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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-210080(P2015-210080A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】弾性表面波センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/02 20060101AFI20151027BHJP
【FI】
   G01N29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-89504(P2014-89504)
(22)【出願日】2014年4月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】小貝 崇
(72)【発明者】
【氏名】谷津田 博美
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047AA04
2G047AD16
2G047BC02
2G047BC03
2G047CB03
2G047GG28
2G047GG29
2G047GG30
(57)【要約】
【課題】液滴された複数の検体液を分離することができることと複数の異なる検査を実現できる弾性表面波センサを提供する。
【解決手段】弾性表面波を伝播する圧電素子基板と、電気信号と前記弾性表面波との変換を行う電極と、前記弾性表面波の伝播路に配置され、検体である液体が導入される複数の検出領域とを有するチャンネルが伝搬方向の垂直方向に複数設けられ、隣接する検出領域に対向する辺より長い凸部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波を伝播する圧電素子基板と、
電気信号と前記弾性表面波との変換を行う電極と、前記弾性表面波の伝播路に配置され、検体である液体が導入される複数の検出領域とを有するチャンネルが伝搬方向の垂直方向に複数設けられ、隣接する検出領域に対向する辺より長い凸部材と、
を備える弾性表面波センサ。
【請求項2】
前記検出領域の外側に前記凸部材をさらに設ける請求項1に記載の弾性表面波センサ。
【請求項3】
前記凸部材は、中央部分に所定の深さの溝を設ける請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波センサ。
【請求項4】
前記凸部材の溝の幅は、前記弾性表面波の伝搬方向に対して垂直方向の前記検出領域の距離の10分の1以上長い請求項3に記載の弾性表面波センサ。
【請求項5】
前記凸部材は、高さが異なる複数の段部から構成される請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波センサ。
【請求項6】
前記電極が液体と接触することを防ぐ封止構造とをさらに備え、
前記複数の凸部材は、互いに交わらずに前記封止構造まで伸長する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の弾性表面波センサ。
【請求項7】
前記複数の凸部材は、表面が疎水性である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の弾性表面波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波センサは、検体である液体又は液体中に含まれる検体(検査対象となる物質)を検査(又は成分分析)するためのセンサである。
一般に、弾性表面波センサは、圧電性基板上に形成された1対の櫛形電極(IDT(Inter Digital Transducer))と、その1対の櫛形電極の間に形成され、検体である液体が滴下される検出領域とを備えている。
【0003】
特許文献1には、1つの圧電基板上に複数の弾性表面波センサを備える弾性表面波センサが提案されている。特許文献1に記載された弾性表面波センサは、複数の検出領域を備えているため、1つの圧電基板上で複数の物質の検出や物性値等の測定を同時に行うことができる。または、複数の検出領域を備えているため、検出領域に個別の認識機能を持たせることで、1つの検体を同時に複数の異なる検査をすることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−96866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の弾性表面波センサは、各検出領域にそれぞれ異なる検体液を滴下する場合に、検出領域に滴下する検体液の量および滴下位置が不均一になりやすい。よって、検体液の量が多い場合や滴下位置が中心から大きくずれる場合、検体液が異なる検出領域に流れてしまい、複数の検体液を分離できない場合があった。
