【解決手段】一対の一次側電極21,22のうちの一方の1次側電極21が基準電位に接続され、かつ他方の一次側電極22に駆動電圧V1が印加されている状態において二次側電極23から交流電圧V2を出力する圧電トランス3と、一対の入力端子31,32のうちの一方の入力端子31が基準電位に接続されると共に他方の入力端子32に入力される交流電圧V2に基づいて高電圧Vhvを生成するコッククロフト・ウォルトン回路4とを備え、コッククロフト・ウォルトン回路4を構成する多段接続された複数のダイオードD1〜D4のうちの初段のダイオードD1に並列接続されると共に抵抗値が予め規定された範囲内に設定された抵抗34を備えている。
一対の一次側電極のうちの一方の1次側電極が基準電位に接続され、かつ他方の一次側電極に駆動電圧が印加されている状態において二次側電極から交流電圧を出力する圧電トランスと、一対の入力端子のうちの一方の入力端子が基準電位に接続されると共に当該一対の入力端子のうちの他方の入力端子に入力される前記交流電圧に基づいて高電圧を生成するコッククロフト・ウォルトン回路とを備えている電圧生成回路であって、
前記コッククロフト・ウォルトン回路を構成する多段接続された複数のダイオードのうちの初段のダイオードに並列接続されると共に抵抗値が予め規定された範囲内に設定された抵抗を備えている電圧生成回路。
一端が前記圧電トランスの前記他方の一次側電極に接続されると共に他端に電源電圧が印加されるコイルと、周期的にオン・オフ動作するスイッチ素子とを有する駆動回路を備え、
前記駆動回路は、前記スイッチ素子がオン状態のときに前記他方の一次側電極を前記基準電位に接続すると共に前記コイルにエネルギーを蓄積させ、かつ当該蓄積されたエネルギーを当該スイッチ素子がオフ状態のときに当該コイルから放出させて前記他方の一次側電極に前記駆動電圧として印加し、
前記コッククロフト・ウォルトン回路の前記初段のダイオードは、前記スイッチ素子がオフ状態のときに前記圧電トランスの前記二次側電極から出力される前記交流電圧によって前記オン状態に移行する請求項1記載の電圧生成回路。
【背景技術】
【0002】
この種の電圧生成回路として、下記特許文献1に開示されている電圧生成回路(直流高電圧電源装置)が知られている。この電圧生成回路は、駆動回路、圧電トランスおよび倍電圧整流回路(コッククロフト・ウォルトン回路)を備えている。
【0003】
駆動回路は、スイッチ素子およびコイルを備えて、スイッチ素子を4つ使用したフルブリッジ型、およびスイッチ素子を2つ使用したプッシュプル型のいずれかの型の駆動回路で構成されている。なお、下記特許文献1には開示されていないが、スイッチ素子を1つ使用したシングル型(一石式)の駆動回路も存在している。この駆動回路は、スイッチ素子がオン・オフすることにより、圧電トランスの一対の入力端子間に正弦波の入力電圧を印加する。この場合、駆動回路では、スイッチ素子がオン・オフすることにより、直流電圧を矩形波状の交流電圧に変換する。この変換された交流電圧は、コイルおよび圧電トランスの1次側の容量のフィルタ効果により、ほぼ正弦波波形の交流電圧に変換されて、圧電トランスの一対の入力端子間に入力される。
【0004】
圧電トランスは、一対の入力端子間に入力される交流電圧を昇圧して倍電圧整流回路に出力する。倍電圧整流回路は、a個のダイオードを有し、圧電トランスから出力される交流電圧をa倍に倍電圧整流することで、高電圧(直流高電圧)を出力する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の電圧生成回路には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、本願発明者がこの電圧生成回路について検討を行ったところ、この電圧生成回路のように圧電トランスから出力される交流電圧を昇圧するコッククロフト・ウォルトン回路では、使用するダイオードにより、生成される高電圧の電圧値に差が生じるという課題が生じることを見い出した。