条件A:成分(C)のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準物質:ポリエチレングリコール)の測定において、最も高いピークの高さに対する、重量平均分子量20〜150の範囲に存在するピークの高さの割合が3%未満であること。
条件B:成分(C)に対してJIS K 0070のケン化価測定法に準じてアルカリ処理を施したアルカリ処理成分(C’)のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準物質:ポリエチレングリコール)の測定において、最も高いピークの高さに対する、重量平均分子量20〜150の範囲に存在するピークの高さの割合が3%以上80%以下であること。
前記単量体(II)が、一般式(2)中のn2が1〜5である単量体(IIa)及び一般式(2)中のn2が6〜100である単量体(IIb)を含む請求項2に記載のセメント分散剤。
前記単量体(II)中の前記単量体(IIa)及び前記単量体(IIb)の重量比率(IIa)/(IIb)が1/99〜99/1である請求項3に記載のセメント分散剤。
前記ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)の重量平均分子量が、ポリエチレングリコール換算で5,000〜60,000である請求項2〜4のいずれか一項に記載のセメント分散剤。
前記ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)が、前記共重合で得られる生成物をアルカリ性物質で中和して得られる、請求項2〜5のいずれか一項に記載のセメント分散剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のセメント分散剤は、成分(C)を含む。成分(C)は、下記の条件A及び条件Bを満たす。
条件A:成分(C)のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準物質:ポリエチレングリコール)の測定において、最も高いピークの高さに対する、重量平均分子量20〜150の範囲に存在するピークの高さの割合が3%未満であること。
条件B:アルカリ処理成分(C’)のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC,標準物質:ポリエチレングリコール)の測定において、最も高いピークの高さに対する、重量平均分子量20〜150の範囲に存在するピークの高さの割合が3%以上80%以下であること。
なお、本発明において、成分(C)が条件Aおよび条件Bを満たすことの確認は、ポリエチレングリコールを標準物質としたGPCにより行えばよい。標準物質がポリエチレングリコールであること以外のGPCの条件は、特に限定されず、例えば公知公用のGPC条件で行うことができる。
【0014】
アルカリ処理成分(C’)とは、成分(C)に対してJIS K 0070のケン化価測定法に準じてアルカリ処理を施した成分である。JIS K 0070のケン化価測定法は、試料1.5g〜2.0gに対して、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液25mlまたは0.5mol/L水酸化カリウム水溶液25mlを加え、30分間加熱する処理をいう。アルカリ処理成分(C’)の調製は、試料としての成分(C)に対し上記処理を行えばよい。
【0015】
ピークの高さは、試料をGPCに供した際の移動速度(mV)である。該移動速度は、GPCのグラフにおいてはピークの高さとして得られる。最も高いピークとは、ある試料のピークの高さ(移動速度)のうちの最大値を意味する。最も高いピークの位置と試料の分子量とは必ずしも関係ないが、一般に、最も高いピークは、重量平均分子量150を超える範囲に存在する。
条件A及びBにおいて、最も高いピークの高さに対する分子量20〜150の範囲に存在するピークの高さの割合(高さ比(%))は、最も高いピークの高さをS1、分子量20〜150の範囲に存在するピークの高さをS2とした際に、式(S2/S1)×100(%)にて算出される。
重量平均分子量20〜150の範囲に単独のピークが存在する場合、及び複数のピークが存在する場合の両方があり得る。後者の場合、それぞれのピークの高さ比を算出し、いずれかの高さ比が3%以上80%以下を満たしていればよい。
条件Aにおける高さ比は、3%未満であり、好ましくは2%未満であり、より好ましくは、1%未満である。下限の規定は特になく、0%であってもよい。条件Bにおける高さ比は、3%以上であり、好ましくは20%以上である。上限は、80%以下である。
【0016】
図1および
図1を用いて、具体的に条件Aおよび条件Bについて説明する。
図1は、成分(C)の一実施形態のゲルパーミエイションクロマトグラフィーの概略図である。
図2は、アルカリ処理成分(C’)の一実施形態のゲルパーミエイションクロマトグラフィーの概略図である。
【0017】
条件Aにおいて、最も高いピークは
図1においてPa1で示される、ピーク高さS1aのピークであり、分子量20〜150の範囲に存在するピークは検出できていない。したがって、最も高いピークPa1の高さS1aに対する、重量平均分子量20〜150の範囲に存在するピークの高さの割合は、(0/S1a)×100=0(%)である。
【0018】
条件Bにおいて、最も高いピークは、
図2においてPb1で示される、ピーク高さS1bのピークであり、分子量20〜150の範囲に存在するピークは、
図2においてPb4で示されるピーク高さS2b1のピーク、および
図2においてPb5で示されるピーク高さS2b2のピークである。したがって、もっとも高いピークPb1の高さS1bに対する、重量平均分子量20〜150の範囲に存在するピークの高さの割合は、(S2b1/S1b)×100(%)、および(S2b2/S1b)×100(%)である。本発明では、(S2b1/S1b)×100(%)、および(S2b2/S1b)×100(%)のいずれかが、3%以上80%以下を満たす。
【0019】
GPCにおけるピークの面積は、ピークの高さと相関し、複数のピークの面積比は、複数のピークの高さの比に近似される。
【0020】
本発明のセメント分散剤が優れた効果(特に、スランプ保持性の付与)を発揮する理由は明らかではないが次のように推測される。本発明のセメント分散剤において、アルカリ処理により加水分解され得る重量平均分子量20〜150の物質が、セメント分散剤の多数の極性基(セメントに吸着する官能基)と結合しており、これらの極性基は、セメントと混和した直後には機能しない。セメント分散剤をセメントと混和すると、極性基から上記物質が、加水分解物としてはずれ、徐々にセメント分散剤の極性基が剥き出しになる。このため、本発明のセメント分散剤が、セメント組成物に優れたスランプ保持性を付与すると考えられる。
【0021】
本発明において、アルカリ処理により加水分解され得る重量平均分子量20〜150の物質としては例えば、多価アルコール等が挙げられる。多価アルコールとしては、グリセリンおよびグリセリンのアルキレンオキサイドの付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が例示される。
【0022】
成分(C)としては例えば、ポリカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、リグニン誘導体、アルキルアリルスルホン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤、オキシカルボン酸系分散剤が例示され、ポリカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、リグニン誘導体、オキシカルボン酸系分散剤が好ましく、ポリカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、リグニン誘導体がより好ましい。本発明のセメント分散剤は、成分(C)を1つ含んでいてもよいし、複数含んでいてもよい。
