検出された物標のうち第1物標と第1物標より自車両に対する縦距離が大きい第2物標とが所定の関係を有する場合に、レーダ装置は第2物標を制御装置への出力非対象とする。またレーダ装置は、物標が自車線内に存在するか否かを判定し、物標が車線変更を実施しているか否かを判定する。さらにレーダ装置は、第1物標が自車線内から車線変更を実施している場合は、所定の関係を有する第2物標を制御装置への出力対象とする。これによりレーダ装置は、物標が制御装置への出力対象か否かを正確に判定でき、出力対象の物標を確実に制御装置に出力できる。
検出された物標のうち第1物標と該第1物標より自車両に対する縦距離が大きい第2物標とが所定の関係を有する場合に、前記第2物標を制御装置への出力非対象とするレーダ装置であって、
前記物標が自車線内に存在するか否かを判定する第1判定手段と、
前記物標が車線変更を実施しているか否かを判定する第2判定手段と、
前記第1物標が前記自車線内から前記車線変更を実施している場合は、前記所定の関係を有する前記第2物標を前記制御装置への出力対象とする出力手段と、
を備えるレーダ装置。
検出された物標のうち第1物標と該第1物標より自車両に対する縦距離が大きい第2物標とが所定の関係を有する場合に、前記第2物標を制御装置への出力非対象とする信号処理方法であって、
前記物標が自車線内に存在するか否かを判定する工程と、
前記物標が車線変更を実施しているか否かを判定する工程と、
前記第1物標が前記自車線内から前記車線変更を実施している場合は、前記所定の関係を有する前記第2物標を前記制御装置への出力対象とする工程と、
を備える信号処理方法。
検出された物標のうち第1物標と該第1物標より自車両に対する縦距離が大きい第2物標とが所定の関係を有する場合に、前記第2物標を先行車に設けられたサイドミラーからの反射波に基づく物標として制御装置への出力非対象とするレーダ装置であって、
前記物標が自車線内に存在するか否かを判定する第1判定手段と、
前記物標が車線変更を実施しているか否かを判定する第2判定手段と、
前記第1物標が前記自車線内から前記車線変更を実施している場合は、前記所定の関係を有する前記第2物標を先々行車の車体からの反射波に基づく物標として前記制御装置への出力対象とする出力手段と、
を備えるレーダ装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
<第1の実施の形態>
<1.システムブロック図>
図1は、本実施形態に係る車両制御システム10の構成を示す図である。車両制御システム10は、例えば自動車などの車両に搭載されている。以下、車両制御システム10が搭載される車両を「自車両」という。図に示すように、車両制御システム10は、レーダ装置1と、車両制御装置2とを備えている。
【0027】
本実施の形態のレーダ装置1は、周波数変調した連続波であるFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)を用いて、自車両の周辺に存在する物標の情報(以下、「物標情報」という。)を検出する。物標情報は例えば、物標から反射した反射波がレーダ装置1の受信アンテナに受信されるまでの距離(以下、「縦距離」という。)(m)、自車両に対する物標の相対速度(km/h)、自車両の左右方向(車幅方向)における物標の距離(以下、「横距離」という。)(m)などであり、レーダ装置1は取得したこのような物標情報を車両制御装置2に出力する。
【0028】
車両制御装置2は自車両のブレーキおよびスロットル等に接続され、レーダ装置1から出力された物標情報に基づき自車両の挙動を制御する。例えば車両制御装置2は、先行車との所定の車間距離を保持しつつ、先行車を追従する制御を行う。先行車は、自車線内を走行し、自車線内の物標のうち最も距離が小さい車両である。これにより本実施の形態の車両制御システム10は、ACC(Adaptive Cruise Control)システムとして機能する。
【0029】
<2.レーダ装置ブロック図>
図2は、レーダ装置1の構成を示す図である。レーダ装置1は、例えば車両のフロントバンパー内に設けられ、車両外部に送信波を出力し物標からの反射波を受信する。またレーダ装置1は、送信部4と、受信部5と、信号処理装置6とを主に備える。
【0030】
送信部4は信号生成部41と、発振器42とを備えている。信号生成部41は三角波状に電圧が変化する変調信号を生成し、発振器42に供給する。発振器42は、信号生成部41で生成された変調信号に基づいて連続波の信号を周波数変調し、時間の経過に従って周波数が変化する送信信号を生成し、送信アンテナ40に出力する。
【0031】
送信アンテナ40は、発振器42からの送信信号に基づいて、送信波TWを自車両の外部に出力する。送信アンテナ40が出力する送信波TWは、所定の周期で周波数が上下するFM−CWとなる。送信アンテナ40から自車両の前方に送信された送信波TWは、他の車両などの物標で反射されて反射波RWとなる。
【0032】
受信部5は、アレーアンテナを形成する複数の受信アンテナ51と、その複数の受信アンテナ51に接続された複数の個別受信部52とを備えている。本実施の形態では受信部5は、例えば4つの受信アンテナ51と、4つの個別受信部52とを備えている。4つの個別受信部52は、4つの受信アンテナ51にそれぞれ対応している。各受信アンテナ51は物標からの反射波RWを受信し、各個別受信部52は対応する受信アンテナ51で得られた受信信号を処理する。
【0033】
各個別受信部52は、ミキサ53と、A/D変換器54とを備えている。受信アンテナ51で受信された反射波RWから得られた受信信号は、ローノイズアンプ(図示省略)で増幅された後にミキサ53に送られる。ミキサ53には送信部4の発振器42からの送信信号が入力され、ミキサ53において送信信号と受信信号とがそれぞれミキシングされる。これにより送信信号の周波数と、受信信号の周波数との差となるビート周波数を示すビート信号が生成される。ミキサ53で生成されたビート信号は、A/D変換器54でデジタルの信号に変換された後に信号処理装置6に出力される。
【0034】
信号処理装置6は、CPUおよびメモリ63などを含むマイクロコンピュータを備えている。信号処理装置6は、演算の対象とする各種のデータを、記憶装置であるメモリ63に記憶する。メモリ63は例えばRAMなどである。信号処理装置6は、マイクロコンピュータでソフトウェア的に実現される機能として、送信制御部61、フーリエ変換部62、および、データ処理部7を備えている。送信制御部61は、送信部4の信号生成部41を制御する。
【0035】
フーリエ変換部62は、複数の個別受信部52のそれぞれから出力されるビート信号を対象に、高速フーリエ変換(FFT)を実行する。これによりフーリエ変換部62は、複数の受信アンテナ51の各受信信号に係るビート信号を、周波数領域のデータである周波数スペクトラムに変換する。フーリエ変換部62で得られた周波数スペクトラムは、データ処理部7に対して出力される。
【0036】
データ処理部7は、複数の受信アンテナ51それぞれの周波数スペクトラムに基づいて、物標情報(縦距離、相対速度、および、横距離等)を検出する。データ処理部7は、検出した物標情情報を車両制御装置2に出力する。なおデータ処理部7は、後述する出力判定の処理における判定結果に基づき、物標情報を車両制御装置2に出力対象とするか否かを決定する。この出力判定の処理については後述する。
【0037】
またデータ処理部7には、自車両に設けられた車速センサ81、および、ステアリングセンサ82などの各種センサからの情報が、車両制御装置2を介して入力される。データ処理部7は、車速センサ81から車両制御装置2に入力される自車両の速度、および、ステアリングセンサ82から車両制御装置2に入力される自車両の舵角などを処理に用いることができる。
【0038】
<3.物標情報の取得>
次に、レーダ装置1が物標情報を取得する手法(原理)を説明する。
図3は、送信波TWと反射波RWとの関係を示す図である。説明を簡単にするため、
図3に示す反射波RWは理想的な一つの物標のみからの反射波としている。
図3においては送信波TWを実線で示し、反射波RWを破線で示す。また
図3の上部において、横軸は時間[msec]、縦軸は周波数[GHz]を示している。
【0039】
図に示すように、送信波TWは、所定の周波数を中心として所定の周期で周波数が上下する連続波となっている。送信波TWの周波数は、時間に対して線形的に変化する。以下では、送信波TWの周波数が上昇する区間を「アップ区間」といい、下降する区間を「ダウン区間」という。また送信波TWの中心周波数をfo、送信波TWの周波数の変位幅をΔF、送信波TWの周波数が上下する周期を1/fmとする。
【0040】
反射波RWは、送信波TWが物標で反射されたものであるため、送信波TWと同様に、所定の周波数を中心として所定の周期で周波数が上下する連続波となる。ただし反射波RWには、送信波TWに対して時間Tの時間遅延が生じる。この遅延する時間Tは、自車両に対する物標の距離(縦距離)Rに応じたものとなり、光速(電波の速度)をcとして次の数1で表される。
【0041】
【数1】
また、反射波RWには、自車両に対する物標の相対速度Vに応じたドップラー効果により、送信波TWに対して周波数fdの周波数偏移が生じる。
【0042】
このように、反射波RWには、送信波TWに対して、縦距離に応じた時間遅延とともに相対速度に応じた周波数偏移が生じる。このため
図3の下部に示すように、ミキサ53で生成されるビート信号のビート周波数(送信波TWの周波数と反射波RWの周波数との差の周波数)は、アップ区間とダウン区間とで異なる値となる。以下、アップ区間のビート周波数をfup、ダウン区間のビート周波数をfdnとする。
【0043】
ここで物標の相対速度が0(ゼロ)の場合(ドップラー効果による周波数偏移がない場合)のビート周波数をfrとすると、この周波数frは次の数2で表される。
【0044】
【数2】
この周波数frは上述した遅延する時間Tに応じた値となる。このため、物標の縦距離Rは、周波数frを用いて次の数3で求めることができる。
【0045】
【数3】
また、ドップラー効果により偏移する周波数fdは、次の数4で表される。
【0046】
【数4】
