【解決手段】画像形成装置は、印刷媒体に転写するトナー像が現像される像担持体と、像担持体に貼り付いた印刷媒体を像担持体から剥離する剥離爪を備え、剥離爪に力を加えて剥離爪を像担持体に常時当接させるとともに、剥離爪に加える力を変更して剥離爪と像担持体との当接圧力を変更する剥離機構と、剥離機構を制御して、トナー像の転写中に剥離爪と像担持体との当接圧力を変化させる制御部と、を備える。
印刷媒体に転写するトナー像が現像される像担持体に貼り付いた前記印刷媒体を前記像担持体から剥離する剥離爪に力を加えて前記剥離爪を前記像担持体に常時当接させるとともに、
前記トナー像の転写中に前記剥離爪に加える力を変更して前記剥離爪と前記像担持体との当接圧力を変化させる、
剥離方法。
印刷媒体に転写するトナー像が現像される定着ローラに貼り付いた前記印刷媒体を前記定着ローラから剥離する剥離爪に力を加えて前記剥離爪を前記定着ローラに常時当接させるとともに、
前記トナー像の転写中に前記剥離爪に加える力を変更して前記剥離爪と前記定着ローラとの当接圧力を変化させる、
剥離方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0009】
実施形態の画像形成装置は、複写機、プリンタ、FAX等の印刷機能を備えた装置である。画像形成装置1は、
図1に示すように、画像取得部100と、画像処理部200と、給紙部300と、印刷部400と、排紙部500と、制御部600と、を備える。
【0010】
画像取得部100は、外部から画像データを取得する装置である。画像取得部100は、例えば、紙媒体から画像を読み取るスキャナから構成される。画像取得部100は、画像データを取得すると、取得した画像データを画像処理部200に送信する。
【0011】
画像処理部200は、プロセッサ等の処理装置から構成される。画像処理部200は、画像取得部100から取得した画像データを、印刷部400で印刷処理可能なデータ形式に変換する。
【0012】
給紙部300は、給紙トレイや、給紙トレイから印刷媒体となるシートSを取り出すピックアップローラ等から構成される。給紙部300は、制御部600の制御に基づいて、シートSを印刷部400に供給する。
【0013】
印刷部400は、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像をシートSに転写する直接転写方式の印刷装置である。
図2は、印刷部400の構成の一例を示す図である。印刷部400は、
図2に示すように、感光体ドラム410と、帯電チャージャ420と、露光部430と、現像装置440と、給電ローラ450と、搬送ベルト460と、定着ローラ470と、クリーニング装置480と、剥離機構490と、を備える。
【0014】
感光体ドラム410は、周面にトナー像が現像される像担持体である。感光体ドラム410は、例えば、有機感光体(OPC:Organic Photoconductor)ドラムから構成される。感光体ドラム410は、給電ローラ450と従動ローラ452との間で懸架された搬送ベルト460とニップを形成する。感光体ドラム410は、駆動ローラ451の回転速度に合わせて回転する。
【0015】
帯電チャージャ420は、感光体ドラム410を帯電する帯電器である。帯電チャージャ420は、例えば、帯電ローラから構成される。帯電チャージャ420は、感光体ドラム410の周面に接して回転することで、感光体ドラム410の周面を一様に帯電する。
【0016】
露光部430は、感光体ドラム410の周面に静電潜像を形成する装置である。露光部430は、レーザー光若しくはLED(Light Emitting Diode)光を感光体ドラム410に向けて照射する照射装置から構成される。露光部430は、画像処理部200で処理された画像データに基づいて、帯電した感光体ドラム410の表面に向け、レーザー光若しくはLED光を照射する。露光部430が光を照射することにより、感光体ドラム410の周面には静電潜像が形成される。なお、以下の説明では、露光部430が光を照射する位置を露光照射位置P1と呼ぶ。
【0017】
現像装置440は、感光体ドラム410の周面にトナー像を形成する装置である。現像装置440は、例えば、マグローラーから構成される。現像装置440は、静電潜像が形成された感光体ドラム410の周面にトナーを供給する。これにより、静電潜像にトナーが吸着し、感光体ドラム410の周面にトナー像Tが形成される。
【0018】
