得る。したがって、投与レジメンは広く変化し得るが、標準的な方法を用いて通常通りに決定することができる。例えば、用量は、毒性効果などの臨床効果および/または実験値を含み得る薬物動態学的または薬力学的なパラメーターに基づいて調節することができる。したがって、本発明は、当業者によって決定される、患者内での用量増加を包含する。適切な投与量およびレジメンの決定は、関連する分野において周知であり、本明細書において開示される教示を提供された当業者には、包含されることが理解されよう。
【0180】
ヒト対象への投与では、本明細書において開示されるADCの毎月用量の全量は、典型的には、当然のことながら投与態様に応じて、患者当たり約0.01mgから約1200mgの範囲である。例えば、静脈内の毎月用量は、患者当たり約1から約1000mgを要し得る。毎月用量の全量は、単回用量または分割用量で投与することができ、医師の指示で、本明細書によって示される典型的な範囲から外れてもよい。
【0181】
本明細書において開示されるADCの治療上または予防上有効な量の典型的な非限定的な範囲は、1月で患者当たり約0.01から約1000mgである。一部の実施形態において、ADCは、1月で患者当たり約1から約200または約1から約150mgで投与することができる。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0182】
キット
本発明はまた、上記の障害の治療において用いるためのキット(または製品)を提供する。本発明のキットは、精製されたADCおよび疾患の治療にコンジュゲートを用いるための指示を含む、1つまたは複数の容器を含む。例えば、指示は、癌(例えば、固体癌または液性癌)などの疾患を治療するためのADCの投与についての記載を含む。キットはさらに、個体が疾患および疾患の段階を有しているかの同定に基づく、治療に適切な個体の選択についての記載を含み得る。
【0183】
ADCの使用に関する指示は、通常、目的の治療のための投与量、投与スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、大量包装(例えば、多用量包装)、または小単位用量であり得る。本発明のキットにおいて提供される指示は、典型的には、ラベルまたは包装挿入物(例えば、キット内に含まれる紙片)上に書き込まれた指示であるが、機械で読み取り可能な指示(例えば、磁気ディスクまたは光学式記憶ディスク上に記録された指示)もまた許容できる。
【0184】
本発明のキットは、適切な包装内にある。適切な包装には、限定はしないが、バイアル、ボトル、瓶、柔軟な包装(例えば、密封されたマイラーまたはプラスチック袋)などが含まれる。特定の装置、例えば吸入器、経鼻投与装置(例えば、アトマイザー)、またはミニポンプなどの注入装置と組み合わせて用いるための包装もまた検討される。キットは、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内の溶液袋、または皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。容器はまた、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内の溶液袋、または皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。組成物内の少なくとも1つの活性物質は、本明細書において記載される高ロードのADCである。容器はさらに、第2の薬学的に活性な作用物質を含み得る。
【0185】
キットは、緩衝液および説明情報などのさらなる成分を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器上のまたは容器と組み合わされたラベルまたは包装挿入物(1つまたは複数)とを含む。
【実施例】
【0186】
本明細書において記載される実施例および実施形態は例示的なものにすぎず、これらに照らした様々な修正または変更は当業者に示唆され、本願の趣旨および範囲に含まれる。
【0187】
(実施例1)
標的発現が高い細胞(BxPC3、Trop2+++)における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現が高いBxPC3細胞における、より高ロードのADC(部位特異的ADCおよび従来のADC)のインビトロでの細胞傷害性を例示する。
【0188】
抗体−薬剤コンジュゲーション
a.トランスグルタミナーゼ介在性抗体−薬剤コンジュゲーション
キメラマウス抗Trop−2抗体を、様々なアミノ酸位置でグルタミン含有トランスグルタミナーゼ(「Q」)タグ(例えば、TG6、LCQ04、H7c、L11b;表1を参照されたい)で操作されたヒトIgG1サブタイプとして発現させ、様々なリンカーおよびペイロード(例えば、アミノカプロイル−vc−PABC−MMAD(アミノカプロイル−バリン−シトルリン−p−アミノベンジルオキシカルボニル−MMAD);アミノ−PEG6−C2−MMAD)とコンジュゲートさせた。一例において、トランスグルタミナーゼタグは、抗体の軽鎖および重鎖のC末端の両方で、ならびにヒトIgGの297位(EUナンバリングスキーム)で操作した(例えば、Trop−2抗体の297位において、野生型アミノ酸アスパラギン(N)を、グルタミンで置換した(N297Q))。抗体の軽鎖および重鎖の両方、または抗体の重鎖もしくは軽鎖内の複数の部位において操作されたタグの組み合わせは、抗体1つ当たり複数のコンジュゲーション部位を有していた(例えば、DAR4〜10)。次いで、ペイロード(例えば、MMAD)への抗Trop−2抗体のコンジュゲーションを、特異的部位(例えば、重鎖または軽鎖のカルボキシル末端および/もしくはアミノ末端、297位、ならびに/または抗体の別の部位)にグルタミン含有タグ(1つまたは複数)を有する抗Trop−2抗体と、ペイロード(例えば、MMAD)に連結されたアミン含有リンカーとの間の、微生物トランスグルタミナーゼによって触媒されるアミド基転移反応を介して行った。場合によっては、抗体の222位(EUナンバリングスキーム)の野生型アミノ酸リジンを、アミノ酸アルギニンに置き換えた(「K222R」)。例えば、K222R置換は、より均質な抗体およびペイロードコンジュゲート組成物、ならびに/または抗体軽鎖のC末端におけるグルタミンタグとの鎖間架橋の著しい減少をもたらすという驚くべき効果を有することが判明した。アミド基転移反応において、抗体上のグルタミンはアシルドナーとして作用し、アミン含有化合物はアシルアクセプター(アミンドナー)として作用した。33μMの濃度の精製抗Trop−2抗体を、150mMの塩化ナトリウムもしくは硫酸ナトリウム、および25mMのMES、HEPES[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸]またはTris HCl緩衝液(pH範囲6.2〜9.2)中、1〜3%(w/v)のストレプトベルティシリウム モバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)トランスグルタミナーゼ(ACTIVA(商標)、味の素、日本)の存在下で、33〜3300μMの範囲の10〜100M過剰のアシルアクセプターと共にインキュベートした。反応条件を、個別のアシルアクセプター誘導体に応じて調整し、最適な効率および特異性は、典型的には、150mMのNaCl、25mMのTris HCl(pH8.5)中、33μMの抗体、660μMの誘導体、および2%(w/v)のトランスグルタミナーゼで観察された。37℃で16〜20時間インキュベーション後、抗体を、当業者に知られている標準的なクロマトグラフィー方法、例えば、GE Healthcareからの市販のアフィニティークロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて、MabSelect SuRe(商標)樹脂またはButyl Sepharose(商標)High Performance(GE Healthcare、Piscataway、NJ)で精製した。
【0189】
b.従来の抗体−薬剤コンジュゲーション
