【課題】粉末のサイズを従来のnmからμmにスケールアップして、絶縁破壊電圧及び熱伝導度が高くなる効果を奏することができる印刷回路基板のフィラー用アルミナ粉末の製造方法及びそれを含む印刷回路基板用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の印刷回路基板のフィラー用アルミナ粉末の製造方法は、アルミニウムを陽極酸化処理してアルミナ膜を形成する段階と、前記アルミナ膜を溶融及び粉砕してアルミナ粉末を形成する段階と、を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、「一面」、「他面」、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。以下、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨を不明瞭にする可能性がある係る公知技術についての詳細な説明は省略する。
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0019】
(印刷回路基板のフィラー用アルミナ粉末の製造方法)
図1は、本発明の一実施例による印刷回路基板のフィラー用アルミナ粉末の製造方法を順に示したフローチャートである。
【0020】
本発明の一実施例による印刷回路基板のフィラー用アルミナ粉末の製造方法は、次のとおりである。
【0022】
この際、前記アルミニウムは、箔(foil)またはシート(sheet)形態であることができる。ここで、前記箔(foil)形態は数十μmの厚さと定義し、前記シート(sheet)形態は数百μmの厚さと定義することができる。
【0023】
次に、アルミニウムを洗浄する工程を行う。
【0024】
前記アルミニウムを洗浄する工程は、アルミニウムの表面の不純物を除去する工程であって、前記アルミニウムの表面のスクラッチを減少させ、均一な面を維持するために行う。
【0025】
具体的に、界面活性剤を用いて表面の異物を洗浄したり、酸性またはアルカリ性溶液に前記アルミニウムを浸すことで、表面の反応物を除去することができる。
【0026】
次に、前記アルミニウムに陽極酸化処理工程を行って、非晶質アルミナ膜を形成する。
【0027】
陽極酸化処理法は、通常、アルミニウム母材を酸性電解質中に浸漬した状態で、電気分解反応により陽極で発生する酸素がアルミニウム母材の表面と反応することでアルミナ酸化膜が形成されるようにする。しかし、陽極酸化処理法により形成されたアルミナ酸化膜は、蜂の巣状に形成されて多数の気孔を有するため、通常、気孔を封止するためのシール(sealing)処理を行う。沸騰水または酢酸ニッケルなどの金属塩を用いたシール処理により、薄い陽極酸化処理酸化膜の場合にも約500V以上の絶縁性を確保することができる。陽極酸化処理法は、この発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に分かるため、追加的な詳細な説明は省略する。
【0028】
この際、前記陽極酸化処理工程に用いられる電解質溶液は、当業界に公知された如何なる溶液も使用可能である。
【0029】
また、前記アルミニウムの表面及びアルミニウムの内部全体を酸化処理することができる。
【0030】
ここで、高純度の非晶質アルミナ膜を形成することができる。
【0031】
次に、前記非晶質アルミナ膜を溶融する。
【0032】
この際、前記非晶質アルミナ膜を粉砕する工程をさらに行ってもよい。
【0033】
ここで、本発明では、アーク炉(Arc Furnace)を用いているが、アルミナ膜を溶融することができる適正温度を有する如何なる炉も使用可能である。
【0034】
次に、前記溶融されたアルミナ溶液を鋳型に流し込んで固化させるインゴット(ingot)を行う。
【0035】
前記インゴットの形態は、特に限定されない。
【0036】
次に、前記インゴット工程により形成されたアルミナを粉砕することで、結晶質アルミナ粉末を製造する。
【0037】
この際、前記アルミナ粉末は、数十μmのサイズに形成することができる。
【0038】
この過程で、前記粉砕されたアルミナ粉末をサイズ毎に分類する過程を行うことができる。
【0039】
