特開2015-211978(P2015-211978A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブイ・テクノロジーの特許一覧

特開2015-211978ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法
<>
  • 特開2015211978-ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図000003
  • 特開2015211978-ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図000004
  • 特開2015211978-ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図000005
  • 特開2015211978-ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図000006
  • 特開2015211978-ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図000007
  • 特開2015211978-ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図000008
  • 特開2015211978-ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-211978(P2015-211978A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】ビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/066 20140101AFI20151030BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20151030BHJP
【FI】
   B23K26/066
   B23K26/382
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-95137(P2014-95137)
(22)【出願日】2014年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD11
4E168AD18
4E168CA06
4E168CB01
4E168CB03
4E168CB07
4E168CB23
4E168DA04
4E168DA06
4E168DA24
4E168DA25
4E168DA43
4E168EA02
4E168EA03
4E168EA19
4E168JA01
4E168JA17
4E168JA27
(57)【要約】
【課題】レーザ加工後の孔の縁部にバリが発生するのを防止する。
【解決手段】フィルム15にレーザ加工される開口パターン20の形状に相似形の開口4を有するビーム整形マスク1であって、開口4は、該開口4内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においてもフィルム15をレーザ加工できる少なくとも最低限のレーザ強度が確保し得る光透過率を有するように形成されたものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物にレーザ加工される孔の形状に相似形の開口を有するビーム整形マスクであって、
前記開口は、該開口内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においても前記被加工物をレーザ加工できる少なくとも最低限のレーザ強度が確保し得る光透過率を有するように形成されたことを特徴とするビーム整形マスク。
【請求項2】
前記開口は、縦横に並べて複数個が設けられていることを特徴とする請求項1記載のビーム整形マスク。
【請求項3】
前記被加工物の孔は、レーザ光の複数ショットで形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のビーム整形マスク。
【請求項4】
前記被加工物は、樹脂製のフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のビーム整形マスク。
【請求項5】
ビーム整形マスクに形成された開口を被加工物上に縮小投影して、該被加工物に孔をレーザ加工するレーザ加工装置であって、
前記ビーム整形マスクは、前記開口を、該開口内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においても前記被加工物をレーザ加工できる少なくとも最低限のレーザ強度が確保し得る光透過率を有するように形成したものであることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
前記被加工物の孔は、レーザ光の複数ショットで形成されることを特徴とする請求項6記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記被加工物は、樹脂製のフィルムであることを特徴とする請求項5又は6記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
ビーム整形マスクに形成された開口を被加工物上に縮小投影して、該被加工物に孔をレーザ加工するレーザ加工方法であって、
前記開口内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においても前記被加工物をレーザ加工できる少なくとも最低限のレーザ強度が確保し得る光透過率を有するように前記ビーム整形マスクに形成された前記開口を複数ショットのレーザ光を透過させ、
