【解決手段】少なくとも、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)と、白色色材の酸化チタン(B)と、光重合開始剤(C)とを含む活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物(D)であって、該エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中に、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が1〜15質量%含まれることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物とする。
少なくとも、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)と、白色色材の酸化チタン(B)と、光重合開始剤(C)とを含む活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物(D)であって、
該エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中に、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が1〜15質量%含まれることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物。
前記インク組成物(D)中に酸化チタン(B)が5〜20質量%含まれることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物。
前記酸化チタン(B)の平均一次粒子径が100〜500nmであることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、小液滴高精細ヘッドによるシングルパス方式の採用が増加傾向にあり、従来よりもインクの粘度を低粘度とすることが求められ、また、粘度の許容幅は狭い傾向にある。一方、活性エネルギー線硬化型のインクジェット記録用白インク組成物の場合、高隠蔽であることが求められているが隠蔽性を高めるために白色顔料濃度を高くすると、インクの粘度が高くなると共に、インク内の活性エネルギー線の透過性も低下して硬化速度も低下するという問題が生ずる。そのために、小液滴ヘッドで使用できるような低粘度、かつ硬化性(硬化速度等)に優れ、高隠蔽性のインクとすることは困難であった。
【0003】
特許文献1には、活性エネルギー線硬化性不飽和二重結合を有する基を含有するポリウレタン化合物、塩基性化合物、着色剤、水溶性有機溶剤及び水を含有する、臭気と皮膚刺激性が少なく、吐出安定性を有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用水性インク組成物が開示され、該ポリウレタン化合物はイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとグリセリンジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレートを反応させて得られることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、(1)水溶性又は水分散性光重合性オリゴマーと非水溶性光重合開始剤と有機溶剤とを含有する混合物に水を添加し、前記有機溶剤を留去して水性混合物を作製する工程と、(2)前記水性混合物中に着色剤を溶解又は分散させる工程を有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用水性インク組成物の製造方法が開示され、該水性インク組成物は、揮発性の有機溶剤を含有せず、硬化性に優れていることが記載され、前記水分散性光重合性オリゴマーの製造にグリセリンジ(メタ)アクリレート等の水酸基1〜2個とエチレン性不飽和二重結合を1個以上有する化合物類が使用できることが記載されている。また特許文献1、2には、着色剤として酸化チタン等の無機顔料を用いることが例示されている。
【0005】
特許文献3には、(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基とを共に有する化合物と、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する重合性化合物とを含有してなる、低粘度で低臭気の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インクが開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、ジイソシアネートとグリセリンジ(メタ)アクリレート等との反応によって得られるハーフウレタン(メタ)アクリレートと、ジアルカノールアミンとの反応等である、分子中に活性エネルギー線硬化性不飽和二重結合及び炭素−炭素三重結合と、塩の基を有する活性エネルギー線硬化性水性樹脂を含有する、付着性、耐摩耗性、耐水性、耐光性等に優れた活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用水性インク組成物が開示されている。
【0007】
特許文献5には、顔料、顔料分散剤、およびイソシアナト基を一つ有する化合物とグリセリンジ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する化合物からなる、低粘度で密着性に優れた活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが開示され、該インキ中に酸化チタン等の無彩色の顔料を使用できることが開示されている。
【0008】
特許文献6、7には、活性エネルギー線硬化性不飽和基と水酸基を有するグリセリンジ(メタ)アクリレート等と、2官能以上のイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂等からなる分散剤に、耐薬品性及び光沢性を向上するために酸化チタン等の無機顔料が含有された顔料分散組成物が開示されている。
【0009】
特許文献8には、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、多価イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物を反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物及び多価イソシアネート系化合物を反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、並びに色材(C)を含有する、硬化性、保存安定性に優れる活性エネルギー線硬化型インク組成物が開示されている。
【0010】
特許文献9には、色材および重合性化合物を含有する単官能モノマーおよび二官能モノマーからなるインク組成物と、少なくとも光重合開始剤および単官能モノマー、二官能モノマー、および、多官能モノマー及び/又はオリゴマーからなる重合性化合物を含有するインク組成物Bとから構成されるインク組成物セットを使用し、該インク組成物Aと該インク組成物Bとを記録媒体に付着させてから、紫外線を照射して、印字を行う、二液の粘度が異なることによる画像形成の不具合が生じないインクジェット記録方法が開示されている。
【0011】
また、特許文献10には、少なくとも重合性化合物、光重合開始剤、重合促進剤、蛍光増白剤を含有し、光重合開始剤の吸収波長帯と蛍光増白剤の発光波長帯に重なり合う部分がある、硬化性の低下を抑制できるインク組成物が開示されている。
