特開2015-212313(P2015-212313A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-212313架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体及び架橋ポリマーゲル−特別構造処理体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212313(P2015-212313A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体及び架橋ポリマーゲル−特別構造処理体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20151030BHJP
   C08J 3/28 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08J3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-94421(P2014-94421)
(22)【出願日】2014年5月1日
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】青柳 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】荏原 充宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA52
4F070AC17
4F070AC39
4F070AE08
4F070AE23
4F070CB14
4F070GA04
4F070HA02
4F070HB03
4J002CH051
4J002CH052
4J002DD077
4J002EE036
4J002FD146
4J002FD207
4J002GB00
4J002GE00
(57)【要約】
【課題】本発明は、所望の立体的形状で一体化され容易に剥離しない傾斜ハイドロゲル及び安価で簡便な前記傾斜ハイドロゲルの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】原料を水中で混合し、配位結合性ポリマーのネットワーク構造の空隙に水と架橋性ポリマーを内包させた架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル作成工程と、切断等の処理をする架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体作成工程と、光照射等する架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体作成工程と、リン酸水溶液等に浸漬する架橋ポリマーゲル−処理体作成工程を有する架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法を用いることにより、前記課題を解決できる。
【選択図】図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位結合性ポリマーと、架橋性ポリマーと、金属イオンと、光開始剤を水中で混合して、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包させたゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包させた架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを作成する工程と、
前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを、切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をして、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、
前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を加熱又は光照射し、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、
前記架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を水又はリン酸水溶液に浸漬して、架橋ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、を有することを特徴とする架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【請求項2】
前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを切断処理して、帯状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【請求項3】
前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを帯状に切断してから、棒状型部材に巻き付ける変形処理して、らせん状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【請求項4】
前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを帯状に切断し、棒状型部材に重ね合わせて巻き付ける変形処理をしてから、放置して、重ね合わせた部分を接合する接合処理して、筒状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【請求項5】
前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを切断処理して、平面視扇状の板状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【請求項6】
前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを分子量又は含有タンパク質濃度の異なるように作成し、切断処理して、平面視扇状の板状部材に加工処理してから、平面視扇状の板状部材を接触させて円板状とした第1の円板状部材と、平面視扇状の板状部材を接触させて円板状とした第2の円板状部材とを重ね合わせ、放置して、接触させた部分と重ね合わせた部分をそれぞれ接合する接合処理して、円柱状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【請求項7】
金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルであって、
前記空隙に架橋性ポリマーも内包することを特徴とする架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
【請求項8】
前記配位結合性ポリマーの主鎖がポリエチレンアルコール誘導体であることを特徴とする請求項7に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
【請求項9】
前記ポリエチレンアルコール誘導体が4分岐ポリエチレングリコール(4−arms−PEG)であることを特徴とする請求項8に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
【請求項10】
前記配位結合性ポリマーの配位結合部がリン酸基であることを特徴とする請求項7に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
【請求項11】
前記架橋性ポリマーの架橋部が、熱又は光架橋性官能基であることを特徴とする請求項7に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
【請求項12】
前記熱又は光架橋性官能基がアクリレート基であることを特徴とする請求項11に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
【請求項13】
金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋性ポリマーも内包するゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であることを特徴とする架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体。
【請求項14】
金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋により互いに連結されてネットワーク構造が形成された架橋ポリマーも内包されているゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であることを特徴とする架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体。
【請求項15】
架橋により互いに連結された架橋ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であって、特別構造が備えられていることを特徴とする架橋ポリマーゲル−特別構造処理体。
【請求項16】
前記特別構造が、中空構造を備えている構造であることを特徴とする請求項15に記載の架橋ポリマーゲル−特別構造処理体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体及び架橋ポリマーゲル−特別構造処理体に関する。
【背景技術】
【0002】
ティッシュエンジニアリングにおける細胞培養足場は、人体に近い条件の材料で形成することが望ましいとされている(非特許文献1)。人体に近い条件の材料の一つに、傾斜材料がある。傾斜材料とは、一端側から他端側に向けて一の物性が変化するように形成された材料であり、例えば、一端側で硬く、他端側で柔らかく、一端側から他端側に向けて硬さが連続的に変化するように形成された材料や、一端側でタンパク質濃度が高く、他端側で低く、一端側から他端側に向けてタンパク質濃度が連続的に変化するように形成された材料等がある。
【0003】
例えば、一方向に含有タンパク質量およびゲルの硬さが傾斜するように制限して作製された傾斜ハイドロゲル(Gradient hydrogel)がある。スクロースやアガロースなどの高分子糖類の濃厚溶液に、光架橋高分子であるポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(poly(ethylene glycol)diacrylate:PEGDA)を溶解させた溶液を調製してから、これをハイドロゲル前駆溶液として、含有タンパク質濃度およびゲル硬さを段階的に変化させたゲルが作成されている(非特許文献2)。
【0004】
図1は、傾斜ハイドロゲルの一例を示す模式図である。
傾斜ハイドロゲル11は円柱形状であり、底面側から円板状部分11a〜11eが5層積層されて構成されている。底面側の円板状部分11aの含有タンパク質濃度が一番濃く、順次濃度が薄くなるように、各円板状部分が積層されている。
傾斜ハイドロゲル11は、まず、円筒形の容器に濃厚溶液を注ぎいれてから、順次、濃度の薄い溶液を静かに注ぎいれることにより、界面を保持して、濃度の異なる溶液層を形成でき、これをゲル化して形成できる。
【0005】
図2は、傾斜ハイドロゲルの別の一例を示す模式図である。
傾斜ハイドロゲル12は円板形状であり、部分12a〜12eが5層積層されて構成されている。部分12aの含有タンパク質濃度が一番濃く、順次濃度が薄くなるように、各部分が積層されている。
傾斜ハイドロゲル12は、まず、円板形の容器の一側面側から濃厚溶液を注ぎいれてから、順次、濃度の薄い溶液を静かに注ぎいれることにより、界面を保持して、形成できる
【0006】
また、タンパク質濃度勾配を設けた傾斜ハイドロゲルの細胞培養足場への応用も検討されている(非特許文献3)。しかし、この細胞培養足場は、界面剥離が容易に生じ、強度が弱いことが欠点として報告されている(非特許文献4)。
【0007】
傾斜ハイドロゲルの別の作製方法として、光リソグラフィー法が報告されている(非特許文献5)。しかし、この方法は、高価な装置を用いる構成なので、製造コストがかかるという問題ある。また、マイクロ流路を用いる方法も報告されている(非特許文献6)。しかし、この方法は煩雑で、製造が容易でないという問題ある。
【0008】
また、以上に示す方法では、一つの材料の中で隣接する部分で傾斜方向が逆行するような傾斜ハイドロゲルは作成できなかった。例えば、分子量が大きい部分が局所的に複数存在し、分子量が大きい部分から小さい部分に傾斜した領域がランダムに複数存在するような傾斜ハイドロゲルは作成できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−234292号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】A.Khademhosseini and Rlanger,Biomaterials,2007,28,5087−5092.