物標の相対速度Vは、この周波数fdを用いて次の数5で求めることができる。
【0047】
【数5】
以上の説明では、理想的な一つの物標の縦距離および相対速度を求めたが、実際には、レーダ装置1は、複数の物標からの反射波RWを同時に受信する。このためフーリエ変換部62が、受信信号から得たビート信号をFFT処理した周波数スペクトラムには、それら複数の物標それぞれに対応する物標情報が含まれている。
【0048】
<4.処理フローチャート>
次にFFT処理された周波数スペクトラムに対してデータ処理部7が行う物標検出処理の全体的な流れについて説明する。この物標検出処理は、データ処理部7が物標情報を検出し車両制御装置2に出力する処理である。
図4は、物標検出処理の流れを示す図である。データ処理部7は、物標検出処理を、所定の時間周期(例えば、1/20秒周期)で時間的に連続して繰り返す。物標検出処理の開始時点では、4つの受信アンテナ51の全てに関してアップ区間、および、ダウン区間の双方の周波数スペクトラムが、フーリエ変換部62からデータ処理部7に入力されている。
【0049】
まずデータ処理部7のピーク抽出部71が、周波数スペクトラムを対象に、ピーク周波数を抽出する(ステップS11)。ピーク抽出部71は、アップ区間およびダウン区間のそれぞれの区間における周波数スペクトラムのうち、所定の閾値を超える信号レベルを有するピークが現れる周波数をピーク周波数として抽出する。
【0050】
次に、方位推定部72が抽出されたピーク周波数に関して、ESPRITを用いた方位演算処理により物標の角度を推定する。略同一の縦距離に複数の物標が存在する場合においては、周波数スペクトラムにおける一つのピーク信号に、複数の物標のデータが含まれる。このため方位推定部72は、例えばESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)を用いた方位演算処理により、一つのピーク信号から当該信号に係る複数の物標のデータを分離し、複数の物標それぞれの角度を推定する(ステップS12)。
【0051】
次に、データ処理部7の物標検出部73が、組み合わせの信頼度に基づいてアップ区間のピーク信号と、ダウン区間のピーク信号とをペアリングする(ステップS13)。具体的には物標検出部73は、アップ区間におけるピーク信号のパラメータ値(角度および角度パワー)と、ダウン区間におけるピーク信号のパラメータ値(角度および角度パワー)とを用いて、ピーク信号の組み合わせの信頼度の指標となる「マハラノビス距離」を数6により算出する。
【0052】
この数6に示すように、物標検出部73はアップ区間およびダウン区間のピーク信号の角度差θdを2乗して所定の係数aを乗算した値と、アップ区間およびダウン区間のピーク信号の角度パワー差θpを2乗して所定の係数bを乗算した値とを足し合わせ、マハラノビス距離MDを算出する。
【0053】
【数6】
物標検出部73は、アップ区間のピーク信号と、ダウン区間のピーク信号との全ての組み合わせに基づくマハラノビス距離MDを算出し、マハラノビス距離MDが最小値となる組み合わせをペアデータとして検出する。そして物標検出部73はこのペアデータの物標情報(縦距離、相対速度、および、横距離等)を検出し、メモリ63に記録する。
【0054】
なお物標検出部73は、上述した数2および数3を用いて物標の縦距離Rを求めることができ、上述した数4および数5を用いて物標の相対速度Vを求めることができる。
【0055】
そして物標検出部73は、アップ区間の角度をθup、ダウン区間の角度をθdnとして、次の数7により物標の角度θを求める。そして物標検出部73は、物標の角度θと縦距離Rとに基づいて、三角関数を用いた演算により物標の横距離を求めることができる。
【0056】
【数7】
次に物標検出部73は、今回の物標検出処理(以下、「今回処理」という。)で導出したペアデータと、過去の物標検出処理(以下、「過去処理」という。)で導出したペアデータとの間における時間的な連続性を判定する(ステップS14)。
【0057】
物標検出部73は、過去処理におけるペアデータから、当該ペアデータに係る物標の今回処理における物標情報を予測する。これにより物標検出部73は、予測した物標情報を有する実データではないペアデータ(以下、「予測ペアデータ」という。)を導出する。
【0058】
そして物標検出部73は、今回処理の複数のペアデータから、予測ペアデータと物標情報が近似する1つのペアデータを選択する。このように選択された1つのペアデータは、過去処理のペアデータと連続性を有し、過去処理のペアデータと同一物体に属するペアデータであると判断される。
【0059】
物標検出部73は、メモリ63に記憶された過去処理のペアデータの全てに関して連続性を判定する。このような判定において、予測ペアデータのパラメータ値に近似する今回処理のペアデータが存在しない場合は、過去処理のペアデータと連続性を有する今回処理のペアデータとして予測ペアデータを用いる。このように今回処理のペアデータとして予測ペアデータを用いて、仮想的に物標情報が検出されているようにする処理を「外挿」と呼ぶ。
【0060】
また物標検出部73は、今回処理のペアデータのうち、過去処理のペアデータとの連続性を有することなく、外挿の処理も行われなかったペアデータは、物標検出処理において初めて検出された新規ペアデータと判断する。
【0061】
そして物標検出部73は、今回処理で検出されたペアデータと過去処理で検出されたペアデータとの時間的な連続性が、複数回の物標検出処理において所定回数以上続いているか否かを判定する(ステップS15)。物標検出部73は、ペアデータの連続性が例えば3回以上続いている場合(ステップS15でYes)、そのペアデータの物標情報をフィルタリングするフィルタ処理を行う(ステップS16)。
【0062】
連続性が3回続いている場合とは、例えば前々回、前回、および、今回処理の連続する3回の物標検出処理で先行車のペアデータが連続的に検出された場合をいう。なお、連続性が3回未満の場合(ステップS15でNo)は、今回処理が終了した後、次回の物標検出処理以降の処理(以下、「次回以降の処理」という。)で連続性の回数が判定される。
【0063】
このようにデータ処理部7は、複数回の物標検出処理で同一物体に属するペアデータが継続的に導出されているか否かを判定することで、車両制御装置2へのミスペアデータの出力を防止する。ミスペアデータは、アップ区間のピーク信号とダウン区間のピーク信号との誤った組み合わせのペアデータである。具体的には、同一の反射点に対応するピーク信号の組合せが正しい組み合わせのペアデータとなるのに対し、異なった反射点に対応するピーク信号を組み合わせがミスペアデータとなる。
【0064】
過去処理におけるペアデータがミスペアデータの場合、当該ミスペアデータから予測された予測ペアデータに対して、物標情報(例えば、縦距離や相対速度等)が近似する今回処理のペアデータは検出されない。その結果、今回処理では外挿の処理が行われ、次回以降の処理でも外挿の処理が継続し、外挿処理が所定回数以上継続することで、ミスペアデータはメモリ63から消去される。
【0065】
次に、物標検出部73は、連続性が所定回数以上のペアデータに対してフィルタ処理を行い、ペアデータの物標情報を時間軸方向に平滑化する(ステップS16)。具体的には物標検出部73は、今回処理で導出した瞬時値としてのペアデータの物標情報と、連続性の判定処理に用いた予測ペアデータの物標情報とを加重平均したデータ(以下、「フィルタデータ」という。)を、当該ペアデータの新たな物標情報として検出する。今回処理で導出したペアデータの物標情報の重みは例えば「0.25」とされ、予測ペアデータの物標情報の重みは例えば「0.75」とされる。瞬時値としてのペアデータの物標情報はノイズの影響などで異常な値となる可能性があるが、このようなフィルタ処理を行うことで異常な値となることを防止できる。なお、検出されたフィルタデータはメモリ63に記録される。
【0066】
次に物標検出部73は、移動物判定処理を行い、フィルタデータに移動物フラグ、および、前方車フラグを設定する(ステップS17)。物標検出部73は、まずフィルタデータの相対速度と、車速センサ21から得られる自車両の速度とに基づいて、フィルタデータが示す物標の絶対速度と走行方向とを導出する。
【0067】
そして物標検出部73は、フィルタデータが示す物標の絶対速度が所定の速度(例えば、1km/h)以上の場合は、当該物標は移動物であると判断し、移動物フラグを「オン」とし、フィルタデータが示す物標の絶対速度が所定の速度(例えば、1km/h)未満の場合は、当該物標は静止物であると判断し、移動物フラグを「オフ」とする。
【0068】
また物標検出部73は、フィルタデータが示す物標の走行方向が自車両と同一方向であり、かつ、フィルタデータが示す物標の絶対速度が所定速度(例えば、18km/h)以上の場合は、前方車フラグを「オン」とし、フィルタデータが示す物標がこれらの条件を満足しない場合は、前方車フラグを「オフ」とする。
【0069】
次に物標検出部73は、フィルタデータが車両制御装置2への出力対象か否かを判定する。具体的には物標検出部73は、フィルタデータが示す物標が車両の車体(本体)か、車両の車体以外のサイドミラー等の付属部分等かを判定する処理を行い、本体と判定した場合は出力対象とし、付属部分と判定した場合は出力非対象とする。以下、この出力判定の処理について
図5および
図6を用いて詳しく説明する。
【0070】
<4−1.出力判定の処理>
図5は、出力判定の処理を説明するフローチャートである。最初に物標検出部73は、フィルタデータの出力禁止フラグを「オフ」に設定する(ステップS101)。出力禁止フラグは、フィルタデータが車両制御装置2への出力対象か否かを示す指標である。出力禁止フラグが「オフ」のフィルタデータは、車両制御装置2への出力対象となり、出力禁止フラグが「オン」のフィルタデータは、車両制御装置2への出力非対象となる。このステップS101では、最初にフィルタデータの出力禁止フラグを全て「オフ」とし、以下に説明する複数の判定条件に応じて「オフ」を継続するか「オン」に切り替えるかが決定される。
【0071】
