【解決手段】電気化学デバイス1は、ケース10と、蓄電素子15と、金属層20とを具備する。ケース10は、ケース本体11と、金属製のシールリング12と、金属製のリッド13と、接合部14とを有する。ケース本体11は、凹部111を有する。シールリング12は、ケース本体11に接合され凹部111と共に液室10aを形成する。リッド13は、液室10aを封止する。接合部14は、表出領域を含みシールリング12及びリッド13を接合させる。ケース10は、上記表出領域が表れる表面を備える。蓄電素子15は、電解液Lを含み、液室10aに収容される。金属層20は、ケース10の表面に配設され、上記表出領域を被覆する。
凹部を有するケース本体と、前記ケース本体に接合され前記凹部と共に液室を形成する金属製のシールリングと、前記液室を封止する金属製のリッドと、表出領域を含み前記シールリング及び前記リッドを接合させる接合部とを有し、前記表出領域が表れる表面を備えたケースと、
電解液を含み、前記液室に収容された蓄電素子と、
前記ケースの表面に配設され、前記表出領域を被覆する金属層と
を具備する電気化学デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスは、ケースと、蓄電素子と、金属層とを具備する。
上記ケースは、ケース本体と、金属製のシールリングと、金属製のリッドと、接合部とを有する。上記ケース本体は、凹部を有する。上記シールリングは、上記ケース本体に接合され上記凹部と共に液室を形成する。上記リッドは、上記液室を封止する。上記接合部は、表出領域を含み上記シールリング及び上記リッドを接合させる。上記ケースは、上記表出領域が表れる表面を備える。
上記蓄電素子は、電解液を含み、上記液室に収容される。
上記金属層は、上記ケースの表面に配設され、上記表出領域を被覆する。
【0009】
上記構成によれば、金属層が接合部の表出領域を被覆し、結露等により付着した水分や、空気等との接触から接合部を保護することが可能となる。したがって、接合部の腐食、酸化、クラック発生等や、これらの進行を防止し、長期信頼性の高い電気化学デバイスを提供することが可能となる。
【0010】
上記金属層は、スズを含んでいてもよい。
【0011】
上記構成によれば、比較的容易に厚い金属層を形成することが可能となる。また、金属層を安価に製造することができるため、低い製造コストで、かつ接合部が安定的に保護された電気化学デバイスを提供することができる。
【0012】
また、上記リッドは、上記シールリングに溶接され、
上記接合部は、
上記表出領域から上記シールリング及び上記リッドの双方にわたって形成された溶融凝固部を有していてもよい。
【0013】
上記構成によれば、リッドがシールリングに溶接され、液室を気密性の高い構造とすることができる。
【0014】
ここで、溶接時には溶接部位(溶融凝固部)の酸化やクラック発生が生じることがある。このような接合部は、溶接後も、腐食や新たなクラックが発生したり、酸化、腐食及びクラックが進行する危険性が高い。加えて、溶接時には、高温により、シールリング及びリッドの金属材料と電解液とが化学的に反応し得る。その結果、特に溶融凝固部には、偏析や反応物が見られ、酸化、腐食及びクラックの進行につながりかねない。上記構成によれば、接合部を金属層によって保護することが可能であり、溶融凝固部の酸化、腐食及びクラックの進行を防止することが可能となる。
【0015】
また、上記蓄電素子は、正極電極部と、負極電極部とを有し、
上記電気化学デバイスは、
上記ケースの表面に形成され上記正極電極部と電気的に接続された正極端子と、
上記ケースの表面に形成され上記負極電極部と電気的に接続された負極端子と
をさらに具備し、
上記金属層は、上記正極端子及び上記負極端子をさらに被覆してもよい。
【0016】
上記構成によれば、正極端子及び負極端子も適切に保護するとともに、所望の導電性も確保することが可能となる。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気化学デバイス1の斜視図であり、
図2は電気化学デバイス10の縦断面図である。これらの図に示すように、電気化学デバイス1は、ケース10、蓄電素子15、正極端子16、正極配線17、負極端子18、負極配線19及び金属層20を備える。
【0019】
図2に示すように、電気化学デバイス1は、ケース10内部に形成された液室10aに蓄電素子15及び電解液Lが封入されて構成されている。詳細は後述するが、蓄電素子15の正極は、ケース本体11内部に形成された正極配線17を介して正極端子16と電気的に接続され、蓄電素子15の負極は、リッド13、シールリング12及び負極配線19を介して負極端子18と電気的に接続される。