アルミナの製造のために従来に用いていたゾルゲル(sol−gel)法を用いる場合、数十μmのサイズのアルミナ粉末を製造することが不可能であるが、本発明の方法によると、所望のサイズに粉砕できる長所がある。
【0040】
また、従来は、バイヤー(Bayer)法を用いて数十μmのサイズのアルミナ粉末を製造することができたが、高純度のアルミナを製造することは不可能であった。そのため、本発明は、陽極酸化処理法を行って高純度のアルミナ粉末及びμmのサイズのアルミナ粉末を製造することで、従来の問題点を解決することができるという長所がある。
【0041】
次に、前記粉砕されたアルミナ粉末中の鉄成分を除去する工程を行う。
【0042】
具体的に、本発明では、磁石を用いて鉄成分を除去することができる。
【0043】
(印刷回路基板用樹脂組成物)
図2は、本発明の一実施例によるアルミナ粉末をフィラーとして含む印刷回路基板用樹脂組成物の製造工程を説明するためのフローチャートである。
【0045】
この際、前記アルミニウムは、箔(foil)またはシート(sheet)形態であることができる。ここで、前記箔(foil)形態は数十μmの厚さと定義し、前記シート(sheet)形態は数百μmの厚さと定義することができる。
【0046】
次に、アルミニウムを洗浄する工程を行う。
【0047】
前記アルミニウムを洗浄する工程は、アルミニウムの表面の不純物を除去する工程であって、前記アルミニウムの表面のスクラッチを減少させ、均一な面を維持するために行う。
【0048】
具体的に、界面活性剤を用いて表面の異物を洗浄したり、酸性またはアルカリ性溶液に前記アルミニウムを浸すことで、表面の反応物を除去することができる。
【0049】
次に、前記アルミニウムに陽極酸化処理工程を行って、非晶質アルミナ膜を形成する。
【0050】
陽極酸化処理法は、通常、アルミニウム母材を酸性電解質中に浸漬した状態で、電気分解反応により陽極で発生する酸素がアルミニウム母材の表面と反応することでアルミナ酸化膜が形成されるようにする。しかし、陽極酸化処理法により形成されたアルミナ酸化膜は、蜂の巣状に形成されて多数の気孔を有するため、通常、気孔を封止するためのシール(sealing)処理をする。沸騰水または酢酸ニッケルなどの金属塩を用いたシール処理により、薄い陽極酸化処理酸化膜の場合にも約500V以上の絶縁性を確保することができる。陽極酸化処理法は、この発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に分かるため、追加的な詳細な説明は省略する。
【0051】
この際、前記陽極酸化処理工程に用いられる電解質溶液は、当業界に公知された如何なる溶液も使用可能である。
【0052】
また、前記アルミニウムの表面及びアルミニウムの内部全体を酸化処理することができる。
【0053】
ここで、高純度の非晶質アルミナ膜を形成することができる。
【0054】
次に、前記非晶質アルミナ膜を溶融する。
【0055】
この際、前記非晶質アルミナ膜を粉砕する工程をさらに行ってもよい。
【0056】
ここで、本発明では、アーク炉(Arc Furnace)を用いているが、アルミナ膜を溶融することができる適正温度を有する如何なる炉も使用可能である。
【0057】
次に、前記溶融されたアルミナ溶液を鋳型に流し込んで固化させるインゴット(ingot)を行う。
【0058】
前記インゴットの形態は、特に限定されない。
【0059】
次に、前記インゴット工程により形成されたアルミナを粉砕することで、結晶質アルミナ粉末を製造する。
【0060】
この際、前記アルミナ粉末は、数十μmのサイズに形成することができる。
【0061】
この過程で、前記粉砕されたアルミナ粉末をサイズ毎に分類する過程を行うことができる。
【0062】
アルミナの製造のために従来に用いていたゾルゲル(sol−gel)法を用いる場合、数十μmのサイズのアルミナ粉末を製造することが不可能であるが、本発明の方法によると、所望のサイズに粉砕できる長所がある。
【0063】
また、従来は、バイヤー(Bayer)法を用いて数十μmのサイズのアルミナ粉末を製造することができたが、高純度のアルミナを製造することは不可能であった。そのため、本発明は、陽極酸化処理法を行って高純度のアルミナ粉末及びμmのサイズのアルミナ粉末を製造することで、従来の問題点を解決することができるという長所がある。
【0064】
次に、前記粉砕されたアルミナ粉末中の鉄成分を除去する工程を行う。
