【課題】ダイシング工程においてハンドリング性に優れ、かつ被切断物のダイシング時に発生するダイシング屑が発生する可能性が低減されており、さらにエキスパンド工程において基材の破断が生じる可能性も低減されているダイシングシート用の基材、およびこの基材を備えたダイシングシートを提供する。
【解決手段】樹脂層(A)と、樹脂層(A)の一方の面上に積層された樹脂層(B)とを備えたダイシングシート用基材フィルム2であって、樹脂層(A)は、23℃における引張弾性率が1000MPa以下であって、ノルボルネン系化合物に由来する構成単位を少なくとも一種有する樹脂であるノルボルネン系樹脂(a1)およびプロピレン系重合体に基づく樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a2)を含み、樹脂層(B)は、23℃における引張弾性率が50MPa以上500MPa以下であって、破断伸度が100%以上である。
前記樹脂層(A)中の全樹脂成分における前記ポリプロピレン系樹脂(a2)の含有量は、1質量%以上60質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のダイシングシート用基材フィルム。
前記樹脂層(A)は、前記ポリプロピレン系樹脂(a2)よりも23℃における引張弾性率が低い樹脂である低弾性樹脂(a3)をさらに含有する、請求項1または2に記載のダイシングシート用基材フィルム。
請求項1から9のいずれかに記載されるダイシング用基材フィルムと、当該フィルムの前記樹脂層(A)側の面に積層された粘着剤層とを備えたことを特徴とするダイシングシート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係るダイシングシートの構成要素やその製造方法等について説明する。
1.基材フィルム
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1は、樹脂層(A)と樹脂層(B)とが積層された構造を有する基材フィルム2およびこの基材フィルム2の樹脂層(A)側の面上に配置された粘着剤層3を備える。
【0031】
以下、樹脂層(A)および樹脂層(B)について詳しく説明する。
(1)樹脂層(A)
本実施形態に係る基材フィルム2が備える樹脂層(A)は、ノルボルネン系樹脂(a1)と、ポリプロピレン系樹脂(a2)を含む。
【0032】
(1−1)ノルボルネン系樹脂(a1)
ノルボルネン系樹脂を与える「ノルボルネン系化合物」とは、本明細書において、ノルボルネン、ノルボルネンに係るビシクロ環を含む環状構造を有する化合物(例えばジシクロペンタジエン)、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物を意味する。
【0033】
後述するように、ノルボルネン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)とは、それぞれの樹脂を構成する重合体がノルボルネン環を含む環骨格を備える化学構造を実質的に有するか否かの点で相違することに基づいて、引張弾性率、軟化点などの物理特性が相違する。このため、樹脂層(A)中で、ノルボルネン系樹脂(a1)の相とポリプロピレン系樹脂(a2)相とは相分離した構造をなす。つまり、樹脂層(A)は相分離構造を有する多相樹脂層である。
【0034】
その相分離構造の詳細な形態は、それぞれの樹脂の化学構造や含有比率などによって変動する。一般的には、含有率が多い樹脂層からなるマトリックス中に、含有率が少ない樹脂層が分散する形態(以下、「分散形態」という。)となる。
【0035】
ダイシング屑の発生をより効果的に抑制する観点からは、樹脂層(A)中の相分離構造は上記の分散形態をなし、かつ分散する方の樹脂の相(以下、「分散相」といい、マトリックスをなす方の樹脂の相を「マトリックス相」という。)の径が小さい方が好ましい。分散形態において分散相の大きさが過度に大きくなると、ダイシング屑の発生を抑制する機能が低下する傾向を示すことに加えて、樹脂層(A)の表面性状が劣化し(具体的には表面が粗面化し)、ダイシングシート1として使用したときに被切断物の断面部にチッピングが生じやすくなることが懸念される。さらに、分散相の大きさが過度に大きくなると、分散相が互いに連結し、その結果、分散相とマトリックス相との界面の樹脂層(A)の厚さ方向の長さが樹脂層(A)の厚さと同等となるものが生じる可能性が高まる。このとき、樹脂層(A)の耐脆性が過度に低下することが懸念される。
【0036】
なお、樹脂層(A)の断面を高倍率の顕微鏡(例えば走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより、樹脂層(A)が分散形態を有していることが確認できる。
【0037】
