【解決手段】冷却によって包接水和物が生成される蓄熱媒体の蓄熱回路(61)と、冷媒が循環する冷媒回路(11)と、コントローラ(100)とを備える蓄冷システム(80)において、コントローラ(100)は、蓄冷運転の後、冷媒回路(11)では蓄熱用膨張弁(30)の開度を大きくした状態で蓄冷運転時と同様の方向に冷媒を循環させつつ、蓄熱回路(61)では蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体を冷媒によって加熱する加熱運転を実行させる。コントローラ(100)は、加熱運転の間、循環ポンプ(58)を一時的に停止させる。
冷却によって包接水和物が生成される蓄熱媒体を貯留する蓄熱タンク(52)と、蓄熱媒体を冷却可能な蓄熱用熱交換器(29)と、上記蓄熱タンク(52)と上記蓄熱用熱交換器(29)との間で蓄熱媒体を循環させる循環ポンプ(58)と、を有する蓄熱回路(61)と、
冷媒と空気とを熱交換させる熱源側熱交換器(22)と、冷媒と蓄熱媒体とを熱交換させる上記蓄熱用熱交換器(29)と、上記熱源側熱交換器(22)と上記蓄熱用熱交換器(29)との間に接続された膨張弁(30)と、を有する冷媒回路(11)と、
上記冷媒回路(11)では凝縮器となる上記熱源側熱交換器(22)から上記膨張弁(30)を介して蒸発器となる上記蓄熱用熱交換器(29)へと冷媒が循環すると共に、上記蓄熱回路(61)では上記蓄熱用熱交換器(29)にて冷却された蓄熱媒体が上記蓄熱タンク(52)に貯留するように蓄熱媒体が循環する蓄冷運転、を実行可能に制御する運転制御部(100)と
を備え、
上記運転制御部(100)は、
上記蓄冷運転の後、上記膨張弁(30)の開度を上記蓄冷運転時よりも大きくした状態で、上記冷媒回路(11)では上記熱源側熱交換器(22)から上記膨張弁(30)を介して上記蓄熱用熱交換器(29)へと冷媒が循環すると共に、上記蓄熱回路(61)では上記蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体を冷媒によって加熱する加熱運転、を実行させ、
上記加熱運転の間、上記循環ポンプ(58)を一時的に停止させる
ことを特徴とする蓄冷システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄冷運転では、蓄熱用熱交換器における蓄熱媒体の通路(蓄熱側通路)が包接水和物によって閉塞され、蓄熱用熱交換器の熱交換能力が低下する虞がある。そのため、蓄冷運転がある程度行われた際には、蓄熱側通路を熱媒体によって加熱する加熱運転を行うことが好ましい。蓄熱側通路が加熱されることで、蓄熱側通路を閉塞している包接水和物が蓄熱側通路から剥離され、蓄熱側通路の閉塞状態が解消されるからである。剥離された包接水和物は蓄熱タンクに流入される。
【0006】
この加熱運転の際、蓄熱タンク内には、蓄冷運転にて冷却され過冷却の溶液の状態である蓄熱媒体が貯留されているが、過冷却の溶液は、その性質上、当該溶液の付近に包接水和物が存在していても過冷却状態を即座に解消することは困難である。すると、加熱運転の際、蓄熱側通路から剥離された蓄熱媒体が蓄熱タンク内に流入しても、蓄熱タンク内の過冷却の溶液は、過冷却状態が解消されないまま(即ち、包接水和物に遷移されない低温のまま)の状態で当該タンク外部に流出し、その後蓄熱用熱交換器で不必要に温められることになる。すると、蓄熱タンク内の蓄熱媒体を冷熱源として利用する際には冷熱の量が不足する虞もある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱運転時における蓄熱タンク内の蓄熱媒体の過冷却状態を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、冷却によって包接水和物が生成される蓄熱媒体を貯留する蓄熱タンク(52)と、蓄熱媒体を冷却可能な蓄熱用熱交換器(29)と、上記蓄熱タンク(52)と上記蓄熱用熱交換器(29)との間で蓄熱媒体を循環させる循環ポンプ(58)と、を有する蓄熱回路(61)と、冷媒と空気とを熱交換させる熱源側熱交換器(22)と、冷媒と蓄熱媒体とを熱交換させる上記蓄熱用熱交換器(29)と、上記熱源側熱交換器(22)と上記蓄熱用熱交換器(29)との間に接続された膨張弁(30)と、を有する冷媒回路(11)と、上記冷媒回路(11)では凝縮器となる上記熱源側熱交換器(22)から上記膨張弁(30)を介して蒸発器となる上記蓄熱用熱交換器(29)へと冷媒が循環すると共に、上記蓄熱回路(61)では上記蓄熱用熱交換器(29)にて冷却された蓄熱媒体が上記蓄熱タンク(52)に貯留するように蓄熱媒体が循環する蓄冷運転、を実行可能に制御する運転制御部(100)とを備え、上記運転制御部(100)は、上記蓄冷運転の後、上記膨張弁(30)の開度を上記蓄冷運転時よりも大きくした状態で、上記冷媒回路(11)では上記熱源側熱交換器(22)から上記膨張弁(30)を介して上記蓄熱用熱交換器(29)へと冷媒が循環すると共に、上記蓄熱回路(61)では上記蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体を冷媒によって加熱する加熱運転、を実行させ、上記加熱運転の間、上記循環ポンプ(58)を一時的に停止させることを特徴とする蓄冷システムである。
【0009】
この蓄冷システム(80)では、蓄冷運転後に行われる加熱運転の間に、循環ポンプ(58)の一時停止によって蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の循環が一時的に停止する。具体的には、加熱運転のうち循環ポンプ(58)が運転している間、蓄熱タンク(52)には、蓄熱用熱交換器(29)にて高温の液冷媒から吸熱した蓄熱媒体が流入する。この状態で循環ポンプ(58)が一時停止すると、加熱運転前の蓄冷運転にて蓄熱タンク(52)内に貯留された過冷却の溶液の状態の蓄熱媒体は、循環ポンプ(58)の停止直前に蓄熱タンク(52)内に流入してきた蓄熱媒体と、循環ポンプ(58)が運転している時よりも長い時間接触する。すると、蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体(即ち、過冷却の溶液)は、過冷却状態が解消され包接水和物へと遷移する。また、循環ポンプ(58)の一時停止中は蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の循環が停止するため、蓄熱タンク(52)内では、蓄熱媒体の攪拌が行われず、包接水和物は沈殿する。故に、包接水和物同士の結合が進行し、加熱運転時における蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体の過冷却状態は、確実に解消する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口温度を検出する温度検出部(71)を更に備え、上記運転制御部(100)は、上記加熱運転の開始後に、上記温度検出部(71)の検出結果が第1所定温度以上となるまでは、上記循環ポンプ(58)を駆動させ、上記温度検出部(71)の検出結果が上記第1所定温度以上となった時、上記循環ポンプ(58)を一時的に停止させることを特徴とする蓄冷システムである。
【0011】
ここでは、加熱運転が開始されてから蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口温度が第1所定温度に達するまでの間は、循環ポンプ(58)が運転しているため、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口側に繋がれた配管(62)内には、過冷却の溶液である蓄熱媒体が残留しにくくなる。従って、循環ポンプ(58)の停止中に、配管(62)内の蓄熱媒体の過冷却状態が解消して当該蓄熱媒体が包接水和物へと遷移してしまい、配管(62)が閉塞してしまうことを防止することができる。また、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口温度が第1所定温度以上となった時に循環ポンプ(58)が停止するため、循環ポンプ(58)の停止時、蓄冷運転時よりも温度が高い蓄熱媒体が配管(62)内に残留する。これにより、配管(62)内で蓄熱媒体が包接水和物へと遷移する現象は生じにくく、故に配管(62)の閉塞を確実に防止することができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、上記第1所定温度は、上記蓄熱媒体の水和物生成温度以上に決定されていることを特徴とする蓄冷システムである。
【0013】
これにより、循環ポンプ(58)の一時停止時、蓄熱用熱交換器(29)から蓄熱タンク(52)までの配管(62)内には、少なくとも水和物生成温度に近い温度の蓄熱媒体が残留する。これにより、当該配管(62)の閉塞を確実に防止することができる。