給電ローラ450は、感光体ドラム410の周面のトナー像Tを印刷媒体となるシートSに転写するバイアスローラである。給電ローラ450は、例えば、導電ローラから構成される。給電ローラ450は、露光照射位置P1から、感光体ドラム410の周面に沿って、図面時計回りに距離L1ほど進んだ位置に配置されている。給電ローラ450には、不図示の電源装置によって、トナー像Tの帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。この逆極性の電圧により、感光体ドラム410の周面のトナー像TはシートSに転写される。
【0019】
搬送ベルト460は、トナー像Tが転写されたシートSを搬送するベルトである。搬送ベルト460は、例えば、無端ベルトから構成される。搬送ベルト460は、駆動ローラ451の回転力により回転し、シートSを定着ローラ470に向けて搬送する。
【0020】
定着ローラ470は、シートSに転写されたトナー像TをシートSに定着させるローラである。定着ローラ470は、シートSに熱を加えるヒートローラ471と、シートSに圧力を加えるプレシャーローラ472とから構成される。シートSに転写されたトナー像Tは、ヒートローラ471及びプレシャーローラ472から加えられる熱と圧力でシートSに固着される。
【0021】
クリーニング装置480は、感光体ドラム410の周面をクリーニングする装置である。クリーニング装置480は、例えば、残留トナーを掃き落とすワイパーブレードから構成される。クリーニング装置480は、シートSに転写されずに感光体ドラム410の周面に残った残留トナーを、感光体ドラム410の周面から除去する。なお、以下の説明では、残留トナーには、トナー像Tと同様に、Tの符号を付す。
【0022】
剥離機構490は、感光体ドラム410に貼り付いたシートSを感光体ドラム410から剥離する機構である。通常、シートSは、
図3に示すように、感光体ドラム410の周面に貼り付くことなく、搬送ベルト460に沿って搬送される。しかし、まれに、シートSは、
図4に示すように、感光体ドラム410の周面に貼り付くことがある。このまま、感光体ドラム410が回転し続けると、画像形成装置1にはJAMが発生する。そのため、画像形成装置1には、例えば
図5に示すような、シートSを感光体ドラム410から剥離する剥離機構が設けられる。なお、剥離機構の構成は、
図5に示した構成に限定されず、様々な変形が可能である。
【0023】
図5は、剥離機構490の構成の一例を示す図である。剥離機構490は、
図5に示すように、ソレノイド491と、ギア492a〜492cと、シャフト493と、爪保持機構494と、ワンウェイクラッチ495と、カム496と、板状体497と、バネ498と、連結具499と、から構成される。
【0024】
ソレノイド491は、電気エネルギーを機械運動に変換する装置である。ソレノイド491は、例えば、筒状コイルと、筒状コイルに挿入されたプランジャ(鉄心)と、から構成される。プランジャは、プランジャの軸方向に沿って、往復動可能に構成されている。ソレノイド491は、制御部600の制御に基づいて、コイルに電流を流してプランジャを往復動させる。なお、以下の説明では、プランジャが筒状コイルに挿し込まれた状態を「ON状態」、プランジャが筒状コイルから突出した状態を「OFF状態」と呼ぶ。
【0025】
ギア492a〜492cは、ソレノイド491の動力を他の部品に伝達するギアである。ギア492a、及びギア492bは、ソレノイド491の動力をシャフト493に伝達し、ギア492cは、ワンウェイクラッチ495を介して伝達されるソレノイド491の動力をカム496に伝達する。
【0026】
シャフト493は、例えば
図6に示すような、断面が歯車状のスプラインシャフトである。シャフト493は、感光体ドラム410の軸と平行に、感光体ドラム410の周面から一定距離離れた場所に設置されている。シャフト493の一端には、
図5に示すように、ギア492bと噛み合わされた傘歯車が固定されている。シャフト493は、傘歯車に伝達されたソレノイド491の動力により一定角度回転する。より具体的には、シャフト493は、ソレノイド491がOFF状態からON状態に変化すると、
図6に示すように、ホームポジションHから角度r1ほど図面反時計周りに回転する。また、シャフト493は、ソレノイド491がON状態からOFF状態に変化すると、
図7に示すように、ホームポジションHに向けて角度r1ほど図面時計周りに回転する。「ホームポジションH」は、ソレノイド491がOFF状態のときのシャフト493の回転位置である。シャフト493には、
図5に示すように、複数の爪保持機構494が設置されている。
【0027】
爪保持機構494は、剥離爪494bを保持する機構である。爪保持機構494は、
図8に示すように、ベース494aと、剥離爪494bと、ブラケット494cと、バネ494dと、を備える。
