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特開2015-211036電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-211036(P2015-211036A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレート
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20060101AFI20151027BHJP
   H01M 8/04 20060101ALI20151027BHJP
   C25B 11/00 20060101ALI20151027BHJP
   H01M 8/10 20060101ALN20151027BHJP
【FI】
   H01M8/02 B
   H01M8/04 J
   H01M8/02 C
   C25B11/00
   H01M8/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-87516(P2015-87516)
(22)【出願日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】10 2014 207 594.7
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】カイ ヴェーバー
【テーマコード(参考)】
4K011
5H026
5H127
【Fターム(参考)】
4K011CA04
4K011DA01
4K011DA11
5H026AA06
5H026CC03
5H127AA06
5H127BA02
5H127BA14
5H127BB02
5H127CC01
5H127CC07
(57)【要約】
【課題】電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレート、電解セルまたは燃料電池用の冷却装置および電解セルおよび/または燃料電池を提供すること
【解決手段】バイポーラプレートに接して、および/または、バイポーラプレート内に、少なくとも一つの熱輸送管が形成されているバイポーラプレート、上記の少なくとも一つのバイポーラプレートと、少なくとも一つのバイポーラプレートの少なくとも一つの熱輸送管に結合されている熱交換器とを有している冷却装置、上記の少なくとも一つのバイポーラプレートまたは上記の冷却装置を有している電解セルおよび/または燃料電池、および/または、電解セルまたは燃料電池の唯一のバイポーラプレートの近傍または複数のバイポーラプレートのうちの少なくとも一つのバイポーラプレートの近傍に、少なくとも一つの熱輸送管が配置されている電解セルおよび/または燃料電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレート(10)であって、
前記バイポーラプレート(10)に接して、および/または、前記バイポーラプレート(10)内に、少なくとも一つの熱輸送管(12)が形成されている、
ことを特徴とする、電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレート(10)。
【請求項2】
前記少なくとも一つの熱輸送管(12)は、少なくとも一つのヒートパイプおよび/または少なくとも一つの二相熱サイフォンを含んでいる、請求項1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項3】
前記バイポーラプレート(10)に、付加的に、少なくとも一つのメアンダ状のチャネル(18)が形成されており、当該メアンダ状のチャネル(18)を通って少なくとも一種類の気体または液体の媒体が案内される、請求項1または2記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項4】
前記少なくとも一つの熱輸送管(12)に、少なくとも一種類の冷媒が充填されている、請求項1から3までのいずれか一項記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項5】
前記少なくとも一つの熱輸送管(12)に、前記少なくとも一種類の冷媒として、二酸化炭素、R410a、水および/またはアルコールが充填されている、請求項4記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項6】
