(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-209486(P2015-209486A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20151027BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20151027BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20151027BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20151027BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20151027BHJP
【FI】
C08L67/04ZBP
C08L23/10
C08L53/02
C08L33/06
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-91545(P2014-91545)
(22)【出願日】2014年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川田 憲一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002BB12X
4J002BG06Z
4J002BP01Y
4J002CF19W
4J002GG01
4J200AA04
4J200AA19
4J200BA14
4J200CA01
4J200DA03
4J200EA05
4J200EA07
4J200EA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】環境面での負荷が小さく、かつ通常のポリプロピレンと同様に異形押出成形に対応可能であり、充分なウエルド強度を有する成形品を得ることができ、プラスチックダンボールを製造する際にも、中間壁のウエルド強度に優れたものを得ることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)及びスチレン含有量が50質量%であるSEBS(C)とを含有する樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、SEBS(C)の含有量が0.5〜20質量部であり、ポリ乳酸樹脂(A)は、190℃、荷重2.16kgにおけるMFRが7g/10分以下であり、ポリプロピレン樹脂(B)は、230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが0.7g/10分以下、樹脂組成物の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが2.5g/10分以下である樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)及びスチレン含有量が50質量%以上であるスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(C)とを含有する樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との質量比率(A/B)が20/80〜60/40であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(C)の含有量が0.5〜20質量部であり、ポリ乳酸樹脂(A)は、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが7g/10分以下であり、ポリプロピレン樹脂(B)は、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが0.7g/10分以下であり、樹脂組成物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが2.5g/10分以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂(D)を0.1〜5質量部含有する請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1記載の樹脂組成物からなる異形押出成形品。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂組成物からなるプラスチックダンボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)とを主成分とし、ウエルド強度に優れた異形押出成形品を得るのに好適な樹脂組成物及びそれからなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、成形用の原料としては、ポリプロピレン(PP)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリアミド(PA6、PA66)、ポリエステル(PET、PBT)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が使用されている。しかしながら、このような樹脂から製造された成形品は、成形性、機械的強度に優れているが、廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないために、埋設処理しても半永久的に地中に残留する。
【0003】
一方、近年、環境保全の見地から、ポリ乳酸樹脂をはじめとする生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。生分解性樹脂の中でも、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの樹脂は、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。そのうち、ポリ乳酸樹脂は、既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造可能となっており、使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると、炭素の収支として中立であることから、特に、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
【0004】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂そのものは、成形性や物性性能の点で、従来使用されている各種成形用樹脂に比べて劣っている。そこで、成形性や物性性能の改善のために、種々の添加剤を添加してポリ乳酸樹脂そのものを改質する方法や、あるいは、従来使用されている各種樹脂をポリ乳酸樹脂と混合(アロイ化)するなどの方法がとられている。
【0005】
従来使用されている各種樹脂のうち、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂は、その経済的なメリットや、通常のプラスチック用途に充分対応できる物性性能の点から、広範囲に用いられている。したがって、ポリオレフィン樹脂とポリ乳酸樹脂とのアロイ化によって、ポリオレフィン樹脂に低環境負荷性を付与すると、特に二酸化炭素の固定化の面で、大きな貢献となる。
