【解決手段】油圧緩衝装置1は、オイルを収容する第1シリンダ11と、第1シリンダ11の一方側端部112に挿入される挿入部412を有し、第1シリンダ11の一方側端部112に取り付けられるボトムバルブ部40と、を有し、ボトムバルブ部40の挿入部412と、第1シリンダ11の一方側端部112と、の少なくともいずれか一方に、挿入方向に対して傾斜する傾斜部(ボトム側傾斜部41t,シリンダ側傾斜部11t)を有する。
前記端部部材は、前記シリンダの前記シリンダ端部に設けられ、前記シリンダ内と前記シリンダ外との間で前記液体が流れる連絡路を形成する請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1および
図2を参照しながら本発明の一例である第1実施形態に係る油圧緩衝装置1を説明する。
【0010】
図1は、第1実施形態に係る油圧緩衝装置1の全体構成図である。
図2は、第1実施形態に係る油圧緩衝装置1の第1シリンダ11およびボトムバルブ部40の縦断面図である。
なお、以下の説明において、
図1に示す油圧緩衝装置1の長手方向を軸方向と称する。また、軸方向において、油圧緩衝装置1の下側を「一方側」と称し、油圧緩衝装置1の上側を「他方側」と称して説明を行う。また、
図1に示す油圧緩衝装置1の左右方向を半径方向と称し、中心軸側を「内側」、中心軸から離れる側を「外側」と称する。
【0011】
〔油圧緩衝装置1の構成〕
[概略構成]
まず、第1実施形態に係る油圧緩衝装置1の構成について説明する。
第1実施形態に係る油圧緩衝装置1は、オイルを収容する第1シリンダ11と、第2シリンダ12と、一部が第1シリンダ11の内部に入り、軸方向に移動可能なピストンロッド21と、ピストンロッド21に固定され、第1シリンダ11の内側を移動するピストン30と、第1シリンダ11の一方側に配置される底部に設けられたボトムバルブ部40を有する。
【0012】
そして、油圧緩衝装置1は、
図2に示すように、オイル(本発明における液体に相当)を収容する第1シリンダ11(本発明におけるシリンダに相当)と、第1シリンダ11の一方側端部112(本発明におけるシリンダ端部に相当)に挿入される挿入部412(本発明における挿入部に相当)を有し、第1シリンダ11の一方側端部112に取り付けられるボトムバルブ部40(本発明における端部部材に相当)と、を有し、ボトムバルブ部40の挿入部412と第1シリンダ11の一方側端部112との双方に、挿入方向に対して傾斜するボトム側傾斜部41t(本発明における傾斜部に相当)とシリンダ側傾斜部11t(本発明における傾斜部に相当)とを有する。
以下で、各構成部品について詳述する。
【0013】
(第1シリンダ11および第2シリンダ12の構成)
油圧緩衝装置1は、
図1に示すように、半径方向の内側から外側に向けて順に第1シリンダ11と第2シリンダ12とを備えた、いわゆる二重管の構造である。
第1シリンダ11の一方側端部112(底部)は、ボトムバルブ部40によって塞がれている。また、第2シリンダ12の一方側端部122は底蓋13によって塞がれている。一方、第1シリンダ11および第2シリンダ12の他方側の端部(上部)は、ロッドガイド14、オイルシール15およびキャップ16によって、ピストンロッド21が通過可能に塞がれている。また、第1シリンダ11と第2シリンダ12との間には、円筒状の空間であるリザーバ室Rが形成されている。リザーバ室Rには、オイルが収容されているとともに、リザーバ室Rの上部にはガスが封入されている。
【0014】
第1シリンダ11は、
図2に示すように、軸方向の一方側端部112にシリンダ側傾斜部11tを有する。そして、第1シリンダ11(シリンダ)の一方側端部112(シリンダ端部)の内径は、第1シリンダ11の軸方向において、ボトムバルブ部40(端部部材)に近い側がボトムバルブ部40に遠い側よりも大きく形成されている。
【0015】
そして、本実施形態では、軸方向において、第1シリンダ11とボトムバルブ部40とを相対的に近づける方向に移動させてボトムバルブ部40を挿入させる。そして、ボトムバルブ部40に第1シリンダ11を圧入する。本実施形態では、この第1シリンダ11にボトムバルブ部40を挿入するための移動方向(本実施形態では軸方向が相当)を挿入方向と称する。