前記バイポーラプレート(10)は能動側面(14)を有しており、当該能動側面(14)は、当該バイポーラプレート(10)を前記電解セルまたは燃料電池内に配置した後に、他方のバイポーラプレート(10)の方を向いているように配向されており、
前記少なくとも一つの熱輸送管(12)は、前記能動側面(14)に対して垂直に、前記バイポーラプレート(10)を通って延在している、請求項1から5までのいずれか一項記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項7】
前記少なくとも一つの熱輸送管(12)は、前記能動側面(14)に対して平行に、前記バイポーラプレート(10)を通って延在している、請求項1から5までのいずれか一項記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項8】
電解セルまたは燃料電池用の冷却装置であって、
請求項1から7までのいずれか一項記載のバイポーラプレート(10)を少なくとも1つ有しており、
さらに、前記少なくとも一つのバイポーラプレート(10)の前記少なくとも一つの熱輸送管(12)に結合されている熱交換器(24)を有している、
ことを特徴とする、電解セルまたは燃料電池用の冷却装置。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか一項記載の、少なくとも一つのバイポーラプレート(10)または請求項8記載の冷却装置を有している、
ことを特徴とする電解セルおよび/または燃料電池。
【請求項10】
少なくとも一つのバイポーラプレート(10)を有している電解セルおよび/または燃料電池であって、
前記電解セルまたは燃料電池の唯一のバイポーラプレート(10)の近傍または前記電解セルまたは燃料電池の複数のバイポーラプレート(10)のうちの少なくとも一つのバイポーラプレート(10)の近傍に、少なくとも一つの熱輸送管(12)が配置されている、
ことを特徴とする電解セルおよび/または燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレートに関する。本発明は、電解セルまたは燃料電池用の冷却装置にも関する。さらに本発明は、電解セルおよび/または燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、電解セルまたは燃料電池内で使用されるバイポーラプレートが公知である。ここでこのバイポーラプレートは、しばしば、フローフィールドプレート(flow-field plates)とも称される。通常、バイポーラプレートには、少なくとも一つのメアンダ状のチャネル/メアンダ状の溝が形成されている。バイポーラプレートが備え付けられている電解セルまたは燃料電池の動作時に、このチャネル/溝を通って、気体または液体の媒体が案内される。気体または液体の媒体は、しばしば、電解セルまたは燃料電池によって行われる反応の反応物(Edukt)である。この反応物は同時に、冷媒として使用される。このようにして、動作時に生じる廃熱による、電解セルまたは燃料電池の過熱を阻止することが可能である。
【0003】
独国特許出願公開公報第DE102012019678A1号(特許文献1)には、バイポーラプレートユニット用のフローフィールドプレートが記載されている。このバイポーラプレートユニットには、反応物/反応剤を案内するためのチャネルも、付加的に使用される冷媒を案内するためのチャネルも形成されている。さらに、フローフィールドプレートの支持壁内には、負荷軽減チャネルが形成されている。この負荷軽減チャネルを用いて、氷形成時のフローフィールドプレートの破れが阻止可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開公報第DE102012019678A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレート、電解セルまたは燃料電池用の冷却装置および電解セルおよび/または燃料電池を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレートであって、バイポーラプレートに接して、および/または、バイポーラプレート内に、少なくとも一つの熱輸送管が形成されている、ことを特徴とする、電解セルまたは燃料電池用のバイポーラプレートによって解決される。また、上記の課題は、電解セルまたは燃料電池用の冷却装置であって、上記の少なくとも一つのバイポーラプレートと、少なくとも一つのバイポーラプレートの少なくとも一つの熱輸送管に結合されている熱交換器とを有している、ことを特徴とする、電解セルまたは燃料電池用の冷却装置によって解決される。