【解決手段】マグネットを有するロータと、ロータが配置される空間を中央部に有するステータと、を備える。ロータは、ロータコアと、複数のマグネットと、を有する。ロータコアは、回転軸を中心に放射状に形成された複数のマグネット収容部を有する。マグネットは、隣接するマグネットと同じ磁極同士がロータコアの周方向において対向するようにマグネット収容部に収容されており、ステータは、中心に向かって形成された、ロータと対向する複数のティースを有する。ロータコアの外周部の曲率半径をR、ティースの先端部の周方向の幅をW、前記ロータコアの最大外径をL、とすると、0.9≦R/W≦4.2およびR<L/2を満たす。
前記ロータの最大外径をL、前記マグネットの径方向の幅をYとすると、0.37≦Y/(L/2)≦0.62を満たすことを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
埋込磁石型のブラシレスモータにおいて、大型化せずに回転トルクを向上する一つの方法としては、ロータとステータとの距離を近づけることが一案であるが、トルクリップルやノイズが大きくなる傾向にある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トルクの低下を抑えつつトルクリップルやノイズを低減したブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブラシレスモータは、マグネットを有するロータと、ロータが配置される空間を中央部に有するステータと、を備える。ロータは、ロータコアと、複数のマグネットと、を有する。ロータコアは、回転軸を中心に放射状に形成された複数のマグネット収容部を有する。マグネットは、隣接するマグネットと同じ磁極同士がロータコアの周方向において対向するようにマグネット収容部に収容されており、ステータは、中央に向かって形成された、ロータと対向する複数のティースを有する。ロータコアの外周部の曲率半径をR、ティースの先端部の周方向の幅をW、前記ロータコアの最大外径をL、とすると、0.9≦R/W≦4.2およびR<L/2を満たす。
【0008】
この態様によると、トルクリップルやノイズの発生を低減できる。
【0009】
ロータの最大外径をL、マグネットの径方向の幅をYとすると、0.37≦Y/(L/2)≦0.62を満たしてもよい。これにより、トルクリップルやノイズの発生を更に低減できる。
【0010】
本発明の別の態様もまた、ブラシレスモータである。このブラシレスモータは、マグネットを有するロータと、ロータが配置される空間を中央部に有するステータと、を備える。ロータは、ロータコアと、複数のマグネットと、を有する。ロータコアは、回転軸を中心に放射状に形成された複数のマグネット収容部を有する。マグネットは、隣接するマグネットと同じ磁極同士がロータコアの周方向において対向するようにマグネット収容部に収容されており、ロータの最大外径をL、マグネットの径方向の幅をY、とすると、0.37≦Y/(L/2)≦0.62を満たす。
【0011】
この態様によると、トルクリップルやノイズの発生を低減できる。
【0012】
ロータとステータとのギャップが0.3〜1.5mmであってもよい。これにより、トルクの低下を抑えつつトルクリップルやノイズを低減できる。
【0013】
ロータコアは、回転軸が挿入される孔部の周囲の環状部と、環状部から放射状に形成された複数の磁極片と、環状部の外側であって、隣接するマグネット収容部同士の間の各領域に形成された複数の第1の磁束障壁部と、を更に有してもよい。マグネット収容部は、第2の磁束障壁部を回転軸側の端部に有してもよい。マグネットは、隣接する他のマグネットと同じ磁極同士がロータコアの周方向において対向するようにマグネット収容部に収容されており、第1の磁束障壁部および第2の磁束障壁部は、マグネットから出る磁束のロータコア内の短絡を抑制するように構成されており、ロータコアは、第1の磁束障壁部と、該第1の磁束障壁部と隣接する2つの第2の磁束障壁部との間に形成された2つの磁路を有してもよい。2つの磁路は、磁極片の回転軸側の端部から環状部に向けて異なる方向へ分岐していてもよい。
【0014】
2つの磁路は、磁極片の中心線に対して線対称に配置されていてもよい。これにより、回転方向が時計回りか反時計回りかによって磁極片を支持する力は変わらない。
【0015】
第1の磁束障壁部および第2の磁束障壁部は、磁路の中心部を通る直線L1と磁極片の中心線L2とが成す角度αが0°より大きく、磁路の中心部を通る直線L1とマグネットの回転軸側端面を含む平面P1とが成す角度βが10°より大きくなるように構成されていてもよい。これにより、適切な大きさの第1の磁束障壁部および第2の磁束障壁部を実現できる。
【0016】
