(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212585(P2015-212585A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】給水脱気装置を持ったボイラ
(51)【国際特許分類】
F22D 1/50 20060101AFI20151030BHJP
F22D 11/00 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
F22D1/50
F22D11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-94339(P2014-94339)
(22)【出願日】2014年5月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大畑 直正
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓志
(57)【要約】
【課題】ボイラの給水経路を含めた腐食の防止を薬品に頼らない、もしくは薬品の使用量を削減しつつ、設備コスト的にも安価となる給水脱気装置を持ったボイラを提供する。
【解決手段】エコノマイザ8を持ったボイラ1であって、前記のエコノマイザ8は、排気ガス流上流側となる高温伝熱管群4と、排気ガス流下流側となる低温伝熱管群5に分割し、給水経路の低温伝熱管群5と高温伝熱管群4の間には真空脱気槽10を設けて真空脱気を行うようにしている給水脱気装置を持ったボイラにおいて、前記真空脱気槽10には40℃から90℃に予熱したボイラ給水を供給するようにしており、予熱したボイラ給水が沸騰する圧力よりも真空脱気槽10内の圧力を減圧するものであって、真空脱気槽10で溶存酸素の除去を行ったボイラ給水は高温伝熱管群4で再度の予熱を行った後にボイラ1の本体内へ供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラへ供給するボイラ給水とボイラから排出される排気ガスの間で熱交換を行うエコノマイザを持ったボイラであって、前記のエコノマイザは、排気ガス流上流側となる高温伝熱管群と、排気ガス流下流側となる低温伝熱管群に分割し、ボイラ給水は先に低温伝熱管群内を通り、高温伝熱管群内には後で通るようにしておき、給水経路の低温伝熱管群と高温伝熱管群の間には真空脱気によってボイラ給水中の溶存酸素を除去するための真空脱気槽を設け、ボイラへ供給するボイラ給水を真空脱気槽内にためた状態で、真空脱気槽と接続している真空発生装置を作動することで真空脱気槽の内部を減圧し、ボイラ給水から溶存酸素を除去するようにしている給水脱気装置を持ったボイラにおいて、前記真空脱気槽には40℃から90℃に予熱したボイラ給水を供給するようにしており、真空発生装置は予熱したボイラ給水が沸騰する圧力以下になるように真空脱気槽内を減圧するものであって、真空脱気槽で溶存酸素の除去を行ったボイラ給水は高温伝熱管群で再度の予熱を行った後にボイラ本体内へ供給するようにしていることを特徴とする給水脱気装置を持ったボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の給水脱気装置を持ったボイラにおいて、低温伝熱管群と真空脱気槽を結ぶ給水経路の途中にボイラ給水を一時的にためる給水タンクを設置しておき、真空脱気槽には給水タンクにためたボイラ給水をバッチ式に供給するものであり、真空脱気槽での脱気処理はバッチ式に行うようにしていることを特徴とする給水脱気装置を持ったボイラ。
【請求項3】
請求項2に記載の給水脱気装置を持ったボイラにおいて、前記給水タンクには、ボイラから排出しているブロー水と給水タンクにためているボイラ給水との間で熱交換を行うブロー熱交換器を設けていることを特徴とする給水脱気装置を持ったボイラ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の給水脱気装置を持ったボイラにおいて、ドレン回収を行う場合には、低温伝熱管群よりも下流側に設けている前記給水タンクでボイラ給水と回収ドレンの混合を行うようにしていることを特徴とする給水脱気装置を持ったボイラ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の給水脱気装置を持ったボイラにおいて、
