【解決手段】検出電路50の交流電圧の電圧波形を非接触で検出して電圧信号Vvを出力する電圧検出部4と、検出電路50に流れる交流電流を非接触で検出してこの電流波形を示す電圧信号Viを、交流電流が検出電路50に第1の向きAで流れているときの位相に対して逆の第2の向きBのときの位相が逆位相となる状態で出力する電流検出部5とを備えている。また電流検出部5は、第1の向きAのときには、電圧信号Vvを基準として−90°以上+90°以下の位相差状態で電圧信号Viを出力する。また、電圧信号Vv,Viの二値化信号S1,S2を出力する2つの二値化部6,7と、この信号S1,S2の論理積のデューティ比が0.25以上のときには送電方向は第1の向きAであり、0.25未満のときには第2の向きBであると検出して表示部9に表示させる処理部8とを備えている。
検出電路に印加されている交流電圧の電圧波形を非接触で検出して出力する電圧検出部と、前記交流電圧の印加状態において前記検出電路に流れる交流電流の電流波形を非接触で検出すると共に、検出した当該電流波形を、当該交流電流が当該検出電路に第1の向きで流れているときの位相に対して当該第1の向きとは逆の第2の向きで流れているときの位相が逆位相となる状態で出力する電流検出部とを備えて、検出した前記電圧波形と前記電流波形とに基づいて前記検出電路における送電方向を検出する送電方向検出装置であって、
前記電流検出部は、前記交流電流が前記第1の向きで流れているときには、前記電圧波形の位相を基準としてマイナス90°以上プラス90°以下の範囲内の位相差状態で前記電流波形を出力し、
前記電圧波形をゼロボルトを基準として二値化して第1二値化信号を出力する第1二値化部と、
前記電流波形をゼロアンペアを基準として二値化して第2二値化信号を出力する第2二値化部と、
前記第1二値化信号および前記第2二値化信号の論理積についてのデューティ比が0.25以上のときには前記送電方向は前記第1の向きであると検出し、当該デューティ比が0.25未満のときには前記送電方向は前記第2の向きであると検出する処理部と、
前記処理部で検出された前記送電方向の情報を出力する第1出力部とを備えている送電方向検出装置。
前記処理部は、前記第1二値化信号の立ち上がり時における前記第2二値化信号の論理に基づいて、当該論理がLowのときには前記交流電圧の位相に対して前記交流電流の位相が遅れた状態にあり、当該論理がHighのときには前記交流電圧の位相に対して前記交流電流の位相が進んだ状態にあると検出し、
前記処理部で検出された前記交流電圧の前記位相に対する前記交流電流の前記位相の前記状態の情報を出力する第2出力部とを備えている請求項1記載の送電方向検出装置。
置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、送電方向検出装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0013】
最初に、送電方向検出装置の一例としての
図1に示す送電方向検出装置1の構成について説明する。送電方向検出装置1は、クランプ部2、センサ本体部3、電圧検出部4、電流検出部5、第1二値化部6、第2二値化部7、処理部8および出力部(後述するように本例では一例として表示部)9を備え、検出電路50における送電方向を検出し得るように構成されている。なお、本例では、
図1,2に示すように、検出電路50は、導体で構成された芯線50a、および芯線50aの外周を覆う絶縁被覆50bを備えて構成されているが、検出電路50は芯線50aのみで構成されるものであってもよい。
【0014】
クランプ部2は、合成樹脂材料(電気的絶縁性を有する材料)を用いてU字状、または互いの一端部同士が接離可能に他端部同士が連結された一対の弧状(本例では一例として、
図1,3に示すようにU字状)に形成されたクランプアーム11を備えて、このクランプアーム11で検出電路50をクランプ可能(クランプアーム11間に検出電路50を導入可能)に構成されている。
【0015】
クランプアーム11内には、電圧検出部4の一部を構成する後述の検出電極4aが配設されていると共に、電流検出部5の一部を構成する後述の磁電変換素子5aおよび磁気コア5bが配設されている。
【0016】
センサ本体部3は、合成樹脂材料を用いて長尺な筒体(例えば、片手で掴むことが可能な太さであって、両端が閉塞された多角筒体や円筒体。本例では一例として、
図1〜