第2の磁束障壁部は、回転軸方向に貫通した貫通部であってマグネットの径方向の位置決め機能を有してもよい。第2の磁束障壁部のマグネットと隣接した領域の周方向の幅は、マグネット収容部に収容されたマグネットの周方向の幅よりも小さい。これにより、簡素な構成で磁束の短絡を抑制できる。また、マグネットの径方向の位置決めのために、第2の磁束障壁部を特殊な形状にする必要がない。
【0017】
第1の磁束障壁部は、回転軸方向に貫通した貫通部であってもよい。これにより、簡素な構成で磁束の短絡を抑制できる。
【0018】
磁極片は、隣接する他の磁極片と外周部が分離されていてもよい。これにより、マグネットの外周側端面近傍での磁束の短絡を低減できる。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を部品、製造方法、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トルクの低下を抑えつつトルクリップルやノイズを低減したブラシレスモータを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。以下では、インナーロータタイプのブラシレスモータを例に説明する。
【0023】
(ブラシレスモータ)
図1は、本実施の形態に係るブラシレスモータの全体斜視図である。
図2は、本実施の形態に係るブラシレスモータの側面図である。
図3は、本実施の形態に係るブラシレスモータの分解斜視図である。
【0024】
本実施の形態に係るブラシレスモータ(以下、「モータ」と称する場合がある。)10は、マグネットを有する円柱状のロータ12と、ロータ12が配置される空間を中央部に有するステータ14と、フロントベル16と、ハウジング本体18と、給電部19と、を備える。
【0025】
フロントベル16は、板状の部材であり、中央に回転シャフト20が貫通できるように孔16aが形成されているとともに、孔16aの近傍に軸受22を保持する凹部16bが形成されている。そして、フロントベル16は、ロータ12の回転シャフト20の一部を軸受22を介して支持する。また、ハウジング本体18は、円筒状の部材であり、基部18aの中央に軸受(不図示)を保持する凹部18bが形成されている。そして、ハウジング本体18は、ロータ12の回転シャフト20の他部を軸受を介して支持する。本実施の形態では、フロントベル16およびハウジング本体18は、ロータ12およびステータ14を収容する収容部材を構成する。
【0026】
(ロータ)
図4(a)は、本実施の形態に係るロータコアの上面図、
図4(b)は、
図4(a)に示すロータコアにマグネットを嵌め込んだ状態を示す上面図である。
【0027】
ロータ12は、円形のロータコア26と、複数のマグネット28と、を備える。ロータコア26の中心には、回転シャフト20が挿入された状態で固定される貫通孔26aが形成されている。また、ロータコア26は、回転シャフト20が挿入される貫通孔26aの周囲の環状部26cと、環状部26cから放射状に形成された複数の扇形の磁極片26dと、隣接する2つの磁極片26dの間に放射状に形成された複数のマグネット収容部26bと、環状部26cの外側に形成された複数の第1の磁束障壁部26eと、を有する。
【0028】
マグネット収容部26bにはマグネット28が挿入され固定される。マグネット28は、マグネット収容部26bの形状に対応した板状の部材である。
【0029】
そして、これら各部材を順に組み立てる。具体的には、複数(14個)のマグネット28のそれぞれを、対応するマグネット収容部26bに嵌め込み、そのロータコア26の貫通孔26aに回転シャフト20を挿入する。そして、軸受22は、回転シャフト20に取り付けられる。
【0030】
(ロータコア)
図4(a)に示すロータコア26は、複数の板状の部材を積層したものである。複数の板状の部材のそれぞれは、無方向性電磁鋼板(例えばケイ素鋼板)からプレス加工によって
図4(a)に示すような所定の形状で打ち抜くことで作製される。そして、マグネット収容部26bは、ロータコア26の回転軸を中心に放射状に形成されている。
【0031】
マグネット28は、
図4(b)に示すように、隣接する他のマグネットと同じ磁極同士がロータコア26の周方向において対向するようにマグネット収容部26bに収容されている。つまり、マグネット28は、略直方体の6つの面のうち表面積の広い2つの主面28a,28bがそれぞれN極とS極となるように構成されている。これにより、マグネット28の主面28aから出た磁力線は、2つのマグネット28の間の領域からロータコア26の外に向かう。その結果、本実施の形態に係るロータ12は、その外周部に、N極とS極が交互に7極ずつ計14極ある磁石として機能する。
【0032】