【0023】
<ポリカルボン酸系分散剤>
ポリカルボン酸系分散剤は、一般式(1)で表される単量体(I)、一般式(2)で表される単量体(II)、不飽和モノカルボン酸系単量体(III)、単量体(I)〜(III)と共重合可能なその他の単量体(IV)を少なくとも2種類以上共重合させることにより得られるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)であることが好ましい。
【0024】
以下、まず単量体(I)について説明する。
【0025】
単量体(I)は、下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテルである。
R
1−O−(A
1O)
n1−R
2 ・・・(1)
(式中、R
1は、炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。A
1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表す。R
2は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0026】
一般式(1)中のR
1は、炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。該アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは3〜5である。R
1として具体的には、アリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテン−1−オールの残基等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0027】
一般式(1)中のA
1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)が好ましい。
【0028】
上記「同一若しくは異なって」とは、一般式(1)中にA
1Oが複数含まれる場合(n1が2以上の場合)、それぞれのA
1Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。一般式(1)中にA
1Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)およびオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様、またはオキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0029】
一般式(1)中のn1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表す。n1は、1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、8以上であることがさらにより好ましい。n1は、70以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。よって、n1は、1〜70であることが好ましく、5〜70であることがより好ましく、8〜70であることがさらにより好ましく、1〜50、5〜50、または8〜50であることがとりわけ好ましい。本明細書において、平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているアルキレングリコール単位のモル数の平均値を意味する。
【0030】
一般式(1)中のR
2は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数が大きくなると、セメント混和剤のセメント分散性が十分発揮されないおそれがあるため、R
2は水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
【0031】
単量体(I)の製造方法としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1〜80モル付加する方法が挙げられる。
【0032】
単量体(I)としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテルが挙げられる。単量体(I)としては、これらのうち1種若しくは2種以上を用いることができるが、親水性および疎水性のバランスから、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテルを用いることが好ましい。前記単量体(I)の具体例および好ましい例において、オキシアルキレン基(ポリアルキレングリコール)の平均付加モル数は1〜70であることが好ましく、5〜70であることがより好ましく、8〜70であることがさらに好ましく、1〜50、5〜50、または8〜50であることがとりわけ好ましい。なお、本明細書において「(ポリ)」は、その直後に記載される構成単位または原料が1個または2個以上結合していることを意味する。
単量体(I)は1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
単量体(II)は、下記一般式(2)で表される。
【0034】
【化2】
(式中、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。mは、0〜2の数を表す。A
2Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0035】
一般式(2)中のR
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。mは0〜2の数を表し、0、1、または2であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0036】
一般式(2)中のA
2Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)が好ましい。
【0037】
上記「同一若しくは異なって」とは、一般式(2)中にA
2Oが複数含まれる場合(n2が2以上の場合)、それぞれのA
2Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。一般式(2)中にA
2Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)およびオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様、またはオキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0038】
一般式(2)中のn2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表す。n2は、1〜50であることが好ましく、5〜50であることがより好ましく、8〜50であることがさらに好ましい。
単量体(II)は、一般式(2)で表される単量体1種類であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。単量体(II)は、オキシアルキレン基の平均付加モル数が異なる2種の単量体(IIa)及び(IIb)の組み合わせを含むことが好ましく、当該組み合わせであることが好ましい。単量体(II)は、n2が1〜5である単量体(IIa)およびn2が6〜100である単量体(IIb)を含むことが好ましい。単量体(IIb)に対する単量体(IIa)の重量比率(IIa)/(IIb)は、1/99〜99/1であることが好ましい。
