特開2015-212259(P2015-212259A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-212259ロスバスタチンまたはその塩の安定化製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212259(P2015-212259A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】ロスバスタチンまたはその塩の安定化製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/505 20060101AFI20151030BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20151030BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20151030BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20151030BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20151030BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20151030BHJP
   A61K 47/42 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   A61K31/505
   A61P3/06
   A61K9/20
   A61K47/02
   A61K47/36
   A61K47/10
   A61K47/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-83165(P2015-83165)
(22)【出願日】2015年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-84313(P2014-84313)
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592086318
【氏名又は名称】壽製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】冨山 泰
(72)【発明者】
【氏名】池田 誠一郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC11
4C076DD29Q
4C076DD37T
4C076DD38A
4C076EE16B
4C076EE30Q
4C076EE31A
4C076EE41T
4C076EE45B
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF63
4C086AA10
4C086BC42
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZC33
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ロスバスタチンまたはその塩の安定性を向上し、かつ服用しやすい医薬製剤およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明によって、ロスバスタチンまたはその塩と、酸化鉄及びカラギーナンの少なくともいずれかと、を含有する医薬製剤が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロスバスタチンまたはその塩と、酸化鉄及びカラギーナンの少なくともいずれかとを含有する医薬製剤。
【請求項2】
ロスバスタチンまたはその塩がロスバスタチンカルシウムである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
酸化鉄が、黄色三二酸化鉄および/または三二酸化鉄である、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
酸化鉄およびカラギーナンの両方を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項5】
メントールをさらに含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項6】
メントールおよびアスパルテームをさらに含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記医薬製剤が、錠剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記錠剤が、口腔内崩壊錠である、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
(1)ロスバスタチンまたはその塩と、酸化鉄およびカラギーナンの少なくともいずれかとを混合する工程、
(2)混合物を打錠する工程、
を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロスバスタチンまたはその塩を含有する医薬組成物に関する。特に本発明は、ロスバスタチンの安定性を向上した医薬組成物、医薬製剤、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高脂血症治療剤や高コレステロール血症治療剤として、HMG-CoA還元酵素阻害活性を有するスタチン類を有効成分とする医薬品が多く上市されている。こうしたスタチン類としては、例えば、ロスバスタチンカルシウム、ピタバスタチンカルシウム、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウムなどが挙げられ、これら化合物はいずれもジヒドロキシカルボン酸骨格を共通骨格としている。これらスタチン類の共通骨格は分子内で環化し、活性を示さないラクトン体を生成することが知られている(特許文献1:特開2003−073270号公報)。
【0003】