【0012】
これらの特許文献9、10において、インク中に顔料を多く添加するとインク中の活性エネルギー線の透過性が低下して硬化性が低下することが記載されている。
【0013】
上記特許文献1、2、4〜7においてはグリセリンジ(メタ)アクリレートを他の化合物と反応させてウレタン化合物等としてインク中に添加されているが、酸化チタン等の無機顔料を添加して隠蔽性の向上を図ることについては記載されていない。
【0014】
上記特許文献3、8には、グリセリンジ(メタ)アクリレートをモノマーとして配合することが記載されているが、特許文献3は低粘度、低臭気、低皮膚刺激で、高安定性かつ高光感度の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インクを目的としており、特許文献8は、低粘度であり、硬化性に優れるインク用樹脂組成物を目的としている。
【0015】
従って、活性白色色材の添加量が少ない場合であっても隠蔽性に優れるインクジェット記録用白色インクは知られておらず、粘度許容幅が狭いインクジェット記録用白色インクにおいて、小液滴ヘッドで使用できる低粘度で、かつ硬化性(硬化速度等)に優れたインクの必要物性と、高隠蔽性を両立するインクジェット記録用白色インク組成物の開発が望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の〔1〕活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物(第1の態様)、及び〔2〕隠蔽性硬化物(第2の態様)について説明する。
【0024】
〔1〕活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物(第1の態様)
本発明の第1の態様の「活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物」は、少なくとも、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)と、白色色材の酸化チタン(B)と、光重合開始剤(C)とを含む活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物(D)(以下、「白色インク組成物(D)」ということがある)であって、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中に、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が1〜15質量%含まれる。
【0025】
白色インク組成物(D)は、実質的に水を含まない。実質的にとは、水の含有量がゼロであるか、または、白色インク組成物(D)に水が含まれる場合にあってもその割合が、白色インク組成物(D)全量に対して1質量%以下であることを示す。
【0026】
(1)エチレン性不飽和基を有する化合物(A)
本発明に用いるエチレン性不飽和基を有する化合物(A)は、活性エネルギー線によりラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物であり、(i)グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が上記割合含まれる必要がある。
【0027】
化合物(A)に含まれる化合物として、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)の他のエチレン性不飽和基を有する化合物は特に限定されるものではないが、(ii)グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)、(iii)単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)(多環構造を有する化合物を除く)、(iv)複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)、(v)ジビニルエーテル化合物(A5)、(vi)多環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(A6)、(vii)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7)、(viii)(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリマー(A8)等から、25℃における粘度が1〜100mPa・sの化合物から選択して配合することが好ましく、さらに1〜20mPa・sの化合物から選択して配合することが好ましい。
【0028】
化合物(A)の選択の場合にあっては、本発明の白色インク組成物(D)のインク粘度を低粘度に維持しつつ、硬化速度、硬化膜の強度、及び硬化後の被着体との密着性を向上させ、更に白色顔料である酸化チタン(B)による隠蔽性を向上させることを考慮して、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)の選択とその配合割合を決定する必要がある。
【0029】
(1−1)グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)
エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中には、2官能(メタ)アクリレート化合物であるグリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が1〜15質量%含有される必要がある。エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中でグリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)は、白色インク組成物(D)の粘度を低下させて、白色インク組成物(D)を被着体に塗布、硬化後に隠蔽性を向上する効果を発揮する。
【0030】
本発明のような白色インク組成物(D)において、隠蔽性向上の主な因子として、(a)白色色材の酸化チタン(B)粒子とマトリックス樹脂の屈折率の差と、(b)白色色材の酸化チタン(B)の粒子径とその配合割合が知られている。一般的に、直鎖状の化合物の方が環状のものよりも屈折率が低くなることが知られている。また、同じ骨格を有する化合物では、分子量が小さいほど屈折率が低くなることが知られている。グリセリンジメタクリレートは直鎖状の化合物であり、多官能(メタ)アクリレートの中でも比較的低分子量である。そのため、硬化膜強度を向上させるために使用される多官能(メタ)アクリレートの中でも、グリセリンジ(メタ)アクリレートを使用することで、隠蔽性を大きくすることができ、さらに硬化膜強度にも優れる。さらに、水酸基を持つものは、水素結合により分子間距離が短くなるので(エチレン性不飽和基の距離が近くなる)硬化速度が速くなる。そのため、グリセリンジ(メタ)アクリレートが隠蔽性・硬化性に優れているといえる。以上より、グリセリンジ(メタ)アクリレートは隠蔽性、硬化速度、硬化膜強度の向上において有用である。
【0031】
酸化チタンについては、白色色材の酸化チタン(B)粒子とマトリックス樹脂との屈折率の差が大きい程、隠蔽力は大きくなる傾向があること、また白色インク組成物(D)中の白色色材の酸化チタン(B)粒子は大きくなる程隠蔽力が大きくなる傾向がある。
【0032】