【0016】
第1シリンダ11のシリンダ側傾斜部11tは、ボトムバルブ部40に遠い側A1(他方側)からボトムバルブ部40に近い側A2(一方側)にかけて、挿入方向に対してθ1°傾いている。シリンダ側傾斜部11tにおいて、ボトムバルブ部40に近い側A2の内径は、「La2」である。また、シリンダ側傾斜部11tにおいて、ボトムバルブ部40に遠い側A1の内径は、「La1」である。
即ち、シリンダ側傾斜部11tにおいて、ボトムバルブ部40に近い側A2の内径La2は、ボトムバルブ部40に遠い側A1の内径La1よりも大きく形成されている(La2>La1)。
【0017】
なお、シリンダ側傾斜部11tの挿入方向に対する傾きは、本実施形態に示すθ1°でなくてもよく、軸方向に対して0°以上、90°より小さければよい(0°≦θ1°<90°)。なお、例えば後述する
図6(A)に示すように、ボトムバルブ部40の挿入部412がボトム側傾斜部41tを有している場合には、シリンダ側傾斜部11tの角度θ1は、軸方向に対して0°であっても良い。要するに、シリンダ側傾斜部11tは、対向する2つの部材(本実施形態においては、第1シリンダ11とボトムバルブ部40)の挿入方向に対して、一定の角度θ1を有して、より円滑に挿入できるようにし、双方の部材の擦れを低減することを趣旨とし、挿入方向に対する角度θ1は広義に解釈する。
【0018】
(ピストンロッド21の構成)
ピストンロッド21は、
図1に示すように、一部が第1シリンダ11の内部に入り、残りの一部が第1シリンダ11の外部に露出し、軸方向に沿って移動可能とされている。ピストンロッド21は、一方側の端部にピストン30を備えている。そして、ピストンロッド21とピストン30とは、軸方向に一体的に移動する。また、ピストン30は、シリンダの内周面に沿って軸方向に移動可能に設けられている。
【0019】
(ピストン30の構成)
ピストン30は、軸方向に貫通する複数の油路31Rが形成されたバルブシート31と、バルブシート31の一方側に設けられた第1伸側バルブ32と、バルブシート31の他方側に設けられた第1圧側バルブ33とを備えている。そして、ピストン30は、第1シリンダ11の内側の空間を、軸方向の一方側(
図1の下側)の空間である第1油室Y1と、軸方向の他方側(
図1の上側)の空間である第2油室Y2とに区画している。
【0020】
(ボトムバルブ部40の構成)
ボトムバルブ部40は、
図1に示すように、油圧緩衝装置1の一方側の端部に設けられ、リザーバ室Rと第1油室Y1とを区分する。ボトムバルブ部40は、軸方向に貫通する複数の油路41Rが形成されたボトムバルブシート41と、ボトムバルブシート41の他方側(第1油室Y1側)に設けられる第2伸側バルブ42と、ボトムバルブシート41の一方側(リザーバ室R側)に設けられる第2圧側バルブ43とを備えている。
そして、ボトムバルブシート41は、第1シリンダ11(シリンダ)の一方側端部112(シリンダ端部)に設けられ、第1シリンダ11の内側である第1油室Y1と第1シリンダ11の外側であるリザーバ室Rとの間でオイルが流れる連絡路を形成する。
【0021】
ボトムバルブシート41は、
図2に示すように、外径が軸方向に対して平行である土台部411と、土台部411の他方側に形成されるとともに外径が傾斜して第1シリンダ11に挿入される挿入部412とを備えている。
挿入部412は、ボトム側傾斜部41tを有している。また、ボトム側傾斜部41tは、第1シリンダ11に挿入される際に第1シリンダ11が接触する箇所となる挿入部412の軸方向における全体に形成される。そして、ボトムバルブ部40(端部部材)のボトム側傾斜部41t(傾斜部)の外径は、第1シリンダ11(シリンダ)の軸方向において、第1シリンダ11に近い側B1が第1シリンダ11と遠い側B2よりも小さく形成されている。
【0022】
具体的には、ボトムバルブシート41は、第1シリンダ11に近い側B1(他方側)から第1シリンダに遠い側B2(一方側)にかけて、挿入方向に対してθ2°傾いている。そして、ボトムバルブシート41の近い側B1の外径は、「Lb1」である。ボトムバルブシート41の第1シリンダ11と遠い側B2の外径は、「Lb2」である。即ち、ボトムバルブシート41のボトム側傾斜部41tにおいて、第1シリンダ11に近い側B1の外径Lb1は、第1シリンダ11に遠い側B2の外径Lb2よりも小さく形成されている(Lb2>Lb1)。