また、上記の課題は、上記の少なくとも一つのバイポーラプレートまたは上記の冷却装置を有している、ことを特徴とする電解セルおよび/または燃料電池によって解決される。また、上記の課題は、少なくとも一つのバイポーラプレートを有している電解セルおよび/または燃料電池であって、電解セルまたは燃料電池の唯一のバイポーラプレートの近傍または電解セルまたは燃料電池の複数のバイポーラプレートのうちの少なくとも一つのバイポーラプレートの近傍に、少なくとも一つの熱輸送管が配置されている、ことを特徴とする電解セルおよび/または燃料電池によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】バイポーラプレートの一つの実施形態の概略図
図2】電解セルまたは燃料電池の概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の利点
少なくとも一つの熱輸送管(Waermerohr)が、接しておよび/または内部に形成されている本発明のバイポーラプレートの装備によって、バイポーラプレートを含んでいる電解セルまたは燃料電池を、従来技術と比べて、むらなく冷却することが可能になる。これに相応して、唯一のバイポーラプレートまたは複数のバイポーラプレートのうちの少なくとも一つのバイポーラプレートの近傍に少なくとも一つの熱輸送管が配置されている本発明の電解セルまたは燃料電池の場合にも、電解セルまたは燃料電池のむらのない冷却が保証される。
【0009】
両方のケースにおいて、電解セルまたは燃料電池の体積全体、殊にバイポーラプレートの面積全体にわたって、むらのない冷却が実現される。これによって、それぞれのバイポーラプレートのフローフィールド(flow fields)の入力端と出力端との間に温度差も生じない。このようにして、それぞれの電解セルまたは燃料電池の体積全体にわたって、(近似的に)同じ温度が存在することが保証可能である。これによって、それぞれの電解セルまたは燃料電池にわたってむらのない電流密度も実現される。この結果、それぞれの電解セルまたは燃料電池の、より低い劣化速度とより長い寿命が得られる。
【0010】
上の段落に記載した利点は、バイポーラプレートに接しておよび/またはバイポーラプレート内に形成された少なくとも一つの熱輸送管に加えて、または、唯一のバイポーラプレート/複数のバイポーラプレートのうちの少なくとも一つのバイポーラプレートの近傍に配置された熱輸送管に加えて、さらに、他の冷却部材/冷媒を用いることなく、実現可能である。さらに、本発明のバイポーラプレートを使用する場合には、電解セルまたは燃料電池によって行われる/行われるべき化学反応の少なくとも一種類の反応物を、バイポーラプレート/電解セルまたは燃料電池を冷却するために使用する必要がない。反応物の流れが冷却のために必要ではなくなったので、バイポーラプレートを通る、少なくとも一種類の反応物の体積流量は比較的少なくてよい。これによって、本発明のバイポーラプレートの構造様式はコンパクトになる。なぜなら、少なくとも一種類の反応物の流れが案内される少なくとも一つのチャネル/少なくとも一つの溝がより小さく/より幅狭くなるからである、ないしは、流れを最適化可能だからである。殊に、従来は、脱イオン水による冷却を必要としていた電気分解システム/燃料電池システムの場合には、システム全体の構造様式も簡易になる。なぜなら、調達すべき水が格段に少なくなり、ひいては、それほど多くのコンポーネントが脱イオン水と接触しないからである。このような場合には、脱イオン水はしばしば攻撃的であり、時として成分がその中に溶けるので、本発明を用いることで、点食の危険性も確実に除去することができる。
【0011】
従来では、冷媒として使用される、バイポーラプレートを流れる少なくとも一種類の反応物の流量の低減は、(少なくとも一種類の反応物を案内するために組み込まれているチャネルの入力端と出力端との間での)温度の拡がりを大きくしてしまうが、本発明ではこのような問題は無い。従って本発明のバイポーラプレートでは、少なくとも一種類の反応物の流れの流量を1/100まで低減することができる。
【0012】
