【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
緻密質の等方性黒鉛材(東洋炭素株式会社製であって、かさ密度1.66Mg/m
3、開気孔率23.8%、電気抵抗率11.1μΩm、異方比1.02)を耐圧容器に収容し、1070℃で溶融した銅をN
2ガスにて15MPaの圧力で1時間加圧含浸して、銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A1と称する。
尚、上記銅含浸黒鉛材料を放電加工用電極に加工したものを、以下、電極A1と称することがある。このことは下記実施例2〜実施例9、比較例1、比較例2でも同様である(例えば、実施例2の放電加工用電極であれば電極A2となる)。
【0029】
(実施例2)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.66Mg/m
3、開気孔率23.5%、電気抵抗率14.0μΩm、異方比1.03のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A2と称する。
【0030】
(実施例3)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.79Mg/m
3、開気孔率16.7%、電気抵抗率12.6μΩm、異方比1.05のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A3と称する。
【0031】
(実施例4)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.77Mg/m
3、開気孔率16.7%、電気抵抗率18.9μΩm、異方比1.06のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A4と称する。
【0032】
(実施例5)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.78Mg/m
3、開気孔率15.2%、電気抵抗率19.1μΩm、異方比1.03のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A5と称する。
【0033】
(実施例6)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.81Mg/m
3、開気孔率14.2%、電気抵抗率8.9μΩm、異方比1.03のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A6と称する。
【0034】
(実施例7)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.80Mg/m
3、開気孔率14.8%、電気抵抗率15.2μΩm、異方比1.06のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A7と称する。
【0035】
(実施例8)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.78Mg/m
3、開気孔率15.0%、電気抵抗率15.9μΩm、異方比1.05のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A8と称する。
【0036】
(実施例9)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.78Mg/m
3、開気孔率16.1%、電気抵抗率14.4μΩm、異方比1.04のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料A9と称する。
【0037】
(比較例1)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.88Mg/m
3、開気孔率10.7%、電気抵抗率8.7μΩm、異方比1.03のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料Z1と称する。
【0038】
(比較例2)
等方性黒鉛材として、かさ密度1.92Mg/m
3、開気孔率13.4%、電気抵抗率20.0μΩm、異方比1.06のものを用いた他は、上記実施例1と同様にして銅含浸黒鉛材料を作製した。
このようにして作製した銅含浸黒鉛材料を、以下、材料Z2と称する。
【0039】
(実験1)
上記材料(電極)A1〜A7における電気抵抗率と、銅含浸率と、電極消耗率(長さ電極消耗率)とを下記に示す方法で調べたので、その結果を表1に示す。また、材料A1〜A7における基材の開気孔率と銅含浸率との関係を
図1に、材料A1〜A7における銅含浸率と電気抵抗率との関係を
図2に、及び、材料A1〜A7における電気抵抗率と電極消耗率との関係を
図3に示す。
【0040】
〔電気抵抗率の測定〕
各材料の電気抵抗率を、直流四端子法で測定した。
【0041】
〔銅含浸率の算出〕
電極のかさ密度(銅含浸後のかさ密度)d
Bと、黒鉛材料からなる基材のかさ密度d
B,sとを調べ、これらの値を(1)式に代入することにより、銅含浸率を算出した。尚、ρ
Cuは銅の比重(ρ
Cu=8.96Mg/m
3)である。
φ=[(d
B−d
B,s)/ρ
Cu]×100・・・(1)
【0042】
〔電極消耗率の算出〕
各材料から成る電極を用いて、超硬合金材料(冨士ダイス株式会社製フジロイD40)を下記の条件で放電加工して、電極消耗長さを測定し、これらの値を下記(3)式に代入して電極消耗率を算出した。
