特開2015-212503(P2015-212503A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212503(P2015-212503A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】斜め補強部材用取付金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20151030BHJP
【FI】
   E04B5/58 S
   E04B5/58 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-96039(P2014-96039)
(22)【出願日】2014年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】594062260
【氏名又は名称】株式会社佐藤型鋼製作所
(71)【出願人】
【識別番号】391060339
【氏名又は名称】株式会社サイトウミクロ
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公章
(57)【要約】
【課題】 斜め補強部材の取付角度設定と、フック部材の吊りボルトへの掛止とを一連の作業で行い得るようにする。
【解決手段】 斜め補強部材の上部を固定するための斜め補強部材用取付金具を、上記吊りボルトの上端部に当該吊りボルトを抱え込むように掛止されるとともに内面に吊りボルトが螺合される内ネジを形成してなる掛止部を備えたフック部材と、上記斜め補強部材の適所に一端が螺合されるネジ部と該ネジ部の他端側にあってピンまたはボルトが取り付けられた操作部とからなる操作部材と、上記フック部材における平板部に沿って上下動自在とされ且つ側面に上記操作部のピンまたはボルトを挿通ガイドする切欠穴を有する連係部材とによって構成し、上記操作部材を上方に移動させることにより、上記斜め補強部材の傾斜角度の設定と、上記フック部材への上記吊りボルトの掛止とを連動して行うようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の天井側に設けられるスラブ(1)に懸垂された吊りボルト(2)と、該吊りボルト(2)に吊架された天井板材保持用の下地材(3)との間を連結補強する斜め補強部材(4)の上部を固定するための斜め補強部材用取付金具であって、上記吊りボルト(2)の上端部に当該吊りボルト(2)を抱え込むように掛止されるとともに内面に吊りボルト(2)が螺合される内ネジ(11b)を形成してなる掛止部(11a)を備えたフック部材(11)と、上記斜め補強部材(4)の適所に一端が螺合されるネジ部(12a)と該ネジ部(12a)の他端側にあってピンまたはボルト(12c)が取り付けられた操作部(12b)とからなる操作部材(12)と、上記フック部材(11)における平板部(11c)に沿って上下動自在とされ且つ側面に上記操作部(12b)のピンまたはボルト(12c)を挿通ガイドする切欠穴(13c)を有する連係部材(13)とによって構成され、上記操作部材(12)を上方に移動させることにより、上記斜め補強部材(4)の傾斜角度の設定と、上記フック部材(11)の掛止部(11a)への上記吊りボルト(3)の掛止とを連動して行い得るように構成したことを特徴とする斜め補強部材用取付金具。
【請求項2】
前記フック部材(11)における反掛止部側には、前記連係部材(13)をその上下動時にガイドする角状突部(11d)および円形突起(11e)を形成したことを特徴とする請求項1記載の斜め補強部材用取付金具。
【請求項3】
前記連係部材(13)の上端には、前記斜め補強部材(4)の傾斜角度の設定時および前記フック部材(11)への前記吊りボルト(2)の掛止時に前記スラブ(1)の下面に圧接される水平部(13e)が一体に形成されていることを特徴とする請求項1および2のいずれか一項記載の斜め補強部材用取付金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、斜め補強部材用取付金具に関し、さらに詳しくは天井下地構造において使用される斜め補強部材を取り付けるための斜め補強部材用取付金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来型の天井下地構造としては、野縁と該野縁と直交する野縁受けとからなり、建物の構造体から吊りボルトで吊り下げて支持されたものがある(例えば、特許文献1参照) 。
【0003】
