(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212155(P2015-212155A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】積層剥離容器、積層剥離容器分離治具、及び積層剥離容器の分離方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20151030BHJP
B65D 1/32 20060101ALI20151030BHJP
B23K 26/359 20140101ALI20151030BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/32BRL
B23K26/359ZAB
B29B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-94855(P2014-94855)
(22)【出願日】2014年5月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】山内 由夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 素晴
【テーマコード(参考)】
3E033
4E168
4F401
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA13
3E033BA16
3E033BB08
3E033CA20
3E033DC10
3E033DE05
3E033FA03
4E168AD14
4E168JA17
4E168JA27
4F401AA08
4F401AC11
4F401AD01
4F401AD07
4F401BA06
4F401CA35
4F401CA40
(57)【要約】
【課題】 内容物を最後まで使い切ることが可能で、使用後には内側の容器を簡単に分離して廃棄することが可能な積層剥離容器を提供する。
【解決手段】 外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器である。内層容器は、外層容器から分離された状態で廃棄可能である。例えば、外層容器に分離容易線が設けられており、この分離容易線を切り離すことにより内層容器が外層容器から分離される。あるいは、外層容器に分離用摘み部が設けられており、この分離用摘み部を利用して外層容器を引きちぎることにより内層容器が外層容器から分離される。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、
前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器であって、
前記内層容器は、外層容器から分離された状態で廃棄可能であることを特徴とする積層剥離容器。
【請求項2】
前記外層容器に分離容易線が設けられており、この分離容易線を切り離すことにより内層容器が外層容器から分離されることを特徴とする請求項1記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記分離容易線は、レーザにより微細孔を線状に配列形成することにより設けられていることを特徴とする請求項2記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記外層容器に分離用摘み部が設けられており、この分離用摘み部を利用して外層容器を引きちぎることにより内層容器が外層容器から分離されることを特徴とする請求項1記載の積層剥離容器。
【請求項5】
前記外層容器に設けられた空気導入部が空気導入孔であり、当該空気導入孔に開閉弁が設けられ、
前記開閉弁を利用して、前記外層容器の空気導入孔を起点に、外層容器が破断され、内層容器が分離可能とされる請求項1記載の積層剥離容器。
【請求項6】
外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器の口部に圧入される圧入部を有し、
前記圧入部を積層剥離容器の口部に圧入した状態で回転し、内層容器を外層容器から剥離・分離する積層剥離容器分離治具。
【請求項7】
外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器の口部に積層剥離容器分離治具の圧入部を挿入し、
前記圧入部を積層剥離容器の口部に圧入した状態で回転し、内層容器を外層容器から剥離・分離する積層剥離容器の分離方法。
【請求項8】
外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器の外層容器を切断する刃部を有し、
