【実施例1】
【0024】
図1は本発明に係る飛散防止具の保持具の構成を示す側面説明図、
図2は
図1に示したA−A方向からみた部分正面図、
図3は
図1に示したB−B方向から見た部分正面図、
図4は
図1に示したC−C方向から見た背面図、
図5は
図1に示した保持具に取り付けられるメッシュシートの平面概念図、
図6は
図1に示した保持具が取り付けられる防音壁の取り付け部位付近の構成を示す側面説明図、
図7は
図6に示したD−D方向から見た上端面図、
図8は
図1に示した保持具を
図6に示した防音壁に取り付ける状態を示す側面説明図、
図9は
図8に示したE−E方向から見た正面図、
図10は
図8に示したF−F方向から見た上面図、
図11は
図9に示した保持具に
図5に示したメッシュシートを装着した状態を示す正面図、
図12は
図11に示した保持具に係止された状態を示す正面図、
図13は保持具に係止されたメッシュシートの下縁側の係止状態を示す正面図である。
【0025】
まず、
図6及び
図7に基づき、本発明に係る飛散防止具が取り付けられる防音壁について説明する。
図中、2は防音壁、20は図示しない基礎壁の上縁に、所定の間隔で略鉛直に設けられる支柱、200は支柱20のウェブ部、201は支柱20の第1フランジ部、202は支柱20の第2フランジ部、21は図示しない基礎壁の上縁に沿って配され、図示しない係止手段を介して支柱20に係止される防音パネルである。
【0026】
この防音壁2は、既に、高架式の高速道路などの側部に沿って設けられている周知の防音壁の一種である。
支柱20は、図示しない例えばコンクリート製の基礎壁の上縁から上方に向けて鉛直に突出して設けられるものであり、複数の支柱20が、予め定められた間隔で設けられる。
【0027】
この支柱20は、基礎壁の上面を、その幅方向に沿って横切る方向に配置されるウェブ部200と、ウェブ部200の側縁のうち、車両の走行路に面する側の側縁に、基礎壁の延伸方向、即ち、基礎壁の長さ方向に沿った構成面を有する第1フランジ部201と、ウェブ部200の鉛直方向に沿った側縁のうち、第1フランジ部201とは反対側の側縁に、基礎壁の延伸方向、即ち、基礎編機の長さ方向に沿った構成面を有する第2フランジ部202を有する。
従って、この支柱20を上方から見た端面は、略H字状であり、この支柱20には、通常、いわゆるH形鋼が用いられる。
【0028】
防音パネル21は、既に汎用になっている防音パネルであり、例えば、透光性を備えた樹脂製、強化ガラス製などパネルである。
この防音パネル21は、2本の支柱の間に、その両側が係止された状態で、取り付けられる。
このとき、防音パネル21は、第1フランジ部の、第2フランジとの対向面に、第2フランジ部との間に間隙を介した状態に、図示しない係止手段を介して、2本の支柱20間に係止される。
【0029】
次に、
図1から
図5について説明する。
図中、1は本発明に係る飛散防止具の保持具、10は保持具1の本体、100は本体10の天面部、101は本体10の挿入部、101aは挿入部101の中ほどに設けられるスリット、1010〜1013は挿入部101に設けられるボルト部、1020は挿入部100の先端に設けられる抜け止め手段、1021は挿入部100の先端に設けられる抜け止め手段、11は保持具1の係止プレート、110〜113は係止プレートに設けられる貫通孔、12はメッシュシート、120はメッシュシート12の縦糸、121はメッシュシートの横糸、122は強化メッシュ帯である。
【0030】
なお、
図1中、メッシュシート12は便宜上省略してある。
このため、
図1に示した保持具1には、図示しないメッシュシートも含むものである。
保持具1は、本体10と、係止プレート11を主要な構成とする。
本体10は、矩形状の天面部100と、天面部100の一辺から天面部100に対して垂直に延びる挿入部101と、挿入部101の先端縁から、挿入部101の延伸方向に延びる抜け止め手段1020、1021を具備する。
【0031】
挿入部101の幅(
図2中、横方向の長さ)は、第2フランジ部の幅より広く、後述のスリット101aに、支柱20のウェブ部200が貫通した状態のときに、
図9に示すように、その両側がウェブ部200の外側に張り出すものである。
挿入部101は、
図2に示されるように、その中央にスリット101aが設けられる。
このスリット101aは、後述するとおり、保持具1の防音壁に対する装着時に、支柱のウェブ部200が貫通する。
【0032】
また、挿入部101の側縁近傍で、かつ、ウェブ部200の外側に張り出す領域には、ウェブ部200が当接する面から、その面に対して垂直方向に突出するボルト部1010〜1013が設けられる。
