特開2015-211262(P2015-211262A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-211262(P2015-211262A)
(43)【公開日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】コンデンサマイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/04 20060101AFI20151027BHJP
   H04R 1/04 20060101ALI20151027BHJP
【FI】
   H04R19/04
   H04R1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-90201(P2014-90201)
(22)【出願日】2014年4月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【テーマコード(参考)】
5D017
5D021
【Fターム(参考)】
5D017BD03
5D021CC19
(57)【要約】
【課題】マイクロホンユニットの着脱の際に、信号出力端子に対し帯電した人が触れても、振動板の焼損等を防止する。
【解決手段】マイクロホンユニット3は、マイクボディ2側の端子6に当接可能な第1の接続端子14,15と、固定極10側に接続された第2の接続端子16と、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に設けられ、前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが連結された際、圧縮されることにより前記第1の接続端子を前記マイクボディ側に付勢するコイルばね17とを備え、前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが連結されることにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とが接続されると共に、前記第1の接続端子が前記マイクボディ側の端子に接続され、前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが分離されることにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とが前記コイルばねの付勢力により分離される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波により振動する振動板を固定極に対向配置してなるマイクロホンユニットと、前記マイクロホンユニットから信号出力端子を介して音声信号が入力される回路部を収容したマイクボディとが分離可能なコンデンサマイクロホンであって、
前記マイクロホンユニットは、
前記マイクボディ側の端子に当接可能な第1の接続端子と、前記固定極側に接続された第2の接続端子と、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に設けられ、前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが連結された際、圧縮されることにより前記第1の接続端子を前記マイクボディ側に付勢するコイルばねとを備え、
前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが連結されることにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とが接続されると共に、前記第1の接続端子が前記マイクボディ側の端子に接続され、
前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが分離されることにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とが前記コイルばねの付勢力により分離されることを特徴とするコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが分離されることにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とが離される距離は、前記第1の接続端子に人体が触れた際に印加される静電気の電圧に対し、少なくとも前記第2の接続端子との間で空気の絶縁破壊が生じない距離となされていることを特徴とする請求項1に記載されたコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
前記コイルばねは、非導電性材料により形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたコンデンサマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波により振動する振動板を固定極に対向配置してなるマイクロホンユニットと音声信号を処理する回路部を有するボディとが分離可能なコンデンサマイクロホンに関し、特に、マイクロホンユニットを取り外した際に、振動板の焼損等の不具合を防止することのできるコンデンサマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、1本のコンデンサマイクロホンにおいて、例えば2つのコンデンサマイクロホンユニットを内蔵したものがある。このコンデンサマイクロホンは、各ユニットに加える成極電圧を加減することにより指向性を可変とするものであるが、このようなコンデンサマイクロホンには、コストが高くなるという課題がある。
一方、音声信号を処理する回路部等を収容するマイクボディからマイクロホンユニット(ヘッドケース)を取り外し、マイクロホンユニットが交換可能なコンデンサマイクロホンが知られている。この構成によれば、指向性の異なるユニットのみを交換することによって、容易かつ低コストで可変指向性マイクロホンを実現することができる。
図5に、従来のマイクロホンユニットを取り外し可能なコンデンサマイクロホンの側面図を示し、図6にその断面図を示す。尚、図5図6は、マイクボディからマイクロホンユニットを取り外した状態を示している。
【0003】
図示するコンデンサマイクロホン50は、マイクロホンユニット52と、マイクボディ51とを備える。マイクロホンユニット52は、音波を音声信号に変換する。マイクボディ51には、マイクロホンユニット52から受け取った音声信号を処理する回路部等が収容されている。前記マイクロホンユニット52は、前記マイクボディ51に対し、例えば螺合することにより着脱自在に取り付けられている。
前記マイクボディ51は、静電気を遮蔽する中空円筒状のケーシング53を有している。このケーシング53内には、回路部54やコネクタ55等が収容されている。