具体的には、電圧生成回路には、漏れ電流(逆電流)の小さなダイオード(例えば、パナソニック社製のDA2JF8100Lシリーズなど)をコッククロフト・ウォルトン回路に使用したときには、漏れ電流のより大きなダイオード(例えば、オリジン社製のF1H16など)を使用したときと比較して、生成される高電圧の電圧値が低くなるという課題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、コッククロフト・ウォルトン回路に漏れ電流の小さなダイオードを使用したとしても、圧電トランスから出力される交流電圧を、より高い電圧値に昇圧して高電圧を生成し得る電圧生成回路を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電圧生成回路は、一対の一次側電極のうちの一方の1次側電極が基準電位に接続され、かつ他方の一次側電極に駆動電圧が印加されている状態において二次側電極から交流電圧を出力する圧電トランスと、一対の入力端子のうちの一方の入力端子が基準電位に接続されると共に当該一対の入力端子のうちの他方の入力端子に入力される前記交流電圧に基づいて高電圧を生成するコッククロフト・ウォルトン回路とを備えている電圧生成回路であって、前記コッククロフト・ウォルトン回路を構成する多段接続された複数のダイオードのうちの初段のダイオードに並列接続されると共に抵抗値が予め規定された範囲内に設定された抵抗を備えている。
【0009】
また、請求項2記載の電圧生成回路は、請求項1記載の電圧生成回路において、一端が前記圧電トランスの前記他方の一次側電極に接続されると共に他端に電源電圧が印加されるコイルと、周期的にオン・オフ動作するスイッチ素子とを有する駆動回路を備え、前記駆動回路は、前記スイッチ素子がオン状態のときに前記他方の一次側電極を前記基準電位に接続すると共に前記コイルにエネルギーを蓄積させ、かつ当該蓄積されたエネルギーを当該スイッチ素子がオフ状態のときに当該コイルから放出させて前記他方の一次側電極に前記駆動電圧として印加し、前記コッククロフト・ウォルトン回路の前記初段のダイオードは、前記スイッチ素子がオフ状態のときに前記圧電トランスの前記二次側電極から出力される前記交流電圧によって前記オン状態に移行する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の電圧生成回路では、コッククロフト・ウォルトン回路における初段のダイオードに抵抗が並列接続され、かつこの抵抗の抵抗値が予め規定された範囲内に設定されている。
【0011】
したがって、この電圧生成回路によれば、コッククロフト・ウォルトン回路が漏れ電流の少ないダイオードで構成されていたとしても、実験やシミュレーションなどで予め求めた範囲(抵抗を並列接続しないときよりも、生成される高電圧の電圧値がより高くなる範囲:予め規定された範囲)内の抵抗値の抵抗を初段のダイオードに並列接続することで、圧電トランスから出力される交流電圧に基づいてこの抵抗の両端間に発生する電圧により、初段のダイオードをオン状態やオフ状態に十分に移行させることができるため、圧電トランスから出力される交流電圧をコッククロフト・ウォルトン回路において、より高い電圧値に昇圧して高電圧を生成することができる。
【0012】
請求項2記載の電圧生成回路では、コッククロフト・ウォルトン回路の初段のダイオードは、駆動回路のスイッチ素子がオフ状態のときに圧電トランスの二次側電極から出力される交流電圧によってオン状態に移行する。
【0013】
したがって、この電圧生成回路によれば、スイッチ素子のオフ状態のとき(すなわち、コイルに蓄積されたエネルギーを圧電トランスに放出するとき)の圧電トランスの入力インピーダンスを、スイッチ素子のオフ状態のときに圧電トランスの二次側電極から出力される交流電圧によってコッククロフト・ウォルトン回路の初段のダイオードがオフ状態に移行する構成のときの圧電トランスの入力インピーダンスよりも小さくすることができる。このため、この電圧生成回路では、スイッチ素子のオン状態のときにコイルに蓄積されたエネルギーを、スイッチ素子のオフ状態のときに十分に放出することができ、これによってコイルの磁気飽和を生じにくくすることができる。この結果、この電圧生成回路によれば、圧電トランス、ひいてはコッククロフト・ウォルトン回路に対して十分なエネルギーを継続的に供給できるため、より高い電圧値の高電圧を生成して出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、電圧生成回路の実施の形態について説明する。
