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特開2015-212321オゾン分解性共重合体、そのオゾン分解法及び表面改質フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212321(P2015-212321A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】オゾン分解性共重合体、そのオゾン分解法及び表面改質フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 222/06 20060101AFI20151030BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20151030BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20151030BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20151030BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   C08F222/06
   C08F222/40
   C08L35/00
   C08J7/00 ZCER
   C08J11/16ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-94731(P2014-94731)
(22)【出願日】2014年5月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成25年11月13日 公益社団法人高分子学会発行の「第22回ポリマー材料フォーラム講演予稿集、第91頁」、 平成25年11月28日 タワーホール船堀(東京都江戸川区船堀4−1−1)にて開催された「第22回ポリマー材料フォーラム」、 平成26年3月6日 公益社団法人高分子学会発行の「精密ネットワークポリマー研究会第7回若手シンポジウム講演要旨集、第8頁」、 平成26年3月13日 東京工業大学大岡山キャンパス蔵前会館くらまえホール(東京都目黒区大岡山2丁目12−1)にて開催された「精密ネットワークポリマー研究会第7回若手シンポジウム」、 平成26年3月12日 公益社団法人日本化学会発行の「日本化学会第94春季年会講演予稿集、第693頁」及び 平成26年3月29日 名古屋大学東山キャンパス(名古屋市千種区不老町)にて開催された「日本化学会第94春季年会」において発表
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】松本 章一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 晴之
【テーマコード(参考)】
4F073
4F401
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F073AA01
4F073BA18
4F073BB01
4F073CA62
4F401AA08
4F401AA17
4F401AA24
4F401AD07
4F401BB01
4F401CA50
4F401CA67
4F401CA75
4F401EA39
4F401EA54
4F401EA55
4F401EA58
4F401EA62
4F401EA63
4F401FA01Y
4J002BH021
4J002EN036
4J002EN046
4J002EN076
4J002EU046
4J002EU096
4J002EV236
4J002GD00
4J100AK32P
4J100AM45P
4J100AM48P
4J100AS01Q
4J100AS04Q
4J100AS15Q
4J100AS17R
4J100CA04
4J100CA05
4J100JA24
(57)【要約】
【課題】優れた耐熱性、透明性、及び硬化反応性、ならびにオゾン分解性を有する光学材料に好適な共重合体を提供することを課題とする。
【解決手段】無水マレイン酸、マレイミド又はそれらの誘導体と、下記一般式

(式中、R2は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R5は炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基又は炭素数4〜9のアルカジエニル基を示し、R4及びR5は、それらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜14のシクロアルケニル基又は炭素数5〜10のビシクロアルキル基を構成していてもよい。但し、R2、R3、R4が全て水素原子であり、かつR5がビニル基又はイソプロペニル基の場合を除く。)で表されるビニル化合物とのオゾン分解性共重合体により上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1は、同一または異なって、水素原子又はメチル基を、Xは、−O−又は=NR(Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基)を示す。)
で表される無水マレイン酸、マレイミド又はそれらの誘導体と、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R2は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R5は炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基又は炭素数4〜9のアルカジエニル基を示し、R4及びR5は、それらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜14のシクロアルケニル基又は炭素数5〜10のビシクロアルキル基を構成していてもよい。但し、R2、R3、R4が全て水素原子であり、かつR5がビニル基又はイソプロペニル基の場合を除く。)
で表されるビニル化合物とのオゾン分解性共重合体。
【請求項2】
前記オゾン分解性共重合体が、多価の、アルコール類、アミン類、チオール類及びエポキシ化合物類から選択される架橋剤により少なくとも一部架橋した構造を有する請求項1に記載のオゾン分解性共重合体。
【請求項3】
前記オゾン分解性が、前記共重合体の低分子量化、可溶化及び表面改質のいずれかを目的とする性質である請求項1又は2に記載のオゾン分解性共重合体。
【請求項4】
前記オゾン分解性が、前記共重合体の溶液を、オゾンを含むガスでバブリングした際、前記バブリング後の共重合体の数平均分子量を前記バブリング前の共重合体の数平均分子量の50%以下に低分子量化させる性質である請求項1〜3のいずれか1つに記載のオゾン分解性共重合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のオゾン分解性共重合体のオゾン分解法であり、前記共重合体と溶媒との溶液にオゾンを含むガスをバブリングさせるか、前記共重合体をオゾン雰囲気下に晒すことにより、前記共重合体をオゾン分解することを特徴とするオゾン分解性共重合体のオゾン分解法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のオゾン分解性共重合体のフィルムと、オゾン雰囲気下に晒すことで親水性を付与したフィルム表面とを有することを特徴とする表面改質フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン分解性共重合体、そのオゾン分解法及び表面改質フィルムに関する。更に詳しくは、本発明は、優れた耐熱性、透明性及び硬化反応性を有する光学材料に好適な共重合体であって、オゾン分解によって容易に低分子量化、可溶化及び/又は表面改質可能な共重合体、そのオゾン分解法及び、共重合体から構成される表面改質フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
