【解決手段】ヘモグロビンレベルを維持または上昇させるのに有効量のN−(シアノメチル)−4−[2−[[4−(4−モルホリニル)フェニル]アミノ]−4−ピリミジニル]−ベンズアミド[CYT387]または関連する化合物を対象に投与することを含む、貧血に罹患している対象の治療方法により、上記課題を解決する。
N−(シアノメチル)−4−[2−[[4−(4−モルホリニル)フェニル]アミノ]−4−ピリミジニル]−ベンズアミド[CYT387]二塩酸塩を含む、貧血に罹患している対象を治療するための医薬組成物。
貧血を治療するのに有用な量のN−(シアノメチル)−4−[2−[[4−(4−モルホリニル)フェニル]アミノ]−4−ピリミジニル]−ベンズアミド二塩酸塩を含む容器と、該容器に付随した、貧血に罹患している対象の治療を示すラベルとを含む製造物品。
貧血を治療するのに有用な量のN−(シアノメチル)−4−[2−[[4−(4−モルホリニル)フェニル]アミノ]−4−ピリミジニル]−ベンズアミド二塩酸塩を含む容器と、該容器に付随した、治療方法を説明するプリントされた説明書とを含むキット。
MPNを治療するのに有用な量のN−(シアノメチル)−4−[2−[[4−(4−モルホリニル)フェニル]アミノ]−4−ピリミジニル]−ベンズアミド二塩酸塩を含む容器と、該容器に付随した、MPNに罹患した対象の治療を示すラベルとを含む、製造物品。
MPNを治療するのに有用な量のN−(シアノメチル)−4−[2−[[4−(4−モルホリニル)フェニル]アミノ]−4−ピリミジニル]−ベンズアミド二塩酸塩を含む容器と、該容器に付随した、治療方法を説明するプリントされた説明書とを含むキット。
【発明を実施するための形態】
【0023】
CYT387は、CAS登録番号CAS1056634−68−4を有し、N−(シアノメチル)−4−[2−[[4−(4−モルホリニル)フェニル]アミノ]−4−ピリミジニル]−ベンズアミドの化学名を有し、以下に示す構造を有するフェニルアミノピリミジン化合物である。
【0025】
CYT387の合成、処方、および治療上の使用は、2008年9月18日に公開されたWO2008/109943、および「Blood」(2010年、115(25)、5232〜40頁)に開示されている。もちろん、CYT387は、必要に応じて、塩、溶媒和物、またはプロドラッグの形態で使用され得る。
【0026】
CYT387に加えて、本発明は、CYT387のキナーゼ結合プロファイルまたはその特性(signature)を共有するCYT387の構造的類自体(アナログ)を用いて実施することができ、この化合物を本明細書において「関連する化合物」と示す。
【0027】
「関連する化合物」は、その選択的なJAK阻害特性によりCYT387と関連する化合物であり、JAK1およびJAK2、JAK3の関連物、および他のキナーゼファミリーのメンバーへの結合および阻害に選択性を示し、以下の式に構造的に一致し:
【0029】
(式中、
Zは、独立してNおよびCHから選択され;
R
1は、独立して、H、ハロゲン、OH、CONHR
2、CON(R
2)
2、CF
3、R
2OR
2、CN、モルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ−1、1−ジオキシド、置換または非置換のピペリジニル、置換または非置換のピペラジニル、イミダゾリル、置換または非置換のピロリジニル、およびC
1−
4アルキレンから選択され、ここで、炭素原子は、任意選択で場合によってNR
Yおよび/あるいはモルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ−1、1−ジオキシド、置換もしくは非置換のピペリジニル、置換もしくは非置換のピペラジニル、イミダゾリル、または置換もしくは非置換のピロリジニル基で置換されたOで置換されていてもよく;
R
2は置換または非置換のC
1−4アルキルであり;
R
Yは、Hまたは置換もしくは非置換のC
1−4アルキルであり;
R
8はR
XCNであり、
R
Xは、置換または非置換のC
1−4アルキレンであり、ここで、2個までの炭素原子が任意選択で場合によってCO、NSO
2R
1、NR
Y、CONR
Y、SO、SO
2、またはOで置換されていてもよく;
R
11は、H、ハロゲン、C
1−4アルキル、またはC
1−4アルキルオキシである)
もしくはそのエナンチオマー、そのプロドラッグ、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0030】
用語「C
1−4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を示す。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルが挙げられる。
【0031】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を示す。
【0032】
用語「置換の」は、C
1−4アルキル、C
3−6シクロアルキル、C
2−6アルケニル、C
2−6アルキニル、C
1−6アルキルアリール、アリール、ヘテロシクリル(heterocycylyl)、ハロ、ハロC
1−6アルキル、ハロC
3−6シクロアルキル、ハロC
2−6アルケニル、ハロC
2−6アルキニル、ハロアリール、ハロヘテロシクリル(haloheterocycylyl)、ヒドロキシ、C
1−6アルコキシ、C
2−6アルケニルオキシ、C
2−6アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボキシ、ハロC
1−6アルコキシ、ハロC
2−6アルケニルオキシ、ハロC
2−6アルキニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロC
1−6アルキル、ニトロC
2−6アルケニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アジド、アミノ、C
1−6アルキルアミノ、C
2−6アルケニルアミノ、C
2−6アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロシクリルアミノ(heterocyclamino)、アシル、C
1−6アルキルアシル、C
2−6アルケニルアシル、C
2−6アルキニルアシル、アリールアシル、ヘテロシクリルアシル(heterocycylylacyl)、アシルアミノ、アシルオキシ、アルデヒド、C
1−6アルキルスルホニル、アリールスルホニル、C
1−6アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、C
1−6アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、C
1−6アルキルスルフェニル、C
2−6アルケニルスルフェニル(C
2−6alklysulphenyl)、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、メルカプト、C
1−6アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、およびシアノ基等から選択される1以上の基で置換された基を示す。
【0033】
好ましい置換基は、C
