特開2015-211063(P2015-211063A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特開2015-211063窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ
<>
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000003
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000004
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000005
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000006
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000007
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000008
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000009
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000010
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000011
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000012
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000013
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000014
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000015
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000016
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000017
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000018
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000019
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000020
  • 特開2015211063-窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-211063(P2015-211063A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】窒化物半導体とリセスゲート電極を利用する電界効果型トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20151027BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20151027BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20151027BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20151027BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20151027BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/78 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-90052(P2014-90052)
(22)【出願日】2014年4月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】成田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】冨田 一義
(72)【発明者】
【氏名】松井 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大竹 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 安史
【テーマコード(参考)】
5F102
5F140
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD10
5F102GK04
5F102GL04
5F102GL15
5F102GN04
5F102GQ01
5F102GR04
5F102GR07
5F102GS04
5F140AA06
5F140BA06
5F140BA09
5F140BB15
5F140BB18
5F140BC05
5F140BC15
5F140BF43
(57)【要約】
【課題】ゲート電極がゲート絶縁膜を介して窒化物半導体に対向する電界効果型トランジスタの閾値電圧を引き上げてノーマリオフとするために、リセスを形成し、リセスにゲート電極を埋め込み、リセスの底面に負固定電荷を導入するのが有効であるが、閾値電圧が意図せずに上昇する。
【解決手段】負固定電荷導入領域22の形成範囲がリセス18aの底面全域に広がらず、ゲート電極16の下面16aの形成範囲に留まる関係とする。意図した閾値電圧でチャネルが形成されてソース・ドレイン間抵抗が低下する。閾値電圧が揃っているトランジスタを歩留まりよく量産できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リセスに埋め込まれたゲート電極が、ゲート絶縁膜を介して、窒化物半導体と対向しており、
前記ゲート電極に加える電位によって、前記窒化物半導体にチャネルが形成される電界効果型トランジスタであり、
前記ゲート電極は、前記リセスの側面を覆うゲート絶縁膜と、前記リセスの底面を覆うゲート絶縁膜に接しており、
前記窒化物半導体の一部に負の固定電荷が導入されており、
その導入領域が、前記リセスの底面を覆うゲート絶縁膜に接するとともに、半導体基板を平面視したときに前記リセスの底面を覆うゲート絶縁膜と前記ゲート電極が接する範囲内に留まっていることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート電極が、前記リセスの底面を覆うゲート絶縁膜を介して、窒化物半導体で形成されている電子供給層と窒化物半導体で形成されている電子走行層に対向していることを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記リセスが、窒化物半導体で形成されている電子供給層を貫通して窒化物半導体で形成されている電子走行層に達していることを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
リセスに埋め込まれたゲート電極が、ゲート絶縁膜を介して、窒化物半導体と対向しており、
前記ゲート電極に加える電位によって、前記窒化物半導体にチャネルが形成される電界効果型トランジスタであり、
前記ゲート電極は、前記リセスの側面を覆うゲート絶縁膜と、前記リセスの底面を覆うゲート絶縁膜に接しており、
前記リセスの底面を覆うゲート絶縁膜の一部に負の固定電荷が導入されており、
その導入領域が、半導体基板を平面視したときに前記リセスの底面を覆うゲート絶縁膜と前記ゲート電極が接する範囲内に留まっていることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ゲート電極がゲート絶縁膜を介して窒化物半導体に対向しており、ゲート電極に電圧を加えることによって窒化物半導体にチャネルが形成されてソース・ドレイン間の抵抗が低下する電界効果型トランジスタを開示する。
【背景技術】
【0002】
上記の電界効果型トランジスタは、閾値電圧がマイナス電圧となってノーマリオンとなりやすい。特許文献1に、閾値電圧をプラス電圧に引き上げてノーマリオフとする技術が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されている電界効果型トランジスタは、図19に示すように、GaN層4とAlGaN層6aのヘテロ接合構造を備えており、ゲート電極16の下面16aがゲート絶縁膜14を介してヘテロ接合界面に対向する構造を備えている。
閾値電圧をプラス電圧に引き上げてノーマリオフとするために、特許文献1の技術では、AlGaN層6aの上面から中間深さに達するリセス18cを設け、リセス18c内にゲート電極16を充填する。本明細書では、リセス内に埋め込まれたゲート電極をリセスゲート電極という。特許文献1の技術では、さらにリセス18cの底面からフッ素イオンを注入し(リセスゲート電極16の形成前に注入する)、負の固定電荷が導入された領域22を形成する。負の固定電荷が導入された領域22を設けると、ゲート電極16に電位を加えない状態では、領域22の存在によってチャネルが閉じられる。ゲート電極16に電位を加えると、チャンネルが開く。負の固定電荷が導入された領域22を設けると、チャネルが開きづらくなり、閾値電圧が高められる。なお、参照番号2は基板であり、20はソース電極であり、12はドレイン電極である。