【0014】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれか1つにおいて、上記運転制御部(100)は、上記加熱運転中に上記循環ポンプ(58)を再始動させ、上記循環ポンプ(58)の再始動後、上記蓄熱媒体の流量が第1所定量以上となった場合、上記加熱運転を終了させることを特徴とする蓄冷システムである。
【0015】
これにより、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口に接続された配管(62)では包接水和物による閉塞が確実に生じていない状態で、加熱運転を終了することができる。
【0016】
第5の発明は、第1の発明において、上記蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口温度を検出する温度検出部(71)を更に備え、上記運転制御部(100)は、上記加熱運転の開始後、上記温度検出部(71)の検出結果が第2所定温度以上且つ上記蓄熱媒体の流量が第2所定量以上となるまでは、上記循環ポンプ(58)を駆動させ、上記温度検出部(71)の検出結果が上記第2所定温度以上且つ上記蓄熱媒体の流量が上記第2所定量以上となった時、上記循環ポンプ(58)を一時的に停止させることを特徴とする蓄冷システムである。
【0017】
ここでは、加熱運転が開始されてから蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口温度が第2所定温度以上となり且つ蓄熱媒体の流量が第2所定量以上となるまでの間は、循環ポンプ(58)が運転しているため、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口側に繋がれた配管(62)内には、過冷却の溶液である蓄熱媒体がより残留しにくくなる。また、蓄熱媒体の流量が第2所定量以上となってから循環ポンプ(58)が停止するため、蓄熱用熱交換器(29)や配管(62)の包接水和物による閉塞が確実に解消してから循環ポンプ(58)を停止させて、蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体の過冷却状態を解消させることができる。更に、循環ポンプ(58)の停止時には蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口温度が第2所定温度以上となっているため、蓄冷運転時よりも温度が高い蓄熱媒体が配管(62)内に残留する。従って、配管(62)内での蓄熱媒体が包接水和物へと遷移する可能性も低い。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、上記第2所定温度は、上記蓄熱媒体の水和物生成温度以上に決定されていることを特徴とする蓄冷システムである。
【0019】
これにより、循環ポンプ(58)の一時停止時、蓄熱用熱交換器(29)から蓄熱タンク(52)までの配管(62)内には、少なくとも水和物生成温度に近い温度の蓄熱媒体が残留する。これにより、当該配管(62)の閉塞を確実に防止することができる。
【0020】
第7の発明は、第1の発明、第5の発明または第6の発明において、上記運転制御部(100)は、上記循環ポンプ(58)が停止してから一定時間が経過した時に、上記加熱運転を終了させることを特徴とする蓄冷システムである。
【0021】
これにより、包接水和物同士の結合を十分に進行させることができる。
【0022】
第8の発明は、第1の発明から第7の発明いずれか1つにおいて、上記冷媒回路(11)は、冷媒を圧縮する圧縮機(21)と、圧縮機(21)の吸入側に位置するアキュムレータ(27)とを更に有し、上記運転制御部(100)は、上記加熱運転中、更に上記圧縮機(21)を一時的に停止させることを特徴とする蓄冷システムである。
【0023】
加熱運転では、膨張弁(30)の開度が蓄冷運転時よりも大きいため、アキュムレータ(27)が回収する液冷媒の量は、蓄冷運転時に比して多くなる傾向にある。すると、液冷媒が圧縮機(21)に吸入されてしまう所謂液戻りが生じる虞がある。一方、ここでは、加熱運転中、圧縮機(21)も一時的に停止させるため、アキュムレータ(27)が回収するべき液状態の冷媒量を、圧縮機(21)が一時的に停止しない場合に比して減らすことができる。従って、液戻りの発生を抑えることができる。
【0024】
第9の発明は、第1の発明から第8の発明のいずれか1つに係る蓄冷システム(80)と、上記蓄冷システム(80)の上記冷媒回路(11)に配置されており、上記蓄冷システム(80)の上記蓄熱回路(61)における上記蓄熱タンク(52)に蓄熱された冷熱を利用して空調対象空間を冷房する利用側熱交換器(25)とを備えることを特徴とする空調システムである。
【0025】
空調システム(10)は、上述した蓄冷システム(80)を備えているため、安定した蓄冷運転によって蓄冷された冷熱を利用して、空調対象空間を十分に冷房することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、加熱運転時における蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体の過冷却状態を、確実に解消することができる。
【0027】
また、第2の発明によれば、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口に接続された配管(62)の包接水和物による閉塞を確実に防止することができる。
【0028】
また、第3の発明及び第6の発明によれば、循環ポンプ(58)の一時停止時、蓄熱用熱交換器(29)から蓄熱タンク(52)までの配管(62)内には、少なくとも水和物生成温度に近い温度の蓄熱媒体が残留する。これにより、当該配管(62)の閉塞を確実に防止することができる。
【0029】
また、第4の発明によれば、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口に接続された配管(62)では包接水和物による閉塞が確実に生じていない状態で、加熱運転を終了することができる。
【0030】
また、第5の発明によれば、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口側に繋がれた配管(62)内には、過冷却の溶液である蓄熱媒体がより残留しにくくなると共に、蓄熱用熱交換器(29)や配管(62)の包接水和物による閉塞が確実に解消してから循環ポンプ(58)を停止させて、蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体の過冷却状態を解消させることができる。更に、配管(62)内での蓄熱媒体が包接水和物へと遷移する可能性も低い。
【0031】
また、第7の発明によれば、包接水和物同士の結合を十分に進行させることができる。
【0032】
また、第8の発明によれば、液戻りの発生を抑えることができる。
【0033】
また、第9の発明によれば、安定した蓄冷運転によって蓄冷された冷熱を利用して、空調対象空間を十分に冷房することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0036】
≪実施形態1≫
図1は、本実施形態1に係る蓄冷システム(80)を備えた空調システム(10)の構成図である。
図1に示すように、空調システム(10)は、空気調和装置(20)、蓄熱装置(50)、及びコントローラ(100)(運転制御部に相当)で構成されている。
【0037】
蓄熱装置(50)は、蓄熱タンクユニット(51)、補助熱交換器(28)、蓄熱用熱交換器(29)、蓄熱用膨張弁(30)、循環ポンプ(58)、及びその他の各種弁(32,33,34)を有する。蓄熱装置(50)が有する機器によって蓄熱回路(61)が構成されている。
【0038】
空気調和装置(20)は、室外ユニット(20a)と室内ユニット(20b)とを有する。各ユニット(20a,20b)に含まれる機器と、蓄熱装置(50)が有する一部の機器(具体的には、補助熱交換器(28)、蓄熱用熱交換器(29)、蓄熱用膨張弁(30)及びその他の各種弁(32,33,34))によって冷媒回路(11)が構成されている。
【0039】
コントローラ(100)は、空調システム(10)や蓄冷システム(80)の運転を制御するためのものであって、冷媒回路(11)の圧縮機(21)や蓄熱回路(61)の循環ポンプ(58)等の駆動制御を行う。
【0040】
特に、本実施形態1では、説明の便宜上、空調システム(10)のうち、室外ユニット(20a)で構成された冷媒回路(11)の部分と、蓄熱回路(61)と、コントローラ(100)とで構成された部分を、蓄冷システム(80)と言う。即ち、蓄冷システム(80)に、室内ユニット(20b)で構成された冷媒回路(11)の残りの部分を組み合わせることで、空調システム(10)が構成される。
【0041】
<冷媒回路の構成>
冷媒回路(11)には冷媒が充填されており、冷媒が循環することによって冷凍サイクルが行われる。