【非特許文献2】J.V.Karpiak,Y.Ner and A.Almutairi,Adv.Mater.,2012,24,1466−1470.
【非特許文献3】S.Kixilel,E.Sawardecker,F.Teymour and V.H.Perez−Luna,Biomaterials,2006,27,1209−1215.
【非特許文献4】J.P.Gleghorn,C.S.D.Lee,M.Cabodi,A.D.Stroock,L.J.Bonassar,J.Biomed.Mater.Res.Part A,2007,85A,611−618.
【非特許文献5】M.S.Hahn,J.S.Miller and J.L.West,Adv,Mater.,2005,17,2929−2942.
【非特許文献6】S.Cosson,S.A.Kobel and M.P.Lutolf,Adv.Mater.,2009,19,3411−3419.
【非特許文献7】T.Sato,M.Ebara,S.Tanaka,T.Asoh,A.Kikuchi,T.Aoyagi,Phys.Chem.Chem.Phys.,2013,15 10628−10635
【非特許文献8】M.George et al.Langmuir 2006,22,7885−7893
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、所望の立体的形状で、一体化され、容易に剥離しない傾斜ハイドロゲル、及び、安価で、簡便な前記傾斜ハイドロゲルの製造方法を提供することを課題とする。特に、一つの材料の中で傾斜方向が互いに逆行する領域や、傾斜した領域がランダムに複数存在するような傾斜ハイドロゲル及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
上記事情を鑑みて、本発明者は、自ら開発したインジェクタブルハイドロゲル(特許文献1、非特許文献7)を用い、これに光架橋高分子を含有させることにより、上記課題を解決できるのではないかということに想到した。前記インジェクタブルハイドロゲルは、末端リン酸基を有する分岐ポリエチレングリコールを多価(金属)イオンで架橋し、架橋部において平衡的に架橋と解離が行われるために、ゲル同士を接触させたときに界面で再架橋が行われ、ゲル同士を接着・一体化するという自己修復機能(Self mendingfunction)を有する。なお、PEGの末端リン酸基がV3+とクロスリンクしたハイドロゲルが形成されている(非特許文献8)。そこで、試行錯誤することにより、(1)自己修復機能を有するゲルを構成単位として所望の3次元構造体をジグソーパズルのように組み合わせてから、自己修復させることにより、界面が接合され、界面が消失し、一体化された複雑な形状の3次元構造体ゲルを作成できること、(2)構成単位を、所定の分子量で作成することにより、複雑な形状の3次元構造体ゲルを構成する局所的な複数の部分のみの分子量を他の部分より大きくすることができ、1構造体内で複雑な分子量勾配領域を形成した3次元構造体ゲルを作成できること、(3)3次元構造体ゲルの自己修復機能は、架橋部環境を制御することにより制御自在であり、例えば、3次元構造体ゲルの架橋部は、架橋部のまわりのH濃度又はリン酸濃度を制御することにより、架橋・解離自在であること、(4)この3次元構造体を型として用いることができること、つまり、光架橋高分子を混合した状態で3次元構造体を作成してから、光架橋高分子のみを光架橋(Photo−cross−linking)反応させて、3次元構造体の内部に架橋ゲルを作成してから、型である3次元構造体を取り除くこと(Deformation)により、複雑な3次元形状の架橋ゲルを作成できることを見出して、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0013】
(1) 配位結合性ポリマーと、架橋性ポリマーと、金属イオンと、光開始剤を水中で混合して、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包させたゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包させた架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを作成する工程と、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを、切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をして、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を加熱又は光照射し、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、前記架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を水又はリン酸水溶液に浸漬して、架橋ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、を有することを特徴とする架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【0014】
(2) 前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを切断処理して、帯状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする(1)に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
(3) 前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを帯状に切断してから、棒状型部材に巻き付ける変形処理して、らせん状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする(1)に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
(4) 前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを帯状に切断し、棒状型部材に重ね合わせて巻き付ける変形処理をしてから、放置して、重ね合わせた部分を接合する接合処理して、筒状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする(1)に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【0015】
(5) 前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを切断処理して、平面視扇状の板状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする(1)に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
(6) 前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを分子量又は含有タンパク質濃度の異なるように作成し、切断処理して、平面視扇状の板状部材に加工処理してから、平面視扇状の板状部材を接触させて円板状とした第1の円板状部材と、平面視扇状の板状部材を接触させて円板状とした第2の円板状部材とを重ね合わせ、放置して、接触させた部分と重ね合わせた部分をそれぞれ接合する接合処理して、円柱状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成することを特徴とする(1)に記載の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法。
【0016】
(7) 金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包することを特徴とする架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
(8) 前記配位結合性ポリマーの主鎖がポリエチレンアルコール誘導体であることを特徴とする(7)に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
(9) 前記ポリエチレンアルコール誘導体が4分岐ポリエチレングリコール(4−arms−PEG)であることを特徴とする(8)に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
【0017】
(10) 前記配位結合性ポリマーの配位結合部がリン酸基であることを特徴とする(7)に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
(11) 前記架橋性ポリマーの架橋部が、熱又は光架橋性官能基であることを特徴とする(7)に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
(12) 前記熱又は光架橋性官能基がアクリレート基であることを特徴とする(11)に記載の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル。
【0018】
(13) 金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋性ポリマーも内包するゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であることを特徴とする架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体。
【0019】
(14) 金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋により互いに連結されてネットワーク構造が形成された架橋ポリマーも内包されているゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であることを特徴とする架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体。