【0039】
一般式(2)中のXは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数が大きくなると、セメント混和剤のセメント分散性が十分発揮されないおそれがあるため、Xは水素または炭素原子数1〜10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
【0040】
単量体(II)としては、例えば、(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよび/またはメタアクリレート」を意味する)等の不飽和モノカルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物が挙げられる。具体的には、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレートなどの、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。単量体(II)としては、これらのうち1種若しくは2種以上を組み合わせて用いることができるが、メトキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートまたは(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0041】
不飽和モノカルボン酸系単量体(III)としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のカルボン酸類、およびこれらの塩(例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩)を挙げることができる。不飽和モノカルボン酸系単量体(III)として、これらのうちの1種または2種以上を用いることができ、中でも、アクリル酸またはその塩、メタクリル酸またはその塩が好ましい。
【0042】
単量体(IV)は、単量体(I)、(II)および(III)からなる群から選ばれる1または2以上の単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されない。なお、単量体(IV)は、単量体(I)および単量体(II)および単量体(III)を含まない。
【0043】
単量体(IV)としては、下記のもの等を例示することができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることが可能である;
【0044】
一般式(IV−1):
【化3】
で示されるジアリルビスフェノール類、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの3および3’位アリル置換物;
【0045】
一般式(IV−2):
【化4】
で示されるモノアリルビスフェノール類、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの3位アリル置換物;
【0046】
一般式(IV−3):
【化5】
で示されるアリルフェノール;
【0047】
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;
上記アルコールまたはアミンに、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、上記不飽和ジカルボン酸類との、ハーフエステル、ジエステル類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;
マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;
【0048】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩;
メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;
1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;
ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;
【0049】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;
(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;
ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;
(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;
メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテルあるいはアリルエーテル類;および、
ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
【0050】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)を得るにあたり、必要に応じて、単量体(I)、単量体(II)、単量体(III)および単量体(IV)以外の単量体を用いてもよい。
【0051】
本発明において、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)は、それぞれの所定の単量体を、公知の方法によって共重合させて製造することができる。該方法としては、例えば、溶媒中での重合、塊状重合などの重合方法が挙げられる。
【0052】
溶媒中での重合において使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。原料単量体および得られる共重合体の溶解性の面から、水および低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、その中でも水を用いることがより好ましい。
【0053】
溶媒中で共重合を行う場合は、各単量体と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよいし、各単量体の混合物と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体と溶媒の混合物と、重合開始剤溶液を各々反応容器に連続滴下してもよいし、単量体の一部または全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
【0054】
共重合に使用し得る重合開始剤は、水溶媒中で共重合を行う際には例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物が挙げられる。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩などの促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類あるいはケトン類等の溶媒中で共重合を行う際には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどのパーオキサイド;クメンパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリルなどの芳香族アゾ化合物などが重合開始剤として使用できる。この際、アミン化合物などの促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶剤中で共重合を行う場合には、前述の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して使用することができる。重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類等重合条件によって適宜異なるが、通常50〜120℃の範囲で行われる。