次に物標検出部73は、フィルタデータの自車線ターゲットフラグを「オン」および「オフ」のいずれかとする自車線ターゲット判定の処理を行う(ステップS102)。自車線ターゲットフラグは、フィルタデータが示す物標の位置に応じて設定される。自車線ターゲットフラグが「オン」のフィルタデータが示す物標は、自車線内の縦距離が最小の物標として、複数回の物標検出処理において連続的に検出された物標である。このため、自車線ターゲットフラグが「オン」となるフィルタデータは、自車線内に存在し自車両に最も近い縦距離を有する先行車、言い換えるとACCの制御対象とすべき先行車を示すものであり、自車線内の全フィルタデータの中で1つのフィルタデータのみである。ここで自車線内とは、自車両が走行する車線の範囲内をいう。例えば自車両が車線の略中央を走行する場合、自車両の進行方向の範囲で自車両の位置を横距離の絶対値0mとしたときの横距離の絶対値約1.8mの範囲である。
【0072】
自車線ターゲットフラグが「オフ」のフィルタデータが示す物標は、自車線内であっても縦距離が最小ではない物標、または、隣接車線等の自車線以外の位置に存在する物標として検出された物標である。なお自車線ターゲットフラグは、後述するように物標検出部73が出力禁止フラグの「オフ」を保持するか「オン」に切り替えるかの判定条件の1つとなる。以下
図6を用いて、自車線ターゲット判定の処理内容について説明する。
【0073】
<4−2.自車線ターゲット判定の処理>
図6は、自車線ターゲット判定の処理を説明するフローチャートである。物標検出部73は、最初の処理でフィルタデータの自車線カウンタを操作する(ステップS201)。自車線カウンタは、フィルタデータが示す物標が自車線内に存在する場合に、カウント値が増加するカウンタである。例えば、フィルタデータが示す物標が自車線内で検出された場合、そのフィルタデータの自車線カウンタのカウント値は、1回の物標検出処理で1カウント増加する。なお、自車線カウンタの他の操作については後述する。
【0074】
次に物標検出部73は、フィルタデータの前方車フラグが「オン」か否かを判定する(ステップS202)。
図4に示した移動物判定(ステップS17)の処理により、フィルタデータが示す物標の走行方向が自車両と同一方向であり、かつ、フィルタデータが示す物標の絶対速度が所定速度以上の場合、フィルタデータの前方車フラグは「オン」となる。このようにフィルタデータの前方車フラグが「オン」の場合(ステップS202でYes)、物標検出部73は、フィルタデータの相対横距離の絶対値が1.8m以下か否かを判定する(ステップS203)。
【0075】
フィルタデータの相対横距離の絶対値が1.8m以下の場合(ステップS203でYes)、即ちフィルタデータが示す物標が、自車線内に存在する場合、物標検出部73はフィルタデータの縦距離が、自車線内の全てのフィルタデータの中で最小か否かを判定する(ステップS204)。
【0076】
ここで横距離には、相対横距離と絶対横距離とがある。相対横距離は、カーブ半径に基づきカーブに沿って仮想的に曲がった中心軸に対する物標の横距離である。カーブ半径は、ステアリングセンサ82の舵角情報から算出される。また中心軸は、レーダ装置1の送信波の出力方向に延伸する仮想的な軸で、自車両が直進する場合は送信範囲の略中央に直線の状態で位置する軸である。絶対横距離は、カーブに沿って仮想的に曲がることのない中心軸に対する物標の横距離である。以下では、横距離と記載した場合、相対横距離として説明するが、相対横距離を絶対横距離と置き換えてもよい。
【0077】
フィルタデータの縦距離が最小の場合(ステップS204でYes)、物標検出部73は、自車線カウンタのカウント値が第1のカウント値(例えば、60カウント)以上か否かを判定する(ステップS205)。カウント値が60カウント以上の場合とは、フィルタデータが少なくとも60回以上の物標検出処理で連続的に検出されたことを意味し、物標検出処理の1回の処理を約50msecとすると約3,000msec以上、連続性を有するフィルタデータが検出されていることを意味する。
【0078】
物標検出部73は、自車線カウンタのカウント値が60カウント以上の場合、自車線ターゲットフラグを「オン」に設定して(ステップS206)、ステップS208の処理を行う。
【0079】
このように物標検出部73は、ステップS201〜S206の処理で、フィルタデータが示す物標が、自車線内の縦距離が最小の物標として、複数回の物標検出処理において連続的に検出された場合は、そのフィルタデータの自車線ターゲットフラグを「オン」に設定する。
【0080】
なお物標検出部73は、フィルタデータがステップS202〜205の処理で条件を満たさない場合は、ステップS207の処理を行う。具体的には、フィルタデータの前方車フラグが「オフ」の場合(ステップS202でNo)、フィルタデータの相対横距離の絶対値が1.8mを超える場合(ステップS203でNo)、フィルタデータの縦距離が自車線内で最小ではない場合(ステップS204でNo)、および、フィルタデータの自車線カウンタのカウント値が60カウント未満の場合(ステップS205でNo)、物標検出部73はフィルタデータの自車線ターゲットフラグを「オフ」に設定して(ステップS207)、ステップS208に進む。
【0081】
次に、物標検出部73は、フィルタデータの自車線ターゲットフラグが「オン」か否かを判定し(ステップS208)、自車線ターゲットフラグが「オン」の場合(ステップS208でYes)、車線変更カウンタの操作を行う(ステップS209)。なお物標検出部73は、フィルタデータの自車線ターゲットフラグが「オフ」の場合(ステップS208でNo)、自車線ターゲットフラグ判定の処理を終了する。そのため以下の処理は、自車線ターゲットフラグが「オン」のフィルタデータに対して行われる処理となる。
【0082】
車線変更カウンタは、フィルタデータが示す物標が隣接車線内で検出された場合、即ち車線変更を実施している場合に、カウント値が増加するカウンタである。例えば、車線変更カウンタのカウント値は、フィルタデータが示す物標が隣接車線内で検出された場合、そのフィルタデータの車線変更カウンタのカウント値は、1回の物標検出処理で1カウント増加する。なお、車線変更カウンタの他の操作については後述する。
【0083】
ここで隣接車線内とは、自車線の隣の車線の一部の範囲内をいう。具体的には、自車両が車線の略中央を走行する場合、自車両の進行方向の範囲で自車両の位置を横距離の絶対値0mとしたときの横距離の絶対値約3.3m以上の範囲である。
【0084】
物標検出部73は、ステップS208の処理で車線変更カウンタ操作を行った後、フィルタデータの車線変更カウンタのカウント値が5カウント以上か否かを判定する(ステップS210)。フィルタデータの車線変更カウント値が5カウント以上の場合(ステップS210でYes)、物標検出部73は、このフィルタデータの自車線ターゲットフラグを「オン」から「オフ」に切り替える(ステップS211)。即ち物標検出部73は、フィルタデータの相対横距離の絶対値が3.3m以上の状態で、5回以上の物標検出処理において連続的に検出された場合、それまで自車線内に存在する車両であり、自車両に対して最小の縦距離を有する車両の車線変更が完了したと判断し、ACCの制御対象から外すべく、このフィルタデータの自車線ターゲットフラグ「オフ」に設定する。
【0085】
物標検出部73は、ステップS210の処理でフィルタデータの車線変更カウンタのカウント値が5カウント未満の場合(ステップS210でNo)、判定対象であるフィルタデータの自車線ターゲットフラグを「オン」に保持して、自車線ターゲットフラグ判定の処理を終了する。
【0086】
このように自車線ターゲットフラグが「オン」に設定されたフィルタデータに対し、このフィルタデータが示す物標が相対横距離の絶対値が3.3m以上の状態で、5回以上の物標検出処理において連続的に検出された、即ちフィルタデータが示す物標が隣接車線内への車線変更を完了した場合、物標検出部73は、このフィルタデータの自車線ターゲットフラグを「オン」から「オフ」に切り替える。
【0087】
これによりレーダ装置1は、フィルタデータが自車線内で自車線に最も近い位置に存在する物標か否かを正確に判定でき、フィルタデータが示す物標を制御装置への出力対象とするか否かの判定を確実に行える。
【0088】
次に
図5のステップS103に戻り、出力判定の処理の説明を続ける。フィルタデータに対する自車線ターゲット判定を終了した物標検出部73は、複数のフィルタデータの中から車両の付属部分候補のフィルタデータ(以下、「候補データ」という。)を検索する候補データ検索を行う(ステップS103)。候補データとなるフィルタデータは、例えば前方車フラグが「オン」、かつ、縦距離25m以上の2つの条件を満たすフィルタデータである。この候補データ検索により、サイドミラーや積載物のような車両の車体の付属部分の可能性のあるフィルタデータが全て抽出される。
【0089】
候補データが1つ以上存在する場合(ステップS104でYes)、物標検出部73は、候補データが属する車両の車体候補のフィルタデータ(以下、「本体データ」という。)を検索する本体データ検索を行う(ステップS105)。具体的には物標検出部73は、ある候補データを基準データとし、この基準データと所定の関係を有する他の候補データを抽出する。
【0090】
所定の関係とは、基準データを車両の車体のフィルタデータと仮定し、基準データとの縦方向の距離、横方向の距離、および、相対速度が所定範囲内となる他のフィルタデータを、基準データと同一車両に属する付属部分の候補データとする関係である。例えば基準データの位置から縦方向の距離+20m以内、横方向の距離±2.5m以内の位置に存在し、基準データとの相対速度5km/h以内のフィルタデータを同一車両に属する付属部分の候補データとする関係である。
【0091】
なお、ステップS104において候補データが存在しない場合(ステップS104でNo)、物標検出部73は、出力判定処理を終了する。
【0092】
本体データ検索により基準データと所定の関係を有する他の候補データ(以下、「特定候補データ」という。)を抽出した場合(ステップS106でYes)、物標検出部73は、基準データである本体データと特定候補データとの縦距離差が所定距離(例えば、14m)以上か否かを判定する(ステップS107)。
【0093】