【0023】
ボトムバルブシート41の挿入部412におけるボトム側傾斜部41tの形状は、第1シリンダ11の一方側端部112に形成されたシリンダ側傾斜部11tの形状とほぼ同一である。
【0024】
具体的には、ボトム側傾斜部41tの傾斜の角度θ2°は、第1シリンダ11の一方側端部112の傾斜の角度θ1°とほぼ同一である(θ1°≒θ2°)。また、ボトムバルブシート41の挿入部412において、第1シリンダ11に近い側B1の外径Lb1は、第1シリンダ11の一方側端部112において、ボトムバルブ部40に遠い側A1の内径La1とほぼ同一である(Lb1≒La1)。また、ボトムバルブシート41の挿入部412において、第1シリンダ11に遠い側B2の外径Lb2は、第1シリンダ11の一方側端部112において、ボトムバルブ部40に近い側A2の内径La2と略同一である(Lb2≒La2)。
【0025】
なお、ボトム側傾斜部41tの定義は、上述したシリンダ側傾斜部11tの定義と同義である。即ち、ボトム側傾斜部41tは、対向する2つの部材(本実施形態においては、第1シリンダ11とボトムバルブ部40)の挿入方向に対して、一定の角度θ2を有し、より円滑に挿入できるようにし、双方の部材の擦れを低減することを趣旨とし、挿入方向に対する角度θ2は広義に解釈し、挿入方向に対して0°以上、90°より小さければよい(0°≦θ2°<90°)。なお、例えば後述する
図6(B)に示すように、第1シリンダ11の一方側端部112がシリンダ側傾斜部11tを有している場合には、ボトム側傾斜部41tの角度θ2は、軸方向に対して0°であっても良い。
【0026】
また、ボトムバルブ部40のボトムバルブシート41の硬度は、第1シリンダ11の硬度よりも低い。本実施形態において、例えば第1シリンダ11は圧延加工により製造されているのに対し、ボトムバルブ部40のボトムバルブシート41は粉末冶金加工によって製造されている。
【0027】
〔作用・効果〕
(油圧緩衝装置1の作用・効果)
次に、第1実施形態に係る油圧緩衝装置1の作用および効果について説明する。
油圧緩衝装置1の圧縮行程時においては、
図1に示すように、ピストンロッド21が第1シリンダ11に対して軸方向の一方側(
図1の下側)へ移動する。ピストンロッド21に固定されたピストン30は、第1油室Y1内のオイルを圧縮し、第1油室Y1内部の圧力を上昇させる。これにより、第1油室Y1のオイルは、バルブシート31の油路31Rを閉塞する第1圧側バルブ33を開き、ピストン30の他方側の第2油室Y2に流入する。また、ボトムバルブ部40において、オイルは、ボトムバルブシート41の油路41Rを閉塞する第2圧側バルブ43を開き、第1油室Y1からリザーバ室Rに流出する。
そして、オイルが油路(油路31R,油路41R)およびバルブ(第1圧側バルブ33,第2圧側バルブ43)を流れる際に生じる抵抗により、油圧緩衝装置1は圧縮工程時の減衰力を発生させる。
【0028】
油圧緩衝装置1の伸張行程時においては、ピストンロッド21が第1シリンダ11に対して軸方向の他方側(
図1の上側)へ移動する。ピストンロッド21が移動すると、その体積分のオイルが第1油室Y1に不足することにより負圧となる。これにより、第2油室Y2のオイルは、第1伸側バルブ32を開き、ピストン30の一方側の第1油室Y1に流入する。一方、リザーバ室R内のオイルは、ボトムバルブシート41の油路41Rを閉塞する第2伸側バルブ42を開いて第1油室Y1内に流入する。
そして、オイルが油路(油路31R,油路41R)およびバルブ(第1伸側バルブ32,第2伸側バルブ42)を流れる際に生じる抵抗により、油圧緩衝装置1は伸張行程時における減衰力を発生させる。
【0029】
(傾斜部(シリンダ側傾斜部11t,ボトム側傾斜部41t)の作用・効果)
次に、ボトムバルブ部40のボトム側傾斜部41tおよび第1シリンダ11のシリンダ側傾斜部11tの作用および効果について説明する。
第1実施形態に係る油圧緩衝装置1は、