また、各検出領域に個別にバイオ膜を溶液により形成する場合にも、異なる検出領域に流れてしまい、各検出領域に個別にバイオ膜を形成できない場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、液滴された複数の検体液を分離することができることと複数の異なる検査を実現できる弾性表面波センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、弾性表面波を伝播する圧電素子基板と、電気信号と前記弾性表面波との変換を行う電極と、前記弾性表面波の伝播路に配置され、検体である液体が導入される複数の検出領域とを有するチャンネルが伝搬方向の垂直方向に複数設けられ、隣接する検出領域に対向する辺より長い凸部材と、を備える弾性表面波センサである。
【0008】
本発明の一態様は、上述した弾性表面波センサであって、前記検出領域の外側に前記凸部材をさらに設ける。
【0009】
本発明の一態様は、上述した弾性表面波センサであって、前記凸部材は、中央部分に所定の深さの溝を設ける請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波センサ。
【0010】
本発明の一態様は、上述した弾性表面波センサであって、前記凸部材の溝の幅は、前記弾性表面波の伝搬方向に対して垂直方向の前記検出領域の距離の10分の1以上長い。
【0011】
本発明の一態様は、上述した弾性表面波センサであって、前記凸部材は、高さが異なる複数の段部から構成される。
【0012】
本発明の一態様は、上述した弾性表面波センサであって、前記電極が液体と接触することを防ぐ封止構造とをさらに備え、前記複数の凸部材は、互いに交わらずに前記封止構造まで伸長する。
【0013】
本発明の一態様は、上述した弾性表面波センサであって、前記複数の凸部材は、表面が疎水性である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、液滴された複数の検体液を分離することができることと複数の異なる検査を実現できる弾性表面波センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の弾性表面波センサ(以下、SAWセンサ)の概略構成を示した模式図である。
図2】凸部20の構造のパターンを説明する概略的な断面図である。
図3】反応領域薄膜13へ検体液を滴下したときの一例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態のSAWセンサの概略構成を示した模式図である。
図5】本発明の第3実施形態のSAWセンサの概略構成を示した模式図である。
図6】本発明の第4実施形態のSAWセンサの概略構成を示した模式図である。
図7】本発明の第5実施形態のSAWセンサの概略構成を示した模式図である。
図8】本発明の第1実施形態のSAWセンサ1の駆動回路の一例を説明するためのブロック図である。
図9】本発明の第3実施形態のSAWセンサ1−1の駆動回路の一例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係るSAWセンサ1の概略的な模式図である。図1(a)は、SAWセンサ1の概略的な上面図であり、図1(b)はSAWセンサ1を切断面Aから見た概略的な断面図である。また、図1(c)はSAWセンサ1を切断面Bから見た概略的な断面図である。
【0017】
SAWセンサ1(弾性表面波センサ)は、圧電素子基板10、複数の櫛形電極11(櫛形電極11−1〜11−4)、複数の反応領域薄膜13(13−1、13−2)、複数の封止構造14(14−1、14−2)及び凸部材20(20−1〜20−6)を含んでいる。
【0018】
圧電素子基板10は、SAW(弾性表面波)を伝播する基板である。圧電素子基板10は、横波の伝播する弾性表面波が好適であり、例えば36度Y板90度X伝播の水晶基板や36度Y板X伝搬LiTaOである。
【0019】
櫛形電極11は、圧電素子基板10上に構成される電極である。櫛形電極11は、対向した一対の電極である。IDT11は、例えばアルミニウム薄膜によって構成される。