前述のように、ノルボルネン系化合物とはノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン)、ノルボルネンに係るビシクロ環を含む環状構造を有する化合物(例えばジシクロペンタジエン)、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物であり、ノルボルネン以外の具体例として、シクロペンタジエン、テトラシクロドデセンなどが挙げられる。
【0038】
ノルボルネン系化合物に由来する構成単位を含む重合体(単独重合体または共重合体)は、主鎖または側鎖にビシクロ[2.2.1]ヘプタン環構造を有する。
【0039】
ノルボルネン系樹脂(a1)の好ましい構造は、樹脂を構成する重合体の主鎖の少なくとも一部を環状構造が構成する構造であり、その環状構造におけるビシクロ環部分が上記の主鎖の一部を構成する構造であればさらに好ましい。そのような構造を備える樹脂として、ノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合体水素化物(具体的には日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ノルボルネンとエチレンとの共重合体(具体的にはポリプラスチックス社製TOPAS(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ジシクロペンタジエンとテトラシクロペンタドデセンとの開環重合に基づく共重合体(具体的には日本ゼオン社製ZEONOR(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、エチレンとテトラシクロドデセンとの共重合体(具体的には三井化学社製アペル(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ジシクロペンタジエンおよびメタクリル酸エステルを原料とする極性基を含む環状オレフィン樹脂(具体的にはJSR社製アートン(登録商標)シリーズとして入手可能である。)などが好ましい。このような樹脂を用いると、ダイシング加工に基づくせん断力や摩擦熱を受けている領域において、ノルボルネン系樹脂(a1)の相とポリプロピレン系樹脂(a2)からなる相との分散状態がダイシング屑の発生を抑制することに特に好適な状態になっている。
【0040】
ノルボルネン系樹脂(a1)を構成する重合体は、一種類であってもよいし、複数種類の重合体をブレンドしてなるものであってもよい。ここで、重合体の種類が異なるとは、分岐の状態(すなわち、重合体のアーキテクチャー)、分子量、重合体を構成する単量体の配合バランスおよび重合体を構成する単量体の組成ならびにこれらの組み合わせが物理特性などに大きな影響を与える程度に異なることをいう。ノルボルネン系樹脂(a1)を構成する重合体の種類が複数である場合には、樹脂層(A)中でこれらが相分離することなく一つの相をなしてポリプロピレン系樹脂(a2)と相分離構造を形成してもよいし、樹脂層(A)中でこれらが互いに異なる相をなしつつポリプロピレン系樹脂(a2)と相分離構造を形成してもよい。
【0041】
ここで、ノルボルネン系樹脂(a1)は架橋構造を有していてもよい。架橋構造をもたらす架橋剤の種類は任意であり、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物やエポキシ基を有する化合物が典型的である。架橋剤は、ノルボルネン系樹脂(a1)を構成する重合体の一種類同士の間で架橋してもよいし、異なる種類の重合体間で架橋してもよい。架橋剤の結合部位も任意である。ノルボルネン系樹脂(a1)を構成する重合体における主鎖を構成する原子と架橋していてもよいし、側鎖や官能基など主鎖以外を構成する原子と架橋していてもよい。架橋の程度も任意であるが、架橋の程度が過度に進行すると、ノルボルネン系樹脂(a1)を含む樹脂層(A)の加工性(特に成形性)が過度に低下したり、樹脂層(A)の表面性状が過度に劣化したり、樹脂層(A)の耐脆性が低下することが懸念されるため、このような問題が発生しない範囲に留めるべきである。
【0042】
ノルボルネン系樹脂(a1)を含有させたことの効果(ダイシング屑の発生が抑制されること)を安定的に得る観点から、前記樹脂層(A)中の全樹脂成分におけるノルボルネン系樹脂(a1)の含有量は3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上とすることがより好ましく、5質量%以上とすることがさらに好ましい。一方、樹脂層(A)の23℃における引張弾性率(本明細書において、特にことわりのない「引張弾性率」は、計測温度が23℃の引張弾性率を意味する。)を後述する範囲(1000MPa以下)とすることを容易にする観点から、前記樹脂層(A)中の全樹脂成分におけるノルボルネン系樹脂(a1)の含有量は、60質量%以下とすることが好ましく、55質量%以下とすることがより好ましく、45質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0043】
