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  • 特開2015210041-ボイラ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-210041(P2015-210041A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/18 20060101AFI20151027BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20151027BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20151027BHJP
   F23Q 9/08 20060101ALI20151027BHJP
【FI】
   F23N5/18 M
   F22B35/00 H
   F23N5/24 105
   F23Q9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-92802(P2014-92802)
(22)【出願日】2014年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】藤原 達也
【テーマコード(参考)】
3K003
3L021
【Fターム(参考)】
3K003AA01
3K003AB02
3K003AC01
3K003AC05
3K003DA03
3L021AA05
3L021CA01
3L021DA38
3L021FA12
(57)【要約】
【課題】負荷要求への追従性に優れ、特に出力のオーバーシュートを防止できるボイラを提供する。
【解決手段】メインバーナ3と、このメインバーナ3に点火するためのパイロットバーナ6とを備えたガス焚きのボイラ1である。メインバーナ3の燃焼を停止する際、メインバーナ3の燃焼を停止してから、パイロットバーナ6の燃焼を開始する。メインバーナ3の燃焼を開始する際、メインバーナ3の燃焼を開始してから、パイロットバーナ6の燃焼を停止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインバーナと、このメインバーナに点火するためのパイロットバーナとを備えたガス焚きのボイラであって、
前記メインバーナの燃焼を停止する際、前記メインバーナの燃焼を停止してから、前記パイロットバーナの燃焼を開始し、
前記メインバーナの燃焼を開始する際、前記メインバーナの燃焼を開始してから、前記パイロットバーナの燃焼を停止する
ことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記メインバーナへのガス供給路には、前記メインバーナへのガス供給の有無を切り替える一対の遮断弁が設けられており、
前記パイロットバーナへのガス供給路には、前記パイロットバーナへのガス供給の有無を切り替えるパイロット弁が設けられており、
蒸気圧が上限圧力を上回ると、前記各遮断弁を閉鎖して前記メインバーナの燃焼を停止してから、前記パイロット弁を開けて前記パイロットバーナに点火して前記パイロットバーナの燃焼を開始し、
蒸気圧が下限圧力を下回ると、前記各遮断弁を開放して前記メインバーナの燃焼を開始してから、前記パイロット弁を閉じて前記パイロットバーナの燃焼を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
バルブプルービングシステムをさらに備え、このバルブプルービングシステムは、
前記遮断弁間の圧力を開放した状態で閉鎖された前記遮断弁間に圧力上昇があるか否かにより、上流側遮断弁の閉鎖中のガス漏れの有無を判定し、
前記遮断弁間にガス供給圧をかけた状態で閉鎖された前記遮断弁間に圧力降下があるか否かにより、下流側遮断弁の閉鎖中のガス漏れの有無を判定する
ことを特徴とする請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
バルブプルービングシステムをさらに備え、このバルブプルービングシステムは、
閉鎖された前記遮断弁間を所定時間内に所定圧力まで昇圧できないか否かにより、下流側遮断弁の閉鎖中のガス漏れの有無を判定する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のボイラ。
【請求項5】
前記両バーナの双方の燃焼が停止した待機状態から、前記パイロットバーナに点火する直前、プレパージを行わない