そのため、製剤中でのスタチン類の安定性を向上させる検討が多くなされている。特許文献1を初めとする多くの文献では、酸性環境下でのラクトン化を抑制するために、塩基性物質を配合して製剤中のpH環境を塩基性にすることが提案されている。
【0004】
また、これらスタチン類は強い苦みを有しており、内服時の不快感などから服薬コンプライアンスの低下が考えられ、特に小児や嚥下能力が低下している高齢者においては内服に困難をきたすという問題がある。その苦みを軽減する速崩壊錠を製造するためにコーティングなどが検討されているが、製造方法が煩雑になるため、工程管理が難しくかつ製造コストが高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−073270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、スタチン類の一種であるロスバスタチンまたはその塩に関しては、その安定性を向上し、かつ服用しやすい医薬製剤の開発が望まれている。本発明は、ロスバスタチンまたはその塩の安定性を向上し、かつ服用しやすい医薬製剤とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題について鋭意検討したところ、酸化鉄又はカラギーナン、あるいは酸化鉄及びカラギーナンの両者を医薬製剤中に含有させることにより、ロスバスタチンまたはその塩の安定性が著しく向上することを見出した。また、ロスバスタチン含有製剤にメントールを配合することによって、ロスバスタチンに起因する苦味を極めて効果的に抑制できることも見出した。
【0008】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
(1) ロスバスタチンまたはその塩と、酸化鉄及びカラギーナンの少なくともいずれかとを含有する医薬製剤。
(2) ロスバスタチンまたはその塩がロスバスタチンカルシウムである、(1)に記載の医薬製剤。
(3) 酸化鉄が、黄色三二酸化鉄および/または三二酸化鉄である、(1)または(2)に記載の医薬製剤。
(4) 酸化鉄およびカラギーナンの両方を含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬製剤。
(5) メントールをさらに含有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬製剤。
(6) メントールおよびアスパルテームをさらに含有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬製剤。
(7) 前記医薬製剤が錠剤である、(1)〜(6)のいずれかに記載の医薬製剤。
(8) 前記錠剤が、口腔内崩壊錠である、(7)に記載の医薬製剤。
(9) (1)ロスバスタチンまたはその塩と酸化鉄およびカラギーナンの少なくともいずれかとを混合する工程、(2)混合物を打錠する工程、を含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の医薬製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安定性が向上したロスバスタチンまたはその塩を含有する医薬製剤が提供される。また、ロスバスタチン含有製剤にメントールを配合することによって、ロスバスタチンに起因する苦味を極めて効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実験1の光安定性の評価結果を示すグラフである(縦軸:不純物の増加量)。
図2図2は、実験2の官能評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の医薬製剤は、ロスバスタチンまたはその塩と、酸化鉄及びカラギーナンの少なくともいずれかとを含有する。
【0012】
ロスバスタチンは、HMG-CoA還元酵素阻害薬の中でもその作用が強く、一般にストロングスタチンと呼ばれている。本発明においては、ロスバスタチンの塩を使用することもできる。塩の種類は、医薬的に許容される塩であれば特に制限なく使用することができる。
【0013】
本発明の医薬製剤におけるロスバスタチンまたはその塩の含有量としては、前記医薬組成物の使用時に、前記ジヒドロピリジン系化合物の有効量を患者に投与できるような含有量であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、医薬組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましい。
【0014】
本発明に係る医薬製剤は、酸化鉄および/またはカラギーナンを含有する。酸化鉄としては、特に制限はなく、医薬的に許容可能なものを目的に応じて適宜選択することができるが、具体的には、三二酸化鉄(Fe)、黄色三二酸化鉄(Fe・HO)、及びそれらの混合物が好ましい。酸化鉄は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明の医薬製剤における酸化鉄の量は、特に限定されないが、ロスバスタチンまたはその塩と酸化鉄との重量比が10:1〜1:10となるように配合することが好ましく、5:1〜1:5がより好ましく、3:1〜1:3がさらに好ましい。
【0016】
また、カラギーナンについても、目的に応じて各種カラギーナンを使用することができる。カラギーナンとは、多糖類の一種であり、一般に医薬品分野や食品分野で使用されている。また、カラギーナンには、ι−カラギーナン、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン及びカラギーナンの生物学的前駆体であるμ−カラギーナン及びν−カラギーナンなどの種類があることが知られている。発明の医薬製剤におけるカラギーナンの量は、ロスバスタチンまたはその塩とカラギーナンとの重量比が、10:1〜1:10となるように配合することが好ましく、5:1〜1:5がより好ましく、3:1〜1:3がさらに好ましい。
【0017】
本発明の医薬製剤においては、酸化鉄又はカラギーナンのいずれかのみが含有されていてもよく、酸化鉄及びカラギーナンの両者がともに含有されていてもよい。ここで、医薬製剤の安定性が大きく改善するため、酸化鉄及びカラギーナンの両者を含有する態様が特に好ましい。
