【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0042】
(実施例1:オーストラリア産牛もも肉の改良効果)
オーストラリア産牛もも肉の改良効果を検討した。蒸留水に対して炭酸ナトリウム(精製無水炭酸ナトリウム:大東化学株式会社製)1w/v%、プロテアーゼ(スミチームMP:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・メレウス由のプロテアーゼ)1300ユニット、およびペプチダーゼ(スミチームACP−G:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・オリゼ由来のペプチダーゼ)1ユニットを添加し、混合して溶解させた(以下、これを畜肉改良液という)。
【0043】
次いで、厚さ1.5cmとなるように牛もも肉をカットし、この畜肉改良液と牛もも肉を混合して(牛もも肉100重量部に対し畜肉改良液40重量部)、真空タンブラーを用いてタンブリング処理(回転速度:42rpm、処理温度:10℃、回転時間:120分間)を行い、処理肉を得た。その後、処理肉を処理装置から取り出して余分な畜肉改良液を取り除き、90℃にて12分間、水蒸気加熱して評価サンプルを得た。
【0044】
得られた評価サンプルについて、食品加工分野を専門とするパネラー10人による食感評価を実施した。
【0045】
食感評価は、「軟らかさ」および「肉質感」について、それぞれ以下のように評価した。
【0046】
(軟らかさ)
評価サンプルの軟らかさについては、パネラー1人あたり、約20gの評価サンプルを実際に食し、以下の基準にしたがって、10点から0点の採点を各パネラーが行い、合計値に対する平均値(小数点以下第1位を四捨五入した)を算出した:
10点:舌で潰すことができるほどに非常に軟らかい;
9点:容易に歯が入り、力を入れずに噛み切ることができるほどに非常に軟らかい;
8点:余り力を入れずに噛み切ることができるほどにかなり軟らかい;
7点:少し力を必要とするが噛み切り易いほどに軟らかい;
6点:力を必要とするが噛み切り易いほどにやや軟らかい;
5点:軟らかいとも硬いともいずれも判断できない;
4点:噛み切り難いほどにやや硬い;
3点:噛み切るのに力が必要とするほどに硬い;
2点:噛み切るのに相当な力を必要とするほどにかなり硬い;
1点:噛み切るのが困難であるほどに非常に硬い;
0点:歯が入らないほどに非常に硬い。
【0047】
得られた結果を表1に示す。
【0048】
(肉質感)
評価サンプルの肉質感について、パネラー1人あたり、約20gの評価サンプルを実際に食し、食した際に肉の弾力感が感じられた場合を「有り」、食した際に肉の弾力感を感じられなかった場合を「無し」とする基準で各パネラーが判断し、得られた判断のうち、過半数を得たものを評価結果とした(同数の場合は「無し」と判断した)。得られた結果を表1に示す。
【0049】
さらに、上記食感評価の他、得られた評価サンプルについて、赤外線水分計(水分計FD−600:株式会社ケット科学研究所製)を用いて、加熱後の処理肉の水分量を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0050】
(比較例1)
蒸留水に対し、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、プロテアーゼ(スミチームMP:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・メレウス由来のプロテアーゼ)1300ユニットのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0051】
(比較例2)
蒸留水に対し、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、ペプチダーゼ(スミチームACP−G:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・オリゼ由来のペプチダーゼ)1ユニットのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0052】
(比較例3)
蒸留水に対し、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、炭酸ナトリウム(精製無水炭酸ナトリウム:大東化学株式会社製)1w/v%のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0053】
(比較例4)
蒸留水に対し、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、炭酸ナトリウム(精製無水炭酸ナトリウム:大東化学株式会社製)1w/v%およびプロテアーゼ(スミチームMP:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・メレウス由来のプロテアーゼ)1300ユニットを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0054】
(比較例5)
蒸留水に対し、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、炭酸ナトリウム(精製無水炭酸ナトリウム:大東化学株式会社製)1w/v%およびペプチダーゼ(スミチームACP−G:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・オリゼ由来のペプチダーゼ)1ユニットを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0055】
(比較例6:コントロール)
炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼを添加することなく、蒸留水のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、実施例1で得られた評価サンプルは、比較例1〜6で得られた各評価サンプルと比較して軟らかさの点で格段に良好であったことがわかる。さらに、肉質感も比較例1の結果を除き、他の比較例2〜6と同等またはそれ以上に優れていたことがわかる。さらに、実施例1で得られた評価サンプルは、比較例1〜6のものと比較して水分量も最も高く、実際の食感評価を行った各パネラーの感想でも最も良好なジューシーさを有していたものであった。
【0058】
(実施例2および比較例7〜12:歩留まり率評価)
オーストラリア産牛モモ肉の歩留まり率を検討した。
【0059】