前記開口を透過した前記複数ショットのレーザ光を前記被加工物に照射して前記被加工物に前記孔を加工する、
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項9】
前記被加工物は、樹脂製のフィルムであることを特徴とする請求項8記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にレーザ加工される孔の形状に相似形の開口を有するビーム整形マスクに関し、特にレーザ加工後の孔の縁部にバリが発生するのを防止しようとするビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のビーム整形マスクは、投影結像レーザ・アブレーション・システムに使用されるものであって、可撓性フィルムに形成されるアパーチャに相似形のパターンを有しており、該パターンを上記フィルム上に結像することにより、フィルムがレーザアブレートされてフィルム上に上記アパーチャの孔が形成されるようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開表2005−517810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のビーム整形マスクにおいて、上記パターンは、フィルムに形成されるアパーチャに相似形の開口であり、開口内の光透過率が全体に亘って一定であったため、パターン(開口)を透過したレーザ光によりフィルムを貫通して加工されるアパーチャの縁部には、レーザ光の面内強度分布のばらつきに起因して切残し(以下「バリ」という)が発生することがあった。したがって、フィルムに微細な上記アパーチャの貫通孔を精度よく形成することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、レーザ加工後の孔の縁部にバリが発生するのを防止しようとするビーム整形マスク、レーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によるビーム整形マスクは、被加工物にレーザ加工される孔の形状に相似形の開口を有するビーム整形マスクであって、前記開口は、該開口内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においても前記被加工物をレーザ加工できる少なくとも最低限のレーザ強度が確保し得る光透過率を有するように形成されたものである。
【0007】
また、本発明によるレーザ加工装置は、ビーム整形マスクに形成された開口を被加工物上に縮小投影して、該被加工物に孔をレーザ加工するレーザ加工装置であって、前記ビーム整形マスクは、前記開口を、該開口内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においても前記被加工物をレーザ加工できる少なくとも最低限のレーザ強度が確保し得る光透過率を有するように形成したものである。
【0008】
さらに、本発明によるレーザ加工方法は、ビーム整形マスクに形成された開口を被加工物上に縮小投影して、該被加工物に孔をレーザ加工するレーザ加工方法であって、前記開口内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においても前記被加工物をレーザ加工できる少なくとも最低限のレーザ強度が確保し得る光透過率を有するように前記ビーム整形マスクに形成された前記開口を複数ショットのレーザ光を透過させ、前記開口を透過した前記複数ショットのレーザ光を前記被加工物に照射して前記被加工物に前記孔を加工するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーザ加工後の孔の縁部にバリが発生するのを防止することができる。したがって、被加工物に微細な孔を精度よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるビーム整形マスクの一実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図である。
図2】本発明によるビーム整形マスクの開口内の光透過率を説明する図であり、(a)は開口内の中心線に沿った光透過率特性の一例を示すグラフ、(b)はハーフトーンを示す説明図、(c)は(b)のハーフトーンの形成例を示す説明図である。
図3】本発明によるレーザ加工装置の一実施形態の概略構成を示す説明図である。
図4】従来技術のビーム整形マスクを示す図であり、(a)は平面図、(b)は開口内の中心線に沿った光透過率特性の一例を示すグラフである。
図5】従来技術のビーム整形マスクを使用したレーザ加工例を示す説明図であり、(a)はレーザ照射開始時を示し、(b)はレーザ加工途中段階を示し、(c)はレーザ加工後の状態を示す。
図6】本発明によるビーム整形マスクを使用したレーザ加工例を断面で示す説明図である。
図7】本発明によるビーム整形マスクを使用したレーザ加工例を平面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明によるビーム整形マスクの一実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図である。また、図2は本発明によるビーム整形マスクの開口内の光透過率を説明する図であり、(a)は開口内の中心線に沿った光透過率特性の一例を示すグラフ、(b)はハーフトーンを示す説明図、(c)は(b)のハーフトーンの形成例を示す説明図である。このビーム整形マスク1は、被加工物にレーザ加工される孔の形状に相似形の開口を有するもので、透明基板2と、遮光膜3と、開口4と、を備えて構成されている。