例えば、少なくとも一つの熱輸送管は、少なくとも一つのヒートパイプおよび/または少なくとも一つの二相熱サイフォンを含んでいる。これによって、少なくとも一つの熱輸送管に対して低コストの実施例が使用可能である。これは比較的容易に、バイポーラプレートに接しておよび/またはバイポーラプレート内に構成可能である(本発明の電解セルおよび/または燃料電池の唯一のバイポーラプレートまたは複数のバイポーラプレートのうちの少なくとも一つのバイポーラプレートの近傍にも、少なくとも一つの熱輸送管である、少なくとも一つのヒートパイプおよび/または少なくとも一つの二相熱サイフォンを配置することが可能である)。
【0013】
有利な実施形態では、バイポーラプレートに付加的に、少なくとも一つのメアンダ状のチャネルが形成されている。このチャネルを通って、少なくとも一種類の気体または液体の媒体が案内可能である。少なくとも一種類の気体または液体の媒体は、電解セルまたは燃料電池によって実行される/実行されるべき化学反応の少なくとも一種類の反応物および/またはこの化学反応の少なくとも一種類の生成物であり得る。従って、この少なくとも一種類の反応物および/またはこの少なくとも一種類の生成物は、容易におよび確実に、電解セルまたは燃料電池内に導入される、および/または、電解セルまたは燃料電池から導出される(本発明の電解セルおよび/または燃料電池の唯一のバイポーラプレートまたは複数のバイポーラプレートのうちの少なくとも一つのバイポーラプレートの近傍にも、少なくとも一つの、このようなメアンダ状のチャネルを配置することができる)。
【0014】
有利には、(本発明のバイポーラプレートまたは本発明の電解セルまたは燃料電池の)少なくとも一つの熱輸送管は、少なくとも一種類の冷媒によって充填されている。(本発明のバイポーラプレートまたは本発明の電解セルまたは燃料電池の)少なくとも一つの熱輸送管に、例えば、少なくとも一種類の冷媒として二酸化炭素、R410a(ASHRAE(米国冷凍空調学会)分類)、水および/アルコールを充填することができる。従って、多数の有利な冷媒を、本発明のバイポーラプレートおよび本発明の電解セルまたは燃料電池の冷却に用いることができる。
【0015】
有利な実施形態では、バイポーラプレートは能動側面を有している。この能動側面は、電解セルまたは燃料電池内にバイポーラプレートを配置した後に、他方のバイポーラプレートの方へ向かって配向されており、かつ、少なくとも一つの熱輸送管は、能動側面に対して垂直に、バイポーラプレートを通って延在する。これは、バイポーラプレート、ないしは、バイポーラプレートが備えられている電解セルまたは燃料電池のむらのない冷却を可能にする。
【0016】
別の有利な実施形態では、少なくとも一つの熱輸送管は、この能動側面に対して平行に、バイポーラプレートを通って延在している。この場合にも、少なくとも一つの熱輸送管を用いて、バイポーラプレートの/電解セルまたは燃料電池の有利なむらのない冷却が保証される。
【0017】
上で挙げた利点は、少なくとも一つの相応するバイポーラプレートと、少なくとも一つのバイポーラプレートの少なくとも一つの熱輸送管に結合されている熱交換器とを含んでいる、電解セルまたは燃料電池用の冷却装置の場合にも実現される。
【0018】
相応に、これらの利点は、少なくとも一つのこのようなバイポーラプレートまたは対応する冷却装置を有している電解セルおよび/または燃料電池の場合にも保証されている。
【0019】
さらに、少なくとも一つのバイポーラプレートと、電解セルまたは燃料電池の唯一のバイポーラプレートの近傍または複数のバイポーラプレートのうちの少なくとも一つのバイポーラプレートの近傍に配置されている少なくとも一つの熱輸送管とを有している電解セルおよび/または燃料電池も、上述した利点を実現する。電解セルおよび/または燃料電池も、本発明のバイポーラプレートの上述した特徴のうちの幾つかの特徴を有し得る。
【0020】
本発明の他の特徴および利点を以降で、図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0021】
図1は、バイポーラプレートの1つの実施形態の概略図を示している。
【0022】
図1に概略的に示されているバイポーラプレート10は、フローフィールドプレート(flow-field plate)とも称される。バイポーラプレート10は、電解セル内にも、燃料電池内にも組み込み可能である。殊に、バイポーラプレート10は、しばしばPEMスタック(プロトン交換膜スタック)とも称されるPEM(プロトン交換膜)電池内に組み込まれる。化学反応の実行および/または電流生成のための、セルと称される他の電気化学的構成部材内へ組み込みにも、バイポーラプレート10は適している。
【0023】