平均薬剤ロード量が4(例えば、抗体1分子当たり4つのMMAD)である、従来のマレイミド連結を介してPEG6−C2−MMADとコンジュゲートされた抗体(例えば、キメラマウス抗Trop−2抗体(m7E6))を生成するために、最初に、5mg/mlの抗体を、25mMのTris(pH7.5)、150mMのNaClを含有する緩衝液中7.5モル当量のTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)で37℃において2時間還元した。還元された抗体に、室温(約22℃)において7.5モル過剰のマレイミド−PEG6−C2−MMADを加え、1時間インキュベートした。反応混合物を、4℃においてPBS(リン酸緩衝溶液)に対して透析し、0.2μmフィルターを通して滅菌濾過した。薬剤ロード量が8の、マレイミド−PEG6−C2−MMADを有するm7E6を生成するために、抗体を、50mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含む前述のような反応緩衝液中、10モル過剰のTCEPで還元した。12モル過剰のマレイミド−PEG6−C2−MMADを、前述のように処理された、還元された抗体および材料に加えた。薬剤ロード量が6の、マレイミド−PEG6MMADとコンジュゲートされたm7E6を生成するために、抗体を、DAR8の還元に関しては、緩衝液中8倍モル過剰のTCEPで還元し、続いて8倍モル過剰のマレイミド−PEG6−C2−MMADを加えた。DAR6の種を精製するために、反応混合物を希釈して、0.75Mの硫酸アンモニウム、25mMのリン酸カリウム、pH7の緩衝液組成物(緩衝液A)を得た。材料を、直列に接続された2×1mlのButyl HP Hi Trap(GE Healthcare)に適用し、2CV(カラム容量)の緩衝液Aで洗浄し、20%イソプロパノールを含む25mMのリン酸カリウム(pH7)への20CV直線勾配で溶離させた。DAR6を含有するフラクションをプールし、PBSに対して透析し、10kDaのAmicon Ultra遠心式フィルターユニット(Millipore Corporation)を用いて濃縮した。
【0190】
インビトロでの研究
キメラ抗Trop2抗体、m7E6 H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.99、部位特異的)、m7E6 LCQ04/K222RアミノPEG6−C2−MMAD(DAR1.97、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.83、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.85、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.71、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.76、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.80、部位特異的)およびm7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR7.20、従来)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現するBxPC3細胞を用いて行った。この実施例および本明細書中に記載する他の実施例におけるDARの数は、抗体1分子当たりのペイロードの比率を指す。使用したリンカーはPEG6であり、使用したペイロードはMMADであった。BxPc3は、高い標的発現レベル(Trop−2+++)を有する癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(すなわち、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表し、試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表した。細胞傷害アッセイの結果を
図1に示し、表3に要約する。DAR7.71(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD)、DAR7.76(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)およびDAR7.80(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD)の3つの部位特異的分子は、DAR7.20の従来の方法でコンジュゲートされたADC(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)と同程度に強力であった。
【0191】
これらの結果は、全てのADCは、標的発現が高いBxPC3細胞へのそれらのペイロードのロード量に関わらず、ほぼ完全な細胞死滅を達成したが、より高ロードのコンジュゲートは、より低ロードのコンジュゲートと比較してより強力であったことを示している。
【0192】
【表3】
【0193】
(実施例2)
標的発現が中等度の細胞(Colo205、Trop2+)における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現が中程度のColo205細胞における、より高ロードのADC(部位特異的ADCおよび従来のADC)のインビトロでの細胞傷害性を例示する。
【0194】
キメラ抗Trop2抗体、m7E6 H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.99、部位特異的)、m7E6 LCQ04/K222RアミノPEG6−C2−MMAD(DAR1.97、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.83、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.85、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.71、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.76、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.80、部位特異的)およびm7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR7.20、従来)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現するColo205細胞を用いて行った。Colo205は、中等度の標的発現レベル(Trop−2+)を有する癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(すなわち、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表し、試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表した。細胞傷害アッセイの結果を
図2に示し、表4に要約する。DARが5.85以上のADCは、完全な細胞死滅を達成した。DAR7.71(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD)、DAR7.76(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)およびDAR7.80(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD)の3つの部位特異的分子は、DAR7.20の従来の方法でコンジュゲートされたADC(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)と比較して遜色がなかった。
【0195】
これらの結果は、細胞死滅活性および効力の増加と、標的発現が中程度のColo205細胞へのADCのペイロードのロード量との間に正の相関が認められることを示している。