【0004】
また、マイクロホンユニット52は、多数の開口が形成されたヘッドケース65内に、固定極や振動板からなるユニット本体56を収容している。また、マイクロホンユニット52は、受けピン端子57と、信号出力端子59とを有している。受けピン端子57は、ユニット本体56の固定極と接続され、ユニット本体56後方に配置されている。信号出力端子59は、コイルばね58を介して受けピン端子57に接続される。
【0005】
また、前記マイクボディ51の先端開口内には接続端子60が設けられ、前記信号出力端子59の先端が当接可能になっている。接続端子60は回路部54側に接続されている。
前記マイクロホンユニット52は、例えば前記マイクボディ51におけるケーシング53の先端開口に螺合する。その結果、信号出力端子59の先端は前記コイルばね58の付勢力によって接続端子60に押し付けられる。したがって、前記マイクロホンユニット52は、ユニット本体56と回路部54とが電気的に接続されてマイクロホンとして機能する。
【0006】
また、このように構成されたコンデンサマイクロホン50にあっては、マイクロホンユニット52とマイクボディ51との連結部の仕様が共通化されていることがある。仕様の共通化によって、指向性の異なるマイクロホンユニット52のみを取り替えることが可能となる。したがって、マイクボディ51を共用した可変指向性のマイクロホンを容易に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−65147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記構成のコンデンサマイクロホン50にあっては、マイクロホンユニット52の着脱の際に、信号出力端子59に対し帯電した人体(150〜200pF)が触れることがあった。このとき、振動板と固定極との間に静電気の電圧(3kV〜10kV)が加わる。これにより振動板が固定極に吸着し、振動板を破損する虞があるという課題があった。
また、無指向性ユニットでは、弾性制御であるため振動板の張力が高い。そのため、振動板が固定極に吸着する問題は軽減される。しかし、振動板と固定極間に加わった電圧が高いときには、火花放電が発生し、振動板を破損するという課題があった。
また、エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットにあっては、振動板が破損しない場合であっても、エレクトレットの表面電位が低下することがある。その結果、エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの感度が劣化するという課題があった。
【0009】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、音波により振動する振動板を固定極に対向配置してなるマイクロホンユニットと、前記マイクロホンユニットから信号出力端子を介して音声信号が入力される回路部を収容したマイクボディとが分離可能なコンデンサマイクロホンにおいて、前記マイクロホンユニットの着脱の際に、前記信号出力端子に対し帯電した人が触れても、振動板の焼損等を防止することのできるコンデンサマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明に係るコンデンサマイクロホンは、音波により振動する振動板を固定極に対向配置してなるマイクロホンユニットと、前記マイクロホンユニットから信号出力端子を介して音声信号が入力される回路部を収容したマイクボディとが分離可能なコンデンサマイクロホンであって、前記マイクロホンユニットは、前記マイクボディ側の端子に当接可能な第1の接続端子と、前記固定極側に接続された第2の接続端子と、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に設けられ、前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが連結された際、圧縮されることにより前記第1の接続端子を前記マイクボディ側に付勢するコイルばねとを備え、前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが連結されることにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とが接続されると共に、前記第1の接続端子が前記マイクボディ側の端子に接続され、前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが分離されることにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とが前記コイルばねの付勢力により分離されることに特徴を有する。
尚、前記マイクロホンユニットと前記マイクボディとが分離されることにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とが離される距離は、前記第1の接続端子に人体が触れた際に印加される静電気の電圧に対し、少なくとも前記第2の接続端子との間で空気の絶縁破壊が生じない距離となされていることが望ましい。
また、前記コイルばねは、非導電性材料により形成されていることが望ましい。
【0011】
このように構成することにより、マイクロホンユニットをマイクボディから取り外した際に、第1の接続端子と第2の接続端子とが離され、第1の接続端子と固定極とが電気的に絶縁される。
これにより、前記第1の接続端子に帯電した人体が触れたとしても、人体に帯電した静電気による電圧が固定電極側に伝達されることがない。そのため、静電気による振動板破損などの不具合を防止することができる。
また、エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの場合にも、静電気によってエレクトレットの表面電位の低下することがなくなる。そのため、エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの感度の劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
音波により振動する振動板を固定極に対向配置してなるマイクロホンユニットと、前記マイクロホンユニットから信号出力端子を介して音声信号が入力される回路部を収容したマイクボディとが分離可能なコンデンサマイクロホンにおいて、前記マイクロホンユニットの着脱の際に、前記信号出力端子に対し帯電した人が触れても、振動板の焼損等を防止することのできるコンデンサマイクロホンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るコンデンサマイクロホンの断面図であって、マイクロホンユニットとマイクボディとを分離した状態を示す図である。