バイポーラプレート10に接して、および/または、バイポーラプレート10内に、少なくとも一つの熱輸送管12が形成されている(少なくとも一つの熱輸送管12を有するバイポーラプレート10は、これによって、コンパクトなユニットを形成する)。少なくとも一つの熱輸送管12とは、媒体/冷媒の気化熱を利用して高い熱流量密度を可能にする熱輸送体のことである。従って、少なくとも一つの熱輸送管12の比較的小さい横断面に、大きい熱量を搬送することができる。例えば、少なくとも一つの熱輸送管12は、少なくとも一つのヒートパイプおよび/または少なくとも一つの二相熱サイフォンを含み得る。殊に、ここに挙げられた、少なくとも一つの熱輸送管12の実施例では、媒体/冷媒の搬送は全体的に、付加的な機械的補助手段、例えばポンプ(循環ポンプ)を用いずに、行うことが可能である。従って、少なくとも一つの熱輸送管12を用いたバイポーラプレート10の確実な冷却によって、エネルギーがより節約される。さらに、少なくとも一つの熱輸送管12をバイポーラプレート10に装備する場合には、これによって省かれるポンプ、例えば循環ポンプのためのコストを省くことができる。
【0024】
通常、各バイポーラプレート10に対して、一つの能動側面14が定められる。この能動側面は、このバイポーラプレート10を電解セルまたは燃料電池内に配置した後に、他方のバイポーラプレートおよび/または半透膜の方へ向いているように配向されている。能動側面14を、反応相手側面とも書き換えることができる(バイポーラプレート10を電解セルまたは燃料電池内に配置した後に、この他方のバイポーラプレートおよび/または半透膜とは反対の側に配向される側は、しばしば、受動側面16と称される)。図1の実施形態では、バイポーラプレート10は、複数の熱輸送管12を有している。これらの熱輸送管は、能動側面14に対して平行に(かつ、受動側面16に対して平行に)、バイポーラプレート10を通って延在している。少なくとも一つの熱輸送管12が、能動側面14に対して垂直に(かつ、受動側面16に対して垂直に)、バイポーラプレート10を通って延在している場合にも、バイポーラプレート10の所望の、むらのない冷却が可能である。
【0025】
図1に示されている熱輸送管の数、5は、解釈のための単なる例である。バイポーラプレート10の熱輸送管12の数は、単に、バイポーラプレート10のむらのない冷却が少なくとも一つの熱輸送管12を用いて実現されているように選択される。
【0026】
有利には、バイポーラプレート10には(少なくとも一つの熱輸送管12に対して付加的に)、少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18が形成されている。このメアンダ状のチャネル18を通って、少なくとも一種類の気体または液体の媒体が導かれる。少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18は、少なくとも一つのメアンダ状の溝とも称される。この少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18(ないしは少なくとも一つのメアンダ状の溝)を通って、電解セルまたは燃料電池によって実行可能な/実行されるべき化学反応の反応物および/またはこの化学反応の少なくとも一種類の生成物が、少なくとも一種類の気体または液体の媒体として搬送可能であるまたは排出可能である。例えば、少なくとも一種類の気体の媒体または液体の媒体である酸素および/または水をこの少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18を通じて導くことが可能である。この少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18は、少なくとも一つのチャネル入力端(反応物入力端/生成物入力端)20および/または少なくとも一つのチャネル出力端(反応物出力端/生成物出力端)22を有し得る。
【0027】
このように有利に、バイポーラプレート10に少なくとも一つの熱輸送管12を設けることによって、少なくとも一種類の気体または液体の媒体(これは、少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18を通って案内可能である)を、バイポーラプレート10の冷却のために用いる必要がなくなる。従って既に、冷媒の必要な最低流速を下回る、少なくとも一種類の媒体の流速で十分である。相応に、少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18の幅を、より狭くすることもできる。