【0016】
最初に、電圧生成回路の一例としての
図1に示す電圧生成回路1の構成について説明する。この電圧生成回路1は、駆動回路2、圧電トランス3、コッククロフト・ウォルトン回路4およびダミー負荷5を備え、一例として、電源電圧+Vcc(例えば直流電圧+10V)で作動する駆動回路2から出力される駆動電圧V1に基づいて、高電圧Vhv(直流高電圧。例えば、数kV)を生成(出力)可能に構成されている。この電圧生成回路1は、例えば、絶縁抵抗計での高電圧の生成回路として使用される。
【0017】
駆動回路2は、一例として、コイル11およびスイッチ素子12を備えて一石式の駆動回路として構成されている。具体的には、コイル11は、一端が圧電トランス3の後述する一対の一次側電極21,22のうちの他方の一次側電極22に接続されると共に、他端に電源電圧+Vccが印加されている。スイッチ素子12は、例えば、電界効果トランジスタやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子で構成されて、圧電トランス3の他方の一次側電極22と、基準電位に規定された部位(任意の電圧。例えば、グランドG)との間に配設されている。また、スイッチ素子12は、一定の周波数f(仕様で規定された圧電トランス3の共振周波数またはその近傍の周波数)で、かつ一定のパルス幅の制御パルスVsで駆動されて、制御パルスVsのパルス幅の時間だけオン状態に移行することで周期的にオン・オフ動作することにより、コイル11の一端および圧電トランス3の他方の一次側電極22を周期的に(制御パルスVsの周期T(=1/f)で、制御パルスVsのパルス幅の時間だけ)基準電位に接続する。
【0018】
以上の構成により、この駆動回路2は、スイッチ素子12がオン状態のときには、コイル11の一端を基準電位に接続する(グランドGに接続する)ことにより、コイル11にエネルギーを蓄積させると共に、圧電トランス3の一対の一次側電極21,22間の一次側容量に充電されている電荷を放電させる。また、駆動回路2は、スイッチ素子12がオフ状態のときには、コイル11の一端をグランドGから切り離すことによって、コイル11に蓄積されているエネルギーをコイル11から圧電トランス3の一次側電極22に放出させて圧電トランス3の一次側容量を充電する。これにより、駆動回路2は、スイッチ素子12がオン状態のときにはほぼ基準電位となり、スイッチ素子12がオフ状態のときにはコイル11に誘起された電圧が電源電圧+Vccに重畳された電圧となる駆動電圧V1をコイル11の一端に発生させて、圧電トランス3の他方の一次側電極22に印加する。
【0019】
圧電トランス3は、一対の一次側電極21,22のうちの一方の一次側電極21がグランドGに接続され、他方の一次側電極22が上記したように駆動回路2に接続されている。また、圧電トランス3は、二次側電極23がコッククロフト・ウォルトン回路4の一対の入力端子31,32のうちの他方の入力端子32に接続されている。以上の構成により、圧電トランス3は、一対の一次側電極21,22間に駆動電圧V1が印加されている状態において、波形が正弦波に近似し、かつ昇圧された交流電圧V2(周波数fの交流電圧)を二次側電極23からコッククロフト・ウォルトン回路4に出力する。
【0020】
コッククロフト・ウォルトン回路4は、一対の入力端子31,32のうちの一方の入力端子31がグランドGに接続され、他方の入力端子32が上記したように駆動回路2に接続され、かつ出力端子33がダミー負荷5を介してグランドGに接続されて、駆動回路2から他方の入力端子32に供給される交流電圧V2に基づいて高電圧Vhvを生成し、生成した高電圧Vhvを電圧生成回路1の出力電圧として出力端子33から出力する。
