【実施例】
【0057】
本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に実施例により得られた分解性共重合体及び架橋体の評価・測定方法を示す。なお、断りのない限り試薬は市販品を用いた。
<共重合体の組成>
核磁気共鳴測定装置(日本電子社製、商品名ECS−400あるいはECX−400)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(
1H−NMR)スペクトル分析より求めた。
【0058】
<数平均分子量の測定>
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)装置(恒温槽:クロマトサイエンス社製、商品名CS−300C、ポンプ:日本分光社製、商品名PU−2080PLUS、デガッサー:日本分光社製、商品名DG−2080−53、RI検出器:日本分光社製、商品名RI−2031PLUS、カラム:東ソー社製、商品名TSKGEL−GMH
HR−NおよびTSKGEL−GMH
HR−H)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0059】
<ガラス転移温度の測定>
示差走査熱量計(DSC)装置(島津製作所社製、商品名DSC―60)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定し、ガラス転移温度を求めた。
【0060】
<熱分解開始温度の測定>
熱重量分析/示差熱分析(TG/DTA)装置(島津製作所社製、商品名TGA−60)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定し、5%重量減少温度を熱分解開始温度として決定した。
【0061】
<可視光透過度の測定>
共重合体のクロロホルム溶液をキャストして膜厚50μmのフィルムを得た。フィルムを減圧下室温で1日乾燥後、分光光度計(VIS−UV)装置(島津製作所社製、商品名UV2400PC)を用い、400−800nmの透過度を求めた。
【0062】
<不溶化率の測定>
共重合体の溶液をシリコン板上にスピンコートにより塗膜を形成し、塗膜を60℃で5分間乾燥することで薄膜を作製した。所定の温度、時間で加熱し、薄膜を硬化した。得られた硬化薄膜をアセトンに5分間浸漬し、浸漬前後の膜厚比から不溶化率を算出した。
【0063】
<赤外吸収スペクトルの測定>
赤外吸収分光光度計(IR)装置(日本分光社製、商品名FTIR−410)を用いて測定した。
【0064】
<薄膜の表面硬度の測定>
井元製作所社製の鉛筆引っかき試験機を用いて、鉛筆硬度法によりスピンコートして得られた薄膜の硬度を求めた。
【0065】
<オゾン分解による共重合体の低分子量化>
オゾン発生器(オゾンマート社製、商品名オースリークリア)を用い、恒温漕中で、共重合体のテトラヒドロフラン又はアセトン溶液にオゾンを含む空気を吹き込み、反応溶液の上記<数平均分子量の測定>と同様にしてGPC測定により分子量を測定した。オゾン分解前後の分子量を比較することで、オゾン分解による低分子量化を評価した。
【0066】
<オゾン分解による架橋体の可溶化>
オゾン発生器(オゾンマート社製、商品名オースリークリア)を用い、恒温漕中で溶媒(水、テトラヒドロフラン又はアセトン)中にオゾンを含む空気を吹き込み、次いで溶媒中に予め厚さを測定したフィルム状の架橋体を浸漬し、オゾン分解を行った。分解後の架橋体をトリフェニルホスフィンを含む溶液に浸漬し、乾燥させた後、架橋体の厚さを測定した。オゾン分解前後の架橋体の膜厚比から可溶化率を算出した。
【0067】
<オゾン分解による共重合体の表面改質>
オゾン発生器(オゾンマート社製、商品名オースリークリア)を用い、恒温漕中で溶媒(水、テトラヒドロフラン又はアセトン)中にオゾンを含む空気を吹き込み、次いで溶媒中に予め水接触角を測定した共重合体フィルムを浸漬し、オゾン分解を行った。分解後、トリフェニルホスフィンを含む溶液にフィルムを浸漬し、乾燥させた後、共重合体の水接触角を測定した。オゾン分解前後の共重合体の水接触角の比較から表面親水性を評価した。
【0068】
<共重合体表面の水接触角測定>
接触角測定装置(協和界面科学社製、商品名DMS−400)を用い、共重合体表面の水接触角測定を行った。
【0069】
製造例1 (無水マレイン酸−1,3−ペンタジエン共重合体の合成)
容量20mLのガラスアンプルに、モノマーとして無水マレイン酸0.49g及び1,3−ペンタジエン0.34g、重合溶媒として1,2−ジクロロエタン10mL、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)0.031gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態でアンプルを熔封した。このアンプルを30℃の恒温槽に入れ、5時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、200mLのヘキサン中に滴下して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過により単離した後、室温で10時間真空乾燥することにより、無水マレイン酸−1,3−ペンタジエン共重合体0.26g(収率31%)を得た。モノマーから生じたディールス−アルダー付加物は0.38g(収率46%)であった。
【0070】
得られた無水マレイン酸−1,3−ペンタジエン共重合体の数平均分子量は20000であった。
1H−NMR測定により、共重合体組成は無水マレイン酸/1,3−ペンタジエン=50.7/49.3(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は80℃、TG/DTAにより求めた分解開始温度(5%重量減少温度)は336℃であった。可視光透過率は90%以上であった。
【0071】
製造例2 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体の合成)
容量20mLのガラスアンプルに、モノマーとして無水マレイン酸0.49g及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン0.55g、重合溶媒として1,2−ジクロロエタン5mL、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)0.02gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態でアンプルを熔封した。このアンプルを30℃の恒温槽に入れ、20時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、200mLのヘキサン中に滴下して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過により単離した後、室温で10時間真空乾燥することにより、無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体0.66g(収率80%)を得た。モノマーから生じたディールス−アルダー付加物の生成収率は10%以下であった。
