特開2015-212285(P2015-212285A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015212285-脱水素化法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212285(P2015-212285A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】脱水素化法
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/367 20060101AFI20151030BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20151030BHJP
   B01J 23/62 20060101ALI20151030BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20151030BHJP
   C07C 9/15 20060101ALN20151030BHJP
   C07C 9/16 20060101ALN20151030BHJP
   C07C 5/13 20060101ALN20151030BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20151030BHJP
【FI】
   C07C5/367
   C07C15/04
   B01J23/62 Z
   B01J37/08
   C07C9/15
   C07C9/16
   C07C5/13
   C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-133415(P2015-133415)
(22)【出願日】2015年7月2日
(62)【分割の表示】特願2014-502543(P2014-502543)の分割
【原出願日】2011年12月2日
(31)【優先権主張番号】61/468,298
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11166684.8
(32)【優先日】2011年5月19日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】チェン タン ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ダッカ ジハード エム
(72)【発明者】
【氏名】ヘルトン テリー イー
(72)【発明者】
【氏名】ベニテス フランシスコ エム
(72)【発明者】
【氏名】スミス チャールズ エム
(72)【発明者】
【氏名】デコール ロレンゾ シー
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BC22A
4G169BC22B
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB07
4G169CB62
4G169CB66
4G169DA05
4G169FA02
4G169FB19
4G169FB29
4G169FB30
4G169FC07
4H006AA02
4H006AC12
4H006BA11
4H006BA25
4H006BA26
4H006BA55
4H006BA60
4H006BA81
4H006BC32
4H006BD70
4H039CA10
4H039CA41
4H039CC10
4H039CH50
(57)【要約】
【課題】本発明では、飽和環状炭化水素および/または5員環化合物を、脱水素化触媒を用いて脱水素化する方法が開示される。
【解決手段】脱水素化触媒は、(i)元素周期表の第14族から選択される0.05重量%〜5重量%の金属、および(ii)元素周期表第6〜10族から選択される0.1重量%〜10重量%の金属を含む。この方法は、少なくとも一部の飽和環状炭化水素および/または5員環化合物を脱水素化するのに有効な脱水素化条件下で実施される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全重量を基準にして少なくとも50重量%のベンゼン、少なくとも0.1重量%のシクロヘキサン、および少なくとも0.01重量%のメチルシクロペンタンを含む組成物を、脱水素化方法にかけるステップを含み、前記脱水素化方法が、前記組成物と、
(i)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.05〜5重量%のスズ、および
(ii)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.1〜10重量%のPt及びPdから選択される金属
を含む脱水素化触媒とを接触させるステップを含み、前記脱水素化触媒がルテニウムを実質的に含まず、かつ前記触媒組成物がコバルトを含まない、脱水素化方法。
【請求項2】
組成物が、組成物の全重量を基準にして、少なくとも1重量%のシクロヘキサンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱水素化触媒が、脱水素化触媒の全重量を基準にして0.1〜0.5重量%のスズを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
脱水素化触媒が、脱水素化触媒の全重量を基準にして0.5〜5重量%のPt及びPdから選択される金属を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(a)少なくとも50重量%のベンゼン、少なくとも0.1重量%のシクロヘキサン、および少なくとも0.05重量%のメチルシクロペンタンを含む組成物を準備するステップと、
(b)組成物の少なくとも一部を脱水素化触媒と、(i)シクロヘキサンの少なくとも一部をベンゼンに転化しかつ(ii)メチルシクロペンタンの少なくとも一部を少なくとも1種のパラフィンに転化するのに有効な条件下で接触させることによって脱水素化反応生成物を生成するステップと
を含む脱水素化方法であって、
脱水素化触媒が、(i)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.05重量%〜0.5重量%のスズ、および(ii)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.1重量%〜2重量%のPt及びPdから選択される金属を含み、前記脱水素化触媒がルテニウムを実質的に含まず、かつ前記触媒組成物がコバルトを含まない、
方法。
【請求項6】
脱水素化触媒が担体を含み、かつ脱水素化触媒が、
(i)担体をスズで処理して被処理担体を形成するステップと、
(ii)被処理担体を100℃〜700℃の温度でか焼するステップと、
(iii)担体にPt及びPdから選択される金属を含浸して被含浸担体を形成するステップと、
(iv)被含浸担体を100℃〜700℃の温度でか焼するステップと
を含む方法によって生成され、含浸ステップ(iii)が、処理ステップ(i)に先立って、または処理ステップ(i)と同時に実施される、請求項5に記載の脱水素化法。
【請求項7】
含浸ステップ(iii)が、か焼ステップ(ii)の後に実施される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への優先権の主張