1−4アルキル、C
3−6シクロアルキル、C
2−6アルケニル、C
2−6アルキニル、C
1−6アルキルアリール、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアリール、ハロヘテロシクリル、ヒドロキシ、C
1−4アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、C
1−6アルキルアシル、アリールアシル、ヘテロシクリルアシル、アシルアミノ、アシルオキシ、C
1−6アルキルスルフェニル、アリールスルホニル、およびシアノからなる群から選択される。
【0034】
用語「アリール」は、単一の、多核の、共役した、または縮合した芳香族炭化水素基を示す。例としては、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル、ジヒドロアントラセニル、ベンゾアントラセニル、ジベンゾアントラセニル、およびフェナントレニルが挙げられる。
【0035】
用語「5または6員環のN含有不飽和ヘテロシクリル」は、少なくとも1つの窒素を含有する不飽和の環状炭化水素基を示す。好ましいN含有ヘテロシクリル基としては、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、またはテトラゾリル等の1〜4個の窒素原子を含む5または6員環の不飽和ヘテロモノシクリル基;オキサゾリル、イソオキサゾリル、またはオキサジアゾリル等の1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む、5または6員環の不飽和ヘテロモノシクリル基;並びに、チアゾリルまたはチアジアゾリル等の1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含む、5または6員環の不飽和ヘテロモノシクリル基が挙げられる。
【0036】
好ましい実施形態において、CYT387に関連する化合物は、R
1がパラ位でモルホリニル、オルト位でHにより置換され、Zが炭素であり、且つ、R
11がH、ハロゲン、メチル、またはメトキシである化合物が挙げられる。
【0037】
特に好ましい実施形態において、R
8は−C(O)−NH−CH
2−CN、−C(O)−NH−C(CH
3)
2CN、または−NH−C(O)−CH
2−CNである。
【0038】
本発明の方法において有効なCYT387に関連する特定の化合物としては、
N−(シアノメチル)−4−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミド;
N−(シアノメチル)−3−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミド;
N−(シアノメチル)−3−メチル−4−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミド;
N−(シアノメチル)−2−メチル−4−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミド;
2−シアノ−N−(3−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ベンジル)アセトアミド;
2−シアノ−N−(3−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)フェニル)アセトアミド;
N−(シアノメチル)−4−(2−(3−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミド;
N−(シアノメチル)−4−(2−(4−チオモルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミド;
N−(シアノメチル)−4−(2−(4−(モルホリノメチル)フェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミド;
4−(5−クロロ−2−((4−モルホリノフェニル)アミノ)ピリミジン−4−イル)−N−(シアノメチル)ベンズアミド;
4−(5−ブロモ−2−((4−モルホリノフェニル)アミノ)ピリミジン−4−イル)−N−(シアノメチル)ベンズアミド;
N−(シアノメチル)−4−(2−((4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)フェニル)アミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミド;および、
N−(シアノメチル)−4−(5−メチル−2−((4−モルホリノフェニル)アミノ)ピリミジン−4−イル)ベンズアミドが挙げられる。
【0039】
本発明の方法において、CYT387または関連する化合物は、貧血またはヘモグロビンの減少を患う対象における、ヘモグロビンレベルを維持または上昇させるのに用いられる。貧血の対象は、年齢および性別が同じ健康な対象にとっての内在性ヘモグロビンレベルの正常値よりも、低い内在性ヘモグロビンレベルを有する。許容されるまたは「正常値」レベルは、現在医療現場において十分に確立されている。成人男性の場合、ヘモグロビンレベルが約13.0g/dLより低い場合に貧血と判断され、妊娠していない成人女性の場合、ヘモグロビンレベルが約12.0g/dLより低い場合に欠乏と判断される。ヘモグロビンレベルの測定は、よく確立された技術を用いて行われる。ヘモグロビンレベルが約8.0g/dLより低い場合に、重度の貧血状態と判断される。
【0040】
使用において、CYT387または関連する化合物は、対象におけるヘモグロビンレベルを維持または上昇させるのに有効な量で貧血の対象に投与される。そのため、薬剤の投与は、治療する対象におけるヘモグロビンレベルのさらなる減少を抑制する最低限の効果を有する。より望ましくは、薬剤の投与は、対象におけるヘモグロビンレベルを増加させる効果を有する。
【0041】
CYT387または関連する化合物を用いる治療により効果を得る貧血の対象としては、癌患者等の化学療法または放射線療法を受けた、または受けている対象が挙げられる。赤血球の機能化のレベルを減少させる結果を示す、多種多様な化学療法剤が知られている。同様に、CYT387治療を受ける候補としては、赤血球の数が減少することになる、または赤血球の数の減少と関連付けられる、血液癌等の血液疾患に罹患している対象が挙げられる。実施形態において、治療される対象は、骨髄異形成症候群の血液状態に関連する、または起因する貧血に罹患している対象である。骨髄異形成症候群(MDS)は、血液の血球減少および過形成性骨髄をもたらす無効造血に特徴づけられる疾患のグループを説明するのに用いられる用語である。MDSは、従来、急性骨髄性白血病(AML)への転換の高い危険性のため、「前白血病」と同義と認識されていた。AMLへの進化と血球減少の臨床結果は、MDSにおける疾病状態および死亡の主な原因である。MDSの衰弱性の症状としては、疲労感、蒼白、感染症、および出血が挙げられる。貧血、好中球減少、および血小板減少症はまた、MDSの一般的な臨床症状である。他の実施形態において、治療される対象は、他の血液系腫瘍、再生不良性貧血、赤血球に影響を与える慢性疾患の貧血等に関連する貧血としての他の血液状態に関連または起因する貧血に罹患している対象である。慢性疾患の貧血は、リンパ腫およびホジキン病等のある種の癌;慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患およびリウマチ性多発筋痛等の自己免疫疾患;尿路感染症、HIV、骨髄炎などの長期的な感染症;心不全;および慢性腎臓病等の疾患に関連する。加えて、増加した赤血球の破壊、短縮した赤血球の生存時間、および脾臓血球貯留に関連する状態に起因する貧血を患う患者もまた、CYT387治療から利益を得ることができる。そのため、これらの状態に罹患している患者は治療されて、ヘモグロビンの減少または欠乏状態を改善することができる。
