特開2015-21231(P2015-21231A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015021231-杭打機 図000003
  • 特開2015021231-杭打機 図000004
  • 特開2015021231-杭打機 図000005
  • 特開2015021231-杭打機 図000006
  • 特開2015021231-杭打機 図000007
  • 特開2015021231-杭打機 図000008
  • 特開2015021231-杭打機 図000009
  • 特開2015021231-杭打機 図000010
  • 特開2015021231-杭打機 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-21231(P2015-21231A)
(43)【公開日】2015年2月2日
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/16 20060101AFI20150106BHJP
   E21B 15/00 20060101ALI20150106BHJP
【FI】
   E02D7/16
   E21B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-147810(P2013-147810)
(22)【出願日】2013年7月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂光
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 幸洋
【テーマコード(参考)】
2D050
2D129
【Fターム(参考)】
2D050EE10
2D050EE14
2D050EE24
2D129AA00
2D129AB16
2D129BA13
2D129CA13
2D129CA24
2D129CA25
2D129CA26
2D129DC01
2D129DC13
2D129DC17
2D129DC62
(57)【要約】
【課題】倒伏したリーダを起こす際に誤操作でのシリンダの破損を防止することが可能な杭打機の提供。
【解決手段】リーダ130を起立状態と倒伏状態とに切り替え可能に備え、リーダ130は作業装置140を備える下部リーダ133を折り曲げ可能に有し、下部リーダ133の折り曲げには下部リーダ屈伸シリンダ133bを用い、下部リーダ屈伸シリンダ133bの駆動に油圧回路150を有する杭打機100において、下部リーダ屈伸シリンダ133bが前進端まで伸びて、リーダ130に対して下部リーダ133を折り曲げた状態で、下部リーダ屈伸シリンダ133bの油圧回路150は下部リーダ133に一定の力が作用したときに、下部リーダ屈伸シリンダ133bの内部にかかる油圧を所定の範囲に収まるよう調整する油圧調整機構となるリリーフ弁156を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダを起立状態と倒伏状態とに切り替え可能に備え、前記リーダは作業装置を備える下部リーダを折り曲げ可能に有し、前記下部リーダの折り曲げにはシリンダを用い、前記シリンダの駆動に油圧回路を有する杭打機において、
前記シリンダが前進端まで伸びて、前記リーダに対して前記下部リーダを折り曲げた状態で、前記シリンダの油圧回路は前記下部リーダに一定の力が作用したときに、前記シリンダ内部にかかる油圧を所定の範囲に収まるよう調整する油圧調整機構を備えること、
を特徴とする杭打機。
【請求項2】
請求項1に記載の杭打機において、
前記油圧調整機構は、前記油圧回路に、前記シリンダの前進側回路にリリーフ弁が接続され、前記シリンダの後退側回路にチェック弁及び油タンクが接続され、
前記リリーフ弁が、前記前進側の油圧が設定圧力以上になった場合に、前記リリーフ弁を開放すること、
を特徴とする杭打機。
【請求項3】
請求項2に記載の杭打機において、
前記リリーフ弁に、前記リリーフ弁が作動した際に、警報が作動する警報手段を備えること、
を特徴とする杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダを倒伏状態とし、下部リーダを折り曲げて搬送するタイプの杭打機を、現場にてリーダを起立状態とする場合に、安全にリーダを起立状態にする為の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機の大きさは、現場にあわせて必要とされる大きさが異なる。杭打機に用いるリーダは、杭打機が大型である場合には分解して搬送し、小型である場合には折り曲げて搬送するケースが多い。
【0003】