酸化チタン(B)の屈折率は、結晶構造がルチル型のもので2.70程度、アナターゼ型のもので2.50程度であり、顔料中でも酸化チタン(B)の屈折率は際立って高い。一方、プラスチック樹脂の屈折率は、一般にポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル樹脂等で1.5〜1.6程度である。一般に分子中にフッ素原子が含まれると屈折率は低くなるといわれており、ポリ三フッ化塩化エチレンの屈折率は1.42、ポリテトラフルオロエチレンの屈折率は1.35程度である。
【0033】
本発明において、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中にグリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が含有されることにより、白色インク組成物(D)を被着体に塗布、硬化後に隠蔽性が向上する理由は定かではないが、白色インク組成物(D)の硬化後のマトリックス樹脂の屈折率を低下させる作用を発揮していることが予想される。本願の白色インク組成物(D)はエチレン性不飽和基を有する化合物(A)中のグリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が1〜15質量%含まれることが必須であり、2.5〜10質量%がより好ましい。下限値以上であれば、低粘度性、隠蔽性、密着性を優れたものとすることができ、上記上限値以下であれば、硬化性、硬化膜強度優れたものとすることができるからである。上記範囲内であれば、白色インク組成物(D)を白色隠蔽性、硬化性、硬化膜強度、密着性、低粘度性に優れたものとすることができる。
【0034】
(1−2)グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)
エチレン性不飽和基を有する化合物(A)のうち、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)は、30〜60質量%使用することが好ましく、40〜50質量%使用することが特に好ましい。グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)は、従来インク組成物などの活性エネルギー線硬化型組成物に用いられてきた重合性化合物の中でも粘度が概ね低いので、上記下限値以上であれば、白色インク組成物(D)の粘度を低くすることができ、安定した放射線硬化性組成物の吐出性に優れ、硬化速度と硬化膜の強度に優れるものとすることができるからである。また、上記上限値以下であれば、密着性に優れたものとすることができるからである。
【0035】
グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO変性ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO変性ジ(メタ)アクリレート、1,9ノナンジールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、オペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0036】
グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)について、さらに低粘度かつ硬化速度が速く硬化膜の強度に優れるものとして、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが好ましく、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。
【0037】
なお、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH
2−CH
2−O−)のブロック構造を有するように変性された化合物を意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH
2−CH(CH
3)−O−)のブロック構造を有するように変性された化合物を意味しており、「変性」の文言を省略標記することがある。
【0038】
(1−3)単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)
単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)(多環構造を有する化合物を除く)が、白色インク組成物(D)に配合されると、溶液の粘度を下げて安定した吐出性を得ることが可能になり、また、硬化後の被着体との密着性を向上させることが可能になる。
【0039】
単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)(多環構造を有する化合物を除く)はエチレン性不飽和基を有する化合物(A)のうち、5〜60質量%含むことが好ましく、8〜40質量%含むことがより好ましく、10〜30質量%含むことがさらに好ましい。単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)(多環構造を有する化合物を除く)の配合量が、上記下限値以上であれば、硬化後の被着体との密着性をより一層向上させることができ、インクを低粘度のものとしてより安定した吐出性を得ることができる。また、単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)(多環構造を有する化合物を除く)の配合量が、上記上限値以下であれば、硬化性により一層優れた白色インク組成物(D)を得ることができる。
【0040】
単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族単官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)としては、低粘度かつ硬化速度が速く、密着性に優れる化合物としてフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが特に好適である。
【0042】
(1−4)複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)
白色インク組成物(D)に複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)が使用されると、一般に、白色インク組成物(D)中で溶液粘度を低下させると共に、硬化性に優れていて、硬化後の被着体との密着性も良好となる。
【0043】
複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)は、例えば、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリロイルモルフォリン、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート類などが例示される。N−ビニルラクタム類は比較的融点が高い化合物であるが0℃以下の低温下でも良好な溶解性を示すので、白色インク組成物(D)の取り扱い可能温度範囲が広くなり好ましい。これらの中でも、N−ビニルカプロラクタムが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好な硬化性及び硬化膜の被着体への密着性が得られるので好ましい。
【0044】