【0196】
より高ロードの分子(例えば、5.85以上のDAR)のみが、完全な細胞死滅を達成できた。
【0197】
【表4】
【0198】
(実施例3)
標的発現が低い細胞(CF−PAC1、Trop2(+))における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現が低いCF−PAC1細胞における、より高ロードの部位特異的ADCのインビトロ細胞傷害性を例示する。
【0199】
キメラ抗Trop2抗体、m7E6 H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.99、部位特異的)、m7E6 LCQ04/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.97、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.83、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.85、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.71、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.76、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.80、部位特異的)およびm7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR7.20、従来)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現するCF−PAC1細胞を用いて行った。CF−PAC1は、低い標的発現レベル(Trop−2+)を有する癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(例えば、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表した。試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表す。表5および
図3は、細胞死滅活性および効力の増加と、標的発現が低いCF−PAC1細胞へのADCのペイロードのロード量との間に正の相関が認められる、例えば、ペイロードのロード量が高いほど、細胞死滅活性が高いことを示している。DAR7.71(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD)、DAR7.76(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)およびDAR7.80(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD)の3つの部位特異的分子は、DAR7.20の従来の方法でコンジュゲートされたADC(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)と比較して遜色がなかった。
【0200】
この例はまた、細胞死滅活性および効力の増加と、細胞、例えば、標的発現が低いCF−PAC1細胞へのADCのペイロードのロード量との間に正の相関が認められることを実証している。
【0201】
【表5】
【0202】
(実施例4)
標的発現がない細胞((SW620、Trop2−)における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現がないSW620細胞における、より高ロードの部位特異的ADCのインビトロでの非特異的細胞傷害性を例示する。
【0203】
キメラ抗Trop2抗体、m7E6 TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.99、部位特異的)、m7E6 LCQ04/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.88、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.92、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.85、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.71、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.76、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.80、部位特異的)およびm7E6マレイミドPEG6−C2−MMAD(DAR7.20、従来)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現しないSW620細胞を用いて行った。SW620は、標的(Trop−2−)を発現しない癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(すなわち、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表し、試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表した。この実施例において、ADCの出発濃度は、ADCの非標的依存的な細胞傷害性作用があるかどうかを判定するために、他のインビトロでの例と比較して266nMから3500nMまで13倍を上回って増加させた。細胞傷害アッセイの結果を
図4に示し、表6に要約する。DAR7.71(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD)、DAR7.76(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)およびDAR7.80(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD)の3つの部位特異的分子は、DAR7.20の従来の方法でコンジュゲートされたADCと比較して非特異的細胞傷害性が有意に低かった。
【0204】
これらの結果は、より高いADC濃度において、非標的依存的な細胞傷害性が観察されたこと、およびこれが、従来のコンジュゲートと比較して、部位特異的ADCにおいて低かったことを示している。
【0205】
【表6】
【0206】
(実施例5)
標的発現が中等度の細胞(Colo205、Trop2+)における、次第に高ロードされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADC対従来の方法でコンジュゲートされた抗Trop−2−ADC)の細胞傷害性の対照比較
この実施例は、標的発現が中程度のColo205細胞における、より高ロードの部位特異的ADCのインビトロでの増加した細胞傷害性および効力を例示する。
【0207】
キメラ抗Trop2抗体、m7E6マレイミドPEG65−C2−MMAD(DAR4.13、従来)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.86、部位特異的)、m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR6.09、従来)、m7E6 N297Q/LCQ04/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.86、部位特異的)、m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR7.80、従来)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.77、部位特異的)および対照IgG N297Q/LCQ04/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.84、部位特異的)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現するColo205細胞を用いて行った。Colo205は、中等度の標的発現レベル(Trop−2+)を有する癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(例えば、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表した、試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表す。細胞傷害アッセイの結果を