本出願は、その開示が参照により本明細書に完全に組み込まれる、2011年3月28日に出願の米国特許仮出願第61/468,298号および2011年5月19日に出願の欧州特許出願第11166684.8号に基づく優先権を主張する。
関連出願の相互参照
本特許出願は、2010年12月17日に出願の米国特許仮出願第61/424,242号および2010年12月17日に出願のPCT出願PCT/US2010/061041号に関連付けられる。
本発明は、シクロヘキサンおよび/またはメチルシクロペンタンなどの飽和環状炭化水素、とりわけベンゼンのシクロヘキシルベンゼンへのヒドロアルキル化中に生成されるシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンを脱水素化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロヘキシルベンゼンは、ベンゼンから、ヒドロアルキル化または還元的アルキル化の方法によって生成することができる。この方法では、ベンゼンが部分水素化されてシクロヘキセンなどの反応中間体を生成し、次いでシクロヘキセンが出発原料のベンゼンをアルキル化するような触媒の存在下で、ベンゼンを水素と共に加熱する。かくして、米国特許第4,094,918号および4,177,165号には、ニッケルおよび希土類で処理されたゼオライトならびにパラジウム助触媒を含む触媒上での芳香族炭化水素のヒドロアルキル化が開示されている。同様に、米国特許第4,122,125号および4,206,082号には、希土類で処理されたゼオライト上に担持されたルテニウムおよびニッケル化合物の芳香族ヒドロアルキル化触媒としての使用が開示されている。これらの先行技術方法で採用されるゼオライトは、X型およびY型のゼオライトである。さらに、米国特許第5,053,571号では、ベータ型ゼオライト上に担持されたルテニウムおよびニッケルの芳香族ヒドロアルキル化触媒としての使用が提案されている。しかし、ベンゼンのヒドロアルキル化に関するこれらのより初期の提案は、とりわけベンゼンの経済的に実行可能な転化速度において、シクロヘキシルベンゼンへの選択率が低く、かつ多量の望まない副生物、とりわけシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンが生成されるという問題があった。
【0003】
より最近になって、米国特許第6,037,513号で、ベンゼンおよび水素を少なくとも1種の水素化金属およびMCM−22ファミリーのモレキュラーシーブを含む二元機能触媒と接触させることによって、ベンゼンのヒドロアルキル化におけるシクロヘキシルベンゼンの選択率を改善できることが開示された。水素化金属は、好ましくは、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、およびこれらの混合物から選択され、接触ステップは、50〜350℃の温度、100〜7000kPaの圧力、0.01〜100のベンゼン対水素のモル比、および0.01〜100hr-1の毎時重量空間速度(WHSV)で実施される。前記米国特許第6,037,513号には、生じたシクロヘキシルベンゼンを、次いで、対応するヒドロペルオキシドに酸化し、ペルオキシドを所望のフェノールおよびシクロヘキサノンに分解できることが開示されている。
【0004】
この方法の1つの欠点は、この方法が、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの不純物を生成することである。これらの不純物は、貴重なベンゼン供給物の浪費を意味する。さらに、除去されない限り、これらの不純物は系中に蓄積し、それによって、望ましくない副生物の生成の増大に取って代わる傾向がある。したがって、フェノール前駆体としてのシクロヘキシルベンゼンの商業的応用の前に現れる重大な問題は、不純物であるシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンの除去である。
【0005】
この問題に対する1つの解決策が、米国特許第7,579,511号中で提案されている。この特許は、シクロヘキシルベンゼンの調製方法を記載しており、この方法では、ベンゼンが第1の触媒の存在下でヒドロアルキル化されて、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、および未反応ベンゼンを含む第1の流出組成物を形成する。第1の流出組成物は、次いで、シクロヘキサン/メチルシクロペンタンに富む組成物、ベンゼンに富む組成物、およびシクロヘキシルベンゼンに富む組成物に分離され、そしてシクロヘキサン/メチルシクロペンタンに富む組成物を、第2の低酸性度の脱水素化触媒と接触させて、シクロヘキサンの少なくとも一部をベンゼンに、メチルシクロペンタンの少なくとも一部を直鎖および/または分枝状パラフィンに転化し、そして第2の流出組成物を形成する。ベンゼンに富む組成物および第2の流出組成物を、次いで、ヒドロアルキル化ステップに再循環させることができる。しかし、この方法に付随する1つの問題は、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンが、ベンゼンのそれに類似した沸点を有し、その結果、通常的な蒸留によるそれらの分離が困難なことである。
【0006】
もう1つの解決策が、国際特許公開第2009/131769号中で提案されており、そこでは、ベンゼンが、第1の触媒の存在下でヒドロアルキル化されて、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキサン、および未反応ベンゼンを含む第1の流出組成物を生成する。第1の流出組成物を、次いで、シクロヘキシルベンゼンに富む組成物、およびシクロヘキサンとベンゼンとを含むC6系生成物の組成物に分離する。次いで、C6系生成物の組成物の少なくとも一部を脱水素化条件下で第2の触媒と接触させて、シクロヘキサンの少なくとも一部をベンゼンに転化し、ベンゼンおよび水素を含みヒドロアルキル化ステップに再循環できる第2の流出組成物を生成する。
【0007】
米国特許第7,579,511号および国際公開第2009/131769号に開示の方法の双方とも、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、活性炭、およびこれらの組合せなどの多孔性無機担体上に第VIII族金属を含む脱水素化触媒の使用に依拠している。しかし、実際には、このような脱水素化触媒は、シクロヘキサンおよび/またはメチルシクロペンタンの転化に対してほんの限られた活性を有するにすぎず、一部の事例では、急速な経時変化を起こすことがある。したがって、ベンゼンのヒドロアルキル化法において採用されるベンゼン再循環組成物からシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンを除去するための改善された触媒に対する必要性が存在する。シクロヘキサンの転化は、その沸点がベンゼンのそれの1℃以内にあるので、特に重要である。メチルシクロペンタンの転化も望ましいが、メチルシクロペンタンとベンゼンとの沸点にはほぼ9℃の差があるので、重要性はシクロヘキサンより少ない。
