【解決手段】実施形態に係る画像形成装置は、帯電によって低温トナーによる像を形成する像担持体と、この像担持体とニップを形成する転写部と、像担持体へ記録媒体を搬送する搬送部と、を有する。画像形成装置の出荷時に、像担持体と転写部とを離間させる着脱可能なスペーサーを取り付ける。
上記転写部は、上記像担持体の像担持面とニップを形成するローラ部分と、このローラ部分と同軸に設けられ上記像担持体の上記像担持面から外れた部位に当接する当接ローラと、を備え、
上記スペーサーは、上記当接ローラに着脱可能に取り付けられ、上記像担持体と上記当接ローラとの間に介在する、
請求項1の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。
図1は、画像形成装置の一実施形態であるMFP(Multi Function Peripheral)10を示す概略図である。MFP10は、プリンタ部11、スキャナ部12、給紙部13、排紙部22を備える。給紙部13と排紙部22との間には、後述する搬送ユニット40(ADU)(搬送部)が設けられている。また、MFP10は、MFP10全体を制御するCPU100を備える。
【0009】
給紙部13は、第1および第2の給紙カセット13a、13bを備える。第1および第2の給紙カセット13a、13bは、それぞれ給紙ローラ15a、15bを有する。給紙カセット13a、13bは、未使用の用紙およびリユースの用紙を共に給紙可能である。
【0010】
プリンタ部11は、矢印m方向に回転する感光体ドラム14(像担持体)、感光体ドラム14の表面14a(像担持面)を一様に帯電する帯電器16、および、スキャナ部12からの画像データ等に基づいたレーザ光17aを、帯電された感光体ドラム14に照射して、感光体ドラム14の表面上に静電潜像を形成するレーザ露光器17を備える。
【0011】
また、プリンタ部11は、感光体ドラム14上の静電潜像にトナーを供給する現像器18、感光体ドラム14上に形成されたトナー像を記録媒体である用紙Pに転写する転写ローラ20(転写部)、およびクリーナ21を備える。
【0012】
現像器18は、トナーと磁性キャリアの混合物である二成分現像剤を用いて感光体ドラム14上の静電潜像にトナーを供給する。トナーは、50℃前後の比較的低温で定着する低温トナーである。
【0013】
プリンタ部11は、感光体ドラム14から排紙部22に達する経路の途中に、定着装置31を備える。定着装置31は、用紙P上に転写されたトナー像を加熱溶融して定着させる。また、MFP10は、給紙部13から感光体ドラム14、定着装置31を経て排紙部22に用紙Pを搬送する搬送路27を備える。
【0014】
搬送路27上には、複数の搬送ローラ28、レジストローラ対30、および排紙ローラ32が設けられている。排紙ローラ32の上流側には反転ローラ33が設けられている。
【0015】
レジストローラ対30は、感光体ドラム14上のトナー像に同期して、感光体ドラム14および転写ローラ20間に用紙Pを搬送する。排紙ローラ32は、定着後に用紙Pを排紙部22に排出する。反転ローラ33は、用紙Pの搬送方向を逆転して表裏反転し、反転パス34を介して用紙Pをレジストローラ対30の手前まで戻す。
【0016】
上記の構成によってMFP10は、給紙部13から給紙された用紙Pに、プリンタ部11によって形成されたトナー画像を転写する。MFP10は、トナー画像を有する用紙Pを定着装置31で定着し、排紙部22に排紙する。プリンタ部のプリント方式は、電子写真方式に限定されず、インクジェット方式等であっても良い。
【0017】
図2は、搬送ユニット40を開いた状態の斜視図である。搬送ユニット40は、MFP10の側面カバーを兼ねている。搬送ユニット40を図示のように開くと、搬送路27の一側が露出する。搬送ユニット40は、転写ローラ20や反転パス34などを含む。
【0018】
低温トナーは、50℃前後の温度で用紙Pに定着する。例えば、低温トナーは、その定着温度(50℃前後)より高い温度の熱を加えることで色が消える特殊な色材を含んでも良い。
【0019】
一方、MFP10は、出荷前に通紙試験を実施する。通紙試験は、両面プリントを含む。両面プリントでは、1面に画像形成した用紙Pを反転ローラ33で反転して再給紙し、裏面にテスト画像を形成する。この場合、画像を形成した後の用紙Pの1面が転写ローラ20に接触する。このため、通紙試験後には、転写ローラ20の表面にトナーが僅かに残留する。
【0020】
