特開2015-209615(P2015-209615A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-209615(P2015-209615A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】フラッフ化パルプ
(51)【国際特許分類】
   D21C 3/06 20060101AFI20151027BHJP
   D21B 1/06 20060101ALI20151027BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20151027BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20151027BHJP
【FI】
   D21C3/06
   D21B1/06
   A41B13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-93211(P2014-93211)
(22)【出願日】2014年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126169
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】矢口 忠平
(72)【発明者】
【氏名】広重 浩一郎
【テーマコード(参考)】
3B200
4L055
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BB05
3B200DB01
3B200DB02
4L055AA02
4L055AC08
4L055BB01
4L055FA21
4L055GA39
(57)【要約】
【課題】 特に化学的な処理を行うことなく、低ネルギーで、吸水性に優れるフラッフ化パルプを製造する方法を提供する。
【解決手段】 サルファイトパルプを含むパルプを機械的処理により解繊してフラッフ化パルプを得る。解繊性に優れるので、フラッフ化パルプを低ネルギーで製造することが可能である。また、本発明のフラッフ化パルプは吸水性に優れるので、紙おむつ、尿とりパッド、軽失禁パッド等に使用する吸収体に好適に用いることができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルァイトパルプを含むパルプを機械的処理により解繊して得られるフラッフ化パルプ。
【請求項2】
サルファイトパルプが針葉樹を原料とするものである請求項1記載のフラッフ化パルプ。
【請求項3】
針葉樹がラジアータパインを原料とするものである請求項2記載のフラッフ化パルプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サルファイトパルプを原料として製造されるフラッフ化パルプに関する。
【背景技術】
【0002】
フラッフ化パルプは、木材パルプを機械的処理により解繊して製造されるものであり、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収性部材やエアレイド(air-laid)の不織布用材料として用いられている。
【0003】
フラッフ化パルプの製造方法としては、液体の吸収性と放出性を改善するためにマーセル化セルロースを原料とする方法(特許文献1)、オゾン処理したセルロース系繊維を原料とする方法(特許文献2)、架橋化したセルロース系繊維を原料とする方法(特許文献3)、疎水化薬品を添加してフラッフ化を行う方法(特許文献4)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−13370号公報
【特許文献2】特開平8−667号公報
【特許文献3】特開平8−269869号公報
【特許文献4】特開平8−10284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法でも木材パルプを機械的処理によって完全に解繊してフラッフ化パルプを製造するには多量の電力等のエネルギーを要する。また、フラッフ化パルプを、紙おむつ等に使用する吸収体に使用する場合、さらなる吸水性の向上が求められている。
【0006】
そこで、本発明の課題は、高品質のフラッフ化パルプを低ネルギーで製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明者が鋭意検討したところ、サルファイトパルプを含むパルプを機械的処理により解繊することにより、低エネルギーでも低密度であるとともに良好な吸水性も備えるフラッフ化パルプが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明のサルファイトパルプは、パルプシートの状態において内部結合強さが低く解繊性に優れるので、フラッフ化パルプを低エネルギーで製造することができる。また、得られるフラッフ化パルプは吸水性にも優れるので、紙おむつ等に使用する吸収体に好適に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフラッフ化パルプは、サルファイトパルプを原料パルプとすることが特徴である。サルファイトパルプを使用することにより、解繊性及び吸水性を向上させることが可能となる。
【0010】
サルファイトパルプは、サルファイト蒸解(SP)法で製造されるパルプであり、クラフトパルプに比較してセルロース含有量が高いという特徴を有している。αセルロース含有率はサルファイトパルプでは通常は90%以上であるのに対して、クラフトパルプでは通常は90%未満である。
【0011】
サルファイト蒸解法は、木材及び/または非木材(例えばチップ)を亜硫酸と亜硫酸塩との混液で蒸解する方法である。サルファイト蒸解法には、蒸解液のpHにより、酸性亜硫酸蒸解法、重亜硫酸蒸解法、中性亜硫酸蒸解法等があるが、本発明のサルファイトパルプにおいては、リグニン及びヘミセルロースを十分に除去するため、酸性亜硫酸蒸解法、重亜硫酸蒸解法のいずれかの方法で製造されたものが好ましい。
【0012】