【0028】
ベース494aは、剥離爪494bとブラケット494cとが設置される基体である。ベース494aは円筒形状をしており、その内面は、
図7に示すように、シャフト493と嵌合可能な形状に加工されている。ベース494aは、空洞部分にシャフト493を挿通した状態で、シャフト493に固定されている。ベース494aは、シャフト493に沿って滑動可能になっている。
【0029】
剥離爪494bは、感光体ドラム410の周面からシートSを剥離させる爪である。剥離爪494bは、
図9に示すように、後部に円筒部分(
図9に示す(a))を有している。円筒部分は、
図7に示すように、ベース494aに回動可能に固定されている。円筒部分には、細長い爪が固定されている。この爪の先端部が、感光体ドラム410の周面に当接する部分である。
【0030】
爪の先端部は、
図9に示す(b)のように、三角形に尖った形状をしている。また、先端部の一方の表面(感光体ドラム410と非対向となる表面)は、V字船底状に凸面となっている。これは、先端部に残留トナーTが堆積しないようにするための構成である。仮に、剥離爪494bの先端部が、例えば
図10に示す(a)のように、半円の平板状であったとすると、残留トナーTは、
図11に示す(a)のように、剥離爪494bの先端部に堆積する。印刷の繰り返しにより、先端部に堆積する残留トナーTは重量を増し、最終的に印刷中のシートSに落下する。落下した残留トナーTは、後段の定着ローラ470で定着され、印刷画像に汚れを発生させる。しかし、本実施形態の剥離爪494bの先端部は、
図9に示すように、尖った形状をしているため、残留トナーを拾い難くなっている。しかも、剥離爪494bの先端部は、V字船底状となっているため、例え先端部が残留トナーを拾ったとしても、残留トナーが先端部に堆積することはほとんどない。先端部がこのような形状となっていることにより、残留トナーTは、
図12に示すように、剥離爪494bの先端部を回避するように進み、結果として、剥離爪494bの先端部には残留トナーがあまり堆積しない。なお、
図11及び
図12は、いずれも、剥離爪494bを画像形成装置1の底面側から見た図である。
【0031】
上述したように、剥離爪494bの先端部は尖っている。先端部の曲率半径は、例えば1.0mm以下、望ましくは0.05mmである。剥離爪494bは、感光体ドラム410の周面を傷つけ難くするため、SUS(ステンレス)等の金属ではなく、PAI(ポリアミドイミド)樹脂等の樹脂で構成されている。そのため、剥離爪494bは、先端部が尖っていたとしても、感光体ドラム410の周面にほとんど傷を付けない。
【0032】
剥離爪494bの先端部は、
図7に示すように、感光体ドラム410の周面に当接している。先端部の当接位置P2は、
図2に示すように、給電ローラ450の後、かつ、クリーニング装置480の手前である。「給電ローラ450の後」とは、給電ローラ450から、感光体ドラム410の周面に沿って、感光体ドラム410の回転方向側に進んだ位置のことであり、また、「クリーニング装置480の手前」とは、クリーニング装置480から、感光体ドラム410の周面に沿って、感光体ドラム410の回転方向とは反対方向側に進んだ位置のことである。剥離爪494bをこの位置に配置することにより、シートSは、クリーニング装置480に到達する前に、感光体ドラム410から剥離される。この結果、シートSがクリーニング装置に詰まることはない。なお、クリーニング装置480の手前に他の装置が設置されている場合は、剥離爪494bの先端部の当接位置P2はその装置の手前となる。以下の説明では、剥離爪494bの先端部の当接位置P2は、給電ローラ450から感光体ドラム410の回転方向にL2ほど進んだ位置であるものとする。
【0033】
図8に戻り、ブラケット494cは、バネ494dに引張力を加える支持具である。ブラケット494cは、剥離爪494bとは異なり、ベース494aに固着されている。そのため、ブラケット494cは、ベース494a上では回動せず、シャフト493の回転に伴ってベース494aとともに回転する。ブラケット494cは、
図7に示すように、バネ494dで剥離爪494bと連結されている。シャフト493がホームポジションHにあるとき、及び、シャフト493がホームポジションHから角度r1ほど回転した回転位置にあるとき、いずれの場合もバネ494dは伸長した状態となっている。そのため、剥離爪494bの先端部は、感光体ドラム410の周面に、常時、当接した状態となっている。なお、以下の説明では、シャフト493がホームポジションHにあるときのブラケット494cの回転位置を、シャフト493の場合と同様に「ホームポジションH」と呼ぶ。