【0055】
また、共重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整することができる。使用される連鎖移動剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、および、2−メルカプトエタンスルホン酸などの既知のチオール系化合物:亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)の分子量調整のためには、それぞれを得るための単量体として、さらに連鎖移動性の高い単量体(V)を用いることも有効である。連鎖移動性の高い単量体(V)としては、例えば(メタ)アリルスルホン酸(塩)系単量体が挙げられる。単量体(V)の配合率は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)において、通常は20重量%以下であり、10重量%以下であることが好ましい。なお、上記配合率は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)については単量体(I)の配合率+単量体(II)の配合率+単量体(III)の配合率+単量体(IV)の配合率=100重量%としたときの配合率である。
【0056】
共重合体を得る際に水溶媒中で共重合する場合、重合時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となるが、これを適当なpHに調整してもよい。重合の際にpHの調整が必要な場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いてpHの調整を行うことができる。これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等から、リン酸を用いることが好ましい。しかし、エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するためには、pH2〜7で重合を行うことが好ましい。また、pHの調整に用い得るアルカリ性物質に特に限定はないが、NaOH、Ca(OH)
2などのアルカリ性物質が一般的である。pH調整は、重合前の単量体に対して行ってもよいし、重合後の共重合体溶液に対して行ってもよい。また、これらは重合前に一部のアルカリ性物質を添加して重合を行った後、さらに共重合体に対してpH調整を行ってもよい。
【0057】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)は、共重合で得られる生成物を、アルカリ性物質で中和して得られるものであることが好ましい。中和するとは、共重合で得られる生成物を含む溶液を、pH2.0〜pH7.20に調整することをいう。
【0058】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)の重量平均分子量は、10,000〜60,000であることが好ましく、10,000〜50,000であることがより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、セメント混和剤のセメント分散性が十分発揮されず、リグニンスルホン酸系またはオキシカルボン酸系などのAE減水剤を上回る減水率が得られない、流動性または作業性が改善されない等、セメント混和剤としての目的の効果が十分に発現されないおそれがある。また、重量平均分子量が上記上限を超えると、凝集作用を示すため作業性の低下を招くおそれがある。
【0059】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)の分子量分布(Mw/Mn)は1.2〜3.0の範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明のセメント分散剤は、以下に説明するポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D)を含んでいてもよい。
【0061】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D)は、一般式(1)で表される単量体(I)、不飽和モノカルボン酸系単量体(III)ならびに(I)および(III)と共重合可能なその他の単量体(VI)を共重合させることにより得られるポリカルボン酸系共重合体またはその塩である。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D)は単量体(II)を共重合させない点でポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)と異なる。単量体(I)、単量体(III)のそれぞれの具体例及び好ましい例は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)の単量体(I)の具体例及び好ましい例と同じである。単量体(VI)は単量体(I)および(III)と共重合可能であればよく、単量体(II)と共重合可能でも良いし、単量体(I)〜(III)以外の単量体と共重合可能でもよい。単量体(VI)の具体例及び好ましい例は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)の単量体(IV)の具体例及び好ましい例と同様である。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D)の製造方法についても、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(AA)の欄で説明したとおりである。
【0062】
本発明のセメント分散剤は、単量体(I)〜(IV)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよく、式(1)で表される単量体(I)を含むことが好ましい。セメント分散剤に含まれてよい単量体(I)は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)を製造する際に、未反応物として残留するものであってもよいし、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の製造後に、新たに添加されたものであってもよい。
【0063】
本発明のセメント分散剤において、共重合体またはその塩(AA)の含有形態に制限はなく、共重合体またはその塩(AA)をそのまま含んでいてもよいし、共重合体またはその塩(AA)を溶媒に溶解させた溶液、分散させた分散液、懸濁させた懸濁液として配合されていてもよい。
【0064】
<リグニンスルホン酸系分散剤>
リグニンスルホン酸系分散剤は、通常、リグニンスルホン酸およびその誘導体、またはこれを含む組成物である。リグニンスルホン酸系分散剤としては、例えば、クラフトパルプ製造における廃液(クラフトパルプ廃液)、クラフトパルプ廃液から精製したクラフトリグニン、亜硫酸パルプ製造における廃液(亜硫酸パルプ廃液)、亜硫酸パルプ廃液から得られるリグニンスルホン酸およびその塩、木材加水分解リグニン、およびこれらの変性物が挙げられる。中でも、クラフトパルプ廃液、クラフトパルプ廃液から精製したクラフトリグニンを亜硫酸塩とホルムアルデヒドによりスルホメチル化したもの、亜硫酸パルプ廃液、リグニンスルホン酸およびその塩の部分脱スルホン化物、これらの限外濾過処理等による精製物などの変性物が好ましい。これらのリグニンスルホン酸系分散剤は、セメントだけでなく、無機及び有機顔料、石膏、石炭−水スラリーの分散剤として、農薬、窯業など広範囲な工業分野で多用されている。