【0042】
ある実施形態において、治療される対象はサラセミアを患う貧血の対象である。他の実施形態において、治療される対象はサラセミアを患う対象以外の対象である。
【0043】
実施形態において、CYT387または関連する化合物は、骨髄増殖性腫瘍等の骨髄増殖性疾患の診断をされた対象に投与され、それにより疾患の予後を改善し、実施形態において、特にその疾患に関連するヘモグロビン欠乏または減少を治療する。他の実施形態において、CYT387または関連する化合物は、骨髄増殖性疾患の診断をされた貧血の対象以外の貧血の対象に投与される。治療可能なこのクラスの対象は、骨髄増殖性疾患とは関係の貧血を呈する。
【0044】
「骨髄増殖性疾患」および「骨髄増殖性腫瘍(MPN)」、特に真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)および原発性骨髄線維症(PMF)は、骨髄由来の1以上の細胞の相対的過剰産生、in vitro(生体外)でのコロニー形成に依存性の成長因子、骨髄過形成、骨髄外造血、巨脾症、および肝肥大、および血栓性、並びに/または出血性素因等の、生物学的、病理学的、および臨床学的特性の範囲を共有する多能性造血幹細胞のクローン性疾患の、多様だが相互に関連するグループである。骨髄増殖性腫瘍の研究および治療のための国際的なワーキンググループ(IWG−MRT)は、これらの状態を線引き且つ定義することを確立しており(例えば、Vannucchiら、「CA Cancer」J.Clin.2009年、59:171〜191頁を参照)、これらの疾患の定義は、本明細書の目的のために適用される。
【0045】
対象、とりわけ、MPNおよび特にPMNに罹患しているヒトの患者は、上述したIWG−MRTの基準を用いることで当該技術分野において同定可能である。MPNの特異型の「危険性を有する」対象は、その疾患の初期型を示す対象であり、例えば、PV(>95%)、ET(60%)、およびPMF(60%)と相関するJAK2V617F対立遺伝子等の、その遺伝子マーカー(遺伝子標識)を有する対象でもよい。対象はまた、それらがすでに初期症状を呈する場合、MFN型の「危険性を有する」と見なされる。そのため、MFNに罹患している対象は、MPNに続いて進行する、ポストPVおよびポストETの両者の危険性を有する。
【0046】
MPN患者、および特にPMF患者のCYT治療に対する反応は、本発明において、彼らが以下の基準:
(i)サリドマイド、レナリドミド、ポマリドマイド、およびCYT387以外のJAK2インヒビターから選択される薬剤を用いる前治療;
(ii)(1)より小さい脾臓のサイズ、および(2)循環芽球のより低い割合、の1または両方から選択される臨床基準;
(iii)(1)EGF,TNF−α、G−CSF、IFN−α、MIP−1β、HGF、MIG、およびVEGFから選択される少なくとも1つのタンパク質の増加したレベル;(2)エオタキシンの減少したレベル;並びに(3)EPO、ヘプシジン、およびBMP−2から選択される少なくとも1つのタンパク質の変化したレベル、の1以上から選択される生物化学的マーカーの基準;
の1以上に基づくCYT387治療のために選択される患者である場合、非常に強い。
【0047】
事前の患者選択による、CYT387治療からの改善した結果は、貧血応答および/または脾臓応答における強い改善を示す。
【0048】
用語「貧血応答(anemia response)」は、患者のヘモグロビンレベルの増加、または輸血依存性だった患者が輸血非依存性になることを意味する。望ましくは、International Working Group(IWG)の承認された基準において規定された改善のレベルである、2.0g/dLのヘモグロビンの最低限の増加が、少なくとも8週間続くことが達成される。しかしながら、より低くても、医学的に有意なヘモグロビンの増加もまた、用語「貧血応答」の範囲内であると見なされる。
【0049】
用語「脾臓応答(spleen response)」は、健康診断の間においてすでに触診可能な脾臓の触診、または画像診断のいずれかにより評価される、患者の脾臓のサイズの減少を意味する。IWGの承認された基準は、ベースライン(治療前)時で少なくとも10cmである脾臓の触診可能な脾腫(脾臓肥大)における最低限50%の減少、またはベースライン時で5cmを超える触診可能な脾臓が、触診可能でなくなることのいずれかを規定している。しかしながら、より少ない減少もまた、用語「脾臓応答」の範囲内であると見なされる。
【0050】
一実施形態において、選択される患者は事前の薬剤治療を受けている。より具体的には、CYT387治療のために選択される患者としては、サリドマイド(CAS番号50−35−1)またはその誘導体、特に、レナリドミド(CAS番号191732−72−6)を用いて治療されていた、または現在治療されている患者が挙げられる。これらの薬剤はいずれも多発性骨髄腫の治療において用いられ、骨髄増殖性疾患に罹患する患者においていくつかの利点を示すとも考えられている。その後のCYT387治療によるさらなる効果を得るためには、患者はサリドマイド、レナリドミド、若しくはポマリドマイド、または同様の薬剤を用いる治療を受けているか、CYT387治療の開始に対して、これらの薬剤の効果を十分に示すタイムフレーム以内に、これらの薬剤の1つで治療されていることになる。これらの基準を満たす患者は、その後にCYT387で治療される場合、この薬剤の治療を受けていない患者と比較して、顕著な貧血応答を呈する。好ましい実施形態において、CYT387の患者は、レナリドミドを用いる前治療を受けている患者である。
【0051】
CYT387治療のために選択される患者としてはまた、CYT387以外のJAKインヒビターを用いて治療されていた、または治療を受けている患者が挙げられる。特に、INCB018424で示されるJAKインヒビター、またはTG101348で示されるJAKインヒビターを用いてすでに治療された患者は、そうした前治療を受けていない患者よりも、CYT387治療に対してより著しい脾臓応答を示す。好ましい実施形態において、CYT387治療のために選択される患者はまた、CYT387以外のJAKインヒビターを用いて治療されている患者であることに加えて、輸血依存性の患者である。INCB018424は、5mgBID(1日2回)から25mgBIDの用量漸増とともに、15〜20mgBIDの経口投与による開始用量で投与される。TG101348は、1日に1回、680mg/日として定められている最大耐量(MTD)で投与される。CYT387以外のJAKインヒビターとしては、他のすべてのJAKインヒビターが挙げられ、特にCYT387とは異なる、JAK親和性、選択性、または結合サイトを有する他のJAKインヒビターが挙げられる。これらの特性は、US7593820に開示されている、JAK2の結晶構造、モデリング法、および活性測定を用いて測定でき、参照によりこの開示のすべてが本明細書に組み込まれる。その後のCYT387治療によるさらなる効果を得るために、患者は他のJAK2インヒビターを用いる治療を受けているか、またはCYT387治療の開始に対して、JAK2インヒビターの効果を患者に十分に示すタイムフレーム以内に、こうした薬剤の1つで治療されていることになる。