【0065】
具体的に、本発明では、磁石を用いて鉄成分を除去することができる。
【0066】
次に、前記製造されたアルミナ粉末に樹脂を混合する工程を行う。
【0067】
ここで、前記製造されたアルミナ粉末は、フィラーとして樹脂と混合して絶縁層をなすことができる。
【0068】
具体的に、ボールミル、ミキシングなどの通常の混合方式を用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0069】
前記樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、及び脂環式型エポキシ樹脂からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする。
【0070】
ここで、前記製造されたアルミナ粉末の樹脂組成物中の含量は、70〜90重量%であることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0071】
(印刷回路基板)
本発明の一実施例による印刷回路基板は、前記
図1及び
図2に図示された方法で製造されたアルミナ粉末をフィラーとして含む絶縁層と、前記絶縁層上に形成された回路層と、を含む。
【0072】
本発明の一実施例によると、陽極酸化処理法によりアルミナ粉末を製造して絶縁層、例えばPPG(prepreg)のフィラーとして用いるにあたり、粉末のサイズを従来のnmからμmにスケールアップして、絶縁破壊電圧及び熱伝導度が高くなる効果を奏することができる。
【0073】
また、陽極酸化処理法によりアルミナ粉末を製造する際に、高純度のアルミナ粉末を製造することができるため、不純物を含有しないという長所がある。
【実施例】
【0074】
以下、下記実施例及び比較例を参照して、本発明をより具体的に説明するが、これに本発明の範疇が限定されるものではない。
【0075】
表1は、本発明の前記陽極酸化処理工程により製造された20μmのサイズのアルミナ粉末を絶縁フィルムのフィラーとして86重量%混合した際のBDV(絶縁破壊電圧)を測定したデータである。
【0076】
表1において、低ソーダ20μmフィラーは、当業界に公知されたバイヤー工程により製造されたアルミナ粉末であり、高純度nmフィラーは当業界に公知されたゾルゲル工程により製造されたアルミナ粉末である。
【0077】
ここで、前記低ソーダ20μmフィラー及び高純度nmフィラーを絶縁フィルムのフィラーとしてそれぞれ86重量%混合した際のBDV(絶縁破壊電圧)を測定したデータである。
【0078】
BDV(絶縁破壊電圧)を測定する際に、絶縁フィルムの厚さは100μmにして測定した。
【0079】
この際、本発明の前記陽極酸化処理工程により製造された20μmのサイズのアルミナ粉末を絶縁フィルムのフィラーとして混合する場合が、バイヤー工程、ゾルゲル工程により製造されたアルミナ粉末を絶縁フィルムのフィラーとして混合する場合より高いBDV(絶縁破壊電圧)を示すことを確認することができた。
【0080】
また、表2は、本発明の前記陽極酸化処理工程により製造された20μmのサイズのアルミナ粉末を絶縁フィルムに86重量%混合した際の熱伝導度を測定したデータである。
【0081】
表2において、低ソーダ20μmフィラーは、当業界に公知されたバイヤー工程により製造されたアルミナ粉末であり、高純度nmフィラーは、当業界に公知されたゾルゲル工程により製造されたアルミナ粉末である。
【0082】
ここで、前記低ソーダ20μmフィラー及び高純度nmフィラーを、絶縁フィルムのフィラーとしてそれぞれ86重量%混合した際の熱伝導度を測定したデータである。
【0083】
熱伝導度を測定する際に、絶縁フィルムの厚さは100μmにして測定した。
【0084】
この際、本発明の前記陽極酸化処理工程により製造された20μmのサイズのアルミナ粉末を絶縁フィルムのフィラーとして混合する場合が、バイヤー工程、ゾルゲル工程により製造されたアルミナ粉末を絶縁フィルムのフィラーとして混合する場合より高い熱伝導度値を示すことを確認することができた。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0088】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。