特許文献1では、杭打機のリーダ組換方法についての技術が開示されている。杭打機運用にあたって、長尺仕様と短尺仕様に組換えることが出来る杭打機であり、運送にあたっては、杭打機より上部リーダと中間リーダを取り外し、作業装置(オーガー)を下部リーダに取り付けたままベースマシンに斜めに倒伏させた状態としている。大型の杭打機ではこの様に分割数を多くすることで、可搬性を向上させている杭打機が多い。
【0004】
特許文献2では、杭打機のリーダ支持構造についての技術が開示されている。特許文献3では、杭打機についての技術が開示されている。特許文献2及び特許文献3の何れに公開されている杭打機も、運送時には上部リーダを分解して取り外し、中間リーダをベースマシン側に倒す構成となっており、その際に下部リーダは同じ姿勢を保っている。中間リーダの起立、倒伏はバックステーシリンダーを用いている。搬送時には、ベースマシンにリーダを倒伏した状態で搬送することが可能である。ただし、特許文献3に示すような弾性材や当接部材などを必要とするケースがある。
【0005】
特許文献4では、杭打機及び杭打機のリーダ倒伏方法についての技術が開示されている。この杭打機の場合、上部リーダを中間リーダから取り外さず、折り曲げることで短くし、一方、下部リーダに関しても中間リーダから折り曲げて短くすることで、搬送状態としている。
【0006】
このように、杭打機は大きさや用途によって様々な形があるが、一般的には大型のタイプはリーダを分解して運び、中型のタイプはリーダを折り畳んで運び、小型のタイプはリーダを倒伏して運ぶケースが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−47995号公報
【特許文献2】特開2007−23640号公報
【特許文献3】特開2005−282062号公報
【特許文献4】特開2003−41584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、現場によっては大型のタイプが使いたいけれども、杭打機のベースマシンの大きさや小回り性能などの要求から、中型よりちょっと大きめの杭打機を必要とするケースがあり、場所の限られるビル建設現場などでは、そうしたタイプが重宝される。この場合、上部リーダは取り外し、下部リーダは折り曲げて搬送するのが望ましいが、特許文献4にはどのような方法で中間リーダから下部リーダを折り曲げているかは記載が無く、特許文献2及び特許文献3の方式では、バックステーシリンダーを縮めることで下部リーダから中間リーダを折り曲げる構成となっている。
【0009】
しかし、特許文献2又は特許文献3に記載の方式の場合、バックステーシリンダーの操作を誤って、バックステーシリンダーを伸ばしすぎると、中間リーダと下部リーダとの間で干渉し、搬送用リンク又はリーダを破損する虞がある。この為、特許文献3ではそれを防止するために緩衝材として機能する弾性部材が設けられている。が、この様な部品を取り付けるコストや、消耗品であるため定期的に交換が必要となるため、コスト増大を招く虞がある。また、杭打機の運用時には中間リーダと下部リーダとの連結をボルトなどで行う事が好ましいが、ベースマシンに近い側は手が入りにくく作業性が悪い等の問題がある。
【0010】
この為、出願人は後述する図3及び図4に示すように、上部リーダを取り付けた中間リーダをバックステーシリンダーによって倒伏状態から斜めに傾けた状態とし、一方の中間リーダから折り曲げられた下部リーダも伸ばす方法を提案している。この様に、ベースマシンに対して所定の角度でリーダを保持する事で、下部リーダと中間リーダとの連結作業性を向上させることが可能となる。が、一方で、下部リーダが中間リーダから折れ曲がった状態でバックステーシリンダーを伸ばして中間リーダを倒伏状態から起こすと、その途中で下部リーダがベースマシンや地面に干渉してしまうという問題もある。
【0011】
このような問題は、中間リーダを起こしつつ下部リーダも伸ばす、といった作業をオペレータに要求する為に起こりうる。そして、この様な誤操作により、場合によっては地面やベースマシンに下部リーダが干渉した影響で、中間リーダから下部リーダを伸ばす為に設けられたシリンダの内圧が上昇、或いは降下し、シリンダチューブやシール材などを破損する虞がある。
【0012】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、倒伏したリーダを起こす際に誤操作でのシリンダの破損を防止することが可能な杭打機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による杭打機は、以下のような特徴を有する。
【0014】
(1)リーダを起立状態と倒伏状態とに切り替え可能に備え、前記リーダは作業装置を備える下部リーダを折り曲げ可能に有し、前記下部リーダの折り曲げにはシリンダを用い、前記シリンダの駆動に油圧回路を有する杭打機において、前記シリンダが前進端まで伸びて、前記リーダに対して前記下部リーダを折り曲げた状態で、前記シリンダの油圧回路は前記下部リーダに一定の力が作用したときに、前記シリンダ内部にかかる油圧を所定の範囲に収まるよう調整する油圧調整機構を備えること、を特徴とする。