特許文献1の技術では、リセスゲート電極16を採用することによって閾値電圧をプラス側に向けて引き上げ、負固定電荷導入領域22を形成することによって閾値電圧をプラス電圧に引き上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−124442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、窒化物半導体を利用する電界効果型トランジスタの閾値電圧をプラス電圧に引き上げてノーマリオフ化する有用な技術であるが、閾値電圧が設計上の閾値電圧よりも上昇してしまう現象が生じる。あるいは、設計上の閾値電圧を加えたときのオン抵抗が設計上のオン抵抗よりも上昇してしまう現象が生じる。
本明細書では、設計上の閾値電圧と実際の閾値電圧がよく一致する電界効果型トランジスタの製造を可能とする半導体構造を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図19の構造によると、実際の閾値電圧が設計上の閾値電圧から上昇してしまう原因を研究した。
図19の構造では、設計上の閾値電圧に調整するために、ゲート絶縁膜14の膜厚と、負固定電荷導入領域22に導入する電荷密度等に関して、設計上の閾値電圧をリセスゲート電極16に印加したときに、ゲート絶縁膜14を介してリセスゲート電極16の下面16aに対向する位置の負固定電荷導入領域22にチャネルが形成される条件を設定する。
ところが、特許文献1の技術では、リセスゲート電極16の下面16aに対向する範囲Aのみならず、リセス18cの底面が広がっている範囲Bに負の固定電荷導入領域22が広がっている。ゲート絶縁膜14にはリセスの側壁を覆う部分14aが存在するために、範囲A<範囲Bの関係にある。図19の構造では、範囲A内の負固定電荷導入領域22のみならず、範囲B内の負固定電荷導入領域22にまでチャネルを形成する必要がある。すなわち、リセス18cのコーナー部の近傍に面している負固定電荷導入領域22でも、チャネルを形成する必要がある。図19の構造では、ゲート絶縁膜14が、リセスの側壁を覆う部分(以下ではゲート絶縁膜側面部14aという)と、リセスの底面を覆う部分(以下ではゲート絶縁膜底面部14bという)を備えている。そのために、ゲート電極16からリセス18cのコーナー部までの最短距離は、(ゲート絶縁膜側面部14aの膜厚の二乗+ゲート絶縁膜底面部14bの膜厚の二乗)1/2となる。リセスゲート電極16の下面16aからゲート絶縁膜底面部14bの膜厚だけ隔てた位置にある負固定電荷導入領域22にチャネルが形成される閾値電圧をゲート電極16に加えても、それよりも長い距離だけ隔てられているリセス18cのコーナー部に面している負固定電荷導入領域22にはチャネルが形成されず、抵抗が高い状態となっている。そのために、設計上の閾値電圧を加えた状態では、実際のオン抵抗が設計上のオン抵抗にまで低下しない。設計上のオン抵抗にまで低下させるためには、設計上の閾値電圧よりも大きな電圧をゲート電極16に加え、リセス18cのコーナー部に面している負固定電荷導入領域22にチャネルを形成する必要がある。
【0007】
上記が判明したことから、ゲート電極16に閾値電圧を加えたときに、リセスゲート電極16の下面16aに対向する範囲Aではなく、リセス18cのコーナー部に面している負固定電荷導入領域22にチャネルが形成される条件を指標としてゲート絶縁膜14の膜厚と負固定電荷導入領域22に導入する電荷密度等を設計するのが合理的であることが判明した。その設計手法によると、実際の閾値電圧を設計上の閾値電圧によく一致させることができる。
【0008】
しかしながらその設計手法によっても、実際の閾値電圧が設計上の閾値電圧によく一致する電界効果型トランジスタを歩留まりよく量産することが困難であることが判明した。
(1)上記したようにゲート電極16からリセス18cのコーナー部までの最短距離は、ゲート絶縁膜側面部14aの膜厚の二乗とゲート絶縁膜底面部14bの膜厚の二乗の和の平方根となる。閾値電圧のばらつきを抑えるためには、前記の最短距離のばらつきを抑える必要があるところ、そのためには、ゲート絶縁膜側面部14aの膜厚とゲート絶縁膜底面部14bの膜厚の両者を意図した値に調整する必要があり、実際にはそれが難しい。
(2)ゲート電極の下面16aに対向する位置での電界強度は、ゲート電極の下面16aからの距離に反比例するのに対し、リセス18cのコーナー部の近傍での電極強度はゲート電極16のコーナー部からの距離の二乗に反比例する。リセス18cのコーナー部の近傍では、距離の変化が敏感に電界強度に影響する。リセス18cのコーナー部の近傍では、ゲート絶縁膜の膜厚の変化が敏感に電界強度に影響する。図19の構造では、閾値電圧を安定化することが難しい。
本明細書では、上記現象をも克服し、閾値電圧のばらつきが小さい電界効果型トランジスタを歩留まりよく量産することを可能とするトランジスタ構造を開示する。
【0009】