ところで、上記構成の天井下地構造の場合、野縁に対して天井仕上げボードが専用のビスで取り付けられることとなっている。また、天井には、照明器具や空調機器等が建物の構造体から吊りボルト等で吊り下げられ、天井開口部に天井仕上げボード面と同じ高さで取り付けられており、建物の竣工後、通常は作業員が天井点検口から天井裏を覗いて照明器具や空調機器等の点検・修理を行うこととなっているが、劇場・ホールや体育館、工場等のように、天井に沢山の照明器具・空調機器等がある場合には、天井裏に人が歩けるぐらいの高さを取って、キャットウォークという点検・修理専用の狭い通路を設けることとなっている。但し、キャットウォークは、全ての天井面を網羅出来るように設置されているわけではないので、やむを得ず従来型の天井下地材の上を作業員が歩いて点検・修理を行っている場合がある。従来型の天井下地材は、人が野縁の上に乗れるような耐荷重構造となっていないので、吊りボルトと野縁あるいは野縁受けとを結合しているハンガーという金具が開いたり、野縁受けが倒れたりして、天井面がガタガタになったり、最悪の場合には、天井下地材と天井仕上げボードが落下してしまうという事故が発生するおそれがある。
【0004】
そこで、複数の人が乗っても大丈夫なように、予じめ角形鋼を建物の構造体から吊り下げて、一定間隔に並べたぶどう棚という吊天井構造が採用されている。このような吊天井構造であっても、地震等の激しい揺れに対する耐振性が問題となる場合がある。
【0005】
上記のような問題に対処するために、上記特許文献1に開示されているように、建物の構造体から吊りボルトで吊り下げて支持され、隣り合う吊りボルト同士を斜め補強部材であるブレース材(筋交い状の部材)で連結することにより、耐振性を強化することが考えられている。
【0006】
この場合、ブレース材は、天井の左右方向および前後方向の2方向において、それぞれ上端側を吊りボルトの上端部に、下端側を天井板材保持用の下地材に強固に固定することにより、斜め補強されるため、前後左右の各方向の揺れが確実に抑制されることになる。
【0007】
従来、ブレース材の上端側を吊りボルトに、下端側を天井板材保持用の下地材をそれぞれ固定する方法として、現場の溶接作業が実施されてきたが、このような溶接作業は、技術面で個人差があるので常に均一な強度が得られず、また、現場施工を高所で行う必要があるために、安全性に問題があるばかりか、余分な時間と労力を要するという不具合があった。
【0008】
そのため、近年は、無溶接化を図るため、例えばブレース材の上端部を固定するための上部固定金具として、専用の掛止金具と羽子板ボルトとからなるものを採用し、掛止金具を吊りボルトに掛止し、この掛止金具に羽子板ボルトの一端側を螺着し、羽子板ボルトの他端側をブレース材にタッピングネジ等でネジ止めすることでブレース材の上端部を吊りボルトに固定するようにしている。
【0009】
しかしながら、上記構成の上部固定金具の場合、掛止金具を介した吊りボルトとブレース材との傾斜角度が常に一定になるように予じめ掛止金具が形成されているため、天井ふところの変化に対応できなくなり、天井の揺れを確実に抑制することが難しく、業界の耐震基準等に合致しなくなるという新たな不具合が発生する。
【0010】
その対策として、例えば、ブレース材に対する羽子板ボルトの取付角度を変えることによって、天井板材保持用の下地材に対するブレース材の取付角度を変更することは可能であるが、このようにブレース材に対して羽子板ボルトの取付角度を変えて固定した場合には、羽子板ボルトの軸方向とブレース材の延在方向とが一致しなくなるため、ブレース材に地震等による応力が加わると、ブレース材が座屈し易くなる。
【0011】
そこで、ブレース材の上端部を固定する上部固定金具として、ボルトを締め付けることで吊りボルトを把持するクリッパ部材と、ブレース材にネジ止め固定される結合部材との間をピン等を介して揺動自在に連結し、ブレース材の天井板材保持用の下地材に対する取付角度を任意に調整できるようにした構造のものも提案されている。
【0012】
しかしながら、上記したように、クリッパ部材と結合部材との間を揺動自在に連結した構成の場合、ブレース材の角度調整が可能になるという利点はあるものの、クリッパ部材を吊りボルトに固定するためには、クリッパ部材をボルトで締め付け固定する作業が必要となる。
【0013】
また、建屋の天井側に設けられるスラブに懸垂された吊りボルトと、この吊りボルトに吊架された天井板材保持用の下地材との間を連結補強する斜め補強用のブレースを固定するブレース固定用の上部固定金具として、上記吊りボルトに当該吊りボルトを抱え込むように掛止されるフック部材と、上記ブレースに一端が固定される羽子板ボルトと、この羽子板ボルトの他端側に形成されたボルト部が螺合挿通される連結部材とを備え、かつ上記フック部材と上記連結部材とが連結ピンを介して揺動自在に連結された構成のものが既に提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−050784号公報。