【0012】
上記透明基板2は、特に、シート状の被加工物である樹脂製のフィルムをアブレートすることができる波長が400nm以下のレーザ光を高い透過率で透過するもので、例えば石英基板である。又は、透明なガラス基板であってよい。
【0013】
上記透明基板2の一面を覆って、遮光膜3が設けられている。この遮光膜3は、レーザ光の透過を遮断するもので、例えばクロム(Cr)等から成る厚みが100nm程度の金属膜であり、スパッタリング、蒸着等の公知の成膜技術を利用して透明基板2上に成膜される。
【0014】
上記遮光膜3には、開口4が設けられている。この開口4は、フィルムに照射されるレーザ光の形状を整形するためのもので、遮光膜3に形成されたレーザ光が通過する孔であり、フィルムにレーザ加工される開口パターンの孔の形状と相似形を有して、図1(a)に示すように、縦横に並べて複数個が設けられている。
【0015】
詳細には、開口4は、図2(a)に示すように、該開口4内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においても上記フィルムをレーザ加工(アブレート)できる少なくとも最低限のレーザ強度を確保し得る、例えば60%程度の光透過率を有するように形成されている。上記光透過率の漸減の仕方は、線形的であっても非線形的であってもよい。
【0016】
開口4内の光透過率が上述のように中央部から周縁部に向かって漸減する特性を有するようにするためには、図2(b)に示すような開口4内をハーフトーンにするとよい。そのためには、同図(c)に示すように、開口4内に上記遮光膜3と同じ金属膜からなる複数の遮光ドット5を、中央部から周縁部に向かってその大きさが大きくなるように又は配置密度が高くなるように形成するとよい。なお、遮光ドット5のサイズは、結像レンズ9と対物レンズ10からなる光学系の分解能よりも小さいサイズとするのがよい。又は、複数の遮光線を中央部から周縁部に向かってその幅が大きくなるように形成してもよく又は配置密度が高くなるように形成してもよい。遮光膜3に上記のような開口4を形成するためには、遮光膜3を覆ってフォトレジストを塗布し、フォトマスクを使用して上記フォトレジストを露光及び現像してレジストマスクを形成した後、表面に露出した上記遮光膜3の部分をウェットエッチングや、ドライエッチング等の公知のエッチング技術を利用して除去することにより形成することができる。
【0017】
フィルムの開口パターンが複数ショットのレーザ照射により形成される場合には、1ショットのレーザ加工時においても、フィルムに投影される上記開口4の周縁部のレーザ強度は、最低でもフィルムをアブレートし得るだけの値であることが必要である。これにより、フィルムの上記投影された開口4に対応する部分がレーザ光の複数ショットで完全にアブレートされて除去され、フィルムに上記開口パターンが形成される。この場合、フィルムには、開口パターンの孔がその中央部から周縁部に向かって徐々に広がって形成されるため、開口パターンの周縁部にバリが発生するおそれがない。
【0018】
次に、本発明のビーム整形マスク1を備えたレーザ加工装置の実施形態について説明する。図3は本発明によるレーザ加工装置の一実施形態の概略構成を示す説明図である。
上記レーザ加工装置は、XYステージ6と、該XYステージ6の上方に、レーザ光Lの進行方向の上流から下流に向かってレーザ光源7と、カップリング光学ユニット8と、ビーム整形マスク1と、結像レンズ9と、対物レンズ10とをこの順に備えている。また、対物レンズ10から結像レンズ9に向かう光路がハーフミラー11で分岐された光路上には、撮像カメラ12が配置され、対物レンズ10から結像レンズ9に向かう光路が、400nm以下の波長のレーザ光Lを透過し、可視光を反射するダイクロイックミラー13で分岐された光路上には、照明光源14が配置されている。
【0019】
ここで、XYステージ6は、上面に可視光を透過する樹脂製のフィルム15を載置してXY平面に平行な面内をX,Y方向に移動するもので、図示省略の制御装置によって制御されて、予め入力して記憶された移動量だけステップ移動するようになっている。
【0020】
上記レーザ光源7は、波長が400nm以下のレーザ光Lを発生する、例えばKrF248nmのエキシマレーザや、1064nmの第3高調波や第4高調波のレーザ光Lを放射するYAGレーザである。レーザ光Lは、赤外線や可視光線であってもよいが、フィルム15をアブレートするには紫外線が好ましい。
【0021】
また、上記カップリング光学ユニット8は、レーザ光源7から放射されたレーザビームを拡張するビームエキスパンダと、レーザ光Lの輝度分布を均一にして後述のビーム整形マスク1に照射するフォトインテグレータ及びコンデンサレンズを含むものである。
【0022】
上記ビーム整形マスク1は、フィルム15に照射されるレーザ光Lを、レーザ加工される開口パターンに相似形の断面形状を有する複数本のレーザ光Lに整形して射出するもので、図1(a)に示すように、フィルム15に形成される開口パターンに対して予め定められた所定の拡大倍率Mで形成された複数の開口4を、予め定められた単位領域内に位置する複数の開口パターンの配列ピッチのM倍のピッチで配置して備えたもので、透明な石英基板に被着させたクロム(Cr)等の遮光膜3に上記開口4を形成したものである。
【0023】
詳細には、上記ビーム整形マスク1は、前述したように開口パターンに相似形の開口4を有し、該開口4内の光透過率を、図2(a)に示すように中央部から周縁部に向かって漸減させると共に、周縁部においてもフィルム15をレーザ加工できる少なくとも最低限のレーザ強度を確保し得る、例えば60%程度の光透過率が得られるように構成されている。
【0024】
上記結像レンズ9は、後述の対物レンズ10と協働してビーム整形マスク1に形成された複数の開口4をフィルム15上に予め定められた倍率Mで縮小投影するもので集光レンズである。
