【解決手段】交互に配置された誘電体層111及び内部電極121,122を備え、積層配置されるアクティブ部115と、隣接したアクティブ部115間に配置され、マグネシウムを含む層間マージン部118と、最上側に配置されたアクティブ部115の上側に配置され、マグネシウムを含む上部カバー部116と、最下側に配置されたアクティブ部の下側に配置されて、マグネシウムを含む下部カバー部117と、を含む。上部カバー部116、下部カバー部117、及び層間マージン部118は、アクティブ部115と隣接した界面に形成されたマグネシウムニッケル酸化物層140を含む。
前記上部カバー部の厚さをC1、前記下部カバー部の厚さをC2、前記層間マージン部の厚さをBnとそれぞれ規定すると、(C1+C2)/4≦Bnを満たす、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
アクティブ部を形成するための複数の第1グリーンシート、層間マージン部を形成するための複数の第2グリーンシート、及びカバー部を形成するための複数の第3グリーンシートを準備する段階と、
前記複数の第1グリーンシートに内部電極パターンを印刷する段階と、
前記第1グリーンシート、第2グリーンシート、及び第3グリーンシートを積層してグリーンシート積層体を準備する段階と、
前記グリーンシート積層体を焼成して、複数のアクティブ部と、前記アクティブ部を区分する層間マージン部と、最上側に配置されたアクティブ部の上側及び最下側に配置されたアクティブ部の下側に配置されたカバー部と、を含むセラミック本体を準備する段階と、を含み、
前記第2グリーンシート及び前記第3グリーンシートは、1mol%以上のマグネシウムを含む、積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は、以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0015】
積層セラミック電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の一部を切開して概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1のA‐A’断面図である。
【0016】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、セラミック本体110と、外部電極131、132と、を含む。
【0017】
本発明の一実施形態によると、
図1及び
図2に示したT方向はセラミック本体110の厚さ方向であり、L方向はセラミック本体110の長さ方向であり、W方向はセラミック本体110の幅方向である。
【0018】
上記厚さT方向は、上記内部電極及び誘電体層の積層方向を意味する。
【0019】
図1及び
図2を参照すると、上記セラミック本体110は、幅方向に対向する第1側面1及び第2側面2と、長さ方向に対向する第3側面3及び第4側面4と、厚さ方向に対向する第1主面5及び第2主面6と、を有することができる。上記セラミック本体110の形状は特に制限されない。例えば、上記セラミック本体110は、完全な直線を有する六面体の形状ではないが、略六面体の形状からなってもよい。
【0020】
図2に示されたように、上記セラミック本体は、複数個のアクティブ部115と、二つのカバー部116、117と、少なくとも一つ以上の層間マージン部118と、を含み、上記アクティブ部115間に層間マージン部118が配置され、最上部に配置されたアクティブ部の上側及び最下部に配置されたアクティブ部の下側にはカバー部116、117を配置することができる。
【0021】
上記上側及び下側、上部及び下部は、特に示されていない限り、セラミック本体で別に区別されるものではなく、それぞれ厚さ方向の一側及び他側、厚さ方向の一方の一部領域、及びそれと反対の厚さ方向の他方の一部領域を意味するものと理解してもよい。
【0022】
図2を参照すると、上記アクティブ部115は、内部電極121、122と、誘電体層111と、を含み、内部電極121、122と誘電体層111が交互に積層されるように形成できる。上記内部電極121、122は、第1内部電極121と、第2内部電極122と、を含むことができる。上記第1内部電極121と第2内部電極122は、誘電体層111を挟んで交互に配置することができる。例えば、第1内部電極、誘電体層、第2内部電極、誘電体層の順序が繰り返されるように、セラミック本体の厚さ方向に内部電極及び誘電体層を積層してアクティブ部を形成してもよく、上記アクティブ部115は、上記セラミック本体の厚さ方向に複数個配置されてもよい。上記アクティブ部115は、その間に配置された層間マージン部118によって区分することができる。
【0023】
上記アクティブ部115と、上記アクティブ部間に配置された層間マージン部118とが積層された領域は、以下において、必要に応じて中間部として説明する。
【0024】