複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)はエチレン性不飽和基を有する化合物(A)のうち、10〜30質量%含むことが好ましく、10〜20質量%含むことがさらに好ましい。複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)の配合量が上記下限値以上であれば、硬化後の被着体との密着性をより向上させることができ、またインクを低粘度のものとしてより安定した吐出性を得ることができる。複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)の配合量が上記上限値以下であれば、インク組成物(D)の経時の粘度変化をより少ないものとすることができ、また、インク硬化物の黄変性を少なくすることができる。
【0045】
(1−5)ビニルエーテル化合物(A5)
ビニルエーテル化合物(A5)は、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)のうち、5〜30質量%含むことが好ましく、10〜30質量%含むことがさらに好ましい。ビニルエーテル化合物(A5)の配合量が、上記下限値以上であれば、インクを低粘度のものとしてより安定した吐出性を得ることができ、上記上限値以下であれば、インク組成物の経時の粘度変化を少ないものとすること、インクの硬化性を優れたものとすることができるからである。
【0046】
ビニルエーテル化合物(A5)としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、水添ビスフェノールAジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、EO変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、PO変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル等が挙げられる。こうしたビニルエーテル化合物(A5)については、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物、トリビニルエーテル化合物が好ましく、特に、ジビニルエーテル化合物が好ましい。また、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、EO変性トリメチロールプロパントリビニルエーテルが硬化性、密着性、表面硬度の観点から、好ましい。
【0047】
その他のエチレン性不飽和化合物としては、以下のものを挙げることができる。
【0048】
(1−6)多環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(A6)
多環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(A6)は、ノルボルニル構造、イソボルニル構造、ジシクロペンタニル構造、ジシクロペンテニル構造又はアダマンチル構造等を有する、ラジカル重合性の(メタ)アクリレート系化合物である。多環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(A6)の使用により、白色インク組成物(D)を低粘度のものとすることができると共に、硬化膜強度が高く、硬化後に被着体との密着性にも優れる硬化膜を得ることが可能になる。
【0049】
多環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(A6)の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び1−パーフルオロアダマンチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。その中でも低粘度かつ硬化膜強度に優れるイソボルニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0050】
(1−7)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7)
3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7)は、粘度は比較的高いが、硬化性と塗膜強度を向上できるので、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)の物性バランスを調整するために配合することができる。
【0051】
ただし、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7)は、硬化時の収縮が比較的大きいため、過剰にならない程度の配合量とされることが好適である。3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7)の配合量があまり多くなると白色インク組成物(D)の被着体への密着性を阻害するおそれがある。
【0052】
3官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリアクリレート、PO変性グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0053】
4官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0054】
5官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、6官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0055】
このような3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましく用いられる。特に、インクの硬化性、硬化膜強度を向上することができる点で好ましいからである。
【0056】
(1−8)アクリレート系オリゴマー、ポリマー(A8)
本発明のエチレン性不飽和基を有する化合物(A)として、アクリレート系オリゴマー、及び/又はポリマー(A8)を併せて使用することができる。該アクリレート系オリゴマー、ポリマー(A8)を使用すると、硬化膜強度に優れた白色インク組成物(D)が得られるので好ましい。該アクリレートオリゴマーやポリマーは、白色インク組成物(D)を吐出に最適な粘度に調整、また架橋密度の調整、硬化後の物性制御(強度、接着性など)のために配合することができる。
【0057】
(1−9)配合割合
(i)エチレン性不飽和基を有する化合物(A)の配合割合
本発明の白色インク組成物(D)中のエチレン性不飽和基を有する化合物(A)の含有量は、白色インク組成物(D)中の全固形分に対し、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは50〜80質量%、更に好ましくは60〜80質量%の範囲である。
【0058】
(ii)エチレン性不飽和基を有する化合物(A)の組成例
以下にエチレン性不飽和基を有する化合物(A)の好ましい組成例を記載する。
【0059】
(a)グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)を有するエチレン性不飽和基を有する化合物(A)の好ましい例
エチレン性不飽和基を有する化合物(A)には、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が1〜15質量%含有され、さらに、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)が30〜60質量%含有され、単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)(多環構造を有する化合物を除く)が5〜60質量%、複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)が10〜30質量%、及びジビニルエーテル化合物(A5)が5〜30質量%含有されていることが好ましい。