N−マレイミドは無水マレイン酸を原料として容易に製造できる無水マレイン酸誘導体である。N−マレイミドから得られる単独重合体及び共重合体(N−マレイミド系重合体)は、一般的な熱可塑性ビニル重合体と比べて、高い耐熱性を示し、更に透明性に優れた樹脂であることが知られている。そのため、この単独重合体及び共重合体は、光学分野における様々な用途に使用可能な透明樹脂として有望な材料である(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】大津隆行著、未来材料、Vol.3、No.1(第74〜79頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無水マレイン酸及びその誘導体並びにN−マレイミド及びその誘導体は、電子受容性モノマーである。そのためこの電子受容性モノマーを電子供与性の1,3−ジエン化合物と反応させると、1:1環状付加体であるディールス−アルダー付加物が優先して生成する傾向がある。そのため、電子受容性モノマーと1,3−ジエン化合物との組み合わせでは高収率で高分子量の共重合体を得ることができないという課題がある。このため、電子受容性モノマーと1,3−ジエン化合物との組み合わせによる高分子量重合体の効率良い合成法が求められている。
【0005】
また、電子受容性モノマーと1,3−ジエン化合物との組み合わせにより得られる重合体は、熱安定性に優れる半面、分解が難しいという課題がある。このため、使用後の処理や廃棄による環境問題の発生を抑制するための効率よい分解方法が求められている。
【0006】
更に、電子受容性モノマーと1,3−ジエン化合物との組み合わせにより得られる重合体は、アルコール類、アミン類、チオール類又はエポキシ化合物類と反応させることで架橋体を得ることができる。この架橋体は溶媒に不溶であるため、使用後の処理や廃棄による環境問題が生じることがある。加えて、一度設置すると除去が困難である(リワーク性に欠ける)という課題がある。このため、架橋体を効率よく再可溶化する方法が求められている。
【0007】
更にまた、電子受容性モノマーと1,3−ジエン化合物との組み合わせにより得られる重合体は、疎水性の高い表面を有している。表面の高い疎水性から、この重合体から得られるフィルムやコーティングは、被着体に対する接着性や密着性に欠けるという課題がある。加えて、表面加工性や染色性に乏しいという課題もある。このため、接着性や表面加工性の向上したフィルムやコーティングが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定のビニル化合物(ジビニル化合物、環状エキソメチレン型ジエン化合物又はエキソメチレン型ビシクロ化合物)と、無水マレイン酸、マレイミド又はそれらの誘導体とに由来する共重合体が、オゾン分解性を示すことで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、下記一般式(1)
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、R1は、同一または異なって、水素原子又はメチル基を、Xは、−O−又は=NR(Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基)を示す。)
で表される無水マレイン酸、マレイミド又はそれらの誘導体と、
下記一般式(2)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R2は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R5は炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基又は炭素数4〜9のアルカジエニル基を示し、R4及びR5は、それらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜14のシクロアルケニル基又は炭素数5〜10のビシクロアルキル基を構成していてもよい。但し、R2、R3、R4が全て水素原子であり、かつR5がビニル基又はイソプロペニル基の場合を除く。)
で表されるビニル化合物とのオゾン分解性共重合体が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、上記オゾン分解性共重合体のオゾン分解法であり、前記共重合体と溶媒との溶液にオゾンを含むガスをバブリングさせるか、前記共重合体をオゾン雰囲気下に晒すことにより、前記共重合体をオゾン分解することを特徴とするオゾン分解性共重合体のオゾン分解法が提供される。
更に、本発明によれば、上記オゾン分解性共重合体のフィルムと、オゾン雰囲気下に晒すことで親水性を付与したフィルム表面とを有することを特徴とする表面改質フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のオゾン分解性共重合体は、高いオゾン分解性を有するため、優れた耐熱性、透明性及び硬化反応性を保持したまま、使用後の処理や廃棄による環境問題の発生を抑制できる。また、オゾン分解により低分子量化や可溶化が可能となるので、リワーク性を向上できる。
また、本発明のオゾン分解性共重合体からなるフィルムは、オゾンに晒すことで、優れた耐熱性、透明性及び硬化反応性を保持したまま、表面を親水性に改質することが可能である。この改質により、フィルムの被着体への接着性や密着性を向上できる。加えて、表面加工性や染色性も向上できる。そのため、各種光学材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を説明する。
(オゾン分解性共重合体)
本発明のオゾン分解性共重合体は、無水マレイン酸、マレイミド及びそれらの誘導体から選択されるモノマーに由来する単位と、ビニル化合物に由来する単位とを含む。なお、無水マレイン酸、マレイミド及びそれらの誘導体から選択されるモノマーに由来する単位は、1種類に由来する単位でも、複数種に由来する単位でもよい。
【0017】
なお、本発明において、オゾン分解性とは、共重合体の溶液を、オゾンを含むガスでバブリングした際、バブリング後の共重合体の数平均分子量をバブリング前の共重合体の数平均分子量よりも低分子量化させる性質を意味する。バブリング後の共重合体の数平均分子量は、バブリング前の共重合体の数平均分子量の50%以下となることが好ましい。
【0018】
(a)無水マレイン酸、マレイミド及びそれらの誘導体
無水マレイン酸、マレイミド及びそれらの誘導体は、下記一般式(1)
【0019】
【化5】
【0020】
で表すことができる。一般式(1)中、R1は、同一または異なって、水素原子又はメチル基を示す。Xは、−O−又は=NRを示す。ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を示す。Xが−O−の場合、一般式(1)は無水マレイン酸及びその誘導体を意味し、Xが=NRの場合、一般式(1)はマレイミド及びその誘導体を意味する。
【0021】
炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等が挙げられる。アルキル基には、構造異性体が含まれる。