【0065】
また、上記のほかにリグニンスルホン酸系分散剤として、スルホン基量およびカルボキシル基量、ならびに分子量を制御したリグニン変性物も例示される。
【0066】
<リグニン誘導体>
リグニン誘導体とは、通常、リグニンスルホン酸系化合物から誘導される化合物をいう。リグニン誘導体としては、例えば、リグニンスルホン酸系化合物に含まれるフェノール性ヒドロキシル基、アルコール性ヒドロキシル基、チオール基などの官能基に、少なくとも1種の水溶性単量体を反応させて得られるリグニン誘導体、および、リグニンスルホン酸系化合物に(通常は該化合物の官能基に)、少なくとも1種の水溶性単量体を、ラジカル開始剤を用いてラジカル共重合することによって得られるリグニン誘導体が挙げられる。
【0067】
リグニン誘導体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは20,000〜300,000、さらに好ましくは5,000〜150,000である。リグニン誘導体の重量平均分子量は、前記GPC測定条件にて測定してよい。
【0068】
リグニン誘導体の原料となるリグニンスルホン酸系化合物は、特に限定されないが、木材を亜硫酸法によって蒸解して得られるものが例示される。木材としては、例えば、エゾマス、アカマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹、シラカバ、ブナなどの広葉樹林が挙げられる。木材に代えてまたは木材とともに、樹木以外の植物を使用してもよい。斯かる植物としては、竹、ケナフなどの植物が例示される。これらの木材および植物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0069】
前記リグニンスルホン酸系化合物に含まれるフェノール性ヒドロキシル基および/またはアルコール性ヒドロキシル基と反応し得る水溶性単量体としては、例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド類などが挙げられる。チオール基と反応し得る水溶性単量体としては、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド類、エチレンイミンやプロピレンイミンなどのアルキレンイミン類などが挙げられる。水溶性単量体は、単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
【0070】
ラジカル重合性の水溶性単量体としては、例えば、下記に列挙したものを使用することができる。なお、これらのラジカル重合性の水溶性単量体は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0071】
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸類、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類、およびこれらの無水物、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;炭素原子数1〜30のアルコールや炭素原子数1〜30のアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリル酸、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネートなどの、不飽和モノカルボン酸類と、炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレートなどの、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類。
【0072】
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシー3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムなどの不飽和スルホン酸類、ならびに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アンモニウム塩。
【0073】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどの不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジンなどの不飽和アミン類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテルなどのアリル類;N−ビニルコハクイミド、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどのビニルエーテル類。
【0074】
アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどの不飽和アルコールにアルキレンオキシドを2〜300モル付加して得られる不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加化合物類。
【0075】
<オキシカルボン酸系分散剤>
オキシカルボン酸系分散剤は、通常、オキシカルボン酸系化合物またはこれを含む組成物である。オキシカルボン酸系化合物としては、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸、これらの無機塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩など)、および有機塩(トリエタノールアミンなど)が挙げられる。
【0076】
本発明のセメント分散剤は、水溶液の形態、あるいは乾燥させて粉体化した形態で使用することが可能である。尚、セメント組成物を構成する他の成分、セメント組成物以外の水硬性材料に添加する時期は、セメント組成物の使用時であってもよい。また、セメント粉末、ドライモルタルのような、セメント組成物を構成する水以外の成分に、粉体化した形態の本発明のセメント分散剤を予め混合しておいて、左官、床仕上げ、グラウト等の際に水を添加して用いるプレミックス製品として用いることもできる。
【0077】
本発明のセメント分散剤は、セメント等の水硬性材料に添加してセメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等のセメント組成物として利用することができる。
【0078】
本発明のセメント組成物は、セメント分散剤を含有すればよく、組み合わせる水硬性材料は特に限定されない。水硬性材料としては、例えば、セメント、石膏(半水石膏、二水石膏など)、ドロマイトが例示される。最も一般的な水硬性材料はセメントである。
【0079】
セメントとしては、特に限定はない。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩およびそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられる。セメントには、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体、石膏などが添加されていてもよい。
【0080】