真空発生装置は、ベンチュリ効果を利用して減圧を行うエジェクタ部、エジェクタ部へ送る循環水をためる循環水タンク、循環タンクとエジェクタ部の間で水の循環を行うための循環ポンプを持つものであることを特徴とする給水脱気装置を持ったボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ給水に含まれている溶存酸素を除去する給水脱気装置をもったボイラに関するものであり、より詳しくは予熱したボイラ給水から真空脱気によって溶存酸素の除去を行う給水脱気装置を持ったボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱を供給する装置として蒸気ボイラが広く用いられており、ボイラでは特開平11−337009号公報に記載があるように、ボイラ給水中に含まれている溶存酸素を除去することも広く行われている。通常、水には酸素が溶け込んでおり、溶存酸素を含んだ水を加熱すると、水が接触している水管表面では腐食が発生しやすい環境となる。腐食によって水管が減肉することは、ボイラの寿命に直接影響するため、腐食を防止するための方策がとられている。
【0003】
特開平11−337009号公報に記載の発明では、予熱器8で120℃から150℃までボイラ給水を予熱しておき、脱気器5へ予熱したボイラ給水を噴射する。脱気器5へは40℃から50℃の低温水も供給するようにしているため、脱気器5内では低温水による冷却によって蒸気が凝縮し、圧力は低下する。そのため、高温水は脱気器内でフラッシュ現象を発生し、水中の溶存酸素が分離する。ボイラには溶存酸素を除去したボイラ給水を供給することで、ボイラ内での腐食を防止している。
【0004】
特開平11−337009号公報に記載の発明では、排ガスとボイラ給水の間で熱交換を行う給水予熱装置として、予熱器と低圧節炭器を設置している。ボイラ給水はまず排ガス流下流側の予熱器にて一段目の予熱を行い、次に脱気器による脱気、その後に低圧節炭器で二段目の予熱を行う。この場合、給水を最初に予熱する予熱器では、脱気器にてフラッシュ現象を発生することができる温度までボイラ給水の温度を高める。予熱器では、ボイラ給水を120℃から150℃の設定温度まで上昇させる必要があるため、排ガス流下流の予熱器では多くの熱を回収することができるように設計される。予熱器と低圧節炭器での熱回収量の合計は同じであっても、予熱器と低圧節炭器での熱回収量の割合を調節することはできる。排気ガス流の上流側となる低圧節炭器で回収する熱量を少なく設定しておけば、排気ガス流の下流側となる予熱器で回収する熱量を増加することができる。
【0005】
以上の仕組みにより、ボイラへ供給する給水は溶存酸素の除去を行った脱気水であるため、ボイラ内での溶存酸素による腐食を防止することができる。ただしこの場合、予熱器において予熱するボイラ給水は溶存酸素を除去する前のものであるため、この部分では溶存酸素による腐食の発生が考えられる。腐食速度は温度の上昇に比例して増加するため、溶存酸素を含んだままで給水を120℃以上の高温まで加熱している予熱器や、その高温水が通る配管部分では比較的強く腐食されることになっていた。
【0006】
また、ボイラ給水を沸騰させるには、ボイラ給水の温度を沸点以上の温度まで高めることで行えるが、圧力を低下させると沸点は低下するため、ボイラ給水を加熱する代わりに給水経路内で減圧を行い、沸点をボイラ給水温度以下にすることでも、ボイラ給水を沸騰させることができる。減圧による脱気を行う場合は、給水経路の途中に真空脱気槽を設置しておき、真空脱気槽内を減圧することで真空脱気槽内での沸点をボイラ給水の温度以下にし、ボイラ給水中の溶存酸素を除去する。ただし、減圧による沸点の低下のみでボイラ給水を沸騰させるには、減圧度を高くしなければならず、真空発生装置に必要な能力が高くなる。その場合、ボイラ給水の温度も上昇させておけば、比較的低い減圧度でもボイラ給水を沸騰させることができる。水側の加熱と真空脱気槽内での減圧を組み合わせると、例えば、真空発生装置の能力が小さく、低い減圧度であってもボイラ給水の脱気を行うことができる。
【0007】
特開平2−233107号公報に記載の発明でも、ボイラへの給水経路に脱気装置を設置した構成の記載がある。特開平2−233107号公報に記載の発明は、火力発電プラントの起動時に実施するクリーンアップ運転を行うためのものであって、ボイラへの給水を脱気するためのものではないが、クリーンアップ運転用の循環水を脱気するための構成が記載されている。特開平2−233107号公報に記載の発明では、クリーンアップ運転時に循環水の脱気を行うため、補助ボイラからの蒸気と汽水分離器からの蒸気を脱気器貯水槽に供給することができるようにしておき、脱気器貯水槽へ蒸気を導入することによって循環水の加熱を行っている。特開平2−233107号公報に記載の発明では、水側でも加熱を行っているため、低い減圧度でも脱気を行うことができる。しかしこの場合、加熱のために蒸気の供給が必要となっている。特に補助ボイラを設置するのであれば、設備面で大幅なコストアップとなる。