なお、ステップS106において所定の関係を満たす特定候補データが存在しない場合(ステップS106でNo)、物標検出部73は、出力判定処理を終了する。
【0094】
本体データと特定候補データとの縦距離差が所定距離以上の場合(ステップS107でYes)、物標検出部73は、本体データの自車線ターゲットフラグが「オン」か否かを判定する(ステップS108)。本体データの自車線ターゲットフラグが「オン」の場合(ステップS108でYes)、物標検出部73は、特定候補データの出力禁止フラグの「オフ」を保持したまま出力判定の処理を終了する。
【0095】
これに対して、本体データと特定候補データとの縦距離差が所定距離未満の場合(ステップS107でNo)や、本体データの自車線ターゲットフラグが「オフ」の場合(ステップS108でNo)、物標検出部73は、特定候補データが本体データと同じ車両に属するサイドミラー等の付属部分と判定し、特定候補データの出力禁止フラグを「オフ」から「オン」に切り替えて(ステップS109)、出力判定処理を終了する。
【0096】
このように出力判定の処理では、物標検出部73が最初の処理(ステップS101)で設定した出力禁止フラグの「オフ」を保持する場合と、出力禁止フラグを「オン」に切り替える場合がある。以下、
図7および
図8の具体例を用いてそれぞれの場合について具体的に説明する。最初に出力禁止フラグを「オン」に切り替える場合について説明する。
【0097】
図7は、出力禁止フラグを「オン」に切り替える具体例を説明する図である。以下の図では、2次元のXY座標軸を用いて方向を説明する。XY座標軸は、自車両CAに対して相対的に固定される。自車両CAの車幅方向がX軸方向に対応し、自車両CAの進行方向がY軸方向に対応する。+X方向が自車両CAの右方向、−X方向が自車両CAの左方向であり、+Y方向が自車両CAの前方、−Y方向が自車両CAの後方である。
【0098】
図7に示す自車線ORを走行する自車両CAは、レーダ装置1を備えており、このレーダ装置1の送信波TWの送信範囲内には、自車線ORの隣の車線の隣接車線NRを走行する前方車TA1が含まれている。この前方車TA1は例えばトラックであり、車体の全長および車幅や付属部分等が一般の車両と比べて大きい車両である。
【0099】
物標検出部73は、前方車TA1の車体からの反射波に基づくフィルタデータF1a(▲)と、左側のサイドミラーからの反射波に基づくフィルタデータFlb(■)とを検出している。ここで、フィルタデータの縦距離および横距離の基準値は、レーダ装置1の位置を縦距離±0mとし、一点鎖線で示す中心軸MLを横距離±0mとする。中心軸MLは自車両CAが直進する場合、送信波TWの射出方向(+Y方向)に延伸し、送信波TWの送信範囲の略中心に位置する仮想的な軸である。縦距離および横距離の基準値等から、フィルタデータF1aの物標情報は、例えば縦距離+40m、横距離+2.0m、および、絶対速度60km/hとなる。またフィルタデータF1bの物標情報は、例えば縦距離+50m、横距離+1.2m、および、絶対速度60km/hとなる。
【0100】
物標検出部73は、出力判定におけるステップS101の処理で、フィルタデータF1aおよびF1bの出力禁止フラグを「オフ」に設定する。
【0101】
ここでフィルタデータF1aは、自車線内に存在する物標ではなく隣接車線内に存在する物標である。フィルタデータF1bは、自車線内に存在する物標であり、この自車線内で縦距離が最小の物標である。そのため物標検出部73は、ステップS102の自車線ターゲット判定で、フィルタデータF1aの自車線ターゲットフラグを「オフ」に設定し、フィルタデータF1bの自車線ターゲットフラグを「オン」に設定する。
【0102】
自車線内とは、自車両CAの前方(+Y方向)で、自車両CAが自車線ORの略中央を走行しているときの中心軸MLから横距離約±1.8mの範囲である。具体的には横距離+1.8mの範囲は、中心軸MLから境界線CLまでの範囲である。境界線CLは自車線ORと隣接車線NRとの境界を示す線であり、Y軸方向に延伸する線である。また横距離−1.8mの範囲は、中心軸MLから自車線ORの側壁OWまでの範囲である。
【0103】
またフィルタデータF1aおよびF1bは、それぞれフィルタデータが示す物標の走行方向が自車両と同一方向(+Y方向)であり、かつ、絶対速度が所定速度(例えば、18km/h)以上である。またフィルタデータF1aおよびF1bの縦距離は25m以上である。そのためフィルタデータF1aおよびF1bの前方車フラグは「オン」となっている。物標検出部73は、ステップS103の候補データ検索で、フィルタデータF1aおよびF1bを候補データとして抽出する。このように候補データが2つ存在するため、ステップS104の条件が満たされる(ステップS104でYesに対応)。
【0104】
次に、物標検出部73はステップS105の本体データ検索で、候補データであるフィルタデータF1aを基準データとして、破線で示す判定範囲DEの範囲内に含まれる他の候補データを検索する。判定範囲DEは、基準データであるフィルタデータF1aの位置を基準(縦距離±0mおよび横距離±0m)として、縦方向の距離+20m以内(+Y方向)、および、横方向の距離±2.5m(X軸方向)の範囲である。判定範囲DE内には他の候補データであるフィルタデータF1bが存在する。このフィルタデータF1bは、フィルタデータF1aと同一車両である前方車TA1に属し、両者の相対速度は5km/h以内(60−60=0km/h)となる。
【0105】
物標検出部73は、基準データであるフィルタデータF1aを本体データF1aとし、判定範囲DEの範囲内に存在する他の候補データであるフィルタデータF1bを特定候補データF1bとして抽出する。これによりステップS106の条件が満たされる(ステップS106でYesに対応)。
【0106】
なお、全ての候補データに対して本体データ検索の処理が行われるため、フィルタデータF1bに対しても本体データ検索の処理が行われる。ここでフィルタデータF1bの前方(+Y方向)には他の候補データは存在しないため、フィルタデータF1bは本体データとはならない。
【0107】
物標検出部73は、ステップS107の縦距離差の算出で、本体データF1aの縦距離(40m)と特定候補データF1bの縦距離(50m)との差が所定距離(例えば、14m)以上か否かを判定する。
【0108】
ここで、縦距離差は本体データと特定候補データとが先行車および先々行車等のそれぞれ別々の車両に関するデータの場合に、先行車が車線変更を実施するときは、先々行車との車間距離を(例えば、14m以上)を確保して車線変更を行うとして、判定条件の1つとされるものである。本体データと特定候補データとの縦距離差L1は10m(50−40=10m)となる。そのため、ステップS107の条件は満たされない(ステップS107でNoに対応)。即ち、物標検出部73は、本体データと特定候補データとは、先行車と先々行車に関するデータではなく、特定候補データは本体データと同一車両の付属部分のデータであると判定する。
【0109】
その結果、物標検出部73は、ステップS109の出力禁止フラグの設定で、特定候補データF1bの出力禁止フラグを「オフ」から「オン」に切り替える。これによりレーダ装置1は、付属部分に対応するフィルタデータF1bの物標情報を車両制御装置2に出力することはない。その結果、車両制御装置2はACCの制御において、隣接車両の付属部分の物標を追従対象とすることなく、自車両CAに対する適正な車両制御を行える。
【0110】
なお、仮にフィルタデータF1aとF1bとの縦距離差L1が14m以上となる車両全長が比較的長いトラック等が前方車となる場合は、ステップS107の条件が満たされる(ステップS107でYesに対応)。しかし、本体データF1aは自車線内では検出されない。そのため本体データF1aの自車線ターゲットフラグは「オフ」に設定され、ステップS108の条件が満たされることない(ステップS108でNoに対応)。その結果、物標検出部73は、ステップS109の処理で、特定候補データF1bの出力禁止フラグを「オフ」から「オン」に切り替える。
【0111】
ここで出力判定の処理において、ステップS107の縦距離差の判定と、ステップS108の本体データの自車線ターゲットフラグに基づく判定とを行う理由は、上述のように例えば本体データF1a付近の位置に先行車の本体に対応するフィルタデータ(以下、「先行車データ」という。)が検出され、特定候補データF1b付近の位置に先々行車の本体に対応するフィルタデータ(以下、「先々行車データ」という。)が検出されることがあるためである。
【0112】
具体的には先行車が、車線変更を実施して横距離の絶対値が約3.3m以上の隣接車線内で検出されている場合に、先々行車が自車線内を走行しているとき、本体データF1a付近の位置に先行車データが検出され、特定候補データF1b付近の位置に先々行車データが検出されることがある。つまり、先行車データと先々行車データとが、本体データF1aと特定候補データF1bとの所定の関係を有することがある。
【0113】
このような場合に特定候補データF1b付近の位置に存在する先々行車データの出力禁止フラグを「オン」に切り替えると、先行車の隣接車線内への車線変更の完了後に、自車線内で縦距離が最小となる先々行車データが、車両制御装置2に出力されない。その結果、自車両CAのACCの制御において、自車両CAの前方(+Y方向)に追従対象の車両が存在するにもかかわらず、追従対象の車両が存在しないものとして、自車両CAを加速させる等の不適切な車両制御が行われる可能性がある。
【0114】
そのため、
図8に示すように先行車データF2と、先々行車データF3とが検出される場合に、上述のステップS107およびS108の条件を満たすときは、先々行車データの出力禁止フラグの「オフ」を保持する処理を行う。以下では
図8を用いて具体例を説明する。
【0115】
図8は、出力禁止フラグの「オフ」を保持する具体例を説明する図である。レーダ装置1の送信波TWの送信範囲内には、自車線ORから隣接車線NRに移動している先行車TA2と、自車線ORを走行する先々行車TA3が含まれている。物標検出部73は、複数回の物標検出処理のうちのあるタイミングの処理(後述する時刻t2の処理)で、先行車TA2の車体からの反射波に基づくフィルタデータF2b(先行車データF2b)(▲)と、先々行車TA3の車体からの反射波に基づくフィルタデータF3b(先々行車データF3b)(■)とを検出している。