なお、マグネット28は、例えば、ボンド磁石や焼結磁石である。ボンド磁石は、ゴムや樹脂などに磁性材を練り込んで射出成形または圧縮成型した磁石であり、後加工をしなくても高精度のC面(斜面)やR面を得られる。一方、焼結磁石は、粉末状の磁性材を高温で焼き固めた磁石であり、ボンド磁石よりも残留磁束密度を向上させやすいが、高精度のC面やR面を得るためには後加工が必要な場合が多い。
【0033】
本実施の形態に係るマグネット収容部26bは、第2の磁束障壁部26b1を回転シャフト20(貫通孔26a)側の端部に有する。前述の第1の磁束障壁部26eは、隣接する第2の磁束障壁部26b1の間に形成されている。第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1は、板状のマグネット28から出る磁束(磁力線)のロータコア26内の短絡を抑制するように構成されている。つまり、マグネット28の一方の主面28aから出た磁力線は、ロータコア26の第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1により、ロータコア26内の短絡が抑制される。このような磁力線の通る領域を磁路といい、磁路が狭く長いほど磁気抵抗が高くなり磁力線が通りにくくなる。
【0034】
(磁路)
図5は、本実施の形態に係る磁路を説明するためのロータコアの上面図である。本実施の形態に係るロータコア26は、第1の磁束障壁部26eと、第1の磁束障壁部26eと隣接する2つの第2の磁束障壁部26b1との間に形成された2つの磁路26fを有する。2つの磁路26fは、磁極片26dの貫通孔26a側の端部から環状部26cに向けて異なる方向へ(Y字状に)分岐している。
【0035】
これにより、第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1によって、マグネット28から出る磁束のロータコア内の短絡が抑制されるため、高トルクなブラシレスモータのロータとして好適となる。また、各磁極片26dが環状部26cに対して2つの磁路26fで支持されているため、磁極片26dの環状部26cに対する機械的固定強度が向上し、ロータ回転時の磁極片26dの変位を低減できる。また、2つの磁路26fは、磁極片26dの貫通孔26a側の端部から環状部26cに向けて異なる方向へ分岐しているため、磁極片26dに対して作用する方向が異なる様々な外力(磁気力や遠心力等)に対して磁極片26dの変位をより効果的に低減できる。
【0036】
本実施の形態に係る2つの磁路26fは、
図5に示すように、それぞれの長手方向が互いに異なるように形成されている。また、2つの磁路26fは、ロータコア26の直径に対して線対称に配置されている。これにより、ロータ12の回転方向が時計回りか反時計回りかによって磁極片26dを支持する力が変わらない。
【0037】
第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1は、磁路の中心部を通る直線L1と磁極片26dの中心線L2とが成す角度αが0°より大きく、磁路の中心部を通る直線L1とマグネット28の回転軸(貫通孔26a)側端面28cを含む平面P1とが成す角度βが10°より大きくなるように構成されている。角度αを0°より大きく、角度βを10°より大きく設定することで、磁束の短絡を抑制することのできる大きさの第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1が形成される。本実施の形態に係るロータコア26においては、角度αが約30°、角度βが約47°である。
【0038】
なお、角度αは15°以上が好ましく、30°以上がより好ましい。また、角度βは20°以上が好ましく、30°以上がより好ましい。これにより、大幅に磁束の短絡を抑制することのできる大きさの第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1を実現できる。
【0039】
第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1は、回転軸方向(紙面鉛直方向)に貫通した三角形の貫通部である。これにより、製造の容易な簡素な構成で磁束の短絡を抑制できる。第1の磁束障壁部26eは、正三角形であってもよい。なお、本実施の形態に係る第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1は、透磁率が小さい空気を満たした中空の領域であるが、透磁率が小さい物質を充填してもよい。この場合、ロータコア26全体の強度を向上できる。
【0040】
第2の磁束障壁部26b1は、マグネット28の径方向の位置決め機能を有している。具体的には、第2の磁束障壁部26b1の板状マグネットと隣接した領域の周方向の幅W1は、マグネット収容部26bに収容されたマグネット28の周方向の幅W2よりも小さい。これにより、マグネット28の径方向の位置決めのために、第2の磁束障壁部26b1を特殊な形状にする必要がない。そのため、ロータコア26を構成する板状の部材をプレス加工で打ち抜く際の各部の寸法精度が向上する。