より最近になって、少なくとも1種の脱水素化金属(例えば、白金またはパラジウム)および第1族または第2族金属助触媒(すなわち、アルカリ金属またはアルカリ土類金属)を含む触媒を使用して、シクロヘキサンおよび/またはメチルシクロペンタンを脱水素化することができることが発見された。この方法は、例えば、2010年12月17日に出願されたPCT出願PCT/US2010/061041号中に記載されている。しかし、シクロヘキサンのさらに改善された転化率および選択率を有する脱水素化触媒が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/042142号
【特許文献2】特開2004−196638号公報
【特許文献3】米国特許第4133839号明細書
【特許文献4】米国特許第4130597号明細書
【特許文献5】特開昭52−144602号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして、少なくとも1種の脱水素化金属および第14族金属(例えば、錫)を含む触媒が、当技術分野で公知の脱水素化触媒に比較して、シクロヘキサンからベンゼンへの改善された転化率および選択率を有することが見出されるに至った。
【0010】
種々の実施形態において、本発明は、組成物の全重量を基準にして少なくとも50重量%の芳香族炭化水素および少なくとも0.1重量%の飽和環状炭化水素を含む組成物を脱水素化触媒と接触させることを含む脱水素化法に関する。脱水素化触媒は、脱水素化触媒の全重量を基準にして、(i)元素周期表の第14族から選択される0.05〜5重量%の金属、および(ii)元素周期表の第6〜10族から選択される0.1〜10重量%の金属を含む。
好都合には、芳香族炭化水素はベンゼンであり、飽和環状炭化水素はシクロヘキサンである。
好都合には、元素周期表の第14族から選択される金属は錫であり、元素周期表第6〜10族から選択される金属は白金またはパラジウムである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】白金/錫触媒を使用する場合のシクロヘキサンからベンゼンへの転化率および選択率を、白金/カリウム触媒に対比して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、組成物を脱水素化するための方法が記載され、この方法は、飽和環状炭化水素および/または5員環化合物を脱水素化触媒と共に含む。脱水素化触媒は、(i)元素周期表の第14族から選択される0.05重量%〜0.5重量%の金属、および(ii)元素周期表の第6〜10族から選択される0.1重量%〜2重量%の金属を含む。脱水素化触媒は、さらに、担体を含むことができる。この方法は、飽和環状炭化水素および/または5員環化合物の少なくとも一部を脱水素化するのに有効な脱水素化条件下で実施される。
種々の実施形態において、組成物は、組成物の全重量を基準にして、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%の飽和環状炭化水素を含む。種々の実施形態において、飽和環状炭化水素は、ベンゼンをヒドロアルキル化してシクロヘキシルベンゼンを形成するための方法において生成される。例えば、飽和環状炭化水素は、シクロヘキサンでよい。
組成物は、さらに、組成物の全重量を基準にして、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.3重量%、または少なくとも0.5重量%の5員環化合物を含むことができる。5員環化合物は、ベンゼンをヒドロアルキル化してシクロヘキシルベンゼンを形成するための方法において生成される可能性がある。例えば、5員環化合物はメチルシクロペンタンでよい。
【0013】
組成物は、さらに、組成物の全重量を基準にして、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%の芳香族炭化水素を含むことができる。種々の実施形態において、芳香族炭化水素は、ベンゼンをヒドロアルキル化してシクロヘキシルベンゼンを形成するための中に方法において生成される。芳香族炭化水素は、例えばベンゼンでよい。
脱水素化反応において採用される脱水素化触媒は、脱水素化触媒の全重量を基準にして、(i)元素周期表の第14族から選択される金属、および(ii)元素周期表の第6〜10族から選択される金属を含む。本明細書中で使用する場合、本明細書で開示される周期表の族に関する番号付けのスキームは、Richard J.Lewisによる「Hawley's Condensed Chemical Dictionary (14th Edition)」の内表紙に記載のNew Notationに存在する。
一般に、第14族金属は、脱水素化触媒中に、脱水素化触媒の全重量を基準にして、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、または少なくとも5重量%の量で存在する。一実施形態において、第14族金属は錫である。種々の実施形態において、第14族は、脱水素化触媒の0.05重量%〜5重量%、0.05重量%〜1重量%、0.05重量%〜0.5重量%、0.1重量%〜0.4重量%、0.1重量%〜0.3重量%、または約0.15重量%〜0.2重量%の量で存在する。
【0014】
さらに、触媒は、元素周期表の第6〜10族から選択される金属、例えば白金および/またはパラジウムを含む。典型的には、元素周期表の第6〜10族から選択される金属は、触媒の0.05重量%〜10重量%、例えば、0.1重量%〜5重量%、または0.2重量%〜2重量%の量で存在する。別の実施形態において、第6〜10族金属は、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%、または少なくとも1.0重量%の量で存在する。種々の実施形態において、第6〜10族金属は、触媒の0.1重量%〜5重量%、0.1重量%〜3重量%、0.1重量%〜2重量%、または約0.15重量%〜1.5重量%の量で存在する。
種々の実施形態において、触媒組成物は、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満のニッケルを含むか、あるいはニッケルを含まない。種々の実施形態において、触媒組成物は、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.1重量%未満のコバルトを含むか、あるいはコバルトを含まない。種々の実施形態において、触媒組成物は、ルテニウム、ロジウム、鉛、および/またはゲルマニウム、および/またはその他の活性元素成分を含まないか、あるいは実質的に含まない。
【0015】
種々の実施形態において、触媒における元素周期表の第6〜10族から選択される金属の元素周期表の第14族から選択される金属に対する比率(例えば、Pt/Sn比)は、0.5超、1超、1.5超、2.5超、2.7超、または3超であり、2.5超〜400、2.7〜200、または3〜100の比率が好ましい。
