(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-211771(P2015-211771A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】垂直穿刺支援システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20151030BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20151030BHJP
A61B 19/00 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
A61B8/00
A61B17/34 310
A61B19/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-95442(P2014-95442)
(22)【出願日】2014年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】507189460
【氏名又は名称】学校法人金沢医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】下出 祐造
(72)【発明者】
【氏名】辻 裕之
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C160FF47
4C160MM32
4C601EE10
4C601EE16
4C601FF03
4C601FF05
4C601KK16
4C601KK38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】穿刺針を生体表面に対して垂直刺入操作支援するための垂直穿刺支援システムの提供を目的とする。
【解決手段】穿刺針20の刺入方向をガイドするためのガイド孔を備えた超音波診断装置のプローブ11と、穿刺針20の刺入距離を計測する刺入距離計測手段とを備え、前記ガイド孔はプローブ11の探触面に対して刺入角度が0°となる直角方向に設定してあり、前記刺入距離計測手段にて得られた穿刺針20の先端部の計測ポイントを超音波画像上に表示することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺針の刺入方向をガイドするためのガイド孔を備えた超音波診断装置のプローブと、
穿刺針の刺入距離を計測する刺入距離計測手段とを備え、
前記ガイド孔はプローブの探触面に対して刺入角度が0°となる直角方向に設定してあり、
前記刺入距離計測手段にて得られた穿刺針の先端部の計測ポイントを超音波画像上に表示することを特徴とする穿刺支援システム。
【請求項2】
前記超音波画像を表示するモニターは刺入操作をする者の両眼のうち、少なくとも一方の眼面に装着可能な小型モニターであることを特徴とする請求項1記載の穿刺支援システム。
【請求項3】
前記刺入距離計測手段にて得られた計測信号を正弦波に変換する変換手段と、出力された正弦波を、概ね同一のカットオフ周波数からなるハイパスフィルタとローパスフィルタを組み合せ、左右のホーンからなるイヤホーンのうち、一方のホーンにハイパスフィルタ側を通過した聴覚信号を出力し、他方のホーンにローパスフィルタ側を通過した聴覚信号を出力することで最適刺入深さを聴覚信号にて感知できるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の穿刺支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から細胞や組織片を採取したり、生体患部に薬液注入、あるいは生体患部から液を抜き取る等の際に行われる穿刺針の刺入操作を支援するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺結節や頸部リンパ節に対する超音波ガイド下穿刺吸引細胞診は、臨床において一般的な手段となりつつある。
本出願人の発明者らは、先に超音波画像表示と合せて穿刺針の刺入深さを左右のイヤホーンの聴覚信号の組み合せにて感知できるようにした穿刺操作支援システムを提案している(特許文献1)。
同システムにより超音波診断画像と聴覚信号とのタブルチェックによる適格で安全性の高い穿刺操作が可能となっている。
ここで、超音波診断は、探触子であるプローブを用いて超音波を発生,送信するとともに生体内から反射したエコーを受信し、これをデータ処理し、画像表示するものである。
従って、所定の刺入角度で穿刺針を生体内に刺入する場合には、この穿刺針の先端部をエコーで検出できるが、プローブの探触面に対して垂直方向となる刺入角度がゼロの場合には、音響陰影となり穿刺針の先端部の検出が難しく、特に生体表面からの刺入深度が3cm未満で得ある場合には検出そのものができなかった。
その一方で気管や血管等の主要かつ非常に狭い領域から穿刺吸引細胞診を行うには、それら危険な隣接臓器との接触を避けるために最短経路を選択し、刺入角度0°の垂直刺入が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−81102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、穿刺針を生体表面に対して垂直刺入操作支援するための垂直穿刺支援システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る垂直穿刺支援システムは、穿刺針の刺入方向をガイドするためのガイド孔を備えた超音波診断装置のプローブと、穿刺針の刺入距離を計測する刺入距離計測手段とを備え、前記ガイド孔はプローブの探触面に対して刺入角度が0°となる直角方向に設定してあり、前記刺入距離計測手段にて得られた穿刺針の先端部の計測ポイントを超音波画像上に表示することを特徴とする。