櫛形電極11−1及び櫛形電極11−2は、送信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。櫛形電極11−1は、送信電極11−1a及び送信電極11−1bを有する。送信電極11−1a及び送信電極11−1bは、電気信号とSAWとの変換を行う電極である。櫛形電極11−2は、送信電極11−2a及び送信電極11−2bを有する。送信電極11−2a及び送信電極11−2bは、電気信号とSAWとの変換を行う電極である。なお、上述した電気信号とSAWとの変換は双方向で可能である。
【0020】
櫛形電極11−3及び櫛形電極11−4は、受信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。櫛形電極11−3は、受信電極11−3a及び受信電極11−3bを有する。受信電極11−3a及び受信電極11−3bは、SAWと電気信号との変換を行う電極である。櫛形電極11−4は、受信電極11−4a及び受信電極11−4bを有する。受信電極11−4a及び受信電極11−4bは、SAWと電気信号との変換を行う電極である。
【0021】
反応領域薄膜13は、金を蒸着して生成した薄膜である。反応領域薄膜13は、表面に抗体を担持した薄膜である。反応領域薄膜13−1は、圧電素子基板10上であって、櫛形電極11−1と櫛形電極11−3との間に形成される。反応領域薄膜13−2は、圧電素子基板10上であって、櫛形電極11−2と櫛形電極11−4との間に形成される。
圧電素子基板10と反応領域薄膜13との重なる部分が、検体である液体が導入される検出領域(センサ表面となる領域)となる。上述したように、本願では反応領域薄膜13と反応領域薄膜13上に固定されたバイオ膜とから検出領域が構成されているものとする。この検出領域は、SAWの伝播路に配置され、検体である液体が導入される。
【0022】
凸部材20は、複数の反応領域薄膜13に滴下された検体の液滴を、滴下された反応領域薄膜に保持し、また、各反応領域薄膜13への検体の滴下量を一定にするために設けられた凸部である。凸部材20は、凸部の高さが数百ミクロン以下で形成されている。凸部材20−1及び凸部材20−2(総称して凸部20Aと呼ぶ)は、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部20Aは、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。凸部材20−3と凸部材20−4(総称して凸部20Bと呼ぶ)とは、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部20Bは、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。凸部材20−5と凸部材20−6(総称して凸部20Cと呼ぶ)とは、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部20Cは、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。すなわち、凸部材20は、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に複数設けられている。
【0023】
なお、上述した凸部20Aと凸部20Bと凸部20Cとの各々の構造は一例であって、これに限定されない。例えば、凸部20Aと凸部20Bと凸部20Cとの各々の構造は、図2に示す構造であってもよい。以下に、凸部20Bの他の構造パターンについて説明するが、図2は、凸部20Bの構造のパターンを示す切断面Bから見た概略的な断面図である。図2(a)に示すように、凸部20Bの構造は、凸部20Bの上部が分離されていればよく、凸部20Bの下部が一体で形成されていてもよい。すなわち、凸部20Bは、中央部分に所定の深さの溝を有していればよい。なお、その溝の幅は、反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、図2(b)に示すように、凸部20Bの構造は、弾性表面波の伝搬方向に対して垂直なY軸方向に連続する段部(段部25、段部26、段部27)を3段有し、左右の段部25及び段部27の高さは、中央の段部26よりも低ければよい。また、図2(c)に示すように、凸部20Bの構造は、弾性表面波の伝搬方向に対して垂直なY軸方向に連続する高さの異なる段部(段部28、段部29)を2段有してもよい。なお、上述したように、凸部20Bの構造について図2を用いて説明したが、凸部20A及び凸部20Cについても、図2に示す凸部20Bと同様の構造が可能であることは述べるまでもない。なお、凸部20において、弾性表面波の伝搬方向に対して垂直なY軸方向の幅は、表面張力により検体液が凸部20の上面で結合しない幅である。
【0024】