【0060】
このようなエチレン性不飽和基を有する化合物(A)、白色色材の酸化チタン(B)、及び光重合開始剤(C)を含む白色インク組成物(D1)は、白色隠蔽性に優れると共に、低粘度性と、硬化性と、被着体との密着性にも優れる。
【0061】
(b)グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)を有するエチレン性不飽和基を有する化合物(A)のさらに好ましい例
エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中に、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が1〜15質量%含有され、さらに、グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)が40〜50質量%含有され、単官能(メタ)アクリレート化合物(A3)(多環構造を有する化合物を除く)が10〜30質量%、複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)が10〜20質量%、及びジビニルエーテル化合物(A5)が10〜20質量%含有されていることが好ましい。
【0062】
上記のように構成されるエチレン性不飽和基を有する化合物(A)、白色色材の酸化チタン(B)、及び光重合開始剤(C)を含む白色インク組成物(D1)は、さらに一層、白色隠蔽性に優れると共に、低粘度性と、硬化性(硬化速度と硬化膜強度)と、被着体との密着性にも優れるものとなる。
【0063】
(2)酸化チタン(B)
本発明の白色インク組成物(D)中に隠蔽性を向上するために無機顔料の白色色材として酸化チタン(B)を配合する。酸化チタンは通常、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛のような他の白色無機顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きいため顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、また、化学的、物理的にも安定であるため、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。酸化チタン(B)の屈折率は、その結晶構造がルチル型であるもので2.70程度、アナターゼ型であるもので2.50程度であり、顔料中でも酸化チタン(B)の屈折率は際立って高い。結晶構造がルチル型、アナターゼ型のいずれのタイプの酸化チタンについても白色インク組成物(D)に使用できるが、隠蔽性が高い点で実用上ルチル型が好ましい。
【0064】
酸化チタン(B)の平均一次粒子径としては、100〜500nmが好ましく、150〜400nmがより好ましい。平均一次粒子径が100nm未満であると媒体中の非沈降性、分散安定性等は向上するが、白色度や隠蔽性が低下するおそれがあり、一方、500nmを超えると白色度や隠蔽性の点では問題ないが、白色インク組成物(D)中で沈降し易くなるので分散性が低下するおそれがあり、またその大きさや重さがインク吐出性に悪影響を及ぼすおそれがある。これら理由から、平均一次粒子径について実用的には200〜300nmが更により好ましい。
【0065】
酸化チタン(B)の平均粒径は電子顕微鏡で得られる画像から100〜200個の粒子径測定を行い、これらの粒子径の平均を平均一次粒子径とすることができる。
【0066】
また、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)として、少なくともグリセリンジ(メタ)アクルレート(A1)を含有させることにより、該グリセリンジ(メタ)アクリレートを含有させないときと対比して、白色顔料の添加量を減少させることが可能になる。
【0067】
酸化チタン(B)の含有量は、白色インク組成物(D)中に好ましくは5〜40質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
【0068】
(3)光重合開始剤(C)
本発明の白色インク組成物(D)に使用する光重合開始剤(C)は、電子線、紫外線、可視光線、赤外線等の活性エネルギー線を受けて、ラジカルを発生し、前記エチレン性不飽和基を有する化合物(A)の重合の開始剤となりうるものである。光重合開始剤(C)としては、アシルフォスフィンオキサイド、α−ヒドロキシケトン、オキシムエステル、チオ化合物などを使用することができる。
【0069】
アシルフォスフィンオキサイドとしては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−フォスフィンオキサイド(イルガキュア 819、BASF社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Lucirin TPO:BASF社製)等が例示されるが、これらの中でも2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Lucirin TPO:BASF社製)が好ましい。
【0070】
α−ヒドロキシケトンとしては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(イルガキュア 184、BASF社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア 127、BASF社製)、2−ヒドロキシ−4′−ヒドロキシエトキシ−2−メチルプロピオフェノン(イルガキュア2959、BASF社製)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン](Esacure one、ランベルティ社製)が好ましい。
【0071】
オキシムエステルとしては、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)が好ましい。
【0072】
チオ化合物としては、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(SPEED CURE BMS、Lambson社製)が好ましい。
【0073】
前記Lucirin TPOやイルガキュア 127、SPEED CURE BMSは、酸素による重合阻害を発生し難いために、インクジェットで形成された薄膜の硬化性向上に特に有効である。また、前記Lucirin TPO、イルガキュア2959、及びEsacure oneは内部硬化性に優れているため、厚膜での硬化性向上に特に有効である。Lucirin TPOは活性エネルギー線に高感度で反応する。また、アシルフォスフィンオキサイド、α−ヒドロキシケトンを組み合わせて使用することにより、薄膜と厚膜両方の硬化性に優れ、活性エネルギー線に対して高感度かつ短時間で硬化させることができる。
【0074】
光重合開始剤(C)の添加量は、白色インク組成物(D)中で好ましくは3〜15質量%であり、より好ましくは、5〜12質量%である。光重合開始剤(C)の添加量を上記範囲とすることで、硬化速度が速く良好な硬化性が得られ、堅牢な画像の記録に効果的である。
【0075】
(4)添加剤
本発明の白色インク組成物(D)中に重合促進剤、重合防止剤、分散剤、界面活性剤、溶剤等を配合することができるがインク組成物としては無溶剤である事がより好ましい。本発明の白色インク組成物(D)には、重合促進剤を含有させることができる。該重合促進剤としてはアミン化合物が好ましい。アミン化合物としては、特に限定されないが、臭気の問題や硬化性の点から、特にアミノベンゾエート誘導体が好ましい。本発明の白色インク組成物(D)には、保存性を高めるために、重合防止剤を100〜50000ppm添加することが出来る。重合防止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、及びキノン類、フェノチアジン類からなる群より選択される化合物が好適に挙げられる。