また、通紙試験では、例えば、手差しトレイなどから用紙Pを給紙する場合、図示しない操作パネル(サイズ指定部)から用紙Pのサイズを「ノンサイズ(用紙サイズの指定なし)」を指定して試験を行う。「ノンサイズ(用紙サイズの指定なし)」では実際に給紙される用紙Pのサイズに関わらず、A3サイズの用紙Pに合わせて感光体ドラム14を帯電させ、テスト画像を形成する。実際に給紙する用紙PのサイズがA3より小さい場合、当該用紙のサイズを超える領域で感光体ドラム14が転写ローラ20に対向し、この対向した領域で、感光体ドラム14に付着したトナーが転写ローラ20に移る。
【0021】
操作パネルから指定した用紙のサイズと実際に給紙する用紙Pのサイズが同じであっても、感光体ドラム14の帯電領域は当該サイズより大きく形成される。そして、帯電領域はトナーを引き寄せてしまうため、用紙サイズよりも外側の帯電領域にもトナーが付着してしまう。このため、感光体ドラム14で形成したテスト画像を用紙Pに転写する際、用紙Pよりも外側に付着しているトナーが転写ローラ20の表面に付着してしまう。このため、通紙試験後には、転写ローラ20の表面にトナーが付着した状態となる。
【0022】
通常使用時には、MFP10に通電することで、感光体ドラム14の表面を定期的にクリーニングする。このため、転写ローラ20に僅かに残ったトナーは、感光体ドラム14に移動してクリーニングされる。
【0023】
しかし、出荷時には、感光体ドラム14を定期的にクリーニングする環境にない。このため、例えば、船積みによりMFP10を長期間輸送する場合など、テストプリントによって転写ローラ20に残った低温トナーが定着温度より高い温度に晒されると、低温トナーが感光体ドラム14に固着してしまう可能性がある。
【0024】
このような不具合は、転写ベルトや二次転写ベルトを用いたカラー画像形成装置においても同様に起こり得る。例えば、転写ベルトを用いてカラー画像を形成する場合、感光体ドラムに形成した単色のトナー像を転写ベルトに重ねて転写する。この場合、転写ベルト上の画像形成領域の外側にもトナーが僅かに付着する。
【0025】
このような不具合を防止するため、本実施形態では、MFP10の出荷時に、転写ローラ20と感光体ドラム14を互いに離間させるためのスペーサー1を取り付けるようにした。スペーサー1は、MFP10に対して容易に着脱可能な構造を有する。
【0026】
図3は、スペーサー1の斜視図であり、
図4は、
図3のスペーサー1を裏面側から見た斜視図である。また、
図5は、スペーサー1の展開図である。本実施形態のスペーサー1は、1枚の板紙を形状加工して折り曲げた構造を有する。ここで言う板紙とは、コピー紙などと比較して厚くて硬い紙であり、例えば0.5mmの厚みを有するものである。
【0027】
スペーサー1は、板紙を
図5に示す形状に切り取り、この板紙2を、複数本の破線L1に沿って谷折りするとともに、2本の破線L2に沿って山折りすることで組み立てられる。板紙2は、略矩形の本体部分2aと2本の帯状部分2b、2bを含む。各帯状部分2b、2bは、本体部分2aから離れる方向に左右対称に延びており、それぞれ、破線L1で本体部分2aとつながっている。
【0028】
本体部分2aは、その長手方向両端辺(帯状部分2bがつながっていない辺)から僅かに突出した2つの係合片3、3を有する。また、本体部分2aは、それぞれ、破線L1に重なる位置に、4本のスリットS1、S2、S3、S4を有する。スリットS1〜S4は、破線L1の位置での本体部分2aの折り曲げを容易にするために設けられている。
【0029】
さらに、本体部分2aは、3つの開口部4、5、6を有する。
図5で一番上の開口部4は、図示上端の係合片3とスリットS1との間に設けられた矩形状のものであり、2番目の開口部5は、スリットS1の位置で本体部分2aを折り曲げたときに開口部4にちょうど重なる略矩形のものである。開口部5は、その中央に内側に突出した2つの取付爪5a、5aを有する。そして、開口部6は、本体部分2aの中央に配置された2本のスリットS2、S3の間に設けられている。
【0030】
本体部分2aを4本の破線L1に沿って内側に折り曲げると、開口部4、5が重なるとともに、本体部分2aの長手方向両端にある係合片3、3が中央の開口部6に挿通されて係合される。そして、2本の帯状部分2b、2bを破線L1、L2の位置で上述した方向に折り曲げることで、
図3、4に示すスペーサー1が組み立てられる。すなわち、スペーサー1は、接着剤などを用いることなく組立可能な構造を有する。なお、2本の帯状部分2b、2bは、スペーサー1を取り付けた際に、スペーサー1の回動を防止するための回動防止片として機能する。