【0008】
また、ボイラ給水による腐食を防止するためには、防蝕用の薬品を注入するということも広く行われている。給水経路に腐食の防止や水質を整えるボイラ用薬品を供給する薬注装置を設けておき、薬品の作用によって腐食などを防止することも行える。しかし薬品による防蝕の場合は、薬品を注入し続ける必要があるため、ランニングコストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−337009号公報
【特許文献2】特開平2−233107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ボイラの給水経路を含めた腐食の防止を薬品に頼らない、もしくは薬品の使用量を削減しつつ、設備コスト的にも安価となる給水脱気装置を持ったボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、ボイラへ供給するボイラ給水とボイラから排出される排気ガスの間で熱交換を行うエコノマイザを持ったボイラであって、前記のエコノマイザは、排気ガス流上流側となる高温伝熱管群と、排気ガス流下流側となる低温伝熱管群に分割し、ボイラ給水は先に低温伝熱管群内を通り、高温伝熱管群内には後で通るようにしておき、給水経路の低温伝熱管群と高温伝熱管群の間には真空脱気によってボイラ給水中の溶存酸素を除去するための真空脱気槽を設け、ボイラへ供給するボイラ給水を真空脱気槽内にためた状態で、真空脱気槽と接続している真空発生装置を作動することで真空脱気槽の内部を減圧し、ボイラ給水から溶存酸素を除去するようにしている給水脱気装置を持ったボイラにおいて、前記真空脱気槽には40℃から90℃に予熱したボイラ給水を供給するようにしており、真空発生装置は予熱したボイラ給水が沸騰する圧力以下になるように真空脱気槽内を減圧するものであって、真空脱気槽で溶存酸素の除去を行ったボイラ給水は高温伝熱管群で再度の予熱を行った後にボイラ本体内へ供給するようにしていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記の給水脱気装置を持ったボイラにおいて、低温伝熱管群と真空脱気槽を結ぶ給水経路の途中にボイラ給水を一時的にためる給水タンクを設置しておき、真空脱気槽には給水タンクにためたボイラ給水をバッチ式に供給するものであり、真空脱気槽での脱気処理はバッチ式に行うようにしていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記の給水脱気装置を持ったボイラにおいて、前記給水タンクには、ボイラから排出しているブロー水と給水タンクにためているボイラ給水との間で熱交換を行うブロー熱交換器を設けていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記の給水脱気装置を持ったボイラにおいて、ドレン回収を行う場合には、低温伝熱管群よりも下流側に設けている前記給水タンクでボイラ給水と回収ドレンの混合を行うようにしていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記の給水脱気装置を持ったボイラにおいて、真空発生装置は、ベンチュリ効果を利用して減圧を行うエジェクタ部、エジェクタ部へ送る循環水をためる循環水タンク、循環タンクとエジェクタ部の間で水の循環を行うための循環ポンプを持つものであることを特徴とする給水脱気装置を持ったボイラ。
【0016】
本発明では、脱気前のボイラ給水を予熱する低温伝熱管群の部分では腐食が発生しにくい温度までしか予熱しないため、低温伝熱管群の部分でボイラ給水の温度が上昇することによる腐食の進行を抑制することができる。また、低温伝熱管群による予熱量を少なくしても、低温伝熱管群の後にある給水タンクにてドレンやブロー水からの熱回収を行うことで容易に給水の温度を上昇させることが可能であり、真空脱気槽には十分に予熱したボイラ給水を供給することができるため、真空脱気槽では比較的低い減圧度でボイラ給水からの真空脱気を行うことができる。真空脱気槽で要求される減圧度が低い場合、真空発生装置で必要とされる減圧能力は比較的低いものであってもよいため、簡易な真空発生装置でボイラ給水の真空脱気を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明を実施することで、ボイラ本体部分での腐食を防止できるだけでなく、ボイラ給水の予熱を行う給水経路部分、負荷機器への配管、ドレン配管でも腐食の抑制を行うことができる。