【0006】
しかしながら、ポリオレフィン樹脂は本来ポリ乳酸樹脂との相溶性に乏しく、そのままでは、外観や性能の点から、アロイ化は困難である。これに関して、従来、各種相溶化成分を配合することにより両者を充分に相溶させ、外観や性能の問題を解決する手法が各種提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1においては、特に射出成形においてウエルドラインの発生を抑えることができ、十分なウエルド強度を有する成形品を得ることができる樹脂組成物が提案されている。
【0008】
つまり、相溶性に劣る樹脂組成物を用いて射出成形により成形品を得ると、金型内で溶融樹脂の流れが合流して融着した部分に細い線(ウエルドライン)が発生する不良が生じやすい。ウエルドラインは、融着不良によって生じたものであるので、成形品の外観を損なうものであり、また、融着した部分(ウエルド部)は特に曲げ強度(ウエルド強度)に劣るものである。
中でもポリマーアロイは、本質的には非相溶系のポリマーを組み合わせたものであるため、射出成形時にはこのようなウエルドラインの発生が顕著となり、得られる成形品はウエルド強度が低下したものとなりやすい。
【0009】
特許文献1記載の樹脂組成物においては、上記のような問題点をある程度解消できるものではあったが、充分な溶融粘度が必要な異形押出成形向けに対応したものではなかった。このため、異形押出成形を行って得られた成形品は、十分なウエルド強度を有するものではなかった。
【0010】
異形押出成形により得られる成形品の1つとして、プラスチックダンボールがある。プラスチックダンボールは、2枚の平行に配置された平板部材と、これを接合する複数の中間壁とから構成されている。2枚の平板部材の間に形成される複数の中間壁により、複数の中空部を有するものとなる。しかしながら、プラスチックダンボールを異形押出成形によって成形する際には、プラスチック成形の特性上、金型内を流れる溶融した樹脂の流れの出会い部分に形成されるウエルドラインが中間壁に形成されることを防止することは困難である。
【0011】
したがって、ウエルド融着性に劣る樹脂組成物を用いてプラスチックダンボールを製造すると、2枚の平行に配置された平板部材の間に形成される中間壁がウエルド強度に劣るものとなり、大きな圧力を受けた場合に屈曲が生じ、この結果、ダンボールの厚みが小さくなってダンボールとしての強度が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012−184368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、環境面での負荷が小さく、かつ通常のポリプロピレンと同様に異形押出成形に対応可能であり、充分なウエルド強度を有する成形品を得ることができ、プラスチックダンボールを製造する際にも、中間壁のウエルド強度に優れたものを得ることができる樹脂組成物を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)を要旨とするものである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)及びスチレン含有量が50質量%以上であるスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(C)とを含有する樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との質量比率(A/B)が20/80〜60/40であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(C)の含有量が0.5〜20質量部であり、ポリ乳酸樹脂(A)は、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが7g/10分以下であり、ポリプロピレン樹脂(B)は、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが0.7g/10分以下であり、樹脂組成物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが2.5g/10分以下であることを特徴とする樹脂組成物。
(2)さらに、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂(D)を0.1〜5質量部含有する(1)記載の樹脂組成物。
(3)(1)記載の樹脂組成物からなる異形押出成形品。
(4)(1)記載の樹脂組成物からなるプラスチックダンボール。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、メルトフローレートが特定のポリ乳酸樹脂とポリプロピレン樹脂を適切な割合で用い、かつ相溶化剤としてスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(以下、SEBSと称することがある)を用いているため、ウエルド融着性に優れた特性を有するものである。このため、通常のポリプロピレンと同様に異形押出成形に対応可能であり、ウエルド強度に優れた各種異形押出成形品を得ることができる。中でも、プラスチックダンボールを成形するのに適しており、中間壁のウエルド強度に優れ、圧力による屈曲が生じにくく、強度に優れたプラスチックダンボールを得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)及びSEBS(C)とを含有する。
【0017】
本発明においてポリ乳酸樹脂(A)としては、耐熱性、成形性の面からポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができるが、生分解性および成形加工性の観点からは、ポリ(L−乳酸)を主体とすることが好ましい。
【0018】
また、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)の融点は、光学純度によってその融点が異なるが、本発明においては、成形品の機械的特性や耐熱性を考慮すると、融点を160℃以上とすることが好ましい。ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)において、融点を160℃以上とするためには、D−乳酸成分の割合を3モル%未満とすることが好ましい。
【0019】
ポリ乳酸樹脂(A)は、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(以下、MFRと称することがある)は、7g/10分以下であることが必要であり、中でも1〜6g/10分であることが好ましい。メルトフローレートが7g/10分を超える場合は、後述する樹脂組成物のMFRを2.5g/10分以下にすることが困難となり、溶融粘度が低くなりすぎて、異形押出成形時の押出が困難となる。
なお、MFRは、JIS K−7210(試験条件4)により測定するものである。
【0020】