【0072】
得られた無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体の数平均分子量は14000であった。
1H−NMR測定により、共重合体組成は無水マレイン酸/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=50.3/49.7(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は91℃、TG/DTAにより求めた熱分解開始温度(5%重量減少温度)は280℃であった。可視光透過率は90%以上であった。
【0073】
製造例3 (N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体の合成)
容量10mlのガラスアンプルに、モノマーとしてN−フェニルマレイミド0.87g及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン0.55g、重合溶媒として1,2−ジクロロエタン10ml、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.030gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、20時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、200mLのメタノール中に滴下して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過により単離した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体0.84g(収率59%)を得た。モノマーから生じたディールス−アルダー付加物は0.40g(収率28%)であった。
【0074】
得られたN−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体の数平均分子量は27200であった。
1H−NMR測定により、共重合体組成はN−フェニルマレイミド/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=49.5/50.5(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は130℃、TG/DTAにより求めた分解開始温度(5%重量減少温度)は331℃であった。可視光透過率は90%以上であった。
【0075】
製造例4 (N−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体の合成)
2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンを2,4−ヘキサジエン0.41gに変更すること以外は、製造例3と同様にして、N−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体0.37g(収率41%)を得た。得られたN−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体の数平均分子量は30300であった。
1H−NMR測定により、共重合体組成はN−フェニルマレイミド/2,4−ヘキサジエン=51.1/48.9(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は144℃、TG/DTAにより求めた分解開始温度(5%重量減少温度)は355℃であった。可視光透過率は90%以上であった。モノマーから生じたディールス−アルダー付加物は0.44g(収率49%)であった。
【0076】
製造例5 (N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体の合成)
N−フェニルマレイミドをN−メチルマレイミド0.48gに、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンを3−メチレンシクロペンテン0.40gに変更すること以外は、製造例3と同様にして、N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテンの共重合体0.86g(収率98%)を得た。得られたN,N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体の数平均分子量は105000であった。
1H−NMR測定により、共重合体組成はN−メチルマレイミド/3−メチレンシクロペンテン=54.3/45.7(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は120℃、TG/DTAにより求めた分解開始温度(5%重量減少温度)は363℃であった。可視光透過率は95%以上であった。
【0077】
製造例6 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のジエポキシド化合物による架橋)
製造例2で合成した無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体(数平均分子量14000)0.05g、ジエポキシ化合物(架橋剤)としてビスフェノールAジグリシジル(0.044g、酸無水物に対してエポキシ基が等量)、塩基触媒としてN,N−ジメチルアミノピリジン(1.5μL、ビスフェノールAジグリシジルに対して3重量%)を0.5mLのシクロヘキサノンに溶解した。得られた溶液をシリコン板上にスピンコートして塗膜を得た。塗膜を60℃で5分間乾燥することで薄膜を作製した。薄膜を180℃で1時間加熱することで硬化(架橋)を行った。硬化した薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)をアセトンに5分間浸漬した。浸漬前後の膜厚比から求めた不溶化率は100%であった。
【0078】
薄膜は、赤外吸収分光法により、1780cm
-1に観察される酸無水物のC=O伸縮振動による吸収強度が低下し、1738cm
-1に観察されるエステル基のC=O伸縮振動による吸収強度が増大していることを確認した。
TG/DTAにより求めた硬化した薄膜の熱分解開始温度(5%重量減少温度)は301℃であった。また、薄膜の表面硬度は、硬化前では6B以下、硬化後は4Hであった。