【0076】
白色インク組成物(D)には、分散剤を配合することが好ましく、該分散剤としては、高分子分散剤の使用が好ましい。高分子分散剤としては、例えば、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系等からなるものが好ましい。分散剤は、具体例としては、ソルスパース5000、13940、17000、24000GR、32000、33000、39000、41000、53000、71000(ルーブリゾール社製)、アジスパーPB817、821、822、824、827、711(味の素ファインテクノ社製)Anti−Terra−U、Anti−Terra−204/205、「Disperbyk−101、103、106、107、110、111、130、161、162、163、164、165、166、168、170、400、Bykumen、BYK−P104、P105、P104S、240S、Lactimon、BYKJET9150、BYK2150、BYK2155、BYK2163、BYK2164(BYK Chemie社製)などが挙げられ、S33000、S32000、PB821、BYK168、BYKJET9150などが特に好ましい。
【0077】
また、本発明の白色インク組成物(D)には、更に任意の成分として、湿潤剤、pH調整剤、防腐剤、防かび剤等を添加することもできる。
【0078】
(5)粘度
本発明の白色インク組成物(D)は、主としてインクジェット記録用インクに好適に使用可能なことから、40℃における溶液粘度が5〜20mPa・sであることが好ましい。本発明のインク組成物は、射出性を考慮し、通常の射出時の温度である40℃における白色インク組成物(D)の粘度を前記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
【0079】
白色インク組成物(D)の粘度の調整は、酸化チタン(B)の平均一次粒子径と配合量、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)の種類の選択とその配合割合により行うことができる。また、白色インク組成物(D)の表面張力として、好ましくは20〜35mN/m、より好ましくは20〜30mN/mである。さらに、ポリオレフィン、PET、アクリル、PP、コート紙、非コート紙など様々な記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の観点から25mN/m以下が好ましい。
【0080】
(6)白色インク組成物(D)の製造
白色インク組成物(D)は、例えば酸化チタン(B)をエチレン性不飽和基を有する化合物(A)、及び分散剤と共にサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散して分散液を得、該分散液に、更にエチレン性不飽和基を有する化合物(A)、光重合開始剤(C)を添加し、均一混合することにより調製することができる。あらかじめ酸化チタン(B)が高濃度の濃縮液を作成しておいてエチレン性不飽和基を有する化合物(A)で希釈することが好ましく、通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、安定性に優れた白色インク組成物(D)が製造される。得られた白色インク組成物(D)は、更に孔径3μm以下、さらには1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0081】
〔2〕隠蔽性硬化物(第2の態様)
本発明の第2の態様の「隠蔽性硬化物」は、少なくとも、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)と、白色色材である酸化チタン(B)5〜20質量%と、光重合開始剤(C)とを含む活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物(D)で、該エチレン性不飽和基を有する化合物中にグリセリンジ(メタ)アクルレート(A1)が1〜15質量%含まれる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物(D)を被着体に塗布後、活性エネルギー線で硬化して得られる。
【0082】
第2の態様の「隠蔽性硬化物」は、厚み10μmでの可視光領域(380〜780nm)の吸光度Anを測定して定められる波長n(nm)と吸光度Anの関係に基づき下記式(1)にて算出される積分値S(単に、S値と呼ぶことがある)が600〜720であるように構成されるものである。なお、厚み10μmでの吸光度Anは、厚み10μmの隠蔽性硬化物に入射された光の強度をL
0とし透過した光の強度をLとした場合に、Log
10(L
0/L)にて特定される値である。
【0084】
(1)白色インク組成物(D)の塗布と硬化
本発明の白色インク組成物(D)を用いたインクジェット記録方法では、白色インク組成物(D)を被着体上に吐出した後に、活性エネルギー線を照射する。これにより、白色インク組成物(D)が記録媒体上に色材層を形成して隠蔽性硬化物が形成される。
【0085】
なお、白色インク組成物(D)以外に顔料が配合されたインクを塗布する場合、インクの塗布は、上記した操作と同様の操作を繰り返して実施することで実現できる。
【0086】
(イ)白色インク組成物(D)の塗布
インクジェット記録方法においては、上記白色インク組成物(D)を30〜60℃程度に加熱して、溶液粘度を5〜20mPa・s程度に調整した後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い射出安定性を実現することができる。さらに、高い射出安定性のためには設定した吐出温度における白色インク組成物(D)の粘度変動幅が狭い必要があり、粘度変化が±0.5mPa・s以内が望ましく、さらに±0.2mPa・s以内がより好ましい。
【0087】
白色インク組成物(D)の温度制御を行う部位はインクタンクからノズル射出面までの全てが対象となる。温度制御法としては、温度センサー等を各部位に複数設けて環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。
【0088】
白色インク組成物(D)の塗布は、上記インクジェット記録方法に限定されず、実用上、スプレー法、コーター法、グラビア法、フレキソ法等から選択された1種または2種以上を採用することもできる。
【0089】
(ロ)硬化物の形成
被着体上に吐出された白色インク組成物(D)は、活性エネルギー線の照射によって硬化されるが、その際に用いられる活性エネルギー線としては紫外線や電子線があげられる。また、活性エネルギー線の光源については、被着体上に吐出された白色インク組成物(D)を紫外線の照射により硬化させる場合には、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザ、紫外線LEDランプ、および太陽光を使用することができる。被着体上に吐出された白色インク組成物(D)を電子線の照射により硬化させる場合には、通常300eV以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
【0090】
