(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212583(P2015-212583A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】給水予熱装置を持ったボイラ
(51)【国際特許分類】
F22D 1/10 20060101AFI20151030BHJP
F22D 1/40 20060101ALI20151030BHJP
F22D 11/00 20060101ALI20151030BHJP
F22B 37/54 20060101ALI20151030BHJP
F22D 11/06 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
F22D1/10
F22D1/40
F22D11/00 L
F22B37/54 B
F22D11/00 D
F22D11/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-94337(P2014-94337)
(22)【出願日】2014年5月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大畑 直正
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドレン回収による給水の予熱と、エコノマイザによる給水の予熱を併用しているボイラにおいて、給水による熱の回収量をさらに増加することで、ボイラでのエネルギー使用量をさらに削減する。
【解決手段】ドレン回収装置、エコノマイザ8、給水タンク6を持ったボイラにおいて、前記のエコノマイザ8は、排気ガス流において上流側となる高温伝熱管群4と、下流側となる低温伝熱管群5に分割して設置し、前記給水タンク6は低温伝熱管群5と高温伝熱管群4の間に設置しておき、回収してきたドレンは低温伝熱管群5には通さずに直接給水タンク6に導入することで、給水タンク6で一段目の予熱を行ったボイラ補給水と回収ドレンを混合するようにしており、高温伝熱管群4には、低温伝熱管群5で予熱を行った補給水と回収してきたドレンを混合している給水タンク6からボイラ給水を供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ガスによってボイラ水を加熱して蒸気を発生させるボイラ、ボイラから負荷機器へ供給した蒸気が凝縮したドレンを回収してボイラ給水として再利用するためのドレン回収装置、ボイラへ供給するボイラ給水とボイラから排出される排気ガスの間で熱交換を行うエコノマイザを持ち、ドレン回収と排気ガスによる給水予熱を行っている給水予熱装置を持ったボイラにおいて、前記のエコノマイザは、排気ガス流において上流側となる高温伝熱管群と、排気ガス流において下流側となる低温伝熱管群に分割して設置しており、ボイラ補給水はまず低温伝熱管群内を通すことで一段目の予熱を行い、回収してきたドレンは低温伝熱管群には通さずに一段目の予熱を行ったボイラ補給水と混合するようにしており、高温伝熱管群には、低温伝熱管群で予熱を行った補給水と回収ドレンを混合したボイラ給水を供給するようにしていることを特徴とする給水予熱装置を持ったボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の給水予熱装置を持ったボイラにおいて、ボイラへ供給するボイラ給水を一時的にためる給水タンクを低温伝熱管群と高温伝熱管群の間に設置することで、一段目の予熱を行ったボイラ補給水を給水タンクに貯水するとともに、回収してきたドレンを給水タンクに導入し、給水タンクで一段目の予熱を行ったボイラ補給水と回収ドレンを混合するようにしており、高温伝熱管群には給水タンクからボイラ給水を供給するようにし、さらに前記給水タンクには、ボイラから排出している濃縮ブロー水と給水タンクにためているボイラ給水との間で熱交換を行うブロー熱交換器を設けていることを特徴とする給水予熱装置を持ったボイラ。
【請求項3】
請求項2に記載の給水予熱装置を持ったボイラにおいて、ブロー熱交換器の設置位置は給水タンクと低温伝熱管群との間としていることを特徴とする給水予熱装置を持ったボイラ。
【請求項4】