種々の実施形態において、脱水素化触媒は、さらに、担体を含む。好都合には、脱水素化触媒の担体は、シリカ、アルミナ、シリケート、アルミノシリケート、ジルコニア、炭素、または炭素ナノチューブからなる群から選択される。種々の実施形態において、担体は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムの中の1種または複数などの無機酸化物を含む。担体は、結合剤を含んでいても、いなくてもよい。触媒担体中に存在できる不純物は、例えば、0.01重量%〜2重量%の範囲で存在できるケイ酸ナトリウムなどのナトリウム塩である。適切なシリカ担体は、例えば、この目的に関して参照により本明細書に組み込まれる、2007年1月12日に出願の、「Silica Carriers」と題された国際公開第2007/084440号中に記載されている。
【0016】
元素周期表の第14族から選択される金属および/または第6〜10族から選択される金属は、純粋に元素金属である必要はなく、例えば、少なくとも部分的には、塩、酸化物、塩化物、水素化物、スルフィド、炭酸塩などの別の形態で存在することができると理解される。本出願の目的に関し、触媒組成物中の金属の重量%は、触媒組成物中の構成成分を形成するのに使用される金属の量に基づいて計算される。さらに、脱水素化触媒の種々の構成成分の重量%を決定する目的に関して、第14族金属および/または第6〜10族金属を担持する担体のその部分のみが考慮される。例えば、1.9gの塩化錫塩(1gの錫)および22.29gのテトラアンミン白金水酸化物溶液(4.486重量%のPt)を用いて調製され、98gの二酸化ケイ素上に担持された触媒組成物は、触媒組成物の全重量を基準にして1重量%の錫および1重量%のPtを含む。
【0017】
脱水素化触媒は、典型的には、水などの液体キャリヤー中で、第6〜10族金属またはその前駆体、第14族金属またはその前駆体、および/または任意選択の無機基剤成分または前駆体を含む1種または複数の液状組成物を担体に含浸させることなどによって逐次的または同時に処理することによって調製される。各液体キャリヤーに有機分散剤を添加して、担体への金属成分の均一な接触を助けることができる。適切な有機分散剤としては、アミノアルコールおよびアミノ酸(アルギニンなど)が挙げられる。一般に、有機分散剤は、液状組成物中に液状組成物の1重量%〜20重量%の量で存在する。
【0018】
好ましい一実施形態では、触媒は、第6〜10族金属成分の前に第14族金属成分が担体に適用される逐次的な含浸により調製される。
液状組成物で処理した後、担体を、1つまたは複数の段階で、一般には100℃〜700℃の温度で0.5〜50時間加熱して、(a)液体キャリヤーの除去、(b)金属成分の触媒的に活性な形態への転化、および(c)有機分散剤の分解の中の1つまたは複数を実施する。加熱は、空気などの酸化雰囲気中で、または水素などの還元雰囲気の条件下で実施することができる。液状組成物で処理した後、担体を、一般には、200℃〜500℃、例えば、300℃〜450℃の温度で1〜10時間加熱する。
【0019】
一実施形態において、脱水素化触媒は、5%超、例えば、10%超、例えば、15%超、さらには20%超、25%超、またはさらには30%超の酸素の化学収着値を有する。本明細書中で使用する場合、特定触媒に関する酸素の化学収着値は、触媒上への金属分散の尺度であり、[触媒によって収着される原子状酸素のモル数の触媒に含まれる脱水素化金属のモル数に対する比率]×100%として定義される。本明細書中で言及される酸素化学収着値は、次の技術を使用して測定される。酸素の化学収着の測定値は、Micromeritics ASAP2010を使用して得られる。ほぼ0.3〜0.5gの触媒をMicrometrics装置中に入れる。流動ヘリウム下で、触媒を外界温度(すなわち18℃)から10℃/分の速度で250℃まで昇温し、5分間保持する。5分後に、サンプルを真空下に250℃で30分間配置する。真空で30分間経過した後、サンプルを20℃/分で35℃まで冷却し、5分間保持する。酸素および水素の等温線を、35℃で、0.50〜760mmHgの間で刻んで集める。この曲線の直線部分のゼロ圧力への外挿により、全(すなわち合算した)吸着取込み量を得る。
【0020】
脱水素化ステップに適した条件としては、100℃〜1000℃の温度、大気圧〜100〜7000kPaゲージ(kPag)の気圧、0.2hr-1〜50hr-1の毎時重量空間速度が含まれる。
好ましくは、脱水素化プロセスの温度は、100℃〜1000℃、100℃〜800℃、150℃〜600℃、200℃〜550℃である。他の実施形態において、温度の下限は、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、および500℃でよく、上限温度は、1000℃、950℃、900℃、850℃、800℃、750℃、700℃、650℃、600℃、および550℃でよく、任意の下限から任意の上限までの範囲が考えられる。
【0021】
好ましくは、脱水素化プロセスの圧力は、0psig〜1015psig(0kPag〜7000kPag)、50psig〜950psig(345kPag〜6550kPag)、100psig〜900psig(689kPag〜6210kPag)であり、任意の下限から任意の上限までの範囲が考えられる。
脱水素化プロセスに使用される反応器の配置は、一般に、脱水素化の機能を有する固体触媒を含む1つまたは複数の固定床式反応器を含む。本発明の触媒を使用する飽和環状炭化水素(例えば、シクロヘキサン)の通過毎の転化率は、典型的には、70%を超え、80%を超え、または90%を超え、典型的には少なくとも95%である。好ましくは段間熱交換器を備えた複数の断熱床によって、反応の吸熱に対処できるように備えることができる。各触媒床を通過する間に降下した反応組成物の温度は、熱交換器によって高められる。好ましくは、3〜5個の床が使用され、各床を通過する間に温度は30℃〜100℃降下する。好ましくは、系列の最後の床は、系列の最初の床に比べてより高い出口温度で運転される。
【0022】
好ましくは、脱水素化触媒のα値は、0〜10、0〜5、および0〜1である。担体のα値は、標準触媒に比較した、触媒の接触分解活性の大まかな指標である。α試験は、標準触媒(α値は1とみなされる)に比較した試験触媒の相対速度定数(単位時間、単位触媒容積当たりのn−ヘキサンの転化速度)を与える(速度定数=0.016s-1)。α試験は、米国特許第3,354,078号、ならびにJ. Catalysis, 4, 527 (1965); 6, 278 (1966);および61, 395 (1980)中に記載されており、試験の説明についてこれらの参考文献を参照する。本明細書中で言及されるα値を測定するのに使用される試験の実験条件としては、538℃の定温、およびJ. Catalysis, 61, 395 (1980)中に詳細に記載されているような可変流速が挙げられる。他の実施形態において、α値の下限は、0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10でよく、α値の上限は、200、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6および0.5でよく、任意の下限から任意の上限までの範囲が考えられる。
【0023】