【0041】
本実施の形態に係る磁極片26dは、隣接する他の磁極片26dと外周部26gが分離されている。これにより、マグネット28の外周側端面近傍での磁束の短絡を低減できる。
【0042】
また、扇形の磁極片26dの外周部26gの曲率半径をR、ロータコアの最大外径をL、とすると、R<L/2を満たす。これにより、トルク変動が低減され滑らかな回転が可能なブラシレスモータを実現できる。
【0043】
また、本実施の形態に係るモータ10は、複数の巻線が配置されている筒状のステータ14と、ステータ14の中央部に設けられている上述のロータ12と、ステータ14の複数の巻線に給電する給電部19と、を備えている。これにより、ロータ外周部の平均磁束密度を高めながらロータの機械的強度を確保することができ、トルクが高く高剛性で低ノイズのブラシレスモータを実現できる。
【0044】
また、第2の磁束障壁部26b1において、マグネット28の端面28cとロータコア26の環状部26cとの距離X1は0.5mm以上あるとよい。
【0045】
また、第1の磁束障壁部26eおよび第2の磁束障壁部26b1は、磁極片26dの根本の最狭部の幅をW3、各磁路26fの幅をW4とすると、W3>2×W4を満たすように構成されているとよい。これにより、マグネット28の主面から出た磁力線は、更に磁路を通過しにくくなり、磁束の短絡をより抑制できる。
【0046】
(ステータ)
次に、ステータ14の構造について説明する。
図6は、ステータコアの上面図である。なお、
図6に示すステータコアの形状は概略であり細部を省略している。
【0047】
ステータコア36は、円筒状の部材であり、複数枚の板状のステータヨーク38が積層されたものである。ステータヨーク38は、複数本(本実施の形態では12本)のティース40が環状部の内周から中心に向かって形成されている。
【0048】
各ティース40には、インシュレータ(不図示)が取り付けられる。次に、ティース40ごとにインシュレータの上から導体を巻き付けてステータ巻線(不図示)を形成する。そして、このような工程を経て完成したステータ14の中央部にロータ12を配置する。なお、ティースの幅が先端部に向かって広がっている場合、複数に分割したインシュレータをティースの上下から取り付けてもよい。
【0049】
次に、ステータ14のティース40、ロータコア26、マグネット28等の形状について詳述する。本願発明者が鋭意検討したところ、これらの形状を工夫することで、トルクリップルやノイズをより低減できることを見いだした。
【0050】
図7は、実施例に係るロータ12およびステータ14の概略構成を示す図である。
図8は、比較例に係るロータの概略構成を示す図である。
【0051】
実施例に係るロータ12のロータコア26は、前述のように、扇形の磁極片26dの外周部26gの曲率半径をR、ロータコア26の最大外径をL、とすると、R<L/2を満たす。一方、
図8に示す比較例に係るロータコア50は、扇形の磁極片50dの外周部50gの曲率半径をR’、ロータコア50の最大外径をL’、とすると、R’=L’/2を満たす。このようなロータコア26やロータコア50を用い、同じステータに対して、その他必要な部品とともに組み付け、誘起電圧波形を測定した。
【0052】
図9は、実施例および比較例に係るロータコアを用いた誘起電圧測定を示す図である。
図9の縦軸は波形の電圧を相対的に示したものであり、横軸は時間である。
図10は、
図9に示す実施例および比較例に係る波形をFFT分析した際の誘起電圧波形歪の5次、7次、11次、13次数の成分を比較するための図である。
図10の縦軸は、各次数成分がFFT分析による全次数成分に対して占める割合を示している。
【0053】
図9に示すように、実施例に係るロータコア形状の場合、正弦波に近い波形となる。一方、比較例に係るロータコア形状の場合、正弦波からずれたいびつな形状の波形となる。例えば、
図10に示すように、実施例に係るロータの誘起電圧波形は、比較例に係るロータの誘起電圧波形と比較して、5次数成分は62%程度減少し、7次数、11次数、13次数の成分は84〜91%程度減少している。
【0054】
図11(a)は、比較例に係るロータを用いたモータのノイズを測定した結果を示す図、
図11(b)は、実施例に係るロータを用いたモータのノイズを測定した結果を示す図である。比較例に係るモータのノイズは、
図11(a)に示すように、回転数が3000[rpm]近くで85dBと非常に大きい。一方、実施例に係るモータのノイズは、
図11(b)に示すように、回転数が3000[rpm]近くで60dBであり、相対的に非常に静かになっていることがわかる。
【0055】
次に、