【0015】
上記(1)に記載の態様により、下部リーダに取り付けられる作業装置(オーガー)を破損、或いはシリンダの破損を防ぐことが可能となる。これは、課題に示した通り、杭打機を搬送する際にリーダを倒伏状態とし、下部リーダを折り曲げた状態とし、作業現場にて杭打機のリーダを起立状態にする際に、下部リーダを曲げた状態でリーダを起こしてしまい、下部リーダに取り付けられる作業装置(オーガー)を破損、或いはシリンダを破損するような問題が生じる。
【0016】
これは、下部リーダがシリンダ前進端にて中間リーダに対して折り曲げられる位置に在る為で、下部リーダに外力が作用することでシリンダ内圧が上昇してしまう結果となり、作業装置、シリンダ、油圧系統、下部リーダと中間リーダとを回動可能に支持するヒンジ部分等のうち最も弱い部分から破損する虞がある。これを回避するために、下部リーダに一定の力が作用した際に、シリンダ内部に係る油圧を所定の範囲に収まるよう調整する油圧調整機構を備えている。この結果、下部リーダ、シリンダ、又は作業装置等の破損を防ぐことが可能となる。
【0017】
(2)(1)に記載の杭打機において、前記油圧調整機構は、前記油圧回路に、前記シリンダの前進側回路にリリーフ弁が接続され、前記シリンダの後退側回路にチェック弁及び油タンクが接続され、前記リリーフ弁が、前記前進側の油圧が設定圧力以上になった場合に、前記リリーフ弁を開放すること、が好ましい。
【0018】
上記(2)に記載の態様により、前進側回路にリリーフ弁を設けておくことで、前進端にあるシリンダに外圧が付与されてシリンダ内の前進側回路内の油圧が高まったときに、所定の圧力以上になったことを条件として油圧を下げることが可能となる。一方、後退側回路にチェック弁が設けられていることで、後退側回路が損傷して油が漏れた場合にも、シリンダ内圧を維持してシリンダが動かない様にする、即ち下部リーダが動くことを止めることができる。また、後退側回路に油タンクを設けておくことで、シリンダ内圧が変化したときに油タンクより油を供給することができ、シリンダなどの破損を防ぐことが可能である。
【0019】
(3)(2)に記載の杭打機において、前記リリーフ弁に、前記リリーフ弁が作動した際に、警報が作動する警報手段を備えること、が好ましい。
【0020】
上記(3)に記載の態様により、リリーフ弁が作動することで警報手段が下部リーダに負荷がかかっていることを警報が作動することで、オペレータに知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の、杭打機の側面図である。
図2】本実施形態の、作業装置と上部リーダとを外した状態の杭打機の側面図である。
図3】本実施形態の、リーダを起こしている杭打機の側面図である。
図4】本実施形態の、リーダを起こし、下部リーダを伸ばした杭打機の側面図である。
図5】本実施形態の、下部リーダの動きを表す側面図である。
図6】本実施形態の、下部リーダ屈伸シリンダに繋がる油圧回路図である。
図7】本実施形態の、下部リーダを曲げたままリーダを起こした杭打機の様子を示す側面図である。
図8】本実施形態の、図7の下部リーダ付近の拡大図である。
図9】比較のために用意した、油圧回路示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
図1に、本実施形態の杭打機100の側面図を示す。図2に、作業装置140と上部リーダ131とを外した状態の杭打機100の側面図を示す。杭打機100は、下部走行体110の上部に作業機部120が備えられ、作業機部120に備えられたリーダ130を立設し、作業装置140によって掘削作業を行うことができる機械である。
【0024】
作業機部120にはアウトリガー121が備えられ、作業時にはアウトリガー121を広げて転倒防止する事ができる。リーダ130は、上部リーダ131、中間リーダ132、及び下部リーダ133よりなり、中間リーダ132が作業機部120に取り付けられている。杭打機100を搬送する場合には図2に示すような状態で、中間リーダ132より上部リーダ131を取り外し、下部リーダ133を折り曲げた状態で行う。この際に下部リーダ133に取り付けられている作業装置140は取り外した状態となっている。
【0025】
図3に、リーダ130を起こしている杭打機100の側面図を示す。図4に、リーダ130を起こし、下部リーダ133を伸ばした杭打機100の側面図を示す。中間リーダ132には上部リーダ131が接続されており、作業機部120に設けられた第1リーダ起立シリンダ122は中間リーダ132の背面にリンクを介して接続されており、第1リーダ起立シリンダ122を伸ばすことで、中間リーダ132の下部に設けられるリーダ支点135を中心に、図3に示される様にリーダ130を起こすことができる。
【0026】