インクジェット記録方法等により塗布する場合、白色インク組成物(D)からなる液滴の着弾から照射までの時間を0.01〜0.3秒間程度とすることが望ましい。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾したインクの滲みを抑制するこができる。
【0091】
(2)硬化物(H)
隠蔽性硬化物(H)は、少なくとも、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)と、白色色材である酸化チタン(B)5〜20質量%と、光重合開始剤(C)とを含む活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物で、該エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中にグリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)が1〜15質量%含まれる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物(D)を被着体に塗布後、活性エネルギー線で硬化して得られる。隠蔽性硬化物(H)は、厚み10μmでの可視光領域(380〜780nm)の吸光度Anを測定して定められる波長n(nm)と吸光度Anの関係に基づき上記の数式(1)にて算出されるS値が600〜720であるように構成されるものである。
【0092】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物として、エチレン性不飽和基を有する化合物(A)中に、グリセリンジ(メタ)アクルレート(A1)が1〜15質量%含まれることにより、酸化チタン微粒子を含むその組成物を被着体等に塗布した後に硬化して得られる硬化物の隠蔽性は、顕著に向上する。
【0093】
ここに、硬化物の隠蔽性は、吸光光度計を用いて、可視光領域(380〜780nm)の吸光度の測定により、評価を行うことができる。すなわち、硬化物について、厚み10μmでの可視光領域(380〜780nm)の吸光度Anを測定して定められる波長n(nm)と吸光度Anの関係に基づき上記の数式(1)にて算出されるS値が600以上720以下であれば、優れた隠蔽性と硬化膜強度を有するものとなる。なお、S値が小さいと、光を通しやすくなる(透過性が高まる)ことから、隠蔽性を高める点で、S値が600以上であることが好適である。また、S値が、大きすぎると、隠蔽性が高い一方で、白色インク組成物の硬化物を形成する時に必要となる活性エネルギー線の透過性が下がってしまい、硬化性が低下し、硬化膜強度が低下する虞が高くなる。
【0094】
また、本発明の白色インク組成物(D)は、白色隠蔽性に優れる隠蔽性硬化物(H)を形成可能であると共に、被着体への塗布後の硬化性と、被着体との密着性にも優れる。
【実施例】
【0095】
本発明について以下の実施例、比較例により具体的に説明する。まず、実施例、比較例で使用した、原材料、及び評価方法について記載する。
【0096】
[I]原材料
(イ)エチレン性不飽和基を有する化合物(A)
(1)グリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)
(i) グリセリンジメタクリレート
新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル701
【0097】
(2)A1を除く2官能(メタ)アクリレート化合物(A2)
(i) ジプロピレングリコールジアクリレート
BASF製、商品名:LAROMER DPGDA
(ii) 1,6ヘキサンジオールジアクリレート
大阪有機化学工業株式会社製、商品名:ビスコート#230
(iii) トリプロピレングリコールジアクリレート
BASF製、商品名:LAROMER TPGDA
【0098】
(3)単官能(メタ)アクリレート (A3)
(i) t−ブチルシクロヘキシルアクリレート
BASF社製、商品名:LAROMER TBCH
(ii) フェノキシエチルアクリレート
大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコート#192
【0099】
(4)複素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(A4)
(i) N−ビニルカプロラクタム(BASF製、商品名:NVC)
【0100】
(5)ビニルエーテル化合物(A5)
(i) トリエチレングリコールジビニルエーテル(I.S.P.社(英国)製、商品名:RAPICURE DVE−3)
【0101】
(6)その他のエチレン性不飽和化合物
(i) イソボルニルアクリレート(東洋ケミカルズ(株)大阪有機化学工業(株)製、商品名:A−IBXA)(多環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(A6))
(ii) EO変性グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NKエステル A−GLY−3E)(3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7))
(iii) PO変性グリセリントリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコートGPT)(3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7))
(iv) トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NKエステル A−TMPT)(3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7))
(v) ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA)(3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(A7))
【0102】
(ロ)白色色材(B)
酸化チタン(堺工業(株)製、商品名:R−21(ルチル型)、平均粒子径210nm)
【0103】
(ハ)重合開始剤(C)
(i) 重合開始剤1
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF製、商品名:Lucirin TPO)
(ii) 重合開始剤2
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、商品名:IRGACURE 184)
(iii) 重合開始剤3
オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン](双幅化学(株)製、商品名:NARUCURE−MBP)
【0104】
(ニ)分散剤
味の素ファインテクノ(株)、商品名:アジスパーPB821
【0105】
(ホ)重合禁止剤
フェノチアジン(チオジフェニルアミン)
【0106】
[II]評価方法
(1)隠蔽性
白色インク組成物をバーコーター#6を用いて、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:A4300)上に硬化後の厚みが10μmになるように塗布した。その後、UV硬化システム(Fusion UV System. Inc.製、I6P1/LH)にて、積算光量120mJ/cm
2、ピーク照度250mW/cm
2となるように活性エネルギー線を照射して、厚み10μmの硬化物を形成した。厚みが10μmの硬化物が形成されたPETフィルムを3cm×3cmの大きさに切り取り、吸光光度計((株)島津製作所製、型式:UV3510)を用いて吸光度を測定した。
【0107】