【0079】
製造例7 (無水マレイン酸−N−アリルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のチオール化合物による架橋)
N−アリルマレイミド0.20gをさらに加えたこと以外は、製造例2と同様にして合成した無水マレイン酸−N−アリルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体(数平均分子量=11000、共重合体組成、無水マレイン酸/N−アリルマレイミド/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=18.0/28.0/54.0(モル%))を0.10g、テトラチオール化合物(架橋剤)としてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)0.02g、ラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.01gを0.5mLのシクロヘキサノンに溶解した。得られた溶液をシリコン板上にスピンコートして塗膜を得た。塗膜を60℃で5分間乾燥することで薄膜を作製した。薄膜を100℃で5時間加熱することで硬化(架橋)を行った。硬化した薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)をアセトンに5分間浸漬した。浸漬前後の膜厚比から求めた不溶化率は100%であった。
【0080】
比較製造例1 (無水マレイン酸−スチレン共重合体の合成)
1,3−ペンタジエンをスチレン0.52gに変更すること以外は、製造例1と同様にして、無水マレイン酸−スチレン共重合体0.98g(収率97%)を得た。得られた無水マレイン酸−スチレン共重合体の数平均分子量は21000であった。
1H−NMR測定により、共重合体組成は無水マレイン酸/スチレン=49.5/50.5(モル%)であることを確認した。DSCにより求めたガラス転移温度は205℃、TG/DTAにより求めた熱分解開始温度(5%重量減少温度)は306℃であった。可視光透過率は90%以上であった。
【0081】
実施例1 (無水マレイン酸−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例1で合成した無水マレイン酸と1,3−ペンタジエンの共重合体(数平均分子量=20000、無水マレイン酸/1,3−ペンタジエン=50.7/49.3モル%)0.01gを10mLのアセトンに溶かした。得られた溶液を、0℃に設定した恒温漕中でオゾンを含む空気を940mL/分の速度で10分間バブリングした。溶液中のオゾン濃度は0.1ミリモル/Lであった。その後、窒素ガスで溶液を10分間バブリングした。次いで、この溶液に還元剤であるトリフェニルホスフィン7mgを含むテトラヒドロフラン溶液1mLを添加し、添加後10分攪拌することで溶液中に生成したオゾニドを分解した。溶液を濃縮後、GPCにより共重合体の分子量を測定したところ、数平均分子量は980であった。
【0082】
実施例2 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
共重合体を製造例2で合成した無水マレイン酸と2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンの共重合体(数平均分子量=14000、無水マレイン酸/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=50.3/49.7モル%)に、オゾンを含む空気でのバブリング時間を5分間とすること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は1600であった。
【0083】
実施例3 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
オゾンを含む空気でのバブリング温度を−73℃に設定すること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は1080であった。
【0084】
実施例4 (N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例3で合成したN−フェニルマレイミドと2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンの共重合体(数平均分子量=27200、N−フェニルマレイミド/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=49.5/50.5モル%)を使用すること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は2000であった。
【0085】
実施例5 (N−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例4で合成したN−フェニルマレイミドと2,4−ヘキサジエンの共重合体(数平均分子量30300、N−フェニルマレイミド/2,4−ヘキサジエン=51.1/48.9モル%)を使用すること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は2000であった。
【0086】
実施例6 (N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例3で合成したN−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体(数平均分子量27200、N−フェニルマレイミド/2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン=49.5/50.5モル%)を、ホットプレート上で120℃に加熱しながら、高圧水銀ランプを用いて10cmの距離から1時間紫外線照射を行った。照射後の共重合体をテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は10800であった。共重合体の一部に着色が認められた。
【0087】
実施例7 (N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体のオゾン分解による低分子化)
製造例5で合成したN−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体(数平均分子量=105000、N−メチルマレイミド/3−メチレンシクロペンテン=54.3/45.7(モル%)を、ホットプレート上で120℃に加熱しながら、高圧水銀ランプを用いて10cmの距離から10時間紫外線照射を行った。照射後の共重合体をテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は23000であった。共重合体の一部に着色が認められた。