【0052】
CYT387治療のために選択される患者としてはまた、検出可能なタンパク質マーカー(タンパク質標識)の変化したレベルを有する患者が挙げられる。より具体的には、特定のサイトカインおよびケモカイン等の特定のタンパク質マーカーのレベルが上昇している患者が、CYT387で治療された場合に、CYT387に対する貧血応答および/または脾臓応答の点で顕著な効果を呈し得る。実施形態において、1以上の以下のタンパク質マーカーのレベルの上昇が、CYT387治療にとって患者が好適な候補であることを表す:
(1)EGF、または上皮成長因子、Swiss−Prot表示P01133を示す配列の残基971〜1023を含む、成熟形態;
(2)TNF−α、または腫瘍壊死因子アルファ、Swiss−Prot表示P01375を示す配列の残基77〜233を含む、成熟且つ可溶性形態;
(3)G−CSF、または顆粒球コロニー刺激因子、Swiss−Prot表示P09919を示す配列の残基30〜207を含む、成熟形態;
(4)IFN−α、またはインターフェロンアルファ、その成熟形態が当該技術分野で公知である、サブタイプのファミリーを含む;
(5)MIP−1β、またはマクロファージ炎症性タンパク質1−β(現在、C−Cモチーフケモカイン4、もしくはCCL4としても知られている)、Swiss−Prot表示P13236を示す配列の残基24〜92または26〜92のいずれかを含む、成熟形態;
(6)HGF、または肝細胞増殖因子、Swiss−Prot表示P14210を示す配列に基づく成熟形態であり、残基32〜494を有するアルファ鎖と、残基495〜728を有するベータ鎖を含む;
(7)MIG、またはガンマインターフェロンにより誘導されるモノカイン(現在、CXCL9としても知られている)、Swiss−Prot表示Q07325を示す配列の残基23〜125を含む、成熟形態;
(8)VEGF、または血管内皮増殖因子A、Swiss−Prot表示P15692を示す配列の残基27〜232を含む、成熟形態。
【0053】
CYT387治療を受ける患者は、上述したマーカーの1以上のいずれかのレベルの上昇に基づいて最初に選択される場合、顕著な脾臓応答を呈する。上昇したレベルは、正常な対象におけるレベルよりも高いレベルである。
【0054】
CYT387治療を受ける患者はまた、タンパク質エオタキシンのレベルの下降に基づいて最初に選択される場合、顕著な貧血応答を呈する。好酸球走化性タンパク質(eosinophil chemotatic protein)としても知られ、Swiss−Prot表示P51671を示す配列の残基24〜97を含むこのタンパク質は、CCR3との相互作用を通して機能し、アレルゲンに応答して好酸球(esoinophils)の蓄積を促進し、アレルギー性炎症反応の著しい特性をもたらす。
【0055】
CYT387治療を受ける患者を選択するために有用なさらに他のマーカーとしては、EPO、ヘプシジン、およびBMN−2の変化するレベルが挙げられる。
【0056】
所定のマーカーの「レベル」は、所定の患者において測定されたレベルが、正常の対象における対応するレベルと、統計的に有意な程度まで異なる場合、変化した、すなわち、上昇したまたは減少したと見なされる。十分な程度、望ましくは、少なくとも0.05以上で有意なp値、すなわち、より良いp値をもたらす程度まで変化したマーカーレベルを呈する患者は、CYT387治療の候補として選択される。実施形態において、p値は少なくとも0.03、0.02、または0.01であり、好ましい実施形態において、p値は少なくとも0.009、0.007、0.005、0.003、0.001、またはより良い。
【0057】
所定のマーカーのレベルは、上述したマーカー検出のためにすでに十分確立されているアッセイを用いることにより測定できる。実施形態において、血液全体または血漿もしくは血清等の血液の一部分等の、患者候補からの生体試料を抽出することによりなされる。その後、必要があれば、対象のマーカーを濃縮するためにその試料を処理し、濃縮されたまたは適切な試料を、例えば、そのマーカーに選択的に結合するラベル化した抗体等の、そのマーカーのために検出可能なリガンドを用いてアッセイする。試料中に存在するマーカーの量は、半定量的または定量的に測定され、その後、健常な対象におけるそのマーカーの正常なレベルの参照値に対して比較される値を得ることができる。上述した通り、少なくとも0.05であるp値に達するのに十分なマーカーレベルにおける相違は、有意な変化したマーカーレベルを示し、そのマーカーの上昇したレベル(または、エオタキシンにおいては、減少したレベル)を呈する患者は、CYT387治療のための候補である。
【0058】
また、CYT387治療のための好適な候補は、比較的小さなサイズの脾臓を有する患者を含み、且つ、循環または末梢芽球の上昇したレベルを呈する患者を含む、所定の臨床基準を満たす患者である。これらの患者は、彼らの脾臓応答の点で、特によくCYT387治療に応答する。一実施形態において、選択された患者は、まだ輸血依存性まで進行していない患者である。脾臓腫大は触診により評価される。脾臓のサイズおよび容積は、超音波、CT、またはMRI等の画像診断により測定できる。正常の脾臓サイズは、頭尾長で約11.0cmである。
【0059】
また、CYT387治療のための好適な候補は、より低い循環芽球の割合を示す患者である。芽球は、通常骨髄中に検出され、末梢血液中には検出されない未熟な前駆細胞である。それらは通常成熟した血球を生じさせる。より低い割合の循環芽球は、末梢血塗抹標本の細胞形態分析、マルチパラメータフローサイトメトリー分析、および免疫組織化学的分析により計測される。予後因子として、>/=1%の芽球が用いられる。
【0060】
本発明はまた、MPNを治療するのに有効な量のCYT387を含む容器を含む、製造物品およびキットの両方を提供する。容器は、それぞれの剤形が、例えば約50mg〜400mg、例えば150mg、200mg、または300mgの量のCYT387の単位用量を含む、経口剤形のCYT387を含む単なるボトルであってもよい。キットは、CYT387治療のための対象を選択する本発明の方法を説明するプリントされた説明書をさらに含み得る。製造物品は、本発明の患者選択方法による対象の治療を示す、ラベル等を含み得る。
【0061】
本発明はまた、貧血を治療するのに有効な量のCYT387を含む容器を含む、製造物品およびキットの両方を提供する。容器は、それぞれの剤形が、例えば約50mg〜400mg、例えば150mg、200mg、または300mgの量のCYT387の単位用量を含む、経口剤形のCYT387を含む単なるボトルであってもよい。キットは、CYT387治療のための貧血の対象を選択する本発明の方法を説明するプリントされた説明書をさらに含み得る。製造物品は、貧血の対象の治療を示す、ラベル等を含み得る。