酸性亜硫酸蒸解法は、蒸解液として亜硫酸と亜硫酸塩(カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩)を使用し、pH1.5〜2.5、温度130〜160℃で蒸解を行う。重亜硫酸(バイサルファイト)蒸解法は、蒸解液として亜硫酸塩(ナトリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩)を使用し、pH2.5〜5.5、温度130〜160℃で蒸解を行う。
【0013】
本発明のサルファイトパルプの原料は木材チップである。本発明においては、針葉樹材の木材チップを含むことが好ましく、そのサイズや樹種は特に制限されず、単一種類の木材のチップでも2種以上の木材が混合されたチップでもよい。本発明においては、比較的、蒸解や漂白が難しいとされる針葉樹材の樹種であっても、高品質な溶解パルプを効率良く製造することができる。本発明において使用される針葉樹材のチップとしては、例えば、カラマツ属やマツ属の木材チップを好適に使用することができる。カラマツ属に関しては、例えば、Larix(以下、L.と略す)leptolepis(カラマツ)、L. laricina(タマラック)、L. occidentalis(セイブカラマツ)、L. decidua(ヨーロッパカラマツ)、L. gmelinii(グイマツ)などが挙げられる。また、マツ属に関しては、Pinus radiata(ラジアータマツ)など、トガサワラ属に関しては、Pseudotuga(以下、P.と略す)menziesii(ダクラスファー)、P. japonica(トガサワラ)など、スギ属に関しては、Cryptomeria japonicaなどを挙げることができる。これらの中では、ラジアータマツが好ましい。
【0014】
本発明において広葉樹材の木材チップを原料として使用することもできる。広葉樹材の木材チップとしては、例えば、カエデ(maple)、カバ(birch)、ブナ(beech)、アカシア(acacia)、ユーカリ(eucalyptus)等を好適に使用することができる。ユーカリ属に関しては、Eucalyptus(以下、E.と略す) calophylla、E.citriodora、E.diversicolor、E.globulus、E.grandis、E.gummifera、E.marginata、E.nesophila、E.nitens、E.amygdalina、E.camaldulensis、E.delegatensis、E.gigantea、E.muelleriana、E.obliqua、E.regnans、E.sieberiana、E.viminalis、E.camaldulensis、E.marginataなどを挙げることができる。
【0015】
本発明においては、蒸解後得られた未漂白(未晒)パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。例えば、サルファイト蒸解後に得られた未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことができる。
【0016】
一つの態様において、サルファイト蒸解で得られたパルプに酸素脱リグニン処理を行うことができる。本発明に使用される酸素脱リグニンは、公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できる。中濃度法の場合はパルプ濃度が8〜15質量%、高濃度法の場合は20〜35質量%で行われることが好ましい。酸素脱リグニンにおけるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
【0017】
酸素脱リグニン処理の反応条件は、特に限定はないが、酸素圧は3〜9kg/cm、より好ましくは4〜7kg/cm、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、温度は80〜140℃、処理時間は20〜180分、この他の条件は公知のものが適用できる。なお、本発明において、酸素脱リグニン処理は、複数回行ってもよい。
【0018】
酸素脱リグニン処理が施されたパルプは、例えば、次いで洗浄工程へ送られ、洗浄後、多段漂白工程へ送られ、多段漂白処理を行うことができる。本発明の多段漂白処理は、特に限定されるものではないが、酸(A)、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を組み合わせるのが好適である。例えば、多段漂白処理の初段は二酸化塩素漂白段(D)やオゾン漂白段(Z)を用い、二段目にはアルカリ抽出段(E)や過酸化水素段(P)、三段目以降には、二酸化塩素や過酸化水素を用いた漂白シーケンスが好適に用いられる。三段目以降の段数も特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適である。また、多段漂白処理中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入してもよい。
【0019】
本発明のフラッフ化パルプを製造する際において、サルファイトパルプ以外のパルプを混合してもよい。サルファイトパルプ以外のパルプとして、溶解クラフトパルプ、クラフトパルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP))または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グラウンドウッドパルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、脱墨パルプ(DIP)などのパルプを任意の割合で混合して使用してもよい。
【0020】
本発明のフラッフ化パルプにおいて、全パルプ分に対するサルファイトパルプの配合率は特に限定は無いが、配合率が高いほど、パルプシートの状態において内部結合強さが低下するので、解繊性が改善される。また、吸水性についても配合率が高いほど改善される。その観点から、全パルプの絶乾重量に対して5質量%以上が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、60〜100質量%が更に好ましい。配合率が5質量%未満では解繊性及び吸水性を改善させることが困難である。なお、本発明における吸水性とは、SCAN−C33:80 Specific volume and absorption propertiesに準じて測定されるもので、フラッフ化パルプ3gを直径50mmに成型してパルプマットを作成し、このパルプマットに100g、300g、500gの錘を載せた状態で、パルプマットの下面から上面まで吸水させた時の吸水量(パルプ重量当たり)と吸水時間を測定し、吸水量を吸水時間で除して吸水速度とするものである。本発明のフラッフ化パルプは吸水速度が高いという特徴を有するので、紙おむつ等の吸収体に好ましく使用できる。