【0116】
また、先行車データF2bが検出された時刻t2の処理よりも前の物標検出処理(後述する時刻t1の処理)では、先行車TA2のフィルタデータF2a(先行車データF2a)(△)が検出される。なお、時刻t1の処理では先々行車TA3のフィルタデータは検出されない(×)。時刻t1の処理の時点では先々行車TA3は、先行車TA2の略真正面に存在する。このため、レーダ装置1から射出される送信波が先々行車TA3に到達せず、レーダ装置1は先々行車TA3からの反射波を受信できない。そのため時刻t1の処理では、先々行車データF3は検出されない。
【0117】
また、時刻t2の処理よりも後の物標検出処理(後述する時刻t4の処理)では、先行車TA2のフィルタデータF2c(先行車データF2c)(▽)が検出され、先々行車TA3のフィルタデータ(先々行車データF3c)(◇)が検出される。
【0118】
先行車TA2は、複数回の物標検出処理の間に自車線内を走行し、隣接車線内への車線変更を実施した後、隣接車線内への車線変更を完了する。先々行車TA3は、複数回の物標検出処理の間に自車線内を直進する。
【0119】
以下では、この
図8における先行車データF2、および、先々行車データF3の検出を時系列に説明する
図9を用いて、出力禁止フラグの「オフ」を保持する場合の具体例を詳細に説明する。
図9は、先行車データF2および先々行車F3のカウンタとフラグの時間ごとの推移を主に示す図である。
【0120】
図9の上段では、先行車TA2と先々行車TA3の時間ごとの移動位置を示している。即ち、先行車TA2の時間的に連続する移動軌跡D1と、先々行車TA3の時間的に連続する移動軌跡D2とを示している。
図9の下段では、物標検出部73が操作する先行車データF2および先々行車データF3の自車線カウンタと、車線変更カウンタと、自車線ターゲットフラグとの時間ごとの推移を示している。
【0121】
なお、
図9の上段の移動軌跡D2上の先々行車データF3の位置は、先行車データF2の移動軌跡D1上の位置に対応している。具体的には先々行車データF3bの位置は、時刻t2のときの位置であり、先々行車データF3cの位置は、時刻t4のときの位置である。
【0122】
物標検出部73は、所定の条件に基づき自車線カウンタと、車線変更カウンタと、自車線ターゲットフラグとを操作する。そのため
図9の説明を行う前に、各カウンタの操作条件および操作内容について
図10を用いて説明する。
【0123】
<4−3.カウンタの操作条件および操作内容>
図10は、各カウンタの操作条件および操作内容について説明する図である。
図10の左側の欄では物標検出部73が行うカウンタの操作条件を示し、右側の欄では操作条件を満たした場合のカウンタの操作内容を示している。なお、このような操作条件および操作内容の情報は、メモリ63に予め記録されており、物標検出部73が自車線カウンタ操作(
図6のステップS201)や、車線変更カウンタ操作(
図6のステップS208)を行う場合に参照される。
【0124】
図10のカウンタ操作条件(以下、「操作条件」という。)(a)では、フィルタデータの相対横距離の絶対値が1.8m以下の場合、物標検出部73は、このフィルタデータの自車線カウンタのカウント値を1カウント増加する。このような自車線カウンタのカウント値の増加は、ある物標検出処理のタイミングで先行車等が自車線内を走行することで、そのフィルタデータが検出されていることを示している。
【0125】
操作条件(b)では、物標検出部73は、フィルタデータの相対横距離の絶対値が3.3m以上の場合、このフィルタデータの車線変更カウンタのカウント値を1カウント増加する。このような車線変更カウンタのカウント値の増加は、先行車等の車線変更の実施により、そのフィルタデータが隣接車線内で検出されていることを示している。
【0126】
操作条件(c)では、物標検出部73は、フィルタデータの車線変更カウンタのカウント値が5カウント以上の場合、このフィルタデータの自車線カウント値を0(ゼロ)カウントに設定する。このような自車線カウンタのカウント値のクリアは、先行車等の車線変更が完了し、そのフィルタデータが隣接車線内で検出されていることを示している
操作条件(d)では、フィルタデータの相対横距離の絶対値が3.3m未満の場合、物標検出部73は、このフィルタデータの車線変更カウンタのカウント値を0カウントに設定する。このような車線変更カウンタのカウント値のクリアは、先行車等が隣接車線内ではなく自車線内に存在する場合、または、自車線ORから隣接車線NRに車線変更を実施していることを示している。即ち、先行車等のフィルタデータが自車線内(|相対横距離|≦1.8m)で検出される場合、または、自車線ORと隣接車線NRとの間(1.8m<|相対横距離|<3.3m)で検出される場合のいずれかとなる。
【0127】
操作条件(e)では、先行車等のフィルタデータが時間的に連続性を有した状態で検出されずに不検出となった場合や、新規に検出された場合、物標検出部73はこのフィルタデータの自車線カウンタと車線変更カウンタとの両方のカウンタのカウント値を0カウントに設定する。このような両カウンタのカウント値のクリアは、先行車等が自車線内、および、隣接車線内のいずれの範囲内にも存在しない場合や、先行車等が自車線ORと隣接車線NRとの間の位置にも存在しない場合で、そのフィルタデータが検出されていないことを示している。また先行車等がいずれかの位置で存在する場合に、そのフィルタデータが新規に検出されたことを示している。
【0128】
操作条件(f)では、フィルタデータが上記の操作条件(a)〜(e)の条件のいずれにも該当しない場合は、物標検出部73は、このフィルタデータの自車線カウンタおよび車線変更カウンタの両方のカウンタを現在のカウント値で保持する。このような両カウンタのカウント値の保持は、例えば先行車等のフィルタデータに対して外挿処理が行われたことを示している。
【0129】
<4−4.カウンタおよびフラグの推移>
図9に示す自車線カウンタ、車線変更カウンタ、および、自車線ターゲットフラグは、物標検出部73が上述の操作条件(a)〜(f)の条件に基づき操作する。
図9では横軸に時間(msec)が示されており、物標検出部73は時刻t0〜t6の間に、例えば1/20秒周期で複数回の物標検出処理を行う。
【0130】
時刻t0では、物標検出部73は、自車線内に存在する先行車TA2の先行車データF2を検出する。先行車データF2は操作条件(a)を満たすため、先行車データF2の自車線カウンタのカウント値が1カウント増加し、操作条件(d)を満たすため車線変更カウンタが0に設定される。なお、時刻t0における先行車データF2の自車線カウンタのカウント値は60カウント未満のため、このデータの自車線ターゲットフラグは「オフ」となる。
【0131】
具体的には、時刻t0における
図5の出力判定の処理では、先行車データF2の出力禁止フラグが「オフ」となり(ステップS101)、自車線ターゲット判定で自車線カウンタのカウント値が1カウント増加する(ステップS102)。そして先行車データF2が候補データとなる(ステップS104および105)。しかし先行車データF2を本体データとする他の候補データが検出されていないため(ステップS106でNo)、物標検出部73は、先行車データF2の出力禁止フラグの「オフ」を保持して出力判定の処理を終了する。
【0132】
時刻t0では、物標検出部73は、先々行車データF3を検出していない。先々行車TA3が先行車TA2の略真正面に位置し、レーダ装置1の送信波が先々行車TA3に到達しないためである。その結果、先々行車データF3の自車線カウンタおよび車線変更カウンタのカウント値は0カウントとなり、自車線ターゲットフラグは「オフ」となる。
【0133】
次に時刻t1では、物標検出部73は時刻t0に引き続き先行車データF2(F2a)を検出する。先行車データF2aは操作条件(a)を満たすため、先行車データF2の自車線カウンタが1カウント増加し、操作条件(d)を満たすため車線変更カウンタが0に設定される。先行車データF2aの自車線カウンタは、時刻t0から連続的に増加し続け、時刻t1における増加により積算値が60カウントとなる。これにより、先行車データF2aの自車線ターゲットフラグが「オン」に設定される。
【0134】
具体的には、時刻t1における出力判定の処理では、先行車データF2aの出力禁止フラグが「オフ」となり(ステップS101)、自車線ターゲット判定で自車線ターゲットフラグが「オン」となる(ステップS102)。そして先行車データF2aが候補データとなる(ステップS104および105)。しかし先行車データF2aを本体データとする他の候補データが検出されていないため(ステップS106でNo)、物標検出部73は先行車データF2aの出力禁止フラグの「オフ」を保持して出力判定の処理を終了する。
【0135】
なお時刻t1の処理では、物標検出部73は時刻t0から引き続き先々行車データF3を検出していない。そのため、先々行車データF3の自車線カウンタおよび車線変更カウンタのカウント値は0カウントとなり、自車線ターゲットフラグは「オフ」となる。
【0136】
次に時刻t2では、物標検出部73は時刻t1に引き続き先行車データF2(F2b)を検出する。先行車データF2bは操作条件(a)を満たさず、操作条件(d)を満たす。そのため先行車データF2の自車線カウンタのカウント値は増加することなく、車線変更カウンタのカウント値がクリアされる。なお、自車線カウンタは時刻t2時点までの積算値が保持される。つまり先行車データF2aの自車線ターゲットフラグの「オン」が保持される。
【0137】
なお時刻t2の処理では、物標検出部73は自車線内に存在する先々行車データF3(F3b)を検出する。先行車TA2が自車線ORからNRへの車線変更を実施し、境界線CL近傍の位置となるため、レーダ装置1からの送信波が先々行車TA3に到達し、先々行車TA3からの反射波をレーダ装置1が受信できる。そのため物標検出部73は、先々行車データF3bを検出する。先々行車データF3bは操作条件(a)を満たすため、先行々車データF3bの自車線カウンタが1カウント増加し、操作条件(d)を満たすため車線変更カウンタが0に設定される。時刻t2における先々行車データF3bの自車線カウンタのカウント値は60カウント未満のため、このデータの自車線ターゲットフラグは「オフ」となる。