【0034】
バネ494dに加わる引張力は、ブラケット494cの回転により変化する。ブラケット494cが、
図7に示すように、ホームポジションHにあるとき、バネ494dはブラケット494cによって軽く引き伸ばされる。この結果、剥離爪494bの先端部は、バネ494dの引張力によって、感光体ドラム410の周面に軽く押しつけられる。また、ブラケット494cが、
図6に示すように、ホームポジションHから図面反時計回りに角度r1ほど回転した位置にあるとき、バネ494dはブラケット494cによって強く引き伸ばされる。この結果、剥離爪494bの先端部は、バネ494dの引張力によって、感光体ドラム410の周面に強く押しつけられる。なお、以下の説明では、ブラケット494cがホームポジションHにあるときの剥離爪494bと感光体ドラム410との当接圧力を「当接圧力F2」、ブラケット494cがホームポジションHから図面反時計回りに角度r1ほど回転した回転位置にあるときの剥離爪494bと感光体ドラム410との当接圧力を「当接圧力F1」と呼ぶ。当接圧力F1は、当接圧力F2よりも大きな圧力である。
【0035】
バネ494dは、ブラケット494cと剥離爪494bとを連結するバネである。バネ494dのバネ定数は、剥離爪494bと感光体ドラム410との当接圧力があらかじめ決められた範囲の圧力となるような値となっている。剥離爪494bと感光体ドラム410との当接圧力が大きいと、感光体ドラム410の周面に傷がつき、一方、剥離爪494bと感光体ドラム410との当接圧力が小さいと、剥離爪494bに感光体当接不良やバウンディングが発生するためである。なお、「感光体当接不良」とは、剥離爪494bの先端部が感光体ドラム410の周面に当接しない現象のことである。また、「バウンディング」とは、剥離爪494b先端部が短い周期で感光体ドラム410へ接触と離間を繰り返す現象のことである。
【0036】
発明者は、本実施形態の剥離機構490と同様の機能を有する剥離機構を作成し、印刷装置に実装した。そして、発明者は、この印刷装置を使用して最適なバネ定数を求めた。印刷装置は、410mm/secのプロセス速度で85CPMの印字速度を持つ。剥離爪は、先端部が鋭利(曲率半径0.05)なPAI樹脂から構成される。発明者は、この印刷装置に20lbのLT紙を100000枚通紙させ、シートの剥離爪JAM発生の有無、及び画像汚れの発生有無を確認した。その後、発明者は、感光体ドラムの感光層の膜削れ量を膜厚計やレーザー顕微鏡で測定した。さらに、発明者は、印刷されたハーフトーン画像を確認した。その結果、当接圧力F1が0.005Nを超えると、剥離爪が感光層の膜を削ることによって、感光体ドラムの感光層に0.27μm以上の段差が生じることが分かった。ハーフトーン画像にも、シートの搬送方向に沿って白帯が発生することが分かった。また、当接圧力F2が0.002N以下になると、感光体ドラムと剥離爪との間に用紙が入り込み、剥離爪JAMが発生する場合があることが分かった。この結果、当接圧力F1は、0.002〜0.005Nの範囲が良好であることが分かった。また、印刷動作をファイバースコープで録画記録して再生映像で確認した結果、当接圧力F2を0.001N以上とすることで、感光体当接不良やバウンディングが発生しないことが分かった。
【0037】
この実験結果に基づき、本実施形態では、当接圧力F1が0.002以上0.005N以下、当接圧力F2が0.001N以上当接圧力F1未満となるように、バネ494dのバネ定数を設定する。なお、機器のバラつきを考慮した場合、当接圧力F1が0.002以上0.004N以下、当接圧力F2が0.001N以上0.0022以下となるバネ定数がより望ましい。
図13は、当接圧力F1と当接圧力F2の関係を複数のバネ定数のバネを使用して測定した結果である。爪先端部に紐状のものを垂らし、紐に錘を加えていき、感光体ローラから爪先端が離間する直前の錘の重量を当接圧力として取得した。
【0038】
図5に戻り、ワンウェイクラッチ495は、一方向にのみ回転力を伝達するクラッチである。ワンウェイクラッチ495は、ソレノイド491とギア492cとの間に設置されている。ギア492cは、カム496と接続されている。ワンウェイクラッチ495は、ソレノイド491がOFF状態からON状態に切り替わった時に、若しくは、ソレノイド491がON状態からOFF状態に切り替わった時に、カム496を角度r2ほど回転させる。
【0039】
カム496は、回転運動を往復運動に変換する剛体である。カム496は、例えば、卵型の円板カムから構成される。カム496は、ギア492cと板状体497との間に設置されている。カム496は、ソレノイド491の動力によって一方向にのみ回転し、バネ498とともに、板状体497を往復動させる。