請求項1に記載の給水予熱装置を持ったボイラにおいて、回収ドレンを混合するところと低温伝熱管群との間に、低温伝熱管群で一段目の予熱を行った後の給水と濃縮ブロー水との間で熱交換を行うブロー熱交換器を設けていることを特徴とする給水予熱装置を持ったボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラから排出される排気ガスからの熱回収と、ボイラで発生させた蒸気からドレン回収を行うことによって、ボイラへの給水を予熱するようにした給水予熱装置を持ったボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱を供給する装置として蒸気ボイラが広く用いられており、ボイラでは特開2000−121003号公報に記載があるように、ボイラからの蒸気を熱源として使用する負荷機器からのドレンを回収することも広く行われている。特開2000−121003号公報に記載の発明では、給水タンクへの蒸気導入、ボイラからの排気ガスによって給水を加熱するエコノマイザ(節炭器)、ボイラのドレンを給水タンクに回収して給水として再利用するドレン回収装置を設けている。ボイラは高温の蒸気を発生して負荷機器へ蒸気を送り、負荷機器で蒸気の熱を使用すると、蒸気は温度が低下して液体に戻る。蒸気が凝縮したドレンは多くの熱を保有しており、ドレンを回収してボイラの給水に混合すると、給水温度が上昇する。ドレンを廃棄せずに回収し、回収ドレンによって給水温度を上昇させれば、ボイラで必要となるエネルギー量が少なくなるため、省エネルギーとなる。さらにドレンを回収して再利用することで、水の使用量を削減することもできる。
【0003】
例えば、給水量の2/3に相当する量のドレンを回収しており、回収してきたドレンの温度が80℃、残り1/3は新規の補給水であって補給水温度が20℃であったとする。この場合、ドレン回収を行うことでボイラ給水として新規に供給しなければならない水の量は1/3となり、ドレンの混合を行うことで給水温度は60℃となる。給水のすべてを新規の水で行っていた場合に比べ、給水の準備段階で温度を40℃分上昇させておくことができるので、ボイラでは40℃分の温度上昇が不要となり、その分エネルギーの使用量を削減することができる。
【0004】
またエコノマイザは、ボイラから排出されている排気ガスによって給水を予熱する。ボイラの排気経路に、排気ガスとボイラ給水との間で熱交換を行うエコノマイザを設置しておき、ボイラへの給水はエコノマイザを経由して行い、エコノマイザの外側表面を流れる排気ガスとの間で熱交換を行うことで給水を予熱する。例えばボイラからは240℃の排気ガスが排出されており、ボイラへの給水温度は20℃であったとして、エコノマイザにて給水の予熱を行うことで75℃まで予熱することができたとする。その場合、エコノマイザにて55℃分の予熱を行ったことになるため、ボイラでは55℃分の温度上昇が不要となり、その分エネルギーの使用量を削減することができる。
【0005】
ドレン回収による予熱と、エコノマイザによる予熱は併用可能である。特開2000−121003号公報に記載の発明でも、ボイラ給水はドレン回収による予熱を行い、エコノマイザによる予熱を行っている。新規の給水温度が20℃であったものが、ドレン回収で60℃まで上昇し、さらにエコノマイザで100℃まで上昇させる予熱を行うとすれば、ボイラでは合計で80℃分の加熱に要する熱が不要となるため、その分だけボイラでのエネルギー使用量を削減することができる。
【0006】
特開2000−12103号公報の発明では、さらに給水タンク内に蒸気を導入することによる給水予熱も行っている。ただし、ドレン回収や排気ガスによる予熱は、廃棄していた熱を利用するものであってエネルギー使用量の削減に役立つものであったが、蒸気を使用して予熱を行う場合は、蒸気の使用量が増加するものであるために省エネルギーの効果は得られない。逆に、給水タンクの給水温度を高めると、エコノマイザで吸収することのできる熱量が減少するため、全体的なエネルギーの使用量は多くなる。
【0007】
また、ドレン回収による給水温度の上昇後に、さらにエコノマイザにて予熱を行う場合、最終的な給水温度は、ドレン回収のみ、あるいはエコノマイザのみの場合よりは高くなるが、二つの予熱での温度上昇を合計した値とはならない。上記の例では、エコノマイザ単独の場合はエコノマイザ部分で55℃の温度上昇が行えたが、ドレン回収後にエコノマイザで予熱を行う場合のエコノマイザ部分での温度上昇は40℃となっており、エコノマイザ単独での予熱に比べると低くなっている。これは、ドレン回収によって60℃まで温度が上昇したボイラ給水をエコノマイザへ供給した場合、エコノマイザではボイラ給水温度と排気ガスとの温度差が小さくなるため、ボイラ給水で吸収することのできる熱量が低下することによる。また、エコノマイザ内を流れる給水温度が低いと、排気ガスはより低い温度になるまで熱交換することができ、排気ガスを凝縮させることで排気ガスの潜熱も回収することができる。しかしエコノマイザ内を流れる給水温度が高いと、排気ガスの最終温度はあまり低くならず、潜熱回収も行えないため、エコノマイザにおける熱回収量は低下することになる。