【0138】
時刻t2の判定処理について、
図8を用いて詳細に説明する。ここで、先行車データF2bおよび先々行車データF3bの物標情報は、次のような値となる。先行車データF2bの物標情報は、例えば縦距離+40m、横距離+2.0m、および、絶対速度63km/hとなる。先々行車データF3bの物標情報は、例えば縦距離+54m、横距離+1.2m、および、絶対速度60km/hとなる。
【0139】
物標検出部73は、出力判定におけるステップS101の処理で、先行車データF2bおよび先々行車データF3bの出力禁止フラグを「オフ」に設定する。
【0140】
ここで、先行車データF2bは、時刻t2の処理では自車線内で検出された物標ではない。しかし、時刻t2よりも以前の処理において自車線内で検出され、自車線ターゲットフラグが「オン」になったフィルタデータである。また先行車データF2bは、自車線ORから隣接車線NRへの車線変更を実施中であり、隣接車線内(|相対横距離|≧3.3m)で検出されたフィルタデータでない。そのため先行車データF2bは、自車線カウンタをクリアする操作条件(c)(
図6に示すステップS209に対応)等を満たすこともない。これにより物標検出部73は、ステップS102の自車線ターゲット判定で、先行車データF2bの自車線ターゲットフラグの「オン」を保持する。
【0141】
なお、先々行車データF3bは、自車線カウンタのカウント値の積算値が60カウント未満(ステップS205でNoに対応)のため、自車線ターゲットフラグは「オフ」に設定される。
【0142】
また、先行車データF2bおよび先々行車データF3bは、前方車フラグ「オン」となっている。そのため物標検出部73は、ステップS103の候補データ検索で、先行車データF2b、および、先々行車データF3bを候補データとして抽出する。このように候補データが2つ存在するため、ステップS104の条件が満たされる(ステップS104でYesに対応)。
【0143】
次に、物標検出部73はステップS105の本体データ検索で、候補データである先行車データF2bを基準データとして、破線で示す領域の判定範囲DE内の他の候補データを検索する。判定範囲DE内には他の候補データである先々行車データF3bが検出されている。物標検出部73は、両者の相対速度が5km/h以内(63−60=3km/h)であるため、基準データである先行車データF2bを本体データF2bとし、先々行車データF3bを特定候補データF3bとして抽出する。これによりステップS106の条件が満たされる(ステップS106でYesに対応)。
【0144】
なお、全ての候補データに対して本体データ検索の処理が行われるため、先々行車データF3bに対する本体データ検索の処理が行われる。ここで先々行車データF3bの前方(+Y方向)には他の候補データは存在しないため、先々行車データF3bは本体データとはならない。
【0145】
物標検出部73は、ステップS107の縦距離差の算出で、本体データF2bの縦距離(40m)と特定候補データF3bの縦距離(54m)との差が所定距離(14m)以上か否かを判定する。本体データF2bと特定候補データF3bとの縦距離差L1は、14m(54−40=14m)となるため、ステップS107の条件は満たされる(ステップS107でYesに対応)。即ち、先行車と先々行車との物標が検出され、先行車が車線変更を開始するため、先々行車との車間距離を確保している状態であると判定される。これにより、レーダ装置1は、先行車が自車線内から車線変更を実施しているか否かを正確に判定でき、先々行車の物標を出力対象とするか否かの判定を確実に行える。
【0146】
なお、
図8に示す判定範囲DEの縦方向の距離は、先行車データF2bを基準として先々行車データF3bが所定の関係を有するか否かを判定するパラメータの1つである。そして、判定範囲DEの縦方向の距離(例えば、20m)と、縦距離差L1に相当する縦方向の距離よりも小さい距離(例えば、14m)との間に先々行車データF3bが検出された場合は、先行車データF2bと先々行車データF3bとは所定の距離関係を有することとなる。
【0147】
そして、判定範囲DE内において所定の距離関係を有するデータを検出する領域が、
図8に示す抽出領域SEである。この抽出領域SEは、基準データである先行車データF2bの位置を基準として、縦方向(Y軸方向)の長さが縦距離差(14m)の距離以上、縦方向の距離(20m)以下で、横方向(X軸方向)の長さが横方向の距離(±2.5m)以下の領域となる。レーダ装置1はこの抽出領域SEに基づき出力判定を行うことで、先々行車データが車両制御装置2への出力対象か否かを正確に判定できる。
【0148】
物標検出部73は、ステップS108の自車線ターゲットフラグの判定処理で、本体データF2bの自車線ターゲットフラグが「オン」か否かを判定する。本体データF2bの自車線ターゲットフラグは「オン」であるため、ステップS108の条件は満たされる(ステップS108でYesに対応)。
【0149】
その結果、物標検出部73は、特定候補データF3bの出力禁止フラグの「オフ」を保持して出力判定の処理を終了する。これによりレーダ装置1は、物標が制御装置への出力対象か否かを正確に判定でき、出力対象の物標を確実に車両制御装置2に出力できる。具体的には、自車線内に存在する先行車TA2が隣接車線内に車線変更を完了した後は、新たに先行車となる先々行車TA3の物標情報を車両制御装置2に確実に出力することができる。そして車両制御装置2は、レーダ装置1から先々行車TA3の物標情報を取得し、先々行車TA3を追従対象として自車両CAに対する適正な車両制御を行える。なお、物標検出部73は、本体データF2bの出力禁止フラグも「オフ」を保持する。
【0150】
図9に戻り、時刻t3では物標検出部73は、時刻t2に引き続き先行車データF2を検出する。先行車データF2は操作条件(b)を満たすため、先行車データF2の車線変更カウンタのカウント値が1カウント増加する。そして先行車データF2の自車線のカウンタのカウント値は積算値60カウント以上で保持され、自車線ターゲットフラグの「オン」が保持される。
【0151】
なお、自車線内に存在する先々行車データF3は操作条件(a)を満たすため、自車線カウンタのカウンタ値が1カウント増加し、操作条件(d)を満たすため車線変更カウンタが0カウントに設定される。時刻t3における先々行車データF3の自車線カウンタのカウント値は60カウント未満のため、このデータの自車線ターゲットフラグは「オフ」となる。
【0152】
具体的には、時刻t3における出力判定の処理では、物標検出部73は、抽出領域SE内に他の候補データである先々行車データF3を検出することで、この先々行車データF3の出力禁止フラグの「オフ」を保持して、出力判定の処理を終了する。なお、物標検出部73は、本体データF2の出力禁止フラグも「オフ」を保持する。
【0153】
次に時刻t4では、物標検出部73は時刻t3に引き続き先行車データF2(F2c)を検出する。先行車データF2cは操作条件(b)を満たすため、先行車データF2cの車線変更カウンタのカウント値が1カウント増加する。この先行車データF2cの車線変更カウンタは時刻t2から連続的に増加し続け、時刻t4における増加により積算値5カウントとなる。これにより、先行車データF2cの自車線ターゲットフラグが「オン」から「オフ」に切り替えられる。また、先行車データF2cは操作条件(c)を満たすため、積算値60カウント以上で保持されていた自車線カウンタのカウント値はクリアされ、0カウントに設定される。
【0154】
なお、自車線内で検出される先々行車データF3cは操作条件(a)を満たすため、自車線カウンタのカウンタ値が1カウント増加し、操作条件(d)を満たすため車線変更カウンタが0に設定される。時刻t4における先々行車データF3cの自車線カウンタのカウント値は60カウント未満のため、このデータの自車線ターゲットフラグは「オフ」となる。
【0155】
具体的には、時刻t4における出力判定の処理では、物標検出部73は、抽出領域SE内に他の候補データである先々行車データF3cを検出することで、この先々行車データF3cの出力禁止フラグの「オフ」を保持して、出力判定の処理を終了する。なお、物標検出部73は、本体データF2cの出力禁止フラグも「オフ」を保持する。
【0156】
このように、先行車データF2の自車線ターゲットフラグが「オン」の区間で、かつ、先々行車データF3が検出される区間である判定区間TEの間で、先々行車データF3が抽出領域SE内で検出された場合、物標検出部73は、先々行車データF3の出力禁止フラグの「オフ」を保持する。これにより、レーダ装置1は、物標が車両制御装置2への出力対象か否かを正確に判定でき、出力対象の物標を確実に車両制御装置2に出力できる。また、車両制御装置2は、レーダ装置1から取得した物標を追従対象として自車両に対して適正な車両制御を行える。
【0157】
次に時刻t5では、物標検出部73は時刻t4以降から先行車データF2を自車線内で検出していない。そのため、先行車データF2の自車線カウンタのカウント値は時刻t4に引き続き0カウントとなり、先行車データF2の自車線ターゲットフラグは「オフ」が保持される。さらに先行車データF2の車線変更カウンタのカウント値の積算値が5カウント以上となる。
【0158】
また物標検出部73は、時刻t4に引き続き先々行車データF3を検出する。先々行車データF3は操作条件(a)を満たすため、先々行車データF3の自車線カウンタが1カウント増加し、操作条件(d)を満たすため車線変更カウンタが0カウントに設定される。この先々行車データF3の自車線カウンタは時刻t4から連続的に増加し続け、時刻t5における増加により積算値60カウントとなる。これにより、先々行車データF3の自車線ターゲットフラグが「オン」に設定される。
【0159】