【0022】
炭素数2〜7のアルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル等が挙げられる。アルケニル基には、構造異性体が含まれる。
フェニル基の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、水酸基、アルコキシカルボニル基(アルキル基の炭素数1〜4)等が挙げられる。
【0023】
具体的な無水マレイン酸及びその誘導体は、無水マレイン酸、無水シトラコン酸である。この内、耐熱性を向上させる観点から、無水マレイン酸がより好ましい。
具体的なマレイミド及びその誘導体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−デシルマレイミド、N−2−エチルへキシルマレイミド、N−アリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0024】
(b)ビニル化合物
ビニル化合物は、下記一般式(2)
【0025】
【化6】
【0026】
で表される。一般式(2)中、R2は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基、R5は炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜9のアルケニル基又は炭素数4〜9のアルカジエニル基を示す。ここで、R4及びR5は、それらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜14のシクロアルケニル基又は炭素数5〜10のビシクロアルキル基を構成していてもよい。但し、R2、R3、R4が全て水素原子であり、かつR5がビニル基又はイソプロペニル基の場合、即ち、ビニル化合物がブタジエン及びイソプレンの場合は除かれる。
【0027】
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等が挙げられる。炭素数1〜7のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等が挙げられる。これらアルキル基には、構造異性体が含まれる。
炭素数2〜9のアルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル等が挙げられる。アルケニル基には、構造異性体が含まれる。
【0028】
炭素数4〜9のアルカジエニル基としては、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル等が挙げられる。アルカジエニル基には、構造異性体が含まれる。
炭素数3〜14のシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンテニル、1−メチルシクロペンテニル、シクロヘキセニル、1−メチルシクロヘキセニル、シクロヘキセンベンゾフルベニル、ベンゾフルベニル、ジベンゾフルべニル等が挙げられる。シクロアルケニル基には、構造異性体が含まれる。
【0029】
炭素数5〜10のビシクロアルキル基としては、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ノルボルニル、7,7−ジメチル−ノルボルニル、1,7,7−トリメチル−ノルボルニル、アダマンチル等が挙げられる。ビシクロアルキル基には、構造異性体が含まれる。
フェニル基の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、水酸基、アルコキシカルボニル基(アルキル基の炭素数1〜4)等が挙げられる。
【0030】
具体的なビニル化合物としては、例えば、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ヘキサジエン、2,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,4−オクタジエン、4−メチル−2,4−ヘキサジエン、2,4−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,1−ジフェニル−1,3−ブタジエン、4−フェニル−1,3−ペンタジエン、1,3,5−ウンデカトリエン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン等のジエン化合物が挙げられる。
【0031】
4及びR5が、それらが結合する炭素原子と共に構成する炭素数3〜14のシクロアルケニル基を含むビニル化合物としては、3−メチレンシクロペンテン、1−メチル−3−メチレンシクロペンテン、3−メチレンシクロヘキセン、1−メチル−3−メチレンシクロヘキセン、メチレンシクロヘキセンベンゾフルベン、ベンゾフルベン、ジベンゾフルべン等が挙げられる。
【0032】
4及びR5が、それらが結合する炭素原子と共に構成する炭素数5〜10のビシクロアルキル基を含むビニル化合物としては、β−ピネン、2−メチレンノルボルナン、7,7−ジメチル−2−メチレンノルボルナン、1,7,7−トリメチル−2−メチレンノルボルナン、2−メチレンアダマンタン等のエキソメチレン型ビシクロ化合物が挙げられる。
【0033】
上記具体的なビニル化合物の中で、反応性に優れるため共重合体の収率を向上できる観点から、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、3−メチレンシクロペンテン、β−ピネンが好ましく、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−メチレンシクロペンテン、β−ピネンが更に好ましい。
【0034】
(c)一般式(1)及び(2)由来の成分の組成比
一般式(1)由来の成分と、一般式(2)由来の成分との比は、10〜90モル%及び90〜10モル%が好ましい。この範囲では、耐熱性、透明性、硬化反応性が優れた共重合体を得ることができる。より好ましい両者の比は、40〜70モル%及び60〜30モル%である。ここで、一般式(1)由来の成分は、複数種からなる場合は、合計値を意味する。
【0035】
(d)架橋構造
オゾン分解性共重合体は、多価の、アルコール類、アミン類、チオール類及びエポキシ化合物類から選択される架橋剤により少なくとも一部架橋した構造を有していてもよい。架橋した構造を有することで、より耐久性を向上できる。この架橋した共重合体は、硬化性ポリマー材料として用いることができる。架橋した構造の占める割合は、実施例の欄に記載する不溶化率で表すと80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0036】
多価アルコール類としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、グリセリン、ペンタエリストール等が挙げられる。多価アルコール類には、構造異性体が含まれる。
【0037】
多価アミン類としては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ジエチレントリアミン、エタントリアミン、プロパントリアミン、ブタントリアミン、ペンタントリアミン、N−エチルメタントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリアミノベンゼン、トリアミノトルエン、エタンテトラアミン、プロパンテトラアミン、ブタンテトラアミン、ペンタンテトラアミン、ヘキサンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、メタフェニレンジアミン、ベンゼンペンタアミン、ベンゼンヘキサアミン等が挙げられる。多価アミン類には、構造異性体が含まれる。