前記刃部を積層剥離容器の外層容器に当接した状態で回転することで外層容器を切断し、内層容器を外層容器から分離可能とする積層剥離容器分離治具。
【請求項9】
外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器の外層容器に積層剥離容器分離治具の刃部を当接し、
前記積層剥離容器分離治具を回転することで外層容器を切断し、内層容器を外層容器から分離可能とする積層剥離容器の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層剥離容器に関するものであり、さらには、積層剥離容器から内層容器を分離するための積層剥離容器分離治具、及び積層剥離容器の分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズやソース、ケチャップ等の食品容器において、使い終わった容器を廃棄する場合、残存してしまう内容物をどのように処理するかが大きな課題となっている。例えば、内容物の残渣が残った容器をそのまま透明なビニール袋等に入れて廃棄すると、外観上、汚らしい感じになってしまい、好ましいものではない。また、残渣が残ったままでは、資源回収に供することができず、容器を再利用することも難しい。
【0003】
これを解消するためには、容器内を洗浄し、残渣を洗い落とすことが必要になるが、口部開口の小さな容器内を洗浄するのは面倒であり、使用者に大きな負担を強いることになる。あるいは、廃棄が容易なパウチ状の容器を使用することも考えられるが、パウチ状の容器は自立性を有しておらず、マヨネーズ等の食品容器としては使い難い。
【0004】
そこで、このような不都合を解消することを目的に、容器本体と内側収容袋の2重構造とし、内側収容袋のみを取り出して、そのまま廃棄する容器が開発されている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。
【0005】
特許文献1には、口部にキャップを着脱自在に取付ける収納容器の内側に、軟質プラスチックフィルムで形成され風船状に膨縮自在に形成された内側収納袋を取付けた液体収納容器が開示されており、液状の収納物を使用後は、ノズルと一体に内側収納袋を口部から引き出せるようにし、空になった内側収納袋を取り出して廃棄し、容器だけをリサイクルできるようにすることが開示されている。
【0006】
特許文献2には、チューブ容器の内側を、軟質合成樹脂からなる内容器で二重にすることにより残りの固形物を、最後まで取り除くことが出来るようにした脱着分別式軟質チューブ容器が開示されている。特許文献2記載の軟質チューブ容器では、軟質合成樹脂よりなる内容器がチューブ容器から離れ、内容器内に残った固形物を最後まで使い切ることができ、チューブ容器は洗うことなく資源回収に出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3813550号公報
【特許文献2】特開2004−18113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば特許文献1に記載される液体収納容器では、内側収納袋を収縮させた状態で容器の口部から内側に挿入する必要があり、その作業が大変である。また、特許文献2に記載される軟質チューブ容器では、チューブ容器の内側に内容器を重ね合わせたままの状態で内容物の取り出しを行うため、内容器を取り出さない限り、内容物を最後まで使い切ることが難しい。加えて、使用後にもチューブ容器と内容器は貼り合せた状態のままであるため、内容器の円滑な取り出しが難しいという問題もある。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、内容物を最後まで使い切ることが可能で、使用後には内側の容器を簡単に分離して廃棄することが可能な積層剥離容器を提供することを目的とする。さらには、使用後に積層剥離容器を簡単に分離することが可能な積層剥離容器分離治具及び積層剥離容器の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本発明の積層剥離容器は、外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器であって、前記内層容器は、外層容器から分離された状態で廃棄可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明の積層剥離容器は、外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成される積層剥離容器であり、内層容器を外層容器内に収容した、ままの状態で、内層容器を外層容器から剥離・収縮させることで、収容物を最後まで使い切ることが可能である。また、使用後には、収縮した内層容器を外層容器から分離して取り出すことで、内層容器と外層容器を分別して廃棄することができる。この時、内層容器は外層容器から剥離し収縮した状態であるので、簡単に分離・回収することが可能である。さらに、本発明の積層剥離容器は、内層と外層とからなる多層パリソンを成形することで内層容器、外層容器が一括して形成され、後から内層容器を外層容器内に挿入する、というような作業は不要である。