図3に示すような四角筒体)に形成されて、長さ方向の一方の端部にクランプ部2が配設されている。また、センサ本体部3の内部には、電圧検出部4、電流検出部5、第1二値化部6、第2二値化部7、処理部8および表示部9が配設されている。
【0017】
電圧検出部4は、検出電路50に印加されている交流電圧V1の電圧波形を非接触で検出して出力する。一例として、電圧検出部4は、上記した特開2012−137496号公報に開示の電圧検出回路と同等に構成されて、検出電路50(本例では検出電路50の芯線50a)と容量結合する検出電極4aと、検出電路50および検出電極4a間に流れる電流に基づいて検出電路50(本例では検出電路50の芯線50a)に印加されている交流電圧V1と同電圧で、かつ同位相の参照電位信号を生成する電圧検出回路4bとを備えている。この場合、検出電極4aは、クランプアーム11内に配設されている。また、電圧検出回路4bは、参照電位信号と同位相(つまり、交流電圧V1と同位相)で、かつ後段の構成要素(第1二値化部6)で処理し得る電圧に降圧された電圧信号Vvについても、交流電圧V1の電圧波形を示す信号(交流信号)として同時に生成して出力する。
【0018】
電流検出部5は、交流電圧V1の印加状態において検出電路50に流れる交流電流I1(交流電圧V1と同一周期の交流電流)の電流波形を非接触で検出して出力する。一例として、電流検出部5は、上記した特開2012−137496号公報に開示の電流検出回路と同等に構成されて、クランプアーム11内に配設された磁電変換素子(例えばホール素子などの磁束を検出して電気信号に変換して出力する素子)5aと、クランプアーム11内に配設された磁気コア5bと、磁電変換素子5aから出力される電気信号を増幅して電圧信号Viとして出力する電流検出回路5cとを備えている。
【0019】
この場合、磁気コア5bは、クランプ部2でクランプされている検出電路50に交流電流I1が流れることに起因して検出電路50の周囲に発生する磁束を効率よく磁電変換素子5aに誘導する。また、磁電変換素子5aは、交流電流I1と同位相の電気信号を出力する。したがって、電流検出回路5cは、交流電流I1と同位相の電圧信号Viを、交流電流I1の電流波形を示す信号(交流信号)として出力する。
【0020】
なお、検出電路50の周囲に発生する磁束の向きは、クランプされている検出電路50に流れる交流電流I1の向きが変わったときには反転する。このため、磁電変換素子5aは、交流電流I1がクランプされている検出電路50に第1の向き(
図2,3において矢印Aの向き。本例では一例として後述する矢印マーク31aの向き)で流れているときの位相に対して、交流電流I1が検出電路50に第1の向きとは逆の第2の向き(
図2,3において矢印Bの向き。本例では一例として後述する矢印マーク31bの向き)で流れているときの位相が逆位相となる状態で電気信号を出力する。これにより、電流検出回路5c(すなわち、電流検出部5)は、クランプされている検出電路50に流れる交流電流I1の向きが変わったときには位相が反転する電圧信号Viを出力する。
【0021】
また、検出電路50に流れる交流電流I1の交流電圧V1に対する位相は、検出電路50が誘導性の負荷に接続されているか、容量性の負荷に接続されているかにより、交流電圧V1の位相を基準としてマイナス(−)90°以上プラス(+)90°以下の範囲で変化する。本例では一例として、電流検出部5は、クランプされている検出電路50に交流電流I1が第1の向きAで流れているときには、交流電圧V1についての電圧信号Vvの電圧波形の位相を基準として、マイナス90°以上プラス90°以下の範囲内の位相差状態で交流電流I1についての電圧信号Viを出力するように構成されている。したがって、クランプされている検出電路50に交流電流I1が第2の向きBで流れているときには、電流検出部5は、電圧信号Vvの電圧波形の位相を基準として、プラス90°以上プラス270°以下の範囲内の位相差状態で交流電流I1についての電圧信号Viを出力する。
【0022】
第1二値化部6は、例えばコンパレータで構成されて、交流信号としての電圧信号Vvを入力すると共に、基準電位(グランド電位。ゼロボルト)を基準として電圧信号Vvを二値化信号(デューティ比が0.5で、交流電圧V1と同一周期の電圧パルス)S1に変換して出力する。具体的には、第1二値化部6は、電圧信号Vvが基準電位未満のとき(つまり、電圧信号Vvが負電圧のとき)には、後段の処理部8において論理Lowと検出される電圧レベル(ゼロボルト)となり、電圧信号Vvが基準電位以上のとき(つまり、電圧信号Vvが正電圧のとき)には、処理部8において論理Highと検出される電圧レベル(処理部8の電源電圧に近い電圧レベル)となる二値化信号S1を処理部8に出力する。