図2に示すように、オイル(液体)を収容する第1シリンダ11(シリンダ)と、第1シリンダ11の一方側端部112に挿入される挿入部412を有し、一方側端部112に取り付けられるボトムバルブ部40(端部部材)と、を有し、ボトムバルブ部40の挿入部412と、第1シリンダ11の一方側端部112との双方に、挿入方向に対して傾斜するシリンダ側傾斜部11t(傾斜部)とボトム側傾斜部41t(傾斜部)とを有する。
【0030】
要するに、シリンダ側傾斜部11tを第1シリンダ11の一方側端部112に形成し、シリンダ側傾斜部11tの内径は、第1シリンダ11の軸方向において、ボトムバルブ部40に近い側A2がボトムバルブ部40に遠い側A1よりも大きく形成されている。また、ボトム側傾斜部41tをボトムバルブ部40に形成し、ボトムバルブ部40の挿入部412の外径は、第1シリンダ11の軸方向において、第1シリンダ11に近い側B1が第1シリンダ11に遠い側B2よりも小さく形成されている。
【0031】
これにより、シリンダ側傾斜部11tおよびボトム側傾斜部41tは、第1シリンダ11の一方側端部112を、ボトムバルブ部40の挿入部412に挿入する際の双方の部材の挿入方向にかかる荷重(いわゆる、(双方の部材にかかる)面圧)を低減させる。そして、第1シリンダ11とボトムバルブ部40との磨耗を生じにくくさせるとともに、双方の部材の挿入移動を促進させることができる。この結果、双方の部材の接触に伴う加工片の発生をより緩和させ、第1シリンダ11にボトムバルブ部40を挿入することができる。
【0032】
さらに、本実施形態においては、ボトムバルブ部40の挿入部412のボトム側傾斜部41tと、第1シリンダ11の一方側端部112のシリンダ側傾斜部11tとが相俟って、双方の部材の挿入角度をほぼ同一とし、双方の部材の磨耗をより生じにくくすることができる。これにより、ボトムバルブ部40の挿入部412と第1シリンダ11の一方側端部112とは、より円滑な部材の挿入移動を実現させ、加工片が発生する可能性をより低減させることができる。
【0033】
以上説明したとおり、第1実施形態に係る油圧緩衝装置1は、ボトムバルブ部40への第1シリンダ11の挿入時における加工片の発生を低減できる。
【0034】
<第2実施形態>
次に、
図3を参照しながら第2実施形態に係る油圧緩衝装置1について説明する。
図3は、第2実施形態に係る油圧緩衝装置1を説明するための図である。なお、
図3(A)は第1シリンダ211およびボトムバルブ部240の縦断面図であり、
図3(B)は
図3(A)に示す矢印IIIB部の拡大図である。
なお、第2実施形態において、上述した第1実施形態と同様な部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係る油圧緩衝装置1は、
図3(A)に示すように、オイル(本発明における液体に相当)を収容する第1シリンダ211(本発明におけるシリンダに相当)と、第1シリンダ211の一方側端部2112(本発明におけるシリンダ端部に相当)に挿入される挿入部2412(本発明における挿入部に相当)を有し、一方側端部2112に取り付けられるボトムバルブ部240(本発明における端部部材に相当)と、を有し、ボトムバルブ部240の挿入部2412と第1シリンダ211の一方側端部2112との双方に、挿入方向に対して傾斜するボトム側傾斜部241t(本発明における傾斜部に相当)とシリンダ側傾斜部211t(本発明における傾斜部に相当)とを有する。
また、ボトムバルブ部240は、第1シリンダ211との間に半径方向に隙間を形成する複数の凹部241d(第1凹部241d1および第2凹部241d2)を有する。
【0036】
そして、第2実施形態に係る油圧緩衝装置1は、ボトムバルブ部240の挿入部2412の構成が、第1実施形態とは異なる。
具体的には、挿入部2412には、
図3(B)に示すように、第1シリンダ211の軸方向に複数のボトム側傾斜部241t(第1傾斜部241t1、第2傾斜部241t2および第3傾斜部241t3)が形成されている。なお、ボトム側傾斜部241tは、第1シリンダ211に挿入される際に第1シリンダ11と接触する箇所となる挿入部2412の軸方向における全体に形成される。