本明細書に開示する電界効果型トランジスタでは、リセスに埋め込まれたゲート電極(リセスゲート電極)がゲート絶縁膜を介して窒化物半導体と対向しており、リセスゲート電極に加える電位によって窒化物半導体にチャネルが形成されてソース・ドレイン間の抵抗が低下する。ゲート電極は、リセスの側面を覆うゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜側面部)とリセスの底面を覆うゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜底面部)に接している。窒化物半導体の一部に負の固定電荷が導入されている。本明細書に開示する電界効果型トランジスタでは、負の固定電荷の導入領域が、ゲート絶縁膜底面部に接するとともに、半導体基板を平面視したときにゲート絶縁膜底面部とゲート電極が接する範囲内に留まっている。
【0010】
上記の構造を備えていると、リセスのコーナー部の近傍に面する窒化物半導体には負の固定電荷が導入されておらず、ソース・ドレイン間の抵抗を低下させるためにチャネルを形成する必要がない。上記の構造では、ゲート絶縁膜底面部とゲート電極が接する範囲内に留まっている負の固定電荷導入領域にチャネルが形成されれば、オン抵抗が低下する。
本技術によると、段落0006に記載した問題が生じず、従来の設計手法によって、設計上の閾値電圧と実際の閾値電圧がよく一致し、設計上のオン抵抗と実際のオン抵抗がよく一致する電界効果型トランジスタを製造することができる。また、段落0008に記載した問題が生じず、閾値電圧のばらつきが小さい電界効果型トランジスタを歩留まりよく量産することができる。
【0011】
窒化物半導体を利用する電界効果型トランジスタには、バンドギャップが狭い窒化物半導体とバンドギャップが広い窒化物半導体のヘテロ接合構造を利用するHEMT(High Mobility Electron Transistor)がよく知られているが、それに限られない。n型の窒化物半導体の層を電子が走行する電界効果型トランジスタに、本明細書に記載の技術を適用することができる。
【0012】
バンドギャップが狭い窒化物半導体とバンドギャップが広い窒化物半導体のヘテロ接合が存在する場合、前者が電子走行層になり、後者が電子供給層なる。
電子供給層となる窒化物半導体の層と電子走行層となる窒化物半導体の層が積層されているHEMTに本明細書に記載の技術を適用する場合、ゲート電極がリセスの底面を覆うゲート絶縁膜を介してヘテロ接合界面に対向していてもよいし、リセスが電子供給層を貫通して電子走行層に達していてもよい。
電子供給層となる窒化物半導体層の上面には絶縁層が形成されていることが多い。絶縁層を貫通して電子供給層の上面に達するリセスを利用するか、あるいは、絶縁層を貫通して電子供給層の中間深さに達するリセスを利用すると、ゲート電極がゲート絶縁膜底面部を介してヘテロ接合界面に対向する構造が得られる。上記に代えて、リセスが電子供給層を貫通して電子走行層の上面に達しているものであってもよいし、電子供給層を貫通して電子走行層の中間深さに達するものであってよい。この構造に対しても、本明細書に開示する技術を適用することができる。
【0013】
ゲート絶縁膜を介してゲート電極に対向する位置にある窒化物半導体に負の固定電荷を導入することで閾値電圧をプラス側に向けて引き上げる代わりに、ゲート絶縁膜に負の固定電荷を導入することができる。本明細書に開示する技術は、後者の技術に適用することができる。その場合には、負の固定電荷が、半導体基板を平面視したときにゲート絶縁膜底面部とゲート電極が接する範囲内のゲート絶縁膜に導入される。
【発明の効果】
【0014】
本明細書に開示する技術によると、閾値電圧が意図した以上に上昇する現象が発生しない。同様に、オン抵抗が意図した以上に上昇する現象が発生しない。閾値電圧が揃った電界効果型トランジスタを歩留まりよく量産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施例の電界効果型トランジスタの断面構造を示す。
図2】第2実施例の電界効果型トランジスタの断面構造を示す。
図3】第3実施例の電界効果型トランジスタの断面構造を示す。
図4】第3実施例の電界効果型トランジスタの製造工程の第1段階を示す。
図5】第3実施例の電界効果型トランジスタの製造工程の第2段階を示す。
図6】第3実施例の電界効果型トランジスタの製造工程の第3段階を示す。
図7】第3実施例の電界効果型トランジスタの製造工程の第4段階を示す。
図8】第3実施例の電界効果型トランジスタの製造工程の第5段階を示す。
図9】第3実施例の電界効果型トランジスタの製造工程の第6段階を示す。
図10】第3実施例の電界効果型トランジスタの製造工程の第7段階を示す。
図11】第3実施例の電界効果型トランジスタの別の製造工程の第1段階を示す。
図12】第3実施例の電界効果型トランジスタの別の製造工程の第2段階を示す。
図13】第3実施例の電界効果型トランジスタの別の製造工程の第3段階を示す。
図14】第3実施例の電界効果型トランジスタの別の製造工程の第4段階を示す。
図15】第3実施例の電界効果型トランジスタの別の製造工程の第5段階を示す。
図16】第3実施例の電界効果型トランジスタの別の製造工程の第6段階を示す。
図17】オン抵抗を比較した二つの電界効果型トランジスタの断面構造を示す。