【0020】
(15) 架橋により互いに連結された架橋ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であって、特別構造が備えられていることを特徴とする架橋ポリマーゲル−特別構造処理体。
(16) 前記特別構造が、中空構造を備えている構造であることを特徴とする(15)に記載の架橋ポリマーゲル−特別構造処理体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法は、配位結合性ポリマーと、架橋性ポリマーと、金属イオンと、光開始剤を水中で混合して、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包させたゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包させた架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを作成する工程と、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを、切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をして、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を加熱又は光照射し、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、前記架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を水又はリン酸水溶液に浸漬して、架橋ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、を有する構成なので、所望の立体的形状で、一体化され、容易に剥離しない傾斜ハイドロゲルを、安価で、簡便に製造できる。特に、一つの材料の中で分子量勾配方向が互いに異なる領域を有する傾斜ハイドロゲルを製造できる。
【0022】
本発明の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルは、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包する構成なので、所望の立体的形状に容易に加工処理でき、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0023】
本発明の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体は、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋性ポリマーも内包するゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体である構成なので、加熱又は光照射することにより、前記空隙の架橋性ポリマーを架橋により互いに連結してネットワーク構造を形成でき、所望の立体的形状の架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0024】
本発明の架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体は、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋により互いに連結されてネットワーク構造が形成された架橋ポリマーも内包されているゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体である構成なので、水又はリン酸水溶液に浸漬することにより、金属イオンと配位結合部との間の配位結合を容易に解いて、配位結合性ポリマーゲルを分解することができ、所望の立体的形状の架橋ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0025】
本発明の架橋ポリマーゲル−特別構造処理体は、架橋により互いに連結された架橋ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であって、特別構造が備えられている構成なので、例えば、中空構造などの所望の特別な立体的形状で、一体化され、容易に剥離せず、領域を有するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】傾斜ハイドロゲルの一例を示す概略図である。
図2】傾斜ハイドロゲルの別の一例を示す概略図である。
図3】ゲルの型枠の一例を示す図であって、平面図(a)、側面図(b)である。
図4】ゲルの製造工程の一例を示す図である。
図5】架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルの一例を示す図であって、平面図(a)、側面図(b)、A部拡大図(c)、B部拡大図(d)である。
図6】配位結合部の一例を説明する図である。
図7】帯状切断処理の一例を示す工程図である。
図8】らせん状変形処理の一例を示す工程図である。
図9】筒状変形処理の一例を示す工程図である。
図10】光照射処理の一例を示す工程図である。
図11】架橋性ポリマーとしてPEGDAを用いた場合に光架橋により形成されるネットワーク構造の一例を示す図である。
図12】架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体の切出部分の拡大図であって、正面図(a)と側面図(b)である。
図13】架橋ポリマーゲル−処理体作成工程図の一例である。
図14】架橋ポリマーゲル−処理体の切出部分の拡大図であって、正面図(a)と側面図(b)である。
図15】本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−特別構造処理体の一例を示す図であって、平面図(a)と側面図(b)である。
図16】光架橋高分子(PEGDA(Mn=3,350))の合成の工程図である。
図17】円板状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分の作成工程図である。
図18】帯状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分の作成工程図である。
図19】異種高分子含有ゲルの作成工程図である。
図20】蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))の拡散の経時蛍光観察結果を示す光学写真である。
図21】異分子量の架橋高分子(PEGDA)接合・一体化・架橋ゲルの作成工程図である。
図22】異分子量の架橋高分子(PEGDA)の接触前の光学写真(a)と、接触後60分間放置後の光学写真(b)である。
図23】異分子量の架橋高分子(PEGDA)接合・一体化・架橋ゲルを膨潤させたときの光学写真である。
図24】変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの作成工程図1である。
図25】構成部分をテフロン棒にらせん状に巻きつけ放置後の光学写真である。
図26】変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの作成工程図2である。
図27】らせん状に変形された構造体の架橋高分子(PEGDA)ゲルの光学写真である。
図28】変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの作成工程図3である。
図29】60分間放置した後のゲルの光学写真である。
図30】筒状ゲルの光学写真である。
図31】筒状に変形された構造体の架橋高分子(PEGDA)ゲルの光学写真である。
図32】2層型架橋ポリマーゲルの作成工程の一例を示す図である。
図33】2層型架橋ポリマーゲルの作成工程の一例を示す図である。
図34】2層型架橋ポリマーゲルの作成工程の一例を示す図である。
図35】2層型架橋ポリマーゲルの作成工程の一例を示す図である。
図36】紫外線照射後のサンプルの写真である。
図37】3日間水に浸漬後のサンプルの写真であり、正面方向からの写真(a)と、側面方向からの写真(b)である。
図38】2層型架橋ポリマーゲル・スプリングの作成工程図(a)、外側のゲル層をPEGDA(Mn=3350)にして巻き付けたときのトップビュー(b)、外側のゲル層をPEGDA(Mn=10,000)にして巻き付けたときのトップビュー(c)である。
図39】2層型架橋ポリマーゲル・スプリング(外側PEGDA(Mn=3350))と2層型架橋ポリマーゲル・スプリング(外側PEGDA(Mn=10,000))の浸漬後の水中の観察写真である。
図40】架橋ポリマーゲル・立方体コンテナの作成工程図である。
図41】切り出したPETフィルムの立方体展開図の写真である。
図42】切り出した自己修復ゲルの写真である。
図43】シリコンゴム型に挿入した立方体の写真である。
図44】光架橋後の立方体の写真であって、1辺8mmと1辺5mmである。
図45】光架橋後の立方体を水に浮かべた写真である。
図46】浸漬後の1辺8mmの立方体を水に浮かべた写真である。
図47】浸漬後の1辺5mmの立方体を水に浮かべた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法)
まず、本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法の一例について説明する。
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法は、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル作成工程S1と、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体作成工程S2と、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体作成工程S3と、架橋ポリマーゲル−処理体作成工程S4と、を有する。