図5に示し、表7に要約する。DAR3.86(m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD)、DAR5.86(m7E6 N297Q/LCQ04/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD))およびDAR7.77(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)の3つの部位特異的分子はそれぞれ、従来の方法でコンジュゲートされた、DAR4.13(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)、DAR6.09(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)およびDAR7.80(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)のADCと比較して遜色がなかった。
【0208】
これらの結果は、細胞死滅活性および効力の増加と、標的発現が中程度のColo205細胞へのADCのペイロードのロード量との間に正の相関が認められる(例えば、分子が高ロードであるほど、効力が高いことを示している)。
【0209】
【表7】
【0210】
(実施例6)
薬剤抗体比率が7.76の抗Trop−2 7E6部位特異的オーリスタチンコンジュゲートは、Colo205異種移植モデルにおいて長期腫瘍静止を誘発した
この実施例は、Colo205異種移植モデルにおけるより高ロードの部位特異的ADCの有効性を例示する。
【0211】
m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.76、部位特異的)、m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR7.20、従来)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.92、部位特異的)および対照IgG N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.68、部位特異的)のインビボ有効性の研究を、標的を発現するColo205異種移植モデルを用いて行った。Colo205は、中等度の標的発現レベル(Trop−2+)を有する癌細胞系である。腫瘍サイズが約250mm
3に達するまで、300万個のColo205癌細胞を、5〜8週齢のnu/nuマウスに皮下移植した。動物は、腫瘍サイズによって無作為化し、投与は、ボーラス尾静脈注射を介して行った。合計1用量当たり6mg/kgのmAbsを、ボーラス尾静脈注射を介して投与した。腫瘍体積を、週に2回、キャリパー装置によって測定し、下記式:腫瘍容積=(長さ×幅2)/2で計算した。動物は、その腫瘍体積が2000mm
3に達した場合またはその体重が20%を超えて減少した場合に、安楽死させた。
図6は、部位特異的なDAR7.76のコンジュゲートの単回用量が、長期腫瘍静止をもたらし、従来のDAR7.2コンジュゲートより有意に性能的に勝っていたことを示している。
【0212】
さらに、全てのADCが同様な結合反応速度を示したので、部位特異的な高DARコンジュゲートと従来の高DARコンジュゲートの効力の差は、ADCの標的結合が異なることによるものでなかった。
図11および表8。
図11および表8に示す標的/IgG相互作用の結合反応速度は、Biacore T200 Surface Plasmon Resonanceバイオセンサー(Ge Lifesciences、Piscataway NJ)を使用することによって決定した。
【0213】
【表8】
【0214】
総合すれば、この実施例は、本発明のADC(例えば、DAR7.76)が、DARが同様なまたはより高い従来のADCよりも、長期腫瘍静止の誘発において効果的であること、およびDARが5未満のADCはこのモデルにおいては本質的に効果がないことを実証している。
【0215】
(実施例7)
薬剤抗体比率が5.86および7.77の抗Trop−2 7E6部位特異的オーリスタチンコンジュゲートは、Colo205異種移植モデルにおいて、対応する従来のコンジュゲートよりも有効であり、長期腫瘍静止を誘発した
この実施例もまた、Colo205異種移植モデルにおける、より高ロードの部位特異的ADCの有効性を例示する。
【0216】
m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR4.13、従来)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.86、部位特異的)、m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR6.09、従来)、m7E6 N297Q/LCQ04/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.86、部位特異的)、m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR7.80、従来)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.77、部位特異的)および対照IgG N297Q/LCQ04/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.84、部位特異的)のインビボ有効性の研究を、標的を発現するColo205異種移植モデルを用いて行った。Colo205は、中等度の標的発現レベル(Trop−2+)を有する癌細胞系である。腫瘍サイズが約200mm
3に達するまで、300万個のColo205癌細胞を、5〜8週齢のnu/nuマウスに皮下移植した。動物は、腫瘍サイズによって無作為化し、投与は、ボーラス尾静脈注射を介して行った。合計1用量当たり6mg/kgのmAbsを、ボーラス尾静脈注射を介して投与した。腫瘍体積を、週に2回、キャリパー装置によって測定し、下記式:腫瘍容積=(長さ×幅2)/2で計算した。動物は、その腫瘍体積が2000mm
3に達した場合またはその体重が20%を超えて減少した場合に、安楽死させた。
図7は、部位特異的DAR5.86(m7E6 N297Q/LCQ04/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD)およびDAR7.77(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)コンジュゲートの単回用量が、長期腫瘍静止をもたらし、従来のDAR6.09(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)およびDAR7.80(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)コンジュゲートより有意に性能が勝っていたことを示している。実施例6において論じたように、全てのADCが同様な結合反応速度を示したので、効力の差は、ADCの標的結合が異なることに起因しなかった。
【0217】
したがって、この実施例もまた、本発明のADC(例えば、部位特異的DAR5.86および7.77)が、同様なDARを有する従来のADCよりも、長期腫瘍静止の誘発において効果的であることを実証している。
【0218】
(実施例8)