このボルト部1010〜1013は、本実施例では、片側2本ずつ、合計4本設けられる。
【0033】
抜け止め手段1020、1021は、
図2に示すように、挿入部101の先端縁から、スリット101aを塞がないよう、スリット101の位置を挟んで、スリット101aの設置方向に沿って、一対設けられる。
この抜け止め手段1020、1021は、それぞれ、金属板を曲げ加工されたものである。
【0034】
具体的には、この抜け止め手段1020、1021は、それぞれ、挿入部101の先端縁から延びる長尺の金属板の中ほどで、天面部100の方向に鋭角な角度になるよう折り曲げ、さらに、折り返した部分を、その中ほどからさらに、内側に巻き込むように折り曲げて形成される。
この抜け止め手段1020、1021は、それぞれの折り曲げた部分を押しつぶすと、もとの形状に広がる方向に作用する弾性を有する。
【0035】
なお、この抜け止め手段1020、1021の厚さT(
図1にTとして示した幅)は、上記の防音パネル21と、第2フランジ部202の間隙の幅より狭くなり、かつ、押しつぶした状態で挿入可能なものとする。
【0036】
係止プレート11は、略矩形状のプレートであり、係止プレート11を挿入部101に重ね合わせたときに、挿入部101の各ボルト部1010〜1013が貫通する位置に、貫通孔110〜113を有する。
【0037】
この係止プレート11は、その貫通孔110〜113に、挿入部101の各ボルト部1010〜1014を貫通させた状態で、本体10に保持され、貫通孔110〜113から突出した各ボルト部1010〜1014に、ナットを取り付けることにより、本体10から脱落しないよう係止される。
【0038】
メッシュシート12は、略矩形状のシートであり、強化繊維の芯に樹脂を含浸させるか、芯を樹脂でコーティングした複合線材をメッシュ状に配置し、一体に成形したものである。
【0039】
本実施例で使用するメッシュシート12は、狭い間隔で配置される2条の複合線材を一組として、これを縦糸120とし、この縦糸120が、複数組、所定のメッシュ間隔で配置され、また、隣接して配置される2状の複合線材を一体に成形したものを横糸121とし、この横糸121が、複数組、縦糸120に直交するよう所定のメッシュ間隔で配置される。
【0040】
そして、メッシュシート12の、横糸121に平行な両縁辺に沿って、複数の複合線材を、横糸と平行に狭い間隔で配置し、縁辺に沿った帯状の強化メッシュ帯122が設けられる。
この強化メッシュ帯122の強度を、さらに高めるため、細い強化繊維に樹脂を含浸させた補助糸が、強化メッシュ帯122を構成する複数の複合線材を横断する方向、即ち、縦糸と略平行な方向に、例えば、複合線材の直径と略同一な間隔で配置される。
【0041】
このように、強化メッシュ帯122は、そのメッシュ密度が、メッシュシート12の主要な領域、具体的には、強化メッシュ帯122以外の領域のメッシュの密度より高く、これにより、メッシュシート12の吊り下げ時の破損や、大きな弛みを防止できる。
【0042】
メッシュシート12は、上記の構造物を熱溶着や熱接着によって、シート状に一体に成形される。
なお、このメッシュシート12は、例えば、高架道路の保守工事である、コンクリートの剥落防止に用いられているメッシュシートとして、既に市販されているものと同等のものである。
【0043】
次に、
図8から
図13に基づき、上記実施例の使用方法について具体的に説明する。
上記の保持具1を防音壁2に取り付ける場合、まず、
図8に示したように、保持具1の本体10の天面部100が、支柱20の上縁部を覆うよう、本体10の抜け止め手段1020、1021を、防音パネル21と、第2フランジ部202との間隙に挿入し、本体10の天面部100が、支柱20の上縁に突き当たるまで押し込む。
【0044】
このとき、抜け止め手段1020、1021は、防音パネル21と、第2フランジ部202の間隙で押し潰される。
この抜け止め手段1020、1021の弾性により、ネジなどの物理的な固定手段を要することなく、本体10は、防音壁2に緊密に装着される。
このとき、本体10のボルト部1010〜1013は、
図9及び
図10に示したように、支柱20の第2フランジ部202の両側から、防音壁20から突出する方向に延びる。
【0045】
この本体10は、所定の間隔、具体的には、メッシュシート12の長さより短い間隔で、支柱20の上端に設けられる。
なお、施工領域全域にわたり、全ての支柱20の上端に、本体10を設けることが推奨される。
【0046】
メッシュシート12は、例えば、