【0028】
(架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル作成工程S1)
この工程では、配位結合性ポリマーと、架橋性ポリマーと、金属イオンと、光開始剤を水中で混合して、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包させたゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包させた架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを作成する。
【0029】
<製造方法>
まず、架橋性ポリマーと、配位結合性ポリマーと、光開始剤とを量りとり、水溶液に分散して、架橋性ポリマー配位結合性ポリマー光開始剤含有水溶液を調製する。
次に、金属塩化物などを水溶液に分散して、金属イオン含有水溶液を調製する。
【0030】
次に、ゲルの型枠を用意する。
図3は、ゲルの型枠の一例を示す図であって、平面図(a)、側面図(b)である。
次に、図3に示すように、ゲルの型枠31として、例えば、ガラスプレート32の上にPDMA製のリング型枠33を配置して、凹部33cを設ける。
【0031】
図4は、ゲルの製造工程の一例を示す図である。
次に、図4に示すように、架橋性ポリマー配位結合性ポリマー光開始剤含有水溶液38と、金属イオン含有水溶液39を、配位結合性ポリマー10wt%となる割合で、リング型枠33の凹部33c内に注ぎいれて、混合溶液とする。
放置により、混合溶液が固まり、円板状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル40が形成される。
【0032】
<架橋性ポリマー配位結合性ポリマー光開始剤含有水溶液>
架橋性ポリマー配位結合性ポリマー光開始剤含有水溶液38は、架橋性ポリマーと、配位結合性ポリマーと、光開始剤とが分散されてなる水溶液である。
【0033】
<配位結合性ポリマー>
配位結合性ポリマーは、金属イオンと配位結合可能な配位結合部を有するポリマーである。配位結合部と金属イオンとの配位結合では平衡的に架橋と別離(解離)が行われるために、ゲル同士を接触させたときに界面で再架橋が行われ、ゲル同士を接着・一体化するという自己修復機能を有する。そのため、配位結合性ポリマーは、自己修復性ゲル構成ポリマーとも呼ばれ、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包させたゲルは、自己修復性ゲルと呼ばれる。
【0034】
配位結合性ポリマーの主鎖としては、ポリエチレンアルコール誘導体を挙げることができる。
ポリエチレンアルコール誘導体としては4分岐ポリエチレングリコール(4−arms−PEG)を挙げることができる。
配位結合性ポリマーの配位結合部としては隣接する2つの酸素を有する官能基又は隣接する酸素と窒素を有する官能基を挙げることができる。例えば、リン酸基、カテコール基などである。
【0035】
配位結合性ポリマー、すなわち、自己修復性ゲル構成ポリマーとしては、例えば、化学式(1)に示す4−arm PEG−phosを挙げることができる。4−armの末端リン酸基(phos)で金属イオンと配位結合を形成して、強固なネットワークを形成でき、ゲルを安定に取り扱うことができる。
【0036】
【化1】
【0037】
<架橋性ポリマー>
架橋性ポリマーの架橋部としては、熱又は光架橋性官能基を挙げることができる。
熱又は光架橋性官能基としては、アクリレート基を挙げることができる。加熱又は光照射により、架橋部を容易に形成できる。
熱又は光架橋性ポリマーとしては、例えば、式(2)に示すポリ(エチレングリコール)ジアクレレート(Poly(ethylene glycol)diacrylate:PEGDAと略する。)を挙げることができる。
【0038】
【化2】
【0039】
両末端にビニル基を有する生分解性ポリマーを用いることにより、生体内で酵素的あるいは非酵素的な分解によってゲル全体が分解し、足場材料としての応用に好適である。生分解性材料としては、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール−ラクチドブロックコポリマーが例示できる。
【0040】
<光開始剤>
光開始剤としては、irgacure2959等を挙げることができる。
【0041】
<金属イオン含有水溶液>
金属イオン含有水溶液39は、金属イオンが分散されてなる水溶液である。
金属イオンとしては、Fe3+、Al3+、V3+、Ti3+、Ti4+を挙げることができる。Fe3+、Al3+、V3+、Ti3+、Ti4+は、常温で4−arm PEG−phosのリン酸基と配位結合自在である。
【0042】
3+は、末端リン酸基に対して3倍量となるモル濃度で金属イオンを加えたときに、常温で、約40秒でゲルを形成でき、取り扱い(ハンドリング)が容易である。また、紫外光から可視光領域において光吸収が少なく、光透過率の高いゲルを形成でき、含有させる架橋性ポリマーの光架橋反応を効率的に短時間に行うことができる。
金属イオン含有水溶液39は、例えば、VClを水に溶解させて調製する。
【0043】
一方、Fe3+は、混合したとたん直ちに配位結合を形成し、取り扱いが容易でない。
また、FeClは350nm付近に大きな吸光度を有し、この波長の光の光透過率が低いので、含有させる架橋性ポリマーの光架橋反応を効率的に行うことができない。実際、架橋性ポリマーとしてPEGDAを用いたゲルを作成した場合、光架橋させることができなかった。
【0044】
末端リン酸基に対して3倍量となるモル濃度で金属イオンを加えることが好ましい。末端リン酸基3つに対して金属イオン1つで安定な配位結合接合部を形成できるためである。20倍以上の大過剰となるモル濃度で金属イオンを加えると溶液がドロドロとなり、取り扱いが困難となる。
【0045】
<架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル>
架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル40は、配位結合性ポリマーと、架橋性ポリマーと、金属イオンと、光開始剤を水中で混合して、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包させたゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包させたゲルである。
【0046】
図5は、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルの一例を示す図であって、平面図(a)、側面図(b)、A部拡大図(c)、B部拡大図(d)である。配位結合性ポリマーとして4−arm PEG−phos、金属イオンとしてV3+を用いた例が示されている。
図5(a)、(b)に示すように、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル40は、略円板形状とされている。しかし、これに限られるものではなく、円柱形状や立方体形状等にしてもよい。
【0047】
図5(c)に示すように、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル40は、配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造43の間に空隙43cを有しており、空隙43c内に水44と架橋性ポリマー45を内包させている。
また、図5(d)に示すように、空隙43c以外の部分は、配位結合部48と金属イオン49との配位結合50により互いに連結された配位結合性ポリマー46からなるネットワーク構造43とされている。配位結合性ポリマー46は、主鎖47の末端に配位結合部48を有する。
【0048】
図6は、配位結合部の一例を説明する図である。金属イオン49がV3+イオンであり、配位結合性ポリマー46が4−arm PEG−phosである。末端リン酸基の酸素がV3+イオンと配位結合を形成し、4−arm PEG−phosを連結し、ネットワーク構造を形成する。配位結合を一部分だけ示しているが、これに限られるものではなく、金属イオンの濃度、ポリマー主鎖の立体障害などで可能な限り、各末端リン酸基同士が金属イオンを介して配位結合されて、網の目構造を形成する。
【0049】
(架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体作成工程S2)
この工程では、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを、切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をして、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する。
【0050】
<架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体>
架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体は、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋性ポリマーも内包するゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体である。
【0051】
図7は、帯状切断処理の一例を示す工程図である。
例えば、図7に示すように、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル40を切断処理して、帯状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体51を作成する。切断は、ナイフを用いて容易にできる。
【0052】
図8は、らせん状変形処理の一例を示す工程図である。