【0040】
板状体497は、爪保持機構494をシャフト493の軸方向に沿って往復動させる細長の板である。板状体497は、ソレノイド491、ワンウェイクラッチ495、ギア492c、カム496とともに、画像形成装置1の摺動機構として機能する。摺動機構は、剥離爪494bをシャフト493の軸方向に沿って少しずつ移動させ、剥離爪494bと感光体ドラム410との接触場所が1か所に集中するのを防ぐ機構である。板状体497はソレノイド491の1回のON/OFF動作で、シートSの搬送方向とは直角の方向に僅かに移動する。例えば、板状体497は、ソレノイド491の15回のON/OFF動作で、8mm幅を一往復する。板状体497には、3つの爪保持機構494が連結具499を介して固定されている。ソレノイド491がON/OFF動作をすると、板状体497は爪保持機構494をシャフト493の軸方向に沿って僅かに移動させる。なお、摺動機構の構成は、
図5に示した構成に限定されず、様々な変形が可能である。
【0041】
図1に戻り、排紙部500は、シートSを外部に排出する装置である。排紙部500は、トナー像が定着したシートSを不図示の排出口から画像形成装置1の外部に排出する。
【0042】
制御部600は、プロセッサ等の処理装置から構成される。制御部600は不図示のROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)に格納されているプログラムに従って動作することで、画像形成装置1の各部を制御する。
【0043】
次に、このような構成を有する画像形成装置1の動作について説明する。
【0044】
制御部600は、不図示のユーザインタフェースを介して、ユーザから印刷開始命令を受け取ると、印刷処理を開始する。以下、
図14のフローチャートを参照して印刷処理について説明する。
【0045】
制御部600は、画像取得部100が1ページ分の画像データの取得を完了したか判別する(ステップS101)。1ページ分の画像データの取得が完了していない場合(ステップS101:No)、制御部600は、画像取得部100が1ページ分の画像データの取得を完了するまでステップS101を繰り返す。1ページ分の画像データの取得が完了している場合(ステップS101:Yes)、制御部600は、ステップS102に進む。
【0046】
制御部600は、1ページ分の画像データをシートSに印刷するための印刷動作を開始する(ステップS102)。具体的には、制御部600は、以下の処理を実行する。
【0047】
まず、制御部600は、画像処理部200を制御して、画像データを印刷部400で印刷処理可能なデータ形式に変換する。そして、制御部600は、不図示のモータを制御して感光体ドラム410を回転させる。さらに、制御部600は、帯電チャージャ420を制御して感光体ドラム410の周面を一様に帯電する。その後、制御部600は、画像データに基づき露光部430を制御し、感光体ドラム410の周面に静電潜像を形成する。さらに、制御部600は、現像装置440を制御して感光体ドラム410の周面にトナー像を形成する。そして、制御部600は、給紙部300からピックアップしたシートSを感光体ドラム410と給電ローラ450との間に搬送する。このとき、制御部600は、例えば
図2に示すように、トナー像Tの先頭FとシートSの搬送方向側端部とが一致するように、シートSを感光体ドラム410と給電ローラ450との間に送り出す。そして、制御部600は、給電ローラ450に電圧を印可し、感光体ドラム410の周面のトナー像TをシートSに転写する。
【0048】
なお、制御部600が印刷動作を開始したとき、ソレノイド491はOFF状態となっている。そのため、制御部600が印刷動作を開始したとき、シャフト493及びブラケット494cは、
図7に示すように、ホームポジションHに位置している。このため、制御部600が印刷動作を開始したとき、剥離爪494bの先端部は当接圧力F2で感光体ドラム410の周面と接している。当接圧力F2は、当接圧力F1より小さな圧力である。
【0049】
図14に戻り、制御部600は、シートSの搬送方向側端部が当接位置P2を通過すると予想されるタイミングに合わせて、剥離爪494bの先端部と感光体ドラム410の周面との当接圧力を当接圧力F2から当接圧力F1に変更する。当接位置P2は、剥離爪494bの先端部と感光体ドラム410の周面とが当接する位置である(ステップS103)。具体的には、制御部600は、
図15に示すように、トナー像T(若しくは残留トナーT)の先頭Fが当接位置P2の一定距離手前(