【0025】
また、上記対物レンズ10は、上記結像レンズ9と協働してビーム整形マスク1に形成された複数の開口4をフィルム15上に予め定められた倍率Mで縮小投影すると共に、例えばフィルム15の裏面側に配置され、レーザ光Lの照射の位置決め基準となる基準パターンを設けた透明な基準基板16の上記基準パターンの像を取り込んで後述の撮像カメラ12により撮影可能とするものである。そして、対物レンズ10の結像位置とビーム整形マスク1とは共役の関係を成している。
【0026】
上記撮像カメラ12は、基準基板16に設けられた上記基準パターンを撮影するものであり、例えば2次元画像を撮影するCCDカメラやCMOSカメラ等である。そして、対物レンズ10の結像位置と撮像カメラ12の撮像面とは共役の関係を成している。
【0027】
上記照明光源14は、可視光を放射する例えばハロゲンランプ等であり、撮像カメラ12の撮像領域を照明して撮像カメラ12による撮影を可能にさせるものである。
【0028】
なお、図3において、符号17は対物レンズ10と協働して基準基板16の基準パターンの像やレーザ加工により形成される開口パターン20の像等を撮像カメラ12の撮像面に結像させる結像レンズであり、符号18はリレーレンズ、符号19は全反射ミラーである。
【0029】
次に、このように構成されたレーザ加工装置を使用して行うレーザ加工方法について説明する。ここでは、フィルム15に開口パターンを形成する場合について説明する。
先ず、XYステージ6上に基準基板16を、基準パターンを形成した面16aをXYステージ6側として載置し固定すると共に、基準基板16の基準パターンを形成した面16aとは反対側の面16bにフィルム15を密着させる。
【0030】
次いで、XYステージ6を移動させて対物レンズ10がフィルム15のレーザ加工開始位置に位置付けられる。詳細には、撮像カメラ12により、レーザ加工開始位置の単位領域の例えば中心位置に対応して上記基準基板16に設けられた基準パターンをフィルム15を透き通して撮影し、該基準パターンを撮像中心に位置付ける。なお、この撮像中心は、対物レンズ10の光軸に合致している。
【0031】
続いて、レーザ加工装置のレーザ光学ユニットを対物レンズ10の光軸に沿って予め定められた距離だけZ軸方向に上昇させ、対物レンズ10の結像位置をフィルム15と上記基準基板16との界面に位置付ける。
【0032】
引き続いて、レーザ光源7が起動されてパルス発振し、複数ショットのレーザ光Lが放射される。放射されたレーザ光Lは、カップリング光学ユニット8により拡張され、強度分布が均一にされたレーザ光Lとなってビーム整形マスク1に照射する。
【0033】
ビーム整形マスク1に照射したレーザ光Lは、該ビーム整形マスク1の複数の開口4を透過することにより断面形状が開口パターンの形状と相似形に整形されて、複数のレーザ光Lとなってビーム整形マスク1を射出する。そして、対物レンズ10により、フィルム15上に集光される。
【0034】
この場合、図4に示すような、開口4内の光透過率が全体に亘って略一定である従来技術のビーム整形マスク1では、整形されたレーザ光Lの面内強度分布は、許容範囲内のばらつきを有して全体的に略均一となる。したがって、このようなレーザ光Lによりフィルム15を加工すると、図5(a)に示すレーザ照射開始時から同図(b)に示すレーザ加工途中段階では、全体に亘って略一定の深さで開口パターン20の穴21が形成さる。しかし、開口パターン20の穴21がフィルム15を貫通する直前においては、レーザ光Lの面内強度分布のばらつきに起因して、開口パターン20の穴21が貫通する部分と貫通しない部分が生じる。したがって、同図(c)に示すように、開口パターン20のレーザ光照射側とは反対側の縁部にバリ22が生じることがあった。
【0035】
一方、本発明においては、図2(a)に示すように、上記開口4内の光透過率が中央部から周縁部に向かって漸減すると共に、周縁部においてもフィルム15をアブレートし得るレーザ強度が確保できるように最低でも60%程度の光透過率が得られるようにしているので、図6(a)及び図7(a)に示すように、フィルム15には、レーザ強度の強い中央部から穴21が加工され、複数ショットのレーザ光Lの照射により、穴21が図6(b)〜(d)及び図7(b)〜(d)に示すように徐々に深さを増すと共に大きくなり、図6(e)及び図7(e)に示すように、最終的にフィルム15を貫通させて開口パターン20が形成される。
【0036】
このように、本発明によれば、フィルム15には、開口パターン20の穴21がその中央部から周縁部に向かって徐々に広がって形成されるため、開口パターン20の周縁部にバリ22が発生するおそれがない。
【0037】
このようにしてレーザ加工開始位置の単位領域に複数の開口パターン20が形成されると、XYステージ6がX又はY軸方向に予め定められた距離だけステップ移動し、2番目の単位領域、3番目の単位領域…と、各単位領域に順繰りに複数の開口パターン20がレーザ加工される。こうして、フィルム15の予め定められた所定位置に複数の開口パターン20が形成される。
【0038】
複数の開口パターン20の形成は、前述したように、レーザ加工開始位置の単位領域の例えば中心位置に対応して上記基準基板16に設けられた基準パターンを撮像カメラ12で撮影し、上記基準パターンの位置を確認した後、該基準パターンの位置を基準にしてXYステージ6をX,Y方向にステップ移動しながら行われる。その際、XYステージ6の機械精度に基づいて予め定められた所定距離だけステップ移動しながら各単位領域に複数の開口パターン20を形成してもよく、又は各単位領域の中心位置に対応して基準基板16に設けられた基準パターンを撮像カメラ12で撮影し、該基準パターンに撮像カメラ12の例えば撮像中心(対物レンズ10の光軸に一致)を位置決めした後、複数の開口パターン20をレーザ加工してもよい。さらには、XYステージ6を予め定められた所定距離だけステップ移動しながら、ビーム整形マスク1に設けられた1つの開口4を通過させた1本のレーザ光Lをフィルム15に照射し、複数の開口パターン20を形成してもよい。