図18】比較結果を示す。
図19】従来の電界効果型トランジスタの断面構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本明細書で開示する技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
(第1特徴)窒化物半導体を、F,Cl,C,Mg,Zn,Feを含む物質に暴露して、リセス底面を形成する窒化物半導体に負固定電荷を導入する。
(第2特徴)細いリセスを形成し、その底面に負固定電荷を導入し、リセスの幅を広げ、ゲート絶縁膜を形成し、ゲート電極を充填する順序で製造する。
(第3特徴)リセスを形成し、リセスの側面に保護膜を形成し、側面が保護膜で被覆されたリセスの底面に負固定電荷を導入し、保護膜を除去し、ゲート絶縁膜を形成し、ゲート電極を充填する順序で製造する。
【実施例】
【0017】
(第1実施例)
第1実施例の断面構造を示す図1において、参照番号は下記を示している。
2:基板、4:iーGaN層(p−GaN層でもよい)、6:n−GaN層(電子走行層となる)、8:絶縁膜、10:層間絶縁膜、12:ドレイン電極、14:ゲート絶縁膜、16:ゲート電極、18:リセス、20:ソース電極、22:負固定電荷導入領域(実施例では、Fを導入する。Fに代えて、Cl,C,Mg,ZnまたはFeを導入してもよい)。負固定電荷導入領域22は、n−GaN層6よりも深く形成されており、ソース電極20とドレイン電極12の間において、n−GaN層6を左右に分断している。
【0018】
図1のトランジスタのゲート電極16に正電圧を加えない状態では、負固定電荷導入領域22によって左右に分断されたn−GaN層6の間を電子が移動せず、ソース電極20とドレイン電極12の間の抵抗が高い。ゲート電極16に正の閾値電圧を加えると、ゲート絶縁膜14を介してゲート電極16に対向する範囲の負固定電荷導入領域22にチャネルが形成され、ソース電極20とドレイン電極12の間の抵抗が低下する。
【0019】
図1の構造では、負固定電荷導入領域22の形成範囲と、ゲート電極16の下面16aが広がっている範囲Aが一致している。リセスの底面は範囲Bに広がっており、範囲A<範囲Bである。ゲート絶縁膜14は、リセス18の側面を覆う部分(ゲート絶縁膜側面部14a)とリセス18の底面を覆う部分(ゲート絶縁膜底面部14b)を備えており、ゲート電極16は、ゲート絶縁膜側面部14aとゲート絶縁膜底面部14bに接している。ゲート電極16の下面16aが伸びている範囲は、ゲート絶縁膜底面部14bとゲート電極16が接する範囲ということができる。負固定電荷導入領域22の形成範囲は、リセス18の底面の一部であって、ゲート絶縁膜底面部14bとゲート電極16が接する範囲A内に留まっている。
【0020】
そのために、負固定電荷導入領域22内にあって、ゲート電極16に加える電圧によってチャネルを形成する必要がある範囲からゲート電極16までの最短距離は、位置によらないで、ゲート絶縁膜底面部14bの厚みに等しい。設計上の閾値電圧をゲート電極16に印加したときに、ゲート絶縁膜底面部14bの厚みだけ離れた位置にある負固定電荷導入領域22にチャネルが形成される関係に設計しておけば、設計したように動作する。閾値電圧やオン抵抗が意図せずに上昇することがない。また、閾値電圧が揃った電界効果型トランジスタを歩留まりよく量産することができる。
本実施例では、負固定電荷導入領域22の形成範囲=ゲート電極16の下面16aの形成範囲Aの関係にあるが、負固定電荷導入領域22の形成範囲<範囲Aの関係にあってもよい。
【0021】
(第2実施例)
以下ではその他の実施例を説明する。以下では、同一または類似の部分には同一参照番号を付し、重複説明を省略する。
図2に示す第2実施例のトランジスタでは、第1実施例が用いるn−GaN層6に代えて、AlGaN層6aを用いる。層6aを形成するAlGaNのバンドギャップは、層4を形成するGaNのバンドギャップよりも大きく、AlGaN層6aとGaN層4の間にヘテロ接合界面が形成され、GaN層4内のヘテロ接合界面に沿った範囲に二次元電子ガスが生成する。AlGaN層6aは電子供給層となり、GaN層4は電子走行層となる。
本実施例でも、ゲート絶縁膜底面部14bを介してゲート電極16に対向している範囲の窒化物半導体(本実施例ではAlGaN層6a)の一部に、負の固定電荷が導入されている。負固定電荷導入領域22aの範囲=ゲート絶縁膜底面部14bとゲート電極16が接する範囲=ゲート電極16の下面16aの形成範囲A<リセス18の底面の形成範囲Bの関係におかれている。リセスのコーナー部の近傍にまでチャネルを形成する必要がなく、閾値電圧とオン抵抗が設計上の値から意図せずに上昇することがなく、量産時に閾値電圧がばらつくことを抑制できる。
【0022】
本実施例でも、負固定電荷導入領域22aの範囲が、ゲート絶縁膜底面部14bとゲート電極16が接する範囲の一部に包含される関係としてもよい。本実施例では、負固定電荷導入領域22aがAlGaN層6a層よりも薄い関係となっているが、負固定電荷導入領域22aがAlGaN層6a層よりも厚く、GaN層4内に侵入していてよい。