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス焚きのボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、メインバーナとこれへの点火用のパイロットバーナとを備えたガス焚きのボイラが知られている。この種のボイラの燃焼制御として、パイロット制御と、交替パイロット制御とが知られている。
【0003】
図3(A)は、パイロット制御の概略を示すタイムチャートであり、(a)はメインバーナの燃焼状態、(b)はプレパージの実施状態、(c)はパイロットバーナの燃焼状態を示している。この図から分かるように、パイロット制御では、時間T1において、ボイラに待機信号(典型的には蒸気圧が上限圧力を上回ることによる待機信号)が入ると、メインバーナの燃焼を停止する。その後、時間T2において、ボイラに起動信号(典型的には蒸気圧が下限圧力を下回ることによる起動信号)が入ると、まずは、缶体内に未燃ガスが存在した場合の安全策として、缶体内の換気を図るプレパージを実施した後、パイロットバーナに点火し、その後、パイロットバーナの火でメインバーナに点火した後、パイロットバーナの燃焼を停止する。この場合、負荷要求としての起動信号があってから、プレパージおよびパイロット燃焼を経てメインバーナでの燃焼を開始するので、負荷への追従性に劣ることになる。
【0004】
図3(B)は、交替パイロット制御の概略を示すタイムチャートであり、(a)はメインバーナの燃焼状態、(b)はパイロットバーナの燃焼状態を示している。この図から分かるように、交替パイロット制御では、時間T1において、ボイラに待機信号(典型的には蒸気圧が上限圧力を上回ることによる待機信号)が入ると、パイロットバーナに点火した後、メインバーナの燃焼を停止する。その後、時間T2において、ボイラに起動信号(典型的には蒸気圧が下限圧力を下回ることによる起動信号)が入ると、メインバーナに点火した後、パイロットバーナの燃焼を停止する。この場合、常時、少なくとも一方のバーナの燃焼が継続されるので、ボイラの再起動時のプレパージが不要となり、負荷への追従性を向上することができる。その一方、待機信号が入っても、まずはパイロットバーナに点火してからメインバーナの燃焼を停止するので、待機信号からメインバーナの停止までに時間遅れが生じ、出力(典型的には蒸気圧)のオーバーシュートが発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−84094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、負荷要求への追従性に優れ、特に出力のオーバーシュートを防止できるボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、メインバーナと、このメインバーナに点火するためのパイロットバーナとを備えたガス焚きのボイラであって、前記メインバーナの燃焼を停止する際、前記メインバーナの燃焼を停止してから、前記パイロットバーナの燃焼を開始し、前記メインバーナの燃焼を開始する際、前記メインバーナの燃焼を開始してから、前記パイロットバーナの燃焼を停止することを特徴とするボイラである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ボイラに待機信号が入ると、直ちにメインバーナの燃焼を停止することで、出力(典型的には蒸気圧)のオーバーシュートを防止することができる。そして、その後、パイロットバーナに点火しておくことで、負荷要求があった際には、直ちにメインバーナの燃焼を開始することができる。このようにして、負荷要求への追従性に優れたボイラを実現することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記メインバーナへのガス供給路には、前記メインバーナへのガス供給の有無を切り替える一対の遮断弁が設けられており、前記パイロットバーナへのガス供給路には、前記パイロットバーナへのガス供給の有無を切り替えるパイロット弁が設けられており、蒸気圧が上限圧力を上回ると、前記各遮断弁を閉鎖して前記メインバーナの燃焼を停止してから、前記パイロット弁を開けて前記パイロットバーナに点火して前記パイロットバーナの燃焼を開始し、蒸気圧が下限圧力を下回ると、前記各遮断弁を開放して前記メインバーナの燃焼を開始してから、前記パイロット弁を閉じて前記パイロットバーナの燃焼を停止することを特徴とする請求項1に記載のボイラである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、メインバーナへのガス供給の有無を切り替える遮断弁と、パイロットバーナへのガス供給の有無を切り替えるパイロット弁とを制御して、蒸気負荷への追従性に優れたボイラを実現することができる。