【0008】
上記のように廃棄されていた熱を使用して給水を予熱することで、ボイラでのエネルギー使用量を削減させることができるが、予熱を行うことでボイラ給水の温度が上昇すると、ボイラ給水がエコノマイザで吸収することのできる熱量は減少していく。そのため、より効率的に給水を予熱することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−121003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ドレン回収による給水の予熱と、エコノマイザによる給水の予熱を併用しているボイラにおいて、給水による熱の回収量をさらに増加することで、ボイラでのエネルギー使用量をさらに削減することのできる給水予熱装置を持ったボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、高温ガスによってボイラ水を加熱して蒸気を発生させるボイラ、ボイラから負荷機器へ供給した蒸気が凝縮したドレンを回収してボイラ給水として再利用するためのドレン回収装置、ボイラへ供給するボイラ給水とボイラから排出される排気ガスの間で熱交換を行うエコノマイザを持ち、ドレン回収と排気ガスによる給水予熱を行っている給水予熱装置を持ったボイラにおいて、前記のエコノマイザは、排気ガス流において上流側となる高温伝熱管群と、排気ガス流において下流側となる低温伝熱管群に分割して設置しており、ボイラ補給水はまず低温伝熱管群内を通すことで一段目の予熱を行い、回収してきたドレンは低温伝熱管群には通さずに一段目の予熱を行ったボイラ補給水と混合するようにしており、高温伝熱管群には、低温伝熱管群で予熱を行った補給水と回収ドレンを混合したボイラ給水を供給するようにしていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記の給水予熱装置を持ったボイラにおいて、ボイラへ供給するボイラ給水を一時的にためる給水タンクを低温伝熱管群と高温伝熱管群の間に設置することで、一段目の予熱を行ったボイラ補給水を給水タンクに貯水するとともに、回収してきたドレンを給水タンクに導入し、給水タンクで一段目の予熱を行ったボイラ補給水と回収ドレンを混合するようにしており、高温伝熱管群には給水タンクからボイラ給水を供給するようにし、さらに前記給水タンクには、ボイラから排出している濃縮ブロー水と給水タンクにためているボイラ給水との間で熱交換を行うブロー熱交換器を設けていることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の給水予熱装置を持ったボイラにおいて、ブロー熱交換器の設置位置は、給水タンクと低温伝熱管群との間としていることを特徴とする。請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の給水予熱装置を持ったボイラにおいて、回収ドレンを混合するところと低温伝熱管群との間に、低温伝熱管群で一段目の予熱を行った後の給水と濃縮ブロー水との間で熱交換を行うブロー熱交換器を設けていることを特徴とする。
【0013】
エコノマイザで給水の予熱を行うということは、排気ガスの熱を給水に移動させるというものであるため、排気ガスの温度は下流側ほど低くなる。そのため、エコノマイザの排気ガス流出口に近い部分では、温度の低下した排気ガスで給水の予熱を行うことになる。その際、エコノマイザに入る前の段階でボイラ給水の予熱を行っていると、温度の上昇したボイラ給水と、温度の低下した排気ガスとの間で熱交換することになり、給水温度と排気ガス温度の差が小さくなることで、ボイラ給水が取り込むことのできる熱量は少なくなっていた。また、エコノマイザで予熱した後の給水温度は、ドレン温度より高くなるため、エコノマイザで予熱後の給水にドレンを混合しても給水温度は上昇しない。
【0014】