【0062】
本発明の方法の使用のために、CYT387または関連する化合物は、標準的な医薬上の慣行により処方される。
【0063】
化合物は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびアルキルアンモニウム等の薬学的に許容されるカチオンの塩;塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸等の薬学的に許容される無機酸の酸付加塩;または、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、吉草酸、およびオロチン酸等の薬学的に許容される有機酸の塩等の薬学的に許容される塩として調製され得る。アミン基の塩はまた、アミノ基の窒素原子が、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアラルキル部分等の適当な有機基を有している第四級アンモニウム塩を含んでもよい。
【0064】
一実施形態において、化合物はCYT387の二塩酸塩等のCYT387の塩酸塩である。
【0065】
化合物がキラルセンターを有している場合、その化合物は精製されたエナンチオマー若しくはジアステレオマーとして、または立体異性体のあらゆる比率の混合物として使用され得る。しかしながら、所望のレベルの効能および選択性を示す、少なくとも70%、80%、90%、95%、97.5%、または99%の好適な異性体を含む混合物が好ましい。
【0066】
CYT387または関連する化合物のプロドラッグもまた投与され得る。例えば、フリーなアミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、またはカルボン酸基を有する化合物は、プロドラッグに変換され得る。プロドラッグとしては、本発明の化合物のフリーなアミノ基、ヒドロキシ基、およびカルボン酸基に対してペプチド結合を介して共有結合する、アミノ酸残基、または2以上(例えば、2、3、もしくは4)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖が挙げられる。アミノ酸残基としては、一般的に3文字の記号で表される天然型アミノ酸が挙げられ、また、4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デモシン、イソデモシン、3−メチルヒスチジン、ノルブリン(norvlin)、ベータ−アラニン、ガンマ−アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチン、およびメチオニンスルホンも挙げられる。プロドラッグとしてはまた、薬剤化合物の置換基に共有結合する、カーボネート、カルバメート、アミド、およびアルキルエステルの化合物が挙げられる。
【0067】
化合物は、化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬的組成物として投与される。担体は、組成物の他の成分と適合性であり、対象に対して有害でないことを意味する「薬学的に許容される」ものである。組成物は、以下に示す他の治療薬を含んでもよく、例えば、医薬処方の分野で公知な技術(例えば、Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」、21版、2005年、Lippincott Williams&Wilkinsを参照)による、所望の投与方法に適した種類の従来の固体または液体の媒体または希釈剤、並びに医薬添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香味料等)を採用することにより、処方されてもよい。
【0068】
化合物は、非毒性で、薬学的に許容される媒体または希釈剤を含む単位用量処方で、あらゆる好適な方法、例えば、錠剤、カプセル、顆粒、若しくは粉末の形態等での経口投与;舌下投与;口腔投与;皮下、静脈内、筋肉内、皮内、経皮、若しくは大槽内注射または注入法(例えば、無菌注入(注射)用の水溶液、または非水溶液、または懸濁液)等の非経口投与;吸入スプレー若しくは吹送等の経鼻投与;クリーム若しくは軟膏の形態等の局所投与;溶液若しくは懸濁液の形態の眼投与;ペッサリー、タンポン、若しくはクリームの形態の膣内投与;または、座薬の形態等の直腸投与により投与され得る。化合物は、例えば、即時放出または持続放出に適した形態で投与され得る。即時放出または持続放出は、化合物を含む適した医薬組成物の使用により、または特に持続放出の場合、皮下インプラント若しくは浸透圧ポンプ等のデバイスの使用により達成される。
【0069】
投与のための医薬組成物は、通常、投薬単位形態で存在し、製薬の分野で公知のあらゆる方法により調製され得る。一般的に、これらの方法としては、式Iの化合物を、1以上の副成分を構成する担体と結合(会合)させる工程を含む。一般的に、医薬組成物は、均一且つ密接に化合物を液状の担体、もしくは微細に分けられた固体担体、またはその両者と結合させ、その後、必要に応じて、生成物を所望の剤形に形成することにより調製され得る。医薬組成物中に、化合物は疾患のプロセスまたは状態に対して所望の効果をもたらすために有効な量で含まれる。1日1回経口でデリバリーされる場合、単位用量は好ましくは50mg〜300mgの範囲内である。この量は貧血の受益者におけるヘモグロビンレベルを維持または上昇させるために有効な量である。
【0070】
医薬組成物は、望ましくは経口での使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、エマルション、ハード若しくはソフトカプセル、シロップ、またはエリキシル剤である。経口使用を意図する組成物は、医薬組成物の製造の分野に公知のあらゆる方法に従って調製することができ、そうした組成物は1以上の薬剤、例えば、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤を含み、例えば、安定で口当たりの良い製剤を医薬的にもたらす。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された式Iの化合物を含む。これらの賦形剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤;コーンスターチまたはアルギン酸等の造粒および崩壊剤;澱粉、ゼラチン、またはアカシア等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク等の潤滑剤が挙げられる。錠剤は、被膜されていなくてもよく、または消化管中での崩壊および吸収を遅らせて、これにより、より長い期間にわたる持続作用をもたらす、公知の技術により被膜されていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料が採用され得る。これらは、放出制御のための浸透性治療の錠剤を形成するために被膜されてもよい。
【0071】
経口使用のための処方は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、若しくはカオリン等の不活性な固体希釈剤と化合物を混合した、ハードゼラチンカプセルとして、または、水またはピーナッツ油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油等の油性媒体と化合物を混合した、ソフトゼラチンカプセルとして存在し得る。