第1リーダ起立シリンダ122を伸ばしきった状態が図4に示されており、ここから更にリーダ130の姿勢を起こすには、第1リーダ起立シリンダ122とは別に設けられる第2リーダ起立シリンダ123を用いる必要がある。第2リーダ起立シリンダ123は作業機部120に2本設けられており、これを伸ばすことでリーダ130を地面に対して垂直に保持する事が可能となる。
【0027】
一方、下部リーダ133は中間リーダ132に対して直角に折れ曲がる構造となっている。図5に、下部リーダ133の動きを表す側面図を示す。下部リーダ133には下部リーダ屈伸シリンダ133bが備えられ、下部リーダ屈伸シリンダ133bが伸縮することで下部リーダ支点133aを中心に下部リーダ133が中間リーダ132に対して折れ曲がる。下部リーダ支点133aの前進端にいるときには、下部リーダ133は中間リーダ132に対して90度に折れ曲がり、下部リーダ屈伸シリンダ133bの後退端にいるときは、下部リーダ133は中間リーダ132に対して真っ直ぐな位置に配置される。この状態で、ボルトなどを用いて中間リーダ132に下部リーダ133を固定し、作業装置140を昇降しての掘削作業を行う。
【0028】
図6に、下部リーダ屈伸シリンダ133bに繋がる油圧回路図を示す。下部リーダ屈伸シリンダ133bにはロッド側ポート133Aとボトム側ポート133Bとが備えられ油圧回路150に接続されている。ロッド側ポート133A側には、流量調整弁151と、シングルオペレートチェック弁152とが接続され、方向切替弁155の第1ポート155Aに接続されている。なお、第1ポート155Aから分岐された配管には油タンク154とチェックバルブ153が備えられている。一方、方向切替弁155に設けられた第2ポート155Bに接続されるのは、シングルオペレートチェック弁152とボトム側ポート133Bとの間に配置される流量調整弁151と、リリーフ弁156である。リリーフ弁156の先には、油タンク154が接続されている。
【0029】
方向切替弁155のPポートには図示しない油圧ポンプが接続され、Tポートには図示しない油タンクが接続されている。方向切替弁155は3ポジションのセンタクローズタイプなので、下部リーダ屈伸シリンダ133bを前進端側に移動させたいときには、Pポートを第2ポート155Bに接続して下部リーダ屈伸シリンダ133bのボトム側ポート133Bに油を供給する。一方、下部リーダ屈伸シリンダ133bを後退端側に移動させたいときには、Pポートを第1ポート155A側に接続して下部リーダ屈伸シリンダ133bのロッド側ポート133Aに油を供給する。こうすることで、下部リーダ133を曲げ伸ばしすることが可能となる。
【0030】
杭打機100は上記構成であり、以下のような手順で作業準備を行う。まずは、図2の状態で杭打機100は図示しないトレーラなどを用いて搬送され、作業現場に到着次第、下部リーダ133に作業装置140を取り付け、中間リーダ132に上部リーダ131をボルトで固定する。この作業は、必要に応じてアウトリガー121を用いることが好ましい。
【0031】
その後、図3に示すように作業機部120に備えられる第1リーダ起立シリンダ122を伸ばすと同時に、下部リーダ屈伸シリンダ133bを縮めることで曲がった状態の下部リーダ133を伸ばしていく。図4の状態まで、即ち第1リーダ起立シリンダ122を伸ばし、下部リーダ屈伸シリンダ133bを後退端まで移動させて下部リーダ133を伸ばした状態で、下部リーダ133と中間リーダ132とをボルト止めする。このように、第1リーダ起立シリンダ122の操作と下部リーダ屈伸シリンダ133bの操作とを交互に行って、リーダ130を起していく、この後、第2リーダ起立シリンダ123を伸ばしてリーダ130を直立状態とする。こうして杭打機100による地面50の掘削作業が可能な状態となる。
【0032】
本実施形態は上記構成であるので、以下に説明する作用及び効果を奏する。
【0033】
まず、倒伏したリーダ130を起こす際に誤操作で下部リーダ屈伸シリンダ133bの破損を防止することが可能となる点が効果として挙げられる。これは、本実施形態の杭打機100が、リーダ130を起立状態と倒伏状態とに切り替え可能に備え、リーダ130は作業装置140を備える下部リーダ133を折り曲げ可能に有し、下部リーダ133の折り曲げには下部リーダ屈伸シリンダ133bを用い、下部リーダ屈伸シリンダ133bの駆動に油圧回路150を有する杭打機100において、下部リーダ屈伸シリンダ133bが前進端まで伸びて、リーダ130に対して下部リーダ133を折り曲げた状態で、下部リーダ屈伸シリンダ133bの油圧回路150は下部リーダ133に一定の力が作用したときに、下部リーダ屈伸シリンダ133bの内部にかかる油圧を所定の範囲に収まるよう調整する油圧調整機構となるリリーフ弁156を備える構成となっている為である。
【0034】