具体的には、時刻t5における出力判定の処理では、先々行車データF3の出力禁止フラグが「オフ」となり(ステップS101)、自車線ターゲット判定で先々行車データF3の自車線ターゲットフラグが「オン」となる(ステップS102)。そして先々行車データF3が候補データとなる(ステップS104および105)。しかし先々行車データF3を本体データとする他の候補データが検出されていないため(ステップS106でNoに対応)、物標検出部73は先々行車データF3の出力禁止フラグを「オフ」に保持して出力判定の処理を終了する。なお、物標検出部73は、本体データF2の出力禁止フラグも「オフ」を保持する。
【0160】
図4の説明に戻り、物標検出部73は、出力判定により、出力禁止フラグが「オン」となったフィルタデータF1bをメモリ63から消去する不要物除去処理を行う(ステップS19)。これによりトラック等の前方車TA1のサイドミラーの物標に対応するフィルタデータF1bの物標情報は、車両制御装置2へは出力されない。なお、出力禁止フラグが「オフ」の先々行車データF3は、消去されることなく引き続きメモリ63に記録された状態となる。
【0161】
次に物標検出部73は、結合処理(グルーピング)を行い、全てのフィルタデータのうち、同一の物体に属するフィルタデータ同士を一つに結合する(ステップS20)。例えば、1台の車両から送信波TWが反射した場合には、通常、送信波TWは当該車両の複数の反射点で反射する。したがって、同一の車両の複数の反射点のそれぞれから反射波RWがレーダ装置1に到来するため、それら複数の反射点のそれぞれに係るフィルタデータが導出される。
【0162】
このような複数のフィルタデータが示す物標は同一の車両であるため、物標検出部73は、このようなフィルタデータ同士を一つに結合する。物標検出部73は、例えば相対速度が略同一で縦距離、および、横距離が近似した複数のフィルタデータ同士を一つに結合する。結合後のフィルタデータの物標情報は、例えば結合対象となった複数のフィルタデータの物標情報の平均値などを採用する。
【0163】
このため、上述の
図7に示した前方車TA1のフィルタデータF1aとF1bとの縦距離および横距離の平均値を前方車TA1のフィルタデータの物標情報として採用すると、隣接車線NRを走行する前方車TA1の横距離が自車線内となることがある。物標検出部73は、特定候補データF1bの出力禁止フラグを「オン」とし、上述の不要物除去処理で特定候補データFb1をメモリ63から消去しているため、この特定候補データF1bは結合の対象とはならない。
【0164】
次に、物標出力部74が、出力禁止フラグが「オフ」のフィルタデータの物標情報(縦距離、相対速度、および、横距離等)を、車両制御装置2に出力する(ステップS21)。物標出力部74は、フィルタデータの数が多い場合は、所定数(例えば、8個)のフィルタデータを選択し、選択したフィルタデータのみの物標検知情報を出力する。物標出力部74は、フィルタデータの縦距離と横距離とを考慮して、自車両と同一の走行車線を走行し、かつ、自車両に近い物標を示すフィルタデータを優先的に選択する。
【0165】
以上説明したように、本実施の形態では物標検出部73は、フィルタデータが自車線内(|相対横距離|≦1.8m)で縦距離が最小の状態で検出された場合、このフィルタデータの自車線カウンタのカウント値を増加させる。そして物標検出部73は、複数回の物標検出処理で連続的に検出されたフィルタデータのうち、自車線カウンタのカウント値が所定値(例えば、60カウント)以上となったフィルタデータ(例えば、先行車データF2)の自車線ターゲットフラグを「オン」にする。
【0166】
次に物標検出部73は、自車線ターゲットフラグが「オン」となった先行車データF2に対応する先行車TA2が、自車線ORから隣接車線NRへの車線変更を実施している間は、先行車データF2の自車線ターゲットフラグの「オン」を保持し、自車線カウンタのカウント値(60カウント以上)を保持する。
【0167】
また物標検出部73は、先行車TA2が車線変更を実施することで、先々行車TA3の先々行車データF3を検出する。先々行車データF3が自車線内で検出された場合、先々行車データF3の自車線カウンタのカウント値が増加する。
このように物標検出部73は、自車線ターゲットフラグが「オン」の先行車データF2が自車線ORから隣接車線NRへ車線変更を実施している間に検出された場合、先行車データF2と所定の位置関係を有する先々行車データF3の出力禁止フラグの「オフ」を保持する。具体的には、先行車データF2の位置を基準とする判定範囲DE内に先々行車データF3が存在し、先行車データF2に対して先々行車データF3が所定の距離関係を満たす場合、即ち、先々行車データF3が抽出領域SE内で検出された場合、物標検出部73は、先々行車データF3の出力禁止フラグの「オフ」を保持する。
【0168】
次に物標検出部73は、隣接車線内(|相対横距離|≧3.3m)で先行車データF2を検出すると、先行車データF2の車線変更カウンタのカウント値が増加する。なお、車線変更カウンタが所定値(例えば、5カウント)未満の場合で、先々行車データF3が抽出領域SE内で検出されるときは、物標検出部73は、先々行車データF3の出力禁止フラグの「オフ」を保持する。
【0169】
そして、物標検出部73は、複数回の物標検出処理で連続的に検出した先行車データF2の車線変更カウンタのカウント値が所定値(例えば、5カウント)以上となった場合、先行車TA2の隣接車線NRへの車線変更が完了したとして、先行車データF2の自車線ターゲットフラグを「オン」から「オフ」に切り替える。
【0170】
なお、物標検出部73は、先々行車データF3の自車線カウンタのカウント値が所定値以上となると先々行車データF3の自車線ターゲットフラグを「オフ」から「オン」に切り替える。
【0171】
これによりレーダ装置1は、先々行車TA3の車体(本体)の先々行車データF3を付属部分のデータと誤判定してメモリ63から消去することなく、確実に車両制御装置2に出力できる。その結果、車両制御装置2は、先行車TA2の車線変更完了後は、先々行車TA3をACCの制御の追従対象として、自車両CAに対して適正な車両制御を行える。
【0172】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態のレーダ装置1は、第1の実施の形態で説明した出力判定の処理において、新たに車両確定の処理を追加したものである。この車両確定の処理は、自車線内で検出された候補データのうち、判定範囲DE内に含まれない候補データを、付属部品ではない車両の本体のデータと判定する処理である。
【0173】
第2の実施の形態のレーダ装置1の構成および処理は、第1の実施の形態とほぼ同様であるが、上述のように出力判定の処理内容が一部異なる。以下、
図11〜
図14を用いて相違点を中心に説明する。
【0174】
<5−1.出力判定の処理>
図11は、第2の実施の形態の出力判定の処理について説明するフローチャートである。この
図11は、第1の実施の形態の
図5で説明した出力判定の処理に、車両確定に関する処理を追加したものである。物標検出部73は、ある候補データを基準データとして判定範囲DE内の他の候補データを抽出する本体データ検索を行い(ステップS105)、車両確定の処理を行う(ステップS110)。
【0175】
車両確定の処理について
図12を用いて詳細に説明する。
図12は、車両確定の処理フローチャートである。物標検出部73は全ての候補データに対して車両確定の処理を行う。物標検出部73は、候補データの相対横距離の絶対値が1.8m以下か否かを判定する(ステップS301)。候補データの相対横距離の絶対値が1.8m以下の場合(ステップS301でYes)、即ち候補データが自車線内に存在する場合、物標検出部73はこの候補データの縦距離が70m以下か否かを判定する。
【0176】
候補データの縦距離が70m以下の場合(ステップS302でYes)、物標検出部73は、候補データと本体データとの縦距離が20mを超えるか否かを判定する。物標検出部73は候補データと本体データとの縦距離が20mを超える場合(ステップS303でYes)、即ち、候補データが基準データに基づく判定範囲DEの範囲外で検出された場合、車両確定カウンタのカウント値を1増加させる(ステップS304)。
【0177】
次に物標検出部73は、候補データが30回以上の物標検出処理で連続的に検出されたか否かを判定する(ステップS305)。候補データが30回以上の物標検出処理で連続的に検出された場合(ステップS305でYes)、物標検出部73は、候補データの車両確定フラグを「オン」に設定する(ステップS306)。この車両確定フラグが「オン」となることで、候補データは車両の本体のデータであると判定される。物標検出部73は、車両確定フラグが「オン」に設定された候補データの出力禁止フラグを「オフ」に保持する。なお、車両確定フラグが「オン」となったフィルタデータは、以降の処理で引き続き「オン」が保持される。
【0178】
そして、
図11のステップS107の処理で、縦距離差が14m未満の場合(ステップS107でNo)や、ステップS108の処理で、本体データの自車線ターゲットフラグが「オフ」の場合、物標検出部73は候補データの車両確定フラグが「オン」か否かを判定する(ステップS111)。候補データの車両確定フラグが「オン」の場合(ステップS111でYes)、即ち候補データが車両の車体に対応するフィルタデータの場合、物標検出部73は出力禁止フラグの「オフ」を保持して、出力判定の処理が終了する。これによりレーダ装置1は、過去に出力対象と判定した候補データを誤ってメモリ63から消去し、出力非対象とすることなく、確実に車両制御装置2に出力できる。
【0179】
なお、候補データの車両確定フラグが「オフ」の場合(ステップS111でNo)、物標検出部73はこの候補データの出力禁止フラグを「オフ」から「オン」に切り替える。
【0180】
<5−2.カウンタおよびフラグの推移>
次に車両確定の処理により車両確定フラグが「オン」となる具体例について、
図13を用いて説明する。
図13は第2の実施の形態の先行車データF2、および、先々行車データF3のカウンタとフラグとの時間ごとの推移を主に示す図である。
図13では、時刻0〜t2までは、第1の実施と同一の処理であり、時刻t3以降の移動軌跡D1aが示す先行車TA2の時間ごと位置が、第1の実施の形態の移動軌跡D1で示した先行車TA2の時間ごとの位置と異なる。これにより各処理タイミングにおける処理内容も異なる。以下、時刻t3以降の処理について説明する。