【0072】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合した活性材料を含む。そうした賦形剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアカシアガム等の懸濁化剤;レシチン等の天然由来リン脂質、または、ステアリン酸ポリオキシエチレン等のアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、または、ヘプタデカエチレンオキシセタノール等の長鎖脂肪族アルコール類とエチレンオキシドとの縮合生成物、または、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート等の脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、または、ポリエチレンソルビタンモノオレエート等の脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物であり得る分散剤若しくは湿潤剤が挙げられる。水性懸濁液はまた、エチル若しくはn−プロピル、p−ヒドロキシベンゾエート等の1以上の防腐剤、1以上の着色剤、1以上の香味剤、およびスクロースまたはサッカリン等の1以上の甘味剤を含んでもよい。
【0073】
油性懸濁液は、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはココナッツ油等の植物油中、または流動パラフィン等の鉱物油中で化合物を懸濁することにより処方され得る。油性懸濁液はまた、蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコール等の増粘剤を含んでもよい。上述した通りの甘味剤および香味剤が加えられて、口当たりの良い経口製剤を提供することもできる。これらの組成は、アスコルビン酸等の抗酸化剤の添加により保存され得る。
【0074】
水の追加による水性懸濁液の調製のために好適な分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および1以上の防腐剤と混合した化合物を提供する。好適な分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤は、上記ですでに例示したものが挙げられる。甘味剤、香味剤、および着色剤等の追加の賦形剤もまた存在してもよい。
【0075】
医薬組成物は、水中油型エマルションの形態であってもよい。油相としては、オリーブ油または落花生油等の植物油、若しくは流動パラフィン等の鉱物油、またはそれらの混合物が挙げられる。好適な乳化剤としては、トラガカントガムまたはアカシアガム等の天然由来ガム、大豆、レシチン等の天然由来リン脂質、およびソルビタンモノオレエート等の脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルまたはエステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物が挙げられる。エマルションはまた、甘味剤および香味剤を含んでもよい。
【0076】
シロップおよびエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロース等の甘味剤と共に処方されてもよい。そうした処方はまた、粘滑剤、防腐剤、並びに香味および着色剤を含んでもよい。
【0077】
医薬組成物はまた、無菌の注入(注射)用の水性懸濁液または油性懸濁液の形態でもよい。この懸濁液は、上述した好適な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用いる公知技術によって処方され得る。無菌の注入用製剤は、非毒性で非経口の許容される希釈剤、例えば1,3−ブタンジオール溶液中の無菌注入用溶液または懸濁液であってもよい。採用され得る、許容される媒体および溶液としては、水、リンガー溶液、および生理食塩液が挙げられる。さらに、無菌の固定油が、溶剤または懸濁媒体として通常採用され得る。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリド等の、あらゆる無菌性の固定油が採用され得る。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が、注入可能な処方の製造において使用され得る。
【0078】
化合物は、獣医用組成物の形態で使用するために存在してもよく、こうした組成物は、例えば、当該分野で公知の方法により調製され得る。そうした採用される獣医用組成物としては:
(a)飲薬(例えば、水性若しくは非水性溶液または懸濁液)等の経口投与、外用;錠剤若しくはボーラス;飼料原料と混合するための粉末、顆粒、若しくはペレット;舌に適用するためのペースト;
(b)例えば、無菌の溶液若しくは懸濁液として、例えば皮下、筋肉内、若しくは静脈内注射による非経口投与;または、(適切な場合)乳頭経由で乳房中に懸濁液若しくは溶液が導入される、乳房内注入による非経口投与;
(c)皮膚に適用されるクリーム、軟膏、若しくはスプレーとしての局所適用;または、
(d)ペッサリー、クリーム、若しくはフォーム等としての直腸若しくは膣内投与
が挙げられる。
【0079】
同定された対象の治療において、選択された薬剤化合物の適当な単位用量は、一般的に、患者の体重1kg当たり、1日約0.01〜500mgであり、これは単回または複数回の投与で投与され得る。投与量レベルは、1日当たり約0.1から約250mg/kgであり、例えば、1日当たり約0.5から約100mg/kgである。好適な投与量レベルは、1日当たり約0.01〜250mg/kg、1日当たり約0.05〜100mg/kg、または1日当たり約0.1〜50mg/kgであり得る。この範囲内で、投与量は1日当たり0.05〜0.5、0.5〜5、または5〜50mg/kgであり得る。好適な単位用量は、典型的には10〜500mgの範囲内であり、例えば50〜400mg、例えば100、150、200、250、または300mgである。経口投与のために、組成物は好ましくは1.0〜1000ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形態で提供され、特に1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900、および1000mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供される。投与量は、例えば、治療される患者に対する症状の調整および/または治療効果のために、これらの範囲のいずれかのあらゆる用量で選択される。化合物は、好ましくは1日1〜4回の投薬計画で投与され、好ましくは1日1回または2回の投薬計画で投与される。
【0080】
一実施形態において、CYT387は1日に1回または2回、150mgまたは300mgの単位用量の錠剤で経口投与される。
【0081】