図7に、下部リーダ133を曲げたままリーダ130を起こした杭打機100の様子を側面図に示す。図8に、図7の下部リーダ133付近の拡大図を示す。図7及び図8に示される杭打機100は、下部リーダ133を曲げた状態で、リーダ130を第1リーダ起立シリンダ122によって起こしている状態である。通常は、前述した通り下部リーダ133を伸ばしながらリーダ130を起こす必要があるが、このケースでは、作業装置140が下部リーダ133に取り付けられた状態で、下部リーダ133は中間リーダ132に対して曲げられたまま第1リーダ起立シリンダ122によって起こされている。
【0035】
この結果、図8に示すように、作業装置140が地面50に干渉したり、下部リーダ133が作業機部120又はアウトリガー121等に干渉したりするなどの問題が生じる。
この際に、下部リーダ133に備える下部リーダ屈伸シリンダ133bが縮まろうとする力が発生する。この結果、図6に示すように下部リーダ屈伸シリンダ133bに接続される油圧回路150のボトム側ポート133B側の内圧が上昇する。しかし、ボトム側ポート133Bから第2ポート155Bまでのラインにはリリーフ弁156が設けられており、内圧が所定の圧力以上になった所で、リリーフ弁156が作動して油タンク154に油が放出される。この結果、下部リーダ屈伸シリンダ133bや油圧回路の損傷を防ぐことが可能となる。
【0036】
図9に、比較のために用意した油圧回路160を回路図に示す。従来は、油圧回路160のように、方向切替弁155と下部リーダ屈伸シリンダ133bの間には、ダブルオペレート弁158が設けられていた。これは、第2ポート155Bからダブルオペレート弁158までが、チューブ159によって接続されており、この部分が損傷した場合に、下部リーダ屈伸シリンダ133bの位置が変動しないように配慮されているためである。
【0037】
しかしながら、図7及び図8のような状況が発生すると、図9で示す油圧回路160の一部である、ダブルオペレート弁158と第1ポート155Aとの間の内圧は低下し、一方のダブルオペレート弁158と第2ポート155Bの間の内圧は上昇してしまう。この結果、下部リーダ屈伸シリンダ133bやダブルオペレート弁158等の油圧機器にダメージが生じる虞があり、最悪の場合破損してしまう。
【0038】
この様な事態を防ぐために、本実施形態では油圧回路150に設けられるリリーフ弁156等、所定の圧力が発生した場合には油圧を下げる働きをする油圧調整機構を備えることで、下部リーダ屈伸シリンダ133bや第2チューブ159b等の破損を防ぐことが可能となる。作業中にこの様な油圧回路の破損が生じてしまうと、仕事が続けられなくなるため、油圧調整機構を備えることでこの様な事態を回避することが可能である。
【0039】
また、油圧調整機構としてリリーフ弁156の他に、シングルオペレートチェック弁152や油タンク154等を設けている。この為、シングルオペレートチェック弁152の働きによって下部リーダ屈伸シリンダ133bのロッド側の油圧は抜けることなく、下部リーダ133が非意図的に曲がる方向に動くことを防ぐことができる。また、下部リーダ屈伸シリンダ133bのボトム側の油圧が上昇した際に、リリーフ弁156が開放される一方で、下部リーダ屈伸シリンダ133bのロッド側の油圧が低下するのを、油タンク154から油を供給することで防いでいる。いずれの構成も、油圧回路150の保護に貢献することができる。
【0040】
また、リリーフ弁156が作動することを検出する図示しないセンサを設け、センサがリリーフ弁156の作動を確認して、警報手段、例えば杭打機100のオペレータの操作する操作パネルに異常を報告したり、ブザーが鳴るような警報装置を備えたりすることで、いち早くオペレータに異常を知らせ、操作を止めて確認を促すことができる。この結果、間違った手順での操作を行ったとしても杭打機100の破損を最小限に抑えることが可能となる。
【0041】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。例えば、油圧回路150はこれと同等の機能を果たす回路であれば、他の構成を採用することを妨げない。又、杭打機100についても、上部リーダ131を中間リーダ132に対して折り曲げる方式など、異なる構成の杭打機100に本発明を採用することを妨げない。
【符号の説明】
【0042】
100 杭打機
110 下部走行体
120 作業機部
121 アウトリガー
122 第1リーダ起立シリンダ
123 第2リーダ起立シリンダ
130 リーダ
131 上部リーダ
132 中間リーダ
133 下部リーダ
133a 下部リーダ支点
133b 下部リーダ屈伸シリンダ
135 リーダ支点
140 作業装置
150 油圧回路
151 流量調整弁
152 シングルオペレートチェック弁
153 チェックバルブ
154 油タンク
155 方向切替弁
156 リリーフ弁
158 ダブルオペレート弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9