図15に示すPa)に達したとき、ソレノイド491をOFF状態からON状態に変更する。これにより、ブラケット494cがホームポジションHから図面反時計回りに角度r1ほど回転し、剥離爪494bの先端部と感光体ドラム410の周面との当接圧力が当接圧力F2から当接圧力F1に変化する。
【0050】
なお、先頭Fが当接位置P2を通過するタイミングは、露光部430の露光開始時刻、露光照射位置P1から当接位置P2までの距離、及び感光体ドラム410の回転速度に基づき算出される。具体的には、先頭Fが当接位置P2を通過するタイミングt1は、下記式(1)により算出される。
【0051】
t1=t0+(L1+L2)/s ・・・・・(1)
【0052】
上記式(1)において、t0は露光部430の露光開始時刻、L1+L2は
図2に示すように露光照射位置P1から当接位置P2までの距離、sは感光体ドラム410の回転速度である。
【0053】
制御部600は、上記式(1)に基づきタイミングt1を算出し、その後、タイミングt1に基づきタイミングtaを算出する。タイミングタイミングtaは、先頭Fが
図15に示す位置Paを通過するタイミングである。このとき、制御部600は、タイミングt1から予め設定された時間だけ減算した時刻をタイミングタイミングtaとしてもよい。
【0054】
図14に戻り、制御部600は、先頭Fが当接位置P2から一定距離進んだ位置(
図16に示すPb)に達したとき、ソレノイド491をON状態からOFF状態に変更し、剥離爪494bの先端部と感光体ドラム410の周面との当接圧力をF1からF2に変更する(ステップS104)。先頭Fが位置Pbを通過するタイミングtbは、タイミングt1に基づき算出する。例えば、制御部600は、上記式(1)で算出したタイミングt1に予め設定された時間を加算した時刻を、タイミングtbとして算出する。その後、制御部600は、新たに先頭Fが位置Paに達するまで、剥離爪494bの先端部と感光体ドラム410の周面との当接圧力を、
図17に示すように、当接圧力F2のまま維持する。
【0055】
図18は、制御部600がソレノイド491の状態を切り替えるタイミングを示したタイミングチャートである。
図18に示すt2は、トナー像Tの末尾Bが当接位置P2を通過するタイミングである。
図18に示すように、ソレノイド491がON状態の期間は、ソレノイド491がOFF状態の期間より短くなっている。すなわち、剥離爪494bの先端部と感光体ドラム410の周面との当接圧力が当接圧力F1の期間は、剥離爪494bの先端部と感光体ドラム410の周面との当接圧力が当接圧力F2の期間より短くなっている。剥離爪494bの先端部から感光体ドラム410の周面に加わる力を可能な限り小さくするため、当接圧力F1の期間は可能な限り短い方が望ましい。本実施形態の場合、ソレノイド491がON状態の期間、すなわち、タイミングtaからタイミングtbまでの期間は265msである。より具体的には、タイミングtaからt1までの期間が、250msであり、タイミングt1からtbまでの期間が15msである。これらの期間は、機器の構成に合わせて適宜変更可能である。
【0056】
なお、ソレノイド491は、ワンウェイクラッチ495、ギア492c、カム496を介して、板状体497と接続されている。制御部600がソレノイド491をON状態からOFF状態にすると、板状体497は、剥離爪494bをシャフト493の軸方向に沿って僅かに移動させる。板状体497が剥離爪494bを移動させるタイミングは、制御部600がソレノイド491をOFF状態からON状態にしたタイミングであってもよい。
【0057】
図14に戻り、制御部600は、全てのページの印刷が完了したか判別する(ステップS105)。全てのページの印刷が完了していない場合(ステップS105:No)、制御部600は、ステップS101に戻り、全てのページの印刷が完了するまで、ステップS101からステップS105の処理を繰り返す。全てのページの印刷が完了した場合(ステップS105:Yes)、制御部600は、印刷処理を終了する。
【0058】
本実施形態によれば、剥離爪494bが、感光体ドラム410の周面に、常時、当接しているので、剥離爪494bの先端部が尖っていたとしても、当接時の衝撃で剥離爪494bの先端部が感光体ドラム410の周面に突き刺さることがない。その結果、感光体ドラム410の周面にはあまり傷が付かない。また、当接時の衝撃で剥離爪494bの先端部が感光体ドラム410の周面に突き刺さることがないので、剥離爪494bの先端部を半円状にする必要はない。剥離爪494bの先端部を尖らせることができる。
【0059】