図1に示すように、冷媒回路(11)は、主として、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)(熱源側熱交換器に相当)、室外膨張弁(23)、室内膨張弁(24)、室内熱交換器(25)、四方切換弁(26)、アキュムレータ(27)、補助熱交換器(28)、蓄熱用熱交換器(29)及び蓄熱用膨張弁(30)(膨張弁に相当)によって構成されている。圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外膨張弁(23)、四方切換弁(26)及びアキュムレータ(27)は、室外ユニット(20a)に設けられ、室内膨張弁(24)及び室内熱交換器(25)は、室内ユニット(20b)に設けられている。
【0042】
圧縮機(21)は冷媒を圧縮して吐出する。圧縮機(21)は、例えば容量可変式であって、図示しないインバータ回路によって回転数(運転周波数)が可変される。
【0043】
室外熱交換器(22)は、配管(12)を介して四方切換弁(26)と接続されている。室外熱交換器(22)は、例えばクロスフィンアンドチューブ式であって、室外ユニット(20a)に設けられた室外ファン(22a)によって室外空気が供給されると、当該室外空気と冷媒との熱交換を行う。
【0044】
室外膨張弁(23)は、配管(13)を介して室外熱交換器(22)と接続され、配管(14 a,14b)を介して室内膨張弁(24)と接続されている。室外膨張弁(23)及び室内膨張弁(24)は、例えば電子膨張弁で構成されており、開度を可変することで冷媒の圧力を調整する。
【0045】
室内熱交換器(25)は、配管(15)を介して室内膨張弁(24)と接続され、配管(16)を介して四方切換弁(26)と接続されている。室内熱交換器(25)は、例えばクロスフィンアンドチューブ式であって、室内ユニット(20b)に設けられた室内ファン(25a)によって室内空気が供給されると、当該室内空気と冷媒との熱交換を行う。
【0046】
四方切換弁(26)は、4つポートを有する。具体的に、四方切換弁(26)の第1ポートは、圧縮機(21)の吐出側に接続され、四方切換弁(26)の第2ポートは、アキュムレータ(27)を介して圧縮機(21)の吸入側に接続されている。四方切換弁(26)の第3ポートは、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に接続され、四方切換弁(26)の第4ポートは、配管(16)を介して室内熱交換器(25)に接続されている。四方切換弁(26)は、空調システム(10)の運転種類に応じて、各ポートの接続状態を第1状態(
図1の実線で示す状態)または第2状態(
図1の破線で示す状態)に切り換える。
【0047】
アキュムレータ(27)は、圧縮機(21)の吸入側に設けられている。アキュムレータ(27)は、液冷媒の圧縮機(21)への吸い込みを防止するため、冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離してガス冷媒のみを圧縮機(21)に吸入させる。
【0048】
補助熱交換器(28)は、冷媒側通路(28a)と蓄熱側通路(28b)とを有する。冷媒側通路(28a)は、配管(14a)上、つまりは室外膨張弁(23)と蓄熱用膨張弁(30)との間に位置し、内部には冷媒が流れる。蓄熱側通路(28b)は、蓄熱回路(61)に直列に接続され、内部には蓄熱媒体(後述)が流れる。補助熱交換器(28)は、冷媒と蓄熱媒体との熱交換を行う。
【0049】
蓄熱用熱交換器(29)は、冷媒側通路(29a)と蓄熱側通路(29b)とを有する。冷媒側通路(29a)は、配管(14b)上において蓄熱用膨張弁(30)と室内膨張弁(24)との間に位置し、内部には冷媒が流れる。蓄熱側通路(29b)は、蓄熱回路(61)に直列に接続され、内部には蓄熱媒体が流れる。蓄熱用熱交換器(29)は、冷媒と蓄熱媒体との熱交換を行うことで、蓄熱媒体を冷却等することができる。
【0050】
蓄熱用膨張弁(30)は、配管(14a)を介して補助熱交換器(28)に接続されると共に、配管(14b)を介して蓄熱用熱交換器(29)と接続されている。蓄熱用膨張弁(30)は、室外熱交換器(22)と蓄熱用熱交換器(29)との間に接続されている。蓄熱用膨張弁(30)は、例えば電子膨張弁で構成されており、開度を可変することで冷媒の圧力を調整する。
【0051】
また、冷媒回路(11)には、3つの開閉弁(31,32,33)及び1つの逆止弁(34)が設けられている。第1開閉弁(31)は、第1バイパス配管(17)上に位置し、第2開閉弁(32)は、第2バイパス配管(18)上に位置している。ここで、第1バイパス配管(17)は、配管(12)と、配管(14a)における室外膨張弁(23)及び補助熱交換器(28)の間とを繋いでいる。第2バイパス配管(18)は、配管(16)と、配管(14b)における蓄熱用熱交換器(29)及び室内膨張弁(24)の間とを繋いでいる。第3開閉弁(33)は、配管(14b)のうち蓄熱用熱交換器(29)と室内膨張弁(24)との間であって、且つ第2バイパス配管(18)と配管(14b)との接続部分よりも室内膨張弁(24)側に位置している。逆止弁(34)は、第3開閉弁(33)に並列に接続されている。逆止弁(34)は、第3開閉弁(33)における室内膨張弁(24)側の冷媒圧力が所定値を超えた場合に、室内膨張弁(24)側から蓄熱用熱交換器(29)側に向けて冷媒が流れるように設けられている。
【0052】
<蓄熱回路の構成>
蓄熱回路(61)には蓄熱媒体が充填されており、蓄熱媒体を循環させて冷熱を蓄熱するサイクル等が行われる。蓄熱回路(61)は、主として、蓄熱タンクユニット(51)及び循環ポンプ(58)の他に、上述した補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)によって構成されている。
【0053】
ここで、本実施形態1に係る蓄熱媒体について説明する。蓄熱媒体には、冷却によって包接水和物が生成される蓄熱材、即ち流動性を有する蓄熱材が採用される。蓄熱媒体の具体例としては、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB:Tetra Butyl Ammonium Bromide)水溶液、トリメチロールエタン(TME:Trimethylolethane)水溶液、パラフィン系スラリーなどが挙げられる。例えば、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、安定的に冷却されて当該水溶液の温度が水和物生成温度よりも低くなった過冷却状態でもその水溶液の状態を維持するが、この過冷却状態にて何らかのきっかけが与えられると、過冷却の溶液が包接水和物を含んだ溶液(即ちスラリー)へと遷移する。即ち、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、過冷却状態を解消して、臭化テトラnブチルアンモニウムと水分子とからなる包接水和物(水和物結晶)が生成されて粘性の比較的高いスラリー状となる。ここで、過冷却状態とは、蓄熱媒体が水和物生成溶液以下の温度となっても包接水和物が生成されずに溶液の状態を保っている状態を言う。逆に、スラリー状となっている臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、加熱により当該水溶液の温度が水和物生成温度よりも高くなると、包接水和物が融解して流動性の比較的高い液状態となる(溶液)。なお、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液の水和物生成温度は、0℃よりも高い温度、例えば12℃となっている。
【0054】
蓄熱タンクユニット(51)は、
図1及び
図5に示すように、蓄熱タンク(52)、流入管(55)及び流出管(56)を備える。蓄熱タンク(52)は、軸方向が上下方向となるように配置された中空の円筒状容器であって、
図5に示すように上端及び下端は閉塞されている。蓄熱タンク(52)の内部には蓄熱媒体が貯留される。また、蓄熱タンク(52)の側壁のうち該タンク(52)の下部には、第1開口(53)が形成され、蓄熱タンク(52)の側壁うち該タンク(52)の上部には、第2開口(54)が形成されている。
【0055】
図1及び
図5に示すように、流入管(55)は、第1開口(53)を介して蓄熱タンク(52)に取り付けられており、蓄熱タンク(52)内部に蓄熱媒体を流入させる。流入管(55)の蓄熱媒体の入口端は、配管(62)を介して蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の一端に接続されている。流入管(55)の蓄熱媒体の出口端(55a)は、蓄熱タンク(52)内部と連通している。
【0056】
図1及び
図5に示すように、流出管(56)は、第2開口(54)を介して蓄熱タンク(52)に取り付けられており、蓄熱タンク(52)内部の蓄熱媒体を該タンク(52)から流出させる。流出管(56)の蓄熱媒体の入口端(56a)は、蓄熱タンク(52)内部と連通している。流出管(56)の蓄熱媒体の出口端は、配管(63)を介して補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)の一端に接続されている。