高い薬剤抗体比率を有する抗Trop−2 7E6部位特異的オーリスタチンコンジュゲートは、従来のADCと比較してより良好な薬物動態(PK)プロフィールを示す
この実施例は、マウスおよびラットの両方における、従来のより高ロードのADCと比較した、より高ロードの部位特異的ADCのPKプロフィールを例示する。
【0219】
本発明のADCの薬物動態研究は、マウスおよびラットの両方において行い、ELISA(酵素結合免疫吸着測定)を用いて分析した。DARは、LC/MS(液体クロマトグラフィー−質量分析(Mass Spectometry))によって分析した。
【0220】
総抗体PKアッセイ
96ウェルマイクロタイタープレート(NUNC)の各ウェルに、1xPBS(Cell Gro)中1μg/mLのFc特異的なヤギ抗ヒトIgG抗体(Pierce、Rockford、IL)100μLをコーティングした。プレートを4〜8℃で終夜インキュベートした。全ての洗浄ステップを、1xPBS/0.05%Tweenを用いてBiotek ELx405プレートウォッシャーで行った。3回洗浄後、プレートを、アッセイ緩衝液(1xPBS/0.5%BSA/0.05% Polysorbate 20)200μLでブロックし、室温で穏やかに撹拌しながら1〜2時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、アッセイ緩衝液で1:100に希釈した標準物質、対照および試料100μLを、対応するウェルに加えた。室温で穏やかに撹拌しながら2時間インキュベート後、プレートを6回洗浄してから、アッセイ緩衝液で250ng/mLに希釈した検出抗体(Sigma(St Louis,MO)からのHRP標識された、Fc特異的抗ヒトIgG)100μLを分注した。プレートを、室温で穏やかに撹拌しながらさらに1時間インキュベートし、その後に6回洗浄した。次いで、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)(KPL、Gaithersburg、MD)100μLを各ウェルに加えた。約5分間発色させてから、1Mリン酸100μLで反応を停止させた。SpectraMax 340プレートリーダー(Molecular Devices)で、650nmを基準として、450nmで吸光度を測定した。SoftMax Pro 5.2ソフトウェアを用いて、標準曲線を4−パラメーター回帰に適合させ、試料濃度を計算した。
【0221】
ADC PKアッセイ
96ウェルマイクロタイタープレート(NUNC)の各ウェルに、1xPBS(Cell Gro)中2μg/mLのヤギ抗ヒトIgG抗体100μLをコーティングした。プレートを4〜8℃で終夜インキュベートした。全ての洗浄ステップを、1xPBS/0.05%Tweenを用いてBiotek ELx405プレートウォッシャーで行った。3回洗浄後、プレートを、アッセイ緩衝液(1xPBS/0.5%BSA/0.05%Polysorbate 20)200μL/ウェルでブロックし、室温で穏やかに撹拌しながら1〜2時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、アッセイ緩衝液で1:100に希釈した標準物質、対照および試料100μLを、対応するウェルに2例ずつ加えた。室温で穏やかに撹拌しながら2時間インキュベート後、プレートを6回洗浄してから、アッセイ緩衝液で4μg/mLに希釈した検出抗体(ビオチン化抗MMADモノクローナル抗体)100μLを分注した。プレートを、室温で穏やかに撹拌しながら1.5時間インキュベートし、その後に6回洗浄した。アビジン−HRP(Vector Labs、Burlingame、CA)をアッセイ緩衝液で0.5μg/mLに希釈し、100μLを各ウェルに分注した。プレートをさらに1時間インキュベートし、その後、6回洗浄した。次いで、TMB(KPL、Gaithersburg、MD)100μLを各ウェルに加えた。約5分間発色させてから、1Mリン酸100μLで反応を停止させた。SpectraMax 340プレートリーダー(Molecular Devices、Downingtown、PA)で、650nmを基準として、450nmで吸光度を測定した。SoftMax Pro 5.2ソフトウェアを用いて、標準曲線を4−パラメーター回帰に適合させ、試料濃度を計算した。
【0222】
ADCのLC/MSインタクト質量分析(intact mass analysis)およびDARの計算
LC/MS分析の前に、ADC(部位特異的DAR6およびDAR8ならびに従来のDAR8)を、37℃において非変性条件下でPNGase F(New England Biolabs Inc.、Ipswich,、MA)によって終夜脱グリコシル化させた。ADC(1μg)を、ポリマー材料(Michrom−Bruker、Fremont、CA)を充填した逆相カラムに装填した。LC/MS分析を、エレクトロスプレーイオン源を有するOrbitrap Velos Pro(Thermo Fisher Scientific、Somerset、NJ)質量分析計に連結された、バイナリーHPLCポンプ、脱ガス装置、温度制御自動サンプラー、カラムヒーターおよびダイオードアレイ検出器(DAD)を含むAgilent 1100シリーズHPLCシステムを用いて行った。移動相は、溶媒A(水 0.1%ギ酸)および溶媒B(アセトニトリル 0.1%ギ酸)から構成された。HPLCを、イソクラチック流からなる30分間のラン(溶媒B3%に10分間、続いて1分間にわたる溶媒B97%までの勾配、溶媒B97%に2分間保持、最後に溶媒B3%に17分間の平衡化ステップからなる)での、次第に増加する溶媒Bの勾配を用いて行った。得られた質量スペクトルを、ProMassソフトウェア(Thermo Fisher Scientific、Somerset、NJ)を用いてデコンヴォルーション(deconvolute)した。部位特異的ADCに関しては、DARは、ADCのインタクト質量(intact mass)を用いて計算した。従来のADCは分子間ジスルフィド結合がなくかつ鎖が逆相条件下で分離するので、従来のADCに関しては、DARは、重鎖および軽鎖のデコンヴォルーションされたスペクトルから計算した。DARの計算は、観察されたDAR種の相対強度に基づく。
【0223】
インビボでの研究
マウスにおいて、全てのADCの単回用量(6mg/kg)を、Colo205異種移植モデルで試験した。これらの条件下において、(1)m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.85、部位特異的)および2)m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.76、部位特異的)として、PEG6MMADにコンジュゲートしている抗体m7E6は、コンジュゲートしてない野生型抗体m7E6と同様な薬物動態プロフィールを示した。総mAbおよびADCのシグナルの比較により、より高ロードのADC(mAbまたはADC m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.85、部位特異的);またはmAbもしくはADC m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.76、部位特異的)は、2週間の期間にわたってペイロードの損失をほとんど示さないことが明らかになった。
図8Cおよび8Dを参照されたい。このデータは、アミノ−PEG6−C2−MMADのトランスグルタミナーゼ介在性連結が安定なコンジュゲートをもたらすことを示している。対照的に、従来の方法を用いてマレイミド−PEG6−C2−MMADにコンジュゲートさせた抗体m7E6(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR7.8))は、総mAbおよびコンジュゲートしていない抗体の両方と比較して、より低いADC曝露量を示し、これはペイロードの損失を示唆した。
図8Bを参照されたい。マレイミドをベースとするコンジュゲートからのペイロードの損失については既に記載されており(例えば、Alleyら、Bioconj.Chem.19(3):759〜765(2008)、およびShenら、Nat.Biotechnol.30(2):184〜189(2012)を参照されたい)、逆マイケル付加メカニズムによって起こると考えられている。DAR8の従来のコンジュゲートと本発明のADCコンジュゲートの間のADC曝露量の差が、インビボにおいて従来のADCコンジュゲートの活性が劣る原因である可能性が高い。