【0028】
少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18を通って導かれる媒体を用いてバイポーラプレート10を冷却する必要がないことの利点は、(ほぼ)同じ温度がチャネル入力端20とチャネル出力端22とに存在する、ということである。従って、電解セルまたは燃料電池(例えばPEMスタック)の劣化を場所によって異ならせてしまうことがある、チャネル入力端20とチャネル出力端22との間で頻繁に生じる従来の温度の拡がり(10ケルビンまで)を甘んじて受け入れる必要はない。さらに、チャネル入力端20とチャネル出力端22とで温度が等しいので、イオンに対する等しい拡散レートが得られる。ここから、各箇所に存在する電流の均一性も得られる。従って、局部的に高い電流が同様に、バイポーラプレート10のより強い局部的な加熱を生じさせてしまうリスクがなくなる。これに相応して、局部的に高い電流が、電解セルまたは燃料電池(例えばPEMスタック)の局部的に進んだ劣化を引き起こすこともない。
【0029】
従来では、電解セルまたは燃料電池の動作時には、その中で最も高温の箇所が電解セルまたは燃料電池の寿命を決め、電解セルまたは燃料電池の実行可能な動作モードに影響を与えるのに対し、少なくとも一つの熱輸送管12によるバイポーラプレート10の冷却を用いる場合には、各電解セルまたは燃料電池に対して、有利に長い寿命および比較的遅い劣化速度が得られる。さらに、電解セルまたは燃料電池の比較的低温の箇所が、それらの能力を下回って使用されることを甘んじて受け入れる必要がない。従って、少なくとも一つの熱輸送管12によるバイポーラプレート10のむらのない冷却を用いて、電解セルまたは燃料電池の効率が改善される。これは、必要なセル面積/電解セルまたは燃料電池の必要な構築スペースの低減に寄与し得る。従って、少なくとも一つの熱輸送管12によるバイポーラプレートの有利な冷却を用いて、電解セルまたは燃料電池をむらなく、十分に利用することによって、電解セルシステムまたは燃料電池システムをより小さくかつより軽量にすることができる。このようなシステムは殊に、モバイルの用途に有利に使用可能である。
【0030】
有利には、少なくとも一つの熱輸送管12は少なくとも一種類の冷媒によって充填されている。例えば、少なくとも一つの熱輸送管12は、少なくとも一種類の冷媒である二酸化炭素、R410a、水および/またはアルコールで充填され得る。ここに挙げた全ての冷媒は、バイポーラプレート10のむらのない、確実な冷却を保証する。バイポーラプレート10の確実な冷却のために、他の冷媒も、少なくとも一つの熱輸送管12内で使用可能である、ということに留意されたい。冷媒として水を用いることは容易に実行可能であり、完全に安全である。さらに、少なくとも一つの熱輸送管12(ないしは、熱輸送管12に接続されている二相冷却循環)内の数ミリバールの低圧は容易に調整可能である。従って、水の沸点を数℃まで低減させることが可能である。しかし多くの用途の場合、例えば、(200℃までの温度を有する)高温PEMセル/高温PEMスタック内でバイポーラプレート10を使用する場合、水である冷媒に負圧をかける必要はない。
【0031】
図1の実施形態では、熱交換器24が、図示のバイポーラプレート10の少なくとも一つの熱輸送管12に結合されている。この少なくとも一つの熱輸送管12の各一方の終端は第1の集合部分26を介して熱交換器24に接続され、各他方の終端は第2の集合部分28を介して熱交換器24に接続される。従ってバイポーラプレート10と熱交換器24と(場合によっては、集合部分26、28と)によって、電解セルまたは燃料電池用の冷却装置が形成される。
【0032】
殊に集合部分26および28を用いて、冷却装置は、圧力が等しい、閉じられたシステムとして実現可能であり、従って、全ての熱輸送管12内で等しい圧力が保たれている。冷媒は、この閉じられたシステム内で二相混合物として存在し得る。例えば、冷媒は、第1の集合部分26と少なくとも一つの熱輸送管12内では液体であり、第2の集合部分28と熱交換器24内では気体で存在している。
【0033】
圧力が等しい、閉じられたこのシステムにおいて、熱交換器24内の熱が放出可能であり、これによって、熱交換器内の冷媒の凝縮が起こる。冷媒のこの凝縮によって熱交換器24内で局部的な圧力低下が生じ、これによって気体の冷媒が少なくとも一つの第1の集合部分26および/または少なくとも一つの熱輸送管12から流れ込む。少なくとも一つの熱輸送管12では、これに続いて、熱交換器24内で凝縮されたのと同じ量の冷媒が蒸発する。圧力が等しい、閉じられたシステム内では、冷媒は常に、最も高温の箇所で蒸発する、ということが特に強調されるべきである。従ってこのような機構によって、バイポーラプレート10の全面にわたって、自動的に同じ温度が生じる。