上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)粉末であってもよい。また、上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO
3)などの粉末に、本発明の目的に応じて、様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されてもよい。
【0025】
上記層間マージン部118とカバー部116、117は、上記誘電体層111を形成する原料と類似する組成からなることができ、本発明の一実施形態によりマグネシウム(Mg)を含む。
【0026】
上記第1内部電極121は、上記セラミック本体の第3側面3を介して露出し、上記第2内部電極122は、上記セラミック本体の第4側面4を介して露出することができる。
【0027】
上記内部電極を形成する材料は、特に制限されず、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)のいずれか一つ以上の物質からなる導電性ペーストを使用して形成されてもよい。
【0028】
本発明の一実施形態によると、上記内部電極121、122は、ニッケル(Ni)を含むことができる。
【0029】
上記外部電極131、132は、上記セラミック本体の第3側面3及び第4側面4に配置されて、上記第1内部電極121及び第2内部電極122と連結されることができる。上記外部電極131、132は、第1外部電極131と、第2外部電極132と、を含むことができ、上記第1内部電極121は第1外部電極131と連結され、上記第2内部電極122は第2外部電極132と連結されることができる。
【0030】
上記外部電極131、132は、伝導性ペーストを上記セラミック本体の第3側面及び第4側面に塗布し焼成して形成することができ、外部電極の形状及び形成方法は、特に限定されない。
【0031】
上記カバー部116、117は、上記アクティブ部115を外部衝撃から保護するために、最上部及び最下部に配置されたアクティブ部115の上側及び下側にそれぞれ配置することができる。換言すれば、上記カバー部は、上記中間部の上側及び下側に配置することができる。
【0032】
上記カバー部116、117は、上記中間部の上側に配置された上部カバー部116と、上記中間部の下側に配置された下部カバー部117と、を含むことができる。
【0033】
通常、内部電極及び誘電体層が薄層化される場合、アクティブ部の厚さは減少し、カバー部のような厚さ方向のマージン部の厚さは増加し得る。内部電極が薄層化される場合、金属を主成分とする内部電極の割合が減少するに伴い、積層セラミック電子部品の製造コストが下がるという利点がある。しかし、セラミック本体内で厚さ方向のマージン部の厚さが増加すると、セラミック本体の焼成過程で除去されるべき炭素成分が除去されずにセラミック本体内に残り、残留炭素の除去が困難となる問題がある。
【0034】
また、上記のように、内部電極の薄層化によりセラミック本体の厚さ方向のマージン部の厚さが増加した場合、上部カバー部及び下部カバー部のみで厚さ方向のマージン部を構成すると、上部カバー部及び下部カバー部の厚さが増加する可能性がある。
【0035】
セラミック本体は、内部電極パターンが配置された複数のグリーンシートと、内部電極パターンが配置されていないグリーンシートを積層した後、積層方向に圧着する工程を経て形成されることができる。この際、カバー部を形成するためのグリーンシートは、アクティブ部を形成するための内部電極が配置されたグリーンシート積層体の上部及び下部に配置されることができるが、カバー部を形成するためのグリーンシート積層体の厚さが増加すると、アクティブ部を形成するためのグリーンシート積層体の圧着がスムーズに行われない恐れがある。
【0036】
アクティブ部を形成するグリーンシート積層体の圧着がスムーズに行われないと、内部電極と誘電体層との間に浮きが発生する可能性がある。
【0037】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、従来、セラミック本体内に単数で含まれたアクティブ部を複数個に分離して配置し、アクティブ部115間に層間マージン部118を配置して厚さ方向のマージン部を分散させることで、セラミック本体に残留する有機成分を効果的に外部に排出することができる。よって、セラミック本体の形成過程でアクティブ部を形成するグリーンシート間の圧着工程性を向上させることができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、厚さ方向のマージン部は、カバー部116、117と、層間マージン部118と、を含む。
【0039】
上記セラミック本体110は、内部電極ペーストが印刷されたグリーンシート及び内部電極ペーストが印刷されていないグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体の焼成により形成することができる。内部電極ペーストが印刷されたグリーンシートは、積層されてアクティブ部115を形成し、内部電極ペーストが印刷されていないグリーンシートは、カバー部116、117又は層間マージン部118を形成することができる。