また、挿入部2412には、複数のボトム側傾斜部241tによって、第1シリンダ211との間に半径方向に隙間を形成する凹部241dが設けられる。本実施形態では、凹部241dは、ボトムバルブ部240の軸方向において複数形成されている。
【0037】
第1傾斜部241t1は、第1傾斜部241t1、第2傾斜部241t2および第3傾斜部241t3の内、最も他方側に形成されている。また、第2傾斜部241t2は、第1傾斜部241t1の一方側であって第3傾斜部241t3の他方側に形成されている。さらに、第3傾斜部241t3は、第1傾斜部241t1、第2傾斜部241t2および第3傾斜部241t3の内、最も一方側に形成されている。
【0038】
そして、第1傾斜部241t1は、第1傾斜面T1と第1水平面S1とを有する。第1傾斜面T1と第1水平面S1との接合点を第1頂点P1とする。第2傾斜部241t2および第3傾斜部241t3も、第1傾斜部241t1と同様の形状である。即ち、第2傾斜部241t2と第3傾斜部241t3とは、それぞれ第2頂点P2および第3頂点P3とを中心として、第2傾斜面T2および第2水平面S2と、第3傾斜面T3および第3水平面S3とを有する。そして、第2実施形態において、第1傾斜部241t1、第2傾斜部241t2および第3傾斜部241t3の頂点(第1頂点P1、第2頂点P2および第3頂点P3)の半径方向の大きさは、軸方向断面視においていずれも同一である。
【0039】
第1凹部241d1は、ボトムバルブ部240の第1水平面S1と第2傾斜面T2および第1シリンダ211の内側面との間に形成される隙間である。また、第2凹部241d2は、ボトムバルブ部240の第2水平面S2と第3傾斜面T3、および第1シリンダ211の内側面との間に形成される隙間である。
【0040】
なお、第1水平面S1、第2水平面S2および第3水平面S3は、第1シリンダ211の軸方向に対して必ずしも水平に設けられることに限定されない。例えば第2水平面S2は、第2頂点P2を支点として
図3(B)に図示する状態から第1傾斜部241t1側や第3傾斜部241t3側に回転することで、第1シリンダ211の軸方向に対する水平とは異なる角度に形成されていても構わない。第1水平面S1および第3水平面S3についても同様である。
【0041】
第2実施形態において、
図3(A)に示すように、第1シリンダ211の一方側端部2112は、ボトムバルブ部240への挿入方向に対して傾斜するシリンダ側傾斜部211tと、シリンダ側傾斜部211tの一方側に形成される直線部211vを備えている。シリンダ側傾斜部211tは、ボトムバルブ部240の第1傾斜部241t1に沿って圧入される。直線部211vは、ボトムバルブ部240の第2傾斜部241t2および第3傾斜部241t3を半径方向外側から覆うようにして圧入される。また、第1シリンダ211の一方側端部2112は、ボトムバルブ部240の軸方向において複数形成されている凹部241dに対向する。
【0042】
上述した構成により、第2実施形態においては、ボトムバルブ部240の挿入部2412のボトム側傾斜部241tと、第1シリンダ211の一方側端部2112のシリンダ側傾斜部211tとが相俟って、双方の部材の磨耗をより生じにくくすることができる。これにより、ボトムバルブ部240の挿入部2412と第1シリンダ211の一方側端部2112とは、より円滑な部材の挿入移動を実現させ、加工片が発生する可能性をより低減させることができる。
【0043】
さらに、仮に第1シリンダ211をボトムバルブ部240へ挿入した際に加工片が発生した場合であっても、第1凹部241d1と第2凹部241d2とに段階的に、分散して加工片を入れることができる。これにより、より多くの加工片をより確実に入れることができ、例えば、オイル中への加工片の混入を防止することができる。
【0044】
即ち、本実施形態にかかる油圧緩衝装置1は、油圧緩衝装置1のボトムバルブ部240への第1シリンダ211の挿入時における加工片の発生を防止できる。
【0045】
<第3実施形態>
次に、
図4を参照しながら第3実施形態に係る油圧緩衝装置1について説明する。
図4は、第3実施形態に係る油圧緩衝装置1を説明するための図である。なお、
図4(A)は第1シリンダ11およびボトムバルブ部340の縦断面図であり、
図4(B)は