あらゆる患者のための特定の投与レベルおよび投与の頻度は、採用される特定の化合物の活性、その化合物の作用の代謝安定性および長さ、年齢、体重、健康状態、性別、食生活、投与のモードおよび時間、排出速度、薬剤の組み合わせ、特定の状態の重症度、および治療を受けるホスト等の要素の変化によって様々に変化し得ることは理解できるだろう。
【0082】
医薬組成物は、上述した病的な状態を治療するために治療上有用な他の活性化合物を更に含んでもよく、またはその活性化合物との組み合わせで投与されてもよい。併用治療に使用するための適当な薬剤の選択は、通常の薬学の法則によって、一当業者によってなされ得る。
【0083】
貧血の対象の治療のために、CYT387は、輸血、鉄分の補充、エリスロポエチンまたはダーベポエチン(darbapoietin)治療等から選択される貧血治療薬剤、化合物、またはモダリティと組み合わせて投与され得る。骨髄増殖性疾患に罹患している対象の治療ために、CYT387または関連する化合物は、サリドマイド、レナリドミド、上述したもの等の他のJAK2若しくはJAK1/2キナーゼインヒビターとの組み合わせで、ヒドロキシウレア若しくはアナグレリド、またはビスホスホネートとの組み合わせで投与され、骨髄線維症を低減し得る。同様に、そうした患者は、CYT387または関連する化合物の投薬を含む全体治療の部分として、放射線治療または同種骨髄移植を受けることができる。
【0084】
本明細書で言及したすべての文献は、参照によりここに組み込まれる。広く説明した本発明の精神または範囲から逸脱することなく、当業者により、非常に多くのバリエーションおよび/または改良が特定の実施形態に示す発明になされ得る。そのため、本実施形態は、例示であって制限的なものではないとすべての点で考慮されるべきである。
【実施例】
【0085】
CYT387は、骨髄線維症等の骨髄増殖性腫瘍として知られている血液学的条件のファミリーに関わっているだけでなく、同様に、血液性、腫瘍性、および炎症性疾患等の多くの疾患に関わっている、キナーゼ酵素JAK1およびJAK2のインヒビターである。骨髄線維症は、そのための治療の選択肢が制限される、または満足にない、患者の骨髄が瘢痕組織に置き換わる慢性消耗性疾患である。
【0086】
[CYT387の合成]
4−エトキシカルボニルフェニルボロン酸(23.11g、119mmol)、2,4−ジクロロピリミジン(16.90g、113mmol)、トルエン(230mL)、および炭酸ナトリウム水溶液(2M、56mL)の混合物を強く撹拌し、その懸濁液中に窒素で15分間バブリングした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パリジウム[0](2.61g、2.26mmol)を加えた。窒素でさらに10分間バブリングし、その混合物を100℃まで加熱し、その後、75℃で一晩保持した。その混合物を冷却し、酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(100mL)を加えて、その相を分離した。その水相を酢酸エチル(100mL)で抽出し、2つの有機抽出物を組み合わせた。その有機物を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを通して濾過し、濃縮し、得られた固形物をメタノール(100mL)と共にすりつぶし、濾過した。その固形物をメタノール(2×30mL)で洗浄し、風乾させた。この物質をアセトニトリル(150mL)およびジクロロメタン(200mL)中に溶解させ、MP.TMT Pd−スカベンジャー樹脂(パラジウム除去樹脂)(Agronautパート番号800471)(7.5g)と共に2日にわたって撹拌した。その溶液を濾過し、固形物をジクロロメタン(2×100mL)で洗浄し、フィルター濃縮してオフホワイトの固形物(17.73g、60%)として4−(2−クロロピリミジン−4−イル)安息香酸エチル(ethyl 4−(2−chloropyrimidin−4−yl)benzoate)を得た。追加のジクロロメタンによる洗浄により、さらに1.38gおよび0.5gの生成物を得た。
【0087】
4−(2−クロロピリミジン−4−イル)安息香酸エチル(26.15g、99.7mmol)および4−モルホリノアニリン(23.10g、129.6mmol)の混合物を1,4−ジオキサン(250mL)中で懸濁した。p−トルエンスルホン酸一水和物(17.07g、89.73mmol)を加えた。その混合物を40時間還流しながら加熱し、常温まで冷却し、濃縮し、その後、残留物を酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウム/水(1:1)の間(全量1L)で分離した。その有機相を水(2×100mL)で洗浄し、濃縮した。その水相をジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。この操作の間に沈殿した物質を濾過して回収し、取っておいた。液状有機物を組み合わせ、濃縮し、メタノール(200mL)と共にすりつぶし、濾過して追加の黄色固形物を得た。固形物を組み合わせて、メタノール(500mL)中に懸濁し、一晩保持し、その後超音波処理し、濾過した。その固形物をメタノール(2×50mL)で洗浄し、乾燥後、4−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)安息香酸エチル(ethyl 4−(2−(4−morpholinophenylamino)pyrimidin−4−yl)benzoate)(35.39g、88%)を得た。
【0088】
4−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)安息香酸エチル(35.39g、87.6mmol)の3:1のメタノール:テトラヒドロフラン(350mL)溶液を水(90mL)中の水酸化リチウム(4.41g、183.9mmol)で処理した。その混合物を還流しながら2時間加熱し、冷却し、濃縮し、塩酸(2M、92.5mL、185mmol)で酸性にした。黒っぽい沈殿物を濾過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥させた。その固形物を乳鉢と乳棒で挽いて粉末にし、メタノール(500mL)と共にすりつぶし、その後再度濾過して、濁った固形物として4−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)安息香酸(4−(2−(4−morpholinophenylamino)pyrimidin−4−yl)benzoic acid)を得た。この物質をエーテルで洗浄し、一晩風乾し、乳鉢と乳棒で挽いて微細に粉末化した。回収物の質量(34.49g)に基づいて、収量を定量的に見積もった。
【0089】