【0038】
多価チオール類としては、エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ペンタンジチオール、ヘキサンジチオール、ヘプタンジチオール、オクタンジチオール、デカンジチオール、ドデカンジチオール、ビスフェノールAビス(3−メルカプトブチレート)ペンタエリスリトール、テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。多価チオール類には、構造異性体が含まれる。
【0039】
多価エポキシ化合物類としては、エチレングリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型エポキシ系樹脂等が挙げられる。多価エポキシ化合物類には、構造異性体が含まれる。
【0040】
(e)数平均分子量
オゾン分解性共重合体は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量が、2000以上であることが好ましい。この分子量を有することで、機械的特性に優れた共重合体を得ることができる。更に好ましい数平均分子量は、10000〜1000000である。
【0041】
(f)他の成分
オゾン分解性共重合体は、一般式(1)で表される無水マレイン酸、マレイミド又はその誘導体、及び一般式(2)で表されるビニル化合物以外の他のモノマーに由来する単位を含んでいてもよい。
【0042】
他のモノマーとしては、スチレン、イソブテン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキルは、例えば、炭素数1〜12のもの)等が挙げられる。具体的な共重合体としては、無水マレイン酸−ビニル化合物−スチレン共重合体、無水マレイン酸−ビニル化合物−イソブテン共重合体、無水マレイン酸−ビニル化合物−塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸−ビニル化合物−メタクリル酸アルキル共重合体、無水マレイン酸−ビニル化合物−イソブテン−メタクリル酸エステル共重合体、マレイミド−ビニル化合物−スチレン共重合体、マレイミド−ビニル化合物−イソブテン共重合体、マレイミド−ビニル化合物−塩化ビニル共重合体、マレイミド−ビニル化合物−メタクリル酸アルキル共重合体、マレイミド−ビニル化合物−イソブテン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる(なお、これら具体例において、無水マレイン酸及びマレイミドには、それぞれの誘導体も含まれる)。他のモノマー由来の単位の割合は、共重合体中、50モル%より少ないことが好ましく、25モル%以下であることがより好ましい。
【0043】
オゾン分解性共重合体を他の重合体と混合してもよい。他の共重合体としては、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブテン共重合体、無水マレイン酸−塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸−メタクリル酸アルキル共重合体、無水マレイン酸−イソブテン−メタクリル酸エステル共重合体、マレイミド−スチレン共重合体、マレイミド−イソブテン共重合体、マレイミド−塩化ビニル共重合体、マレイミド−メタクリル酸アルキル共重合体、マレイミド−イソブテン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリフマル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等が挙げられる。他の重合体と混合しても、オゾン分解性共重合体のオゾン分解により、容易に低分子量化、可溶化及び表面親水化することができる。他の重合体は、オゾン分解性共重合体と他の重合体との混合物中、50質量%より少ない含有割合であることが好ましく、25質量%以下の含有割合であることがより好ましい。
【0044】
なお、オゾン分解性共重合体に、無水マレイン酸又はその誘導体、マレイミド又はその誘導体、及びビニルジエン化合物のディールス−アルダー付加物が含まれる場合がある。この付加物は、共重合体製造時の副反応により生じる化合物である。この付加物の含有量は、共重合体中、50重量%より少ないことが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0045】
(オゾン分解性共重合体の合成法)
オゾン分解性共重合体は、無水マレイン酸、マレイミド又はその誘導体と、ビニル化合物とのラジカル重合により得ることができる。無水マレイン酸、マレイミド又はその誘導体と、ビニル化合物との反応は、通常、ディールス−アルダー反応が支配的であるが、本発明では、ビニル化合物が、嵩高い置換基を有しているため、ラジカル重合が支配的となる。
ラジカル重合には、公知の重合方法、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれも採用可能である。
【0046】
ラジカル重合は、通常、重合開始剤の存在下で行われる。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤が挙げられる。この内、熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0047】
光重合開始剤による重合方法を採用する場合、光増感剤を併用してもよい。重合のために照射される光は、太陽光、紫外線、γ線、電子線等が挙げられる。
ラジカル重合は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、モノマー及び重合開始剤を溶解させ得るものであれば、特に制限はない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;シクロヘキサン;シクロヘキサノン;ジオキサン;テトラヒドロフラン;アセトン;メチルエチルケトン;ジメチルホルムアミド;酢酸イソプロピル等が挙げられる。これら溶媒は、混合してもよい。
重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定できる。好ましい重合温度は、0〜150℃の範囲である。
【0048】
(オゾン分解性共重合体の架橋法)
オゾン分解性共重合体の架橋は、例えば、溶媒ならびに触媒の存在下あるいは不存在下、共重合体と架橋剤とを反応させることにより行われる。
溶媒としては、上記オゾン分解性共重合体の合成法で挙げた溶媒が挙げられ、触媒や架橋剤を溶解させ得るものであれば、特に制限はない。
【0049】
触媒としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ポリアミドポリアミン等の塩基触媒が挙げられる。
架橋反応は、例えば、30〜250℃の範囲の温度下で行うことができる。
【0050】
(オゾン分解性共重合体のオゾン分解法)
オゾン分解法は、共重合体とオゾンを接触させることができさえすれば特に限定されない。例えば、共重合体を溶媒に溶解又は分散させた溶液又は分散液中にオゾンを含むガスを導入する方法(液相法)、溶媒不存在下で共重合体を直接オゾンを含むガスに晒す方法(気相法)等が挙げられる。特に、共重合体の表面改質を行うには、共重合体が溶解しない溶媒中で反応を行うか、気相法でオゾン分解を行うことが望ましい。オゾンを含むガスは、オゾン発生器を使用して得てもよく、また、酸素含有ガスに紫外光照射してオゾンを発生させてもよい。