本発明では、エコノマイザは低温伝熱管群と高温伝熱管群に分けて設置している。ボイラ給水流上流側であって、排気ガス流下流側となる低温伝熱管群には、予熱を行っていないボイラ給水を供給すると、ボイラ給水の温度は低いため、排気ガスがより低い温度になるまで熱の回収が行え、排気ガスから潜熱の回収も行うことができる。さらに回収したドレンの給水への混合は、低温伝熱管群による予熱後であって、高温伝熱管群による予熱前の給水に対して行うので、ボイラ給水の保有する熱量が増加し、給水温度を上昇することができる。そして、回収ドレンの混合によって温度が上昇した給水であっても、排気ガス流の上流側に設けている高温伝熱管群では排気ガス温度がさらに高いため、高温伝熱管群でも給水の予熱を行うことができる。その結果、総合的な熱吸収量が増加するため、ボイラでのエネルギー使用量を削減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明を実施することで、ボイラ給水ではドレン及び排気ガスから回収することのできる熱量が増加するため、ボイラでのエネルギー使用量を削減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を実施しているボイラの給水経路説明図
【
図2】本発明の第2の実施例でのボイラの給水経路説明図
【
図3】本発明の第3の実施例でのボイラの給水経路説明図
【
図4】本発明の第4の実施例でのボイラの給水経路説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施しているボイラの給水経路を説明するための図である。ボイラ1は、内部で燃焼を行うことでボイラ水を加熱し、負荷機器2へ蒸気を供給するものである。ボイラ1には、軟水器(図示せず)によって水中の硬度成分を除去し、薬品を注入することによってボイラに適した水質に調節した水を補給水として供給するようにしている。また、負荷機器2で発生したドレンを回収し、ボイラ給水として使用するためのドレン回収装置を設けておく。負荷機器2と給水タンク6の間は、ドレン回収配管で接続し、ドレン回収配管途中には蒸気トラップを設けている。ボイラ1で発生して負荷機器2へ供給した蒸気のうち、負荷機器で凝縮して液体となったドレンはドレン回収配管を通して給水タンク6へ回収し、ボイラへの給水に混合することで再利用するようにしている。
【0018】
ボイラは、内部に設けている燃焼装置によってボイラ水を加熱して蒸気を発生し、ボイラ水の加熱に使用した後の排気ガスは、排気通路3を通して排出する。この排気ガスは、まだ高温であるため、ボイラ給水の予熱に利用する。排気通路3には、ボイラへ供給しているボイラ給水と、排気通路内を流れる排気ガスの間で熱交換を行うためのエコノマイザ8を設ける。エコノマイザ8は、排気通路内を流れる排気ガスに対して交差するように多数の伝熱管を設置しており、連結することで長い流路を形成している。伝熱管の外側表面には、伝熱面積を増加するための熱吸収用フィンを多数設けている。エコノマイザ8の伝熱管は、排ガス流の上流側となる高温伝熱管群4と、排ガス流の下流側となる低温伝熱管群5に分割して設置しておく。
【0019】
ボイラへの給水は、給水流においては上流側となる低温伝熱管群5へまず導入し、その次に高温伝熱管群4へ導入するように接続しておく。高温伝熱管群4と低温伝熱管群5の間では、給水配管を排気通路3の外側へ出ており、排気通路3の外に設けている給水タンク6に接続している。給水タンク6は、低温伝熱管群5で一段目の予熱を行ったボイラ給水を一時的にためておくものであり、高温伝熱管群4へ給水する場合は、給水タンク6と高温伝熱管群4を結んでいる経路上に設けている給水ポンプを作動することで給水を加圧して供給する。また、給水タンク6には、ボイラ1から負荷機器2へ供給した蒸気が、負荷機器2で熱を使用したことによって凝縮し、そこで発生したドレンを回収してくるようにしており、給水タンク6において、回収してきたドレンをボイラ給水と混合する。
【0020】
本実施例での給水予熱の例を、数値を当てはめながら説明する。まず、予熱を行っていない新規補給水の低温伝熱管群5に入る前の温度は20℃、補給水の供給量は700L/Hであるとしている。そして負荷機器2から回収してくるドレンの温度は80℃、ドレンの回収量は1400L/Hとしている。また、ボイラから排出されてくる排気ガスの温度は240℃としている。
【0021】