【0023】
(第3実施例)
図3に示す第3実施例では、リセス18aが深く形成されており、電子供給層6aを貫通して電子走行層4に達している。本実施例でも、負固定電荷導入領域22の範囲=ゲート絶縁膜底面部14bとゲート電極16が接する範囲=ゲート電極16の下面16aの形成範囲A<リセス18の底面の形成範囲Bの関係におかれている。閾値電圧とオン抵抗が設計上の値から意図せずに上昇することがなく、量産時に閾値電圧がばらつくことを抑制できる。
リセスの底面は、図2の参照番号18に示すように電子供給層6aの上面に一致していてもよいし、図19の参照番号18cに示すように電子供給層6aの中間深さにあってもよいし、図3の参照番号18aに示すように電子供給層6aを貫通して電子走行層4に達していてもよい。
【0024】
(第1製造方法)
図4〜10を参照して、第3実施例のトランジスタの製造方法を説明する。
図4:基板2の上面上に、GaN層4、AlGaN層6a、絶縁層8の順で積層する。
図5:絶縁層8の上面上にレジスト層24を形成する。リセス18aの形成位置に開口24aを設ける。後記する図8の工程でリセスを広げるので、この段階では、リセス18aの幅よりも狭い開口24aを設ける。
図6:レジスト層24を保護膜とし、開口24aから異方性エッチングする。ここでは、絶縁層8とAlGaN層6aを貫通してGaN層4に達するまでエッチングを継続する。
図7:窒化物半導体に侵入して負の固定電荷となる元素を含むプラズマに暴露する。負の固定電荷となる元素には、F,Cl,C,Mg,Zn,Feが適している。図7における24bは負の固定電荷が導入されたレジスト層24の範囲を示し、8bは負の固定電荷が導入された絶縁層8の範囲を示し、6bは負の固定電荷が導入されたAlGaN層6aの範囲を示し、4bは負の固定電荷が導入されたGaN層4の側面を示し、4cは負の固定電荷が導入されたGaN層4の上面を示している。プラズマに暴露するのに代えて、負固定電荷注入法を用いてもよい。
図8:洗浄してレジスト層24を除去する。次に、絶縁層8と窒化物半導体6a,4をアルカリ系溶液を用いてエッチングする。アルカリ系溶液には、NaOH,KOH,TMAH,NHOH等を用いることができる。アルカリ系溶液を用いて窒化物半導体6a,4をエッチングすると、図の水平方向へのエッチング速度が高速となり、図の下方へのエッチング速度が低速となる。この結果、前記した8b,6b,4bに示した領域がエッチングされ、リセスの幅が広げられる。図8では、領域8b,6b,4bが除去された後もエッチングを継続してリセスの幅をさらに広げる。リセスの幅が図3に示したリセス18aの幅にまで広げられた時点でも、負の固定電荷が導入されたGaN層4の上面(リセスの底面)の領域4cは残存する。
図6におけるリセスの幅をaとする。領域4bの厚みをbとする。図8では、リセスの幅=a+2b+2cとなるまでエッチングを継続する。ここで厚みbは、エッチング後も領域4cが残存する厚みとなる値に設定する。前記cは、図9で設けるゲート絶縁膜14の厚み以上とする。そうして設定したb、cの値に対して、a+2b+2c=リセス18aの幅となるaの値を求め、図6の段階では幅aのリセスを形成する。
図8のエッチングをすると、領域4cより上部では、水平方向に高速エッチングされ、リセスの幅=a+2b+2c=リセス18aの幅となる。その段階でエッチングを終了する。エッチングの終了後も領域4cは残存する。エッチングを終了した段階では、幅がa+2b+2cに等しいリセス18aの底面の幅方向の中央位置に、幅がa+2bに等しい領域4cが残存する。これが図3に示した負固定電荷導入領域22となる。負固定電荷導入領域22は、リセス18aの全幅(a+2b+2c)には広がっておらず、リセス18aのコーナー部から距離cだけ離れている。前記したように、距離cは、図9で形成するゲート絶縁膜14の膜厚よりも大きい。この結果、負固定電荷導入領域22の範囲が、ゲート電極16の下面16aが広がっている範囲Aに含まれる関係を得ることができる。
図9:エッチングして幅を広げたリセス18aの底面と側面と、絶縁膜8の上面に、ゲート絶縁膜14を形成する。その後にゲート電極16を堆積し、ゲート電極16でリセス18aを充填する。その後に、リセス外に形成されたゲート電極の形状をパターニングしてゲート電極16を形成する。
ゲート電極16の下面16aの幅は、a+2b+2c−2dとなる。ここでdはゲート絶縁膜14の膜厚であり、cよりも薄い。したがって、ゲート電極16の下面16aの幅(=a+2b+2c−2d)>負固定電荷導入領域22の幅(=a+2b)の関係が得られる。上記の製造方法によって、ゲート電極16の下面16aの形成範囲A内に留まっている負固定電荷導入領域22を形成することができる。
図10:層間絶縁膜10を形成する。層間絶縁膜10のソース電極形成部位には開口10bを形成し、ドレイン電極形成部位には開口10aを形成する。開口10bにソース電極20を形成し、開口10aにドレンイン電極12を形成すると、図3の構造が完成する。