DMF(400mL)中の4−(2−(4−モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン−4−イル)安息香酸(理論的には32.59g、86.6mmol)の懸濁液に対し、トリエチルアミン(72.4mL、519.6mmol、6当量)を加えた。その混合物を超音波処理し、確実に溶解させた。アミノアセトニトリル塩酸塩(16.02g、173.2mmol)を加えて、続けてN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(無水物、14.04g、103.8mmol)および1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(19.92g、103.8mmol)を加えた。その懸濁液を一晩強く撹拌した。その溶媒を減圧下で揮発させ、残留物を5%の重炭酸ナトリウム(400mL)および水(300mL)で希釈し、黄色の固形物を得て、これを砕いて濾過した。その固形物を数回、1回100mLの水で洗浄し、高温のメタノール/ジクロロメタン(500mL、1:1)と共にすりつぶし、約300nLの容積まで濃縮し、冷却して濾過した。その固形物を低温のメタノール(3×100mL)、エーテル(200mL)、およびヘキサン(200mL)で洗浄し、乾燥させて、CYT387(31.69g、88%)を得た。M.p.238〜243℃。
【0090】
[CYT387の臨床結果]
高または中リスクの原発性骨髄線維症(PMF)およびポストPVまたはポスト本態性血小板血症(ET)骨髄線維症に罹患している患者におけるフェーズI用量漸増試験において、CYT387の安全性、許容性、および薬物動態学的挙動を評価するために、臨床試験を行った。2つ目の目的は、CYT387の骨髄線維症の患者に対する有利な効果を評価することであった。CYT387を、1日1回、28日サイクルで、経口投与(賦形剤なしのカプセル)で投与した。治療の3サイクル後に完全寛解を達成できなかった患者に対して、疾病の進行または容認できない毒性の存在なしに、最大耐量への増大が許された。用量制限毒性(DLT)が同定された場合、用量確認集団は、最大耐量(MTD)および/またはより低い臨床的に有効な用量で治療を開始した。
【0091】
採用が行われているフェーズI/II試験に参加した120患者のうち、36対象で結果が得られた。このうち、18患者は用量漸増フェーズからであり、18対象は続いての用量確認フェーズからであった。試験開始時に、20対象(56%)が赤血球輸血依存性であった。前治療として、10患者における他のJAKインヒビター(9および1の対象が、それぞれINCB018424およびTG101348)および9患者におけるポマリドマイドを行った。治療期間の平均値は、公表時で15(範囲4〜38)週であった。
【0092】
貧血応答および脾臓応答において、CYT387の効果の可能性のある予測(predictor)がこの試験から生じ、これらを以下の表1および2に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
[効能結果]
貧血応答:すべての貧血応答率は63%だった。貧血応答を評価した22の対象(ベースライン時でHgb<10g/dLまたは赤血球輸血依存性)のうち、事前にINCB018424で治療した4対象のうち2対象を含む、9対象(41%)が、骨髄増殖性腫瘍の研究と治療のための国際ワーキンググループ(IWG−MRT)の基準としての「臨床的改善(Clinical Improvement(CI))」を達成した。別の5対象は、輸血の必要性における>50%の減少を示した。
【0096】
脾臓サイズ減少:ベースライン時に脾腫(平均20cm;範囲10〜32cm)を有する30の評価可能な対象のうち29対象(97%)が、脾臓サイズのある程度の減少(平均9cm;範囲2〜18cm)を示した。前もってINCB018424で治療した8対象のうち3対象(38%)を含む、11対象(37%)が、触知できる脾臓サイズにおける最少50%の低減を示し、そのため、それらはIWG−MRTの基準によるCIに相当した。
【0097】
健康症状:ベースライン時に以下の症状:疲労(97%)、掻痒(22%)、寝汗(38%)、咳(13%)、骨痛(28%)、および発熱(16%)を示す患者の割合は、以下の通りになった。最後に、これらの症状における改善(完治;CR)は、それぞれ以下の通りに報告された:68%(16%CR)、86%(57%CR)、83%(75%CR)、75%(50%CR)、78%(44%CR)、および100%(100%CR)。
【0098】
更なる解析により、ヘモグロビンレベル/貧血応答に関して、対象が非常に有利にCYT387に応答したことが分った。
図1は、この研究に参加した最初の全60患者における平均のヘモグロビンを示す(最大6か月またはそれ以上)。このグラフは、CYT387が最小に投与された際の、ベースライン時からの経時的な平均のヘモグロビンを示す。ここには、IWGの基準によってベースライン時で貧血と見なされる患者である、「貧血の評価可能な」患者における直線もある。すなわち、彼らはベースライン時に<10g/dLのhgbを有するか、またはヘーズライン時に輸血依存性である。
【0099】
図2は、CYT387に対して応答する患者が、ヘモグロビンの緩やかな開始時の増加を示し、彼らがもはやRBCの輸血を受けなくなるとしても、それが維持されることを示している。もはや輸血されていないこれらの応答者は、輸血が継続されている非応答者の平均のヘモグロビンレベルよりも高い平均のヘモグロビンレベルを維持する。
【0100】
ここに示す通り、CYT387の投与は、これらの患者における明らか且つ継続的なヘモグロビンレベルの改善をもたらす。
【0101】
更なる解析により、以下が明らかになった。
【0102】
診断による暫定の応答(Interim Response by Diagnosis)
【0103】
【表3】
【0104】
前もって治療した患者における暫定の応答(Interim Response in Previously Treated Patients)
【0105】
【表4】
【0106】
最初の投与による暫定の応答−貧血応答(Interim Response by Initial Dose−Anemia Response)
【0107】
【表5】
【0108】
[毒性試験]
現在まで。36対象が毒性の評価が可能であった。最大の投与量(400mg/日)で、6対象のうち2対象が毒性制限用量(DLT)(無症候性のグレード3の高リパーゼ血症を示す1と、グレード3の頭痛を示す1は、互いに保持する薬剤を逆にできた)を呈し、結果として、最大耐量(MTD)は、300mg/日とされた。用量確認フェーズにおいて、対象は臨床的に有効であると見なされた2つの投与レベル(150mg/日(n=15)および300mg/日(n=3))のうちの1つで開始した。35対象は、要約の公表時に治療中であった:100mg/日(n=2)、150mg/日(n=20)、300mg/日(n=10)、および400mg/日(n=3)。
【0109】
CYT387の許容性は良好であった。グレード4の非血液毒性は認められなかった。グレード3の非血液有害事象はまれであり、増加したトランスアミラーゼ(n=2)、増加したアルカリホスファターゼ(n=2)、頭痛/頭部の圧迫感(head pressure)(n=2)、増加したリパーゼ(n=1)、およびQTcの延長(n=1)を含んでいた。13対象(36%)がグレード1の立ちくらみおよび低血圧を特徴とする「最初の投与効果」を示したが、この症状は自己限定的であり、一般的に、ほとんど再発することなく3〜4時間以内に改善した。グレード3/4の血小板減少症が8対象(22%)に確認され、緊急治療性のグレード3の貧血が1対象のみ(3%)に確認された。緊急治療性のグレード3/4の好中球減少は確認されなかった。