【0020】
ケース10は、ケース本体11、シールリング12、リッド13及び接合部14を有する。ケース10は、ケース本体11及びリッド13がシールリング12及び接合部14を介して接合された構成を有し、内部に液室10aが形成される。
【0021】
ケース10は、表面10bを備える。表面10bは、リッド13によって構成された上面10cと、ケース本体11、シールリング12及びリッド13によって構成され上面10c及び底面10eを接続する周面10dと、ケース本体11によって構成され上面10cの反対側の底面10eとを含む。
【0022】
ケース本体11は、例えばセラミックス等の絶縁性材料からなる。ケース本体11は、凹部111を有し、例えば
図1に示すような直方体形状、あるいは円柱状等の他の形状に形成され得る。凹部111は、後述するリッド13との間に液室10aを形成し得る。凹部111の形状は特に限定されず、例えば直方体形状であってもよい。
【0023】
ケース本体11は、例えば、HTCCプロセス又はLTCCプロセスによって製造される。すなわち、ケース本体11は、セラミックス材料を配合し、型等を利用して、複数のセラミックスシートを成型する。これら複数のセラミックスシートを積層し、所定の温度で焼成することで、製造され得る。
【0024】
シールリング12は、金属製であり、ケース本体11に接合され、凹部111と共に液室10aを形成する。シールリング12は、環状のシール部材として構成され、例えばコバール(鉄−ニッケル−コバルト合金)等の金属材料で形成される。あるいは、シールリング12は、銅、コバール等の母材がニッケル、白金、銀、金あるいはパラジウム等の耐腐食性の高い金属からなる被膜によって被覆されたクラッド材とすることも可能である。シールリング12とケース本体11とは、ロウ付けによって接合されてもよい。
【0025】
リッド13は、金属製であり、液室10aを封止する。リッド13は、例えばコバール等の金属材料で形成される。あるいは、リッド13は、コバール等の母材がニッケル、白金、銀、金あるいはパラジウム等の耐腐食性の高い金属からなる被膜によって被覆されたクラッド材とすることも可能である。リッド13が金属製であることから、後述するように、蓄電素子15の負極電極部152と接続され、負極電極部152及び負極端子18(負極配線19)の間を接続し得る。
【0026】
シールリング12及びリッド13の金属材料は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
リッド13は、
図2等に示すように、全体として平坦な構成でもよく、あるいは凸状に構成されてもよい。リッド13は、例えば、シールリング12に溶接される。溶接方法としては、レーザ溶接法、抵抗溶接法等を適用し得る。
【0028】
図3は、金属層20が形成されていない構造体に対し、レーザ溶接法によりリッド13をシールリング12に接合する際の態様を示す模式的な断面図である。同図に示すように、レーザ溶接法では、リッド13と、シールリング12との構成材料がレーザ照射によって溶融凝固することによってこれらの接合が行われる。図中の141は後述する溶融凝固部を示し、Lはレーザ照射を行っているレーザ光を示す。レーザ溶接法によれば、溶接代を大きく確保することなく、気密性の高い封止が可能となる。
【0029】
図4は、
図2の拡大断面図である。接合部14は、表出領域14a,14bを含み、シールリング12及びリッド13を接合させる。接合部14は、例えば、溶融凝固部141と、接面部142とを有する。
【0030】
表出領域14a,14bは、接合部14のうち、ケース10の表面10bに表れる領域であり、本実施形態において、2つの分離した領域を含む。すなわち、表出領域14aは、溶融凝固部141の一部により構成され、表出領域14bは、接面部142の一部により構成される。
【0031】
溶融凝固部141は、表出領域14aからシールリング12及びリッド13の双方にわたって形成され、シールリング12に沿って環状に形成され得る。溶融凝固部141は、レーザ溶接等の溶接によってシールリング12及びリッド13の構成材料が溶融凝固した部分であり、シールリング12及びリッド13の構成材料が異なる場合には、各々の金属からなる合金として構成される。溶融凝固部141は、例えば、上面10cからシールリング12に向かって断面略三角形状に形成され、上面10cに表れた領域が表出領域14aを構成する。
【0032】