【0012】
一方、本発明の積層剥離容器分離治具は、外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器の口部に圧入される圧入部を有し、前記圧入部を積層剥離容器の口部に圧入した状態で回転し、内層容器を外層容器から剥離・分離することを特徴とする。あるいは、外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器の外層容器を切断する刃部を有し、前記刃部を積層剥離容器の外層容器に当接した状態で回転することで外層容器を切断し、内層容器を外層容器から分離可能とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の積層剥離容器の分離方法は、外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器の口部に積層剥離容器分離治具の圧入部を挿入し、前記圧入部を積層剥離容器の口部に圧入した状態で回転し、内層容器を外層容器から剥離・分離することを特徴とする。あるいは、外気に接し空気導入部が設けられた外層容器と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層容器とから構成され、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、前記内層容器を外層容器から剥離・収縮させることにより内層容器内の収容物が排出される積層剥離容器の外層容器に積層剥離容器分離治具の刃部を当接し、前記積層剥離容器分離治具を回転することで外層容器を切断し、内層容器を外層容器から分離可能とすることを特徴とするものである。
【0014】
前述の積層剥離容器分離治具及び積層剥離容器の分離方法によれば、通常の積層剥離容器であっても、すなわち、積層剥離容器に特段の工夫を施さなくても、収容物を最後まで使い切った後、内層容器を外層容器から速やかに分離することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層剥離容器は、いわゆるデラミボトルであるため、内層容器を外層容器内に収容したままの状態で、内容物を最後まで使い切ることが可能である。また、使用後には、内層容器を外層容器から簡単に分離可能であり、内層容器と外層容器を分別して廃棄することが可能である。これにより、外層容器はそのまま回収して再利用することが可能となる。内層容器は、洗浄せずにそのまま廃棄するが、廃棄部分は僅かなもので済む。
【0016】
一方、本発明の積層剥離容器分離治具及び積層剥離容器の分離方法によれば、積層剥離容器に特段の工夫を施さなくても、使用後に内層容器を外層容器から簡単に分離可能であり、内層容器と外層容器を分別して廃棄することが可能である。これにより、前記積層剥離容器の場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1a】本発明を適用した積層剥離容器の一実施形態を示すものであり、斜視図である。
【
図1b】本発明を適用した積層剥離容器の一実施形態を示すものであり、概略断面図である。
【
図3】本発明を適用した積層剥離容器の他の実施形態を示す概略斜視図である。
【
図4a】摘み部を設けた積層剥離容器の一例を示す概略斜視図である。
【
図4b】摘み部を設けた積層剥離容器の一例を示す概略斜視図である。
【
図4c】摘み部を設けた積層剥離容器の一例を示す概略斜視図である。
【
図5】開閉弁を利用した分離方法を説明する図である。
【
図6a】本発明を適用した積層剥離容器分離治具の一例を示す図である。
【
図7a】圧入タイプの積層剥離容器分離治具の他の例を示す図である。
【
図7b】圧入タイプの積層剥離容器分離治具のさらに他の例を示す図である。
【
図8a】外層容器を切断するための刃部を有する積層剥離容器分離治具の一例を示す図である。
【
図8b】外層容器を切断するための刃部を有する積層剥離容器分離治具の一例を示す図である。
【
図8c】外層容器を切断するための刃部を有する積層剥離容器分離治具の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した積層剥離容器、積層剥離容器分離治具、及び積層剥離容器の分離方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