【0051】
(1)液相法
液相法に使用可能な溶媒としては、特に制限はなく、水及び有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒等が挙げられる。これら有機溶媒は、混合してもよい。
【0052】
液相法での共重合体とオゾンの接触は、溶媒中に予めオゾンを溶解しておき、その溶媒に共重合体を溶解又は分散させる方法、共重合体の溶液又は分散液中にオゾンを含むガス(例えば、不活性ガス、空気、酸素等にオゾンを分散させたガス)を吹き込む方法等が挙げられる。後者の方法において、オゾンを含むガスは、1気圧で吹き込まれてもよく、加圧して吹き込まれてもよい。
【0053】
液相法でのオゾン分解温度は、用いる溶媒の沸点以下、凝固点以上の温度であれば特に制限はない。オゾン分解温度は、溶媒中でのオゾンの溶存量をより増やすために、30℃以下であることが好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。
【0054】
(2)気相法
気相法での共重合体とオゾンの接触は、溶媒不存在下で、オゾンを含むガスを流通させた容器内に共重合体を配置する方法、オゾンを含むガスを直接共重合体に吹き付ける方法等が挙げられる。
【0055】
(3)後処理
液相法又は気相法によりオゾン分解に付された共重合体は、還元剤又は酸化剤を含む溶液で後処理しておくことが望ましい。還元剤としては、亜鉛、亜硫酸ナトリウム、トリフェニルホスフィン、ジメチルスルフィド、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、次亜リン酸化合物、硫化ナトリウム、水和ヒドラジン、ホルムアルデヒド等が挙げられる。酸化剤としては、過酸化水素、クロム酸、過マンガン酸カリウム、アンモニウムクロロクロメート等が挙げられる。
【0056】
(オゾン分解性共重合体の形態)
オゾン分解性共重合体は種々の形態を取り得る。例えば、共重合体単独のフィルム、基体上に形成された共重合体からなる塗膜等が挙げられる。フィルム及び塗膜は、それらの表面がオゾン雰囲気下に晒すことで改質されていてもよい。改質の程度は、改質の前後の水接触角で表現すると、改質後の水接触角が、改質前の数値の10%以上低下することが好ましく、改質前の数値の半分以下となることがさらに好ましい。また、市販のポリオレフィンの水接触角が90°以上、市販のポリスチレン、ポリカーボネート及びPETの水接触角が80〜90°、市販のアクリル樹脂の水接触角が70〜90°、アルミニウム及び真鍮の水接触角が70°、ガラスの水接触角が60°以下であることから、改質後の水接触角の数値が70°以下であることが好ましく、改質後の水接触角の数値が60°以下であることがより好ましく、改質後の水接触角の数値が30°以下であることが更に好ましい。
【実施例】
【0057】
本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に実施例により得られた分解性共重合体及び架橋体の評価・測定方法を示す。なお、断りのない限り試薬は市販品を用いた。
<共重合体の組成>
核磁気共鳴測定装置(日本電子社製、商品名ECS−400あるいはECX−400)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(1H−NMR)スペクトル分析より求めた。
【0058】
<数平均分子量の測定>
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)装置(恒温槽:クロマトサイエンス社製、商品名CS−300C、ポンプ:日本分光社製、商品名PU−2080PLUS、デガッサー:日本分光社製、商品名DG−2080−53、RI検出器:日本分光社製、商品名RI−2031PLUS、カラム:東ソー社製、商品名TSKGEL−GMHHR−NおよびTSKGEL−GMHHR−H)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0059】
<ガラス転移温度の測定>
示差走査熱量計(DSC)装置(島津製作所社製、商品名DSC―60)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定し、ガラス転移温度を求めた。
【0060】
<熱分解開始温度の測定>
熱重量分析/示差熱分析(TG/DTA)装置(島津製作所社製、商品名TGA−60)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定し、5%重量減少温度を熱分解開始温度として決定した。
【0061】
<可視光透過度の測定>
共重合体のクロロホルム溶液をキャストして膜厚50μmのフィルムを得た。フィルムを減圧下室温で1日乾燥後、分光光度計(VIS−UV)装置(島津製作所社製、商品名UV2400PC)を用い、400−800nmの透過度を求めた。
【0062】
<不溶化率の測定>
共重合体の溶液をシリコン板上にスピンコートにより塗膜を形成し、塗膜を60℃で5分間乾燥することで薄膜を作製した。所定の温度、時間で加熱し、薄膜を硬化した。得られた硬化薄膜をアセトンに5分間浸漬し、浸漬前後の膜厚比から不溶化率を算出した。
【0063】
<赤外吸収スペクトルの測定>
赤外吸収分光光度計(IR)装置(日本分光社製、商品名FTIR−410)を用いて測定した。
【0064】
<薄膜の表面硬度の測定>
井元製作所社製の鉛筆引っかき試験機を用いて、鉛筆硬度法によりスピンコートして得られた薄膜の硬度を求めた。
【0065】
<オゾン分解による共重合体の低分子量化>
オゾン発生器(オゾンマート社製、商品名オースリークリア)を用い、恒温漕中で、共重合体のテトラヒドロフラン又はアセトン溶液にオゾンを含む空気を吹き込み、反応溶液の上記<数平均分子量の測定>と同様にしてGPC測定により分子量を測定した。オゾン分解前後の分子量を比較することで、オゾン分解による低分子量化を評価した。
【0066】
<オゾン分解による架橋体の可溶化>
オゾン発生器(オゾンマート社製、商品名オースリークリア)を用い、恒温漕中で溶媒(水、テトラヒドロフラン又はアセトン)中にオゾンを含む空気を吹き込み、次いで溶媒中に予め厚さを測定したフィルム状の架橋体を浸漬し、オゾン分解を行った。分解後の架橋体をトリフェニルホスフィンを含む溶液に浸漬し、乾燥させた後、架橋体の厚さを測定した。オゾン分解前後の架橋体の膜厚比から可溶化率を算出した。
【0067】
<オゾン分解による共重合体の表面改質>
オゾン発生器(オゾンマート社製、商品名オースリークリア)を用い、恒温漕中で溶媒(水、テトラヒドロフラン又はアセトン)中にオゾンを含む空気を吹き込み、次いで溶媒中に予め水接触角を測定した共重合体フィルムを浸漬し、オゾン分解を行った。分解後、トリフェニルホスフィンを含む溶液にフィルムを浸漬し、乾燥させた後、共重合体の水接触角を測定した。オゾン分解前後の共重合体の水接触角の比較から表面親水性を評価した。
【0068】
<共重合体表面の水接触角測定>
接触角測定装置(協和界面科学社製、商品名DMS−400)を用い、共重合体表面の水接触角測定を行った。
【0069】
製造例1 (無水マレイン酸−1,3−ペンタジエン共重合体の合成)