隠蔽性は、硬化物について、厚み10μmでの可視光領域(380〜780nm)の吸光度Anを測定して定められる波長n(nm)と吸光度Anの関係に基づき上記の数式(1)にて求められる積分値S(S値)の大きさで評価される。S値が、大きいほど隠蔽性が高いことになる。評価基準は、以下の通りで、実用範囲は◎、○である。
【0108】
(隠蔽性評価基準)
S値が720を超える:隠蔽性 非常に高い(◎)
S値が600以上720以下:隠蔽性 高い(○)
S値が600未満:隠蔽性 低い(×)
【0109】
(2)密着性
白色インク組成物をバーコーター#6を用いて、PETフィルム(リンテック(株)社製、商品名:PET50A PLシン 8LK)上に硬化後の厚みが10μmになるように塗布して塗膜をえた。その後、UV硬化システム(Fusion UV System. Inc.製、I6P1/LH)にて積算光量120mJ/cm
2、ピーク照度250mW/cm
2となるように活性エネルギー線を照射して、塗膜を硬化させ、厚み10μmの硬化物を形成した。
【0110】
密着性は、硬化後の塗膜にセロハンテープを貼り付け充分に密着させた後、セロハンテープを90度で剥離させた時の塗膜硬化物の基材への密着の程度から判断した。評価基準は以下の通りで、実用範囲は○、△である。
【0111】
(密着性評価基準)
○(密着性良好):はがれなし
△(密着性悪くはない):はがれた面積が20%以内
×(密着性悪い):はがれた面積が20%を超える
【0112】
(3)硬化性
白色インク組成物をバーコーター#6を用いて、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:A4300)上に硬化後の厚みが10μmになるように塗布した。その後、UV硬化システム(Fusion UV System. Inc.製、I6P1/LH)にて、積算光量120mJ/cm
2、ピーク照度250mW/cm
2となるように活性エネルギー線を照射して、厚み10μmの硬化物を形成した。
【0113】
硬化物の形成時における硬化性は、硬化物の試触により評価された、評価基準は次のとおりである。
【0114】
(硬化性評価基準)
○(硬化性良好):指触により、タックが確認されなかった。
×(硬化性不良):指触により、タックが確認された。
【0115】
(4)鉛筆硬度
白色インク組成物をバーコーター#6を用いて、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:A4300)上に硬化後の厚みが10μmになるように塗布した。その後、UV硬化システム(Fusion UV System. Inc.製、I6P1/LH)にて、120mJ/cm
2、ピーク照度250mW/cm
2となるように活性エネルギー線を照射して、厚み10μmの硬化物を形成した。
【0116】
鉛筆硬度については、鉛筆の芯を試料表面に押付けて動かしたときの傷付きの有無により評価した。鉛筆硬度は硬化膜強度の目安となる。評価は、硬化物の強度を鉛筆の芯の硬さ(6B〜HB〜6H)で実施した(JIS K5600−5−4に準拠)。評価基準は次のとおりである。下記の硬度評価基準で、○、△が実用範囲である。
【0117】
(硬度評価基準)
○(硬度良好):H以上の硬さである。
△(硬度悪くはない):FからHBの硬さである。
×(硬度悪い):B以下の硬さである。
【0118】
(3)粘度
白色インク組成物の粘度については、粘度計(Anton Paar社製、AMVn粘度計)を用いて、40℃の条件下で白色インク組成物の粘度(mPa・s)の測定を行った。粘度(mPa・s)の値に基づき、粘度についての評価を行った。粘度の評価基準は次のとおりである。なお、下記の硬度評価基準で、○、△が実用範囲である。
【0119】
(粘度評価基準)
○(低粘度性良好):粘度が5mPa・s以上10mPa・s以下
△(低粘度性悪くはない):粘度が10mPa・sを超え20mPa・s以下
×(低粘度性悪い):粘度が20mPa・sを超える
【0120】
[実施例1〜13]
実施例1〜13において、以下に示す通り、活性エネルギー線硬化型のインクジェット記録用インク組成物を調製し、得られた該組成物をPETフィルム基材上に塗布して塗膜を形成した。その後、塗膜に活性エネルギー線を照射して、隠蔽性硬化物を形成し、各種評価を行った。
【0121】
(1)インクジェット記録用インク組成物の調製
エチレン性不飽和基を有する化合物(A)を構成するグリセリンジ(メタ)アクリレート(A1)、及び、他のエチレン性不飽和基を有する成分(A2,A3,A4,A5など)を表1に記載するように選択するとともに、選択された各種の成分と、白色色材として酸化チタン(B)、重合開始剤(C)、分散剤、及び重合禁止剤、を表1に示す割合になるように配合された。これらの成分をディゾルバーにより混合して実施例1〜13それぞれについてインクジェット記録用インク組成物を調製した。
【0122】
次に、実施例1〜13のそれぞれについて、調製されたインクジェット記録用インク組成物をバーコーター#6を用いて、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:A4300)上に硬化後の厚みが10μmになるように塗布した。その後、UV硬化システム(Fusion UV System. Inc.製、I6P1/LH)にて(積算光量120mJ/cm
2、ピーク照度250mW/cm
2)になるように活性エネルギー線を照射して、厚み10μmの隠蔽性硬化物を形成した。
【0123】
(2)硬化物の評価
実施例1〜13のそれぞれについて調製された隠蔽性硬化物について、上記[II]評価方法に示すとおりの方法を用いて隠蔽性と密着性などの各種評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
[比較例1〜9]
エチレン性不飽和基を有する化合物(A)を構成する成分として表2に示すエチレン性不飽和基を有する各種の化合物を使用し、選択された各種の成分と、白色色材として酸化チタン(B)、重合開始剤(C)、分散剤、及び重合禁止剤、を表2に示す割合になるように配合した以外は、実施例1に記載したのと同様の方法でインクジェット記録用インク組成物を調製した。次に、実施例1〜13に記載したのと同様の方法で、調製したインクジェット記録用インク組成物をPETフィルム上に塗布後、UV硬化システムを用いて活性エネルギー線を照射して、厚み10μmの隠蔽性硬化物を形成した。その後、実施例1〜13に記載したと同様の方法で、比較例1〜9の隠蔽性硬化物について、隠蔽性と密着性などの各種評価を行った。評価結果をまとめて表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
以上の結果より、グリセリンジ(メタ)アクリレートを配合することにより隠蔽性を大きくすることが可能なインク組成物を得ることができる。そして、さらにインク組成物においてグリセリンジ(メタ)アクリレート比率が1〜15%であれば、硬化速度、密着性、硬化膜強度に優れるインク組成物とすることが可能となる。グリセリンジ(メタ)アクリレートが過剰に含まれると硬化膜強度、硬化速度、密着性が悪化する虞が高くなる。
また、顔料濃度を高くすることで隠蔽性は大きくなって好ましいが、顔料濃度が過剰に高すぎると硬化速度、密着性、硬化膜硬度に影響を生じる虞を生じる。ところで、隠蔽性は、S値で評価できる。隠蔽性の点からS値が600以上であることが望ましい。また、硬化速度、密着性、硬化膜硬度などの必要物性を満たすような硬化物を得るにあたり、S値が大きすぎると上記した必要物性のいずれかが悪化する虞が高くなる。この点、実施例によれば、S値が720以下であることが必要物性を満たす硬化物を得るために望ましいことが確認された。