【0224】
従来のADCのELISAアッセイにみられる曝露量の減少は、これらの実験において用いたADCアッセイが抗体からのペイロードの損失を過小評価する可能性によって増強される可能性がある。より詳細には、ADC ELISAは、DAR8に対してだけでなく、インビボで生成された、ロード量がより低い全ての他の種に対してシグナルを示した。従来のコンジュゲーション方法を用いるDAR8のADCに関しては最大7種の薬剤がELISAシグナルの有意な変化を生じずに失われる可能性があったため、この作用は、より高ロードの種に対してより顕著であった。さらに、切断不可能な従来のコンジュゲート、例えば、m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR8)に関しては、薬剤の損失がおそらく、インビボでの効力が低い主要な理由であった。対照的に、本発明の切断不可能なADCコンジュゲート(例えば、DAR6またはDAR8)は、マレイミド不安定性の難点がなく、標的発現が中等度のColo205異種移植モデルにおいて腫瘍成長を有意に阻害することができる。
【0225】
また、より高ロードのADCのPK研究をラットにおいて行って、マウスと比較した。従来のコンジュゲーション方法に基づくADC(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD(DAR7.8))は依然として、循環におけるADCレベルが最低であった。
図8Eを参照されたい。DAR8の本発明のADC(例えば、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.76、部位特異的))は、循環において中間のADCレベルを示し、DAR6の本発明のADC(例えば、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04 PEG6MMAD(DAR5.85、部位特異的))は、循環において、コンジュゲートしていないm7E6抗体に匹敵する最も高いADCレベルを示した。
図8Eを参照されたい。DAR7.8の従来のADCは、コンジュゲートしてない抗体に対して最も大きい差を示し、総抗体およびADCの両方が、コンジュゲートしてない抗体のレベルと比較してかなり低い曝露量を有していた。
図8Fを参照されたい。m7E6 N297Q/K222R/LCQ04 PEG6MMAD(DAR5.85、部位特異的)の場合、総mAbレベルおよびADCレベルは、コンジュゲートしていない抗体のレベルにほとんど等しかった。
図8Gを参照されたい。m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7c PEG6MMAD総mAbレベルおよびADCレベルは、コンジュゲートしてない抗体と比較して低下した。
図8H。これは、本発明のDAR8のADCが、コンジュゲートしてない抗体と同様なPKを示した、マウスからのPKの結果とは異なる。これらの結果は、野生型PKを個別に示すコンジュゲーション部位を組み合わせると、曝露量が減少し得ることを示唆している。
【0226】
マウスのインビボ試料の質量分析により、従来のADC(例えば、m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD)はリンカーペイロードを約28%失っているが、トランスグルタミナーゼリンカーは部位特異的コンジュゲートDAR6(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04 PEG6MMAD)DAR8_1(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)の両方においてインタクトのままであることが、さらに明らかになった。
図12Aを参照されたい。また、質量分析の研究により、部位特異的DAR6、SS DAR8_1および従来のDAR8コンジュゲート中において同様なレベルを有する薬剤MMADのC末端の分解が明らかになった。(
図12B)。コンジュゲートのリンカー−ペイロード組み合わせの安定性を、
図12Cに示す。
【0227】
総合すれば、この実施例は、本発明の高ロードのADCは、マウスにおいては、コンジュゲートしてない野生型抗体と同様なPKプロフィールを有し、ラットにおいては、高ロードの従来のADCよりも良好なPKプロフィールを有することを実証している。
【0228】
(実施例9)
ラットにおいて、野生型薬物動態プロフィールを個別に示すADCコンジュゲーション部位を組み合わせると、曝露量が減少し得る
この実施例は、ラットにおいて、コンジュゲーション部位の種々の組み合わせを有する、より高ロードの部位特異的ADCのPKプロフィールを例示する。
【0229】
コンジュゲーション部位の種々の組み合わせを有する、より高ロードの部位特異的ADCのPK研究を、ラットにおいて行った。DAR1.99の部位特異的ADC(m7E6 H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)とDAR5.85の部位特異的ADC(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD)を組み合わせることによって、DAR7.76(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD)の部位特異的ADCを作製した。DAR5.85およびDAR1.99の部位特異的ADCは、ラットにおいて個別に野生型PKプロフィールを示したが、DAR7.76の部位特異的ADCと一緒に組み合わせた場合、曝露量の減少を示した。
図9Aを参照されたい。それに比べて、DAR5.85の同一の部位特異的ADC(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD)を、DAR1.96の異なる部位特異的ADC(m7E6 TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD;m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMADのコンジュゲーション部位から遠い、抗体重鎖のC末端のコンジュゲーション部位)と組み合わせた場合、得られたADC(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.7、部位特異的))は、曝露量のさらなる減少を示さなかった(例えば、m7E6 TG6アミノ−PEG6−C2−MMADよりも大きい減少を示さなかった)。
図9Bを参照されたい。
【0230】
これらのデータは、近傍の過度に多い疎水性ペイロード(例えば、MMAD)は、ラットにおいてADCのPKプロフィールを低下させる可能性があることを示唆している。これらのデータはまた、コンジュゲーション部位が互いに隔たっている場合、組み合わされた部位のPKプロフィールは、ラットにおいては、最も短い個別のPKプロフィールと同様であることを示唆している。
【0231】
(実施例10)
マウスにおける、従来のADCと比較した、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2 7E6オーリスタチンの安全性および耐容性
この実施例は、C57B1/6マウスにおけるより高ロードの部位特異的ADCの安全性および耐容性を例示する。
【0232】
C57B1/6マウスに、従来の方法でコンジュゲートされたADC(m7E6マレイミド−PEG6−C2−MMAD「DAR8」)またはPEG6−C2−MMAD切断不可能なペイロードとコンジュゲートされた部位特異的ADC(m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(「DAR6」)およびm7E6 N297Q/K222R/LCQ04/TG6アミノ−PEG6−C2−MMAD(「DAR8_1」)の75、125または200mg/kgの単回用量を投与した。臨床的観察、体重、薬物動態および臨床病理パラメーターを、評価した。より詳細には、動物を、注射の直後および2時間後、次いで投与後2週間にわたって毎日観察した。体重は、0日目、2日目、5日目、7日目、9日目、12日目および14日目に記録した。薬物動態に関しては投与後5分、7日および14日に、臨床化学分析および血液分析に関しては14日目に、血液試料を採取した。