【0057】
循環ポンプ(58)は、
図1の蓄熱回路(61)において、蓄熱タンク(52)と蓄熱用熱交換器(29)との間で蓄熱媒体を循環させる。蓄熱媒体の循環方向は、補助熱交換器(28)から蓄熱用熱交換器(29)に向かう方向となっている。循環ポンプ(58)は、配管(64)を介して補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)の他端に接続され、配管(65)を介して蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の他端に接続されている。従って、流入管(55)の入口端は、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の流出側に接続され、流出管(56)の出口端は、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の流入側に接続されていると言える。循環ポンプ(58)の運転のオン及びオフや蓄熱媒体の搬送量は、コントローラ(100)によって制御される。
【0058】
以上の構成により、蓄熱回路(61)は、閉回路となっている。
【0059】
更に、蓄熱回路(61)には、温度センサ(71)と流量センサ(72)とが設けられている。
【0060】
温度センサ(71)は、配管(62)のうち、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)近傍に設けられている。温度センサ(71)は、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)から流出した蓄熱媒体の温度(以下、出口温度と言う)を検出する。温度センサ(71)による出口温度の検出動作は、特に、後述する加熱運転にて行われる。
【0061】
流量センサ(72)は、配管(63)に設けられている。流量センサ(72)は、蓄熱タンク(52)から流出した蓄熱媒体の流量を検出する。流量センサ(72)による流量の検出動作は、運転動作の種類に関係なく常に行われることが好ましい。
【0062】
<空調システムの運転動作>
空調システム(10)の運転種類は、冷媒回路(11)における冷媒の循環と並行して蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の循環が行われる運転と、冷媒回路(11)における冷媒の循環のみが行われる運転とに大別される。以下では、前者の場合の運転動作について説明する。前者の場合としては、蓄冷運転、利用冷房運転(冷房運転に相当)及び加熱運転が挙げられる。コントローラ(100)は、蓄冷運転や利用冷房運転、加熱運転を実行可能に、蓄熱装置(50)や室外ユニット(20a)等の構成機器を制御する。
【0063】
―蓄冷運転―
図2に示される蓄冷運転では、室外熱交換器(22)及び補助熱交換器(28)にて凝縮及び冷却された冷媒が蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)にて蒸発することで、蓄熱側通路(29b)内の蓄熱媒体が冷却されて蓄熱タンク(52)に貯留される。冷媒回路(11)は、凝縮器となる室外熱交換器(22)から、室外膨張弁(23)及び蓄熱用膨張弁(30)を介して、蒸発器となる蓄熱用熱交換器(29)へと冷媒が循環する冷凍サイクルを行う。蓄熱回路(61)は、蓄熱タンク(52)から流出した蓄熱媒体が補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)を順に通過して蓄熱タンク(52)に再度流入するように蓄熱媒体を循環させる。特に、蓄熱回路(61)は、蓄熱用熱交換器(29)にて冷却された蓄熱媒体が蓄熱タンク(52)に貯留するように蓄熱媒体を循環する蓄熱サイクルを行う。
【0064】
具体的に、四方切換弁(26)は第1状態、第1開閉弁(31)及び第3開閉弁(33)は閉状態、第2開閉弁(32)は開状態にそれぞれ設定される。室外膨張弁(23)の開度は全開状態、室内膨張弁(24)の開度は全閉状態、蓄熱用膨張弁(30)の開度は所定の開度(蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)の出口における冷媒の過熱度が所定目標値となる開度)にそれぞれ設定される。圧縮機(21)および室外ファン(22a)は作動する。
【0065】
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)にて室外空気に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、室外膨張弁(23)を介して補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)に流入するが、冷媒側通路(28a)を通過する間に蓄熱側通路(28b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。補助熱交換器(28)から流出した冷媒は、蓄熱用膨張弁(30)にて減圧された後、蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第2バイパス配管(18)及び四方切換弁(26)を介してアキュムレータ(27)に一旦吸入され、液冷媒から分離されたガス冷媒がその後圧縮機(21)に吸入されて圧縮される。
【0066】
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(58)が作動する。蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体は、第2開口(54)及び配管(56,63)を介して補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)に流入する。この蓄熱側通路(28b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(28a)を流れる冷媒によって加熱される。加熱された蓄熱媒体は、循環ポンプ(58)及び配管(64,65)を介して蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)に流入する。この蓄熱側通路(29b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(29a)を流れる冷媒によって冷却される。冷却された蓄熱媒体は、配管(62,55)及び第1開口(53)を介して蓄熱タンク(52)内に流入する。このようにして、蓄熱タンク(52)には冷熱が蓄えられる。
【0067】
―利用冷房運転―
図3及び
図4に示される利用冷房運転では、上記蓄冷運転にて蓄熱タンク(52)に貯留された蓄熱媒体を冷熱源として用いて、室内熱交換器(25)により室内(空調対象空間に相当)の冷房が行われる。冷媒回路(11)は、蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体から冷熱を得た冷媒が室内熱交換器(25)にて蒸発するように冷媒を循環させる。蓄熱回路(61)は、蓄熱タンク(52)から流出した蓄熱媒体が補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)を順に通過して蓄熱タンク(52)に再度流入するように蓄熱媒体を循環させる。
【0068】
利用冷房運転には、
図3の第1利用冷房運転と
図4の第2利用冷房運転とがある。
【0069】
―第1利用冷房運転―
第1利用冷房運転では、蓄熱タンク(52)に蓄えられた冷熱と冷媒回路(11)の冷凍サイクルによって得られる冷熱とを用いて室内の冷房が行われる。冷媒回路(11)は、室外熱交換器(22)が凝縮器、補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)が過冷却器(即ち放熱器)、室内熱交換器(25)が蒸発器となる冷凍サイクルを行う。
【0070】
具体的には、
図3に示すように、四方切換弁(26)は第1状態、第1開閉弁(31)及び第2開閉弁(32)は閉状態、第3開閉弁(33)は開状態にそれぞれ設定される。室外膨張弁(23)及び蓄熱用膨張弁(30)の開度は全開状態、室内膨張弁(24)の開度は所定の開度(室内熱交換器(25)の出口における冷媒の過熱度が所定目標値となる開度)にそれぞれ設定される。圧縮機(21)、室外ファン(22a)及び室内ファン(25a)は作動する。
【0071】