図11に示したように、メッシュ部分の空隙に、このボルト部1010〜1013が貫通するよう、本体10に引っ掛けられる。
メッシュシート12が引っ掛けられた本体10に対し、係止プレート11が、本体10との間に、第2フランジ部202、メッシュシート12を挟むよう配置され、係止プレート11の貫通孔110〜113を貫通した、本体10のボルト部1010〜1013に、ナットを取り付け、締め付ける。
これにより、メッシュシート12は、保持具1に係止される。
【0047】
また、メッシュシート12の上縁は、保持具1の本体10の設置位置で、同様に係止され、さらに、メッシュシート12が、施工領域の途中で途切れた場合には、図示しない別のメッシュシート12が、同様に係止される。
一方、メッシュシート12の下縁側であるが、この領域は、保持具1への係止状態で、
図13に示したように、防音壁2の基礎壁22の上縁付近を覆うように垂れ下がる。
【0048】
この基礎壁22を覆う領域のメッシュシート12は、例えば、あと施工アンカーボルトを介して、基礎壁22に固定される。
この固定は、例えば、従来のコンクリート剥落防止のために、メッシュシートをコンクリートの表面に固定する方法と同様の方法が推奨される。
この場合、メッシュシート12とボルトの間には、メッシュシート12の破損防止のために、ワッシャを挟むことが推奨される。
【0049】
上記の実施例では、防音壁に対する保持具は、工具を使用することなく、極めて容易に位置決めした上で押し込むだけで、所要の位置に取り付けることができ、また、保持具に対するメッシュシートの取り付けも、メッシュシートの網目に、突出するボルトを貫通させ、メッシュシートを係止プレートで挟んだ状態でナット締めするだけでよく、さらに、メッシュシートの下縁側も、コンクリート製の構造物に対する汎用のあと施工アンカーボルトによって固定できる。
【0050】
このため、上記の実施例では、作業員の熟練度が施工結果に作用する余地が極めて少なく、道路保守作業に従事する者であれば、だれでも安定した施工結果を得ることができ、また、作業内容自体も極めて基本的な作業の組み合わせであると共に、特殊工具や複雑な作業が不要なので、例えば、夜間の工事の場合でも、強度の照明設備なしに、確実に施工作業ができる。
また、使用されるメッシュシートも、高架道路の保守に既に使用されているコンクリートの剥落防止用のものの転用が可能であるので、資材の導入コストも抑制でき、資材の保管・管理コストも抑制できる。
【0051】
なお、上記実施例において、メッシュシートの構成は、防音パネルの破損に伴って、防音パネルと共に大きく破損しない程度の強度を有し、かつ、破損によって通常想定される破片の大部分が通過しない程度の目の粗さであれば、上記の実施例に限定されない。
また、保持具の形状は、防音壁の支柱と防音パネルの間に挿入することにより、防音壁の上縁付近に固定でき、かつ、防音壁から突出するボルトを保持するものであれば、実施例に限定されない。
【0052】
特に、抜け止め手段の形状や構成は、防音壁の隙間に緊密にはまり、抜け止め手段の弾性力や、抜け止め手段と防音壁との摩擦力によって、不用意に脱落しないものであれば、どのようなものであってもよい。
【0053】
また、メッシュシートの下縁側の固定は、例えば、コンクリートの剥落防止のために、コンクリートの表面にメッシュシートを固定しうる方法であれば、どのようなものであってもよく、その固定の間隔も、防音パネルの特性から想定される破損時の破片をメッシュシート内に保持できるようなものであれば、上記の実施例に限定されない。
また、メッシュシートの強化メッシュ帯は、施工時の上縁となる縁辺にのみ設けても、上縁に加え、側縁にも設けてもよい。
【0054】
また、メッシュ密度を高めた強化メッシュ帯の主たる目的は、メッシュシートが、保持具を介して、防音パネルに沿ってたれ下げられた状態になったときに、メッシュシートの自重でメッシュシートが破損したり、大きく弛んだりすることを防ぐことにあるので、強化メッシュ帯に代えて、引っ張り強度に優れた帯状や紐状の部材を強化帯として、メッシュシートに一体化させてもよい。
【0055】
また、上記の実施例では、メッシュシートは、防音パネルの車道とは反対側の面に沿って設けるよう構成したが、車道側の面に設けても、さらには、防音パネルの両面に沿って設けてもよく、メッシュシートが覆う領域は、防音パネルから基礎壁のコンクリートを経て、高架の路面側に至るまでのように広域として、防音パネルの飛散防止に加え、コンクリートの剥落防止の機能を持たせるようにしてもよい。
さらに、本発明は、本発明の範囲内で自由に設計変更し得るものであり、上記実施例に限定されるものではない。