本発明の方法は、飽和環状炭化水素(例えば、シクロヘキサン)および任意選択で5員環化合物(例えば、メチルシクロペンタン)を含む任意の組成物に対して使用することができるが、この方法は、ベンゼンをフェノールに転化するための統合された方法の一部としての特定の応用分野を有する。このような統合された方法において、ベンゼンは、最初に、ベータ型ゼオライトまたはMCM−22ファミリーのモレキュラーシーブなどの酸触媒の存在下でのベンゼンのシクロヘキセンでのアルキル化を含む任意の通常的技術によって、あるいはベンゼンのビフェニルへの酸化的カップリング、それに続くビフェニルの水素化によって、シクロヘキシルベンゼンに転化される。しかし、実際には、シクロヘキシルベンゼンの生成は、一般に、ヒドロアルキル化条件下でヒドロアルキル化触媒の存在下でベンゼンを水素と接触させ、それによってベンゼンが次の反応(1)
【0024】
【化1】
を受けてシクロヘキシルベンゼン(CHB)を生成することによって行われる。
ヒドロアルキル化反応は、固定床、スラリー式反応器、および/または触媒蒸留塔(catalytic distillation tower)を含む広範な範囲の反応器配列で実施することができる。さらに、ヒドロアルキル化反応は、単一の反応ゾーンまたは複数の反応ゾーンで実施することができ、少なくともある段階で反応に対して水素が導入される。適切な反応温度は、100℃〜400℃、例えば、125℃〜250℃であり、適切な反応圧力は、100kPa〜7,000kPa、例えば、500kPa〜5,000kPaである。水素のベンゼンに対するモル比の適切な値は0.15:1〜15:1、例えば、0.4:1〜4:1、例えば、0.4〜0.9:1である。
【0025】
ヒドロアルキル化反応で採用される触媒は、一般に、MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブおよび水素化金属を含む二元機能触媒である。用語「MCM−22ファミリー材料」(または「MCM−22ファミリーの材料」もしくは「MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブ」)は、本明細書中で使用する場合、
・共通の一次結晶構成要素の単位格子(単位格子はMWW型空間的骨格構造を有する)から構成されるモレキュラーシーブ(単位格子は、3次元空間に張り付けられた場合に結晶構造を記述する原子の空間配置である。このような結晶構造は、その全内容が参照により組み込まれる"Atlas of Zeolite Framework Types", Fifth edition, 2001中で考察されている);
・このようなMWW型空間的骨格構造の単位格子の2次元的張り付けであり、1つの単位格子厚、好ましくは1つのc−単位格子厚の単層を形成する、共通の二次構成要素から構成されるモレキュラーシーブ;
・1つまたは1つを超える単位格子厚の層である共通の二次構成要素から構成されるモレキュラーシーブ(ここで、1つを超える単位格子厚の層は、1つの単セル厚の少なくとも2つの単層を積層、充填、または結合することから構成される。このような二次構成要素の積層は、規則的様式、不規則的様式、ランダム様式、またはこれらの任意の組合せの状態で存在できる);および
・MWW型空間的骨格構造を有する単位格子の任意の規則的またはランダムな2次元または3次元的組合せによって構成されるモレキュラーシーブ;の中の1種または複数を包含する。
【0026】
MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブは、一般に、12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07、および3.42±0.07Åの面間隔(d−spacing)最大値を含むX線回折パターンを有する。材料(b)を特徴付けるのに利用されるX線回折データは、入射線としての銅のK−α二重線、シンチレーションカウンター、および収集システムとしての関連コンピューターを備えた回折計を使用する標準的技術によって得られる。MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブとしては、MCM−22(米国特許第4,954,325号に記載)、PSH−3(米国特許第4,439,409号に記載)、SSZ−25(米国特許第4,826,667号に記載)、ERB−1(欧州特許第0293032号に記載)、ITQ−1(米国特許第6,077,498号に記載)、ITQ−2(国際公開第97/17290号に記載)、MCM−36(米国特許第5,250,277号に記載)、MCM−49(米国特許第5,236,575号に記載)、MCM−56(米国特許第5,362,697号に記載)、UZM−8(米国特許第6,756,030号に記載)、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、モレキュラーシーブは、(a)MCM−49、(b)MCM−56、ならびに(c)MCM−49およびMCM−56のアイソタイプ、例えばITQ−2から選択される。
【0027】
任意の既知水素化金属を、ヒドロアルキル化触媒中で採用できるが、適切な金属としては、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、錫、およびコバルトが挙げられ、パラジウムがとりわけ有利である。一般に、触媒中に存在する水素化金属の量は、触媒の0.05重量%〜10重量%、例えば、0.1重量%〜5重量%である。MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブがアルミノシリケートである一実施形態において、水素化金属は、モレキュラーシーブ中のアルミニウム対水素化金属のモル比が1.5〜1500、例えば、75〜750、例えば100〜300であるような量で存在する。
【0028】
水素化金属は、例えば含浸またはイオン交換によって、MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブ上に直接的に担持されることができる。しかし、より好ましい実施形態において、水素化金属の少なくとも50重量%、例えば少なくとも75重量%、一般には実質上すべてが、モレキュラーシーブとは別であるが、それと複合された無機酸化物上に担持される。とりわけ、水素化金属を無機酸化物上に担持することによって、触媒の活性ならびにそのシクロヘキシルベンゼンおよびジシクロヘキシルベンゼンへの選択率が、水素化金属がモレキュラーシーブ上に担持されている同等の触媒に比較して、増大することが見出される。
【0029】
このような複合型ヒドロアルキル化触媒で採用される無機酸化物は、それがヒドロアルキル化反応の条件下で安定かつ不活性であるなら、狭く定義されるものではない。適切な無機酸化物としては、元素周期表の第2、4、13および14族の酸化物、例えば、アルミナ、チタニア、および/またはジルコニアが挙げられる。
水素化金属を、好都合には含浸によって無機酸化物上に堆積させた後、金属含有無機酸化物をモレキュラーシーブと複合する。典型的には、触媒複合体は、モレキュラーシーブと金属含有無機酸化物との混合物を高圧(一般には、350kPa〜350,000kPa)でペレットに形成する共ペレット化によって、またはモレキュラーシーブと金属含有無機酸化物とのスラリーを任意選択で別個の結合剤と一緒に金型中に押し込む共押出しによって生成される。必要なら、得られた触媒複合体上に、さらなる水素化金属を続いて堆積させることができる。
【0030】