【0034】
圧力が等しい、閉じられたこのシステムでは、熱輸送のために電気的な駆動エネルギーも必要とされない。その代わりに、熱輸送は、上述した機構を用いて自動的に行われる。さらに、自動的に生じるこの熱輸送は、従来の冷却循環における熱輸送より約100倍速い。なぜなら、蒸発点と凝縮点との間の決定的な圧力差が、選択された冷媒の音速で、等しくなるように補償されるからである。
【0035】
図2は、電解セルまたは燃料電池の概略図を示している。
【0036】
図2に示された電解セルまたは燃料電池は、PEMセル/PEMスタック(プロトン交換膜スタック)と称される。この電解セルまたは燃料電池は、少なくとも一つの膜50を含んでいる。この膜は水素イオンを通す。水素イオンを通すこの膜50は、2つの電極52の間に配置されている。さらに、電解セルまたは燃料電池は2つのバイポーラプレート10を有している。各バイポーラプレート10は、電極52の、水素イオンを通す膜50の側とは反対側にある面に配置されている。
【0037】
少なくとも一つのバイポーラプレート10に、少なくとも一つの、集積された(図示されていない)熱輸送管12を設けることができる。ここでこの熱輸送管12は、バイポーラプレート10に接して、および/または、バイポーラプレート10内に、形成されている。例えば、バイポーラプレート10としての図1の実施形態を、電解セルまたは燃料電池内に組み込むことができる。しかし択一的に、電解セルまたは燃料電池の複数のバイポーラプレート10のうちの少なくとも一つのバイポーラプレート10の近傍に、少なくとも一つの(図示されていない)熱輸送管12を配置することもできる。殊に、この少なくとも一つの熱輸送管12は、バイポーラプレート10と少なくとも一つの熱輸送管12とが電解セルまたは燃料電池内で本質的にコンパクトなサブユニットを形成することなく、各バイポーラプレート10を接触接続させることができる。従って、少なくとも一つの熱輸送管12を、バイポーラトランジスタ10に接して/バイポーラトランジスタ10内に、集積しなくても、上述の利点を実現することが可能である。
【0038】
水素イオンに対する膜50の透過を、電気分解を実行するため、または、燃料電池機能を実行するために、利用することができる。電気分解を実行するために、電極52には通常、電圧が印加される。印加された電圧は、例えば分子(例えば水分子)の単原子への分解に利用される。この場合には、カソードにカチオン(例えば、水素イオン/水素原子)が集まり、アニオン(例えば酸素イオン/酸素原子)がアノードに付着する(反応物として脱イオン水を少なくとも一つのメアンダ状のチャネル18を介してバイポーラプレート10に供給することができる)。
【0039】
燃料電池機能を実行するために、種々の反応物が電極52に供給される。例えば、アノードには水素が注入され、カソードには酸素が供給される。この場合には、水素イオンは膜50を通って移動し、反応して、カソードで水となる。アノードで自由になった電子は電流を生成する。この電流は、電気機器の動作に利用可能である。
【0040】
図2に概略的に示されたセルによる電気分解の実行時にも、燃料電池機能の実行時にも、電極52と膜50との間に廃熱が生じる。この廃熱は2つのプロセスにおいて、膜50、電極52およびこの電極52に結合されている接触接続部の電気抵抗を克服しなければならない電流が原因で生じる(下降する熱出力は、電流強度の2乗と電気抵抗の積から生じる)。さらに、燃料電池動作時に、行われている発熱反応のエネルギーが付加的な熱として放出される。しかし、少なくとも一つのバイポーラプレート10の近傍に配置されているか、または、複数のバイポーラプレート10のうちの一つのバイポーラプレート10の中に集積されている少なくとも一つの熱輸送管12を用いて、両方のケースにおいて、電解セルまたは燃料電池のむらのない冷却を保証することができる。従って、自身の温度が上昇することによって生じる電解セルまたは燃料電池の損傷を懸念する必要はない。
【符号の説明】
【0041】
10 バイポーラプレート、 12 熱輸送管、 14 能動側面、 16 受動側面、 18 メアンダ状のチャネル、 20 チャネル入力端、 22 チャネル出力端、 24 熱交換器、 26 第1の集合部分、 28 第2の集合部分、 50 膜、 52 電極
図1
図2