また、剥離爪494bの先端部は尖っているので、残留トナーは剥離爪494bの先端部にあまり堆積しない。その結果、画像形成装置1は、剥離爪494bの先端部から落下するトナーで印刷画像を汚すことが少ない。しかも、剥離爪494bは、常時、感光体ドラム410の周面に当接しており、少なくとも、トナー像転写中は感光体ドラム410から離間することはない。そのため、通常の印刷装置のように剥離爪が離間する際の衝撃で残留トナーがシートSに落下することがない。
【0060】
また、制御部600は、シートSの搬送方向側端部が当接位置P2を通過すると予想される期間のみ、剥離爪494bの先端部と感光体ドラム410の周面との当接圧力を強くしている。その他の期間では、制御部600は、当接圧力を弱くしている。そのため、剥離爪494bは、感光体ドラム410の周面をあまり摩耗させない。
【0061】
当接圧力を、常時、弱い圧力とした場合、
図19に示すように、シートSが剥離爪494bで剥離されない恐れがある。しかし、制御部600は、シートSの搬送方向側端部が当接位置P2を通過するタイミングに合わせて剥離爪494bの当接圧力を強くしているので、シートSが剥離されないという事態はあまり発生しない。
【0062】
剥離爪が感光体ドラムから離間する一般的な印刷装置の場合、剥離爪が感光体ドラムに当接した時に、剥離爪の安定のために、しばらく待つ必要がある。感光体ドラムに剥離爪が当接した時に、剥離爪が感光体ドラムの周面でバウンドするためである。しかし、本実施形態では、剥離爪494bが感光体ドラム410の周面に常時当接しているので、当接圧力を強い圧力に変更したとしても、剥離爪494bはバウンドしない。そのため、制御部600は、剥離爪494bの安定を待つ必要がないので、当接圧力を強くしている期間を短くすることができる。その結果、感光体ドラム410の周面はあまり摩耗しない。
【0063】
また、剥離爪が感光体ドラムから離間する一般的な印刷装置の場合、剥離爪と感光体ドラムとの当接不良が起きやすく、JAMが発生する場合があった。しかし、本実施形態の剥離爪494bは、常時当接しているのでJAMが起き難い。
【0064】
また、剥離爪494bは、ソレノイド491のON/OFF動作でシャフト493の軸方向に沿って僅かに移動するよう構成されているので、剥離爪494bと感光体ドラム410との接触場所が1か所に集中することがない。その結果、剥離爪494bは、感光体ドラム410の周面をあまり摩耗させない。
【0065】
剥離爪494bを重りの力で感光体ドラム410の周面に当接させた場合、印刷動作中に剥離爪494bがバウンディングを起こすことがある。しかし、剥離爪494bは、重りの力ではなく、バネ494dの力で感光体ドラム410の周面に当接しているので、仮に印刷動作中に剥離爪494bに衝撃が加わったとしても、バネ494dに衝撃が吸収されて、剥離爪494bはバウンディングを起こし難い。そのため、剥離爪494bの先端部が、バウンディングで感光体ドラム410の周面に強く衝突することがなくなるので、感光体ドラム410の周面にあまり傷は付かない。
【0066】
なお、上述の実施形態は一例であり、種々の変更及び応用が可能である。
【0067】
例えば、上述の実施形態では、画像取得部100は、スキャナであるものとして説明したが、画像取得部100は、スキャナに限定されない。画像取得部100は、外部機器から画像情報を取得する通信インタフェースであってもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、印刷部400は、直接転写方式の印刷装置であるものとして説明したが、印刷部400は、間接転写方式の印刷装置であってもよい。このとき、印刷部400は、例えば
図20に示すようなタンデム方式の印刷装置であってもよい。この場合、印刷部400は、像担持体として中間転写ベルト411を備えていてもよい。中間転写ベルト411は、感光体ドラム410から各色のトナー像が転写される中間転写媒体である。そして、剥離機構490は、感光体ドラム410に加えて、例えば
図20に示すように、中間転写ベルト411に設置されていてもよい。この場合、上述の実施形態と同様に、制御部600は、シートSの搬送方向側端部が当接位置P2を通過するタイミングに合わせて、剥離爪494bの先端部と中間転写ベルト411との当接圧力が当接圧力F1となるように剥離機構490を制御してもよい。当接位置P2は、剥離爪494bの先端部と中間転写ベルト411とが当接する位置である。さらに、制御部600は、シートSの搬送方向側端部が当接位置P2を通過してから予め設定された時間が経過した場合に、剥離爪494bと中間転写ベルト411との当接圧力が当接圧力F2となるように剥離機構490を制御してもよい。中間転写ベルト411にシートSが貼り付いた場合に、シートSを中間転写ベルト411から剥離することができる。しかも、中間転写ベルト411にあまり傷が付くことはない。