【0040】
本発明の一実施形態とは異なり、アクティブ部が層間マージン部により分離されて配置されず、単一のアクティブ部として配置される場合、カバー部の厚さが厚く形成され、カバー部の厚さ方向の中心部から内部電極又は外部面までの距離が増加して、カバー部の残留炭素がスムーズに排出されない恐れがある。また、積層セラミック電子部品の製造工程のうちグリーンシート積層体を加圧する工程では、カバー部の厚さの増加により、アクティブ部を形成するグリーンシートの圧着がスムーズに行われないという問題があり得る。
【0041】
しかし、本発明の一実施形態のように、アクティブ部115を厚さ方向に複数個配置し、アクティブ部115間に層間マージン部118を配置する場合、厚さ方向のマージン部の残留炭素の排出経路が増加する効果を奏することができ、厚さ方向のマージン部をセラミック本体の厚さ方向の中心部まで分散することが可能で、アクティブ部を形成するグリーンシートの圧着が容易になる。
【0042】
ただし、アクティブ部115間に層間マージン部118が配置される場合、セラミック本体の外部に完全に排出されない層間マージン部118の残留炭素が層間マージン部118とアクティブ部115との間に蓄積され、そのため、層間マージン部118とアクティブ部115との結合力がアクティブ部115内の層間結合力より弱いという問題がある。
【0043】
また、カバー部116、117の残留炭素が完全に排出されない場合にも、アクティブ部115とカバー部116、117との結合力が、アクティブ部115内の層間結合力より弱い可能性がある。
【0044】
しかし、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、カバー部116、117と層間マージン部118がマグネシウム(Mg)を含むようにすることで、層間マージン部118とアクティブ部115との結合力、及びカバー部116、117とアクティブ部115との結合力を増加させることができる。
【0045】
また、層間マージン部118がマグネシウムを含むことで、層間マージン部118の強度を上昇させることができ、これにより、セラミック本体110の全体の強度を向上させることができる。
【0046】
図3は
図2のP領域に対する拡大図である。
【0047】
図3を参照すると、カバー部116、117及び層間マージン部118に含まれたマグネシウムは、セラミック本体の焼成過程で、隣接した内部電極121、122に含まれるニッケル(Ni)と反応して、アクティブ部115と隣接したカバー部116、117の境界面、及びアクティブ部115と隣接した層間マージン部118の境界面に、マグネシウムニッケル酸化物層140を形成する。これにより、上記マグネシウムニッケル酸化物層140は、層間結合力を向上させることができる。
【0048】
上記マグネシウムニッケル酸化物層140は、化学式(Mg
xNi
1−x)Oで表され、酸化マグネシウムと酸化ニッケルが固溶して形成されることができる。上記Xは、0<X<1を満たす有理数であってもよい。
【0049】
本発明の一実施形態によると、上記層間マージン部118の厚さは、上記誘電体層111の厚さの5倍以上とすることができる。層間マージン部118の厚さを、上記アクティブ部内の誘電体層111の厚さの5倍以上にした場合は、層間マージン部を挟んで配置される内部電極により静電容量が発生することを減少させることができ、設計容量を容易に具現することができる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、上記層間マージン部118の厚さは、上記カバー部116、117の厚さの1/2以上に形成することができる。
図2を参照すると、上記カバー部116、117の厚さをC、上記層間マージン部118の厚さをBnと規定すると、C/2≦Bnを満たすことができる。層間マージン部の厚さをカバー部の厚さの1/2以上にすると、セラミック本体の厚さ方向のマージン部の分散効率が向上し、積層セラミック電子部品の製造段階でグリーンシート積層体を圧着する際に、アクティブ部を構成するグリーンシートまで圧力を効果的に伝達することができる。これにより、積層セラミック電子部品の電気的特性及び信頼性を向上させることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、上記層間マージン部118の厚さは、上記カバー部116、117の厚さ以下とすることができる。
【0052】
上記カバー部116、117の厚さCは、上部カバー部の厚さと下部カバー部の厚さの平均とすることができ、上部カバー部116の厚さをC1、下部カバー部117の厚さをC2とすると、C=(C1+C2)/2と規定することができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、上記カバー部116、117は、1mol%〜2.5mol%のマグネシウム(Mg)を含むことができる。上記カバー部116、117に含まれるマグネシウムの含量が1mol%未満の場合には、カバー部116、117とアクティブ部115との間にマグネシウムニッケル酸化物層140が十分に形成されず層間結合力を確保することが困難となり、上記カバー部116、117に含まれるマグネシウムの含量が2.5mol%を超える場合には、カバー部内に2次相が形成されることがあり、電気的特性が劣化する問題が発生し得る。