【0039】
なお、上記実施形態においては、XYステージ6をXYの二次元方向に移動する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、対物レンズ10を含むレーザ光学ユニット側を移動してもよく、又はステージ及びレーザ光学ユニットの両方を移動してもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、被加工物が樹脂製のフィルム15である場合について説明したが、本発明はこれに限られず、被加工物は、少なくとも一つの上記開口パターン20を内包する大きさの貫通孔を設けたメタルマスクと、樹脂製フィルム15とを積層させた積層体の前記フィルム15であってもよい。又は、被加工物は、シート状の金属箔であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…ビーム整形マスク
4…開口
15…フィルム(被加工物)
20…開口パターン(被加工物の孔)
L…レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2015年3月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記被加工物の孔は、レーザ光の複数ショットで形成されることを特徴とする請求項5記載のレーザ加工装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記遮光膜3には、開口4が設けられている。この開口4は、フィルムに照射されるレーザ光の光軸に交差する横断面形状を整形するためのもので、遮光膜3に形成されたレーザ光が通過する孔であり、フィルムにレーザ加工される開口パターンの孔の形状と相似形を有して、図1(a)に示すように、縦横に並べて複数個が設けられている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
開口4内の光透過率が上述のように中央部から周縁部に向かって漸減する特性を有するようにするためには、図2(b)に示すような開口4内をハーフトーンにするとよい。そのためには、同図(c)に示すように、開口4内に上記遮光膜3と同じ金属膜からなる複数の遮光ドット5を、中央部から周縁部に向かってその大きさが大きくなるように又は配置密度が高くなるように形成するとよい。なお、遮光ドット5のサイズは、結像レンズ9と対物レンズ10からなる光学系の分解能よりも小さいサイズとするのがよい。又は、開口4内の光透過率を中央部から周縁部に向かって漸減させるためには、複数の遮光線を中央部から周縁部に向かってその幅が大きくなるように形成してもよく又は配置密度が高くなるように形成してもよい。遮光膜3に上記のような開口4を形成するためには、遮光膜3を覆ってフォトレジストを塗布し、フォトマスクを使用して上記フォトレジストを露光及び現像してレジストマスクを形成した後、表面に露出した上記遮光膜3の部分をウェットエッチングや、ドライエッチング等の公知のエッチング技術を利用して除去することにより形成することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
次いで、XYステージ6を移動させて対物レンズ10がフィルム15のレーザ加工開始位置に位置付けられる。詳細には、撮像カメラ12により、レーザ加工開始位置の単位領域の例えば中心位置に対応して上記基準基板16に設けられた基準パターンをフィルム15を透かして撮影し、該基準パターンを撮像中心に位置付ける。なお、この撮像中心は、対物レンズ10の光軸に合致している。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
ビーム整形マスク1に照射したレーザ光Lは、該ビーム整形マスク1の複数の開口4を透過することにより光軸に交差する横断面形状が開口パターンの形状と相似形に整形されて、複数のレーザ光Lとなってビーム整形マスク1を射出する。そして、対物レンズ10により、フィルム15上に集光される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
この場合、図4(a)に示すような、開口4内の光透過率が同図(b)に示すように全体に亘って略一定である従来技術のビーム整形マスク1では、整形されたレーザ光Lの面内強度分布は、許容範囲内のばらつきを有して全体的に略均一となる。したがって、このようなレーザ光Lによりフィルム15を加工すると、図5(a)に示すレーザ照射開始時から同図(b)に示すレーザ加工途中段階では、全体に亘って略一定の深さで開口パターン20の穴21が形成さる。しかし、開口パターン20の穴21がフィルム15を貫通する直前においては、レーザ光Lの面内強度分布のばらつきに起因して、開口パターン20の穴21が貫通する部分と貫通しない部分が生じる。したがって、同図(c)に示すように、開口パターン20のレーザ光照射側とは反対側の縁部にバリ22が生じることがあった。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
なお、上記実施形態においては、XYステージ6をXYの二次元方向に移動する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、対物レンズ10を含むレーザ光学ユニット側を移動してもよく、又はステージ及びレーザ光学ユニットの両方を相対的に移動してもよい。