凸部材20は、後述する封止構造14−1及び封止構造14−2と同様な構造を有するものであってもよいし、あるいはワイヤーボンディングなどの保護で使用されるエポキシ樹脂や、ダイボンディングなどでパッケージと圧電基板を接着する目的で利用される樹脂(主にエポキシ樹脂)等であってもよい。また、凸部材20は、図1に示した形状及び配置と異なり、封止構造14−1又は封止構造14−2と一体として形成されていてもよい。あるいは、凸部材20は、図1には示していないSAWセンサ1のプラスチック製等の外部筐体と一体として形成されるものであってもよい。また、検体液が凸部材20の上部にはい上がるのを防止するために、凸部材20の表面が疎水性膜等で被覆されていてもよい。
【0025】
封止構造14は、櫛形電極11(端部を除き)を外部から密閉して櫛形電極11上に空間を形成するように覆い、櫛形電極11が検体液と接触することを防ぐ封止構造である。これら封止構造14により、検出領域における雰囲気(例えば湿度)の変化があったとしても、櫛形電極11は、その影響を受けにくくなる。
送信電極部側の封止構造14−1は、封止壁14−1aと封止天井14−1bとを備えている。なお、封止壁14−1aと封止天井14−1bとの間には両者を接着するための接着層が設けられるが、図1においては省略している。
【0026】
封止壁14−1aは、櫛形電極11−1及び櫛形電極11−2を覆う壁であり、圧電素子基板10上に矩形状に形成される。封止壁14−1aは、例えば感光性樹脂により構成される。
また、封止天井14−1bは、封止壁14−1aの上側を塞ぎ、櫛形電極11−1及び櫛形電極11−2を外部から密閉するための天井である。封止天井14−1bは、封止天井14−1bの平面領域内に封止壁14−1aが収まるように封止壁14−1aの上側に配置される。封止天井14−1bは、例えばガラス基板で構成される。なお、封止壁14−1aと封止天井14−1bとの間には、不図示の接着層が設けられ、封止壁14−1aと封止天井14−1bとの間を密封して接着する。
【0027】
また、受信電極部側の封止構造14−2は、封止構造14−1と同様に、封止壁14−2aと封止天井14−2bとを備えている。封止構造14−2は、櫛形電極11−3及び櫛形電極11−4を外部から密閉して櫛形電極11−3及び櫛形電極11−4上に空間を形成するように覆い、櫛形電極11−3及び櫛形電極11−4が液体と接触することを防ぐ封止構造である。
【0028】
図3は、反応領域薄膜13へ検体液を滴下したときの一例を示す図である。図3(a)は、従来のSAWセンサの反応領域薄膜13へ検体液を滴下したときの一例を示す図である。
図3(b)は、SAWセンサ1の反応領域薄膜13へ検体液を滴下したときの一例を示す図である。
【0029】
従来のSAWセンサには、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に1つの凸部材を配置する構成がある。例えば、測定者は検体液Aをマイクロピペット等で反応領域薄膜13−1に滴下する。また、例えば、測定者は検体液Aとは異なる検体液Bをマイクロピペット等で反応領域薄膜13−2に滴下する。すると、検体液A、Bの液面は、毛細管現象により上昇し、凸部材20−3の上面で結合する。これより、従来のSAWセンサは、反応領域薄膜13毎に検体液を一定に保つことができない。
【0030】
しかしながら、図3(b)に示すとおり、上述した第1実施形態では、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に、複数の凸部材20を配置する。これにより、検体液A、Bの液面は、毛細管現象により上昇しても、凸部材20−3又は凸部材20−4の上面で結合することはない。よって、SAWセンサ1は、検体液Aが反応領域薄膜13−1以外の領域に広がることを防ぎ、反応領域薄膜13−1の検体液Aの滴下量を一定にすることができる。また、SAWセンサ1は、検体液Bが反応領域薄膜13−2以外の領域に広がることを防ぎ、反応領域薄膜13−2の検体液Bの滴下量を一定にすることができる。すなわち、SAWセンサ1は、反応領域薄膜毎に検体液を保持し、反応領域薄膜毎の滴下された検体液の量を一定にすることができる。
【0031】
また、上述した第1実施形態では、凸部材20の表面が疎水性膜等で被覆されているため、液滴の滴下量を多く保持することができる。
【0032】
(第2実施形態)
以下、図面を参照して第2実施形態について説明する。図4は、本実施形態に係るSAWセンサ1aの概略的な模式図である。図4(a)は、SAWセンサ1aの概略的な上面図であり、図4(b)はSAWセンサ1aを切断面Aから見た概略的な断面図である。また、図4(c)はSAWセンサ1aを切断面Cから見た概略的な断面図である。なお、図4において図1に示したものと同一の構成には同一の符号を付け説明を省略する。