まず、当該牛モモ肉(各実施例または比較例につき15個のスライス片)の重量(最初の肉重量)を測定した。次いで、実施例1および比較例1〜6とそれぞれ同様にして評価サンプルを得た。得られた評価サンプルは、表2に示すようにそれぞれ実施例2および比較例7〜12とした。なお、各評価サンプルを得るにあたり、タンブリングした直後の肉の重量、および水蒸気加熱した直後の肉の重量をそれぞれ測定した。
【0060】
得られた各評価サンプルのタンブリング後および水蒸気加熱後の肉重量を、最初の肉重量の各スライス片を100とした場合の相対値として、タンブリング後および加熱後の歩留まり率(%)をその平均値と標準偏差の値で表した。得られた結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示すように、実施例2の評価サンプルは、水蒸気加熱後の歩留まり率が最も高かった。一方、比較例10の評価サンプルは、タンブリング直後の結果は、実施例2のものとほぼ同等であるものの、水蒸気加熱を通じてその割合を低下させていることがわかる。
【0063】
(実施例3:粉末調味料による軟化効果)
粉末調味料によるオーストラリア産牛モモ肉の改良効果を検討した。
【0064】
まず、表3に示す粉末調味料ベースを調製した。
【0065】
【表3】
【0066】
次いで、この粉末調味料ベースに、全体量を基準として炭酸ナトリウム(精製無水炭酸ナトリウム:大東化学株式会社製)0.2重量%、プロテアーゼ(スミチームMP:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・メレウス由来のプロテアーゼ)2600ユニット、およびペプチダーゼ(スミチームACP−G:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・オリゼ由来のペプチダーゼ)2ユニットを添加し、混合して粉末調味料とした。
【0067】
その後、上記牛モモ肉を厚さ1.5cmとなるようにカットし、牛モモ肉100gに対して2gの上記粉末調味料(牛モモ肉100gに対して炭酸ナトリウム0.2g、プロテアーゼ2600ユニット、およびペプチダーゼ2ユニットの各量に相当)をふりかけ、そのまま1時間室温にて静置した。次いで、この牛モモ肉を90℃にて12分間、水蒸気加熱して評価サンプルを得た。
【0068】
得られた評価サンプルについて、実施例1と同様にしてパネラー10人による食感評価(軟らかさおよび肉質感)を行った。得られた結果を表4に示す。
【0069】
(比較例13)
実施例3で得られた粉末調味料ベースに、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、プロテアーゼ(スミチームMP:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・メレウス由のプロテアーゼ)2600ユニットのみを添加して粉末調味料を得、当該粉末調味料(牛モモ肉100gに対してプロテアーゼ2600ユニットの量に相当)を牛モモ肉にふりかけたこと以外は、実施例3と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表4に示す。
【0070】
(比較例14)
実施例3で得られた粉末調味料ベースに、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、ペプチダーゼ(スミチームACP−G:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・オリゼ由来のペプチダーゼ)2ユニットのみを添加して粉末調味料を得、当該粉末調味料(牛モモ肉100gに対してペプチダーゼ2ユニットの量に相当)を牛モモ肉にふりかけたこと以外は、実施例3と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表4に示す。
【0071】
(比較例15)
実施例3で得られた粉末調味料ベースに、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、炭酸ナトリウム(精製無水炭酸ナトリウム:大東化学株式会社製)0.2重量%のみを添加して粉末調味料を得、当該粉末調味料(牛モモ肉100gに対して炭酸ナトリウム0.2gの量に相当)を牛モモ肉にふりかけたこと以外は、実施例3と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表4に示す。
【0072】
(比較例16)
実施例3で得られた粉末調味料ベースに、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、炭酸ナトリウム(精製無水炭酸ナトリウム:大東化学株式会社製)0.2重量%およびプロテアーゼ(スミチームMP:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・メレウス由のプロテアーゼ)2600ユニットを添加して粉末調味料を得、当該粉末調味料(牛モモ肉100gに対して炭酸ナトリウム0.2gおよびプロテアーゼ2600ユニットの各量に相当)を牛モモ肉にふりかけたこと以外は、実施例3と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表4に示す。
【0073】
(比較例17)
実施例3で得られた粉末調味料ベースに、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼの代わりに、炭酸ナトリウム(精製無水炭酸ナトリウム:大東化学株式会社製)0.2重量%およびペプチダーゼ(スミチームACP−G:新日本化学工業株式会社製アスペルギルス・オリゼ由来のペプチダーゼ)2ユニットを添加して粉末調味料を得、当該粉末調味料(牛モモ肉100gに対して炭酸ナトリウム0.2gおよびペプチダーゼ2ユニットの各量に相当)を牛モモ肉にふりかけたこと以外は、実施例3と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表4に示す。
【0074】
(比較例18:コントロール)
実施例3で得られた粉末調味料ベースに、炭酸ナトリウム、プロテアーゼおよびペプチダーゼを添加することなく、これを粉末調味料としたこと以外は、実施例3と同様にして評価サンプルを得、食感評価および水分量測定を行った。得られた結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
表4に示すように、実施例3で得られた評価サンプルは、比較例13〜18で得られた各評価サンプルに対して軟らかさの点で格段に良好であったことがわかる。さらに、肉質感も比較例13の結果を除き、他の比較例14〜18と同等またはそれ以上に優れていたことがわかる。また、実施例3のような粉末調味料の形態で使用しても、評価サンプルに対し、実施例1の畜肉改良液と同等の軟らかさおよび肉質感を提供し得ることがわかる。