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)にて室外空気に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、全開である室外膨張弁(23)を介して補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)に流入し、冷媒側通路(28a)を通過する間に蓄熱側通路(28b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。補助熱交換器(28)から流出した冷媒は、全開である蓄熱用膨張弁(30)を介して蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)に流入し、蓄熱側通路(29b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。この冷媒は、室内膨張弁(24)にて減圧された後、室内熱交換器(25)にて室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。蒸発した冷媒は、配管(16)及び四方切換弁(26)を介してアキュムレータ(27)に一旦吸入され、液冷媒から分離されたガス冷媒がその後圧縮機(21)に吸入されて圧縮される。
【0072】
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(58)が作動する。蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体は、第2開口(54)及び配管(56,63)を介して補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)に流入する。この蓄熱側通路(28b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(28a)を流れる冷媒から吸熱する。吸熱した蓄熱媒体は、循環ポンプ(58)及び配管(64,65)を介して蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)に流入する。この蓄熱側通路(29b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(29a)を流れる冷媒から更に吸熱する。更に吸熱した蓄熱媒体は、配管(62,55)及び第1開口(53)を介して蓄熱タンク(52)内に流入する。このようにして、蓄熱媒体から冷媒へ冷熱が付与される。
【0073】
―第2利用冷房運転―
第2利用冷房運転では、蓄熱タンク(52)に蓄えられた冷熱のみを用いて室内の冷房が行われる。冷媒回路(11)は、蓄熱用熱交換器(29)を通過した冷媒が室内熱交換器(25)において蒸発するように冷媒を循環させる。
【0074】
具体的には、
図4に示すように、四方切換弁(26)は第1状態、第2開閉弁(32)は閉状態、第1開閉弁(31)及び第3開閉弁(33)は開状態にそれぞれ設定される。室外膨張弁(23)の開度は全閉状態、蓄熱用膨張弁(30)の開度は全開状態、室内膨張弁(24)の開度は所定の開度(室内熱交換器(25)の出口における冷媒の過熱度が所定目標値となる開度)にそれぞれ設定される。圧縮機(21)及び室内ファン(25a)は作動する。
【0075】
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)、第1バイパス配管(17)及び配管(14a)を介して補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)に流入し、蓄熱側通路(28b)を流れる蓄熱媒体に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、全開状態である蓄熱用膨張弁(30)を通過後、蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)に流入し、冷媒側通路(29a)を通過する間に蓄熱側通路(29b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。当該冷媒は、その後第3開閉弁(33)を介して室内膨張弁(24)に流入し、減圧される。減圧された冷媒は、室内熱交換器(25)を通過する間に室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。蒸発した冷媒は、配管(16)及び四方切換弁(26)を介してアキュムレータ(27)に一旦吸入され、液冷媒から分離されたガス冷媒がその後圧縮機(21)に吸入されて圧縮される。
【0076】
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(58)が作動する。蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体は、第2開口(54)、配管(56,63)、補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)、配管(64)、循環ポンプ(58)、配管(65)を、この順に流れた後、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)に流入する。各蓄熱側通路(28b,29b)を通過する間に、蓄熱媒体は、各冷媒側通路(28a,29a)を通過する冷媒から吸熱する。吸熱した蓄熱媒体は、配管(62,55)及び第1開口(53)を介して蓄熱タンク(52)内に流入する。このようにして、蓄熱媒体から冷媒へ冷熱が付与される。
【0077】
−加熱運転−
既に述べたように、本実施形態1では、冷却により包接水和物が生成される蓄熱媒体が用いられている。すると、蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体を冷却させる蓄冷運転では、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)には冷却により包接水和物へと遷移した蓄熱媒体が蓄積し、当該蓄熱媒体によって蓄熱側通路(29b)が閉塞される虞がある。蓄熱側通路(29b)が閉塞されると、蓄熱用熱交換器(29)での冷媒と蓄熱媒体との熱交換が妨げられ、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換効率が悪化する虞がある。
【0078】
そのため、空調システム(10)の蓄冷システム(80)は、蓄熱用熱交換器(29)において蓄熱媒体を冷媒によって加熱することで、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)を閉塞している包接水和物を強制的に当該通路(29b)から剥離させる加熱運転を行う。
【0079】
具体的に、加熱運転では、蓄熱用膨張弁(30)の開度が蓄冷運転時よりも大きい(例えば全開状態)ことを除き、
図2に係る蓄冷運転と同じ動作が行われる。即ち、冷媒回路(11)では、圧縮機(21)から吐出された冷媒は、室外熱交換器(22)にて凝縮された後、室外膨張弁(23)、補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)、蓄熱用膨張弁(30)、蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)及び第2バイパス配管(18)をこの順に流れる。特に、蓄熱用膨張弁(30)の開度が蓄冷運転時よりも大きいため、補助熱交換器(28)を流出した冷媒は、比較的減圧量が小さい状態で蓄熱用熱交換器(29)に流入される。蓄熱用熱交換器(29)を流れる冷媒の温度は、蓄冷運転にて蓄熱用熱交換器(29)を流れる冷媒よりも温度が高く、具体的には蓄熱媒体の水和物生成温度よりも高くなっている。蓄熱用熱交換器(29)を流れた冷媒は、その後四方切換弁(26)を介してアキュムレータ(27)に吸入される。
【0080】
蓄熱回路(61)では、蓄熱タンク(52)から流出し補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)に流入した蓄熱媒体は、冷媒側通路(28a)を流れる冷媒から吸熱した後、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)に流入する。冷媒側通路(29a)を流れる冷媒の温度は蓄熱媒体の水和物生成温度よりも高いため、蓄熱側通路(29b)を閉塞する包接水和物(具体的には、スラリー)は、蓄熱側通路(29b)を構成する配管の内壁に近い部分から徐々に融解していき、やがて当該配管の内壁から剥離される。剥離された包接水和物(スラリー)は、循環ポンプ(58)による循環動作により、蓄熱タンク(52)の内部に再度流入する。
【0081】
<蓄冷システムの動作について>
上述した加熱運転を行う際、蓄熱タンク(52)内には、過冷却の溶液と包接水和物とを含む蓄熱媒体が存在すると考えられる。この場合、蓄熱側通路(29b)から剥離された包接水和物(スラリー)を含む蓄熱媒体の蓄熱タンク(52)への流入によって、蓄熱タンク(52)内の過冷却の溶液が包接水和物へと遷移し、包接水和物の生成が促進されるとも考えられる。一般的に、温度が水和物生成温度よりも低い過冷却の溶液は、その中に包接水和物の核(結晶核)が存在していれば、蓄熱タンク(52)に流入してくる蓄熱媒体との接触がきっかけとなって過冷却状態が解消し包接水和物への遷移が促進するからである。