【0018】
本発明の医薬製剤においては、メントールを配合することが好ましい。メントールをロスバスタチン含有製剤に配合することによって、ロスバスタチンに起因する苦味を大きく抑制することができる。メントールには合成品と天然品があるが、本発明においてはいずれも使用することができる。メントールとしては、はっか油などから得られるl−メントールを使用することができ、例えば、l−メントールは、はっか油を冷却し、結晶として分離精製して得ることができる。本発明の医薬製剤におけるメントールの配合量は、目的に応じて適宜選択することができるが、ロスバスタチンまたはその塩とメントールの重量比を100:1〜100:50とすることが好ましく、100:2〜100:40とすることがより好ましく、100:5〜100:30がさらに好ましい。
【0019】
本発明の医薬製剤においては、甘味剤を配合することが好ましい。甘味剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリチンニカリウム、ステビア、白糖、マンニトール、アセスルファムカリウム、スクラロース、などが挙げられ、複数種類の甘味剤を併用することもできる。これらの中でも、ロスバスタチンに起因する苦味を効果的にマスキングできるため、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロースなどが好ましい。また、熱的に安定であることなどから、スクラロースやアスパルテームが特に好ましい。
【0020】
前記甘味剤の前記医薬組成物における含有量としては、目的に応じて適宜選択することができるが、ロスバスタチンまたはその塩と甘味料の重量比を100:1〜100:50とすることが好ましく、100:2〜100:40とすることがより好ましく、100:5〜100:30がさらに好ましい。
【0021】
本発明の医薬製剤には、本発明の効果を損なわない範囲内で、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、コーティング剤、可塑剤、懸濁剤、乳化剤、着香剤、抗酸化剤、糖衣剤、防湿剤、流動化剤、又は着色剤などの添加物を配合してもよい。これらの添加物は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの添加物の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
賦形剤としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、D−マンニトール、白糖(精製白糖含む)、炭酸水素ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
【0023】
結合剤としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、ポビドン、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、アラビアゴム末などが挙げられる。
【0024】
滑沢剤としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、硬化油、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリド、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
【0025】
崩壊剤としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドンなどが挙げられる。
【0026】
本発明の医薬製剤の剤形としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、経口用固形製剤としての剤形が挙げられ、具体的には、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤などが挙げられる。これらの中でも、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤が好ましく、細粒剤、顆粒剤、錠剤がより好ましい。特に、前記錠剤は、速崩性錠剤であることが好ましい。ここで、本発明における速崩性錠剤とは、崩壊が極めて速い錠剤を意味し、通常は口腔内において唾液などの極めて少ない水分でも1分以内に崩壊し得る錠剤である。速崩性錠剤は錠剤を服用しにくい小児や老人に適した製剤である。なお、前記の細粒剤、顆粒剤や錠剤などには、必要に応じて、腸溶性被膜や糖衣などのコーティングを施してもよい。
【0027】
本発明に係る医薬製剤は、例えば、公知の方法を単独又は組み合わせて使用して製造することができる。本発明の医薬製剤が錠剤である場合、例えば、ロスバスタチンまたはその塩と、酸化鉄及びカラギーナンの少なくともいずれかを含有する顆粒に、前記滑沢剤や前記崩壊剤などの前記添加物を加えて、圧縮成型し、錠剤として製造することもできる。錠剤の製造方法では、打錠方法が主要な操作方法となるが、混合、乾燥、糖衣、コーティングなどの操作を組み合わせることができる。打錠方法としては、例えば、ジヒドロピリジン系化合物と薬理学的に許容される添加物を混合し、直接、打錠機で錠剤に圧縮成型する直打法や、細粒剤や顆粒剤の製造方法と同様な方法で得た顆粒に、さらに必要に応じて滑沢剤あるいは崩壊剤を加えて、圧縮成型する湿式顆粒圧縮法又は乾式顆粒圧縮法などが挙げられる。錠剤の圧縮成型に用いられる打錠機は、特に限定されないが、例えば、単発打錠機、ロータリー式打錠機、有核打錠機などを用いることができる。
【0028】
本発明においては、例えば、マンニトールなどの賦形剤、ポリビニルピロリドン、結晶セルロースなどの結合剤、カルメロースナトリウムやクロスポビドンなどの崩壊剤、ステリアン酸マグネシウムやタルクなどの滑沢剤を使用し、前記のような方法で打錠することにより、錠剤を得ることができる。
【0029】
さらに、本発明に係る医薬製剤は、服用性を考慮し、口腔内崩壊錠などの速崩性錠剤として製造することができる。前記した通り、速崩性錠剤は、前記錠剤の好ましい態様である。以下に、速崩性錠剤としての本発明の医薬組成物の製造方法の例を具体的に説明する。