容量20mLのガラスアンプルに、モノマーとして無水マレイン酸0.49g及び1,3−ペンタジエン0.34g、重合溶媒として1,2−ジクロロエタン10mL、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)0.031gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態でアンプルを熔封した。このアンプルを30℃の恒温槽に入れ、5時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、200mLのヘキサン中に滴下して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過により単離した後、室温で10時間真空乾燥することにより、無水マレイン酸−1,3−ペンタジエン共重合体0.26g(収率31%)を得た。モノマーから生じたディールス−アルダー付加物は0.38g(収率46%)であった。
【0070】
得られた無水マレイン酸−1,3−ペンタジエン共重合体の数平均分子量は20000であった。1H−NMR測定により、共重合体組成は無水マレイン酸/1,3−ペンタジエン=50.7/49.3(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は80℃、TG/DTAにより求めた分解開始温度(5%重量減少温度)は336℃であった。可視光透過率は90%以上であった。
【0071】
製造例2 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体の合成)
容量20mLのガラスアンプルに、モノマーとして無水マレイン酸0.49g及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン0.55g、重合溶媒として1,2−ジクロロエタン5mL、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)0.02gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態でアンプルを熔封した。このアンプルを30℃の恒温槽に入れ、20時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、200mLのヘキサン中に滴下して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過により単離した後、室温で10時間真空乾燥することにより、無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体0.66g(収率80%)を得た。モノマーから生じたディールス−アルダー付加物の生成収率は10%以下であった。
【0072】
得られた無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体の数平均分子量は14000であった。1H−NMR測定により、共重合体組成は無水マレイン酸/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=50.3/49.7(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は91℃、TG/DTAにより求めた熱分解開始温度(5%重量減少温度)は280℃であった。可視光透過率は90%以上であった。
【0073】
製造例3 (N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体の合成)
容量10mlのガラスアンプルに、モノマーとしてN−フェニルマレイミド0.87g及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン0.55g、重合溶媒として1,2−ジクロロエタン10ml、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.030gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、20時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、200mLのメタノール中に滴下して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過により単離した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体0.84g(収率59%)を得た。モノマーから生じたディールス−アルダー付加物は0.40g(収率28%)であった。
【0074】
得られたN−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体の数平均分子量は27200であった。1H−NMR測定により、共重合体組成はN−フェニルマレイミド/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=49.5/50.5(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は130℃、TG/DTAにより求めた分解開始温度(5%重量減少温度)は331℃であった。可視光透過率は90%以上であった。
【0075】
製造例4 (N−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体の合成)
2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンを2,4−ヘキサジエン0.41gに変更すること以外は、製造例3と同様にして、N−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体0.37g(収率41%)を得た。得られたN−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体の数平均分子量は30300であった。1H−NMR測定により、共重合体組成はN−フェニルマレイミド/2,4−ヘキサジエン=51.1/48.9(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は144℃、TG/DTAにより求めた分解開始温度(5%重量減少温度)は355℃であった。可視光透過率は90%以上であった。モノマーから生じたディールス−アルダー付加物は0.44g(収率49%)であった。
【0076】
製造例5 (N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体の合成)
N−フェニルマレイミドをN−メチルマレイミド0.48gに、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンを3−メチレンシクロペンテン0.40gに変更すること以外は、製造例3と同様にして、N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテンの共重合体0.86g(収率98%)を得た。得られたN,N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体の数平均分子量は105000であった。1H−NMR測定により、共重合体組成はN−メチルマレイミド/3−メチレンシクロペンテン=54.3/45.7(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は120℃、TG/DTAにより求めた分解開始温度(5%重量減少温度)は363℃であった。可視光透過率は95%以上であった。
【0077】
製造例6 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のジエポキシド化合物による架橋)