具体的には、蒸気圧が上限圧力を上回ると、直ちに遮断弁を閉鎖して、メインバーナの燃焼を停止することで、蒸気圧のオーバーシュートを防止することができる。そして、その後、パイロットバーナの燃焼を開始しておくことで、蒸気圧が下限圧力を下回ると、直ちに遮断弁を開放してメインバーナの燃焼を開始できるから、蒸気圧の回復を迅速に図ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、バルブプルービングシステムをさらに備え、このバルブプルービングシステムは、前記遮断弁間の圧力を開放した状態で閉鎖された前記遮断弁間に圧力上昇があるか否かにより、上流側遮断弁の閉鎖中のガス漏れの有無を判定し、前記遮断弁間にガス供給圧をかけた状態で閉鎖された前記遮断弁間に圧力降下があるか否かにより、下流側遮断弁の閉鎖中のガス漏れの有無を判定することを特徴とする請求項2に記載のボイラである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、バルブプルービングシステムを備えることで、各遮断弁の閉鎖時のガス漏れを確実に検知することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、バルブプルービングシステムをさらに備え、このバルブプルービングシステムは、閉鎖された前記遮断弁間を所定時間内に所定圧力まで昇圧できないか否かにより、下流側遮断弁の閉鎖中のガス漏れの有無を判定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のボイラである。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、バルブプルービングシステムを備えることで、下流側遮断弁の閉鎖時のガス漏れを確実に検知することができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記両バーナの双方の燃焼が停止した待機状態から、前記パイロットバーナに点火する直前、プレパージを行わないことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のボイラである。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、両バーナの双方の燃焼が停止した状態から、パイロットバーナに点火する直前、プレパージを行わないので、放熱損失を低減することができる。なお、各遮断弁の閉鎖中、閉鎖不良によるガス漏れが検知されない限り、缶体内に未燃ガスが滞留せず、プレパージを行わなくても、安全性は確保される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のボイラによれば、負荷要求への追従性に優れ、特に出力のオーバーシュートを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のボイラの一実施例を示す概略図である。
図2図1のボイラによるパージレス交替パイロット制御の概略を示すタイムチャートであり、(a)はメインバーナの燃焼状態、(b)はパイロットバーナの燃焼状態を示している。
図3】(A)は、従来のパイロット制御の概略を示すタイムチャートであり、(a)はメインバーナの燃焼状態、(b)はプレパージの実施状態、(c)はパイロットバーナの燃焼状態を示しており、(B)は、従来の交替パイロット制御の概略を示すタイムチャートであり、(a)はメインバーナの燃焼状態、(b)はパイロットバーナの燃焼状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例のボイラ1を示す概略図である。
【0020】
本実施例のボイラ1は、多数の水管を備えた缶体2と、この缶体2の水管内の水を加熱するメインバーナ3と、このメインバーナ3に燃焼用空気を供給する送風機4と、前記メインバーナ3に燃料ガスを供給するガス供給路5とを備える。また、本実施例のボイラ1は、メインバーナ3に点火するためのパイロットバーナ6をさらに備え、このパイロットバーナ6にも、燃焼用空気と燃料ガスとが適宜手段で供給可能とされる。