【0023】
第2二値化部7は、例えばコンパレータで構成されて、交流信号としての電圧信号Viを入力すると共に、基準電位(グランド電位。ゼロボルト)を基準として電圧信号Viを二値化信号(デューティ比が0.5で、交流電流I1と同一周期の電圧パルス)S2に変換して出力する。具体的には、第2二値化部7は、電圧信号Viが基準電位未満のとき(つまり、電圧信号Viが負電圧のとき)には、後段の処理部8において論理Lowと検出される電圧レベル(ゼロボルト)となり、電圧信号Viが基準電位以上のとき(つまり、電圧信号Viが正電圧のとき)には、処理部8において論理Highと検出される電圧レベル(処理部8の電源電圧に近い電圧レベル)となる二値化信号S2を処理部8に出力する。
【0024】
処理部8は、本例では一例として、
図2に示すように、2つの二値化信号S1,S2を入力すると共に、これらの二値化信号S1,S2の論理積を示す論理積信号S3を出力する論理積回路21と、論理積信号S3のデューティ比を検出すると共に、検出したデューティ比に基づいて検出電路50における送電方向を検出する方向検出回路22とを備えている。また、処理部8は、2つの二値化信号S1,S2を入力すると共に、これらの二値化信号S1の位相に対して二値化信号S2の位相が進んでいるか否かを検出する位相検出回路23を備えている。
【0025】
具体的には、論理積回路21は、一例として、2入力の論理積演算素子で構成されて、二値化信号S1,S2の論理積を示す論理積信号S3を例えば正論理(二値化信号S1,S2の論理が共にHighのときにのみ論理Highとなる論理)で出力する。なお、論理積回路21は、二値化信号S1,S2の論理積を示す論理積信号S3を負論理で出力してもよいのは勿論である。
【0026】
方向検出回路22は、具体的には、一例として、交流電圧V1や交流電流I1の周波数に対して十分に高い周波数のクロックで作動する2つのカウンタと、各カウンタのカウント値に基づいて論理積信号S3のデューティ比が0.25以上であるか否かを検出すると共に、デューティ比が0.25以上のときには第1検出信号S4を出力し、デューティ比が0.25未満のときには第2検出信号S5を出力する演算回路(いずれも図示せず)とを備えている。
【0027】
この場合、例えば、2つのカウンタのうちの一方のカウンタは、論理積信号S3の入力の開始タイミング(正論理のときには、論理Lowから論理Highになるタイミング)の直後のクロックに同期してカウント値がリセットされると共に、その次のクロックからカウント動作を開始し、かつこのカウント動作を論理積信号S3の入力期間中だけ実行する。つまり、この一方のカウンタは、論理積信号S3のパルス幅を検出する。一方、2つのカウンタのうちの他方のカウンタは、論理積信号S3の入力の開始タイミング(正論理のときには、論理Lowから論理Highになるタイミング)の直後のクロックに同期してカウント値がリセットされると共に、その次のクロックからカウント動作を開始し、かつこのカウント動作を、次の新たな論理積信号S3の入力まで(次に、カウント値がリセットされるまで)実行する。つまり、この他方のカウンタは、論理積信号S3の周期を検出する。
【0028】
演算回路は、例えば、2つのカウンタ毎に設けられて、各カウンタのカウント値をカウンタのクロックに同期して入力すると共に保持するラッチと、上記の一方のカウンタのカウント値を保持しているラッチの出力を、論理積信号S3の入力の終了後であって次の新たな論理積信号S3の入力までの間に入力して2桁シフトすることでカウント値を4倍にするシフトレジスタと、一例として各カウンタのカウント値がリセットされるタイミングに同期してシフトレジスタの出力と他方のカウンタのカウント値とを比較して、シフトレジスタの出力が他方のカウンタのカウント値以上のとき(すなわち、論理積信号S3のデューティ比が0.25以上のとき)には第1検出信号S4を出力し、シフトレジスタの出力が他方のカウンタのカウント値未満のとき(すなわち、論理積信号S3のデューティ比が0.25未満のとき)には第2検出信号S5を出力するコンパレータとを備えている。