また、セメント組成物は骨材を含んでいてもよい。骨材は、細骨材および粗骨材のいずれであってもよい。骨材としては、例えば、砂、砂利、砕石;水砕スラグ;再生骨材等;珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が挙げられる。
【0081】
上記セメント組成物における上記セメント分散剤の配合割合については、特に限定はない。例えば、セメント組成物が、モルタルまたはコンクリートである場合には、セメント分散剤に含まれる成分(C)の添加量(配合量)は、セメントの全重量に対して、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.02〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜1.0重量%である。この添加量とすることにより、得られるセメント組成物には、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01重量%未満では、得られるセメント組成物が性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に5.0重量%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。
【0082】
上記のセメント組成物は、例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等のコンクリートとして有効である。さらに、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルまたはコンクリート、としても有効である。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例中特に断りの無い限り%は重量%を、また、部は重量部を示す。
【0084】
また、重量平均分子量は、以下の条件で測定したものである。
(GPC条件)
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH−pak SB−806HQ、
SB−804HQ、SB−802.5HQ
溶離液;0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
検量線;ポリエチレングリコール基準
【0085】
<製造例1>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に水148部、および、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数30)124部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸10部、アクリル酸5部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数18)63部、水165部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部および水47部の混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。該共重合体に対する、ポリエチレングリコールアリルエーテルの含有量は25重量%であり、両末端基が水素原子である水溶性ポリエチレングリコールの含有量は0.7重量%であった。この液を30%NaOH水溶液でpH7に調整した。液中の共重合体は、共重合体(A−1)(重量平均分子量30,000、Mw/Mn1.9)であった。
【0086】
<製造例2>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に水148部、および、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数30)45部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸2部、アクリル酸0.2部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数19)17部、エチレングリコールアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数1)39部、および、水165部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部および水47部の混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。該共重合体に対する、ポリエチレングリコールアリルエーテルの含有量は10重量%であり、両末端基が水素原子である水溶性ポリエチレングリコールの含有量は0.3重量%であった。この液を30%NaOH水溶液でpH4に調整した。液中の共重合体は、共重合体(B−1)(重量平均分子量13,300、Mw/Mn1.7)であった。
【0087】
<製造例3>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に水148部、および、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数12)50部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸10部、アクリル酸3部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数24)20部、エチレングリコールアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数1)40部、エチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数1)10部および、水150部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸ナトリウム5部および水45部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。該共重合体に対する、ポリエチレングリコールアリルエーテルの含有量は3重量%であり、両末端基が水素原子である水溶性ポリエチレングリコールの含有量は0.3重量%であった。この液を30%NaOH水溶液でpH4に調整した。液中の共重合体は、共重合体(B−2)(重量平均分子量18,300、Mw/Mn1.9)であった。
【0088】
<製造例4>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に水120部、および、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数10)140部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸6部、アクリル酸3部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数18)73部、エチレングリコールアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数1)40部、水165部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部および水47部の混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。該共重合体に対する、両末端基が水素原子である水溶性ポリエチレングリコールの含有量は0.7重量%であった。この液を30%NaOH水溶液でpH7に調整した。液中の共重合体は共重合体(B−3)(重量平均分子量22,000、Mw/Mn1.8)であった。