【0233】
従来のコンジュゲートおよび部位特異的コンジュゲートはいずれも、200mg/kgの非常に高い用量まで耐容性であった。毒性を示す臨床的観察また体重の意味のある変化は認められなかった。
図10B。3つのコンジュゲート(従来のADC「DAR8」ならびに2つの部位特異的ADC「DAR8_1」および「DAR6」)全てに関して、研究の最後(14日目)に臨床病理パラメーターを評価し、毒物学的に意味があるまたは有意な変化は観察されなかった。
図10Cおよび10D。例えば、肝臓の酵素であるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、アラニントランスアミナーゼ[ALT]およびアルカリホスファターゼ[ALP])および鍵となる血液パラメーター(好中球、網状赤血球および血小板)に有意な変化は認められなかった。
【0234】
総合すると、これらの結果は、DAR8およびPEG6−C2−MMADを有する部位特異的コンジュゲートおよび従来のコンジュゲートはいずれも、200mg/kgの高用量で、マウスにおいて耐容性が良好であることを示している。さらに、従来のDAR8コンジュゲートと比較して、部位特異的DAR8_1コンジュゲートは、約55%高い曝露量を達成した。
図10A。さらに、DAR8の従来のコンジュゲートはまた、高用量で予想より低い抗体濃度を示した。
図13A。この現象は、200mg/kgの最高試験用量でも曝露量の予想される増加を示す部位特異的なADCDAR8_1に関しては観察されなかった。
図13B。
【0235】
総合すれば、部位特異的コンジュゲートは、従来のコンジュゲートと比較して、より高いADC曝露量で良好な安全性プロフィールを示した。
【0236】
(実施例11)
標的を高発現する細胞(BxPC3、Trop2+++)における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現が高いBxPC3細胞における、より高ロードのADC(例えば、DAR5.95〜9.4(部位特異的コンジュゲーション))のインビトロでの細胞傷害性を例示する。
【0237】
キメラの抗Trop2抗体、m7E6 L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.9、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.95、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.6、部位特異的)およびN297Q/K222R/LCQ04/L11b/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR9.4、部位特異的)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現するBxPC3細胞を用いて行った。BxPc3は、高い標的発現レベル(Trop−2+++)を有する癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(すなわち、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表し、試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表した。細胞傷害アッセイの結果を
図14に示し、表9に要約する。これらの結果は、全てのADCは、標的発現が高いBxPC3細胞へのペイロードのロード量に関わらず、ほぼ完全な細胞死滅を達成したが、より高ロードのコンジュゲートは、より低ロードのコンジュゲートと比較してより強力であったことを示している。
【0238】
【表9】
【0239】
(実施例12)
標的発現が中等度の細胞(Colo205、Trop2+)における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現が中程度のColo205細胞における、より高ロードのADC(例えば、DAR5.95〜9.4(部位特異的コンジュゲーション))のインビトロでの細胞傷害性を例示する。
【0240】
キメラ抗Trop2抗体、m7E6 L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6N 297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.9、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.95、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.6、部位特異的)およびN297Q/K222R/LCQ04/L11b/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR9.4、部位特異的)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現するColo205細胞を用いて行った。Colo205は、中等度の標的発現レベル(Trop−2+)を有する癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(すなわち、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表し、試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表した。細胞傷害アッセイの結果を
図15に示し、表10に要約する。これらの結果は、細胞死滅活性および効力の増加と、標的発現が中程度のColo205細胞へのADCのペイロードのロード量との間に正の相関が認められることを示している。より高ロードの分子(例えば、5.95以上のDAR)のみが、完全な細胞死滅を達成できた。
【0241】
この実施例はまた、コンジュゲートN297Q/K222R/LCQ04/L11b/H7cアミノ−PEG6−C2−MMADによってDARを9.4まで増加させると、DAR7.6のコンジュゲートm7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMADよりも効力が増加したことを実証している。
【0242】
【表10】
【0243】
(実施例13)
標的発現が低い細胞(CF−PAC1、Trop2(+))における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現が低いCF−PAC1細胞における、より高ロードのADC(例えば、DAR5.95〜9.4(部位特異的コンジュゲーション))のインビトロでの細胞傷害性を例示する。
【0244】
キメラ抗Trop2抗体、m7E6 L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.9、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.95、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.6、部位特異的)およびN297Q/K222R/LCQ04/L11b/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR9.4、部位特異的)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現するCF−PAC1細胞を用いて行った。CF−PAC1は、低い標的発現レベル(Trop−2+)を有する癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(例えば、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表した。試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表す。表11および