【0031】
上記のようにスペーサー1を組み立てると、
図4に示すように、2つの取付爪5a、5aを有する開口部5が本体部分2aの裏面側に位置する。この状態で、開口部5とちょうど重なる矩形の開口部4は、開口部5の内側に重なることになる。このため、2つの取付爪5a、5aは、開口部6の深さ(板紙2の厚み)の分だけ開口部4の底面(すなわち、スリットS3、S4間の本体部分2a)から浮いた状態になる。
【0032】
上記のように組み立てたスペーサー1は、
図2に示すように、搬送ユニット40を開いた状態で、作業員がアクセスし易い状態で取り付けられる。すなわち、MFP10の出荷時には、作業員がスペーサー1を容易に取り付けでき、且つ、使用時には、ユーザー(或いはMFPを設置する作業員)がスペーサー1を容易に取り外しできるようになっている。具体的には、スペーサー1は、転写ローラ20の当接ローラ201に着脱可能に取り付けられる。
【0033】
図6は、開いた状態の搬送ユニット40の要部を部分的に拡大して示す斜視図であり、
図7は、当接ローラ201にスペーサー1を取り付けた状態を
図6と比較して示す斜視図である。また、
図8は、感光体ドラム14と転写ローラ20との間にスペーサー1を取り付けた出荷時の状態を示す概略図である。さらに、
図9は、スペーサー1を取り外して、搬送ユニット40を閉じた使用時の状態を示す斜視図である。
【0034】
転写ローラ20は、
図9に示すように搬送ユニット40を閉じたときに感光体ドラム14の表面に近接対向するローラ部分210を有する。また、転写ローラ20の回転軸220には、ローラ部分210と同軸に当接ローラ201が取り付けられている。当接ローラ201は、感光体ドラム14の表面にある画像形成領域から外れた部位に当接することで、感光体ドラム14に対する転写ローラ20の位置決めをする。当接ローラ201は、転写ローラ20の回転軸220の両端に設けられている。
【0035】
すなわち、当接ローラ201は、感光体ドラム14の表面に当接した状態で、感光体ドラム14の表面と転写ローラ20のローラ部分210の外周面との間に用紙Pの一枚分程度の隙間(図示せず)を形成するように機能する。言い換えると、当接ローラ201の外径は、転写ローラ20のローラ部分210の外径より僅かに大きい。
【0036】
スペーサー1は、
図7に示すように、転写ローラ20の当接ローラ201に取り付けられる。スペーサー1を当接ローラ201に装着する際、当接ローラ201の外周縁に設けた円環状の溝202にスペーサー1の2つの取付爪5a、5aを引っ掛ける。逆に、スペーサー1を当接ローラ201から取り外す場合には、スペーサー1を少し強く引っ張ることにより、容易に取り外しできる。
【0037】
スペーサー1を当接ローラ201に装着した状態で、2本の帯状部分2b、2bは、当接ローラ201の周方向に延び、2本の帯状部分2b、2bの先端が搬送ユニット40の内側に当接する。この状態で、2本の帯状部分2b、2bは、スペーサー1の本体部分2aの回転を防止する。
【0038】
スペーサー1を当接ローラ201に装着して搬送ユニット40を閉じると、
図8に示すように、スペーサー1の本体部分2aが感光体ドラム14の表面に当接し、当接ローラ201が感光体ドラム14から僅かに離間される。これにより、当接ローラ201と同軸に設けた転写ローラ20のローラ部分210も、感光体ドラム14の表面から離間した状態となる。
【0039】
感光体ドラム14の回転軸14aおよび転写ローラ20の回転軸220は、それぞれ、僅かに移動可能に支持されており、スペーサー1の介在により両者の間に隙間を形成したとき、互いに僅かに離間する方向に移動する。言い換えると、感光体ドラム14および転写ローラ20を軸方向と直交する方向に僅かに移動可能に支持することで、スペーサー1を装着した状態で搬送ユニット40を閉じることができる。
【0040】
以上述べた実施形態の画像形成装置によれば、感光体ドラム14と転写ローラ20の当接ローラ201との間にスペーサー1を設けたため、低温トナーを用いた場合であっても、出荷時に感光体ドラム14の表面14aにトナーが固着する心配がなく、良好な画像形成が可能となる。
【0041】
上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、板紙を用いてスペーサー1を形成した場合について説明したが、これに限らず、樹脂のモールドによりスペーサー1を形成しても良い。この場合、取付爪5a、5aを形成するため、3Dプリンタなどを使用することが望ましい。