図2図2は、本発明に係るコンデンサマイクロホンの断面図であって、マイクロホンユニットをマイクボディに装着した状態を示す図である。
図3図3は、図1の状態でのマイクロホンユニットを拡大した断面図である。
図4図4は、図2の状態でのマイクロホンユニットを拡大した断面図である。
図5図5は、従来のマイクロホンユニットを取り外し可能なコンデンサマイクロホンの側面図である。
図6図6は、図5のコンデンサマイクロホンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1図2は、本発明に係るコンデンサマイクロホンの断面図である。図1は、後述するマイクロホンユニットとマイクボディとを分離した状態を示している。図2は、前記マイクロホンユニットとマイクボディとを連結した状態を示している。また、図3は、図1の状態でのマイクロホンユニットを拡大した断面図を示している。図4図2の状態でのマイクロホンユニットを拡大した断面図を示している。
【0015】
図1図2に示すコンデンサマイクロホン1は、音波を音声信号に変換するマイクロホユニット3と、マイクロホンユニット3から受け取った音声信号を処理するマイクボディ2とを備えている。前記マイクロホンユニット3は、前記マイクボディ2の先端側に対し螺合等により着脱自在となされている。
前記マイクボディ2は、静電気を遮蔽するシールドケースとして機能する中空円筒状のケーシング4を有している。ケーシング4内の後端側(図において右側)には、コネクタピン5が設けられている。ケーシング4内の先端側(図において左側)には、接続端子6が配置されている。ケーシング4の中央部には、音声信号を処理するための回路部7が収容されている。
【0016】
一方、マイクロホンユニット3は、図3図4に拡大して示すように、複数の開口8が形成されたヘッドケース9を備えている。このヘッドケース9内の前部(図において左側)には、ユニット本体20が設けられる。ユニット本体20は、複数の孔10aが穿設された固定極10と、固定極10に対向するように張設されたフィルム状の振動板11とを有している。固定極10と振動板11は、所定の間隙を開けて配置されている。
【0017】
また、ヘッドケース9内の後部(図において右側)には、ケース後部を塞ぐ円板状の蓋部12と、蓋部12を固定するための円板状の固定板13とが設けられている。固定板13は、ケース内側から蓋部12を押圧し、固定している。図示するように前記蓋部12と固定板13とは共に非導電性の材料により形成されている。前記蓋部12と固定板13が重なる状態で設けられることで厚み方向(軸方向)の寸法が長く形成される。また、ヘッドケース9の内部に軸方向に沿って中空円柱状に形成されたシリンダ室Sが設けられている。
前記シリンダ室S内には、導電性材料により形成された円板状のピストン部14(第1の接続端子)が軸方向に往復移動自在に設けられている。また、前記蓋部12側には、シリンダ室Sから外側に貫通する貫通孔12aが形成されている。前記ピストン部14の一面側(蓋部12側)に立設された直棒状の信号出力端子15(第1の接続端子)が前記貫通孔12aに摺動自在に挿通されている。
【0018】
また、固定板13には、シリンダ室Sからユニット本体20側に、棒状の接続端子16(第2の接続端子)が貫通して固設されている。接続端子16の端子頭部16aがシリンダ室S内のピストン部14の裏面側(固定板13側)に配置されている。
また、シリンダ室S内においてピストン部14の裏面側と固定板13側との間には、コイルばね17が設けられている。前記コイルばね17は、前記接続端子16を蓋部12から突出させる方向に付勢している。前記コイルばね17は、シリンダ室Sの周壁に沿うように螺旋状に設けられ、シリンダ室Sの径は、接続端子16の頭部16aと充分に離れるように設定されている。尚、コイルばね17は、非導電性の材料(例えばセラミックコイル)により形成されていることがより好ましい。
また、前記接続端子16には、接続金具18の一端部が接続され、この接続金具18の他端部は固定極10側に接続されている。
【0019】
このように構成されたマイクロホンユニット3にあっては、マイクボディ2に連結されることにより、コイルばね17が圧縮される。図2図4に示すように、信号出力端子15の先端がマイクボディ2側の接続端子6に対し、コイルばね17の付勢力により押し付けられる。また、ピストン部14が接続端子16の端子頭部16aに当接することにより、信号出力端子15と接続端子16とが電気的に接続される。即ち、マイクボディ2の回路部7とマイクロホンユニット3の固定極10とが電気的に接続される。
【0020】
一方、マイクロホンユニット3をマイクボディ2から取り外すと、図1図3に示すように、コイルばね17が伸長する。そして、ピストン部14と接続端子16の頭部16aが分離される。これにより、帯電した人体が信号出力端子15に触れたとしても、接続端子16は電気的に分離されているため、振動板の破損や感度の劣化といった不具合を回避することができる。
【0021】
尚、図3の状態において、前記分離されたピストン部14と接続端子16の頭部16aとの距離は、少なくともパッシェンの法則による火花放電可能距離よりも離れているものとされる。即ち、ピストン部14(信号出力端子15)と接続端子16とは、信号出力端子15に人体が触れた際に印加される静電気の電圧(3kV〜10kV)に対し、少なくとも空気の絶縁破壊(火花放電)が生じない距離に離されている。
【0022】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、マイクロホンユニット3をマイクボディ2から取り外した際に、接続端子16(端子頭部16a)と信号出力端子15(ピストン部14)とが、少なくとも空気の絶縁破壊が生じない距離に離され、信号出力端子15と固定極10とが電気的に絶縁される。
これにより、前記信号出力端子15に帯電した人体が触れた際に、その静電気による電圧が固定電極側に伝達されることがなく、振動板破損などの不具合を防止することができる。
また、エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの場合にも、エレクトレットの表面電位の低下による感度の劣化を防止することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 コンデンサマイクロホン
2 マイクボディ
3 マイクロホンユニット
4 ケーシング
5 コネクタピン
6 接続端子
7 回路部
8 開口
9 ヘッドケース
10 固定極
11 振動板
12 蓋部
13 固定板
14 ピストン部(第1の接続端子)
15 信号出力端子(第1の接続端子)
16 接続端子(第2の接続端子)
16a 端子頭部(第2の接続端子)
20 ユニット本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6