樹脂層(A)の製造しやすさなどの観点から、ノルボルネン系樹脂(a1)は熱可塑性を備えることが好ましい。ノルボルネン系樹脂(a1)が熱可塑性樹脂である場合において、この熱可塑性の程度は溶融時の粘度を示すメルトマスフローレイト(MFR)で表すことができ、樹脂層(A)が適切な相分離構造を有するように適宜設定すればよい。過度にメルトマスフローレイトが高い場合にはポリプロピレン系樹脂(a2)との物理特性の差が少なくなり、ダイシング屑の発生を抑制する機能が低下する傾向を示すことが懸念される。なお、熱可塑性が高いほど成形などの加工性に優れるため、この点も考慮することが好ましい。ノルボルネン系樹脂(a1)が備えるべき好ましい熱可塑性の程度を具体的に示せば、JIS K7210:1999(ISO 1133:1997)に準拠した、温度230℃、荷重2.16kgfにおけるメルトマスフローレイト(MFR)の値が、0.1g/10min以上であることが加工性等の観点から好ましい。高い生産性(加工性)を確保しつつダイシング屑の発生の抑制を安定的に実現する観点から、ノルボルネン系樹脂(a1)のメルトマスフローレイトは0.5/10min以上50.0g/10min以下とすることが好ましく、1.0g/10min以上25.0g/10min以下であればさらに好ましい。
【0044】
ノルボルネン系樹脂(a1)の引張弾性率は1.5GPa超であることが好ましい。なお、引張弾性率の測定方法の詳細は実施例において後述する。引張弾性率をこの範囲とすることで、ポリプロピレン系樹脂(a2)との物理特性の差が大きくなり、ダイシング屑発生の抑制に適した相分離構造が樹脂層(A)に得られやすくなる。この相分離構造を安定的に得る観点から、ノルボルネン系樹脂(a1)の23℃における引張弾性率は2.0GPa以上であることが好ましい。一方、ノルボルネン系樹脂(a1)の引張弾性率は、3.0GPa以下とすることが、後述するように樹脂層(A)の引張弾性率を1000MPa以下とすることが容易となるため、好ましい。この観点からノルボルネン系樹脂(a1)の23℃における引張弾性率は2.5GPa以下であることがより好ましい。
【0045】
ノルボルネン系樹脂(a1)の流動化温度は225℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがより好ましい。流動化温度とは、加熱された樹脂試料が軟化点を経過したことにより分子の変形自由度が増して分子間相互作用が上昇した状態を超えてさらに試料が加熱された場合における、試料全体の流動化が発生する最低の温度である。流動化温度が225℃以下であることにより、樹脂層(A)中においてノルボルネン系樹脂(a1)の相が粗大となる事態が生じにくく、ダイシング屑の発生を効果的に抑制しつつ、チッピングの発生や樹脂層(A)の著しい脆化を防止することができる。ノルボルネン系樹脂(a1)の流動化温度が過度に低い場合には上記の23℃における引張弾性率が1.5GPa以下に低下してしまう場合がある。この場合には、ポリプロピレン系樹脂(a2)との物理特性の差が小さくなり、樹脂層(A)においてダイシング屑発生の抑制に適した相分離構造が得られにくくなることが懸念される。したがって、流動化温度の下限は100℃以上とすることが好ましい。
【0046】
ここで、本明細書における「流動化温度」とは、高化式フローテスターによって得られた値とする。具体的には、荷重49.05Nとし、穴形状がφ2.0mm、長さが5.0mmのダイを使用し、試料の温度を昇温速度10℃/分で上昇させながら、昇温とともに変動するストローク変位速度(mm/分)を測定して、ストローク変位速度の温度依存性チャートを得る。試料が熱可塑性樹脂である場合には、ストローク変位速度は、試料温度が軟化点に到達したことを契機として上昇して所定のピークに到達後、いったん降下する。ストローク変位速度はこの降下により最下点に到達した後、試料全体の流動化が進行することにより急激に上昇する。本明細書では、軟化点を超えて試料温度を上昇させた場合において、ストローク変位速度が一旦ピークに到達した後に現れるストローク変位速度の最低値を与える温度を流動化温度と定義する。
【0047】
ノルボルネン系樹脂(a1)の密度は、ポリプロピレン系樹脂(a2)との物理特性の差を十分に大きくして樹脂層(A)においてダイシング屑発生の抑制に適した相分離構造が得られやすくなる観点から、0.98g/cm
3以上であることが好ましい。
【0048】
ノルボルネン系樹脂(a1)は、結晶性を有するものであってもよく、非結晶性であってもよいが、ポリプロピレン系樹脂(a2)との物理特性の差を十分に大きくする観点から、非結晶性であることが好ましい。
【0049】
(1−2)ポリプロピレン系樹脂(a2)
ポリプロピレン系樹脂(a2)は、前述のとおり、ノルボルネン系化合物に由来する構成単位を実質的に含まず、プロピレン系重合体に基づく樹脂を意味する。本実施形態に係る樹脂層(A)がノルボルネン系樹脂(a1)およびポリプロピレン系樹脂(a2)を含有することにより、樹脂層(A)中に相分離構造が形成されやすくなり、ダイシング屑の発生をより効果的に抑制できるとともに、ポリプロピレン系樹脂(a2)を含有することにより、樹脂層(A)と粘着剤層3との層間剥離が生じにくくなり、ダイシングシート1として使用した際に、ダイシング工程やエキスパンド工程において不具合(チップ飛散、エキスパンド性低下など)が発生する可能性が低減される。