排気通路3を流れる排気ガスは、エコノマイザ8よりも上流の段階では240℃であるが、エコノマイザ8で熱交換を行うことで温度は低下していくため、排気通路3の下流ほど温度は低くなる。排気ガス温度は、高温伝熱管群4を通過した部分での137℃、低温伝熱管群5を通過した部分では102℃となっている。この状態で補給水を低温伝熱管群5の中に通すと、補給水は排ガスの熱を受けて温度が上昇する。低温伝熱管群5で排気ガスからの熱を受けた補給水は、低温伝熱管群5の出口では60℃まで上昇している。この場合低温伝熱管群5では、給水流で最も上流側となり、排ガス流では最も下流側となる伝熱管では、102℃の排気ガスと20℃の補給水によって熱交換を行い、給水流で最も下流側となり、排ガス流では最も上流側となる伝熱管では、137℃の排気ガスと60℃の補給水によって熱交換を行うことになる。
【0022】
エコノマイザ8内を流れるボイラ給水よりも、外側を流れる排気ガスの温度が高いと、排気ガスの熱がボイラ給水に移動し、ボイラ給水の温度は上昇するが、排気ガスの温度がボイラ給水の温度よりも十分に高い温度でないと、ボイラ給水で吸収することのできる熱量は少なくなる。本実施例の低温伝熱管群5では、排気ガス流の最下流の伝熱管における排気ガスとボイラ給水の温度差は82℃、排気ガス流の最上流の伝熱管における排気ガスとボイラ給水の温度差は77℃となっており、ボイラ給水は低温伝熱管群5の全体で熱の吸収を行うことができる。
【0023】
なお、低温伝熱管群5の下流側での排気ガス温度は、伝熱管部分での温度のバラツキが均されたものである。伝熱管から離れた部分を流れてきた排気ガス温度は上記温度より高くなるが、伝熱管表面に沿って流れてきた排気ガス温度は上記温度より低くなり、伝熱管の表面では排気ガスの凝縮が発生する。そのために低温伝熱管群5では潜熱回収も行うことができる。
【0024】
低温伝熱管群5を通過した補給水は、排気通路3の外に設けている給水タンク6内に入る。給水タンク6では、低温伝熱管群5で予熱した補給水と、負荷機器2から回収してきたドレンを混合する。回収してきたドレンは、温度80℃、回収量1400L/Hであったとすると、低温伝熱管群5で予熱した補給水の温度より高いものであるため、ドレンを混合すると、混合水の温度は上昇する。本実施例では、回収したドレンと予熱した補給水を混合した混合水温度は73℃となっている。
【0025】
次にこの混合水は、高温伝熱管群4へ送り、高温伝熱管群4で再び排気ガスによる予熱を行う。高温伝熱管群4の排気ガス流上流側からは240℃の排気ガスが送られており、この排気ガスで高温伝熱管群4内ボイラ給水の加熱を行うと、ボイラ給水はさらに温度が上昇する。ボイラ給水の温度は、高温伝熱管群4で2回目の予熱を行うことで、73℃から107℃まで上昇している。そのためこの給水予熱装置全体では、ボイラ給水温度を20℃から107℃まで温度を上昇させることができている。
【0026】
この場合のエコノマイザ8における回収熱量を計算すると、低温伝熱管群5での回収熱量は、潜熱回収量3.6kWを含めて26.0kW、高温伝熱管群4では65.9kW、合計で91.9kWとなった。そしてこの場合でのエコノマイザにおけるボイラ効率のアップ幅は、7.2%となる。
【0027】
図5は、比較のための従来ボイラでの給水経路説明図である。比較例で使用している補給水や回収ドレンの温度と流量、ボイラから排出されている排気ガスの温度、さらにはエコノマイザ8の伝熱面積といった各条件は、上記実施例の場合と同じであるとしている。実施例との違いは、実施例では補給水を回収ドレンと混合していない状態で、低温伝熱管群5にて排気ガスによる予熱を行い、低温伝熱管群5での予熱後に回収ドレンとの混合を行って、更に高温伝熱管群4で排気ガスによる予熱を行っているのに対し、比較例の場合は最初の段階で補給水と回収ドレンの混合を行っておき、その後に高温伝熱管群4と低温伝熱管群5の両方と同じだけの伝熱面積を持ったエコノマイザ8で予熱しているという部分である。
【0028】
比較例では、給水タンク6で20℃の補給水と80℃の回収ドレンを混合することで60℃の混合水としており、温度が上昇した混合水をエコノマイザ8へ送る。排気通路3内を流れる排気ガスは、エコノマイザ8の上流では240℃であるが、エコノマイザ8部分で給水の予熱を行うことで温度が低下し、エコノマイザ8の下流では106℃となっている。そのため、エコノマイザ8の給水流において最も上流側となる伝熱管では、106℃の排気ガスと60℃の補給水とによって熱交換することになり、ここでの温度差は46℃となる。先に説明した実施例では、この温度差は82℃であったが、比較例では半分近くまで減少している。この温度差が小さいと、ここでボイラ給水が取り込むことのできる熱量は減少することになる。つまり、上記実施例では排気ガス流の最下流まで効率的に熱の吸収を行っており、全体での熱の回収量は多くなっているが、比較例の場合には、排気ガス流の最下流では熱の吸収が低下しており、全体での熱の回収量は少なくなっている。