【特許文献2】実用新案登録第3159764号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記特許文献2に開示されている上部固定金具の場合、溶接作業を全く必要とせずにブレース材の上端部を吊りボルトに確実にかつ効率良く固定することができるとともに、現場の状況に応じてブレース材の取付角度を業界の耐震基準に沿った適切な範囲で自由に設定することができるという利点はあるものの、斜め補強用のブレース材を回すことによって吊りボルトに掛止されることになるが、斜め補強用のブレース材の下端が野縁受けと平行にならないと斜め補強用のブレース材と野縁受けとがビスで固定できない。また、斜め補強用のブレース材の下端が野縁受けと平行にならない場合は、平行になるように斜め補強用のブレース材を締め付ける方向とは逆に回して平行にしなければならないため、フック部材と吊りボルトの間にゆるみが生じてずれ落ちるという問題が生ずる。
【0016】
本願発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、斜め補強部材(即ち、斜め補強用のブレース材)の取付角度設定と、フック部材の吊りボルトへの掛止とを一連の作業で行い得るようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、建屋の天井側に設けられるスラブ1に懸垂された吊りボルト2と、該吊りボルト2に吊架された天井板材保持用の下地材3との間を連結補強する斜め補強部材4の上部を固定するための斜め補強部材用取付金具において、上記吊りボルト2の上端部に当該吊りボルト2を抱え込むように掛止されるとともに内面に吊りボルト2が螺合される内ネジ11bを形成してなる掛止部11aを備えたフック部材11と、上記斜め補強部材4の適所に一端が螺合されるネジ部12aと該ネジ部12aの他端側にあってピンまたはボルト12cが取り付けられた操作部12bとからなる操作部材12と、上記フック部材11における平板部11cに沿って上下動自在とされ且つ側面に上記操作部12bのピンまたはボルト12cを挿通ガイドする切欠穴13cを有する連係部材13とによって構成され、上記操作部材12を上方に移動させることにより、上記斜め補強部材4の傾斜角度の設定と、上記フック部材11への上記吊りボルト3の掛止とを連動して行い得るように構成している。
【0018】
上記のように構成したことにより、操作部材12を上方に移動させることにより、上記斜め補強部材4の傾斜角度の設定と、フック部材11の吊りボルト2への掛止とを連動して行い得ることとなり、作業性が著しく向上する。しかも、上記掛止部には、吊りボルト2が螺合する内ネジ11bが形成されているので、フック部材11が吊りボルト2から不用意に脱落するということがなくなる。
【0019】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた斜め補強部材用取付金具において、上記フック部材11における反掛止部側に、上記連係部材13をその上下動時にガイドする円形突起11eを形成している。
【0020】
このように構成した場合、連係部材13が円形突起11eにガイドされて、正確な動きをすることとなり、斜め補強部材4の傾斜角度の設定作業と、フック部材11への吊りボルト2の掛止作業とをより一層確実に行うことができる。
【0021】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2の手段を備えた斜め補強部材用取付金具において、上記連係部材13の上端には、斜め補強部材4の傾斜角度の設定時およびフック部材11への吊りボルト2の掛止時に上記スラブ1の下面に圧接される水平部13eが一体に形成されている。
【0022】
このように構成した場合、斜め補強部材4の傾斜角度の設定時およびフック部材11の吊りボルト2への掛止時に、連係部材13の上端に形成された水平部13eがスラブ1の下面に圧接されることとなり、上下および水平の地震の揺れに対して揺れにくくなって耐震性能が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本願発明の第1の手段によれば、建屋の天井側に設けられるスラブ1に懸垂された吊りボルト2と、該吊りボルト2に吊架された天井板材保持用の下地材3との間を連結補強する斜め補強部材4の上部を固定するための斜め補強部材用取付金具において、上記吊りボルト2の上端部に当該吊りボルト2を抱え込むように掛止されるとともに内面に吊りボルト2が螺合される内ネジ11bを形成してなる掛止部11aを備えたフック部材11と、上記斜め補強部材4の適所に一端が螺合されるネジ部12aと該ネジ部12aの他端側にあってピンまたはボルト12cが取り付けられた操作部12bとからなる操作部材12と、上記フック部材11における平板部11cに沿って上下動自在とされ且つ側面に上記操作部12bのピンまたはボルト12cを挿通ガイドする切欠穴13cを有する連係部材13とによって構成され、上記操作部材12を上方に移動させることにより、上記斜め補強部材4の傾斜角度の設定と、上記フック部材11への上記吊りボルト2の掛止とを連動して行い得るように構成しているので、操作部材12を上方に移動させることにより、上記斜め補強部材4の傾斜角度の設定と、フック部材11の吊りボルト2への掛止とを連動して行い得ることとなり、作業性が著しく向上するという効果がある。しかも、上記掛止部11aには、吊りボルト2が螺合する内ネジ11bが形成されているので、フック部材11が吊りボルト2から不用意に脱落するということがなくなるという効果もある。