【0088】
実施例8 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のジエポキシドによる架橋体のオゾン分解による可溶化)
製造例6で作製したシリコン板上の無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のジエポキシ化合物による架橋薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)を50mLのテトラヒドロフランに浸した後、0℃に設定した恒温漕中でオゾンを含む空気を940mL/分の速度で10分間バブリングした。溶液中のオゾン濃度は0.1ミリモル/Lであった。その後、窒素ガスで架橋薄膜が浸漬されたテトラヒドロフランを5分間バブリングした。次いで、このテトラヒドロフランを還元剤であるトリフェニルホスフィンのテトラヒドロフラン溶液(5重量%)と混合し、10分静置した。分解前後の膜厚比から求めた再可溶化率は75%であった。
【0089】
実施例9 (無水マレイン酸−N−アリルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のチオール化合物による架橋体のオゾン分解による可溶化)
製造例7で作製したシリコン板上の無水マレイン酸−N−アリルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のチオール化合物による架橋薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)を50mLのテトラヒドロフランに浸した後、0℃に設定した恒温漕中でオゾンを含む空気を940mL/分の速度で10分間バブリングした。溶液中のオゾン濃度は0.1ミリモル/Lであった。その後、窒素ガスで架橋薄膜が浸漬されたテトラヒドロフランを5分間バブリングした。次いで、このテトラヒドロフランを還元剤であるトリフェニルホスフィンのテトラヒドロフラン溶液(5重量%)と混合し、10分静置した。分解前後の膜厚比から求めた再可溶化率は60%であった。
【0090】
実施例10 (無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のジエポキシドによる架橋体のオゾン分解による表面改質)
製造例6で合成したシリコン板上の無水マレイン酸−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体のエポキシ化合物による架橋薄膜(膜厚0.5〜0.9μm)をオゾンを含む空気流量940mL/分)に5分間あるいは30分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前78.5°、5分間オゾン処理後71.5°、30分間オゾン処理後69.6°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。
【0091】
実施例11 (N−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体フィルムのオゾン分解による表面改質)
製造例3で合成したN−フェニルマレイミド−2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン共重合体からなる薄膜(膜厚70μm)を、クロロホルムを溶媒とするキャスト法により、シリコン板上に形成した。この薄膜をオゾンを含む空気(流量940mL/分)に10分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前82.6°、30分間オゾン処理後74.0°、1時間オゾン処理後26.8°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。
【0092】
実施例12 (N−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体フィルムのオゾン分解による表面改質)
製造例4で合成したN−フェニルマレイミド−2,4−ヘキサジエン共重合体からなる薄膜(膜厚70μm)を、クロロホルムを溶媒とするキャスト法により、シリコン板上に形成した。この薄膜をオゾンを含む空気(流量940mL/分)に10分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前76.0°、30分間オゾン処理後27.0°1時間オゾン処理後19.0°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。
【0093】
実施例13 (N−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体フィルムのオゾン分解による表面改質)
製造例5で合成したN−メチルマレイミド−3−メチレンシクロペンテン共重合体からなる薄膜(膜厚70μm)を、クロロホルムを溶媒とするキャスト法により、シリコン板上に形成した。この薄膜をオゾンを含む空気(流量940mL/分)に10分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前67.0°、30分間オゾン処理後62.3°、1時間オゾン処理後56.4°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。
【0094】
比較例1 (無水マレイン酸−スチレン共重合体のオゾン分解)
共重合体を比較製造例1で合成した無水マレイン酸−スチレン共重合体(数平均分子量21000、無水マレイン酸/スチレン=49.5/50.5)0.05gに、トリフェニルホスフィン5mgとすること以外は、実施例1と同様にして、GPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量は21000であった。
【0095】
比較例2 (無水マレイン酸−スチレン共重合体のジエポキシド化合物による架橋体のオゾン分解による表面改質)
2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンをスチレン0.52gとすること以外は、製造例6と同様にして得た無水マレイン酸−スチレン共重合体のジエポキシド化合物による架橋体からなる薄膜(膜厚70μm)をオゾンを含む空気(流量940mL/分)に5分間あるいは30分間曝した。オゾン処理前後の水接触角は、オゾン処理前74.8°、5分間オゾン処理後74.0°、30分間オゾン処理後73.5°であった。オゾン処理前後で薄膜の表面形状に変化はみられなかった。