【0054】
本発明の一実施形態によると、上記層間マージン部118は、カバー部116、117の最小マグネシウム含量である1mol%以上のマグネシウムを含むことができる。層間マージン部118が1mol%以上のマグネシウムを含むと、層間マージン部とアクティブ部との結合力を向上させることができ、層間マージン部118の機械的強度の向上により、層間マージン部の熱クラック発生率を減少させることができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、上記上部カバー部116又は上記下部カバー部117に含まれたマグネシウムのmol%を[Mg]
C、上記層間マージン部118に含まれたマグネシウムのmol%を[Mg]
B、上記カバー部116、117の厚さをC、上記層間マージン部118の厚さをBnと規定すると、[Mg]
B≦2×[Mg]
C×(Bn/C)を満たすことができる。上記カバー部116、117の厚さCは、上部カバー部の厚さと下部カバー部の厚さの平均とすることができ、上部カバー部116の厚さをC1、下部カバー部117の厚さをC2とすると、C=(C1+C2)/2と規定することができる。
【0056】
上記層間マージン部118は、カバー部とは異なり、隣接したアクティブ部が層間マージン部の上側及び下側の2箇所に配置されるため、層間マージン部に含まれたマグネシウムは、隣接した二つのアクティブ部と反応することができる。
【0057】
したがって、層間マージン部118は、カバー部のマグネシウムの含量とカバー部に対する層間マージン部の厚さ比を乗算([Mg]
C×(Bn/C))した値の2倍までマグネシウムを含むことができる。
【0058】
上記層間マージン部118のマグネシウム含量が、カバー部116、117のマグネシウム含量とカバー部に対する層間マージン部の厚さ比(Bn/C)を乗算した値の2倍を超える場合、すなわち、層間マージン部が、2×[Mg]
C×(Bn/C)を超えてマグネシウムを含む場合には、層間マージン部118とアクティブ部115の界面における収縮挙動差によってクラックが発生する恐れがある。
【0059】
また、層間マージン部118が、2×[Mg]
C×(Bn/C)を超えてマグネシウムを含むと、マグネシウムニッケル酸化物層を形成することができず、残留したマグネシウムにより2次相が形成されて、電気的特性の劣化が発生し得る。
【0060】
上記カバー部116、117及び層間マージン部118に含まれたマグネシウムは、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO
3)などの形態で含まれてもよく、特に制限されない。
【0061】
積層セラミック電子部品の製造方法
図4は本発明の他の一実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【0062】
本実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法は、第1グリーンシート、第2グリーンシート、及び第3グリーンシートを準備する段階(S1)と、上記第1グリーンシートに内部電極パターンを印刷する段階(S2)と、グリーンシート積層体を準備する段階(S3)と、セラミック本体を準備する段階(S4)と、を含むことができる。
【0063】
本実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法に関する説明のうち、上述した本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品と重複する内容はここでは省略し、相違点を中心に説明する。
【0064】
上記第1グリーンシートはアクティブ部を形成するためのグリーンシート(S1a)であり、上記第2グリーンシートは層間マージン部を形成するためのグリーンシート(S1b)であり、上記第3グリーンシートはカバー部を形成するためのグリーンシート(S1c)である。上記第1〜第3グリーンシートは、それぞれ複数個に形成することができる。
【0065】
上記第1グリーンシートには内部電極パターンを印刷することができ、内部電極パターンが印刷された第1グリーンシートは、積層されてアクティブ部を形成することができる。
【0066】
上記第2グリーンシートは、1層以上積層されて層間マージン部を形成することができ、上記第3グリーンシートは、1層以上積層されてカバー部を形成することができる。
【0067】
次に、アクティブ部間に層間マージン部が配置され、最外側のアクティブ部の上側及び下側にカバー部が形成されるように、上記第1〜第3グリーンシートを積層してグリーンシート積層体を準備した後、上記グリーンシート積層体を焼成してセラミック本体を形成することができる。