【0082】
ところが、蓄熱媒体では、その性質上、上述した過冷却状態の解消反応が水等に比してゆっくりと進行する。すると、加熱運転の際、蓄熱媒体が蓄熱タンク(52)内に新たに流入してきたとしても、新たに流入してきた蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)内の包接水和物の遷移に寄与しないまま流出管(56)を介して当該タンク(52)外部に流出してしまう。
【0083】
また、加熱運転によって、蓄熱用熱交換器(29)にて温められた蓄熱側通路(29b)側の蓄熱媒体は、蓄熱側通路(29b)から剥離された包接水和物と、水和物生成温度よりも温度の高い溶液とを含んだものとなっている。このような蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)内に流入すると、蓄熱タンク(52)の構造によっては、既に蓄熱タンク(52)内に貯留されている蓄熱媒体のうちのスラリーの層(
図5のドット部分)を部分的に融解させながら流出管(56)の入口端(56a)に向かって流動する。この場合、蓄熱タンク(52)内に流入してきた蓄熱媒体は、流動し易い蓄熱タンク(52)の側壁に沿って流出管(56)の入口端(56a)へと流動するため、所定流路(pa)が形成される虞がある。
図5では、所定流路(pa)が、蓄熱タンク(52)の側壁に沿って延びており且つ流入管(55)の出口端(55a)から流出管(56)の入口端(56a)までを最短距離にて結ぶようにして形成された流路である場合を一例として示している。
【0084】
所定流路(pa)が蓄熱タンク(52)内に形成されると、加熱運転後に蓄冷運転が行われた際、蓄熱用熱交換器(29)で冷却され蓄熱タンク(52)内に流入した蓄熱媒体は、所定流路(pa)及び流出管(56)を介して蓄熱タンク(52)外部へと流出してしまう。すると、蓄冷運転時、蓄熱タンク(52)内では、新たに流入してきた蓄熱媒体が予め貯留されている蓄熱媒体のうちの過冷却の溶液と接触することで過冷却の溶液が包接水和物へと遷移する現象は生じ難く(即ち、過冷却解消が生じにくい)、よって蓄熱タンク(52)内では蓄熱媒体の温度変化が生じない状態が維持される。故に、蓄熱タンク(52)には必要な量の冷熱が蓄熱されず、利用冷房運転時には当該冷熱が不足する虞もある。
【0085】
そこで、本実施形態1に係る蓄冷システム(80)では、
図6に示すように、加熱運転の間、循環ポンプ(58)を一時的に停止させることで、蓄熱側通路(29b)を通過した後の包接水和物を含む蓄熱媒体を蓄熱タンク(52)内に滞留させる動作が行われる。これにより、循環ポンプ(58)の一時停止中、蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体のうち過冷却の溶液は、循環ポンプ(58)が運転している場合よりも、循環ポンプ(58)の停止直前に蓄熱タンク(52)内に流入してきた蓄熱媒体と長い時間接触することになる。そのため、蓄熱タンク(52)内の過冷却の溶液は包接水和物へと遷移して沈殿し、更には包接水和物同士の結合により包接水和物の生成が促進される。また、加熱運転における循環ポンプ(58)の運転中に、蓄熱タンク(52)内に所定流路(pa)が形成されていたとしても、所定流路(pa)は、遷移された包接水和物によって塞がれる。故に、所定流路(pa)は消滅する。
【0086】
以下、
図6を用いて、本実施形態1に係る蓄冷システム(80)の動作を詳細に説明する。
【0087】
先ず、
図6に示すように、蓄冷システム(80)が蓄冷運転を行っているとする。蓄冷運転では、既に述べたように、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)は運転しており、室外膨張弁(23)は所定の開度に設定されている。この場合、温度センサ(71)の検出結果、即ち蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)における蓄熱媒体の出口温度は、水和物生成温度よりも下回っている。すると、蓄熱用熱交換器(29)にて冷却された蓄熱媒体に含まれる包接水和物の蓄積によって、蓄熱側通路(29b)を構成する配管が徐々に閉塞されていくため、蓄熱回路(61)を循環する蓄熱媒体の流量は、徐々に低下してゆく。
【0088】
コントローラ(100)は、蓄熱回路(61)を循環する蓄熱媒体の流量が設定量を下回った場合、蓄冷運転を終了させて加熱運転を開始させる。具体的には、コントローラ(100)は、循環ポンプ(58)を駆動させた状態にて室外膨張弁(23)の開度を蓄冷運転時よりも大きい状態(例えば全開状態)に変更する。コントローラ(100)は、加熱運転の開始直後に圧縮機(21)も停止させる制御を行う。
【0089】
すると、冷媒回路(11)側では、圧縮機(21)の停止により冷媒の積極的な循環は停止するが、慣性力によって冷媒は若干循環した状態にある。その冷媒は、室外熱交換器(22)にて液冷媒となり、補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体に放熱する。
【0090】
蓄熱回路(61)側では、加熱運転時のうち循環ポンプ(58)が停止するまでの間は、蓄熱側通路(29b)の閉塞度合いに応じて流量が減少してはいるものの、蓄熱媒体は循環している。蓄熱媒体は、補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)それぞれにて液冷媒から吸熱し、温度センサ(71)の検出結果、即ち蓄熱側通路(29b)の出口温度は上昇していく。蓄熱側通路(29b)では、当該通路(29b)を構成する配管が温められることで当該配管の内壁に付着した包接水和物が配管から剥がれて蓄熱タンク(58)内に流入する。
【0091】
ここで、上記設定量は、蓄熱側通路(29b)がある程度閉塞状態にある場合の蓄熱媒体の流量を表し、一例としては循環ポンプ(58)の定格流量の75%に設定される。
【0092】
温度センサ(71)の検出結果が所定温度(第1所定温度に相当)となった時、コントローラ(100)は、循環ポンプ(58)を一時的に停止させる。即ち、本実施形態1に係る循環ポンプ(58)は、加熱運転の開始から温度センサ(71)の検出結果が所定温度となるまでの間、継続して運転する。ここで、所定温度は、蓄熱媒体の温度が水和物生成温度以上となる条件を満たすように決定される。一例としては、水和物生成温度が12℃であるとすると、所定温度は、当該水和物生成温度以上である11℃に設定される。なお、本実施形態1では、所定温度が、水和物生成温度以上のうち水和物生成温度に比較的近い温度に決定された場合を表している。これは、蓄熱タンク(52)内に流入する蓄熱媒体の温度が、水和物生成温度付近となるようにするためである。従って、所定温度は、水和物生成温度に加えて、蓄熱タンク(52)と蓄熱用熱交換器(29)とを繋ぐ配管(62)の長さ等を考慮して決定されることが好ましい。
【0093】
循環ポンプ(58)の一時停止により、蓄熱回路(61)内の蓄熱媒体の循環は停止するが、循環が停止した際には、停止直前までの間に蓄熱用熱交換器(29)にて冷媒から吸熱した蓄熱媒体が既に蓄熱タンク(52)内に流入された状態にある。故に、循環ポンプ(58)が停止している間、蓄熱タンク(52)内には、それまでに流入してきた蓄熱媒体、つまりは冷媒から吸熱し水和物生成温度付近となった蓄熱媒体が滞留することになる。この蓄熱媒体には、蓄熱側通路(29b)から剥離された包接水和物が多少なりとも含まれているため、循環ポンプ(58)が停止している間、蓄熱タンク(52)内では、既に貯留されている過冷却の溶液の蓄熱媒体と滞留中の蓄熱媒体との接触により過冷却の溶液は包接水和物へと遷移していく(即ち、過冷却状態の解消)。更に、循環ポンプ(58)が停止されているため、蓄熱タンク(52)内では蓄熱媒体が攪拌されることはない。故に、包接水和物は、蓄熱タンク(52)内に沈殿すると包接水和物同士で結合し、蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体はスラリー状になっていく。また、蓄熱タンク(52)内に所定流路(pa)が形成されていた場合、当該流路(pa)は、包接水和物によって塞がれる。
【0094】
一方、冷媒回路(11)では、循環ポンプ(58)が停止している間、圧縮機(21)も停止し続けている。そのため、更なる冷媒が冷媒回路(11)内を循環することはなく、アキュムレータ(27)が回収するべき液冷媒の量が更に増加することはない。
【0095】
そして、加熱運転中において、循環ポンプ(58)が停止してから所定時間(例えば2分)が経過すると、コントローラ(100)は、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)を再始動させる。循環ポンプ(58)の再始動後、蓄熱媒体の流量が所定量(第1所定量に相当)となった場合、コントローラ(100)は、加熱運転を終了させ、再び蓄冷運転を開始させる。