また、ボイラ給水を効率よく予熱することができ、しかも装置コストは低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を実施しているボイラの給水経路説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施しているボイラの給水経路説明図である。ボイラ1は、内部で燃焼を行うことでボイラ水を加熱し、負荷機器2へ蒸気を供給するものである。ボイラ1には、軟水器(図示せず)によって水中の硬度成分を除去し、薬注装置(図示せず)によってボイラ用薬品を注入することで、ボイラに適した水質に調節した水を給水するようにしている。
【0020】
ボイラは、内部に設けている燃焼装置によってボイラ水を加熱して蒸気を発生し、負荷機器2へ蒸気を供給する。そしてボイラ水の加熱に使用した後の排気ガスは、排気通路3を通して排出している。しかしこの排気ガスは高温であり、そのまま排出するのはエネルギの無駄であるため、ボイラ給水の予熱に利用することが行われている。排気通路3には、ボイラへ供給しているボイラ給水と、排気通路内を流れる排気ガスの間で熱交換を行うためのエコノマイザ8を設ける。エコノマイザ8は、排気通路内を流れる排気ガスに対して交差するように多数の伝熱管を設置しており、伝熱管を連結することで長い流路を形成している。伝熱管の外側表面には、伝熱面積を増加するための熱吸収用フィンを多数設けておき、伝熱管は排気ガスから熱を取り込み、伝熱管の内側を流れるボイラ給水に熱を伝える。エコノマイザ8は、排ガス流の上流側となる高温伝熱管群4と、排ガス流の下流側となる低温伝熱管群5に分割して設置しておく。
【0021】
ボイラへの給水は、給水流においては上流側となる低温伝熱管群5へまず導入し、高温伝熱管群4には後で導入するように接続しておく。高温伝熱管群4と低温伝熱管群5の間では、一旦排気通路3の外側へ給水配管が取り出されるようにしており、排気通路3から取り出された給水配管は、排気通路3の外に設けている給水タンク6に接続している。低温伝熱管群5で一段目の予熱を行ったボイラ給水は、一時的に給水タンク6にためられることになる。
【0022】
給水タンク6と高温伝熱管群4の間をつないでいる給水経路の途中には真空脱気槽10を設けており、給水タンク6にためているボイラ給水は次に真空脱気槽10に送る。真空脱気槽10は、ボイラ給水中の溶存酸素をボイラ給水から分離除去するものであり、真空脱気槽10内を減圧するための真空発生装置9を接続している。真空発生装置9は種類を問わないが、要求される減圧度はあまり高くなくてもよいため、減圧能力はあまり高くなくてもよく、通水によるベンチュリ効果を利用する比較的安価なアスピレータなども利用することができる。アスピレータは水が流れる水管の一部で管径を細くし、管径を細くした部分に水管に対して垂直方向に延びる吸気管を接続しておき、水管内を流れる水が管径縮小部で減圧することによって気体の吸引を行うものである。アスピレータによる真空発生装置9では水を循環使用するため、真空発生用の循環水をためておく循環水タンク12と循環ポンプ13を設けている。真空発生装置9では、循環水タンク12にためている水を循環使用し、エジェクタ部分を通過した循環水は循環水タンク12へ戻る。
【0023】
給水タンク6と真空脱気槽10をつなぐ給水配管の途中には通水電磁弁11を設けており、通水電磁弁11を開閉操作することで、真空脱気槽10にはバッチ式に給水を行うようにしておく。真空脱気槽10では、ボイラ給水をためた状態で真空脱気槽10内を減圧し、バッチ式で真空脱気を行うことが好ましい。またその場合、バッチ式の真空脱気は、ボイラへの給水と次回の給水との間で行われることが好ましい。連続式にすると酸素透過膜が必要となり、真空発生装置9での必要能力も高くなるが、バッチ式にすることでより簡易な構成とすることができる。
【0024】
真空脱気槽10で溶存酸素の除去を行ったボイラ給水は、高温伝熱管群4で再び予熱を行う。真空脱気槽10と高温伝熱管群4の間をつなぐ給水経路途中に給水ポンプ14を設けており、ボイラ給水は給水ポンプ14で加圧してボイラ1へ送り込む。高温伝熱管群4では低温伝熱管群5よりも高温の排気ガスによって加熱するため、ボイラ給水はさらに高温に予熱することができる。ボイラ給水はその後、ボイラ内で加熱され、蒸気となって取り出される。ボイラ1で発生した蒸気は負荷機器2へ供給し、負荷機器2で利用される。
【0025】