【0024】
本願発明の第2の手段におけるように、上記第1の手段を備えた斜め補強部材用取付金具において、上記第1の手段を備えた斜め補強部材用取付金具において、上記フック部材11における反掛止部側に、上記連係部材13をその上下動時にガイドする円形突起11eを形成した場合、連係部材13が円形突起11eにガイドされて、正確な動きをすることとなり、斜め補強部材4の傾斜角度の設定作業と、フック部材11の吊りボルト2への掛止作業とをより一層確実に行うことができる。
【0025】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1又は第2の手段を備えた斜め補強部材用取付金具において、上記連係部材13の上端に、斜め補強部材4の傾斜角度の設定時およびフック部材11の吊りボルト2への掛止時に上記スラブ1の面に圧接される水平部13eを一体に形成した場合、斜め補強部材4の傾斜角度の設定時およびフック部材11の吊りボルト2への掛止時に、連係部材13の上端に形成された水平部13eがスラブ1の下面に圧接されることとなり、上下および水平の地震の揺れに対して揺れにくくなって耐震性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具を用いたぶどう棚形式の天井下地構造を示す全体斜視図である。
図2】本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具の取付状態(図1のA部)を示す拡大斜視図である。
図3】本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具を構成するフック部材の拡大斜視図である。
図4】本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具を構成する操作部材の拡大斜視図である。
図5】本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具を構成する連係部材の拡大斜視図である。
図6】本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具に用いられる支持部材の拡大斜視図である。
図7】本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具の下端部の結合構造を示す拡大斜視図である。
図8】本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具の取付前の状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1ないし図8には、本願発明の実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具を用いたぶどう棚形式の天井下地構造が示されている。
【0028】
図1において、符号1は建屋の天井側に設けられるスラブ、2はスラブ1に懸垂された吊りボルト、3は吊りボルト2に後述するハンガー部材16(図7参照)を介して吊架された天井板材保持用の下地材であり、本実施の形態においては、この下地材3は、所定間隔で平行に並ぶ多数の野縁3a,3a・・と該野縁3a,3a・・の下側において該野縁3a,3a・・に直交して所定間隔で平行に並ぶ多数の野縁受け3b,3b・・とからなっており、上記野縁3aおよび野縁受け3bは、断面略コ字状の溝形鋼であるCチャンネルが適用されている。また、符号4は吊りボルト2とCチャンネル3bとの間を連結補強するための斜め補強部材として作用するブレース材である。そして、本実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具Tは、ブレース材4の上端部を取り付けるために使用される。
【0029】
そして、本実施の形態にかかる斜め補強部材用取付金具Tは、図2に示すように、上記吊りボルト2の上端部に当該吊りボルト2を抱え込むように掛止されるとともに内面に吊りボルト2が螺合される内ネジ11b(図3参照)を形成してなる掛止部11aを備えたフック部材11と、上記斜め補強部材として作用するブレース材4の適所に一端が螺合されるネジ部12aと該ネジ部12aの他端側にあってピンまたはボルト12cが取り付けられた操作部12bとからなる操作部材12と、上記フック部材11における平板部11c(図3参照)に沿って上下動自在とされ且つ側面に上記操作部12bのピンまたはボルト12cを挿通ガイドする切欠穴13aを有する連係部材13とによって構成されている。
【0030】