本発明において刺入角度が0°とは、穿刺針の先端部がエコー検出にて音響陰影となることをいい、その範囲において刺入バラツキが許容される。
【0006】
ここで、穿刺針の刺入距離を計測するための刺入距離計測手段は、穿刺針の先端部の生体表面からの刺入深度を得るのが目的とする。
したがって、赤外線センサー等を用いて穿刺針を保持及び刺入する穿刺器具とプローブ又は生体表面との距離を計測する等、その手段に制限はない。
本発明においては先に本発明者らが提案した特許文献1の内容を取り込むことができる。
よって、本発明において、超音波画像を表示するモニターは刺入操作をする者の両眼のうち、少なくとも一方の眼面に装着可能な小型モニターであるのが好ましく、刺入距離計測手段にて得られた計測信号を正弦波に変換する変換手段と、出力された正弦波を、概ね同一のカットオフ周波数からなるハイパスフィルタとローパスフィルタを組み合せ、左右のホーンからなるイヤホーンのうち、一方のホーンにハイパスフィルタ側を通過した聴覚信号を出力し、他方のホーンにローパスフィルタ側を通過した聴覚信号を出力することで最適刺入深さを聴覚信号にて感知できるようにしてもよい。
ここで聴覚信号と表現したのは、音の高低、人の音声等、聴覚にて認識できる全ての信号が含まれる趣旨である。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、超音波診断装置のプローブに垂直刺入するための穿刺針のガイド孔を一体的に設けたので、プローブの探触面を生体表面に当てるだけで穿刺針の刺入方向におけるX,Y軸方向の座標が定まり、Z軸方向のみが穿刺距離として変動することになる。
よって、この変動を刺入距離計測手段で計測することで穿刺針の先端部を検出することができる。
この先端部をポイントとして超音波画像の音響陰影部に矢印等で表示すればリアルタイムに穿刺針の先端位置が認識できる。
これにより、刺入角度0°の垂直刺入であって特に刺入深度3cm未満の1〜2cmの浅い領域においても正確に穿刺針の先端部の描出ができ、頸部領域のみならず脊椎穿刺,胸腔穿刺等の広い分野にて利用可能な安全性の高い穿刺支援システムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】超音波診断装置のプローブに一体的に穿刺針のガイド孔を設けた例を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は探触面を示す。
【
図3】生体内の穿刺針の先端部の表示例を示す。(a)は針の刺入位置d
0の状態、(b)はそのときの画像表示を示し、(c)は針の刺入位置d
1の状態、(d)はそのときの画像表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る垂直穿刺支援システムの構成例を以下図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
本発明は
図2に示すプローブ11の構造及び刺入距離計測手段にて得られた穿刺針の先端部をエコー画像(超音波画像)にリアルタイムに表示した点にある。
その他の構成については特許文献1の内容を取り込むことができる。
【0010】
図1に示すように穿刺操作する者は、
図2に示すプローブ11に設けたガイド部13のガイド孔13aに沿って針20を挿入し、生体内に刺入する。
ガイド孔13aは、超音波診断装置のプローブ11の探触面となる送受信部に対して垂直方向に設けてある。
この際に一方の手でプローブ11を生体表面に当て、他方の手で針(穿刺針)20を装着した穿刺器具10をもって操作する。
操作する者の眼面にて着脱自在に配置した小型モニター30には
図1に示すようなエコー画像が表示される。
プローブ11の送受信部12となる探触面を生体表面に当て、針の刺入角度を0°にすると針20の周囲は音響陰影部Sとなり、針の先端部21が画像に表れない。
そこで、
図3に示すようにプローブ11の送受信部12が当接する生体表面から針20に設けられた特定の検出部20aとの距離d
0を赤外センサー等にて計測する。
針20の長さは初めから分かっているので距離d
0を計測することで生体表面からの針先端部21までの深さが計算でき、そのポイントP
0をエコー画像に表示する。
本実施例ではポイントP
0を左右の矢印で表示した例になっているが、表示方法に制限はない。
これにより、例えば
図3(a),(b)に示すように針20の深度を示す距離d
0がd
1に変化すると、エコー画像に示されるポイントP
0はP
1とリアルタイムに変化し、エコー画像に表示されるので、操作する者はこの画像を見ながら最適深さに刺入できる。
【0011】
刺入距離計測手段にて計測された計測信号を制御部50にて針の刺入深さに応じて出力電圧変化として検知し、アナログ信号化した正弦波に変換及び発振し、左右にホーンを有するイヤホーン40を用いて、例えば800Hzをカットオフ周波数とするローパスフィルタとハイパスフィルタを用いて、ローパスフィルタ側を通過した信号に基づく音を必要に応じて増幅し、一方のホーンに出力する。
一方、ハイパスフィルタ側を通過した信号に基づく音を必要に応じて増幅し、他方のホーンに出力する。
これにより、穿刺針の刺入深さが目標に合せた位置にあると、出力電圧が800Hz相当になるように設定することで、左右のホーンから音が通過し、最も大きい音として感知される。
このようにエコー画像表示と聴覚信号との両方にて確認できるようにすると、穿刺支援の信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0012】
11 プローブ
12 送受信部
13 ガイド部
13a ガイド孔
20 針(穿刺針)