接面部142は、シールリング12及びリッド13が相互に接する部分であり、シールリング12及びリッド13の継ぎ目として構成される。接面部142の外周端部は、表出領域14bとしてケース10の周面10dに表れる。
【0033】
なお、接合部14は、接面部142を有さず、全体が溶融凝固部141として構成されてもよい。この場合には、シールリング12及びリッド13が広範囲にわたって溶融し、シールリング12及びリッド13の境界が判然としない状態となり得る。
【0034】
蓄電素子15は、液室10aに収容され、電荷を蓄積し(蓄電)あるいは放出(放電)する。
図2に示すように蓄電素子15は、電解液Lと、正極電極部151と、リッド13に接続された負極電極部152と、セパレートシート153とを有する。蓄電素子15は、正極電極部151及び負極電極部152によってセパレートシート153が挟まれた構成とすることができる。
【0035】
正極電極部151は、具体的には、電極シートと、凹部111の底面に接着する接着層とを含んでいてもよい。負極電極部152は、同様に、電極シートと、電極シートをリッド13に接着する接着層とを含んでいてもよい。正極電極部151及び負極電極部152の各電極シート及びセパレートシート153の構成材料は、必要な特性に応じて適宜選択することができる。例えば、各電極シートは、活物質を含む材料を用いることができ、セパレートシート153はガラス繊維、セルロース繊維、プラスチック繊維等を主材料とする多孔質シートとすることができる。接着層は、導電性接着剤を含むものとすることができる。
【0036】
電解液Lは、任意に選択することが可能である。例えば、カチオンとしては、リチウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン、5−アゾニアスピロ[4.4]ノナンイオン、エチルメチルイミダゾリウムイオン等を含み、アニオンとしてはBF
4−(四フッ化ホウ酸イオン)、PF
6−(六フッ化リン酸イオン)、(CF
3SO
2)
2N
−(TFSAイオン)等のアニオンを含み、溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン等を含むものとすることができる。具体的には、5−アゾニアスピロ[4.4]ノナン−BF
4やエチルメチルイミダゾリウム−BF
4のプロピレンカーボネート溶液等を用いることができる。
【0037】
正極端子16は、表面10bのうちの底面10eに形成され、正極電極部151と接続される。正極端子16は、具体的には、正極配線17によって蓄電素子15の正極電極部151と接続される。正極端子16は、実装基板等との接続に用いられる外部端子として機能する。なお、正極端子16は、表面10bに形成されればよく、周面10d、あるいは底面10e及び周面10dの双方にわたって屈曲して形成されてもよい。
【0038】
正極配線17は、蓄電素子15の正極電極部151と正極端子16とを電気的に接続する。正極配線17の構成は任意の導電性材料からなりケース本体11の内部を通って正極端子16へ接続され得るが、配置や形状は特に限定されない。
【0039】
負極端子18は、表面10bのうちの底面10eに形成され、第2の電極部152と接続される。負極端子18は、具体的には、負極配線19、リッド13及びシールリング12によって蓄電素子15の負極電極部152と接続される。負極端子18は、実装基板等との接続に用いられる外部端子として機能する。なお、負極端子18は、正極端子16と同様に、表面10bに形成されればよく、周面10d、あるいは底面10e及び周面10dの双方にわたって屈曲して形成されてもよい。
【0040】
負極配線19は、リッド13及びシールリング12を介して蓄電素子15の負極電極部152と負極端子18とを電気的に接続する。具体的には、負極配線19は、シールリング12からケース10の周面10dに沿って形成され、負極端子18に接続される構成とすることができる。負極配線19は任意の導電性材料からなり、配置や形状は特に限定されない。
【0041】
金属層20は、ケース10の表面10bに配設され、表出領域14a,14bを被覆する。加えて、金属層20は、正極端子16及び負極端子18も被覆するとともに、負極配線19も被覆する。すなわち、金属層20は、上面10c、周面10dの一部、及び底面10eの一部に配設される。
【0042】
金属層20は、所望の耐腐食性、耐湿性を得られる金属材料で形成され、例えばスズ、ニッケル、金等を含んでいてもよい。また金属層20は、以下に説明するような複数層からなる構造であってもよい。これにより、所望の機能を実現する複数の金属材料を適用することが可能となり、表出領域14a,14bを含む接合部14を安定的に保護することが可能となる。