【0021】
缶体2は、上部管寄せと下部管寄せとの間を多数の水管で接続して構成され、缶体カバーで覆われる。缶体2の形状は、特に問わないが、本実施例では角形とされる。缶体2は、下部管寄せから適宜給水され、缶体2内の水位は所望に維持される。缶体2は、一端部にメインバーナ3が設けられ、他端部に排ガス路7が接続される。排ガス路7には、所望によりエコノマイザが設けられる。メインバーナ3からの燃焼ガス(当初は火炎を含む)は、各水管内の水と熱交換した後、排ガスとして排ガス路7から排出される。メインバーナ3からの燃焼ガスにより、各水管内の水は加熱され、蒸気として上部管寄せから気水分離器8を介して導出される。
【0022】
メインバーナ3は、本実施例では予混合バーナとされるが、場合により先混合バーナであってもよい。図示例では、平面状の燃焼面(予混合気噴出面)を有する完全予混合式のバーナとされる。このメインバーナ3は、燃焼の有無をオンオフで切り替えられてもよいし、燃焼量を段階的または連続的に調整されてもよい。たとえば、メインバーナ3は、高燃焼(100%燃焼)、低燃焼(たとえば50%燃焼)および停止の三位置で、燃焼量を切り替えられる。もしくは、メインバーナ3は、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で、燃焼量を切り替えられる。または、メインバーナ3は、蒸気の使用負荷に比例して、連続的に燃焼量を調整される。いずれにしても、メインバーナ3には、燃焼量に応じた量の燃焼用空気とガスとが供給される。
【0023】
送風機4は、吸込口4aから気体を吸入し、吐出口4bへ吐出する。送風機4は、典型的には遠心式とされ、渦巻きケーシング内でインペラを回転させ、ケーシングの中央部に設けた吸込口4aから気体を吸入し、ケーシングの外周部に設けた吐出口4bから吐出する。本実施例では、送風機4の吸込口4aには、吸込口4aへの空気の吸込みに伴いガスを吸引して空気と共に吸込口4aへ送り込むガス吸引機構9が設けられる。
【0024】
ガス吸引機構9は、本実施例では、ベンチュリ管10を備える。ベンチュリ管10は、周知のとおり、スロートの前後にテーパ部を備えて構成される。具体的には、最小径部のスロート(符号省略)の上流側には、下流へ行くに従って縮径する漸次縮小管10aが設けられる一方、スロートの下流側には、下流へ行くに従って拡径する漸次拡大管10bが設けられる。
【0025】
ベンチュリ管10のスロート部には、ガス供給路5がオリフィス11を介して接続される。ガス供給路5には、オリフィス11より上流側に、一対の遮断弁12(上流側遮断弁12A,下流側遮断弁12B)が直列に設けられる。メインバーナ3へガスを供給する際、各遮断弁12を開放し、メインバーナ3へのガス供給を停止する際、各遮断弁12を閉鎖する。本実施例では、下流側遮断弁12Bは、開放時、その出口側のガス圧力を所定圧力に維持する機能を備える。本実施例のようにベンチュリ管10でガスを吸引するボイラ1の場合、下流側遮断弁12Bは、開放時、ゼロガバナとして機能し、出口側の圧力を大気圧に調整するのがよい。
【0026】
なお、ガス供給路5には、下流側遮断弁12Bの出口側に、高ガス圧カット用の圧力スイッチ13が設けられる。この圧力スイッチ13は、ガス圧力が規定圧力(本実施例では大気圧よりも所定値だけ高い圧力)以上になっていないかを監視し、万一、ガス圧力が規定圧力以上であれば、それを検知する。そして、その場合、後述する制御器は、各遮断弁12を閉鎖すると共に、送風機4の運転を停止する。
【0027】
パイロットバーナ6は、メインバーナ3に近接して設けられる。パイロットバーナ6は、先混合バーナであってもよいし、予混合バーナであってもよい。パイロットバーナ6は、点火装置(図示省略)により点火され、メインバーナ3は、パイロットバーナ6により点火される。
【0028】
パイロットバーナ6においてガスを燃焼させるために、パイロットバーナ6には、燃焼用空気とガスとが供給される。パイロットバーナ6に燃焼用空気を供給する送風機は、メインバーナ3に燃焼用空気を供給する送風機4と同一あるいは一体的に構成されてもよいし、メインバーナ3用の送風機4と別に備えられてもよい。いずれにしても、所望によりダンパも用いて、各バーナ3,6への燃焼用空気の供給の有無や量を、個別に変更可能に構成するのがよい。
【0029】