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造される。また、ポリ乳酸樹脂(A)のメルトフローレートを所定の範囲に調節する方法として、メルトフローレートが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローレートが小さすぎる場合はメルトフローレートの大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
【0021】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(B)としては、ホモポリマータイプ、ランダムコポリマータイプ、ブロックコポリマータイプなどを挙げることができるが、ウエルド融着性と耐熱性の点から、ブロックコポリマータイプが好ましい。ポリプロピレン樹脂(B)は有機過酸化物などで三次元架橋されたものでもよいし、一部が塩素化されていてもよいし、酢酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸などとの共重合体でもかまわない。
【0022】
ポリプロピレン樹脂(B)は、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR(JISK−7210(試験条件4)による値)が、0.7g/10分以下であることが必要であり、中でも0.2〜0.6g/10分であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜0.6g/10分である。MFRが0.7g/10分を超える場合は、後述する樹脂組成物のMFRを2.5g/10分以下にすることが困難となり、溶融粘度が低くなりすぎて、異形押出成形時の押出が困難となる。
【0023】
ポリプロピレン樹脂(B)としては例えば、日本ポリプロ社製『ノバテックPP-EC9』あるいはサンアロマー社製『PB170A』が挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との質量比率(A/B)は、20/80〜60/40であることが必要であり、中でも25/75〜50/50であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)が20質量%未満では、ポリ乳酸樹脂による低環境負荷性を充分に発揮することが困難となって、環境への貢献が小さくなる。一方、ポリ乳酸樹脂(A)が60質量%を超えると、すなわちポリプロピレン樹脂(B)が40質量%未満になると、耐熱性や耐衝撃性、成形性などのポリプロピレン樹脂(B)が本来持つ性能を充分に発揮することが困難となる。
【0025】
また、本発明の樹脂組成物は、SEBS(C)を含有するものである。SEBS(C)は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の相溶性を改善し、特に射出成形時のウエルド部の融着を良好にし、成形品のウエルド強度を向上させることができる。
【0026】
ウエルド融着性を向上させるためには、SEBS(C)として、スチレン含有量が50質量%以上のものを用いることが必要であり、中でもスチレン含有量が60質量%以上のものを用いることが好ましい。
市販されているSEBS(C)としては、例えば、旭化成社製『タフテック』シリーズや、JSR社製『ダイナロン』シリーズに含まれるものが挙げられる。
【0027】
SEBS(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが必要であり、中でも0.8〜15質量部であることが好ましい。SEBS(C)の含有量が0.5質量部未満では、上記したような相溶性を改善する効果を得ることができず、得られる成形品のウエルド融着性を向上させることができない。一方、SEBS(C)の含有量が20質量部を超えた場合、得られる成形品の耐熱性が低下することがある。
【0028】
さらに、本発明の樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂(D)を含有することが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(D)を添加することにより、SEBS(C)による、ポリ乳酸樹脂(A)やポリプロピレン樹脂(B)の相溶性を改善する効果が向上し、SEBS(C)によるウエルド融着改善効果をさらに促進することが可能となる。
【0029】
(メタ)アクリル系樹脂(D)としては種々のものを用いることができ、一般成形用のPMMA系樹脂などを好適に用いることができる。耐熱性への影響の点から、単体での荷重たわみ温度(1.8MPa)が90℃以上である耐熱タイプのものが好ましい。市販のものとしては、例えば、三菱レイヨン社製『アクリペットVH』などが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル系樹脂(D)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが必要であり、中でも0.5〜5質量部であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(D)の含有量が0.1質量部未満では、上記したようなSEBS(C)の効果をより向上させることが困難となる。
【0031】
そして、本発明の樹脂組成物は、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR(JISK−7210(試験条件4)による値)が、2.5g/10分以下であることが必要であり、中でも2.3g/10分以下であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜2.3g/10分である。メルトフローレートが2.5g/10分を超える場合は、溶融粘度が低くなりすぎて、異形押出成形時の押出が困難となり、薄肉の異形押出成形品を得ることができない。
【0032】
本発明の樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等を添加することができる。難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、リン系難燃剤や水酸化金属などが挙げられる。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。なお、本発明の樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
【0033】
ポリ乳酸樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、SEBS(C)および必要に応じて添加する(メタ)アクリル系樹脂(D)を用いて本発明の樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。