【0029】
位相検出回路23は、具体的には一例として、電圧信号Vvの二値化信号S1をクロックとして作動して、電圧信号Viの二値化信号S2についての論理状態を保持する1つのD−FFで構成されている。この構成により、デューティ比が0.5の二値化信号S1の位相に対して、この二値化信号S1と同一周期でデューティ比が0.5の二値化信号S2の位相が進んでいる位相状態のときには、二値化信号S1の立ち上がりのタイミングでの二値化信号S2は論理がHighの論理状態となる。一方、この二値化信号S1の位相に対してこの二値化信号S2の位相が遅れているときには、二値化信号S1の立ち上がりのタイミングでの二値化信号S2は論理がLowの論理状態となる。したがって、D−FFで構成されている位相検出回路23は、二値化信号S2の位相が進んでいる位相状態のときにはQ出力端子から論理がHighの第3検出信号S6を出力し、二値化信号S2の位相が遅れている位相状態のときにはQB(Qバー)出力端子から論理がHighの第4検出信号S7を出力する。
【0030】
なお、上記した方向検出回路22および位相検出回路23の具体例はあくまでも一例であり、他の公知の論理回路を組み合わせて、方向検出回路22や位相検出回路23を構成することもできる。また、方向検出回路22をCPUで構成して、論理積信号S3のパルス幅および周期の検出と、論理積信号S3のパルス幅と周期とから算出される論理積信号S3のデューティ比が0.25以上であるか否かの検出とをソフトウェアで実行して、第1検出信号S4および第2検出信号S5を出力するようにしてもよい。また、方向検出回路22をCPUで構成する場合、論理積回路21の機能についてもCPUがソフトウェアで実行する構成を採用することもできる。また、位相検出回路23についてもCPUで構成して、二値化信号S1の位相に対する二値化信号S2の位相状態をソフトウェアで実行して、第3検出信号S6および第4検出信号S7を出力するようにしてもよい。また、この場合、論理積回路21、方向検出回路22および位相検出回路23の全体をCPUで構成することもできる。
【0031】
出力部9は、本例では一例としてLCD(Liquid Crystal Display)などの表示部(以下、「表示部9」ともいう)で構成されている。また、表示部9は、
図2,3に示すように、一例として、クランプ部2にクランプされている検出電路50の送電方向を表示するための第1出力部としての第1表示部31と、二値化信号S1の位相に対する二値化信号S2の位相状態(すなわち、交流電圧V1の位相に対する交流電流I1の位相状態)を表示するための第2出力部としての第2表示部32とを備えている。なお、出力部9は、表示部に限定されず、例えば、外部装置への情報(データ)の送信を行う送信部で構成することもできる。この構成を採用したときには、第1出力部としての第1送信部と第2出力部としての第2送信部を備えて送信部を構成して、送電方向を示す情報については第1送信部から、また位相の状態を示す情報については第2送信部から外部装置に出力する。
【0032】
具体的には、第1表示部31は、一例として、矢印マーク31aと、この矢印マーク31aと隣接して平行に配置されると共にこの矢印マーク31aとは逆の方向を示す矢印マーク31bとを表示可能に構成されている。また、第1表示部31は、方向検出回路22から第1検出信号S4を入力しているときには矢印マーク31aを表示状態に移行させ、第2検出信号S5を入力しているときには矢印マーク31bを表示状態に移行させる。また、第1表示部31は、
図1,2,3に示すように、各矢印マーク31a,31bがセンサ本体部3の1つの側面3aから露出し、かつクランプ部2にクランプされているときの検出電路50の長さ方向と平行となるように、センサ本体部3に配設されている。
【0033】
なお、検出電路50の送電方向を表示するために、互いに逆方向を示す一対の矢印マーク31a,31bを表示可能に第1表示部31を構成する例について上記したが、これに限定されず、例えば、両端に矢印が形成された1つの矢印マークにおける検出電路50の送電方向に対応する側の矢印部位を選択的に点灯させるように第1表示部31を構成することもできるなど、種々の構成を採用することができる。
【0034】