【0021】
また、コッククロフト・ウォルトン回路4は、多段接続された複数のダイオード(本例では一例として、4段に直列接続された4つのダイオードD1,D2,D3,D4。以下、特に区別しないときにはダイオードDともいう)と、複数の平滑コンデンサ(本例では一例として、3つの平滑コンデンサC1,C2,C3。以下、特に区別しないときには平滑コンデンサCともいう)とを備えて構成されている。
【0022】
この場合、各ダイオードDは、例えば、DA2JF8100Lのような漏れ電流(逆電流)の小さなダイオード(例えば、周囲温度25℃のときにDC400V〜800Vの逆電圧を印加した状態での漏れ電流の電流値が0.01μA未満のダイオード)で構成されている。また、各平滑コンデンサCは、一例として10pFのコンデンサ(セラミックコンデンサやフィルムコンデンサなど)で構成されている。
【0023】
なお、圧電トランス3は、二次側電極23側の内部に形成されている二次側容量を介して、二次側電極23から上記した交流電圧V2を出力するが、この二次側容量に対して直列接続される他のコンデンサ(図示せず)を、平滑コンデンサC2、後述の抵抗34およびダイオードD1の接続点と入力端子32との間に配設してコッククロフト・ウォルトン回路4を構成することもできる。
【0024】
また、コッククロフト・ウォルトン回路4は、複数のダイオードDのうちの初段のダイオードD1に並列接続された抵抗34を備えている。本願発明者は、このコッククロフト・ウォルトン回路4のように、漏れ電流の少ないダイオードで各ダイオードDが構成されているときには、初段のダイオードD1に抵抗34を並列接続すると共に、抵抗34の抵抗値を予め規定された範囲内の値に設定することにより、初段のダイオードD1に抵抗34を並列接続しない従来の構成よりもコッククロフト・ウォルトン回路4からの出力電圧(電圧生成回路1での高電圧Vhv)を高めることができるのを見出した。
【0025】
これは、漏れ電流の少ないダイオードで各ダイオードDが構成されたコッククロフト・ウォルトン回路4では、交流電圧V2は圧電トランス3の二次側電極23からフローティング状態で出力されるため、抵抗34を並列接続しない構成のときには初段のダイオードD1の両端間にこのダイオードD1をオン状態やオフ状態に十分に移行させ得る電圧をこの交流電圧V2に基づいて生成させることができない現象が生じることがある。これに対して、予め規定された範囲内の抵抗値の抵抗34を並列接続した構成では、交流電圧V2の印加によって抵抗34に流れる電流に基づいて、抵抗34の両端間、すなわちダイオードD1の両端間にダイオードD1をオン状態やオフ状態に十分に移行させ得る電圧を生成させることができる。このように、抵抗34は、交流電圧V2に基づいて初段のダイオードD1を十分なオン状態や十分なオフ状態に確実に移行させる機能を有している。
【0026】
また、コッククロフト・ウォルトン回路4では、正常動作時には、平滑コンデンサC2は、ダイオードD1のカソード端子に接続される端部の電圧に対してダイオードD3のカソード端子に接続される端部の電圧が正電圧(交流電圧V2のほぼ最大値)となるように充電される。しかしながら、本例のコッククロフト・ウォルトン回路4では、平滑コンデンサC2に直列に抵抗34が接続される構成のため、交流電圧V2の1周期のうちの平滑コンデンサC2が充電される半周期(入力端子32に対して入力端子31が正電圧となる半周期)、および平滑コンデンサC2が放電される半周期(入力端子31に対して入力端子32が正電圧となる半周期)の各半周期(つまり、交流電圧V2の1周期)において、平滑コンデンサC2は抵抗34によって時定数(C2×R34)で放電される。この時定数での「C2」は平滑コンデンサC2の容量値を表し、「R34」は抵抗34の抵抗値を表している。
【0027】