【0029】
さらに、比較例での最終の排気ガス温度は106℃であり、伝熱管表面部分でも排気ガスの凝縮は発生しておらず、潜熱回収も行われていない。最終の排気ガス温度は低い方が排気ガスの熱を多く吸収したことになるが、実施例では102℃に対し、比較例では106℃であるため、実施例の方がより多くの熱を回収していることになる。そのため、熱吸収量が少なくなっている比較例では、エコノマイザ8の出口におけるボイラ給水温度は104℃となっており、上記実施例での107℃よりも低い値になっている。
【0030】
この場合のエコノマイザ8での回収熱量を計算すると、潜熱回収量は0であり、顕熱回収のみで85.8kWとなった。上記実施例では合計が91.9kWであったため、実施例では比較例と比べて6.1kW多くなるということになる。そしてこの場合でのエコノマイザにおけるボイラ効率のアップ幅は6.7%であった。上記実施例でのエコノマイザにおけるボイラ効率のアップ幅は7.2%であったため、実施例の方が0.5%分多いということになる。
【0031】
図2は本発明の第2の実施例でのボイラの給水経路説明図である。
図2の実施例は、
図1の実施例から濃縮ブローによる給水予熱を追加した場合のものである。ボイラでは、蒸気を発生させることでボイラ水が濃縮していくため、濃縮しすぎることを防止する目的で定期的にボイラ水を排出する濃縮ブローを行っている。
図2の実施例では、低温伝熱管群5で予熱した給水をためる給水タンク6に、ボイラ1から排出する濃縮ブロー水との熱交換を行うブロー熱交換器7を設置している。ボイラから排出している濃縮ブロー水量は、ドレン回収量に比べると少ないが、排出されるのはボイラ水であるために高温であり、ブロー熱交換器7に通すことで給水タンク6内の給水を予熱することができる。この場合も、回収したドレンを混合するのと、濃縮ブロー水による給水予熱を行うのは、二段目の給水予熱部である高温伝熱管群4の手前であり、一段目の給水予熱部である低温伝熱管群5には温度の低い水を供給するようにしている。そのため、この場合も低温伝熱管群5では、温度の低下した排気ガスからも給水の予熱を行うことができ、エコノマイザ8での熱回収量は比較例の場合よりも多くすることができる。さらに
図2の実施例では、濃縮ブロー水による予熱を行っているため、
図1の実施例よりも給水の予熱量を多くすることができる。
【0032】
図3及び
図4も本発明の他の実施例でのボイラの給水経路説明図である。
図3及び
図4の実施例は、ブロー熱交換器7を、一段目の予熱を行った後の給水と回収したドレンとを混合するところと、低温伝熱管群5との間に設置して、回収したドレンと混合する前に、低温伝熱管群5で一段目の予熱を行った後の給水に対して、濃縮ブローによる給水予熱を行った場合の実施例である。さらに
図4は、給水タンク6を使用しない場合の実施例である。
図3及び
図4の実施例では、一段目の予熱を行った後の給水と回収したドレンとを混合する前に、濃縮ブローと熱交換を行うため、一段目の予熱を行った後の給水に対してより効率的に予熱を行うことができ、総合的に
図2の実施例よりも給水の予熱量を多くすることができる。ただし、ボイラ本体に対する給水の安定化のためには給水タンク6を設置しておいた方がよく、
図3の実施例は
図2に比べ装置が大掛かりになり設備費が多くかかるといった問題点もあることより、総合的に見て
図2の実施例がもっとも良好である。また本発明においては、低温伝熱管群の下流側に給水タンクを設けることで、缶水が逆流した場合でも給水タンクで止めることができ、低温伝熱管群に缶水が流れ込むことがなくなる。そのため、給水タンクより上流側の配管や低温伝熱管群をオールアルミ合金とすることが可能となり、低温伝熱管群の熱効率アップ(熱吸収率アップ)やコンパクト化につながる。
【0033】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 ボイラ
2 負荷機器
3 排気通路
4 高温伝熱管群
5 低温伝熱管群
6 給水タンク
7 ブロー熱交換器
8 エコノマイザ