製造例2で合成した無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体(数平均分子量14000)0.05g、ジエポキシ化合物(架橋剤)としてビスフェノールAジグリシジル(0.044g、酸無水物に対してエポキシ基が等量)、塩基触媒としてN,N−ジメチルアミノピリジン(1.5μL、ビスフェノールAジグリシジルに対して3重量%)を0.5mLのシクロヘキサノンに溶解した。得られた溶液をシリコン板上にスピンコートして塗膜を得た。塗膜を60℃で5分間乾燥することで薄膜を作製した。薄膜を180℃で1時間加熱することで硬化(架橋)を行った。硬化した薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)をアセトンに5分間浸漬した。浸漬前後の膜厚比から求めた不溶化率は100%であった。
【0078】
薄膜は、赤外吸収分光法により、1780cm-1に観察される酸無水物のC=O伸縮振動による吸収強度が低下し、1738cm-1に観察されるエステル基のC=O伸縮振動による吸収強度が増大していることを確認した。
TG/DTAにより求めた硬化した薄膜の熱分解開始温度(5%重量減少温度)は301℃であった。また、薄膜の表面硬度は、硬化前では6B以下、硬化後は4Hであった。
【0079】
製造例7 (無水マレイン酸−N−アリルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のチオール化合物による架橋)
N−アリルマレイミド0.20gをさらに加えたこと以外は、製造例2と同様にして合成した無水マレイン酸−N−アリルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体(数平均分子量=11000、共重合体組成、無水マレイン酸/N−アリルマレイミド/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=18.0/28.0/54.0(モル%))を0.10g、テトラチオール化合物(架橋剤)としてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)0.02g、ラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.01gを0.5mLのシクロヘキサノンに溶解した。得られた溶液をシリコン板上にスピンコートして塗膜を得た。塗膜を60℃で5分間乾燥することで薄膜を作製した。薄膜を100℃で5時間加熱することで硬化(架橋)を行った。硬化した薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)をアセトンに5分間浸漬した。浸漬前後の膜厚比から求めた不溶化率は100%であった。
【0080】
比較製造例1 (無水マレイン酸−スチレン共重合体の合成)
1,3−ペンタジエンをスチレン0.52gに変更すること以外は、製造例1と同様にして、無水マレイン酸−スチレン共重合体0.98g(収率97%)を得た。得られた無水マレイン酸−スチレン共重合体の数平均分子量は21000であった。1H−NMR測定により、共重合体組成は無水マレイン酸/スチレン=49.5/50.5(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は205℃、TG/DTAにより求めた熱分解開始温度(5%重量減少温度)は306℃であった。可視光透過率は90%以上であった。
【0081】
実施例1 (無水マレイン酸−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例1で合成した無水マレイン酸と1,3−ペンタジエンの共重合体(数平均分子量=20000、無水マレイン酸/1,3−ペンタジエン=50.7/49.3モル%)0.01gを10mLのアセトンに溶かした。得られた溶液を、0℃に設定した恒温漕中でオゾンを含む空気を940mL/分の速度で10分間バブリングした。溶液中のオゾン濃度は0.1ミリモル/Lであった。その後、窒素ガスで溶液を10分間バブリングした。次いで、この溶液に還元剤であるトリフェニルホスフィン7mgを含むテトラヒドロフラン溶液1mLを添加し、添加後10分攪拌することで溶液中に生成したオゾニドを分解した。溶液を濃縮後、GPCにより共重合体の分子量を測定したところ、数平均分子量は980であった。
【0082】
実施例2 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
共重合体を製造例2で合成した無水マレイン酸と2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンの共重合体(数平均分子量=14000、無水マレイン酸/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=50.3/49.7モル%)に、オゾンを含む空気でのバブリング時間を5分間とすること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は1600であった。
【0083】
実施例3 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
オゾンを含む空気でのバブリング温度を−73℃に設定すること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は1080であった。
【0084】
実施例4 (N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例3で合成したN−フェニルマレイミドと2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンの共重合体(数平均分子量=27200、N−フェニルマレイミド/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=49.5/50.5モル%)を使用すること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は2000であった。
【0085】
実施例5 (N−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例4で合成したN−フェニルマレイミドと2,4−ヘキサジエンの共重合体(数平均分子量30300、N−フェニルマレイミド/2,4−ヘキサジエン=51.1/48.9モル%)を使用すること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は2000であった。
【0086】
実施例6 (N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例3で合成したN−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体(数平均分子量27200、N−フェニルマレイミド/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=49.5/50.5モル%)を、ホットプレート上で120℃に加熱しながら、高圧水銀ランプを用いて10cmの距離から1時間紫外線照射を行った。照射後の共重合体をテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は10800であった。共重合体の一部に着色が認められた。