【0033】
SAWセンサ1aは、圧電素子基板10、複数の櫛形電極11(櫛形電極11−1〜11−4)、複数の反応領域薄膜13(13−1、13−2)、複数の封止構造14(14−1、14−2)及び凸部材21(21−1〜21−6)を含んでいる。
凸部材21は、第1実施形態の凸部材21の+X方向(弾性表面波の伝搬方向)の長さを封止構造14の下部まで伸長したものである。
【0034】
凸部材21−1及び凸部材21−2(総称して凸部21Aと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部21Aは、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。また、凸部21Aの各々は、封止壁14−1a及び封止壁14−2aに垂直に交わっている。
凸部材21−3及び凸部材21−4(総称して凸部21Bと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。凸部21Bは、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。また、凸部21Bの各々は、封止壁14−1a及び封止壁14−2aに垂直に交わっている。
凸部材21−5及び凸部材21−6(総称して凸部21Cと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部21Cは、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。また、凸部21Cの各々は、封止壁14−1a及び封止壁14−2aに垂直に交わっている。
【0035】
上述した第2実施形態によれば、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に、複数の凸部材21を配置する。また、複数の凸部材21の各々は、封止壁14−1a及び封止壁14−2aに垂直に交わっている。これにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、第1実施形態と比べて、反応領域薄膜毎に封止構造14の近傍まで正確に検体液の液滴を保持することができる。
【0036】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係るSAWセンサ1−1の概略的な模式図である。図5(a)は、SAWセンサ1−1の概略的な上面図であり、図5(b)はSAWセンサ1−1を切断面Aから見た概略的な断面図である。また、図5(c)はSAWセンサ1−1を切断面Bから見た概略的な断面図である。なお、図5において図1又は図4に示したものと同一の構成には同一の符号を付け説明を省略する。
【0037】
第1実施形態のSAWセンサ1及び第2実施形態のSAWセンサ1aが送信用の櫛形電極と受信用の櫛形電極とを個別に設けるトランスバーサル型と呼ばれるSAWセンサであるのに対して、第3実施形態のSAWセンサ1−1は、反射型と呼ばれる構造を有している。すなわち、第3実施形態のSAWセンサ1−1は、一方の櫛形電極を無くして代わりに検出領域を挟んで櫛形電極に対向する位置に反射器30−1及び反射器30−2を設けている。この構成では、1個の櫛形電極を例えば時分割で切り替えることで送信用と受信用とで共用することができる。なお、第3実施形態のSAWセンサ1−1は、第1実施形態のSAWセンサ1と同様に、2チャンネルのセンサである。
【0038】
なお、図5において、反射器30−1は櫛形電極11−1から送信されたSAWを反射する。この反射器30−1は、櫛形電極11−1と反応領域薄膜13−1を挟んで対向する位置に配置され、例えば、櫛形電極11−1と同様の電極材を使用するSAWの1波長の1/4の線幅を持ち2分の1波長の間隔で複数整列させた構造を有している。また、反射器30−2は櫛形電極11−2から送信されたSAWを反射する。この反射器30−2は、櫛形電極11−2と反応領域薄膜13−2を挟んで対向する位置に配置され、例えば、反射器30−1と同様の構造を有している。図5に示した構成例では、反射器30−1及び反射器30−2は、圧電素子基板10上に露出した形で形成されていて、反射器30−1及び反射器30−2上には封止構造14−1のような封止構造は設けられていない。なお、図5に示した例ではSAWを反射する構造物を、電極を用いて電気的に反射する反射器を用いて構成しているが、SAWの反射は機械的反射とすることもできる。例えば、圧電素子基板10の端面より弾性表面波を反射することも可能である。すなわち、SAWを反射する手法は、反射器を設置する以外のものであってもよい。