したがって、本例のコッククロフト・ウォルトン回路4では、平滑コンデンサC2の容量値C2および抵抗34の抵抗値R34は、平滑コンデンサC2が確実に充電され得るように、時定数(C2×R34)が交流電圧V2の周期Tよりも長くなるような値に規定される。また、平滑コンデンサC2が交流電圧V2の最大値とほぼ同じ電圧に充電されるためには、時定数(C2×R34)が交流電圧V2の周期Tよりも十分に大きくなるように、平滑コンデンサC2の容量値C2および抵抗34の抵抗値R34を規定するのが好ましい。
【0028】
このため、本例のコッククロフト・ウォルトン回路4のように、平滑コンデンサC1〜C3の容量値が規定されている構成においては、抵抗34の抵抗値R34は、時定数(C2×R34)が交流電圧V2の周期Tよりも十分に大きくなるというという観点から規定される下限値以上で、かつコッククロフト・ウォルトン回路4の初段のダイオードD1の両端間にこのダイオードD1をオン状態やオフ状態に十分に移行させ得る電圧を交流電圧V2に基づいて生成させ得るという観点から規定される上限値以下の範囲内で規定される。この抵抗34の抵抗値R34の範囲は、実際には、コッククロフト・ウォルトン回路4で使用するダイオードD毎に、実験やシミュレーションなどで予め求めることで、上記の予め規定された範囲として規定される。
【0029】
具体例を挙げて説明すると、本例のコッククロフト・ウォルトン回路4は、圧電トランス3の一例としてタムラ製作所製のAU−313T(共振周波数:約150kHz)を使用した実験によれば、
図2に示すように、抵抗34の抵抗値R34を20MΩ以上1GΩ以下の範囲(予め規定された範囲)内に設定することにより、制御パルスVsのパルス幅を70%以下の範囲内で変化させたとしても、ダイオードD1に抵抗34を並列接続しない構成(同図中において太線の実線で示される「なし」の構成)と比較して、より高い出力電圧(電圧生成回路1での高電圧Vhv)を生成して出力することが可能になっている。
【0030】
本例では平滑コンデンサC1〜C3の容量値が10pFに規定されているため、抵抗34の抵抗値R34が20MΩに規定されているときの時定数(C2×R34)は、200×10
−6であり、共振周波数150kHzの1周期(6.67×10
−6)の約30倍になっている。したがって、コッククロフト・ウォルトン回路4では、上記の時定数C2×R34が共振周波数150kHzの1周期の30倍以上となるような抵抗値R34の抵抗34を初段のダイオードに並列接続することで、平滑コンデンサC2を交流電圧V2の最大値とほぼ同じ電圧に充電させて、十分に高い電圧値の高電圧Vhvを出力することが可能になっている。ただし、抵抗34の抵抗値R34が1GΩを超えるときには、抵抗34の抵抗値R34が大き過ぎる結果、抵抗34を並列接続しない構成と等価な状態に近づく。このため、抵抗34を並列接続する効果(ダイオードD1の両端間にダイオードD1をオン状態やオフ状態に十分に移行させ得る電圧を生成させる効果)が現れなくなる。したがって、このコッククロフト・ウォルトン回路4では、抵抗34の抵抗値R34は、時定数C2×R34が共振周波数150kHzの1周期の30倍以上となるような抵抗値であって、1GΩ以下の抵抗値(時定数C2×R34が共振周波数150kHzの1周期の1500倍以下となる抵抗値)に規定される。
【0031】
一方、ダイオードD1に抵抗34を並列接続する構成であっても、
図2に示すように、抵抗値が10MΩ、1MΩおよび100KΩ(つまり、10MΩ以下)のときには、時定数(C2×R34)が交流電圧V2の周期Tよりも十分に大きくならないため(最大でも15倍にしかならないため)、抵抗34を並列接続しない構成よりも、出力電圧(電圧生成回路1での高電圧Vhv)が低下する。
【0032】