触媒は、結合剤を含むことができる。適切な結合剤材料としては、合成物質または天然に存在する物質、ならびにクレー、シリカ、および/または金属酸化物などの無機材料が挙げられる。後者は天然に存在するか、シリカと金属酸化物との混合物を含むゼラチン状沈殿物またはゲルの形態で存在することができる。結合剤として使用できる天然に存在するクレーとしては、モンモリロナイトおよびカオリンファミリーのクレーが挙げられ、そのファミリーには、一般にディキシー(Dixie)、マクナミー(McNamee)、ジョージア(Georgia)、およびフロリダ(Florida)クレーとして知られるサブベントナイトおよびカオリン、あるいは主な鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト(dickite)、ナクライト(nacrite)、またはアナウキサイト(anauxite)であるその他のクレーが含まれる。このようなクレーは、初めに採掘されたような未処理状態で、または初めにか焼、酸処理もしくは化学修飾にかけられた状態で使用することができる。適切な金属酸化物系結合剤としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、ならびにシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、およびシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの三元組成物が挙げられる。
【0031】
ヒドロアルキル化ステップは、シクロヘキシルベンゼンに向けて高度に選択的であるが、ヒドロアルキル化反応からの流出物は、通常、未反応ベンゼン供給物、若干のジアルキル化生成物、およびその他の副生物、とりわけシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンを含む。実際、ヒドロアルキル化反応におけるシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンへの典型的な選択率は、それぞれ、1〜25重量%および0.1〜2重量%である。
一実施形態において、脱水素化反応は、ヒドロアルキル化ステップの産出物の全部または一部に対して実施される。
【0032】
別の実施形態において、ヒドロアルキル化反応の流出物は、少なくとも(i)C6に富む組成物、および(ii)ヒドロアルキル化反応流出物の残余に分離される。組成物が、指定の種に関して「〜に富む」(例えばC6に富む、ベンゼンに富む、または水素に富む)と記述される場合、その組成物中の指定種の重量%が、供給組成物(すなわち、投入物)に比較して富化されていることを意味する。「C6」種は、一般に、6個の炭素原子を含む任意の種を意味する。
ベンゼン、シクロヘキサン、およびメチルシクロペンタンの沸点が類似していることを考慮すると、蒸留によってこれらの材料を分離することは困難である。したがって、一実施形態において、ヒドロアルキル化反応の流出物から、ベンゼン、シクロヘキサン、およびメチルシクロペンタンを含むC6に富む組成物を蒸留によって分離することができる。このC6に富む組成物は、次いで、前記の脱水素化工程にかけられ、その結果、組成物中のシクロヘキサンの少なくとも一部はベンゼンに転化され、メチルシクロペンタンの少なくとも一部は直鎖および/または分枝状パラフィン、例えば、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、およびその他の炭化水素系成分(イソヘキサン、C5脂肪族、およびC1−C4脂肪族など)に転化される。脱水素化生成物の組成物を、次いで、さらなる分離装置、典型的には、さらなる蒸留塔に供給して、脱水素化生成物の組成物を、ベンセンに富む流れ、およびベンゼンの激減した流れに分離することができる。次いで、ベンゼンに富む流れをヒドロアルキル化ステップへ再循環させ、ベンゼンの激減した流れをプロセスの燃料として使用することができる。組成物が、指定の種に関して「〜の激減した」(例えば、ベンゼンの激減した)と記述される場合、その組成物における指定種の重量%が供給組成物(すなわち、投入物)に比較して激減していることを意味する。
【0033】
6に富む組成物を分離した後、ヒドロアルキル化反応の流出物の残余を、第2の蒸留塔に供給して、任意のジシクロヘキシルベンゼンおよびその他の重質物からモノシクロヘキシルベンゼン系生成物(例えば、シクロヘキシルベンゼン)を分離することができる。反応流出物中に存在するジシクロヘキシルベンゼンの量に応じて、ジシクロヘキシルベンゼンをさらなるベンゼンとアルキル交換して、所望のモノアルキル化種の生成を最大化することが望ましい場合もある。
【0034】
さらなるベンゼンとのアルキル交換は、ヒドロアルキル化反応器とは異なるアルキル交換反応器において、MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブ、ベータ型ゼオライト、MCM−68(米国特許第6,014,018号参照)、Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、およびモルデナイト(mordenite)などの大きな細孔のモレキュラーシーブをはじめとする適切なアルキル交換触媒上で実施することができる。大きな細孔のモレキュラーシーブは、一部の実施形態では7Åを超える、他の実施形態では7Å〜12Åの平均細孔径を有する。アルキル交換反応は、典型的には、100〜300℃の温度、800〜3500kPaの圧力、全供給物に関して1〜10hr-1の毎時重量空間速度、および1:1〜5:1のベンゼン/ジシクロヘキシルベンゼン重量比を適切には含む、少なくとも部分的液相状態下で実施される。アルキル交換反応の流出物を、次いで、第2の蒸留塔に戻して、アルキル交換反応において生成されたさらなるモノシクロヘキシルベンゼン生成物を回収することができる。
【0035】
第2の蒸留塔中で分離した後に、Hock法に類似した方法で、シクロヘキシルベンゼンをフェノールに転化する。この方法では、シクロヘキシルベンゼンを、初めに、対応するヒドロペルオキシドに酸化する。これは、空気などの酸素含有気体を、シクロヘキシルベンゼンを含む液相中に導入することによって完遂される。Hock法と異なり、触媒不在下でのシクロヘキシルベンゼンの大気酸化は、極めて緩慢であり、それゆえ、酸化は、触媒の存在下で実施されるのが通常である。
【0036】
シクロヘキシルベンゼンの酸化ステップに適した触媒は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,720,462号に記載のN−ヒドロキシ置換環状イミド、例えば、N−ヒドロキシフタルイミド、4−アミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、3−アミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、テトラブロモ−N−ヒドロキシフタルイミド、テトラクロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシヘトイミド(N−hydroxyhetimide)、N−ヒドロキシヒムイミド(N−hydroxyhimimide)、N−ヒドロキシトリメリットイミド(N−hydroxytrimellitimide)、N−ヒドロキシベンゼン−1,2,4−トリカルボキシミド、N,N'−ジヒドロキシ(ピロメリット酸ジイミド)、N,N'−ジヒドロキシ(ベンゾフェノン−3,3',4,4'−テトラカルボン酸ジイミド)、N−ヒドロキシマレイミド、ピリジン−2,3−ジカルボキシミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ(酒石酸イミド)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミド、exo−N−ヒドロキシ−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシミド、N−ヒドロキシ−cis−シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシミド、N−ヒドロキシ−cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシミド、N−ヒドロキシナフタルイミドナトリウム塩、またはN−ヒドロキシ−o−ベンゼンジスルホンイミドである。好ましくは、触媒は、N−ヒドロキシフタルイミドである。もう1つの適切な触媒は、N,N',N"−トリヒドロキシ(thihydroxy)イソシアヌル酸である。