上記フック部材11は、図3に示すように、掛止部11aを除いて略全体が平板部11cとなっており、該平板部11cには、上記連係部材13における端面に形成されたガイド面13b(図5参照)を上下動時に案内ガイドする角状突部11dおよび円形突起11eが一体に突設されている。符号11fは、上記操作部材12における操作部12bのピンまたはボルト12cの一端を挿通するピン穴またはボルト穴である。
【0031】
また、上記操作部材12は、図4に示すように、ブレース材4の適所(即ち、上端部)に取り付けられたコ字状の支持部材14(図6参照)における相対向する2辺に形成された穴14a,14aに挿通されるネジ部12aと該ネジ部12aの他端側にあってピンまたはボルト12cが挿通される穴12dが形成された平板状の操作部12bとからなっている。符号14bは、支持部材における相対向する2辺に形成された穴14a,14aの一方側の口縁に取り付けられたナットであり、該ナット14bに対して操作部材12のネジ部12aが螺合されることとなっている。また、符号14cは、この支持部材14をブレース材4に固定するビス14dが挿通されるビス穴である。
【0032】
さらに、上記連係部材13は、図5に示すように、上記吊りボルト2の外周に圧接される連結部13aを介して連結された一対の板状部材13b,13bからなっており、この板状部材13b,13bには、上記操作部12bのピンまたはボルト12cを挿通ガイドするL字状の切欠穴13c,13cがそれぞれ形成されている。上記板状部材13b,13bの一方側(即ち、上記フック部材11の平板部11c側に位置する板状部材13b)には、上記連係部材13の上動時に上記フック部材11における円形突起11eが嵌挿される切欠部13dが形成されている。また、上記連係部材13における板状部材13b,13bの上端には、連係部材13の上動限において上記スラブ1の下面に圧接される水平部13e,13eが一体に突設されている。該水平部13e,13eの外端部は、圧接時に弾力性が得られるように上向きに湾曲されている。このようにすると、ブレース材4を取り付けたとき、水平部13e,13eがスラブ1の下面に完全に密着することとなり、地震発生時等における上下および水平方向への揺れに対して揺れにくくなる。しかも、水平部13e,13eの外端部を上向きに湾曲させたことにより、圧接時に弾力性が得られることとなり、スラブ1の下面にさらに密着しやすくなる。
【0033】
ところで、上記斜め補強部材4の下端部は、図7に示すように、野縁受け3bに対してビス15,15を用いて固定されている。図7において、符号16は吊りボルト2の下端を野縁受け3bに支持するためのハンガー部材、17は野縁3aと野縁受け3bとの交差部において両者を結合するために用いられるクリップ部材である。
【0034】
上記のように構成したことにより、本実施の形態においては、図8に示すセット前の状態から操作部材12をピンまたはボルト12cが切欠穴13c,13cに沿うようにして上方に移動させることにより、斜め補強部材4の傾斜角度の設定と、フック部材11における掛止部11aの吊りボルト2への掛止とを連動して行い得ることとなり、作業性が著しく向上する。しかも、上記掛止部11aには、吊りボルト2が螺合する内ネジ11bが形成されているので、フック部材11が吊りボルト2から不用意に脱落するということがなくなる。また、フック部材11における反掛止部側に、連係部材13をその上下動時にガイドする円形突起11eを形成しているので、連係部材13における板状部材13b.13bの端面がフック部材11における角状突部11dおよび円形突起11eにガイドされて、正確な動きをすることとなり、斜め補強部材4の傾斜角度の設定作業と、フック部材11への吊りボルト2の掛止作業とをより一層確実に行うことができる。つまり、角状突部11dおよび円形突起11eが切欠穴13cを補完することとなるのである。さらに、連係部材13の上端に、斜め補強部材4の傾斜角度の設定時およびフック部材11への吊りボルト2の掛止時に上記スラブ1の下面に圧接される水平部13eが一体に形成されているので、斜め補強部材4の傾斜角度の設定時およびフック部材11の吊りボルト2への掛止時に、連係部材13の上端に形成された水平部13eがスラブ1の下面に圧接されることとなり、上下および水平の地震の揺れに対して揺れにくくなって耐震性能が向上する。
【0035】
なお、本願発明は、上記実施の形態において説明したものに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0036】

1はスラブ
2は吊りボルト
3は下地材
4は斜め補強部材
11はフック部材
11aは掛止部
11bは内ネジ
11cは平板部
11dは角状突部
11eは円形突起
12は操作部材
12aはネジ部
12bは操作部
12cはピンまたはボルト
13は連係部材
13aは連結部
13bは板状部材
13cは切欠穴
13eは水平部
Tは斜め補強部材用取付金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8