本実施形態の積層剥離容器1は、いわゆるデラミタイプの容器であり、
図1a及び
図1bに示すように、外気に接する外層容器2と、前記外層容器2に対して剥離可能に積層される内層容器3とから構成されている。例えば、外層容器2と内層容器3とを互いに剥離自在とするために、接着性のない樹脂同士を重ね合わせてブロー成形し、外層容器2と内層容器3が積層された形態の積層剥離容器1を形成している。
【0020】
ここで、外層容器2と内層容器3を構成するプラスチック材料としては、剥離自在とするために互いに接着性のないものを選択すればよく、係る要件を満たせばそれぞれ任意のプラスチック材料を選択することができるが、外層容器2と内層容器3のそれぞれに要求される性能や機能を考慮して、最適なものを選択することが好ましい。
【0021】
例えば、内層容器3は、この中に収容される収容物(マヨネーズ等の食品等)と直接的に接することになることから、収容物に悪影響を及ぼさないことが好ましい。また、収容された収容物を円滑に排出させるためには、柔軟であることが好ましい。このような観点から、内層容器3に用いるプラスチック材料としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂材料が好ましい。なお、内層容器3の形態としては、収縮可能なようにフィルム状であることが好ましい。
【0022】
一方、外層容器2に関しては、収容物と接することがなく、柔軟性等を要求されることもないので、用いるプラスチック材料を自由に選定することができる。例えば、ある程度剛性のあるプラスチック材料を選定すれば、自立性の容器(ボトル)とすることができる。
【0023】
また、外層容器2には、紫外線吸収剤等、各種機能を付与するために必要な添加剤を混入することができ、それによって収容物を保護することも可能である。さらに、外層容器2にEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体等、酸素バリア性に優れた樹脂材料を使用することも可能である。
【0024】
なお、外層容器2は透明であっても不透明であっても構わないが、外層容器2を透明とすることで、内層容器3の収縮状態を目視にて確認することができ、好ましい態様と言える。
【0025】
本実施形態の積層剥離容器1は、前述の通り、外層容器2と内層容器3とが剥離自在に積層されているが、使用時には、内層容器3が円滑に萎んで、収容物が排出されることが必要である。このような円滑な排出を実現するために、積層剥離容器1には、空気導入部が設けられている。空気導入部を設け、ここから外層容器2と内層容器3の間に空気を導入することで、内層容器3の剥離を促進し、内層容器3が速やかに萎んで収容物が排出される。なお、容器口部に、容器内の収容物の排出を許容し、容器外からの大気流入を遮るような逆止弁を設けても良い。この構成によれば、容器内への大気流入を抑制できるため、容器内の収容物の酸化等を抑制することができる。
【0026】
前記空気導入部は、本実施形態の積層剥離容器1では、外層容器2に空気導入孔4を設けることにより形成されている。外層容器2に空気導入孔4を形成することで、ここから外層容器2と内層容器3の間に空気が導入され、外層容器2と内層容器3の剥離が進行する。なお、空気導入部に、外層容器内への流入を許容し、外層容器内から外部への流出を遮るような逆止弁(開閉弁)を設けてもよい。この構成によれば、外層容器を潰すように押し込んだときに、外層容器と内層容器との間に収容された気体の圧力が高まるため、当該気体の圧力により、内層容器を押し込む(収縮させる)ことができる。これにより、外層容器の押し込み量が少なくても、内層容器内の収容物を容器外に吐出することができる。また、吐出後、押し込まれた外層容器の復元力により、空気導入部を介して、外層容器内に大気が導入されるため、外層容器を、元の形状に復元することができる。
【0027】
空気導入部は、積層剥離容器1の底部のピンチオフ部に形成することも可能である。外層容器2と内層容器3を積層してブロー成形される積層剥離容器1においては、一般的に底部にピンチオフ部が形成されている。このピンチオフ部は、積層剥離容器1をブロー成形する過程で内層容器3を加熱溶融させることにより形成されたものであり、完全に封止された状態であるため、ここから内層容器3内に空気が進入することはない。この時、ピンチオフ部に臨む外層容器2と内層容器3の間にスリットを設けておけば、ここから空気が進入することができる。すなわち、前記スリットが空気導入部としての役割を果たすことになる。
【0028】
以上が積層剥離容器1の基本的な構成であるが、本実施形態の積層剥離容器1においては、内層容器3が外層容器2から分離された状態で廃棄可能とされている。具体的には、本実施形態の積層剥離容器1には、