【0096】
すると、冷媒回路(11)では、冷媒の循環が再び開始される。圧縮機(21)の再始動後の加熱運転では、圧縮機(21)の停止前と同様の冷媒の循環及び状態変化が生じる。故に、補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)及び蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)には、高温の液冷媒が通過し、当該液冷媒は蓄熱媒体へと熱を付与する。
【0097】
蓄熱回路(61)でも、蓄熱媒体の循環が再び開始される。循環ポンプ(58)の再始動後の加熱運転では、循環ポンプ(58)の停止前と同様に蓄熱媒体が循環し、補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)及び蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)は、冷媒からの熱が付与される。すると、蓄熱側通路(29b)は温められるため、蓄熱側通路(28b)の閉塞状態は確実に解消し、蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の流量は所定量以上へと比較的早く回復する。
【0098】
なお、循環ポンプ(58)の再始動により、蓄熱タンク(52)内部には温められた蓄熱媒体が流入するが、その流入時間は比較的短いため、蓄熱タンク(52)内にてスラリー状となった蓄熱媒体が溶けてしまう可能性は低い。つまり、加熱運転によって蓄熱タンク(52)内の冷熱が減少してしまうといった問題は、生じにくくなっている。
【0099】
ここで、循環ポンプ(58)が停止している時間である所定時間は、蓄熱タンク(52)の容量等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0100】
また、加熱運転が終了するトリガとも言える所定量は、循環ポンプ(58)の定格流量の例えば95%に設定される。
【0101】
<効果>
本実施形態1に係る蓄冷システム(80)では、蓄冷運転後に行われる加熱運転の間に、循環ポンプ(58)の一時停止によって蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の循環が一時的に停止する。具体的には、加熱運転のうち循環ポンプ(58)が運転している間、蓄熱タンク(52)には、蓄熱用熱交換器(29)にて高温の液冷媒から吸熱した蓄熱媒体が流入する。この状態で循環ポンプ(58)が一時停止すると、加熱運転前の蓄冷運転にて蓄熱タンク(52)内に貯留された過冷却の溶液の状態の蓄熱媒体は、循環ポンプ(58)の停止直前に蓄熱タンク(52)内に流入してきた蓄熱媒体と、循環ポンプ(58)が運転している時よりも長い時間接触する。すると、蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体(即ち、過冷却の溶液)は、過冷却状態が解消され包接水和物へと遷移する。また、循環ポンプ(58)の一時停止中は蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の循環が停止するため、蓄熱タンク(52)内では、蓄熱媒体の攪拌が行わず、包接水和物は沈殿する。故に、包接水和物同士の結合が進行し、加熱運転時における蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体の過冷却状態は、確実に解消する。
【0102】
また、加熱運転が開始されてから蓄熱側通路(29b)の出口温度が所定温度に達するまでの間は、循環ポンプ(58)が運転しているため、蓄熱側通路(29b)に繋がれた配管(62)内には、過冷却の溶液である蓄熱媒体が残留しにくくなる。従って、循環ポンプ(58)の停止中に、配管(62)内の蓄熱媒体の過冷却状態が解消して当該蓄熱媒体が包接水和物へと遷移してしまい、配管(62)が閉塞してしまうことを防止することができる。また、蓄熱側通路(29b)の出口温度が所定温度以上となった時に循環ポンプ(58)が停止するため、循環ポンプ(58)の停止時、蓄冷運転時よりも温度が高い蓄熱媒体が配管(62)内に残留する。これにより、配管(62)内で蓄熱媒体が包接水和物へと遷移する現象は生じにくく、故に配管(62)の閉塞を確実に防止することができる。
【0103】
また、所定温度は、蓄熱媒体の水和物生成温度以上且つ水和物生成温度に近い温度に決定されている。そのため、循環ポンプ(58)の一時停止時、蓄熱用熱交換器(29)から蓄熱タンク(52)までの配管(62)内には、少なくとも水和物生成温度に近い温度の蓄熱媒体が残留する。これにより、当該配管(62)の閉塞を確実に防止することができる。
【0104】
また、循環ポンプ(58)の再始動後、蓄熱媒体の流量が所定量以上となった場合に加熱運転が終了する。即ち、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口に接続された配管(62)では包接水和物による閉塞が確実に生じていない状態で、加熱運転は終了する。
【0105】
また、加熱運転中は、圧縮機(21)も一時的に停止する。そのため、アキュムレータ(27)が回収するべき液状態の冷媒量を、圧縮機(21)が一時的に停止しない場合に比して減らすことができる。従って、液戻りの発生が抑えられる。また、アキュムレータ(27)の容量を大きくさせずとも良い。
【0106】
また、本実施形態1に係る蓄冷システム(80)を備える空調システム(10)は、安定した蓄冷運転を行い、当該蓄冷運転にて蓄冷された冷熱を利用して、空調対象空間を十分に冷房することができる。
【0107】
≪実施形態2≫
次に、本実施形態2に係る蓄冷システム(80)の動作について、
図7を用いて説明する。なお、本実施形態2に係る蓄冷システム(80)及び空調システム(10)の構成は、上記実施形態1と同様である。
【0108】
<蓄冷システムの動作について>
本実施形態2でも、上記実施形態1と同様、加熱運転時の室外膨張弁(23)の開度は蓄冷運転時よりも大きい状態(全開状態)となり、加熱運転時の冷媒の循環方向は、蓄冷運転時と同じである。本実施形態2でも上記実施形態1と同様、蓄冷運転の後に行われる加熱運転の間、コントローラ(100)は、循環ポンプ(58)を一時的に停止させる。
【0109】
しかし、本実施形態2では、循環ポンプ(58)を一時停止させるタイミングが上記実施形態1とは異なっている。
【0110】
具体的には、
図7に示すように、加熱運転の開始後、温度センサ(71)の検出結果(即ち、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)における蓄熱媒体の出口温度)が所定温度(第2所定温度に相当)以上且つ蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の流量が所定量(第2所定量に相当)となるまでの間、コントローラ(100)は、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)を駆動させている。温度センサ(71)の検出結果が所定温度以上となり、且つ蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の流量が所定量となった場合、コントローラ(100)は、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)を停止させる。
【0111】
ここで、所定温度は、上記実施形態1と同様、蓄熱媒体の温度が水和物生成温度以上であって特に水和物生成温度付近となる条件を満たすように決定される。所定量は、定格流量の95%が挙げられる。
【0112】
つまり、
図7では、蓄冷運転時、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)にて閉塞が生じ始めると、蓄熱回路(61)内を循環する蓄熱媒体の流量が次第に低下していく。その流量が上記実施形態1と同様の設定量(例えば、定格流量の75%)を下回ると、コントローラ(100)は、蓄冷運転を終了させ、室外膨張弁(23)の開度を例えば全開にして加熱運転を開始させる。
【0113】
特に、本実施形態2では、加熱運転の開始時、圧縮機(21)は運転を継続している。そして、本実施形態2では、加熱運転の開始時から循環ポンプ(58)が停止するまでの時間は、上記実施形態1よりも長くなっている。これは、本実施形態2では、循環ポンプ(58)を一時停止させるためには、温度センサ(71)の検出結果に基づく条件のみならず、蓄熱媒体の流量に基づく条件もが成立する必要があることと、蓄熱媒体の流量に基づく条件が、温度センサ(71)の検出結果に基づく条件よりも後に成立することが起因している。
【0114】