【0050】
ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロプレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他のエチレン性不飽和結合を有する化合物との共重合体であってもよい。本明細書において、ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体が含む、プロピレンに由来する構成単位以外の構成単位を与えるエチレン性不飽和結合を有する化合物を、「他の不飽和化合物」ともいう。ポリプロピレンとしての特性を安定的に得る観点から、他の不飽和化合物として、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンなどの炭素数が4〜18のα位に二重結合を有するアルケンが例示されるαオレフィンならびにエチレンが好ましい例として挙げられる。
【0051】
ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体が、プロピレンと他の不飽和化合物との共重合体である場合には、該共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の含有率は、該共重合体を形成するための単量体全体に対するプロピレンの質量比率として、通常、75質量%以上99.9質量%以下であり、好ましくは80質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは85質量%以上99質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上99質量%以下である。ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体が、上記のプロピレンの質量比率が75質量%以上である共重合体を含有する場合には、ダイシングシート1を加工した際のダイシング屑の発生がより安定的に抑制される。
【0052】
ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体が共重合体を含有する場合における、その共重合体の具体的な態様は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれであってもよいし、プロピレン系重合体はこれらの二種以上の共重合体を含有していてもよい。ダイシング工程においてダイシング屑が発生する可能性がより安定的に低減される観点から、これらの形態の中でもブロック共重合体が好ましい。
【0053】
樹脂層(A)中の全樹脂成分におけるポリプロピレン系樹脂(a2)の含有量は、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、2質量%以上40質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下とすることがさらに好ましい。樹脂層(A)中の全樹脂成分におけるポリプロピレン系樹脂(a2)の含有量が上記範囲であれば、ダイシング工程においてダイシング屑の発生を抑制するとともに、樹脂層(A)の引張弾性率を後述する範囲(1000MPa以下)とすることが容易となる。
【0054】
ポリプロピレン系樹脂(a2)は、樹脂層(A)の製造を容易にするなどの観点から熱可塑性樹脂であることが好ましい。この場合には、ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体は、架橋されていない、またはその架橋の程度が適切に制御されている状態にある。ポリプロピレン系樹脂(a2)が熱可塑性樹脂である場合のメルトマスフローレイト(MFR)は、樹脂層(A)において、ノルボルネン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との相分離構造の形成しやすさの観点から、ノルボルネン系樹脂(a1)のメルトマスフローレイト(MFR)以上であることが好ましい。具体的には、温度190℃、荷重2.16kgfで測定した時のメルトマスフローレイト(MFR)は、0.5g/10min以上10g/10min以下であることが好ましく、2.0g/10min以上7.0g/10min以下であることがより好ましい。
【0055】