図7を用いてティース40およびロータコア26の形状について詳述する。ステータ14は、中央に向かって形成された、ロータと対向する複数のティース40を有する。ロータコア26の外周部の曲率半径をR、ティース40の先端部の周方向の幅をWとすると、0.9≦R/W≦4.2を満たすとよい。以下、R/Wを形状因子αと適宜称することがある。
【0056】
図12は、形状因子α(=R/W)を0.8〜4.5まで変化させた各ロータにおける誘起電圧波形の歪成分および誘起電圧定数比率を示す図である。
図12の左の縦軸は、各次数成分がFFT分析による全次数成分に対して占める割合を示しており、
図12の右の縦軸は、誘起電圧定数比率を示している。具体的な数値については表1に示す。
【0058】
一般的に、三相ブラシレスモータの集中巻では、誘起電圧波形に5次、7次、11次、13次の誘起電圧波形歪が発生する。これにより、モータのトルクリップルが変動し異音を発生させることになる。
図12や表1に示すように、形状因子αが0.8、4.3、4.5の場合、5次、7次、11次、13次の誘起電圧波形歪の合計が3.0%を超えており、トルクリップルに起因する異音の低減には改善の余地がある。一方、形状因子αが0.9≦α≦4.2(
図12の範囲R1)の場合、誘起電圧波形歪の合計が3.0%以下である。このように、5次、7次、11次、13次の誘起電圧波形歪を低減させることで、電流リップルの6次、12次の成分が減少し、トルクリップルが低減することで静音化が可能である。また、形状因子αが0.9以上の場合、誘起電圧定数比率が1.0以上であり、高いトルクを実現できる。このように、形状因子αが0.9≦α≦4.2の場合、高トルクで異音の少ないモータを実現できる。より好ましくは、形状因子αが1.0≦α≦3.0(
図12の範囲R2)の場合、誘起電圧波形歪の合計が2.0%以下となり、高トルクでありながら更に異音の発生が低減されたモータを実現できる。
【0059】
次に、
図7を用いてロータコア26およびマグネット28の形状について詳述する。
図7に示すように、ロータの最大外径をL、板状マグネットの径方向の幅をYとすると、0.37≦Y/(L/2)≦0.62を満たすとよい。以下、Y/(L/2)を形状因子βと適宜称することがある。
【0060】
図13は、形状因子β(=Y/(L/2))を0.35〜0.64まで変化させた各ロータにおけるトルクリップルおよび誘起電圧定数比率を示す図である。
図13の左の縦軸は、トルクリップルの割合を示しており、
図13の右の縦軸は、誘起電圧定数比率を示している。具体的な数値については表2に示す。
【0062】
図13や表2に示すように、特に、形状因子βが0.37≦β≦0.62の範囲(
図13の範囲R3)であれば、誘起電圧定数比率が1.0以上となり、トルクの高い状態が維持できる。また、トルクリップルが3.5%未満となるので、モータのスムーズな回転が実現できるとともに異音を小さくできる。更により好ましくは、形状因子βが0.40≦β≦0.47の範囲(
図13の範囲R4)であれば、高トルクを維持しながら、トルクリップルが3.0%未満となるので更に異音の発生低減されたモータを実現できる。
【0063】
上述のように、本実施の形態に係るブラシレスモータにおいては、トルクリップルを低減できる。トルクリップルの低減(減少)は、モータ回転時に各磁極片に作用する力の低減につながる。つまり、
図4や
図5に示すロータコア26における各磁極片26dの環状部26cに対する前述の機械的固定強度を相対的に小さくしても、磁極片26dの変位を抑えることが可能なロータ12を実現できる。そのため、磁路26fをより細く、またはより長くできる。磁路26fを細くもしくは長くすることで、磁気抵抗がより高くなり磁力線が通りにくくなるため、マグネット28から出る磁束のロータコア内の短絡が更に抑制され、より高トルクなブラシレスモータを実現できる。
【0064】
以下に、本願発明を好適に用いることができるブラシレスモータの諸元について説明する。本実施の形態に係るブラシレスモータは、外径が30〜140mm程度、好ましくは35〜85mm程度である。また、ステータの溝(ティース)の数は例えば12である。また、マグネットの数は10または14が好ましい。また、マグネットの磁力(エネルギー積)は、8MGOe以上、好ましくは10MGOe以上、より好ましくは30MGOe以上である。また、ロータの直径は、20〜70mm程度が好ましい。また、上述の各磁路の幅は、ロータコアを構成する一枚の板状部材の厚み(0.35〜0.5mm程度)より大きい。また、ロータとステータとのギャップは0.3mm〜1.5mm、好ましくは0.4〜0.65mmである。これにより、トルクの低下を抑えつつトルクリップルやノイズを低減できる。
【0065】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。