なお、コッククロフト・ウォルトン回路4からの出力電圧(電圧生成回路1での高電圧Vhv)を高め得る抵抗34についての抵抗値の範囲については、使用されるダイオードDの種類(漏れ電流の少ないダイオードであってもその種類)や、各平滑コンデンサCの種類や容量値によって変わるものの、上記のような好ましい範囲(高電圧Vhvを高め得る範囲)が常に存在すると考えられる。したがって、コッククロフト・ウォルトン回路4の構成が上記の具体例とは異なるものであっても、この構成でのこの好ましい抵抗値の範囲を実験やシミュレーションなどで予め求めておき、この範囲をこの構成での抵抗34についての予め規定された範囲として、抵抗34の抵抗値をこの範囲内の値に規定する。これにより、この構成のコッククロフト・ウォルトン回路4から、抵抗34を使用しない構成よりも、より高い出力電圧(電圧生成回路1での高電圧Vhv)を生成して出力させることが可能となる。
【0033】
また、この電圧生成回路1では、駆動回路2は、スイッチ素子12のオフ状態のときに圧電トランス3の二次側電極23から出力される交流電圧V2によってコッククロフト・ウォルトン回路4の初段のダイオードD1がオン状態(
図1においてダイオードD1に破線で示す向きに電流が流れる状態)に移行するように制御パルスVsによってオン・オフ動作する。この電圧生成回路1では、この構成を採用することにより、
図3において破線で示すように、抵抗34の抵抗値が同じ場合であっても、スイッチ素子12がオン状態のときに圧電トランス3の二次側電極23から出力される交流電圧V2によってコッククロフト・ウォルトン回路4の初段のダイオードD1がオン状態に移行するように制御パルスVsによってオン・オフ動作する構成のときの出力電圧(同図中において実線で示す電圧)と比較して、後述するように、より高い電圧値の出力電圧(高電圧Vhv)を出力することが可能になっている。なお、
図3では、抵抗34の抵抗値が20MΩに設定されている例(時定数(C2×R34)が交流電圧V2の周期Tの約30倍となる例)を挙げているが、他の抵抗値の場合も同様である。
【0034】
この電圧生成回路1では、駆動回路2は一石式の駆動回路として構成されて、スイッチ素子12がオン状態のときにコイル11に蓄積されたエネルギーを、スイッチ素子12がオフ状態のときにコイル11から圧電トランス3に出力(放出)することで、圧電トランス3を駆動する。一石式の駆動回路である駆動回路2では、コイル11から圧電トランス3に十分なエネルギーを周期的に出力するためには、コイル11の磁気飽和を発生しにくくする必要があり、これには、スイッチ素子12がオン状態のときにコイル11に蓄積されたエネルギーを、スイッチ素子12のオフ状態のときに圧電トランス3にできる限り多く出力する必要があり、これには、駆動回路2から見た圧電トランス3の入力インピーダンスを下げる必要がある。
【0035】
一般的に圧電トランス3は、等価的にn:mの巻線トランス(一次側巻線のターン数がnで、二次側巻線のターン数がmの巻線トランス)と見なすことができ、圧電トランス3の二次側(コッククロフト・ウォルトン回路4側)のインピーダンスをZとしたときに、圧電トランス3の一次側(駆動回路2側)のインピーダンスは、等価的に(m/n)
2×Zと見なすことができる。一方、コッククロフト・ウォルトン回路4は、初段のダイオードD1がオン状態に移行しているとき(
図1において破線で示すようにダイオードD1に電流が流れているとき)の入力インピーダンスと、初段のダイオードD1がオフ状態に移行しているときの入力インピーダンスとは相違し、前者の場合には電流経路に含まれる平滑コンデンサCは1つであるのに対して、後者の場合には、図示はしないが、電流経路に含まれて直列状態になる平滑コンデンサCの数が2以上になることから、入力インピーダンスは、前者の場合の入力インピーダンスよりも大きくなる。したがって、この電圧生成回路1のように、駆動回路2のスイッチ素子12がオフ状態のとき(コイル11に蓄積されたエネルギーを圧電トランス3に放出するとき)に、駆動回路2から見た圧電トランス3の入力インピーダンスをより小さくし得る前者の構成を採用するのが好ましい。
【0036】
次に、この電圧生成回路1の動作について図面を参照して説明する。
【0037】