【0069】
また、上述の実施形態では、剥離機構490は感光体ドラム410に設置されるものとして説明したが、剥離機構490は定着ローラ470に設置されてもよい。この場合、剥離機構490は、
図21に示すように、ヒートローラ471及びプレシャーローラ472の双方に設置されていてもよいし、ヒートローラ471及びプレシャーローラ472のいずれか一方に設置されていてもよい。この場合、上述の実施形態と同様に、制御部600は、シートSの搬送方向側端部が当接位置P2を通過するタイミングに合わせて、剥離爪494bの先端部と定着ローラ470との当接圧力が当接圧力F1となるように剥離機構490を制御してもよい。当接位置P2は、剥離爪494bの先端部と定着ローラ470とが当接している位置である。さらに、制御部600は、シートSの搬送方向側端部が当接位置P2を通過してから予め設定された時間が経過した場合に、剥離爪494bと中間転写ベルト411との当接圧力が当接圧力F2となるように剥離機構490を制御してもよい。定着ローラ470にシートSが貼り付いた場合に、シートSを定着ローラ470から剥離することができる。しかも、定着ローラ470にあまり傷が付くことはない。
【0070】
なお、定着ローラ470は、必ずしも、ヒートローラ471及びプレシャーローラ472の双方を備えていなくてもよい。定着ローラ470は、ヒートローラ471及びプレシャーローラ472のいずれか一方から構成されていてもよい。ヒートローラ471は、シートSに熱を加える機能に加えて、シートSに圧力を加える機能を有していてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、剥離爪494bの先端部の一方の表面は、
図9に示すように、V字船底状に凸面となっていたが、先端部の表面は凸面でなくてもよい。剥離爪494bの先端部は、単純に尖っているだけでもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、剥離機構490は、剥離爪494bの当接圧力をF1とF2に変更可能に構成されていたが、剥離爪494bの当接圧力はF1とF2の2つに限定されない。当接圧力は3つ以上であってもよい。また、剥離機構490は、剥離爪494bの当接圧力をF1からF2までリニアに変更するよう構成されていてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、画像形成装置1が摺動機構を備えるものとして説明したが、画像形成装置1が摺動機構を備えていなくてもよい。また、上述の実施形態では、摺動機構は剥離機構490に含まれるものとして説明したが、摺動機構は剥離機構490に含まれていなくてもよい。摺動機構は剥離機構490から独立した機構であってもよい。
【0074】
また、画像形成装置1が印刷対象とする印刷媒体は用紙に限定されない。例えば、印刷媒体は、箱、包装紙、ハガキ、帳票、書籍等であってもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、画像形成装置1は、複写機、プリンタ、FAXであるものとして説明したが、画像形成装置1はこれらの電気機器に限定されない。例えば、画像形成装置1は、新聞、雑誌、広告等を大量印刷する業務用の印刷装置であってもよい。
【0076】
本実施形態に係る画像形成装置1を制御する制御部600は、通常のコンピュータシステムにより実現してもよい。例えば、上述の動作を実行するためのプログラムを、光ディスク、半導体メモリ、磁気テープ、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、該プログラムをコンピュータにインストールして、上述の処理を実行することによって制御部600を構成してもよい。また、上記プログラムをインターネット等のネットワーク上のサーバ装置が備えるディスク装置に格納しておき、コンピュータにダウンロード等できるようにしてもよい。また、上述の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションソフトとの協働により実現してもよい。この場合には、OS以外の部分を媒体に格納して配布してもよいし、OS以外の部分をサーバ装置に格納しておき、コンピュータにダウンロード等できるようにしてもよい。
【0077】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。