例えば、図8に示すように、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル40を帯状に切断してから、棒状型部材61に巻き付ける変形処理して、らせん状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体52を作成する。
【0053】
図9は、筒状変形処理の一例を示す工程図である。
例えば、図9に示すように、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル40を帯状に切断し、棒状型部材61に重ね合わせて巻き付ける変形処理をしてから、放置して、重ね合わせた部分を接合する接合処理して、筒状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体53を作成する。
【0054】
(架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体作成工程S3)
この工程では、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を加熱又は光照射し、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する。
図10は、光照射処理の一例を示す工程図である。
図10では、筒状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体53に光照射して、筒状の架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体63を作成する一例を示している。
図11は、架橋性ポリマーとしてPEGDAを用いた場合に光架橋により形成されるネットワーク構造の一例を示す図である。
【0055】
<架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体>
図12は、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体の切出部分の拡大図であって、正面図(a)と側面図(b)である。
架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体63は、切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であって、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造43の空隙43cに水44と、架橋により互いに連結された架橋ポリマー67とが内包されているゲルである。
【0056】
(架橋ポリマーゲル−処理体作成工程S4)
この工程では、前記架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を水又はリン酸水溶液に浸漬して、架橋ポリマーゲル−処理体を作成する。
図13は、架橋ポリマーゲル−処理体作成工程図の一例である。
図13では、筒状の架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を水又はリン酸水溶液に浸漬して、筒状の架橋ポリマーゲル−処理体を作成する一例を示している。
筒状の架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体63を水又はリン酸水溶液65に浸漬することにより、配位結合の周りが水又はリン酸水溶液リッチの環境となる。これにより、リン酸基は金属イオンとの結合を解除し、水又はリン酸水溶液65中の水素と再結合する。平衡反応の結果、配位結合性ポリマーゲルの配位結合はほとんど解除され、配位結合性ポリマーゲルは溶液中に分解・拡散される。これにより、筒状の架橋ポリマーゲル−処理体64のみが固形体として得られる。
【0057】
<架橋ポリマーゲル−処理体>
図14は、架橋ポリマーゲル−処理体の切出部分の拡大図であって、正面図(a)と側面図(b)である。
架橋ポリマーゲル−処理体64は、架橋により互いに連結された架橋ポリマー67からなるネットワーク構造の空隙68に水44を内包したゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体である。
空隙68は、元の空隙43cに加えて、配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造43が分解・拡散されて、拡張された空洞領域である。
配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造43が分解・拡散されても、架橋ポリマー67からなるネットワーク構造が骨組みとして残り、配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造43が形成した複雑な立体的形状を保持することができる。
【0058】
<架橋ポリマーゲル−特別構造処理体>
図15は、本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−特別構造処理体の一例を示す図であって、平面図(a)と側面図(b)である。
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−特別構造処理体100は、架橋により互いに連結された架橋ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であって、特別構造を備えている。
【0059】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−特別構造処理体100は、立方体形状とされており、内部に閉じられた空間(中空部)100cと、中空部100cを閉じられた空間とする壁状部100aとを有する特別構造を備えている。これにより、中空部をコンテナとして用いることができる。
【0060】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法は、配位結合性ポリマーと、架橋性ポリマーと、金属イオンと、光開始剤を水中で混合して、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包させたゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包させた架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを作成する工程と、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを、切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をして、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を加熱又は光照射し、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、前記架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を水又はリン酸水溶液に浸漬して、架橋ポリマーゲル−処理体を作成する工程と、を有する構成なので、所望の立体的形状で、一体化され、容易に剥離しない傾斜ハイドロゲルを、安価で、簡便に製造できる。特に、一つの材料の中で傾斜方向が互いに逆行する領域や、傾斜した領域がランダムに複数存在するような傾斜ハイドロゲルを製造できる。
【0061】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法は、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを切断処理して、帯状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する構成なので、所望の立体的形状の構成要素に使用可能な中間処理体を作成できる。
【0062】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法は、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを帯状に切断してから、棒状型部材に巻き付ける変形処理して、らせん状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する構成なので、所望の立体的形状の構成要素に使用可能な中間処理体又は複雑な立体的形状のゲルを形成できる中間処理体を作成できる。
【0063】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法は、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを帯状に切断し、棒状型部材に重ね合わせて巻き付ける変形処理をしてから、放置して、重ね合わせた部分を接合する接合処理して、筒状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する構成なので、所望の立体的形状の構成要素に使用可能な中間処理体又は複雑な立体的形状のゲルを形成できる中間処理体を作成できる。
【0064】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法は、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを切断処理して、平面視扇状の板状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する構成なので、所望の立体的形状の構成要素に使用可能な中間処理体又は複雑な立体的形状のゲルを形成できる中間処理体を作成できる。