図4(A)に示す矢印IVB部の拡大図である。
なお、第3実施形態において、上述した第1実施形態と同様な部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
第3実施形態に係る油圧緩衝装置1は、
図4(A)に示すように、オイル(本発明における液体に相当)を収容する第1シリンダ11(本発明におけるシリンダに相当)と、第1シリンダ11の一方側端部112(本発明におけるシリンダ端部に相当)に挿入される挿入部3412(本発明における挿入部に相当)を有し、第1シリンダ11の一方側端部112に取り付けられるボトムバルブ部340(本発明における端部部材に相当)と、を有し、ボトムバルブ部340の挿入部3412と第1シリンダ11の一方側端部112との双方に、挿入方向に対して傾斜するボトム側傾斜部341t(本発明における傾斜部に相当)とシリンダ側傾斜部11t(本発明における傾斜部に相当)とを有する。
また、ボトムバルブ部340は、第1シリンダ11との間に半径方向に隙間を形成する凹部341d(本発明における凹部に相当)を有する。さらに、ボトムバルブ部340の軸方向において複数の凹部341d(第1凹部341d1および第2凹部341d2)が設けられる。
【0047】
そして、第3実施形態の油圧緩衝装置1は、ボトムバルブ部340が複数のボトム側傾斜部341t(第1傾斜部341t1、第2傾斜部341t2および第3傾斜部341t3)を有する。
具体的には、
図4(B)に示すように、第1傾斜部341t1、第2傾斜部341t2および第3傾斜部341t3は、半径方向の大きさがそれぞれ異なっている。第1傾斜部341t1、第2傾斜部341t2および第3傾斜部341t3は、軸方向の他方側から一方側へかけて半径方向の大きさが大きくなっている。即ち、第2傾斜部341t2の半径方向の大きさは、第1傾斜部341t1の半径方向の大きさよりも大きい(第2傾斜部341t2の第2頂点P2の半径方向の長さ>第1傾斜部341t1の第1頂点P1の半径方向の長さ)。第3傾斜部341t3の半径方向の大きさは、第2傾斜部341t2の半径方向の大きさよりも大きい(第3傾斜部341t3の第3頂点P3の半径方向の長さ>第2傾斜部341t2の第2頂点P2の半径方向の長さ)。
【0048】
上述した構成により、ボトムバルブ部340の第1傾斜部341t1、第2傾斜部341t2および第3傾斜部341t3と、第1シリンダ11に形成されたシリンダ側傾斜部11tとが相俟って、双方を圧入する際に加工片をより発生しにくくするとともに、仮に加工片が発生したとしても、第1凹部341d1および第2凹部341d2に段階的に、分散して加工片が回収される。これにより、より多くの加工片をより確実に入れることができ、例えば、加工片のオイル中への混入を防止することができる。
【0049】
即ち、第3実施形態に係る油圧緩衝装置1は、油圧緩衝装置1のボトムバルブ部340への第1シリンダ11の挿入時における加工片の発生を防止できる。
【0050】
<第4実施形態>
次に、
図5を参照しながら第4実施形態に係る油圧緩衝装置1について説明する。
図5は、第4実施形態に係る油圧緩衝装置1を説明するための図である。なお、
図5(A)は第1シリンダ11およびボトムバルブ部440の縦断面図であり、
図5(B)は
図5(A)に示す矢印VB部の拡大図である。
なお、第4実施形態において、上述した第1実施形態と同様な部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
第4実施形態に係る油圧緩衝装置1は、
図5(A)に示すように、オイル(本発明における液体に相当)を収容する第1シリンダ11(本発明におけるシリンダに相当)と、第1シリンダ11の一方側端部112に挿入される挿入部4412(本発明における挿入部に相当)を有し、第1シリンダ11の一方側端部112に取り付けられるボトムバルブ部440(本発明における端部部材に相当)と、を有し、ボトムバルブ部440の挿入部4412と第1シリンダ11の一方側端部112との双方に、挿入方向に対して傾斜するボトム側傾斜部441t(本発明における傾斜部に相当)とシリンダ側傾斜部11t(本発明における傾斜部に相当)とを有する。