図1aに示すように、外層容器2に分離容易線5が設けられており、この分離容易線5を切り離すことにより内層容器3が外層容器2から分離可能とされている。
【0029】
前記分離容易線5は、いわゆるミシン目孔のようなものであり、例えば、レーザ等により外層容器2のみに開口するように微細な孔を直線状に配列形成することにより形成される。本実施形態の場合、前記分離容易線5は、積層剥離容器1のネック部の周囲に全周に亘り設けられている。
【0030】
次に、本実施形態の積層剥離容器1の使用方法について説明する。本実施形態の積層剥離容器1においては、
図2aに示すように、内層容器3内の収容物の排出に伴って内層容器3が収縮し、その大部分が外層容器2から剥離された状態となる。積層剥離容器1では、内層容器3を外層容器2内に収容したままの状態で内層容器3を絞り切ることができ、内層容器3内の収容物を最後まで使い切ることが可能である。
【0031】
内層容器3内の収容物を使い切った状態では、内層容器3の大部分が外層容器2から剥離し、わずかにネック部においてのみ内層容器3と外層容器2が積層した状態が保たれている。すなわち、前記分離容易線5より上方部分のみ、内層容器3と外層容器2が積層された状態となっている。
【0032】
そこで、収容物を使い切ったに後に、外層容器2を分離容易線5で切断し、
図2bに示すように、外層容器2のネック部切断片2aを引き上げる。分離容易線5はミシン目孔状のものであり、その切断は、外層容器2のネック部と胴部を持って引っ張ることで簡単に行うことができる。外層容器2の首部切断片2aを引き上げると、この部分に積層されている内層容器3も一緒に引き上げられ、その結果、内層容器3が外層容器2から分離される。
【0033】
図2cは、内層容器3を全て引き出した状態を示すものである。このように、本実施形態の積層剥離容器1では、内層容器3を外層容器2から容易に分離することが可能である。分離後には、内層容器3はそのまま廃棄する。内層容器3内は収容物で汚れた状態であるが、これは洗浄等を行うことなくそのまま廃棄する。内層容器3は薄いフィルムで形成されているため、廃棄しても資源の損失は僅かなもので済む。一方、外層容器2は、内部が汚れていないので、そのまま資源回収に供することで、再利用することができる。
【0034】
なお、前述の実施形態では、分離容易線5を積層剥離容器1のネック部の周囲に形成しているが、これに限らず、外層容器2を分割して内層容器3を取り出せるようにするものであれば、任意の位置に形成することができる。例えば、
図3に示すように、外層容器2の側面の上端から下端に亘り分離容易線5を形成することも可能である。
【0035】
(第2の実施形態)
本実施形態の積層剥離容器は、外層容器に分離用摘み部を設け、これを利用して外層容器を引きちぎるようにしたものである。分離用摘み部を利用して外層容器を引きちぎることで、分離容易線を設けた場合と同様、内層容器を外層容器から分離することが可能となる。なお、本実施形態の積層剥離容器も、その基本的な構成は先の実施形態と同様であるので、先の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0036】
図4a〜
図4cは、分離用摘み部6を設けた積層剥離容器1を示すものである。例えば、
図4aに示す積層剥離容器1では、外層容器2のキャップ7近傍位置に分離用摘み部6が設けられている。
【0037】
図4aに示す積層剥離容器1では、内層容器3内の収容物を使い切った後、前記分離用摘み部6を摘まんで外層容器2を引きちぎる。この時、外層容器2の切断したいラインに沿って線状の薄肉部を設けておけば、これに沿って外層容器2が引きちぎられる。その結果、外層容器2のネック部近傍が胴部から分離され、これとともに内層容器3が引き出されて、内層容器3が外層容器2から分離される。分離後に、内層容器3をそのまま廃棄し、外層容器2を例えば資源として回収することは、先の実施形態の積層剥離容器と同様である。
【0038】
図4bに示す積層剥離容器1は、分離用摘み部6を、両側から引っ張るように2つの部分6a,6bに分離して設けたものである。これら部分6a,6bを引き離すように引っ張れば、外層容器2のネック部が引きちぎられ、分離される。外層容器2の切断したいラインに沿って線状の薄肉部を設けておけばよいことは、
図4aに示す例と同様である。
【0039】
図4cに示す積層剥離容器1は、分離用摘み部6を底部に設けた例である。前述の通り、積層剥離容器1の底部には、ピンチオフ部が形成されている。このピンチオフ部において、外層容器2と内層容器3が融着されているので、この部分を底部に設けた分離用摘み部6を利用して引きちぎれば、内層容器3を引き出すことができる。
【0040】
(第3の実施形態)