【0039】
上述した第3実施形態によれば、SAWセンサ1−1は、第1実施形態と同様に、複数の凸部材20を圧電素子基板10上に配置したので、検体液Aが反応領域薄膜13−1以外の領域に広がることを防ぎ、反応領域薄膜13−1の検体液Aの滴下量を一定にすることができる。また、SAWセンサ1は、検体液Bが反応領域薄膜13−2以外の領域に広がることを防ぎ、反応領域薄膜13−2の検体液Bの滴下量を一定にすることができる。すなわち、SAWセンサ1は、反応領域薄膜毎に検体液を保持し、反応領域薄膜毎の滴下された検体液の量を一定にすることができる。また、凸部材20の表面が疎水性膜等で被覆されているため、液滴の滴下量を多く保持することができる。
【0040】
(第4実施形態)
以下、図面を参照して第4実施形態について説明する。図6は、本実施形態に係るSAWセンサ1−1aの概略的な模式図である。図6(a)は、SAWセンサ1−1aの概略的な上面図であり、図6(b)はSAWセンサ1−1aを切断面Aから見た概略的な断面図である。また、図6(c)はSAWセンサ1−1aを切断面Cから見た概略的な断面図である。なお、図6において図5に示したものと同一の構成には同一の符号を付け説明を省略する。
【0041】
SAWセンサ1−1aは、圧電素子基板10、櫛形電極11−1、櫛形電極11−2、複数の反応領域薄膜13(13−1、13−2)、複数の封止構造14−1及び凸部材22(22−1〜22−6)を含んでいる。
凸部材22は、第3実施形態の凸部材20の長さを封止構造14−1の下部まで伸長したものである。
【0042】
凸部材22−1及び凸部材22−2(総称して凸部22Aと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部22Aは、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。また、凸部22Aの各々は、封止壁14−1aに垂直に交わっている。
凸部材22−3及び凸部材22−4(総称して凸部22Bと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部22Bは、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。また、凸部22Bの各々は、封止壁14−1aに垂直に交わっている。
凸部材22−5及び凸部材22−6(総称して凸部22Cと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部22Cは、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。また、凸部22Cの各々は、封止壁14−1aに垂直に交わっている。
【0043】
上述した第4実施形態によれば、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に、複数の凸部材22を配置する。また、複数の凸部材22の各々は、封止壁14−1a及び封止壁14−2aに垂直に交わっている。これにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、第3実施形態と比べて、反応領域薄膜毎に封止構造14の近傍まで正確に検体液の液滴を保持することができる。
【0044】
(第5実施形態)
以下、図面を参照して第5実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係るSAWセンサ1−1bの概略的な模式図である。図7(a)は、SAWセンサ1−1bの概略的な上面図であり、図7(b)はSAWセンサ1−1bを切断面Aから見た概略的な断面図である。また、図7(c)はSAWセンサ1−1cを切断面Cから見た概略的な断面図である。なお、図7において図5に示したものと同一の構成には同一の符号を付け説明を省略する。
【0045】
SAWセンサ1−1bは、圧電素子基板10、櫛形電極11−1、櫛形電極11−2、複数の反応領域薄膜13(13−1、13−2)、複数の封止構造14−1、凸部材23(23−1〜23−6)及び壁部40(40−1、40−2)を含んでいる。
【0046】
凸部材23−1及び凸部材23−2(総称して凸部23Aと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部23Aは、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。また、凸部22Aの各々は、一方が封止壁14−1aに垂直に交わっており、他方が壁部40−1に接続されている。