第2表示部32は、一例として、二値化信号S1の位相に対して二値化信号S2の位相が進んでいる位相状態(すなわち、交流電圧V1の位相に対して交流電流I1の位相が進んでいる位相状態)を表示するためのマーク32a(本例では一例として、この位相状態を示す文字「LEAD」のマーク)と、二値化信号S1の位相に対して二値化信号S2の位相が遅れている位相状態(すなわち、交流電圧V1の位相に対して交流電流I1の位相が遅れている位相状態)を表示するためのマーク32b(本例では一例として、この位相状態を示す文字「LAG」のマーク)とを表示可能に構成されている。また、第2表示部32は、方向検出回路22から第3検出信号S6を入力しているときにはマーク32aを表示状態に移行させ、第4検出信号S7を入力しているときにはマーク32bを表示状態に移行させる。また、第2表示部32は、
図1,2,3に示すように、各マーク32a,32bがセンサ本体部3の1つの側面3aから露出するように、センサ本体部3に配設されている。
【0035】
なお、交流電圧V1の位相に対する交流電流I1の位相状態を表示するために、各位相状態に対応する2つの文字を表示するマーク32a,32bを表示可能に第2表示部32を構成する例について上記したが、これに限定されず、例えば、各位相状態に対応する2つの異なる色を表示するマークを表示可能に第2表示部32を構成することもできるなど、種々の構成を採用することができる。
【0036】
次に、送電方向検出装置1の動作について説明する。以下では、検出電路50が
図2,3に示すようにクランプ部2にクランプされている状態において、交流電流I1が検出電路50に第1の向きAで流れているときと、交流電流I1が検出電路50に第2の向きBで流れているときの動作に分けて説明する。
【0037】
最初に、クランプされている検出電路50の送電方向(検出電路50に流れる交流電流I1の向き)を検出する動作について説明する。
【0038】
まず、交流電流I1が検出電路50に第1の向きAで流れているときの送電方向検出装置1の動作について説明する。
【0039】
送電方向検出装置1では、
図4に示すように、電圧検出部4が、検出電路50に印加されている交流電圧V1を検出して、交流電圧V1と同位相で、かつ同極性の電圧信号Vvを出力する。また、電流検出部5が、検出電路50に流れている交流電流I1を検出して、電圧信号Viを出力する。また、第1二値化部6が電圧信号Vvを二値化信号S1に変換して出力し、第2二値化部7が電圧信号Viを二値化信号S2に変換して出力する。
【0040】
この場合、交流電流I1が検出電路50に第1の向きAで流れているため、電流検出部5は、
図4に示すように、電圧信号Vvの0°の位相を基準として、同図において破線で示すように位相が最大で90°進む(位相差がプラス90°となる)位相状態と、同図において一点鎖線で示すように位相が最大で90°遅れる(位相差がマイナス90°となる)位相状態との間のいずれかの位相状態(同図において実線で示すように位相差が0°となる位相状態を含む)にある電圧信号Viを出力する。
【0041】
このため、第2二値化部7も、
図4に示すように、第1二値化部6から出力される二値化信号S1の位相を基準として、位相が最大で90°進む(位相差がプラス90°となる)位相状態と、位相が最大で90°遅れる(位相差がマイナス90°となる)位相状態との間のいずれかの位相状態(位相差が0°となる位相状態を含む)にある二値化信号S2を出力する。
【0042】
処理部8では、論理積回路21が、各二値化信号S1,S2を入力して、これらの論理積を示す論理積信号S3を出力する。クランプされている検出電路50に交流電流I1が第1の向きAで流れている場合には、二値化信号S1に対して二値化信号S2が上記した位相状態(二値化信号S1の位相に対して、マイナス90°以上プラス90°以下の範囲内の位相差)で出力される。このため、
図4に示すように、論理積信号S3のデューティ比は、二値化信号S1の位相に対して二値化信号S2の位相が0°(位相差が0°)となるときが最大となり(0.5)となり、位相がマイナス側やプラス側にずれるに従い小さくなって、位相差がマイナス90°のときおよび位相差がプラス90°のときに最小(0.25)となる。すなわち、クランプされている検出電路50に交流電流I1が第1の向きAで流れている場合には、論理積信号S3のデューティ比は、0.25以上0.5以下になる。
【0043】
処理部8では、次いで、方向検出回路22が、この論理積信号S3のデューティ比が0.25以上であるか否かを検出して、0.25以上であるため、