本実施形態は、積層剥離容器の空気導入孔に設けられた開閉弁を利用して内層容器の分離を行うものである。
【0041】
積層剥離容器1では、前述の通り、外層容器2と内層容器3の間に空気を導入するため、外層容器2に空気導入孔4が設けられている。この空気導入孔4においては、外層容器2と内層容器3の間に導入された空気の逆流を防ぐために、
図5に示すように、開閉弁7が設けられている。
【0042】
そこで、本実施形態においては、前記分離用摘み部等を利用するのではなく、この開閉弁7を利用して外層容器2の切断を行う。すなわち、例えば開閉弁7を引き上げることにより、空気導入孔4を起点にして、外層容器2を引き裂く。この時、外層容器2に線状の薄肉部を形成しておいてもよい。外層容器2を引き裂いた後、内層容器3をここから取り出し、分離する。
【0043】
(第4の実施形態)
本実施形態は、積層剥離容器分離用治具を用いて内層容器を分離するようにした実施形態である。本実施形態の積層剥離容器分離用治具を用いる場合、積層剥離容器には分離容易線や分離用摘み部等を設ける必要がなく、一般的な積層剥離容器に適用することが可能である。
【0044】
図6aは、積層剥離容器分離用治具10の一例を示すものである。本実施形態の積層剥離容器分離用治具10は、積層剥離容器1の口部に挿入される円柱形状部11と、これを回転操作する操作ハンドル部12とから構成されている。
【0045】
円柱形状部11は、前記の通り積層剥離容器1の口部に挿入される部分であり、挿入を円滑に行うために、先端部の外径が口部の内径よりもやや小さく形成され、基端部(操作ハンドル部12が取り付けられる側の部分)の外径が口部の内径よりもやや大きく形成されている。これにより、円柱形状部11が積層剥離容器1の口部の内層容器3と圧接可能となる。
【0046】
積層剥離容器分離用治具10においては、前記円柱形状部11が摩擦の大きな材質、例えばゴム等のエラストマー系の材料等で形成されていることが好ましい。摩擦力により内層容器3を剥がし取るためである。
【0047】
積層剥離容器分離用治具10の使用に際しては、
図6bに示すように、内層容器3内の収容物を使い切った積層剥離容器1の口部1aに円柱形状部11を圧入し、その状態で操作ハンドル部12を回動操作する。これにより円柱形状部11が内層容器3と圧接した状態で回転されることになり、円柱形状部11と内層容器3の間に働く摩擦力により内層容器3が外層容器2から剥がし取られる形になる。このようにして内層容器3を外層容器2から剥がし取った後、内層容器3を外層容器2から取り出せばよい。
【0048】
本実施形態の積層剥離容器分離用治具10において、操作ハンドル部12の形状は任意に変更可能である。例えば、積層剥離容器分離用治具10のデザイン性を考慮して、
図7aに示すような形状や、
図7bに示すような形状とすることも可能である。
【0049】
(第5の実施形態)
本実施形態は、外層容器を切断する刃部を有する積層剥離容器分離治具を用いて内層容器を分離するようにした実施形態である。
【0050】
図8a〜
図8cは、本実施形態の積層剥離容器分離治具20を示すものである。例えば、
図8aに示す積層剥離容器分離治具20は、積層剥離容器のネック部に係止される湾曲部21と、これに連なる操作棹部22とを有し、湾曲部21の先端近傍に外層容器を切断する刃部23を有している。
【0051】
使用に際しては、前記湾曲部21を積層剥離容器のネック部に係止し、刃部23を外層容器に押し込む。この状態で操作棹部22を回転操作し、湾曲部21(刃部23)が積層剥離容器のネック部の周りを1回転するように操作する。これにより外層容器のネック部が切断され分離されるので、第1の実施形態の積層剥離容器の場合と同様、外層容器のネック部とともに内層容器を取り出し、外層容器から分離する。
【0052】
図8bは、リング状の積層剥離容器分離治具30の例である。この例では、リング状の積層剥離容器分離治具30の内周側に刃部23を複数有している。
図8bに示す積層剥離容器分離治具20は、積層剥離容器のネック部に嵌めた状態で回転させることで、刃部23により外層容器のネック部を切断する。
【0053】
図8cに示す例は、積層剥離容器の口部に装着されるキャップ40に刃部23を設けた例である。
図8cに示す例の場合、使用後にキャップ40を押し込んで刃部23を外層容器に当接させ、この状態でキャップ7を回すことにより外層容器を切断する。
【0054】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 積層剥離容器
2 外層容器
3 内層容器
4 空気導入孔
5 分離容易線
6 分離用摘み部
7 開閉弁
10,20,30 積層剥離容器分離用治具
11 円柱形状部
12 操作ハンドル部
21 湾曲部
22 操作棹部
23 刃部
40 キャップ