【0037】
これらの材料は、単独で、または遊離ラジカル開始剤の存在下で使用することができ、かつ液相均一系触媒として使用することができ、あるいは固体担体上に担持されて不均一系触媒を提供することができる。典型的には、N−ヒドロキシ置換環状イミドまたはN,N'、N"−トリヒドロキシイソシアヌル酸が、シクロヘキシルベンゼンの0.0001重量%〜15重量%、例えば、0.001重量%〜5重量%の量で採用される。
酸化ステップに適した条件には、70℃〜200℃、例えば90℃〜130℃の温度、および50kPa〜10,000kPaの圧力が含まれる。任意の酸素含有気体、好ましくは空気を酸化媒体として使用することができる。反応は、バッチ式反応器または連続流動式反応器中で行うことができる。塩基性緩衝剤を添加して、酸化中に生じる可能性のある酸性副生物と反応させることができる。さらに、炭酸ナトリウムなどの塩基性化合物を溶解するのを助け得る水相を導入することができる。
【0038】
シクロヘキシルベンゼンをフェノールおよびシクロヘキサノンに転化する際のもう1つの反応ステップは、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂を含み、これは、好都合には、ヒドロペルオキシドを触媒と、液相中、20℃〜150℃、例えば40℃〜120℃の温度、50kPa〜2,500kPa、例えば100kPa〜1000kPaの圧力で接触させることによって実施される。シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドは、好ましくは、熱の除去を助けるために、開裂反応に対して不活性な有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、フェノール、またはシクロヘキシルベンゼンで希釈される。開裂反応は、好都合には、反応蒸留装置中で実施される。
開裂ステップで採用される触媒は、均一系触媒または不均一系触媒でよい。
【0039】
適切な均一系開裂触媒としては、硫酸、過塩素酸、リン酸、塩酸、およびp−トルエンスルホン酸が挙げられる。塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄、および三酸化硫黄も、有効な均一系開裂触媒である。好ましい均一系開裂触媒は硫酸であり、0.05重量%〜0.5重量%の範囲の濃度が好ましい。均一系酸触媒の場合、開裂ステップの後に、好ましくは中和ステップが続く。このような中和ステップは、典型的には、塩基性成分と接触させること、続いて塩に富む水相をデカントすることを含む。
シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂で使用するのに適した不均一系触媒としては、スメクタイト系クレー、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,870,217号に記載のような、酸性モンモリロナイト系シリカ−アルミナ系クレーが挙げられる。
【0040】
開裂反応からの流出物は、フェノールおよびシクロヘキサノンを実質的に等モル量で含み、要求に応じて、シクロヘキサノンは、販売可能であるか、あるいはさらなるフェノールに脱水素化されることができる。この反応では、本明細書に記載の脱水素化触媒またはこの触媒の変形形態などの、任意の適切な脱水素化触媒を使用することができる。脱水素化ステップに適した条件は、250℃〜500℃の温度および0.01気圧〜20気圧(1kPa〜2030kPa)の圧力、例えば300℃〜450℃の温度および1気圧〜3気圧(100kPa〜300kPa)の圧力を含む。
【0041】
次に、本発明を、以下の非限定的実施例および添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【実施例】
【0042】
(例1)
シクロヘキサンの脱水素化
酸化ケイ素担体上に1重量%の白金および0.15重量%の錫を含む第1の脱水素化触媒、および酸化ケイ素担体上に1重量%の白金および1重量%のカリウムを含む第2の脱水素化触媒(比較用)を、60/100メッシュまで破砕し、外径(OD)が1/2インチ(1.27cm)の管型下降流反応器中に充填した。触媒を、別個に、89重量%のベンゼン、10重量%のシクロヘキサン、および1重量%のメチルシクロペンタンを含む組成物と、480℃、0.689MPa、10hr-1の毎時重量空間速度(WHSV)、および水素対炭化水素のモル比(H2/HC)=4の脱水素化条件下で接触させた。図1に示すように、Pt/Sn/SiO2触媒は、Pt/K/SiO2触媒に比べて、有意により高いシクロヘキサンの転化率および選択率を達成した。
【0043】
本発明を、特定の実施形態について言及することによって説明および例証してきたが、当業者は、本発明は、本明細書中で必ずしも例証されていない変形形態に適用できることを認識するであろう。それゆえ、本発明の正当な範囲を決定するためには、もっぱら添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
【0044】
さらに、本発明は以下の態様であり得る。
〔1〕組成物の全重量を基準にして少なくとも50重量%の芳香族炭化水素および少なくとも0.1重量%の飽和環状炭化水素を含む組成物を、(i)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.05〜5重量%の元素周期表の第14族から選択される金属、および(ii)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.1〜10重量%の元素周期表の第6〜10族から選択される金属を含む脱水素化触媒と接触させるステップを含む、脱水素化方法。