【0043】
図4に示すように、金属層20は、第1の金属層20a、第2の金属層20b及び第3の金属層20cを有する。第1の金属層20aは、表面10b上に配設され、例えばニッケル、鉛及び金の合金で形成され得る。第2の金属層20bは、第1の金属層20a上に配設され、例えばニッケル及び金の合金で形成され得る。第3の金属層20cは、第2の金属層20b上に配設され、例えばスズで形成され得る。なお、上記金属材料は例示であり、特に限定されない。
【0044】
金属層20は、図示はしないが、金属層20全体にわたって同一の層構造を有していてもよい。
【0045】
金属層20は、例えば、シールリング12がリッド13に接合されて液室10aが封止され、ケース10の表面10bに正極端子16、負極端子18及び負極配線19が配設された後、メッキ法により形成され得る。メッキ法としては、電解メッキ法でも、無電解メッキ法でも特に限定されない。金属層20の形成方法は、メッキ法に限定されず、層毎に異なる手法を用いて形成されてもよい。金属層20は、例えば、0.1μm〜数百μmの厚みとすることができる。
【0046】
[電気化学デバイスの作用効果]
電気化学デバイス1は、接合部14の表出領域14a,14bを金属層20が被覆しているため、結露等により付着した水分や、空気等との接触から接合部を保護することが可能となる。これにより、接合部14、シールリング12及びリッド13の腐食、これらの酸化やクラックの拡大を防止することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、電気化学デバイス1の長寿命化や不具合の防止に貢献できる。
【0047】
また、リッドがシールリングに溶接されることにより、液室を気密性の高い構造とすることができる。その一方で、溶接時及び溶接後に以下のような問題が生じていた。
【0048】
例えば、溶融凝固部は、溶接時に高温によって酸化が生じ、あるいは、溶接後の急激な凝固の過程でクラックが生じ得る。さらにこのような溶融凝固部は、溶接後、空気との接触や水分の付着等により、酸化や腐食が進行する可能性がある。特にクラックに関しては、残留応力により経時的に拡大し、ケース自体の破損につながりかねない。また、仮にリッドが上述のクラッド材で構成されたとしても、溶接時に金属被膜が母材の金属と合金化し酸化の影響を受けやすくなるため、上記問題は解消し難い。
【0049】
また、溶接時に、溶接部位と電解液の夾雑が発生し、シールリング及びリッドの金属材料と電解液とが化学的に反応することも知られている。例えば、電解液が硫黄成分を含有するスルホランや直鎖スルホン等を含む場合、溶接時に溶媒の分解によって発生する硫黄がシールリングやリッドの金属材料と反応し、硫化物が形成され得る。このような硫化物が偏析するサルファクラックがケースを貫通した場合には、漏液が発生して製造工程上での検査で不良となり、歩留まりが低下する。また漏液が発生しない程度の小規模なサルファクラックが溶融凝固部の表面等に発生した場合には、酸化、腐食及びクラックが進行し、長期信頼性を減じる結果となり得る。なお、硫黄以外にも、炭素、リンなど、電解液として一般に含まれる元素も、リッド等と反応し得るため、上記不具合が発生する可能性がある。
【0050】
加えて、シールリング及びリッドが異種金属で構成される場合、結露などで生じた水分の存在下で、局所的に化学電池が形成され、腐食が発生し得る。これを防止するため、上記クラッド材が適用され得るが、上述のように酸化や腐食の影響を免れない。
【0051】
そこで本実施形態によれば、金属層20が接合部14の表出領域14a,14bを被覆することから、上記のような腐食、酸化部位やクラックを確実に被覆することができる。したがって、水分や、空気等との接触から接合部を保護し、酸化や腐食、クラックの進行等を防止することが可能となる。また、既に形成されたクラックからの漏液を防止し、不具合を抑止することが可能となる。
【0052】
また、金属層20が正極端子16、負極端子18及び負極配線19を被覆していることから、これらの金属材料の酸化や水分による腐食も防止することができるとともに、所望の導電性を確保することが可能となる。
【0053】
[変形例]
図5は、本実施形態の変形例に係る拡大断面図である。金属層20は、複数層からなる構成に限定されず、一層のみの構成であってもよい。金属層20は、例えばスズ、ニッケル、金又はこれらの合金を含んでいてもよい。