混練状態をよくする意味で二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は200〜240℃の範囲が、また、混練時間は20秒〜30分が好ましい。この範囲より低温や短時間であると、混練や反応が不充分となったり、逆に、高温や長時間であると樹脂の分解や着色が起きる場合があり、ともに好ましくない。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、各種の成形方法により成形品を得ることができるが、中でも異形押出成形に好適に用いることができ、その中でも薄肉の異形押出成形に好適に用いることができる。上記したように、本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)を主成分とするものであるが、両樹脂の相溶性がよく、ウエルド融着性に優れているため、ウエルド部の強度に優れた異形押出成形品を得ることができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、各種の薄肉異形押出成形品を得るのに適しているが、中でも、プラスチックダンボール用途に適している。2枚の平行板を繋ぐ中間壁に形成されるウエルド部が強度に優れたものであるため、圧力による屈曲が生じにくく、強度に優れたプラスチックダンボールを得ることができる。
【0036】
異形押出成形時の加工温度は、吐出後の形状保持とウエルド部の融着性から、200〜270℃とすることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例および比較例の樹脂組成物における特性値の測定方法及び各種性能の評価方法は次のとおりである。
(1)ウエルド強度:
得られた樹脂組成物(ペレット)を85℃×10時間熱風乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて金型表面温度35℃で、ASTM型ウエルド測定用試験片(両端から樹脂が充填され、中央部でウエルド形成)を得た。ISO178に従って、この試験片の曲げ強度を測定した。ウエルド強度は、12MPa以上であることが好ましく、中でも15MPa以上であることが好ましい。
(2)耐熱性:
得られた樹脂組成物(ペレット)を85℃×10時間熱風乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて金型表面温度35℃で、一般物性測定用試験片(ISO型)を得た。ISO 75に従って、荷重0.45MPaで熱変形温度を測定した。熱変形温度は63℃以上であることが好ましく、中でも70℃以上であることが好ましい。
【0038】
(3)耐衝撃性:
上記(2)と同様にして一般物性測定用試験片(ISO型)を得た。そして、ISO170に従ってシャルピー衝撃強度(kJ/m
2)を測定した。シャルピー衝撃強度は、8kJ/m
2以上であることが好ましい。
(4)樹脂樹脂組成物のメルトフローレート
前記の方法により測定した。
【0039】
また、実施例、比較例に用いた各種原料は次の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)
A−1:カーギルダウ社製『4032D』〔D体含有量1.4モル%、MFR(190℃、荷重2.16kg)=4g/10分〕
A−2:カーギルダウ社製『3001D』〔D体含有量1.4モル%、MFR(190℃、荷重2.16kg)=10g/10分〕
【0040】
(2)ポリプロピレン樹脂(B)
B−1:日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂『ノバテックPP-EC9』〔ブロックコポリマータイプ、MFR(230℃、荷重2.16kg)=0.5g/10分〕
B−2:サンアロマー社製ポリプロピレン樹脂『PB170A』〔ブロックコポリマータイプ、MFR(230℃、荷重2.16kg)=0.35g/10分〕
B−3:日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂『ノバテックPP-BC6C』〔ブロックコポリマータイプ、MFR(230℃、荷重2.16kg)=2.5g/10分〕
【0041】
(3)SEBS(C)
C−1:旭化成社製『タフテックH1043』(スチレン含有量67質量%)
C−2:旭化成社製『タフテックM1943』(スチレン含有量20質量%、酸変性、酸価10mgCH
3ONa/g)
C−3:JSR社製『ダイナロン8630P』(スチレン含有量15質量%、極性基変性)
(4)その他の相溶化剤:エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体
T−1:住友化学社製『ボンドファーストE』
【0042】
(5)(メタ)アクリル系樹脂(D)
D−1:三菱レイヨン社製PMMA系樹脂『アクリペットVH』
【0043】
実施例1
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸樹脂(A)として、カーギルダウ社製『4032D』32.0質量部、ポリオレフィン樹脂(B)として、日本ポリプロ社製『ノバテックPP−EC9』68.0質量部、SEBS(C)として、旭化成社製『タフテックH1043』5.3質量部、(メタ)アクリル系樹脂(D)として、三菱レイヨン社製『アクリペットVH』1.1質量部をドライブレンドして押出機の根元供給口から供給し、バレル温度230℃、スクリュー回転数180rpm、吐出20kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。
【0044】
実施例2〜8、比較例1〜9
ポリ乳酸樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、SEBS(C)、(メタ)アクリル系樹脂(D)の量や種類を変えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
【0045】
比較例10
相溶化剤として、SEBS(C)に代えて住友化学社製『ボンドファーストE』を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
【0046】
実施例1〜8、比較例1〜10で得られた樹脂組成物の特性値及び各種評価を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から明らかなように、実施例1〜8の樹脂組成物は、本発明で規定する組成を満足するものであったため、得られた成形品は、ウエルド強度、シャルピー衝撃強度、耐熱性に優れたものであった。これにより、実施例1〜8の樹脂組成物は、異形押出成形用途に適したものであることがわかる。
【0049】
一方、比較例1の樹脂組成物は、MFRの高いポリ乳酸樹脂を用いたため、また、比較例2の樹脂組成物は、MFRの高いポリプロピレン樹脂を用いたため、ともに樹脂組成物のMFRが高いものとなり、異形押出成形用途に適さないものであった。比較例3の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂が多すぎたため、ポリプロピレン樹脂が過少となり、得られた成形品は、耐衝撃性、耐熱性、ウエルド強度に劣るものであった。
【0050】
比較例4、5、10の樹脂組成物は、相溶化剤としてスチレン含有量が50質量%以上であるSEBSを用いなかったため、いずれもウエルド融着性に劣るものとなり、得られた成形品はウエルド強度が低いものであった。
比較例6、8の樹脂組成物は、相溶化剤が含有されなかったため、得られた成形品は、耐衝撃性、ウエルド強度に劣る結果となった。比較例7の樹脂組成物は、SEBSの量が過多であったため、得られた成形品は耐熱性に劣る結果となった。比較例9の樹脂組成物は、MFRが高いポリ乳酸樹脂とポリプロピレン樹脂を用いたため、MFRが高すぎる結果となり、異形押出成形用途に適さないものであった。