【0025】
(第2製造方法)
図11から図16を参照して第2の製造方法を説明する。
図11図4に等しい。
図12図5にほぼ等しい。この段階では、リセス18の幅に等しい開口24cを形成する。
図13:開口24cからGaN層4に達する深いリセス18aを形成する。
図14:レジスト層24を除去し、新たなレジスト層25を形成する。レジスト層25には開口25aを設ける。開口25aの底部に深いリセス18aの底面の一部が露出する。深いリセス18aの側面は、側面に沿って延びるレジスト膜25bで覆われる。深いリセス18aの側面を覆うレジスト膜25bの膜厚は、後記の工程で形成するゲート絶縁膜14の膜厚よりも厚くする。
図15:窒化物半導体に侵入して負の固定電荷となる元素を含むプラズマに暴露する。負の固定電荷となる元素には、F,Cl,C,Mg,Zn,Feが適している。プラズマに暴露するのに代えて、負固定電荷注入法を用いてもよい。リセス18aの側面はレジスト25b層で覆われている。レジスト層25の開口25aにおいて露出しているリセスの底面の一部に、負の固定電荷が導入される。
図16:洗浄してレジスト層25を除去する。この状態は図8に等しい。この方法では、レジスト膜25bの膜厚>ゲート絶縁膜14の膜厚とするので、図16の段階で、ゲート電極16の下面16aの幅A>負固定電荷導入領域22の幅の関係を得ることができる。この方法によっても、負固定電荷導入領域22の範囲<ゲート電極16がゲート絶縁膜底面部14bに接する範囲(ゲート電極16の下面16aの形成範囲)の関係を得ることができる。
図16の状態が得られれば、それ以降は図9図10に示す工程を実施することで、第3実施例のトランジスタが得られる。
【0026】
図17の(A)は図3に示した第3実施例のトランジスタであり、(B)は比較例である。比較例では、負固定電荷導入領域22がゲート電極16の下面16aの範囲を超え、リセス18aの底面の全域に広がっている。
図18は、ゲート電極16に同じ電圧を加えたときのオン抵抗を示している。第3実施例によると、オン抵抗が低く抑えられることがわかる。
【0027】
上記の実施例では、ゲート絶縁膜を介してゲート電極に対向する窒化物半導体に負の固定電荷を導入して閾値電圧をプラス側に引き上げる。それに代わってゲート絶縁膜に負の固定電荷を導入することで、閾値電圧をプラス側に引き上げることができる。この場合も負の固定電荷を導入する範囲をゲート電極の下面に対向する範囲内に留めることによって、意図した以上に閾値電圧が上昇することを防止できる。
【0028】
図19の構造をとり、リセスのコーナー部に対向する位置の電子走行層にチャネルが形成される現象を指標にして閾値電圧を調整することができる。そうして閾値電圧を設計した場合、範囲Aの電子走行層にチャネルが形成されるときのゲート電圧はそれよりも低下する。そのためにリセスのコーナー部に対向する位置の電子走行層にチャネルが形成される電圧をゲート電極に加えると、範囲Aの電子走行層が低抵抗となってしまうことがある。リセスのコーナー部での現象を指標にして閾値電圧を調整すると、コーナー部に対向する微小範囲の電子走行層が高抵抗であることを利用してオフ状態を実現することになり、範囲Aでは低抵抗となっていることがある。図19の構造をとり、コーナー部での現象を指標にして閾値電圧を設定すると、オフ状態であるにもかかわらずに範囲Aでは低抵抗となってリーク電流が流れるといった問題が生じる。
それに対して、上記した実施例では、例えば図1の範囲Aの電子走行層を高抵抗にすることでオフ状態とする。範囲Aの長さは調整可能である。オフ状態を実現する高抵抗範囲の長さを自由に必要な距離に調整することができる。
【0029】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0030】
2:基板
4:i−GaN層(電子走行層)
4b:側面の負固定電荷導入領域
4c:底面の負固定電荷導入領域
6:n−GaN層
6a:AlGaN層(電子供給層)
6b:負固定電荷導入領域
8:絶縁膜
8b:負固定電荷導入領域
10:層間絶縁膜
10a,10b:開口
12:ドレイン電極
14:ゲート絶縁膜
14a:ゲート絶縁膜側面部
14b:ゲート絶縁膜底面部
16:ゲート電極
16a:ゲート電極下面
18:リセス
18a:深いリセス
18b:細いリセス
18c:浅いリセス
20:ソース電極
22:負固定電荷導入領域
22a:負固定電荷導入領域
24:レジスト層
24a:開口
24b:負固定電荷導入領域
24c:開口
25:レジスト層
25a:開口
25b:リセスの側面を覆うレジスト層A:ゲート電極の下面の幅
B:リセス幅
a:幅の狭いリセスの幅
b:負固定電荷の導入距離
c:更なるエッチング距離
d:ゲート絶縁膜の膜厚
e:リセスの側面を覆うレジスト層の膜厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19