本実施例でのエコノマイザ8は、低温伝熱管群5と高温伝熱管群4に分割して設置しており、低温伝熱管群と高温伝熱管群の二段階で給水を予熱するようにしている。真空脱気槽10へ供給するボイラ給水は40℃から90℃、より好ましくは50℃から70℃にボイラ給水を予熱しておく。低温伝熱管群5内を流れるボイラ給水は溶存酸素を含んだ水であり、低温伝熱管群5でボイラ給水の温度が高くなると、低温伝熱管群5の部分の水管内面における腐食が促進されることになる。そのため、ここではボイラ給水温度はあまり高くなりすぎないようにしておく。逆にボイラ給水温度が低すぎると、真空脱気槽10での減圧度を高くしなければ脱気処理が行えないということになり、脱気能力の低い真空発生装置では十分な脱気が行えないことになる。そのため40℃よりは高くなるようにする。
【0026】
ボイラ給水は、給水タンク6の下流側に設けている真空脱気槽10で脱気する。真空脱気槽10では、供給されるボイラ給水の温度が40℃から90℃、より好ましい温度は50℃から70℃に加熱されているため、真空脱気槽10でボイラ給水の沸騰に必要な減圧度は予熱していない場合に比べて低くなる。予熱していないボイラ給水を減圧だけで沸騰させようとすれば、ボイラ給水が25℃であれば真空脱気槽内を絶対圧で3kPaまで低下させることが必要となる。しかし、ボイラ給水温度を60℃まで予熱していた場合、絶対圧にて20kPaまで減圧すれば沸騰は発生する。その場合、真空発生装置9は10kPa程度まで減圧できる能力を持っていれば十分である。そのため、比較的能力の低い真空発生装置9も選定対象とすることができ、安価な構成とすることができる。そして薬品を併用するのであれば脱気度も無理に高める必要はなく、例えば簡易な脱気装置では溶存酸素濃度を1/4までしか低下できないという場合でも、溶存酸素濃度を1/4にすることで薬品の使用量は半分以下になり、ランニングコストの低減はそれで十分であるという場合には、その方がより好ましいということになる。
【0027】
また、負荷機器2では、蒸気の熱を使用することで蒸気から熱を奪うと、蒸気は凝縮してドレンを発生する。このドレンを回収してボイラ給水に再利用するようにすれば、ボイラでのエネルギと水の使用量を削減することができる。図に記載しているように、負荷機器2で発生したドレンを回収してくるドレン回収管を給水タンク6に接続しておき、給水タンク6にドレンを回収してくるようにすることも有効である。また、ボイラでは蒸発と給水の繰り返しによってボイラ水の濃縮が発生する。そのため、濃縮したボイラ水を定期的に排出することでボイラ水が濃縮しすぎることを防止しているが、そのときに排出されるブロー水は高温である。高温のブロー水から熱を回収することでもボイラでのエネルギ消費量を削減することができるため、ブロー水の熱を回収してボイラ給水の予熱に利用することも広く行われている。
【0028】
ドレン回収を行っているボイラ、またブロー水からの熱回収を行っているボイラでは、エコノマイザ8に入る前のボイラ給水にドレンを混合、またエコノマイザ8に入る前のボイラ給水とブロー水の間で熱交換を行うことが一般的である。しかし本実施例では、低温伝熱管群5の下流側に位置する給水タンクにてドレン回収を行い、その給水タンクにブロー熱交換器7を設置しておいてブロー水からの熱回収を行うようにしている。
【0029】
エコノマイザ8の手前でのドレン回収やブロー水からの熱交換により、エコノマイザ8に入る前の時点でボイラ給水温度を上昇させていると、エコノマイザ8部分でボイラ給水温度が必要以上に高くなることが考えられる。この場合、低温伝熱管群5の下流側に位置する給水タンク6にてドレン回収、および/又は給水タンク6にてブロー水からの熱回収を行うことで、低温伝熱管群部分でのボイラ給水温度は低くてもよくなり、温度が下がることによって低温伝熱管群5部分での腐食は抑制される。さらに低温伝熱管群5に入るボイラ給水温度が高くなっていると、低温伝熱管群5でボイラ給水の予熱効率が低下し、結果として熱の回収量が低下するということも考えられる。熱の回収効率が向上するという点からも、低温伝熱管群5にはより低温のボイラ給水を供給する構成にしておき、低温伝熱管群5の下流に設けている給水タンク6でドレン回収等を行う方がよいとなる。
【0030】
また、低温伝熱管群部分でのボイラ給水温度は低くてもよいため、低温伝熱管群5の伝熱管本数を削減したり低温伝熱管群5自体を小さくすることで設備コストを低減するということもできる。
【0031】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ボイラ
2 負荷機器
3 排気通路
4 高温伝熱管群
5 低温伝熱管群
6 給水タンク
7 ブロー熱交換器
8 エコノマイザ
9 真空発生装置
10 真空脱気槽
11 通水電磁弁
12 循環水タンク
13 循環ポンプ
14 給水ポンプ