【0065】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法は、前記架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルを分子量又は含有タンパク質濃度の異なるように作成し、切断処理して、平面視扇状の板状部材に加工処理してから、平面視扇状の板状部材を接触させて円板状とした第1の円板状部材と、平面視扇状の板状部材を接触させて円板状とした第2の円板状部材とを重ね合わせ、放置して、接触させた部分と重ね合わせた部分をそれぞれ接合する接合処理して、円柱状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を作成する構成なので、所望の立体的形状の構成要素に使用可能な中間処理体又は複雑な立体的形状のゲルを形成できる中間処理体を作成できる。
【0066】
本発明の実施形態である架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルは、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルであって、前記空隙に架橋性ポリマーも内包する構成なので、所望の立体的形状に容易に加工処理でき、所望の立体的形状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0067】
本発明の実施形態である架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルは、前記配位結合性ポリマーの主鎖がポリエチレンアルコール誘導体である構成なので、所望の立体的形状に容易に加工処理でき、所望の立体的形状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0068】
本発明の実施形態である架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルは、前記ポリエチレンアルコール誘導体が4分岐ポリエチレングリコール(4−arms−PEG)である構成なので、所望の立体的形状に容易に加工処理でき、所望の立体的形状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0069】
本発明の実施形態である架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルは、前記配位結合性ポリマーの配位結合部がリン酸基である構成なので、所望の立体的形状に容易に加工処理でき、所望の立体的形状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0070】
本発明の実施形態である架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルは、前記架橋性ポリマーの架橋部が、熱又は光架橋性官能基である構成なので、所望の立体的形状に容易に加工処理でき、所望の立体的形状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0071】
本発明の実施形態である架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲルは、前記熱又は光架橋性官能基がアクリレート基である構成なので、所望の立体的形状に容易に加工処理でき、所望の立体的形状の架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0072】
本発明の実施形態である架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体は、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋性ポリマーも内包するゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体である構成なので、加熱又は光照射することにより、前記空隙の架橋性ポリマーを架橋により互いに連結してネットワーク構造を形成でき、所望の立体的形状の架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0073】
本発明の実施形態である架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体は、金属イオンとの配位結合により互いに連結された配位結合性ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包し、前記空隙に架橋により互いに連結されてネットワーク構造が形成された架橋ポリマーも内包されているゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体である構成なので、水又はリン酸水溶液に浸漬することにより、金属イオンと配位結合部との間の配位結合を容易に解いて、配位結合性ポリマーゲルを分解することができ、架橋ポリマーゲル−処理体を容易に作成できる。
【0074】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−特別構造処理体は、架橋により互いに連結された架橋ポリマーからなるネットワーク構造の空隙に水を内包したゲルに対して切断、変形又は接合のいずれか1又は2以上の処理をした処理体であって、特別構造が備えられている構成なので、所望の立体的形状に形成でき、一体化され、容易に剥離せず、一つの材料の中で傾斜方向が互いに逆行する領域や、傾斜した領域がランダムに複数存在するようにでき、また、中空構造を備えるようにできる。
【0075】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−特別構造処理体は、前記特別構造が、中空構造を備えている構成なので、コンテナとして利用でき、ドラッグデリバーシステムなどに応用できる。
【0076】
本発明の実施形態である架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体及び架橋ポリマーゲル−特別構造処理体は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
<材料合成・調整>
(光架橋高分子(PEGDA(Mn=3,350))の合成)
図16は、光架橋高分子(PEGDA(Mn=3,350))の合成の工程図である。
まず、図1(a)に示すように、300mL三口フラスコ内で、両末端水酸基PEG10g(Mn=3,350)を、20mLのdichloromethaneに溶解させた。
次に、図16(b)に示すように、50mLのTetrahydrofuranを加えた。
【0078】
次に、図16(c)に示すように、溶液を氷冷してから、窒素(Nガス)フロー条件下、20mLのAcryloyl Chlorideを静かに滴下し、12h反応させた。
次に、図16(d)に示すように、反応後の溶液をdiethyletherに再沈澱させて、精製し、白色のPEGDA(Mn=3,350)粉末を得た。
【0079】
(光架橋高分子(PEGDA(Mn=10,000))の合成)
次に、末端水酸基PEG10g(Mn=10,000)を用いた他は同様にして、白色のPEGDA(Mn=10,000)粉末を得た。
【0080】
<ゲル合成・調整>
(光架橋高分子含有自己修復性ゲル(PEGDA(Mn=3,350)含有自己修復性ゲル)の作成)
まず、PEGDA(Mn=3,350)粉末、及び、4−arm PEG−phos(Mn=40,000)を光開始剤含有水溶液に溶かして、PEGDA(Mn=3,350)−4−arm PEG−phos−光開始剤含有水溶液を調製した。光開始剤としては、irgacure2959を3mg、水1350mLに溶かして調製した。
次に、VCl水溶液を調製した。濃度は0.3mol/lとした。
【0081】
次に、ゲルの型枠として、ガラスプレートの上に、PDMS製のリング型枠を配置して、凹部を設けた。
次に、PEGDA(Mn=3,350)−4−arm PEG−phos−光開始剤含有水溶液と、VCl水溶液を、4−arm PEG−phosポリマー濃度10wt%となる割合で、リング型枠内に注ぎいれた。
40秒ほどで混合溶液が固まり、円板状のPEGDA(Mn=3,350)含有自己修復性ゲルが形成された。直径13mm、厚さ4mmとした。
このゲルの組成の条件は、4−arm PEG−phos:50mg、VCl水溶液=100μL(0.3M)、Water=350μL、PEGDA=50mgであった。
【0082】
(光架橋高分子含有自己修復性ゲル(PEGDA(Mn=10,000)含有自己修復性ゲル)の作成)
次に、PEGDA(Mn=3,350)粉末の代わりにPEGDA(Mn=10,000)粉末を用いた他は同様にして、光架橋高分子含有自己修復性ゲル(PEGDA(Mn=10,000)含有自己修復性ゲル)を作成した。
【0083】
(蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))・光架橋高分子含有ゲルの作成)
まず、蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))50gを準備した。
次に、PEGDA(Mn=3,350)粉末の代わりに蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))を用いた他は同様にして、蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))・光架橋高分子含有ゲルを作成した。
【0084】
<構成部分の作成>
(円板状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分の作成)
図17は、円板状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分の作成工程図である。
次に、図17に示すように、円板状のPEGDA(Mn=3,350)含有自己修復性ゲルを型枠から外し、中心点を通るようにナイフで半分に切断して、半円板状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分を作成した。
【0085】
(帯状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分の作成)