凸部材23−3及び凸部材23−4(総称して凸部23Bと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部23Bは、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。また、凸部材23−3及び凸部材23−4は、一方が封止壁14−1aに垂直に交わっている。凸部材23−3は、他方が壁部40−1に接続されている。凸部材23−4は、他方が壁部40−2に接続されている。
凸部材23−5及び凸部材23−6(総称して凸部23Cと呼ぶ)は、互いに交わらずに、間隔が反応領域薄膜13の距離dの10分の1以下の長さである。また、凸部23Cは、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。凸部23Cの各々は、一方が封止壁14−1aに垂直に交わっており、他方が壁部40−2に接続されている。
【0047】
壁部40は、複数の反応領域薄膜13に滴下された検体の液滴を滴下された反応領域薄膜13に保持し、SAWの伝搬方向に流出することを防ぐために設けられたものである。また、壁部40の各々は、図に示すように、くの字に屈曲している。これにより、壁部40で反射する不要なSAWを減衰させることができる。
【0048】
上述した第5実施形態によれば、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に、複数の凸部材23を配置する。これにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(第1実施形態及び第2実施形態のSAWセンサの駆動回路)
次に、図8を参照して、第1実施形態のSAWセンサ1−1及び第2実施形態のSAWセンサ1−1の各1チャネル分のセンサの駆動及び検出のための回路(以下、「駆動回路」という。)の構成例について説明する。
【0050】
図8に示した駆動回路100は、駆動回路100の構成例を説明するためのブロック図である。駆動回路100は、発振器101、分配器102、弾性波検出器103、処理部104を有する。
【0051】
発振器101は、高周波発振信号を生成する。分配器102は、高周波発振信号を櫛形電極11−1(又は11−2)に供給するとともに、弾性波検出器103に供給する。
弾性波検出器103は、分配器102で分配された高周波発振信号と、櫛形電極11−3(又は11−4)により受信された弾性表面波に基づく信号との振幅比、位相差及び伝搬遅延差を検出し、検出した振幅比、位相差及び伝搬遅延差に基づく信号を処理部104に出力する。
処理部104は、弾性波検出器103から供給される信号に基づき、被測定物の物理的特性を求める。なお、物理的特性とは、例えば、被測定物の粘度、密度等である。処理部104は、例えば、反応領域薄膜13に何も滴下されていない状態で、供給された信号の振幅変化、位相変化を求める。反応領域薄膜13に何も滴下しない場合、被測定物は空気である。次に、反応領域薄膜13に被測定物が滴下されている状態で、供給された信号の振幅変化、位相変化を求める。処理部104は、この2つの測定データの算出することで、滴下された被測定物の粘度や密度等を算出する。
【0052】
(動作の説明)
SAWセンサ1の測定者は、SAWセンサ1の反応領域薄膜13−1、13−2に被測定物を滴下する。この場合、櫛形電極11−1、11−2は、封止構造14によって密閉されているため、櫛形電極11−1、11−2に被測定物が付着することで測定精度が低下する事態を回避することができる。なお、被測定物としては、液体状のものであれば、例えば、純液、混合液のいずれであってもよく、メタノール、エタノール等のアルコールの物理的特性を測定する場合に特に有効である。また、被測定物に抗原、抗体、バクテリア等が含まれる状態においても、物理的特性を測定できることは言うまでもない。
【0053】
次に、発振器101でバースト的に生成された高周波発振信号は、分配器102で分配され、櫛形電極11−1、11−2及び弾性波検出器103に同一の高周波発振信号が供給される。
櫛形電極11−1、11−2は、供給された高周波発振信号に基づいて励振して弾性波を発生させる。ここで、櫛形電極11−1により発生された弾性波は、圧電素子基板10の表層部分を伝搬し、被測定物が滴下された反応領域薄膜13−1に沿って矢印X方向に伝搬する。そして、櫛形電極11−3は、弾性波を受信し、受信した弾性波を弾性表面波信号に変換する。
【0054】