図4に示すように、第1検出信号S4を出力し、第2検出信号S5については出力を停止する。
【0044】
これにより、表示部9では、第1表示部31が、第1検出信号S4を入力して、第1の方向Aと同方向を示す矢印マーク31aを点灯状態に移行させ、一方、第2検出信号S5を入力していないため、矢印マーク31bを消灯状態に移行させる。
【0045】
次に、交流電流I1が検出電路50に第2の向きBで流れているときの送電方向検出装置1の動作について説明する。
【0046】
送電方向検出装置1では、
図5に示すように、電圧検出部4が、検出電路50に印加されている交流電圧V1を検出して、交流電圧V1と同位相で、かつ同極性の電圧信号Vvを出力する。また、電流検出部5が、検出電路50に流れている交流電流I1を検出して、電圧信号Viを出力する。また、第1二値化部6が電圧信号Vvを二値化信号S1に変換して出力し、第2二値化部7が電圧信号Viを二値化信号S2に変換して出力する。
【0047】
この場合、交流電流I1が検出電路50に第2の向きBで流れているため、電流検出部5は、
図5に示すように、電圧信号Vvの+180°の位相を基準として、同図において破線で示すように位相が最大で90°進む(電圧信号Vvとの位相差がマイナス90°となる)位相状態と、同図において一点鎖線で示すように位相が最大で90°遅れる(電圧信号Vvとの位相差がマイナス270°となる)位相状態との間のいずれかの位相状態(同図において実線で示すように電圧信号Vvとの位相差がマイナス180°となる位相状態を含む)にある電圧信号Viを出力する。
【0048】
このため、第2二値化部7も、
図5に示すように、第1二値化部6から出力される二値化信号S1の位相を基準として、二値化信号S1との位相差がマイナス90°となる位相状態と、二値化信号S1との位相差がマイナス270°となる位相状態との間のいずれかの位相状態(二値化信号S1との位相差がマイナス180°となる位相状態を含む)にある二値化信号S2を出力する。
【0049】
処理部8では、論理積回路21が、各二値化信号S1,S2を入力して、これらの論理積を示す論理積信号S3を出力する。クランプされている検出電路50に交流電流I1が第2の向きBで流れている場合には、二値化信号S1に対して二値化信号S2が上記した位相状態(二値化信号S1の位相に対して、位相差がマイナス90°からマイナス270°までの範囲内の位相差)で出力される。このため、
図5に示すように、論理積信号S3のデューティ比は、二値化信号S1の位相に対する二値化信号S2の位相差がマイナス180°となるときが最小となり(0)となり、この位相状態から位相がプラス側やマイナス側にずれるに従い大きくなって、位相差がマイナス90°のときおよび位相差がマイナス270°のときに最大(0.25)となる。すなわち、クランプされている検出電路50に交流電流I1が第2の向きBで流れている場合には、論理積信号S3のデューティ比は、0.25未満になる。
【0050】
処理部8では、次いで方向検出回路22が、この論理積信号S3のデューティ比が0.25以上であるか否かを検出して、0.25未満であるため、
図5に示すように、第1検出信号S4については出力を停止し、第2検出信号S5を出力する。
【0051】
これにより、表示部9では、第1表示部31が、第2検出信号S5を入力して、第2の方向Bと同方向を示す矢印マーク31bを点灯状態に移行させ、一方、第1検出信号S4を入力していないため、矢印マーク31aを消灯状態に移行させる。
【0052】
このように、この送電方向検出装置1では、第1表示部31の2つの矢印マーク31a,31bのうちのクランプした検出電路50に流れる交流電流I1の方向と同じ方向の矢印マークのみが点灯するため、矢印マーク31a,31bの点灯状態に基づいて、クランプしている検出電路50に流れる交流電流I1の方向(送電方向(電力の潮流方向))を検出することが可能になっている。
【0053】
続いて、検出電路50に印加されている交流電圧V1の位相に対する交流電流I1の位相状態、すなわち、交流電圧V1の0°の位相を基準として、交流電流I1の位相が進んでいる位相状態(位相差が0°からプラス90°までのいずれかになる位相状態)であるか、交流電流I1の位相が遅れている位相状態(位相差が0°からマイナス90°までのいずれかになる位相状態)であるかを検出する動作について説明する。