【0054】
金属層20がスズを含むことにより、メッキ法により比較的容易に厚い金属層20を形成することができ、例えば数十μm〜数百μmの厚みで形成し得る。これにより、金属層20がより確実に表出領域14a,14bを被覆し、耐腐食性等を高めることが可能となる。加えて、スズメッキは、比較的安価に実施することが可能なため、低コストでかつ接合部14が安定的に保護された電気化学デバイス1を提供することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態に係る電気化学デバイスの構成を示す縦断面図である。本実施形態に係る電気化学デバイス2は、電気化学デバイス1と同様に、ケース30、蓄電素子15、正極端子16、正極配線17、負極端子18、負極配線19及び金属層20を備えるが、ケース30の接合部34の構成が接合部14と異なる。すなわちケース30は、ケース10と同様の構成のケース本体11、シールリング12及びリッド13に加えて、接合部34を有する。
【0056】
図7は、
図6の拡大断面図である。同図に示すように、接合部34は、表出領域34aを含み、シールリング12及びリッド13を接合させる。接合部34は、溶融凝固部341と、接面部342とを有する。
【0057】
溶融凝固部341は、表出領域34aからシールリング12及びリッド13の双方にわたって形成され、シールリング12に沿って環状に形成され得る。溶融凝固部341は、抵抗溶接等の溶接によって形成され、周面10dからシールリング12及びリッド13の境界部、すなわち接面部342に沿って、断面略三角形状に構成され得る。周面10dに表れた領域が、表出領域34aを構成する。
【0058】
接面部342は、シールリング12及びリッド13が相互に接する部分であり、シールリング12及びリッド13の継ぎ目として構成される。接面部342の外周端部には、溶融凝固部341が形成され得る。
【0059】
なお溶融凝固部341は、周面10dに表れる接面部342の一部にのみ形成されていてもよく、この場合には、接面部342の周面10dに表れる領域も表出領域として定義され得る。
【0060】
金属層20は、ケース10の表面10bに配設され、表出領域34aを被覆するとともに、正極端子16、負極端子18及び負極配線19をさらに被覆し得る。金属層20は、第1の実施形態と同様に、リッド13に形成された上面10cと、負極配線19が表れた周面10dの一部と、正極端子16及び負極端子18が現れた底面10eの一部とに配設される。
【0061】
上記構成によっても、電気化学デバイス2は、接合部34の表出領域34aを金属層20が被覆しているため、水分の付着等による接合部14、シールリング12及びリッド13の腐食や酸化を防止することも可能となる。したがって、電気化学デバイス2の長寿命化や不具合の防止に貢献できる。
【0062】
<第3の実施形態>
図8は、本発明の第3の実施形態に係る電気化学デバイスの構成を示す縦断面図である。本実施形態に係る電気化学デバイス3は、電気化学デバイス1と同様に、ケース10、蓄電素子15、正極端子16、正極配線17、負極端子18、負極配線19及び金属層21を備えるが、金属層21の構成が金属層20と異なる。
【0063】
金属層21は、ケース10の表面10bに配設され、表出領域14a,14bを被覆するが、正極端子16及び負極端子18は被覆しない。すなわち、金属層21は、上面10c及び周面10dの上部のみ形成される。また、金属層21は、金属層20と同様に、複数の層を有していてもよい。
【0064】
金属層21は、上述の金属層20と同様に、メッキ法により形成し得る。この場合は、例えば、正極端子16、負極端子18及び負極配線19をマスキング等した後、メッキ法を適用することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定され
るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿
論である。
【0066】
例えば、正極配線17は表面10bに配設されないと説明したが、配設される構成としてもよい。この場合、金属層20は、表面10bに配設された正極配線17上を被覆してもよい。
【0067】
あるいは、シールリング12とリッド13は、溶接以外にも、例えばリフロー方式によるハンダ付けや、導電性接着材等によって接合されてもよい。この場合、接合部14は、シールリング12とリッド13との間に形成された接合層を有してもよく、ケース10の周面10dに表れた当該接合層の外周端部が、表出領域を構成し得る。