【0021】
本発明におけるフラッフ化パルプは、原料パルプを機械的処理により繊維状に解繊して得られる。本発明において、フラッフ化する前のパルプの含水率は35%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。含水率の下限は特に限定されないが、2%以上程度である。含水率を低くした、ドライな状態の原料パルプを解繊することにより、繊維間結合し難く、フラッフ化パルプが効率的に得られる。含水率が35%を超えると効果が小さくなる。本発明において原料パルプの形状は特に限定されないが、シート状にしたパルプ(いわゆるパルプシート)やシート状に抄き取ったパルプを巻取ロールのような状態にしたものが、取扱いが容易なため好ましい。
【0022】
本発明において、フラッフ化、すなわち解繊するための機械的処理に用いる装置は特に限定されないが、紙おむつ等の吸収性材料の製造時などに使用されている公知の解繊機を使用でき、機械的処理として摩擦力やせん断力を利用する解繊機を好適に使用できる。フラッフ化に使用する装置としては、例えば、歯付きシリンダーを有する解繊装置を好適に用いることができる(特許第2521577号公報参照)。本発明のフラッフ化パルプは、解繊機の歯付きシリンダーで原料パルプを削るように解繊するだけで製造でき、前述したカールドファイバーのように特殊な処理を施して繊維内架橋させる必要がないため、嵩高なパルプを容易に得ることができる。
【0023】
本発明のフラッフ化パルプの用途は、特に限定はないが、例えば、紙おむつ、尿とりパッド、軽失禁パッド等に使用する吸収体、あるいは上質または中質印刷用紙を始めとする印刷用紙、新聞用紙、情報記録用紙、塗工紙用原紙、包装用紙等の各種用途の紙に使用することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に断らない限り、部及び%は質量部及び質量%を表す。
【0025】
実施例及び比較例の手抄きパルプシート、それから作成されたフラッフ化パルプについて、下記の項目について評価し、結果を表1、表2に示した。
・内部結合強さ:JAPAN−TAPPI 18−2:2000に従って、測定した。
・未解繊率の測定:パルプシート3.0gを計り取り、ラボ解繊機(AS ONE社製、小型粉砕機 SM−1)を用いて、75V(100Vで回転数は14000rpm)、15秒間解繊した。得られたフラッフ化パルプを100meshの篩に取り、電動工具用集塵機(日立工機社製、RP 35RYD2、真空度:約14kPa)に繋げた直径10mmのチューブを篩の下に当てて解繊パルプを吸引し、篩上に残った未解繊パルプの質量を計り、元のパルプシートの質量(3.0g)に対する比率を未解繊率とした。
・保水度:JAPAN−TAPPI 26に従い、上記<未解繊率の測定>に記載の方法に得られたフラッフ化パルプの保水度を測定した。
・吸水性:SCAN−C33:80(Specific volume and absorption properties)に準じて、上記<未解繊率の測定>に記載の方法にて、得られたフラッフ化パルプ3gを直径50mmに成型してパルプマットを作成した。パルプマットに100g、300g、500gの錘を載せた状態で、パルプマットの下面から上面まで吸水させた時の吸水量と吸水時間を測定し、吸水量を吸水時間で除して吸水速度とした。
・パルプマットの高さ:上記<吸水性>に記載の方法にて、得られた直径50mmに成型してパルプマットを直径50mmの目盛付きのシリンダーに入れ、100gの錘を載せた状態でパルプマットの高さを測定した。
【0026】
[実施例1]
ラジアータマツを原料とするサルファイトパルプ(商品名:NSPP−HR、αセルロース含有率95%、繊維長2.43mm、日本製紙(株)製)のパルプシートをJIS P 8220−1:2012に従って離解し、離解したパルプをJIS P 8222:1998に準じて、坪量250g/mの手抄きパルプシートを作成した。この手抄きパルプシートについて、未解繊率、内部結合強さを測定し、結果を表1に示した。さらに手抄きパルプシートより上記未解繊率の測定に記載の方法でフラッフ化パルプを作成した。得られたフラッフ化パルプについて、パルプマットの高さ、保水度、吸水速度、吸水量を測定し、結果を表2に示した。
【0027】
[実施例2]
アカマツを原料とするサルファイトパルプ(商品名:NT−EX、αセルロース含有率95%、繊維長2.08mm、日本製紙(株)製)のパルプシートを用いた以外は、実施例1と同様にして、手抄きパルプシートを作成した。この手抄きパルプシートについて、未解繊率、内部結合強さを測定し、結果を表1に示した。また、得られたパルプシートより実施例1と同様にしてフラッフ化パルプを作成し、得られたフラッフ化パルプのパルプマットの高さ、保水度、吸水速度、吸水量を表2に示した。
【0028】
[比較例1]
ラジアータパインを原料とするクラフトパルプ(繊維長2.35mm)のパルプシートを用いた以外は、実施例1と同様にして、手抄きパルプシートを作成した。この手抄きパルプシートについて、未解繊率、内部結合強さを測定し、結果を表1に示した。また、得られたパルプシートより実施例1と同様にしてフラッフ化パルプを作成し、得られたフラッフ化パルプのパルプマットの高さ、保水度、吸水速度、吸水量を表2に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1に示されるように、実施例1、2と比較例1のパルプシートを比較すると、実施例1、2の方が内部結合強さが低くなっており、未解繊率も低くなっていた。また、表2に示されるように、実施例1、2と比較例1のパルプマットを比較すると、実施例1、2の方が荷重を増加させても吸水量、吸水速度が高くなっていた。また、実施例1、2のパルプマット高さは比較例1より低くなっており、これらの特徴より、本願のフラッフ化パルプは薄くても吸水性に優れる吸水材料となることが示唆される。