また、櫛形電極11−2により発生された弾性波は、圧電素子基板10の表層部分を伝搬し、被測定物が滴下された反応領域薄膜13−2に沿って+X方向に伝搬する。そして、櫛形電極11−4は、弾性波を受信し、受信した弾性波を弾性表面波信号に変換する。
【0055】
櫛形電極11−3、11−4により受信された弾性表面波は、弾性表面波信号に変換された後、弾性波検出器103に供給される。弾性波検出器103は、分配器102から供給された高周波発振信号と、受信した信号との振幅比、位相差及び伝搬遅延差を検出し、当該検出された振幅比、位相差及び伝搬遅延差に基づく信号を処理部104に出力する。処理部104は、弾性波検出器103から供給されたこれらの信号に基づき被測定物の物理的特性を求める。
【0056】
(第3実施形態、第4実施形態及び第5実施形態のSAWセンサの駆動回路)
次に、図9を参照して、第3実施形態、第4実施形態及び第5実施形態のSAWセンサの各1チャネル分のセンサの駆動及び検出のための回路(以下、「駆動回路」という。)の構成例について説明する。
【0057】
図9は、駆動回路200の構成例を説明するためのブロック図である。駆動回路200は、発振器101、分配器102、弾性波検出器103、処理部104A、スイッチ105を有する。
【0058】
処理部104Aは、弾性波検出器103から供給される信号に基づき、被測定物の物理的特性を求める。また、処理部104は、所定のタイミングで、スイッチ105の端子1と端子3との接続、または端子2と端子3との接続を切り替える。なお、物理的特性とは、例えば、被測定物の粘度、密度等である。処理部104Aは、例えば、反応領域薄膜13に何も滴下されていない状態で、供給された信号の振幅変化、位相変化を求める。反応領域薄膜13に何も滴下しない場合、被測定物は空気である。次に、反応領域薄膜13に被測定物が滴下されている状態で、供給された信号の振幅変化、位相変化を求める。処理部104は、この2つの測定データの算出することで、滴下された被測定物の粘度や密度等を算出する。
【0059】
(動作の説明)
SAWセンサ1の測定者は、SAWセンサ1の反応領域薄膜13−1、13−2に被測定物を滴下する。この場合、櫛形電極11−1、11−2は、封止構造14によって密閉されているため、櫛形電極11−1、11−2に被測定物が付着することで測定精度が低下する事態を回避することができる。なお、被測定物としては、液体状のものであれば、例えば、純液、混合液のいずれであってもよく、メタノール、エタノール等のアルコールの物理的特性を測定する場合に特に有効である。また、被測定物に抗原、抗体、バクテリア等が含まれる状態においても、物理的特性を測定できることは言うまでもない。
【0060】
次に、発振器101でバースト的に生成された高周波発振信号は、分配器102で分配され、櫛形電極11−1、11−2及び弾性波検出器103に同一の高周波発振信号が供給される。
櫛形電極11−1、11−2は、供給された高周波発振信号に基づいて励振して弾性波を発生させる。ここで、櫛形電極11−1により発生された弾性波は、圧電素子基板10の表層部分を伝搬し、被測定物が滴下された反応領域薄膜13−1に沿って+X方向に伝搬する。そして、反応領域薄膜13−1を伝搬した弾性波が反射器30−1によって反射された後、反射波となって、再度、反応領域薄膜13−1を伝搬し、櫛形電極11−1で受信される。
【0061】
また、櫛形電極11−2により発生された弾性波は、圧電素子基板10の表層部分を伝搬し、被測定物が滴下された反応領域薄膜13−2に沿って+X方向に伝搬する。そして、反応領域薄膜13−2を伝搬した弾性波が反射器30−2によって反射された後、反射波となって、再度、反応領域薄膜13−2を伝搬し、櫛形電極11−2で受信される。
【0062】
櫛形電極11−1、11−2により受信された弾性表面波は、弾性表面波信号に変換された後、弾性波検出器103に供給される。弾性波検出器103は、分配器102から供給された高周波発振信号と、受信した信号との振幅比、位相差及び伝搬遅延差を検出し、当該検出された振幅比、位相差及び伝搬遅延差に基づく信号を処理部104に出力する。処理部104は、弾性波検出器103から供給されたこれらの信号に基づき被測定物の物理的特性を求める。
【0063】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 SAWセンサ
10 圧電素子基板
11 櫛形電極
13 反応領域薄膜
14 封止構造
20、21、22、23 凸部材
30 反射器
40 壁部
100 段部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9