一方、パイロットバーナ6へのガス供給路(図示省略)には、パイロットバーナ6へのガス供給の有無を切り替えるパイロット弁(図示省略)が設けられる。パイロットバーナ6へガスを供給する際、パイロット弁を開放し、パイロットバーナ6へのガス供給を停止する際、パイロット弁を閉鎖する。メインバーナ3用の遮断弁12と同様に、パイロット弁も二重に設けることができる。
【0030】
ボイラ1は、さらに、バルブプルービングシステム(VPS)14を備えることが望ましい。バルブプルービングシステム14は、各遮断弁12間の圧力上昇または圧力降下を監視することで、各遮断弁12の閉鎖時の閉鎖不良によるガス漏れを検知する装置である。本実施例では、バルブプルービングシステム14は、以下のようにして、ガス漏れの有無を判定するが、場合により一部の判定機能のみを有していてもよい。
【0031】
上流側遮断弁12Aのガス漏れ判定は、下記(a1)または(a2)によりなされる。
【0032】
(a1)一対の遮断弁12を閉じた後、その遮断弁12間は、バルブプルービングシステム14を介して大気圧に開放される。そして、その開放部を閉じた状態で、遮断弁12間の圧力を監視する。遮断弁12間に所定の圧力上昇があれば、上流側遮断弁12Aの閉鎖不良によるガス漏れがあると判定する。一方、そのような圧力上昇がなければ、上流側遮断弁12Aは適正に閉鎖していると判定する。
【0033】
(a2)一対の遮断弁12を閉じた状態で、下流側遮断弁12Bを一旦開いた後、閉じる。あるいは、メインバーナ3の燃焼停止に際して遮断弁12を閉じる際、まずは上流側遮断弁12Aを閉じた後、遅れて下流側遮断弁12Bを閉じる。いずれの場合も、遮断弁12間の圧力を所定(本実施例では大気圧)まで下げることができ、その後、遮断弁12間の圧力を監視する。遮断弁12間に所定の圧力上昇があれば、上流側遮断弁12Aの閉鎖不良によるガス漏れがあると判定する。一方、そのような圧力上昇がなければ、上流側遮断弁12Aは適正に閉鎖していると判定する。
【0034】
下流側遮断弁12Bのガス漏れ判定は、下記(b1)または(b2)によりなされる。
【0035】
(b1)一対の遮断弁12を閉じた後、その遮断弁12間には、バルブプルービングシステム14を介して(言い換えれば上流側遮断弁12Aを介さずに)、ガス供給源からのガスが供給可能とされる。たとえば、遮断弁12間の圧力を開放した後、遮断弁12間にガス供給圧をかける。閉鎖された遮断弁12間を所定に昇圧(ここでは所定時間内に所定圧力まで昇圧)できなければ、下流側遮断弁12Bの閉鎖不良によるガス漏れがあると判定する。一方、所定に昇圧できれば、下流側遮断弁12Bは適正に閉鎖していると判定する。
【0036】
(b2)一対の遮断弁12を閉じた状態で、上流側遮断弁12Aを一旦開いた後、閉じる。あるいは、メインバーナ3の燃焼停止に際して遮断弁12を閉じる際、まずは下流側遮断弁12Bを閉じた後、遅れて上流側遮断弁12Aを閉じる。いずれの場合も、遮断弁12間にガス供給圧をかけた状態とでき、その後、遮断弁12間の圧力を監視する。遮断弁12間に所定の圧力降下があれば、下流側遮断弁12Bの閉鎖不良によるガス漏れがあると判定する。一方、そのような圧力降下がなければ、下流側遮断弁12Bは適正に閉鎖していると判定する。
【0037】
ボイラ1は、図示しない制御器より制御される。制御器は、本実施例では蒸気圧(缶体2内またはそこから蒸気が供給される箇所の蒸気圧)に基づき、メインバーナ3およびパイロットバーナ6の燃焼制御などを行う。また、ボイラ1がバルブプルービングシステム14を備える場合、制御器は、設定タイミングでバルブプルービングシステム14を用いて、各遮断弁12の閉鎖不良によるガス漏れの有無の判定を行う。
【0038】
制御器は、蒸気圧を検出する圧力センサ(または圧力スイッチ)、送風機4のモータ、各遮断弁12、パイロット弁などに接続されており、圧力センサの検出信号などに基づきモータや弁などを制御する。また、ボイラ1がバルブプルービングシステム14を備える場合、制御器はバルブプルービングシステム14にも接続される。
【0039】
メインバーナ3においてガスを燃焼させるには、送風機4を作動させると共に各遮断弁12を開放して、パイロットバーナ6により点火すればよい。つまり、まずは、パイロット弁を開けてパイロットバーナ6に点火した後、遮断弁12を開けてメインバーナ3に点火し、パイロットバーナ6の燃焼を停止すればよい。一方、メインバーナ3における燃焼を停止するには、送風機4からの燃焼用空気の供給を停止すると共に、各遮断弁12を閉鎖してガスの供給を停止すればよい。メインバーナ3の燃焼停止時、送風機4を停止させてもよいし、それに代えてまたはそれに加えて、送風機4の入口側もしくは出口側にダンパを設けてそのダンパを閉じるか、排ガス路7にダンパを設けてそのダンパを閉じてもよい。