図16は、細胞死滅活性および効力の増加と、標的発現が低いCF−PAC1細胞へのADCのペイロードのロード量との間に正の相関が認められる、例えば、ペイロードのロード量が高いほど、細胞死滅活性が高いことを示している。DAR9.4のコンジュゲートN297Q/K222R/LCQ04/L11b/H7cアミノ−PEG6−C2−MMADは、最大細胞死滅活性をわずかに増加させた。
【0245】
この実施例はまた、細胞死滅活性および効力の増加と、細胞、例えば、標的発現が低いCF−PAC1細胞へのADCのペイロードのロード量との間に正の相関が認められることを実証している。
【0246】
【表11】
【0247】
(実施例14)
標的発現がない細胞(SW620、Trop2−)における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗Trop−2−ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現がないSW620細胞における、より高ロードのADC(例えば、DAR5.95〜9.4(部位特異的コンジュゲーション))のインビトロでの細胞傷害性を例示する。
【0248】
キメラ抗Trop2抗体、m7E6 L11bアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR1.96、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222Rアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR3.9、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04アミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR5.95、部位特異的)、m7E6 N297Q/K222R/LCQ04/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR7.6、部位特異的)およびN297Q/K222R/LCQ04/L11b/H7cアミノ−PEG6−C2−MMAD(DAR9.4、部位特異的)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現しないSW620細胞を用いて行った。SW620は、標的(Trop−2−)を発現しない癌細胞系である。細胞を、処理の24時間前に、壁が白く底が澄明なプレートに細胞2000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。IC50、および50%の細胞死滅(すなわち、細胞傷害性)が起こるADC濃度を、GraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算し、濃度(nM)として表し、試験したADCの最高濃度において観察された最大の細胞死滅を未処理対照に対するパーセンテージとして表した。細胞傷害アッセイの結果を
図17に示し、表12に要約する。試験した濃度範囲においては、全てのコンジュゲートが、最小の非特異的な細胞傷害性活性を示した。
【0249】
この実施例は、コンジュゲートN297Q/K222R/LCQ04/L11b/H7cアミノ−PEG6−C2−MMADによってDARを9.4まで増加させても、より低いDARを有するコンジュゲートと比較して、非特異的な細胞傷害性活性を増加させなかったことを実証している。
【0250】
【表12】
【0251】
(実施例15)
標的BCMAの発現が低い細胞および中程度の細胞における、次第に高ロードにされた、部位特異的にコンジュゲートされた抗BCMA ADCの細胞傷害性
この実施例は、標的発現がそれぞれ低いおよび中程度のL363細胞およびMM1.S細胞における、より高ロードのADC(例えば、DAR5.95(部位特異的コンジュゲーション))のインビトロ細胞傷害性を例示する。
【0252】
Ab1−LCQ05/K222R−スプリセオスタチン(2S,3Z)−5−{[(2R,3R,5S,6S)−6−{(2E,4E)−5−[(3R,4R,5R,7S)−7−(2−ヒドラジニル−2−オキソエチル)−4−ヒドロキシ−1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタ−5−イル]−3−メチルペンタ−2,4−ジエン−1−イル}−2,5−ジメチルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]アミノ}−5−オキソペンタ−3−エン−2−イルアセテート)(DAR1.9、部位特異的)、Ab1−LCQ04/K222R−スプリセオスタチン(DAR1.9、部位特異的)、Ab1−N297Q/K222R−スプリセオスタチン(DAR3.7、部位特異的)およびAb1−N297Q/K222R/LCQ05−スプリセオスタチン(DAR5.95、部位特異的)を含む、リンカー−ペイロードとコンジュゲートしているヒト抗BCMA(B細胞成熟抗原)抗体(Ab1)のインビトロ細胞傷害性の研究を、標的を発現するL363(低い標的発現レベルを有する癌細胞系(BCMA(+))およびMM1.S(中程度の標的発現レベルを有する癌細胞系(BCMA(++))を用いて行った。細胞を、底が澄明なプレートに細胞3000個/ウェルで播種した。細胞を、4倍連続希釈された抗体−薬剤コンジュゲートで、3例ずつ処理した。細胞の生存率を、処理の96時間後に、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 96(Promega、Madison、WI)によって決定した。相対的な細胞生存率を、未処理対照に対するパーセンテージとして決定した。EC50を、Prismソフトウェアによって計算した。
図18Aおよび18Bは、細胞死滅活性および効力の増加と、ADCの高いペイロードのロード量(例えば、5.9)と比較してADCの低いペイロードのロード量(例えば、1.9および3.7)との間に正の相関が認められることを示している。
【0253】
したがって、この実施例はまた、細胞死滅活性および効力の増加と、細胞、例えば、標的発現が低いL363細胞および標的発現が中程度のMM1.S細胞へのADCのペイロードのロード量との間に正の相関が認められることを実証している。
【0254】
開示された教示は様々な適用、方法、および組成物に関して記載されているが、本明細書における教示および以下の特許請求の範囲に記載の発明から逸脱することなく、様々な変化および変更を行うことができることが理解されよう。前述の実施例は、開示される教示をより良く説明するために提供されており、本明細書において提示される教示の範囲を限定することを意図したものではない。本教示はこれらの典型的な実施形態に関して記載されているが、当業者には、これらの典型的な実施形態の多くの変型および変更が、不必要な実験を伴わずに可能であることが容易に理解されよう。全てのこのような変型および変更は、本教示の範囲内である。
【0255】
特許、特許出願、論文、教科書などおよびそれらに引用された参考文献を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それらがまだ組み入れられていない限り、参照によってその全体を本明細書中に組み入れる。組み込まれた文献および同様の資料の1つまたは複数が、限定はしないが、定義された用語、用語の用法、記載された技術などを含めて、本出願と異なるまたは矛盾する場合には、本出願が優先する。
【0256】
前述の説明および実施例は、本発明のいくつかの特定の実施形態を詳述するものであり、本発明者らが企図する最良の形態を記載している。しかし、前述の事項が明細書中でいかに詳述されていても、本発明は多くの方法で実施でき、本発明は添付した特許請求の範囲およびそのあらゆる均等形態に従って解釈すべきであることがわかる。