電圧生成回路1では、駆動回路2のスイッチ素子12が制御パルスVsに基づいてオン・オフ動作することにより、駆動回路2が、圧電トランス3の一対の一次側電極21,22間に駆動電圧V1を印加する。また、圧電トランス3が、この駆動電圧V1に基づいて二次側電極23から交流電圧V2を出力する。また、コッククロフト・ウォルトン回路4が、圧電トランス3から出力される交流電圧V2に基づいて高電圧Vhvを生成して、出力端子33から電圧生成回路1の出力電圧として出力する。
【0038】
この高電圧Vhvの生成に際して、この電圧生成回路1では、コッククロフト・ウォルトン回路4における初段のダイオードD1に抵抗34が並列接続され、かつこの抵抗34の抵抗値が上記したようにして予め規定された範囲内の値(本例では一例として、20MΩ以上1GΩ以下の範囲内の値)に設定されている。したがって、この電圧生成回路1によれば、この抵抗34を備えていない構成の電圧生成回路と比較して、
図2に示すように、少なくとも制御パルスVsのパルス幅が70%以下の範囲内において、より高い電圧値の高電圧Vhvを出力電圧として出力することができる。
【0039】
また、この電圧生成回路1では、駆動回路2は、スイッチ素子12がオン状態のときにコイル11にエネルギーを蓄積させ、かつこの蓄積されたエネルギーをスイッチ素子12がオフ状態のときにコイル11から放出させて圧電トランス3の他方の一次側電極22に駆動電圧V1として印加し、コッククロフト・ウォルトン回路4の初段のダイオードD1は、スイッチ素子12がオフ状態のときに圧電トランス3の二次側電極23から出力される交流電圧V2によってオン状態に移行する。
【0040】
したがって、この電圧生成回路1によれば、上記したように、スイッチ素子12のオフ状態のとき(すなわち、コイル11に蓄積されたエネルギーを圧電トランス3に放出するとき)の圧電トランス3の入力インピーダンスを、スイッチ素子12のオフ状態のときに圧電トランス3の二次側電極23から出力される交流電圧V2によってコッククロフト・ウォルトン回路4の初段のダイオードD1がオフ状態に移行する構成のときの圧電トランス3の入力インピーダンスよりも小さくすることができる。このため、この電圧生成回路1では、スイッチ素子12のオン状態のときにコイル11に蓄積されたエネルギーを、スイッチ素子12のオフ状態のときに十分に放出することができ、これによってコイル11の磁気飽和を生じにくくすることができる。この結果、この電圧生成回路1によれば、圧電トランス3、ひいてはコッククロフト・ウォルトン回路4に対して十分なエネルギーを継続的に供給できるため、より高い電圧値の高電圧Vhvを出力電圧として出力することができる。
【0041】
なお、上記の電圧生成回路1は、駆動回路2が1つのコイル11と1つのスイッチ素子12とを有する一石式の駆動回路で構成されている。このため、上記の電圧生成回路1では、駆動回路2が、スイッチ素子12のオフ状態のときに圧電トランス3の二次側電極23から出力される交流電圧V2によってコッククロフト・ウォルトン回路4の初段のダイオードD1がオン状態に移行するように制御パルスVsによってオン・オフ動作する構成を採用している。しかしながら、電圧生成回路用の駆動回路2としては、図示はしないが、一石式の駆動回路を2組使用して、圧電トランス3の各一次側電極21,22をそれぞれ個別に駆動する構成のプッシュプル方式の駆動回路や、スイッチ素子12を4つ使用すると共に共通のコイルを介して圧電トランス3の各一次側電極21,22をそれぞれ個別に駆動するフルブリッジ方式の駆動回路を採用することもできる。このプッシュプル方式やフルブリッジ方式の駆動回路では、圧電トランス3の一対の一次側電極21,22のそれぞれに駆動回路2からエネルギーを供給する構成となり、これらの駆動回路に使用されているコイルには電流が強制的に双方向で供給されることから、コイルの磁気飽和が生じにくい。このため、プッシュプル方式やフルブリッジ方式の駆動回路では、上記した一石式の駆動回路2の構成とは異なり、特定のタイミング(つまり、一石式の駆動回路2のスイッチ素子12がオフ状態となるタイミング)でコッククロフト・ウォルトン回路4の初段のダイオードD1がオン状態に移行するような駆動回路2に対する制御を不要にすることができる。