【0087】
実施例7 (N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例5で合成したN−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体(数平均分子量=105000、N−メチルマレイミド/3−メチレンシクロペンテン=54.3/45.7(モル%)を、ホットプレート上で120℃に加熱しながら、高圧水銀ランプを用いて10cmの距離から10時間紫外線照射を行った。照射後の共重合体をテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は23000であった。共重合体の一部に着色が認められた。
【0088】
実施例8 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のジエポキシドによる架橋体のオゾン分解による可溶化)
製造例6で作製したシリコン板上の無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のジエポキシ化合物による架橋薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)を50mLのテトラヒドロフランに浸した後、0℃に設定した恒温漕中でオゾンを含む空気を940mL/分の速度で10分間バブリングした。溶液中のオゾン濃度は0.1ミリモル/Lであった。その後、窒素ガスで架橋薄膜が浸漬されたテトラヒドロフランを5分間バブリングした。次いで、このテトラヒドロフランを還元剤であるトリフェニルホスフィンのテトラヒドロフラン溶液(5重量%)と混合し、10分静置した。分解前後の膜厚比から求めた再可溶化率は75%であった。
【0089】
実施例9 (無水マレイン酸−N−アリルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のチオール化合物による架橋体のオゾン分解による可溶化)
製造例7で作製したシリコン板上の無水マレイン酸−N−アリルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のチオール化合物による架橋薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)を50mLのテトラヒドロフランに浸した後、0℃に設定した恒温漕中でオゾンを含む空気を940mL/分の速度で10分間バブリングした。溶液中のオゾン濃度は0.1ミリモル/Lであった。その後、窒素ガスで架橋薄膜が浸漬されたテトラヒドロフランを5分間バブリングした。次いで、このテトラヒドロフランを還元剤であるトリフェニルホスフィンのテトラヒドロフラン溶液(5重量%)と混合し、10分静置した。分解前後の膜厚比から求めた再可溶化率は60%であった。
【0090】
実施例10 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のジエポキシドによる架橋体のオゾン分解による表面改質)
製造例6で合成したシリコン板上の無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のエポキシ化合物による架橋薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)をオゾンを含む空気流量940mL/分)に5分間あるいは30分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前78.5°、5分間オゾン処理後71.5°、30分間オゾン処理後69.6°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。
【0091】
実施例11 (N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体フィルムのオゾン分解による表面改質)
製造例3で合成したN−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体からなる薄膜(膜厚70μm)を、クロロホルムを溶媒とするキャスト法により、シリコン板上に形成した。この薄膜をオゾンを含む空気(流量940mL/分)に10分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前82.6°、30分間オゾン処理後74.0°、1時間オゾン処理後26.8°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。
【0092】
実施例12 (N−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体フィルムのオゾン分解による表面改質)
製造例4で合成したN−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体からなる薄膜(膜厚70μm)を、クロロホルムを溶媒とするキャスト法により、シリコン板上に形成した。この薄膜をオゾンを含む空気(流量940mL/分)に10分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前76.0°、30分間オゾン処理後27.0°1時間オゾン処理後19.0°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。
【0093】
実施例13 (N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体フィルムのオゾン分解による表面改質)
製造例5で合成したN−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体からなる薄膜(膜厚70μm)を、クロロホルムを溶媒とするキャスト法により、シリコン板上に形成した。この薄膜をオゾンを含む空気(流量940mL/分)に10分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前67.0°、30分間オゾン処理後62.3°、1時間オゾン処理後56.4°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。
【0094】
比較例1 (無水マレイン酸−スチレン共重合体のオゾン分解)
共重合体を比較製造例1で合成した無水マレイン酸−スチレン共重合体(数平均分子量21000、無水マレイン酸/スチレン=49.5/50.5)0.05gに、トリフェニルホスフィン5mgとすること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は21000であった。
【0095】
比較例2 (無水マレイン酸−スチレン共重合体のジエポキシド化合物による架橋体のオゾン分解による表面改質)
2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンをスチレン0.52gとすること以外は、製造例6と同様にして得た無水マレイン酸−スチレン共重合体のジエポキシド化合物による架橋体からなる薄膜(膜厚70μm)をオゾンを含む空気(流量940mL/分)に5分間あるいは30分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前74.8°、5分間オゾン処理後74.0°、30分間オゾン処理後73.5°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。