また、ボトムバルブ部440は、第1シリンダ11との間に半径方向に隙間を形成する凹部441dを挿入部4412に備えている。
【0052】
図5(B)に示すように、土台部411と第1水平面S1との間の凹部441dは、軸方向断面視において、略四角形である。凹部441dは、(例えば、上述した第3実施形態の第1凹部341d1および第2凹部341d2よりも)より広い収容体積を有するとともに、凹部441dの軸方向一方側の面が、軸方向に対して略水平な面であるため、収容した加工片を凹部441d内部に留め易い形状である。
【0053】
上述した構成により、ボトムバルブ部440のボトム側傾斜部441t、第1シリンダ11に形成されたシリンダ側傾斜部11t、および凹部441dが相俟って、双方を圧入する際に加工片をより発生しにくくするとともに、仮に加工片が発生したとしても、より多くの加工片をより確実に入れることができ、例えば、加工片のオイル中への混入を防止することができる。
【0054】
即ち、本実施形態にかかる油圧緩衝装置1は、油圧緩衝装置1のボトムバルブ部440への第1シリンダ11の挿入時における加工片の発生を防止できる。
【0055】
次に、
図6を参照しながら第5実施形態〜第7実施形態に係る油圧緩衝装置1について説明する。
図6は、第5実施形態〜第7実施形態に係る油圧緩衝装置1を説明するための図である。なお、
図6(A)は第5実施形態に係る油圧緩衝装置1の第1シリンダ511およびボトムバルブ部40の縦断面図であり、
図6(B)は第6実施形態に係る油圧緩衝装置1の第1シリンダ11およびボトムバルブ部640の縦断面図であり、
図6(C)は、第7実施形態に係る油圧緩衝装置1の第1シリンダ11およびロッドガイド14の縦断面図である。
なお、第5実施形態〜第7実施形態において、上述した第1実施形態と同様な部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
<第5実施形態>
第5実施形態に係る油圧緩衝装置1は、
図6(A)に示すように、オイル(本発明における液体に相当)を収容する第1シリンダ511(本発明におけるシリンダに相当)と、第1シリンダ511の一方側端部5112に挿入される挿入部412(本発明における挿入部に相当)を有し、第1シリンダ511の一方側端部5112に取り付けられるボトムバルブ部40(本発明における端部部材に相当)と、を有し、ボトムバルブ部40の挿入部412に、挿入方向に対して傾斜するボトム側傾斜部41t(本発明における傾斜部に相当)を有する。即ち、第5実施形態においては、第1シリンダ511の一方側端部5112は、「シリンダ側傾斜部」を有していない。
【0057】
このような第5実施形態の油圧緩衝装置1においても、ボトム側傾斜部41tは、第1シリンダ511の一方側端部5112を、ボトムバルブ部40の挿入部412に挿入する際の双方の部材の挿入方向にかかる荷重を低減させる。これにより、第1シリンダ511とボトムバルブ部40との磨耗を生じにくくさせるとともに、双方の部材の挿入移動を促進させることができる。この結果、双方の部材の接触に伴う加工片の発生をより緩和させ、第1シリンダ511にボトムバルブ部40を挿入することができる。
即ち、第5実施形態にかかる油圧緩衝装置1は、油圧緩衝装置1のボトムバルブ部40への第1シリンダ511の挿入時における加工片の発生を防止できる。
【0058】
<第6実施形態>
第6実施形態に係る油圧緩衝装置1は、
図6(B)に示すように、オイル(本発明における液体に相当)を収容する第1シリンダ11(本発明におけるシリンダの一例に相当)と、第1シリンダ11の一方側端部112に挿入される挿入部6412(本発明における挿入部に相当)を有し、第1シリンダ11の一方側端部112に取り付けられるボトムバルブ部640(本発明における端部部材に相当)と、を有し、第1シリンダ11の一方側端部112に、挿入方向に対して傾斜するシリンダ側傾斜部11t(本発明における傾斜部に相当)を有する。即ち、第6実施形態において、ボトムバルブ部640の挿入部6412は、「ボトム側傾斜部」を有していない。
【0059】