【0030】
また、細粒剤あるいは顆粒剤の製造方法では、造粒方法が主要な操作方法となり、その他に、必要に応じて、混合、乾燥、整粒、分級などの操作を組み合わせることができる。前記造粒方法としては、例えば、粉末に結合剤及び溶媒を加えて造粒する湿式造粒法、粉末を圧縮して造粒する乾式造粒法、加熱溶融する結合剤を加えて加熱して造粒する溶融造粒方法などが利用できる。さらに、これらの造粒法に合わせて、プラネタリーミキサーやスクリュー型混合機などを用いる混合撹拌造粒法、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサーなどを用いる高速混合撹拌造粒法、円筒造粒機、ロータリー型造粒機、スクリュー押し出し造粒機、ペレットミル型造粒機などを用いる押し出し造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、破砕造粒法、噴霧造粒法などを利用できる。
前記のような造粒方法による造粒後、例えば、さらに乾燥機や流動層などにより乾燥、解砕、整粒などを行うことによって、本発明における細粒剤や顆粒剤を製造することができる。
【0031】
また、前記造粒の際には、造粒溶媒を使用してもよい。これらの造粒溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水や各種有機溶媒などが挙げられ、より具体的には、例えば、水、メタノール、エタノールなどの低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、塩化メチレン、あるいはそれらの混合液などが挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下の実験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載がない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載され、濃度などは重量基準である。
【0033】
実験1:ロスバスタチン含有製剤の安定性向上
(医薬製剤の製造)
以下の表1に示す処方にしたがって各成分を秤量し、乳鉢を用いて十分に混合した。打錠機を用いてこの混合物を圧縮成形し、ロスバスタチンカルシウムを5.2mg含有する錠剤(重量125mg、直径7mg)を製造した。本実験では、崩壊性および溶解性に優れたマンニトールを賦形剤として用いるとともに、クロスポビドンを崩壊剤として用いて、口腔内崩壊錠とした。
【0034】
【表1】
【0035】
(保存安定性の評価1)
製造した医薬製剤の安定性(加熱または加湿条件下での保存安定性)を、以下の方法によって試験した。具体的には、医薬製剤を保存した後の不純物の量によって安定性を評価した。保存容器としては、褐色ガラス瓶(60℃保存、密栓)、シャーレ(40℃75%保存、開放)を用いた。また、保存安定性試験には、以下の条件の恒温恒湿槽などを用いた。
・40℃75%相対湿度(以下R.H.):商品名JUNIOR SD01(ETAC社)
・60℃:商品名LABONIC LX330(ETAC社)
(不純物含量の測定)
以下の条件で上記医薬製剤に含まれる不純物を定量した。不純物含量は、液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて面積百分率法(相対面積法)によって評価した(ロスバスタチンおよび溶媒に由来するピーク以外のピークを不純物に由来するものとした)。
【0036】
【化1】
【0037】
<試料溶液の調製>
・標準溶液の調製
ロスバスタチンカルシウム約10 mgを量り、アセトニトリル/水(重量比:50/50)20 mLを加えて溶かし、標準溶液とする。
・試料溶液の調製
上記条件で保存した試料(錠剤2錠分:約250 mg、ロスバスタチンカルシウムとして10 mg)を量り、アセトニトリル/水(50/50)を加え、時々振り混ぜながら超音波抽出した後、更にアセトニトリル/水(50/50)を加えて20 mLとする。この液を遠心分離(3000 rpm、10分)し、上澄液を試料溶液とする。
【0038】
<評価結果>
評価結果を以下の表2に示す。安定化剤として酸化チタンを配合した製剤と比較して、本発明に係る製剤は不純物の増加が低い傾向が見られた。特に、安定化剤として一般的に使用される酸化チタンでは安定化効果が見られなかったものの、酸化鉄やカラギーナンを安定化剤としてロスバスタチン含有製剤に配合すると安定化効果が得られたことは予想外であった。また、カラギーナンを配合することで、熱および加湿による安定性が大幅に向上した。
【0039】
【表2】
【0040】
(保存安定性の評価2)
製造した医薬製剤について、その光安定性(光照射条件下での保存安定性)を以下の方法によって試験した。不純物の定量は上記実験と同様に行った。
【0041】
ポリエチレン袋に上記医薬製剤を入れ、光照射機(LT-120、ナガノ科学機械製作所)を用いて、総照度120万 lux・h、総近紫外放射エネルギー200 W・h/m2(ICHガイドライン及び薬審第422号に従った)の条件で光照射を行った。
【0042】
<評価結果>
評価結果を以下の表3および図1に示す。酸化鉄(三二酸化鉄及び黄色三二酸化鉄)を添加した系で光安定性が大きく向上した。
【0043】
【表3】
【0044】
実験2:ロスバスタチン含有製剤の苦味改善
以下の表4に示す処方にしたがって各成分を秤量し、乳鉢を用いて十分に混合して医薬製剤(粉末)を製造した。混合した粉末について、5名のテスターによって苦味を評価し、その平均点を算出した。評価基準は、以下のとおりである。
1:強い苦みを感じる
2:後味にやや苦みを感じる
3:やや苦みを感じる(服用に問題なし)
4:特に苦みを感じない
【0045】
【表4】
【0046】
評価結果を以下の表5および図2に示すが、カラギーナンやメントール、アスパルテームを添加することによって、ロスバスタチンに起因する苦味を効果的に抑制することができた。また、カラギーナン、メントール、アスパルテームを併用することによって、ロスバスタチンに起因する苦味をほぼ抑制することができた。
【0047】
【表5】
図1
図2