【0089】
<製造例5>
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に、水80部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10個)50部、アクリル酸6部および、サンエキス252(亜硫酸パルプ変性物、日本製紙製)170部を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。その後、過硫酸アンモニウム3部および水47部の混合液を2時間で連続滴下した。また、開始剤を滴下直後に、L−アスコルビン酸4部および連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸1部を混合した連鎖移動剤水溶液30部を滴下開始した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体(C−1)の水溶液を得た。液中の共重合体は共重合体(C−1)(重量平均分子量30,000、Mw/Mn2.1)であった。
【0090】
<製造例6>
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に、水50部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10)30部、エチレングリコールアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数1)40部、アクリル酸4部および、サンエキス252(亜硫酸パルプ変性物、日本製紙製)170部を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。その後、過硫酸アンモニウム3部および水47部の混合液を2時間で連続滴下した。また、開始剤を滴下直後に、L−アスコルビン酸1部および連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸1部を混合した連鎖移動剤水溶液30部を滴下開始した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体(D−1)の水溶液を得た。液中の共重合体は共重合体(D−1)(重量平均分子量28,600、Mw/Mn1.9)であった。
【0091】
<製造例7>
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に、水40部、メトキシポリオキシエチレンモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数18)2.5部、エチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数1)40部、メタクリル酸2部、および、サンエキス252(亜硫酸パルプ廃液変性物、日本製紙製)140部を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。液温が60℃に達した後、硫酸鉄(II)・7水和物0.1部を添加し、直ちに、過硫酸アンモニウム3部および水47部の混合液を2時間で反応容器に連続滴下した。さらに、温度を75℃に昇温させたのち、硫酸鉄(II)・7水和物30部を添加して、75℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体(D−2)を得た。液中の共重合体は共重合体(D−2)(重量平均分子量25,000、Mw/Mn1.7)であった。
【0092】
<アルカリ条件下における加水分解およびGPC分析>
JIS K 0070のケン化価測定法に準じてアルカリ処理を行った。具体例を以下に記す。製造例1〜7で得た試料を三角フラスコに固形分換算で1.5g正確に測りとった。同じ三角フラスコに0.5mol/Lの水酸化カリウム水溶液25mlを、ホールピペットを用いて正確に測りとった。次いで、三角フラスコに冷却管を取り付け、80℃で30分間加温した。製造例1〜7で得た試料(成分(C))をアルカリ処理前にGPCに供した結果を表1に、それぞれの試料のアルカリ処理物(アルカリ処理成分(C’))をGPCに供した結果を表2に、それぞれ記載した。GPCは、冒頭で記載した条件にて実施した。
分子量20〜150の範囲に2つのピークが検出された場合には、それぞれのピークの結果を、表2中の「ピーク1」及び「ピーク2」に記載した。分子量20〜150の範囲に1つのピークが検出された場合には、その結果を、表2中の「ピーク1」に記載した。
製造例1及び2で得た試料については、成分(C)及び(C’)のそれぞれにおけるメインピークの面積に対する分子量40〜100の範囲に存在するピークの面積の比率を計算し表2に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
表1および表2から、共重合体B−1〜B−3、およびD−1〜D−2は、上記条件AおよびBを満たし、共重合体A−1およびC−1は、上記条件Bを満たしていないことがわかる。
【0096】
<実施例および比較例>
表3のように配合した粗骨材、細骨材、セメント、水および表1および表2に示すセメント混和剤を投入して強制二軸ミキサによる機械練りにより90秒間練混ぜた。その後、コンクリートの排出直後にフレッシュコンクリート試験(スランプ試験JISA1101(フレッシュコンクリートの広がりをフロー値として測定)、空気量JISA1128、コンクリート粘性評価)を行った。コンクリートの粘性については評価者5名による官能評価で、以下の基準により評価した。
〔粘性の評価基準〕
◎:スコップでコンクリートを切り返した際のハンドリングが非常に良好で、スコップからのコンクリートの離れが非常に良好。
○:スコップでコンクリートを切り返した際のハンドリングが良好で、スコップからのコンクリートの離れが良好。
×:スコップでコンクリートを切り返した際のハンドリングが悪く、スコップからのコンクリートの離れが悪い。
結果を表3および表4に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
C:以下のセメント3種を等重量混合
普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(株式会社トクヤマ製、比重3.16)
水道水
S1:大分県津久見産石灰砕砂(細骨材、比重2.66)
S2:山口県周南産砕石砕砂(細骨材、比重2.66)
G1、G2:山口県岩国産砕石(粗骨材、比重2.73、2.66)
セメント分散剤(固形分換算) 表4および表5参照
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
表4および表5中、セメント分散剤の「添加率」は、セメントに対する分散剤の固形分添加率を示す。
【0102】
表4および表5から明らかなように、実施例のコンクリートは比較例と同等の、高いスランプ、スランプフローを示した。しかも実施例のスランプ、スランプフローの経時的変化は、比較例と比較して小さく、比較例と比較してスランプロスが少なく、スランプ保持性に優れていることが分かる。一方、比較例では高い流動性を維持しているにも関わらず、コンクリート粘性の評価は、ハンドリングが悪く、粘性が高い結果であった。それに対していずれの実施例においても、比較例と同様に流動性を維持しており、時間経過と共にコンクリート粘性が良好となる結果であった。この結果は、本発明のセメント分散剤が、スランプロス抑制性能に優れ、しかもセメント組成物とした場合に、該セメント組成物の粘性を低減させることができることを示すものである。