【0040】
メインバーナ3においてガスを燃焼させるために、送風機4を作動させると、フィルタを介した外気がベンチュリ管10を介して、送風機4の吸込口4aへ吸い込まれる。ベンチュリ管10に空気が通される際、ベンチュリ管10に負圧が生じるので、各遮断弁12を開放しておけば、ガス供給路5からガスがベンチュリ管10へ引き込まれる。このようにして、送風機4の吸込口4aへの空気の吸込みに伴い、ベンチュリ管10においてガスを吸引して空気と共に、吸込口4aへ送り込まれる。そして、送風機4内において空気とガスとが混合され、ダクトを介してメインバーナ3へ供給され、メインバーナ3において燃焼される。
【0041】
送風機4への空気の吸込みを利用して、ベンチュリ管10においてガスを吸引するので、ガス供給圧(各遮断弁12より上流のガス圧)が比較的低くても、所望のガス量をメインバーナ3へ供給して、所期の燃焼を図ることができる。また、前述したとおり、下流側遮断弁12Bは、その出口側圧力を所定に維持することで、ベンチュリ管10にて生じる負圧(言い換えればベンチュリ管10の通風量)に応じた所望の流量で、安定してガスを空気に混入することができる。しかも、下流側遮断弁12Bの出口側を大気圧とする場合、ベンチュリ管10に空気が流れない限りガスが流れないので、送風機4の停止時のガス漏れを確実に防止することができる。
【0042】
メインバーナ3の燃焼量の調整は、メインバーナ3へ供給される燃焼用空気とガスの流量を調整してなされる。燃焼用空気の流量の調整は、ベンチュリ管10への空気導入口にダンパ(図示省略)を設けてこのダンパの位置を調整するか、これに代えてまたはこれに加えて、インバータを用いて送風機4のモータの回転速度を変えることでなされる。そして、前述したとおり、ベンチュリ管10への通風量を変えれば、ガスの流量も変わるが、燃焼量に応じた空気比とするために、ベンチュリ管10へのガス供給路にガス流量調整弁(図示省略)を設けてもよい。燃焼量に応じて、ガス流量調整弁の開度を変更することで、燃焼量に応じた空気比に調整することができる。
【0043】
メインバーナ3に点火することで、ボイラ1を初期起動後、以下のようなパージレスの交替パイロット制御が実行される。図2は、本実施例のパージレスの交替パイロット制御の概略を示すタイムチャートであり、(a)はメインバーナ3の燃焼状態、(b)はパイロットバーナ6の燃焼状態を示している。
【0044】
この図から分かるように、パージレスの交替パイロット制御では、たとえば、時間T1において、ボイラ1に待機信号が入ると、メインバーナ3の燃焼を停止する。本実施例では、制御器は、蒸気圧が上限圧力(メインバーナ燃焼停止圧力)を上回ると、直ちに、各遮断弁12を閉鎖してメインバーナ3の燃焼を停止して、待機状態へ移行する。
【0045】
その後、直ぐにまたは設定タイミング(たとえばパイロットバーナ6へ燃焼用空気を送る送風機4やダンパがパイロット燃焼に適した状態に移行したタイミング)で、プレパージなしに、パイロット弁を開放して、パイロットバーナ6に点火装置で点火し、その後、パイロットバーナ6を連続燃焼させる。なお、各種条件に応じて、待機状態におけるパイロットバーナ6の燃焼の有無を切り替えてもよい。たとえば、後述するように、多缶設置ボイラでは、待機状態のボイラについて、パイロットバーナ6の燃焼の有無を切り替えてもよい。
【0046】
その後、たとえば、時間T2において、ボイラ1に起動信号が入ると、メインバーナ3に点火した後、パイロットバーナ6の燃焼を停止する。本実施例では、制御器は、蒸気圧が下限圧力(メインバーナ燃焼再開圧力)を下回ると、各遮断弁12を開放して、パイロットバーナ6の火でメインバーナ3に点火(起動状態へ復帰)した後、パイロット弁を閉鎖して、パイロットバーナ6の燃焼を停止する。そして、メインバーナ3の燃焼中、蒸気圧に基づき燃焼量を変更してもよい。
【0047】
このように、本実施例では、ボイラ1に待機信号が入ると、直ちにメインバーナ3の燃焼を停止することで、出力(蒸気圧)のオーバーシュートを防止することができる。その後、パイロットバーナ6に点火して連続燃焼させておくことで、負荷要求があった際には、直ちにメインバーナ3の燃焼を開始することができ、負荷追従性(つまり蒸気圧変動に対する応答性)を向上することができる。また、パイロットバーナ6に点火する直前、プレパージを行わないので、放熱損失を低減することができる。