【0181】
時刻t3およびt4では、物標検出部73は、先行車データF2を自車線ORと隣接車線NRとの間(1.8m<|相対横距離|<3.3m)で検出する。先行車データF2は操作条件(d)を満たすため、車線変更カウンタが0カウントに設定される。なお、先行車データF2の自車線のカウンタのカウント値は、積算値60カウント以上で保持され、自車線ターゲットフラグの「オン」が保持される。
【0182】
また、自車線内に存在している先々行車データF3は操作条件(a)を満たすため、自車線カウンタのカウンタ値がそれぞれ1カウント増加し、操作条件(d)を満たすため車線変更カウンタが0カウントに設定される。時刻t3およびt4における先々行車データF3の自車線カウンタのカウント値は60カウント未満のため、このデータの自車線ターゲットフラグは「オフ」となる。
【0183】
時刻t5では、先行車TA2が境界線CL近傍に位置することで、物標検出部73は、先行車データF2を自車線ORと隣接車線NRとの間(1.8m<|相対横距離|<3.3m)で検出する。先行車データF2は操作条件(d)を満たすため、車線変更カウンタが0カウントに設定される。
【0184】
また物標検出部73は、時刻t4から引き続き先々行車データF3を検出する。先々行車データF3は操作条件(a)を満たすため、先々行車データF3の自車線カウンタが1カウント増加し、操作条件(d)を満たすため車線変更カウンタが0カウントに設定される。先々行車データF3の自車線カウンタは、時刻t2から連続的に増加し続け、時刻t5における増加により積算値が60カウントとなる。これにより、物標検出部73は先々行車データF3の自車線ターゲットフラグを「オフ」から「オン」に切替える。自車線ターゲットフラグが「オン」のフィルタデータは、自車線内の全フィルタデータのうち1つのデータのみであるため、物標検出部73は、先行車データF2の自車線ターゲットフラグを「オン」から「オフ」に切り替える。
なお、時刻t5で自車線ターゲットフラグが「オン」から「オフ」に切替られた先行車データF2は、操作条件(d)を満たし車線変更カウンタはクリアされ、自車線カウンタのカウント値は60カウント以上で保持される。
【0185】
ここで、時刻t5の物標検出処理で、先々行車データF3の自車線ターゲットフラグが「オフ」から「オン」に切り替えられ、先行車データF2の自車線ターゲットフラグが「オン」から「オフ」に切り替えられる処理について、
図14を用いて説明する。
【0186】
図14は、第2の実施の形態における自車線ターゲット判定の処理を説明するフローチャートである。この処理フローチャートは、第1の実施の形態で説明した
図6の処理フローチャートに、ステップS212の処理と、ステップS213の処理とを追加した処理である。
【0187】
時刻t5の物標検出処理における
図14のステップS206の処理で、物標検出部73は、ステップS202〜S205の条件を満たす先々行車データF3の自車線ターゲットフラグを「オフ」から「オン」に切り替える。この切り替えの時点では、先行車データF2の自車線ターゲットフラグは「オン」に保持されている。
【0188】
物標検出部73は、ステップS208の処理で、自車線ターゲットフラグが「オン」となっている先行車データF2、および、先々行車データF3の両方のデータに対して車線変更カウンタ操作(ステップS209)を行う。物標検出部73は、車線変更カウンタの操作の結果、両方のデータの車線変更カウンタのカウント値が5カウント未満(ステップS210でNo)であるため、ステップS212の処理を行う。
【0189】
物標検出部73は、両方のデータに対して縦距離が最小か否かを判定する(ステップS212)。時刻t5の処理の時点では先々行車データF3の縦距離が最小となるため(ステップS212でYes)、物標検出部73は、先々行車データF3の自車線ターゲットフラグの「オン」を保持する。
【0190】
これに対して先行車データF2は、時刻t5の処理の時点では縦距離が最小ではないため(ステップS212でNo)、物標検出部73は先行車データF2以外の他のデータの自車線ターゲットフラグが「オン」か否かを判定する(ステップS213)。この場合、上述のように先々行車データF3の自車線ターゲットフラグが「オン」となるため、物標検出部73は、他のデータの自車線フラグが「オン」であると判定し(ステップS213でYes)、先行車データF2の自車線ターゲットフラグを「オン」から「オフ」に切り替えて、自車線ターゲット判定の処理を終了する。
【0191】
このように先行車データF2と先々行車データF3との自車線ターゲットフラグが同じ物標検出処理のタイミングで切り替わる場合は、自車線ターゲット判定の処理で両方のデータの自車線ターゲットフラグが一時的に「オン」となる。そして、ステップS212およびS213の判定を経て、両方のデータのうち一方のデータの自車線ターゲットフラグが「オン」に保持され、他方のデータの自車線ターゲットフラグが「オン」から「オフ」に切り替えられる。
次に時刻t6では、先行車TA2が自車線内に移動したことで、物標検出部73は、先行車データF2を自車線内で検出する。先行車データF2(F2d)(▼)は操作条件(a)および(d)を満たすため、自車線カウンタのカウント値が1カウント増加する。そして物標検出部73は先行車データF2dの自車線カウンタのカウント値が60以上のため、自車線ターゲットフラグを「オフ」から「オン」に切り替える。つまり、上述の
図14で説明した自車線ターゲット判定により、物標検出部73は、先行車データF2dの自車線ターゲットフラグを「オフ」から「オン」に切り替える。そして、先々行車データF3(F3d)(◆)の自車線ターゲットフラグは「オン」から「オフ」に切り替えられる。
【0192】
ここで、物標検出部73が先行車データF2を本体データとし、先々行車データF3を候補データとする出力判定の処理(ステップS18)を行った場合、先々行車データF3は時刻t2から自車線内に検出され(ステップS301)、その他の車両確定の条件(ステップS302〜305)を満たすことで、車両確定フラグが「オン」の設定がなされる(ステップS306)。このように特定候補データF3の車両確定フラグが「オン」の場合、物標検出部73は、特定候補データF3が本体データF2と所定の関係を有しても、特定候補データF3の出力禁止フラグの「オフ」を保持する。これにより、候補データが車両の本体のフィルタデータの場合、レーダ装置1はこのフィルタデータをメモリ63から消去することなく、確実に車両制御装置2に出力できる。
【0193】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0194】
上記実施の形態では、物標検出部73が、過去処理から検出され連続性を所定回数(例えば、3回)以上有するフィルタデータに対して出力判定の処理が行うことについて説明した。これに対して物標検出部73は、フィルタデータ以外のデータ、例えば今回処理で検出されたペアデータに対して出力判定処理を行うようにしてもよい。
【0195】
また、上記実施の形態では、本体データ検索における所定の関係のパラメータとなる縦方向の距離(+20m)、横方向の距離(±2.5m)、および、相対速度(5km/h)や,本体データと特定候補データとの縦距離差(14m)等について具体的な数値を例示して説明した。これに対して、これらの数値は一例であり、他の値であってもよい。例えば、本体データと特定候補データとの縦距離差は14mよりも小さい値(例えば、5m)等であってもよい。これのため
図8に示した抽出領域SEは、予め任意の領域に設定が可能となる。
【0196】
また、上記実施の形態では、物標検出部73が不要物除去処理(ステップS19)で、出力禁止フラグが「オン」のフィルタデータをメモリ63から消去することについて説明した。これに対して、物標検出部73は、物標出力部74が物標情報出力の処理(ステップS21)を行うときに、出力禁止フラグ「オン」のフィルタデータをメモリ63から消去してもよい。物標検出部73が、結合処理(ステップS20)を行うときは、出力禁止フラグ「オン」のフィルタデータは結合対象とはならない。このように出力禁止フラグ「オン」のフィルタデータのメモリ63からの消去は、不要物除去処理以外のタイミングで行ってもよい。
【0197】
また上記実施の形態では、レーダ装置1の送信アンテナ40の本数は1本、受信アンテナ51の本数は4本として説明した。このようなレーダ装置1の送信アンテナ40および受信アンテナ51の本数は一例であり、複数の物標情報を検出できれば他の本数であってもよい。
【0198】
また上記実施の形態では、レーダ装置1の角度推定方式は、ESPRITを例に説明したが、ESPRIT以外に、DBF(Digital Beam Forming)、PRISM(Propagator method based on an Improved Spatial-smoothing Matrix)、および、MUSIC(Multiple Signal Classification)等の角度推定方式を用いてもよい。
【0199】
また上記実施の形態では、レーダ装置1は車両の前部(例えばフロントバンパー内)に設けられると説明した。これに対してレーダ装置1は、車両外部に送信波を出力できる箇所であれば、車両の後部(例えばリアバンパー)、左側部(例えば、左ドアミラー)、および、右側部(例えば、右ドアミラー)の少なくともいずれか1ヶ所に設けてもよい。
【0200】
また上記実施の形態では、送信アンテナからの出力は、電波、超音波、光、および、レーザ等の物標情報を検出できる方法であればいずれを用いてもよい。
【0201】
また上記実施の形態では、レーダ装置1は車両以外に用いられてもよい。例えばレーダ装置1は、航空機および船舶等に用いられてもよい。
【0202】
また上記実施の形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されると説明したが、これら機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また逆に、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。