【0054】
この場合、
図4に示すように交流電圧V1の0°の位相を基準として交流電流I1の位相が、最大で90°進む(位相差がプラス90°となる)位相状態と、最大で90°遅れる(位相差がマイナス90°となる)位相状態との間のいずれかの位相状態となるように、つまり、上記したように交流電流I1が第1の向きAで流れるように(つまり、矢印マーク31aが点灯するように)、送電方向検出装置1で検出電路50をクランプする必要がある。
【0055】
したがって、送電方向検出装置1でクランプして検出した検出電路50に流れる交流電流I1の方向が第1の向きA(つまり、矢印マーク31aが点灯する向き)のときには、そのクランプ状態のままでよいが、検出した交流電流I1の方向が第2の向きB(つまり、矢印マーク31bが点灯する向き)のときには、交流電流I1の方向と矢印マーク31aとが一致するように、送電方向検出装置1を検出電路50にクランプし直す。
【0056】
このように、クランプしている検出電路50に第1の向きAで交流電流I1が流れている状態(つまり、矢印マーク31aが点灯している状態)のときには、送電方向検出装置1では、位相検出回路23が、二値化信号S1の立ち上がりのタイミングでの二値化信号S2の論理状態に基づき、第3検出信号S6および第4検出信号S7のいずれか一方を出力する。
【0057】
具体的には、位相検出回路23は、二値化信号S1の位相に対して二値化信号S2の位相が進んでいるとき(位相差が0°を超えプラス90°以下のとき)には、
図4に示すように、二値化信号S1の立ち上がりのタイミングでの二値化信号S2の論理状態がHighとなる。このため、位相検出回路23は、第3検出信号S6を出力し、第4検出信号S7の出力を停止する。これにより、表示部9では、第2表示部32が、第3検出信号S6を入力して、マーク32a(文字「LEAD」のマーク)を点灯状態に移行させ、マーク32b(文字「LAG」のマーク)を消灯状態に移行させる。
【0058】
一方、位相検出回路23は、二値化信号S1の位相に対して二値化信号S2の位相が遅れているとき(位相差が0°未満でマイナス90°以上のとき)には、
図4に示すように、二値化信号S1の立ち上がりのタイミングでの二値化信号S2の論理状態がLowとなる。このため、位相検出回路23は、第4検出信号S7を出力し、第3検出信号S6の出力を停止する。これにより、表示部9では、第2表示部32が、第4検出信号S7を入力して、マーク32b(文字「LAG」のマーク)を点灯状態に移行させ、マーク32a(文字「LEAD」のマーク)を消灯状態に移行させる。
【0059】
以上のように、この送電方向検出装置1では、クランプしている検出電路50における交流電流I1の方向が第1の向きAのときには、二値化信号S1の位相に対する二値化信号S2の位相状態、つまり、交流電圧V1の位相に対する交流電流I1の位相状態(交流電圧V1の位相に対して、交流電流I1の位相が進んでいるか遅れているか)を正確に検出することも可能になっている。
【0060】
このように、この送電方向検出装置1によれば、上記のように、電圧検出部4、電流検出部5、各二値化部6,7、処理部8および表示部9を備えたことにより、検出電路50で送電される有効電力を算出する処理を実行することなく、検出電路50の送電方向を非接触で検出して、表示部9に表示することができる。したがって、作業者は、表示部9の表示内容(本例では、矢印マーク31a,31bの点灯状態)に基づいて、検出電路50の送電方向を確実に認識することができる。
【0061】
また、この送電方向検出装置1によれば、検出した送電方向と矢印マーク31aとが一致するように送電方向検出装置1を検出電路50にクランプすることにより、この状態での第2表示部32の各マーク32a,32bの点灯状態に基づいて、交流電圧V1の位相に対する交流電流I1の位相状態(交流電圧V1の位相に対して交流電流I1の位相が進んでいるか遅れているか)を非接触で検出することができる。
【0062】
なお、上記の送電方向検出装置1では、位相検出回路23および第2表示部32を備えて、交流電圧V1の位相に対する交流電流I1の位相状態を非接触で検出し得る構成としているが、検出電路50の送電方向を検出する機能だけでよいときには、位相検出回路23および第2表示部32を省いて、交流電圧V1の位相に対する交流電流I1の位相状態を検出する機能を省略することもできる。