【0043】
・加工面積10×4mm
2
・電極の支持治具の、加工深さ方向への進行距離2mm
・使用機種:(株)ソディック社製AQ35L
・極性:正極性
・電流ピーク値:28(A)
・ONタイム:5(μsec)
・OFFタイム:10(μsec)
【0044】
電極消耗率=(電極消耗長さ〔mm〕/加工深さ〔mm〕)×100・・・(3)
【0045】
【表1】
【0046】
表1及び
図1から明らかなように、基材の開気孔率が高いほど銅含浸率が高くなっていることが認められる。また、表1及び
図2から明らかなように、銅含浸率が高いほど電気抵抗率が低くなっていることが認められる。更に、表1及び
図3から明らかなように、電気抵抗率が低いほど電極消耗率が低くなっていることが認められる。
【0047】
(実験2)
次に、上記実験1における〔電極消耗率の算出〕で示した条件と同一の条件で、材料(電極)A1〜A7を用いて、上述した超硬合金材料の加工を行い、各材料の加工速度を測定した。尚、上記加工速度とは、超硬合金材料を1分間加工したときの加工深さである。
また、材料(電極)A1〜A7における銅含浸後の特性として、上記実験1で示した電気抵抗率、銅含浸率の他に、電極(銅含浸後)のかさ密度と曲げ強さとを調べた。そして、電極のかさ密度、銅含浸率、電気抵抗率、及び曲げ強さから、下記(2)式を用いて、材料(電極)A1〜A7における変数xを求めた。
【0048】
x=(d
B×φ×ρ/σ
B)×10・・・(2)
(2)式において、d
Bは電極のかさ密度(Mg/m
3)、φは銅の含浸率(%)、ρは電気抵抗率(μΩm)、σ
Bは曲げ強さ(MPa)である。
上記曲げ強さは、室温にてインストロン型材料試験機を用い3点曲げ試験方法にて測定した。
尚、各特性値を表2に示し、また、材料A1〜A7における、変数xと加工速度及び電極消耗率との関係を
図4に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2及び
図4から明らかなように、材料(電極)A1〜A7は変数xが7.5以下なので、電極消耗率及び加工速度の双方で優れた性能を発揮することがわかる。
【0051】
また、材料A1について、光学顕微鏡による断面写真を撮影したので
図5に示す。
図5中、白色部が銅、灰色部がグラファイト、黒色部が空隙である。
図5に示されるように、グラファイト中に銅が均一に含浸されて存在していることが判る。
【0052】
(実験3)
上記材料(電極)A1〜A5、A8、A9、Z1及びZ2における電気抵抗率と、銅含浸率と、電極消耗率(長さ電極消耗率)とを実験1と同じ方法で調べたので、その結果を表3に示す。但し、放電加工の条件のみ下記に示すように変更している(尚、実験1と異なるのは、電流ピーク値、ONタイム、及び、OFFタイムである)。また、材料A1〜A5、A8、A9、Z1及びZ2における基材の開気孔率と銅含浸率との関係を
図6に、材料A1〜A5、A8、A9、Z1及びZ2における銅含浸率と電気抵抗率との関係を
図7に、並びに、材料A1〜A5、A8、A9、Z1及びZ2における電気抵抗率と電極消耗率との関係を
図8に示す。
【0053】
・加工面積10×4mm
2
・電極の支持治具の、加工深さ方向への進行距離2mm
・使用機種:(株)ソディック社製AQ35L
・極性:正極性
・電流ピーク値:60(A)
・ONタイム:30(μsec)
・OFFタイム:100(μsec)
【0054】
【表3】
【0055】
表3及び
図6から明らかなように、基材の開気孔率が高いほど銅含浸率が高くなっており、材料Z1、Z2よりも基材の開気孔率が高い材料A1〜A5、A8、A9では、材料Z1、Z2よりも銅含浸率が高くなっていることが認められる。また、表3及び
図7から明らかなように、銅含浸率が高いほど電気抵抗率が低くなっており、材料Z1、Z2よりも銅含浸率が高い材料A1〜A5、A8、A9では、材料Z1、Z2よりも電気抵抗率が低くなっていることが認められる。更に、表3及び
図8から明らかなように、電気抵抗率が低いほど電極消耗率が低くなっており、材料Z1、Z2よりも電気抵抗率が低い材料A1〜A5、A8、A9では、材料Z1、Z2よりも電極消耗率が低くなっていることが認められる。
【0056】
(実験4)
次に、上記実験3における〔電極消耗率の算出〕で示した条件と同一の条件で、材料(電極)A1〜A5、A8、A9、Z1及びZ2を用いて、上述した超硬合金材料の加工を行い、各材料の加工速度を測定した。尚、上記加工速度とは、超硬合金材料を1分間加工したときの加工深さである。
また、材料(電極)A1〜A5、A8、A9、Z1及びZ2における銅含浸後の特性として、上記実験3で示した電気抵抗率、銅含浸率の他に、電極(銅含浸後)のかさ密度と曲げ強さとを調べた。そして、電極のかさ密度、銅含浸率、電気抵抗率、及び曲げ強さから、下記(2)式を用いて、材料(電極)A1〜A5、A8、A9、Z1及びZ2における変数xを求めた。
【0057】
x=(d
B×φ×ρ/σ
B)×10・・・(2)
(2)式において、d
Bは電極のかさ密度(Mg/m
3)、φは銅の含浸率(%)、ρは電気抵抗率(μΩm)、σ
Bは曲げ強さ(MPa)である。
上記曲げ強さは、室温にてインストロン型材料試験機を用い3点曲げ試験方法にて測定した。
尚、各特性値を表4に示し、また、材料A1〜A5、A8、A9、Z1及びZ2における、変数xと加工速度及び電極消耗率との関係を
図9に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4及び
図9から明らかなように、材料(電極)A1〜A5、A8、A9は変数xが6.5以下なので、電極消耗率及び加工速度の双方で特に優れた性能を発揮することがわかる。