〔2〕芳香族炭化水素がベンゼンである、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕組成物が、組成物の全重量を基準にして、少なくとも1重量%の飽和環状炭化水素を含む、前記〔1〕または前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕飽和環状炭化水素がシクロヘキサンである、前記〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔5〕脱水素化触媒が、少なくとも70%のシクロヘキサンをベンゼンに転化する、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕脱水素化触媒が、脱水素化触媒の全重量を基準にして0.1〜0.5重量%の、元素周期表の第14族から選択される金属を含む、前記〔1〕から〔5〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔7〕脱水素化触媒が、脱水素化触媒の全重量を基準にして0.15〜0.3重量%の、元素周期表の第14族から選択される金属を含む、前記〔1〕から〔6〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔8〕脱水素化触媒が、脱水素化触媒の全重量を基準にして0.5〜5重量%の、元素周期表の第6〜10族から選択される金属を含む、前記〔1〕から〔7〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔9〕元素周期表の第14族から選択される金属が錫である、前記〔1〕から〔8〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔10〕元素周期表の第6〜10族から選択される金属が白金またはパラジウムである、前記〔1〕から〔9〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔11〕200℃〜550℃の温度および100kPa〜7,000kPaの圧力を含む脱水素化条件下で実施される、前記〔1〕から〔10〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔12〕組成物が、組成物の全重量を基準にして、少なくとも0.01重量%のメチルシクロペンタンをさらに含む、前記〔1〕から〔11〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔13〕脱水素化触媒が、シリカ、アルミナ、シリケート、アルミノシリケート、ジルコニア、または炭素の中の1種または複数を含む担体を含む、前記〔1〕から〔12〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔14〕脱水素化触媒が、二酸化ケイ素、二酸化チタン、および酸化ジルコニウムから選択される無機酸化物を含む担体を含む、前記〔1〕から〔13〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔15〕(a)少なくとも0.1重量%の飽和6員環状炭化水素および0.05重量%の5員環化合物を含む組成物を準備するステップと、
(b)組成物の少なくとも一部を脱水素化触媒と、(i)少なくとも1種の飽和6員環状炭化水素の少なくとも一部をベンゼンに転化しかつ(ii)少なくとも1種の5員環化合物の少なくとも一部を少なくとも1種のパラフィンに転化するのに有効な条件下で接触させることによって脱水素化反応生成物を生成するステップと
を含む脱水素化方法であって、
脱水素化触媒が、(i)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.05重量%〜0.5重量%の元素周期表の第14族から選択される金属、および(ii)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.1重量%〜2重量%の元素周期表の第6〜10族から選択される金属を含む
方法。
〔16〕飽和環状炭化水素がシクロヘキサンである、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕5員環化合物がメチルシクロペンタンである、前記〔15〕または前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕元素周期表の第14族から選択される金属が錫である、前記〔15〕から〔17〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔19〕元素周期表の第6〜10族から選択される金属が白金またはパラジウムである、前記〔15〕から〔18〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔20〕脱水素化触媒が担体を含み、かつ脱水素化触媒が、
(i)担体を第14族金属で処理して被処理担体を形成するステップと、
(ii)被処理担体を100℃〜700℃の温度でか焼するステップと、
(iii)担体に第6〜10族金属を含浸して被含浸担体を形成するステップと、
(iv)被含浸担体を100℃〜700℃の温度でか焼するステップと
を含む方法によって生成され、含浸ステップ(iii)が、処理ステップ(i)に先立って、または処理ステップ(i)と同時に実施される、前記〔15〕から〔19〕までのいずれか1項に記載の脱水素化法。
〔21〕含浸ステップ(iii)が、か焼ステップ(ii)の後に実施される、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕か焼ステップ(iv)が、酸素含有雰囲気中、200℃〜500℃の温度で1〜10時間実施される、前記〔20〕または前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕少なくとも1種の飽和6員環状炭化水素がシクロヘキサンであり、組成物の全重量を基準にして少なくとも5重量%の量で存在する、前記〔15〕から〔22〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔24〕少なくとも1種の5員環化合物がメチルシクロペンタンであり、組成物の全重量を基準にして少なくとも0.1重量%の量で存在する、前記〔15〕から〔23〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔25〕(a)ベンゼンと水素をヒドロアルキル化触媒の存在下に、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンおよびベンゼンを含むヒドロアルキル化反応生成物を形成するのに有効なヒドロアルキル化条件下で接触させるステップと、
(b)ヒドロアルキル化反応生成物の少なくとも一部を、(i)ベンゼン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンの中の少なくとも1種に富む第1の組成物と(ii)シクロヘキシルベンゼンに富む第2の組成物とに分離するステップと、
(c)第1の組成物の少なくとも一部を脱水素化触媒と、シクロヘキサンの少なくとも一部をベンゼンに転化するのに有効な条件下で接触させるステップであって、脱水素化触媒が、(i)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.05〜0.5重量%の元素周期表の第14族から選択される金属、および(ii)脱水素化触媒の全重量を基準にして0.1〜2重量%の元素周期表の第6〜10族から選択される金属を含むステップと、
(d)ステップ(c)で形成されたベンゼンの少なくとも一部を接触ステップ(a)に再循環させるステップと
を含む、シクロヘキシルベンゼンの製造方法。
図1