図18は、帯状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分の作成工程図である。
次に、図18に示すように、円板状のPEGDA(Mn=3,350)含有自己修復性ゲルを型枠から外し、ナイフで切りだして、帯状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分を作成した。
【0086】
(円板状PEGDA(Mn=10,000)含有3次元型構成部分の作成)
次に、円板状のPEGDA(Mn=10,000)含有自己修復性ゲルを型枠から外し、中心点を通るようにナイフで半分に切断して、半円板状PEGDA(Mn=10,000)含有3次元型構成部分を作成した。
【0087】
(帯状PEGDA(Mn=10,000)含有3次元型構成部分の作成)
次に、円板状のPEGDA(Mn=10,000)含有自己修復性ゲルを型枠から外し、ナイフで切りだして、帯状PEGDA(Mn=10,000)含有3次元型構成部分を作成した。
【0088】
(円板状蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))含有3次元型構成部分の作成)
次に、円板状の蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))・光架橋高分子含有ゲルを型枠から外し、中心点を通るようにナイフで半分に切断して、半円板状蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))・光架橋高分子含有3次元型構成部分を作成した。
【0089】
<特性評価>
(異種高分子含有ゲルの接合・一体化実験:PEGDA含有自己修復性ゲルの自己修復能の確認実験1)
図19は、異種高分子含有ゲルの作成工程図である。
次に、図19に示すように、半円板状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分と、半円板状蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))含有3次元型構成部分とを、円板状となるように配置して、切断面を接触させた。
【0090】
次に、一定の放置時間ごとに、励起光を照射して蛍光ポリマーを蛍光発光させて光学写真を撮影し、蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))の拡散の様子を経時観察した。放置時間は0、10、20、30、40、50、60、120、180、240minとした。
【0091】
図20は、蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))の拡散の経時蛍光観察結果を示す光学写真である。
図20に示すように、0minでは、蛍光ポリマー(FITC dextran(Mn=3000〜5000))を含有する半円部分が半透明な黄色であり、他の半円部分は色なしの透明と、明確に色分けされていた。
50minぐらいから、界面が明確ではなくなり、60minでは界面は消失した。つまり、60分で切断面が完全に接合され、一体化したゲルが形成された。
120minでは透明部は残っていたが、180minでは透明部分はなくなり、240minでは全体にほぼ均一に分散するように蛍光ポリマーは拡散した。
張り合わせたゲル界面は物質(蛍光ポリマー)の拡散を阻害しなかった。ネットワーク内部におけるFITC dextranの移動を確認できた。
【0092】
(異分子量の架橋高分子(PEGDA)接合・一体化・架橋ゲルの作成)
図21は、異分子量の架橋高分子(PEGDA)接合・一体化・架橋ゲルの作成工程図である。
次に、図21に示すように、半円板状PEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分と、半円板状PEGDA(Mn=10,000)含有3次元型構成部分とを、円板状となるように配置して、切断面を接触させた。
図22は、異分子量の架橋高分子(PEGDA)の接触前の光学写真(a)と、接触後60分間放置後の光学写真(b)である。
60分放置することにより、接合界面では、分子量の異なるPEGDAが互いに型ポリマー・ネットワークの間隙部を移動して、切断面を完全に接合した。このような自己修復効果により、接合・一体化したゲルが形成された。このゲルは、PEGDAの濃度勾配が形成されたゲルのネットワークを有していた。
【0093】
放置時間が短い場合には、semi−IPN構造を持つ自己修復−PEGDAゲル内部において、PEGDA(Mn=10,000)の移動度が小さいので、ゲルのネットワーク形成が不十分となるおそれがある。
なお、セミ−IPN(semi−IPN)とは、異種の架橋高分子網目が相互に侵入し合った網目構造をもつ混合物である相互侵入高分子 (interpenetrating polymer network:IPN)において、異種の架橋高分子網目の一方の成分が直鎖状で他方の成分が高分子網目である系をいう。
なお、このゲルは紫外線照射前のこの段階でピンセットによってハンドリングが可能であった。
【0094】
次に、この接合・一体化したゲルに、15分間、紫外線を照射した。紫外線照射により、ゲルの内部の複数のPEGDAが光架橋され、ゲルの内部にネットワーク構造を有する架橋ポリマーが形成された。
なお、事前の光照射試験により、PEGDAが5分間の紫外線照射によって速やかにゲルを形成することを確認した。
【0095】
次に、紫外線を照射した接合・一体化したゲルを、24時間、水に浸漬した。水に浸漬することにより、型ポリマー・ネットワークを構成する配位結合が外れ、4−arm PEG−phos(Mn=40,000)が水に溶解された。これにより、純粋なPEGDAのみからなり、PEGDAが架橋ポリマー・ネットワークを形成し、半円板状の分子量の異なるPEGDAが接合・一体化・架橋されてなる異分子量の架橋高分子(PEGDA)接合・一体化・架橋ゲルが形成された。
【0096】
なお、水の代わりにリン酸水溶液を用いた実験も追加的に行った。この場合、型ポリマー・ネットワークの溶解が短時間で行われた。このリン酸処理によって、型ポリマー・ネットワークの溶解を行っても、異分子量の架橋高分子(PEGDA)接合・一体化・架橋ゲルには何ら影響を与えず、界面剥離を生じさせることはなかった。
【0097】
(膨潤度試験)
次に、異分子量の架橋高分子(PEGDA)接合・一体化・架橋ゲルを膨潤させて、光学写真撮影した。
図23は、異分子量の架橋高分子(PEGDA)接合・一体化・架橋ゲルを膨潤させたときの光学写真である。PEGDAの分子量が異なる2つの部分はそれぞれ膨潤度が異なる。PEGDA(Mn=3350)ゲルに比べて、PEGDA(Mn=10,000)ゲルで、膨潤度の上昇が顕著となる。架橋密度の減少によると考えられる。そのため膨潤させると、大きく変形した。このように変形させても、界面剥離は生じなかった。
【0098】
また、UV照射後、PEGDA(Mn=3350)ゲルの白濁が観察された。
4−arm PEG−phosは、PEGDAの質量平均分子量40,000と大きく、長いので、PEGDAゲルのネットワークを形成した後、型ネットワークを外しても、PEGDAゲルのネットワークから抜け出せない4−arm PEG−phosのポリマー鎖が残存するおそれが発生する。
【0099】
PEGDA(Mn=10,000)ゲルに比べて、PEGDA(Mn=3,350)ゲルのネットワーク密度は高く、空隙部が少なく、小さくなるので、PEGDA(Mn=3,350)ゲルでの4−arm PEG−phosのポリマー鎖の残存量は、PEGDA(Mn=10,000)ゲルに比べて多くなる。
【0100】
そのため、PEGDA(Mn=10,000)ゲルに比べて、PEGDA(Mn=3,350)ゲルでは、PEGDAゲルのネットワークから抜け出せず、残存した4−arm PEG−phosのポリマー鎖が相互作用により結晶性サイトを形成し、これが光の散乱を起したと考察した。
【0101】
(1H−NMR測定)
次に、ゲルの1H−NMR測定した。
1H−NMRから算出したPEGDA(Mn=3,350)の両末端のアクリロイル基導入率は80%であった。
また、1H−NMRから算出したPEGDA(Mn=10,000)の両末端のアクリロイル基導入率は51%であった。
【0102】
PEGDA(Mn=10,000)のアクリロイル基導入率は、PEGDA(Mn=3,350)のアクリロイル基導入率よりも低かった。この導入率の低さも、架橋密度を下げる一つの要因となったと考察した。
【0103】
なお、溶液とマトリックス内において作製したサンプルの膨潤度に差が生じた。このため、自己修復性ゲルのネットワークがゲル形成に影響を与えたと考察した。
【0104】
自己修復性ゲルを鋳型にして、PEGDAゲルを構築した場合、ゲルは大きな膨潤ミスマッチを持ちながらも剥離すること無く接着した状態を維持した。
ゲルの界面においてポリマーの濃度勾配をつくり、きれいな界面の接合が出来た。つまり、自己修復材料を鋳型として、傾斜材料の構築ができた。
【0105】
(変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの作成1)
図24は、変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの作成工程図1である。
まず、図24に示すように、帯状に切断したPEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分をテフロン棒にらせん状に巻きつけて、60分間放置(incubation)した後、光学写真を撮影した。
図25は、構成部分をテフロン棒にらせん状に巻きつけ放置後の光学写真である。
【0106】
次に、この状態で、15分間、紫外線を照射した。これにより、らせん状の架橋構造体が得られた。
図26は、変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの作成工程図2である。
次に、図26に示すように、らせん状の架橋構造体を水に浸漬し、24時間後、引き上げた。水に浸漬することにより、型ポリマー・ネットワーク構成する配位結合が外れ、4−arm PEG−phos(Mn=40,000)が水に溶解された。これにより、純粋なPEGDAのみからなり、PEGDAが架橋ポリマー・ネットワークを形成し、らせん状に変形された構造体の架橋高分子(PEGDA)ゲルが形成された。