このような第6実施形態の油圧緩衝装置1においても、シリンダ側傾斜部11tは、第1シリンダ11の一方側端部112を、ボトムバルブ部640の挿入部6412に挿入する際の双方の部材の挿入方向にかかる荷重を低減させる。これにより、第1シリンダ11とボトムバルブ部640との磨耗を生じにくくさせるとともに、双方の部材の挿入移動を促進させることができる。この結果、双方の部材の接触に伴う加工片の発生をより緩和させ、第1シリンダ11にボトムバルブ部640を挿入することができる。
即ち、第6実施形態にかかる油圧緩衝装置1は、油圧緩衝装置1のボトムバルブ部640への第1シリンダ11の挿入時における加工片の発生を防止できる。
【0060】
<第7実施形態>
第7実施形態に係る油圧緩衝装置1は、
図6(C)に示すように、オイル(本発明における液体に相当)を収容する第1シリンダ11(本発明におけるシリンダに相当)と、第1シリンダ11の他方側に形成される他方側端部113に挿入される挿入部142を有し、第1シリンダ11の他方側端部113に取り付けられるロッドガイド14(本発明における端部部材に相当)と、を有し、ロッドガイド14の挿入部142と第1シリンダ11の他方側端部113との双方に、挿入方向に対して傾斜するガイド側傾斜部14t(本発明における傾斜部に相当)とシリンダ側傾斜部17t(本発明における傾斜部に相当)とを有する。
【0061】
このような第7実施形態の油圧緩衝装置1においても、ロッドガイド14のガイド側傾斜部14tと、第1シリンダ11に形成されたシリンダ側傾斜部17tとが相俟って、双方を圧入する際に加工片をより発生しにくくすることができる。
即ち、第7実施形態にかかる油圧緩衝装置1は、油圧緩衝装置1のロッドガイド14のへの第1シリンダ11の挿入時における加工片の発生を防止できる。
【0062】
なお、第7実施形態において、上述した第2実施形態〜第4実施形態と同様に、ロッドガイド14の挿入部142に複数の傾斜部を設けたり、傾斜部に凹部を設けたりしても良い。また、第7実施形態では、ロッドガイド14の挿入部142と第1シリンダ11の他方側端部113との双方に傾斜部(ガイド側傾斜部14t,シリンダ側傾斜部17t)を設けているが、ロッドガイド14の挿入部142もしくは第1シリンダ11の他方側端部113のいずれか一方に傾斜部を設けるようにしても構わない。
【0063】
以上説明したとおり、第2実施形態〜第7実施形態に係る油圧緩衝装置1は、第1実施形態と同様に、「傾斜部」を「シリンダ」の端部に形成し、「シリンダ」の端部の内径は、「シリンダ」の軸方向において、「ボトムバルブ部」(または「ロッドガイドケース」)に近い側が「ボトムバルブ部」(または「ロッドガイドケース」)に遠い側よりも大きく形成されている。また、「傾斜部」を「ボトムバルブ部」(または「ロッドガイドケース」)に形成し、「ボトムバルブ部」(または「ロッドガイドケース」)の「挿入部」の外径は、「シリンダ」の軸方向において、「シリンダ」に近い側が「シリンダ」に遠い側よりも小さく形成されている。また、「ボトムバルブ部」(または「ロッドガイドケース」)は、「シリンダ」よりも硬度が低い。また、「ボトムバルブ部」(または「ロッドガイドケース」)は、「シリンダ」との間に半径方向に隙間を形成する「凹部」を「挿入部」に備えている。
【0064】
また、例えば第1実施形態のボトムバルブ部40のボトムバルブシート41は、第1シリンダ11よりも硬度が低い。これは、製造方法の違いによるものであり、第1シリンダ11は圧延加工により製造されているのに対し、ボトムバルブ部40のボトムバルブシート41は鋳造加工によって製造されている。これにより、第1シリンダ11およびボトムバルブ部40の一方のみに「傾斜部」を形成することのみで、ボトムバルブ部40を第1シリンダ11に挿入する際の加工片の発生する可能性をより低減させることができる。また、第1シリンダ11およびボトムバルブ部40の一方のみの「傾斜部」の形成となるため、製造コストを低減させることができる。これは、他の第2実施形態〜第7実施形態においても同様である。
【0065】
なお、上述した実施形態における油圧緩衝装置1は、いわゆる二重管の油圧緩衝装置1であるが、本発明は、軸を中心として半径方向の内側から外側に向けて順に配置される第1シリンダ、第2シリンダおよび「第3シリンダ」を備えた、いわゆる三重管の油圧緩衝装置1でもよい。