即ち、加熱運転の開始から循環ポンプ(58)が一時停止するまでの間、冷媒回路(11)側では、圧縮機(21)も運転しているため、圧縮機(21)から吐出された高温及び高圧のガス冷媒が室外熱交換器(22)にて凝縮されて液冷媒へと変化し、その液冷媒が補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)及び蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)にて蓄熱媒体に放熱する。蓄熱用熱交換器(29)を通過後、液冷媒は、アキュムレータ(27)にて回収される。
【0115】
蓄熱回路(61)側では、加熱運転の開始から循環ポンプ(58)が一時停止するまでの間、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の閉塞度合いに応じて流量が減少してはいるものの、蓄熱媒体は循環している。蓄熱媒体は、補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)それぞれにて液冷媒から吸熱するため、温度センサ(71)の検出結果は上昇し、所定温度に達する。これにより、蓄熱側通路(29b)では、当該通路(29b)を構成する配管が温められることで当該配管の内壁に付着した包接水和物が配管から剥がれ始め、蓄熱側通路(29b)の閉塞状態の解消が始まる。
【0116】
特に、本実施形態2では、温度センサ(71)の検出結果が所定温度に達した後も、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)は運転した状態にある。すると、蓄熱媒体は、補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)にて継続して温められ、蓄熱用熱交換器(29)を構成する配管では、包接水和物がより確実に剥離されていき、剥離された包接水和物は、蓄熱タンク(52)内に流入される。従って、温度センサ(71)の検出結果が所定温度以上を保ったまま、蓄熱媒体の流量も上昇し、やがて所定量に達する。
【0117】
ここで、所定量は、加熱運転が開始されるトリガとなる設定量よりも高い流量であって、例えば定格流量の95%に設定される。
【0118】
温度センサ(71)の検出結果が所定温度以上且つ蓄熱媒体の流量が所定量以上となったところで、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)は一時的に、一定時間の間停止する。一定時間は、上記実施形態1と同様、例えば2分である。この一定時間の間、蓄熱タンク(52)には、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)が停止する直前までに該タンク(52)内に流入した蓄熱媒体(具体的には、各熱交換器(28,29)にて温められた蓄熱媒体や蓄熱側通路(29b)から剥離された包接水和物)が、滞留することになる。すると、上記実施形態1と同様、一定時間の間に、蓄熱タンク(52)内の過冷却の溶液は包接水和物へと遷移するため、蓄熱タンク(52)における過冷却状態は解消される。
【0119】
圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)の停止から一定時間が経過した後、コントローラ(100)は、加熱運転を終了して蓄冷運転を実行させる。蓄冷運転が再開された直後、蓄熱媒体の流量は、急激に所定量以上に上昇する。包接水和物による閉塞が完全に解消されているためである。
【0120】
<効果>
本実施形態2に係る蓄冷システム(80)では、蓄冷運転後に行われる加熱運転の間に、循環ポンプ(58)の一時停止によって蓄熱媒体の循環が一時的に停止する。そのため、蓄熱タンク(52)内では、過冷却の溶液の状態の蓄熱媒体は包接水和物へと遷移し、包接水和物は沈殿する。従って、包接水和物同士の結合が進行し、加熱運転時における蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体の過冷却状態は、確実に解消する。
【0121】
また、本実施形態2では、加熱運転が開始されてから蓄熱側通路(29b)の出口温度が所定温度以上となり且つ蓄熱媒体の流量が所定量以上となるまでの間は、循環ポンプ(58)が運転しているため、蓄熱側通路(29b)に繋がれた配管(62)内には、過冷却の溶液である蓄熱媒体がより残留しにくくなる。また、蓄熱媒体の流量が所定量以上となってから循環ポンプ(58)が停止するため、蓄熱用熱交換器(29)や配管(62)の包接水和物による閉塞が確実に解消してから循環ポンプ(58)を停止させて、蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体の過冷却状態を解消させることができる。更に、循環ポンプ(58)の停止時には蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の出口温度が所定温度以上となっているため、蓄冷運転時よりも温度が高い蓄熱媒体が配管(62)内に残留する。従って、配管(62)内での蓄熱媒体が包接水和物へと遷移する可能性も低い。
【0122】
なお、所定温度は、蓄熱媒体の水和物生成温度以上且つ水和物生成温度に近い温度に決定されているため、循環ポンプ(58)の一時停止時、蓄熱用熱交換器(29)から蓄熱タンク(52)までの配管(62)内には、少なくとも水和物生成温度に近い温度の蓄熱媒体が残留する。これにより、当該配管(62)の閉塞を確実に防止することができる。
【0123】
また、循環ポンプ(58)が停止してから一定時間が経過した時に、加熱運転が終了するため、包接水和物同士の結合を十分に進行させることができる。
【0124】
また、加熱運転時に、圧縮機(21)も一時的に停止しているため、アキュムレータ(27)が回収するべき液状態の冷媒量を、圧縮機(21)が一時的に停止しない場合に比して減らすことができる。従って、液戻りの発生を抑え、またアキュムレータ(27)の容量を大きくさせずとも良い。
【0125】
≪その他の実施形態≫
上記実施形態1において、一時停止した後の圧縮機(21)の再始動タイミングと循環ポンプ(58)の再始動タイミングとは、異なっていても良い。つまり、圧縮機(21)の再始動タイミングは、
図6の破線で示されるように、循環ポンプ(58)の再始動タイミングよりも数十秒前であっても良いし、数十秒後であっても良い。また、上記実施形態1において、圧縮機(21)の一時停止タイミング及び循環ポンプ(58)の一時停止タイミングも、一致していなくても良い。
【0126】
上記実施形態2においても、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)それぞれの一時停止タイミングは、互いに異なっていても良い。また、圧縮機(21)及び循環ポンプ(58)それぞれの再始動タイミングも、互いに異なっていても良い。
【0127】
上記実施形態1,2において、蓄冷運転から加熱運転に切り換えられる際の条件は、蓄熱媒体の流量が設定量以下であるといった条件ではなく、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換能力が所定値以下であるといった条件であってもよい。ここで、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換能力は、蓄熱用熱交換器(29)が現時点においてどの程度熱交換を行うことができるかを示した値であって、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)における蓄熱媒体の入口温度及び出口温度の差と、蓄熱媒体の流量とを乗算して得られる。蓄熱用熱交換器(29)の熱交換能力の比較対象となる所定値は、一例として、蓄冷運転中の最大能力(例えば30秒間の平均能力)の50%、と定義することができる。
【0128】
また、上記実施形態1に係る加熱運転の終了条件は、蓄熱媒体の流量が所定量以上といった条件以外であってもよい。上記実施形態2に係る加熱運転の終了条件も、循環ポンプ(58)の停止から一定時間経過した条件以外であっても良い。
【0129】
上記実施形態1において、加熱運転中にどのタイミングで循環ポンプ(58)を一時停止させかは、上記実施形態1で説明した条件(蓄熱側通路(29b)の出口温度に関する条件)以外で決定されてもよい。上記実施形態2でも、加熱運転中にどのタイミングで循環ポンプ(58)を一時停止させかも、上記実施形態2で説明し条件以外で決定されても良い。
【0130】
また、上記実施形態1,2において、加熱運転中に循環ポンプ(58)を一時停止させる際に用いた所定温度は、蓄熱媒体の温度が水和物生成温度以上となる条件を満たさずとも良い。
【0131】
また、上記実施形態1,2において、加熱運転中、コントローラ(100)は、圧縮機(21)を一時停止させずとも良い。
【0132】
また、蓄熱タンク(52)の形状は、円筒状以外の形状であってもよく、例えば角形筒状であることができる。