【0068】
上記第2グリーンシート及び第3グリーンシートは1mol%以上のマグネシウムを含み、層間マージン部とカバー部が1mol%以上のマグネシウムを含むことができる。
【0069】
上記第3グリーンシートは、積層セラミック電子部品の電気的特性の劣化を防止するために、2.5mol%以下のマグネシウムを含むことができる。
【0070】
本発明の一実施形態によると、上記第2グリーンシートに含まれたマグネシウムのmol%を[Mg]
2、上記第3グリーンシートに含まれたマグネシウムのmol%を[Mg]
3、上記カバー部の厚さをC、上記層間マージン部の厚さをBnと規定すると、[Mg]
2≦2×[Mg]
3×(Bn/C)を満たすことができる。[Mg]
2が2×[Mg]
3×(Bn/C)を超える場合、層間マージン部とアクティブ部との間でクラックが発生することがあり、電気的特性が低下することがある。
【0071】
上記グリーンシート積層体の焼成は、アクティブ部とカバー層との間及びアクティブ部と層間マージン部との間に、マグネシウムニッケル酸化物層が形成されるように、約1150℃以下、約10
−11atm〜約10
−10atmの酸素分圧(PO
2)下で行われることができる。
【0072】
実験例
下記表1は、カバー部のマグネシウム含量と層間マージン部のマグネシウム含量の関係による層間マージン部の熱クラック発生率、及び層間マージン部とアクティブ部との界面クラック発生率を調査した結果を示すデータである。
【0073】
表1の積層セラミック電子部品は、下記のように作製された。
【0074】
チタン酸バリウム(BaTiO
3)などの粉末を含んでなるスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布して乾燥し、複数個の第1グリーンシートを準備する。
【0075】
チタン酸バリウム(BaTiO
3)などの粉末とマグネシウムを含む第2グリーンシート及び第3グリーンシートを複数個準備する。上記第3グリーンシートは、形成されるカバー部がマグネシウムを1mol%含むように([Mg]
C=1mol%)作製され、上記第2グリーンシートは、形成される層間マージン部に含まれるマグネシウムの濃度が下記表1の「[Mg]
B(層間マージン部に含まれたマグネシウムの濃度)」になるように多様に作製された。
【0076】
次に、上記第1グリーンシートに、スクリーン印刷工程によりニッケルを含む内部電極用導電性ペーストを塗布して、内部電極パターンを形成する。
【0077】
次に、内部電極が印刷された第1グリーンシートと第2グリーンシート及び第3グリーンシートを積層して等圧圧縮した。圧着が完了したグリーンシート積層体を、内部電極パターンの一端が切断面を介して交互に露出するように個別チップの形態に切断し、切断したチップは脱バインダーを行った。
【0078】
次に、マグネシウムニッケル酸化物層が形成されるように、約1150℃以下、約10
−11atm〜約10
−10atmの雰囲気で焼成してセラミック本体を形成した。焼成後、セラミック本体のサイズは、長さ×幅×厚さ(L×W×T)が約1.0mm×0.5mm×0.5mm(L×W、1005サイズ、誤差範囲±0.2mm)であった。セラミック本体内において、アクティブ部は4個、層間マージン部は3個、カバー部は、上部カバー部及び下部カバー部それぞれ1個ずつ配置された。上記層間マージン部とカバー部の厚さは約15μmと、実質的に同様に作製された。
【0079】
上記アクティブ部に含まれた誘電体層の厚さは約1.2μmであり、内部電極の厚さは約1.1μmであった。
【0080】
下記表1において、層間マージン部の熱クラック発生率は、作製された100個の積層セラミック電子部品に対して、350℃の鉛耐熱評価条件で、層間マージン部内にクラックが発生した積層セラミック電子部品の個数を調査して測定し、層間マージン部の界面クラック発生率は、100個の積層セラミック電子部品に対して、350℃の鉛耐熱評価条件で、層間マージン部の界面にクラックが発生した積層セラミック電子部品の個数を調査して測定した。
【0081】
下記表1の実験例は、2×[Mg]
C×(Bn/C)の値が2×1mol%×1=2mol%の条件で行われた。
【0083】
表1に示されるように、層間マージン部のマグネシウム含量が1mol%未満のサンプル1〜5の場合、機械的強度が十分に確保されず、層間マージン部の熱クラック発生率が高いことを確認することができた。
一方、層間マージン部のマグネシウム含量が2×[Mg]
C×(Bn/C)の値である2mol%を超えるサンプル12〜16の場合、カバー部のマグネシウム含量と層間マージン部のマグネシウム含量との差の増加により、カバー部と層間マージン部の焼結挙動差が増加し、これにより層間マージン部の界面クラック発生率が増加することを確認することができた。
【0084】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。