【0048】
ボイラ1がバルブプルービングシステム14を備える場合、設定タイミングで各遮断弁12の閉鎖不良によるガス漏れの判定を行うことができる。従って、そのようなガス漏れがなければ、缶体2内に未燃ガスが滞留しないので、プレパージなしに燃焼を安全に再開することも可能となる。なお、ガス漏れがあると判定した場合、制御器は、その旨ユーザに報知する(警報を出す)と共に、送風機4が作動中の場合それを停止させるのがよい。前述したとおり、ベンチュリ管10でガスを引き込む場合、送風機4を止めることで、缶体2側へのガスの供給を停止できる。
【0049】
ところで、本実施例のボイラ1は、多缶設置されてもよい。つまり、ボイラ1を複数台用いて、ボイラシステムを構成してもよい。この場合、ボイラシステムは、複数のボイラ1と、これらボイラ1の運転台数と各燃焼量を制御する制御器とを備える。各ボイラ1からの蒸気は、蒸気ヘッダへ供給され、その蒸気ヘッダの蒸気が、一または複数の各種の蒸気使用設備へ送られる。蒸気ヘッダの圧力に基づき蒸気の使用負荷を監視し、制御器は、蒸気ヘッダの圧力を設定圧力に維持するように、ボイラ1の運転台数と各燃焼量を制御する。
【0050】
多缶設置されたボイラ1の内、少なくとも一台は、前述したパージレスの交替パイロット制御が実行される。また、多缶設置されたボイラ1の内、複数台または全台について、前述したパージレスの交替パイロット制御を実行してもよい。その場合において、待機中のボイラ1が複数台となったときは、その内の一部のボイラ(起動優先順位の低いボイラ)1は、連続パイロット燃焼を実行しなくてもよい。そして、連続パイロット燃焼中のボイラ1がなくなるか所定台数より減ると、パイロット燃焼なしで待機中のボイラ1のパイロットバーナ6に点火して、連続パイロット状態にすればよい。
【0051】
本発明によれば、パイロット燃焼なしで待機中のボイラ1を連続パイロット燃焼による待機状態にすることも容易であるため、台数制御上、待機パイロット台数を増減させる制御の自由度を上げることができる。つまり、多缶設置ボイラの待機中のボイラについて、そのパイロットバーナ6の燃焼の有無を切り替えることが容易である。
【0052】
本発明のボイラ1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、メインバーナ3とパイロットバーナ6とを備えたガス焚きのボイラ1であって、メインバーナ3の燃焼を停止する際、メインバーナ3の燃焼を停止してからパイロットバーナ6の燃焼を開始し、メインバーナ3の燃焼を開始する際、メインバーナ3の燃焼を開始してからパイロットバーナ6の燃焼を停止するのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0053】
また、ボイラ1の缶体2は、角形に限らず円筒形としてもよく、その場合、メインバーナ3は缶体2の上部に、下方へ向けて設置するのがよい。また、それに応じて、メインバーナ3の構成は適宜変更される。また、ボイラ1は、前記実施例では蒸気ボイラとしたが、場合により温水ボイラなどでもよい。
【0054】
さらに、前記実施例では、メインバーナ3に供給される燃焼用空気へのガスの混合は、送風機4より上流側で行ったが、場合により送風機4より下流側で行ってもよい。その場合、送風機4からメインバーナ3へ燃焼用空気を供給するダクト15に、ガスを噴出させるノズルを設けておき、ガス供給路5の末端部を、ベンチュリ管10に接続する代わりに、ダクト15内のノズルに接続すればよい。この場合も、ダクト15内へのガスの供給の有無は、ガス供給路5に設けた一対の遮断弁12の開閉により切り替えられる。一対の遮断弁12を開放すれば、ガス圧により、送風機4からの燃焼用空気にガスを混入することができる。このような構成の場合、ベンチュリ管10の設置は省略される。
【符号の説明】
【0055】
1 ボイラ
2 缶体
3 メインバーナ
4 送風機(4a:吸込口、4b:吐出口)
5 ガス供給路
6 パイロットバーナ
7 排ガス路
8 気水分離器
9 ガス吸引機構
10 ベンチュリ管(10a:漸次縮小管、10b:漸次拡大管)
11 オリフィス
12 遮断弁(12A:上流側遮断弁、12B:下流側遮断弁)
13 圧力スイッチ
14 バルブプルービングシステム(VPS)
15 ダクト
図1
図2
図3