これを光学写真撮影した。
図27は、らせん状に変形された構造体の架橋高分子(PEGDA)ゲルの光学写真である。
【0107】
(変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの作成2)
図28は、変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの作成工程図3である。
まず、図28に示すように、帯状に切断したPEGDA(Mn=3,350)含有3次元型構成部分をテフロン棒に2重になるように巻きつけて、重ね合わせた面を接触させた状態で、60分間放置(incubation)した後、光学写真を撮影した。
図29は、60分間放置した後のゲルの光学写真である。
【0108】
次に、テフロン棒から取り外し、作成した筒状の変形・接合構造体−架橋高分子(PEGDA)ゲルの光学写真を撮影した。
図30は、筒状ゲルの光学写真である。界面が消失し、自己修復されていることを確認できた。
【0109】
次に、この状態で、15分間、紫外線を照射した。
次に、24時間、水に浸漬した。0.5Mリン酸(HPO)水溶液に浸漬することにより、型ポリマー・ネットワーク構成する配位結合が外れ、4−arm PEG−phos(Mn=40,000)が水に溶解された。これにより、純粋なPEGDAのみからなり、PEGDAが架橋ポリマー・ネットワークを形成し、筒状に変形された構造体の架橋高分子(PEGDA)ゲルが形成された。これを光学写真撮影した。
図31は、筒状に変形された構造体の架橋高分子(PEGDA)ゲルの光学写真である。
【0110】
(比較例1)
PEGDA溶液を直接光架橋して、架橋PEGDAゲル(比較例1)を作成した。
架橋PEGDAゲル(比較例1)に比べて、自己修復−PEGDAゲルにUV照射して作成したゲルの方が膨潤度に上昇が見られたことを確認できた。
【0111】
(2層型架橋ポリマーゲルの作成)
図32〜35は、2層型架橋ポリマーゲルの作成工程の一例を示す図である。
まず、図32に示すように、4−arm PEG−phos(Mn=40,000):75mgと、PEGDA(Mn=3,350):300mgと、Irgacure 2959:3.0mgと、Water:1050μLと、VCl:300μLとを混合し、カバーグラス上に塗布してから、別のカバーグラスで押さえつけて、膜厚0.5mmの板状ゲル(PEGDA(Mn=3,350)含有ゲル)にした。
型枠として、平面視正方形状の孔部を有するシリコンスペーサーを用いた。
【0112】
次に、図33に示すように、4−arm PEG−phos(Mn=40,000):75mgと、PEGDA (Mn=10,000):300mgと、Irgacure 2959:3.0mgと、Water:1050μLと、VCl:300μLとを混合し、カバーグラス上に塗布してから、別のカバーグラスで押さえつけて、膜厚0.5mmの板状ゲル(PEGDA(Mn=10,000)含有ゲル)にした。
型枠として、平面視正方形状の孔部を有するシリコンスペーサーを用いた。
【0113】
次に、図34に示すように、各ゲルを2層に重ねてから、カバーガラスの間で押さえつけて、膜厚1mmの2層型ゲルとした。
次に、図35(a)に示すように、2層型ゲルに紫外線照射した。図36は、紫外線照射後のサンプルの写真である。
次に、図35(b)に示すように、3日間水に浸漬して、2層型架橋ポリマーゲルを作成した。図37は、3日間水に浸漬後のサンプルの写真であり、正面方向からの写真(a)と、側面方向からの写真(b)である。二層型のゲルは水に浸漬後、膨潤ミスマッチによって自ら折れ曲がった構造(self−folding structure)を示した。
【0114】
自己修復ゲルの中において光架橋したゲルの膨潤率はそれぞれ平均してMn=3,350のPEGDAゲルの場合は32.8であり、Mn=10,000のゲルの場合は106.5であった。この膨潤度の差がゲルのself−foldingを引き起こしたと考えられる。
膨潤率は以下の式(1)から求めた。なおWsは最膨潤させたゲルの質量、Wdは凍結乾燥させたゲルのサンプルの質量である。
【0115】
【数1】
【0116】
(2層型架橋ポリマーゲル・スプリングの作成)
図38は2層型架橋ポリマーゲル・スプリングの作成工程図(a)、外側のゲル層をPEGDA(Mn=3350)にして巻き付けたときのトップビュー(b)、外側のゲル層をPEGDA(Mn=10,000)にして巻き付けたときのトップビュー(c)である。
【0117】
まず、先の2層型架橋ポリマーゲルを用いて、図46(b)に示すように、外側のゲル層をPEGDA(Mn=3350)にしてテフロン棒にらせん状に巻き付けた。
次に、紫外線照射した。
次に、水に浸漬して、2層型架橋ポリマーゲル・スプリング(外側PEGDA(Mn=3350))を作成した。
【0118】
次に、先の2層型架橋ポリマーゲルを用いて、図46(c)に示すように、外側のゲル層をPEGDA(Mn=10,000)にしてテフロン棒にらせん状に巻き付けた。
次に、紫外線照射した。
次に、水に浸漬して、2層型架橋ポリマーゲル・スプリング(外側PEGDA(Mn=10,000))を作成した。
【0119】
図39は、2層型架橋ポリマーゲル・スプリング(外側PEGDA(Mn=3350))と2層型架橋ポリマーゲル・スプリング(外側PEGDA(Mn=10,000))の浸漬後の水中の観察写真である。
2層型架橋ポリマーゲル・スプリング(外側PEGDA(Mn=3350))は緩い巻き方であり、2層型架橋ポリマーゲル・スプリング(外側PEGDA(Mn=10,000))はきつい巻き方であった。
【0120】
(架橋ポリマーゲル・立方体コンテナの作成)
図40は架橋ポリマーゲル・立方体コンテナの作成工程図である。 まず、図40(a)に示すように、平面視略矩形状のPETフィルムから立方体の展開図を切り出した。図41は切り出したPETフィルムの立方体展開図の写真である。立方体の展開図となる紙のテンプレートを作成してから、これに合わせてPETフィルムの立方体展開図を切り出した。1辺5mmと、8mmの2つのサイズの立方体展開図を作成した。
次に、図480(b)に示すように、PETフィルム展開図上に、PEGDA含有4arm PEG−phos自己修復ゲルを展開図に沿って切り出した。図42は、切り出した自己修復ゲルの写真である。
次に、図40(c)に示すように、PETフィルムを外側にし、自己修復ゲルを内側にするように、PETフィルム展開図を折り込み、立方体を作成した。立方体は、その形状を保持するため、シリコンゴム型に保持して、放置した。図43は、シリコンゴム型に挿入した立方体の写真である。
次に、図40(d)前段に示すように、外側のPETフィルム展開図のみを取り外し、立方体ゲルを作成した。立方体ゲルの各接辺は自己修復され、界面は消失していた。
次に、図40(d)後段に示すように、UVで光架橋した。図44は、光架橋後の立方体の写真であって、1辺8mmと1辺5mmである。
図45は、光架橋後の立方体を水に浮かべた写真である。内部に閉じられた空間(中空部)を有するため、いずれも水に浮かんだ。
【0121】
次に、水に24時間浸漬して、内部に閉じられた空間(中空部)を有する架橋ポリマーゲル・立方体コンテナを作成した。水に浸漬することにより、1辺8mmの立方体は、1辺10mmの立方体(体積2倍)に膨潤した。
図46は、浸漬後の1辺8mmの立方体を水に浮かべた写真である。
図46に示すように、体積が2倍に膨潤し、浸透圧および水圧によって、水がゲル内部に侵入したにもかかわらず、水に浮いた。ゲル内の気泡は小さかった。
【0122】
図47は、浸漬後の1辺5mmの立方体を水に浮かべた写真である。
図47に示すように、水に浸漬することにより、1辺5mmの立方体は、1辺7.1mmの立方体(体積2.9倍)に膨潤した。また、水に浮いた状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の架橋ポリマーゲル−処理体の製造方法、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル、架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体、架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体及び架橋ポリマーゲル−特別構造処理体は、所望の立体的形状で、一体化され、容易に剥離しない傾斜ハイドロゲル、及び、安価で、簡便な前記傾斜ハイドロゲルの製造方法を提供でき、この傾斜ハイドロゲルは細胞培養足場等に応用でき、ティッシュエンジニアリング産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0124】
11、12…傾斜ハイドロゲル、11a,11b,11c,11d,11e、12a、12b、12c、12d、12e…部分、31…ゲルの型枠、32…ガラスプレート、33…リング型枠、33c…凹部、38…架橋性ポリマー配位結合性ポリマー光開始剤含有水溶液、39…金属イオン含有水溶液、40…架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル、43…ネットワーク構造、43c…空隙、44…水、45…架橋性ポリマー、46…配位結合性ポリマー、47…主鎖、48…配位結合部、49…金属イオン、50…配位結合、51、52、53、54…架橋性ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体、63…架橋ポリマー内包−配位結合性ポリマーゲル−処理体、64…架橋ポリマーゲル−処理体、65…水又はリン酸水溶液、67…架橋ポリマー(ネットワーク構造)、68…空隙、100…架橋ポリマーゲル−特別構造処理体、100c…中空部、100a…壁状部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
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