ポリプロピレン系樹脂(a2)が熱可塑性樹脂でありかつ結晶性である場合には、その融解ピーク温度は120℃以上170℃以下であることが好ましく、130℃以上165℃以下であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂(a2)の融解ピーク温度が120℃以下である場合には、ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体の構造はブロック重合体が主体でなく、ランダム共重合体および/またはグラフト共重合体が主体となる。そのような場合には、ダイシング屑の発生を抑制しにくくなることが懸念される。一方、ポリプロピレン系樹脂(a2)の融解ピーク温度が170℃以上であると、ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体の分子量が過度に大きくなってしまうため、樹脂層(A)を形成するための樹脂組成物(一成分としてポリプロピレン系樹脂(a2)を含む。)をフィルム状に成形する際に、樹脂層(A)を薄くすることが困難となったり、その厚さにばらつきが生じやすくなったりすることが懸念される。
【0056】
また、ポリプロピレン系樹脂(a2)が熱可塑性樹脂であって、かつ結晶性である場合において、その融解熱量は60J/g以上100J/g以下であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂(a2)の融解熱量が60J/g未満であると、ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体の結晶化度が小さいため、ポリプロピレン系樹脂(a2)がノルボルネン系樹脂(a1)と相分離構造を形成しにくくなり、ダイシング工程においてダイシング屑の発生を抑制しにくくなることが懸念される。また、ポリプロピレン系樹脂(a2)単独での粘着性が過度に高くなるため、樹脂層(A)を形成するための樹脂組成物をフィルム状に成形する際に不具合(作業性の低下など)を生じることが懸念される。一方、ポリプロピレン系樹脂(a2)の融解熱量が100J/g超であると、ポリプロピレン系樹脂(a2)に係るプロピレン系重合体の結晶化度が高いため、樹脂層(A)全体としての柔軟性が失われ、エキスパンド工程の際に不具合(基材フィルム2の破断など)が生じることが懸念される。
【0057】
なお、本明細書における融解ピーク温度および融解熱量ΔHは、示差走査熱量計(試験例では、ティー・エイ・インスツルメント社製、型番:Q2000を使用)によって得られる値とする。具体的には、次のようにして測定する。すなわち、−50℃から250℃まで加熱速度20℃/minで加熱を行った後、−50℃まで急速冷却を行い、再度加熱速度20℃/minで250℃まで加熱し、その温度で保持する。この2回目の昇温測定で得られたピーク温度を融解ピーク温度とする。その後250℃から−50℃まで冷却速度20℃/minで冷却する際に得られたデータから、融解熱量ΔHを算出する。
【0058】
また、ポリプロピレン系樹脂(a2)の引張弾性率は、ダイシング工程においてダイシング屑の発生を抑制するとともに、樹脂層(A)の引張弾性率が1000MPa以下となることを安定的に実現する観点から、600MPa以上999MPa以下であることが好ましく、650MPa以上990MPa以下であることがより好ましく、700MPa以上990MPa以下であることが特に好ましい。
【0059】
(1−3)低弾性樹脂(a3)
樹脂層(A)は、安定的に引張弾性率を1000MPa以下とするために、低弾性樹脂(a3)をさらに含有することが好ましい。
【0060】
本明細書において「低弾性樹脂(a3)」とは、ポリプロピレン系樹脂(a2)よりも23℃における引張弾性率が低い樹脂を意味する。
樹脂層(A)の引張弾性率が1000MPa以下となることを安定的に実現する観点から、樹脂層(A)中の低弾性樹脂(a3)の引張弾性率は500MPa以下であることが好ましく、300MPa以下であることがより好ましく、200MPa以下であることが特に好ましい。一方、樹脂層(A)中の低弾性樹脂(a3)の引張弾性率が過度に低い場合には、基材フィルム2全体の引張弾性率が過度に低くなる可能性があり、このとき、ダイシングシート1のハンドリング性が低下することが懸念される。このため、低弾性樹脂(a3)の引張弾性率は50MPa以上であることが好ましく、60MPa以上であることがより好ましく、80MPa以上であることが特に好ましい。
【0061】
樹脂層(A)の引張弾性率が1000MPa以下となることを安定的に実現する観点から、樹脂層(A)中の全樹脂成分における低弾性樹脂(a3)の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上とすることがより好ましく、40質量%以上とすることが特に好ましい。一方、樹脂層(A)中の低弾性樹脂(a3)の含有量が過度に高い場合には、基材フィルム2全体の引張弾性率が過度に低くなる可能性があり、このとき、ダイシングシート1のハンドリング性が低下することが懸念される。このため、樹脂層(A)中の全樹脂成分における低弾性樹脂(a3)の含有量は、96質量%以下とすることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
低弾性樹脂(a3)の具体的な構成は、上記の引張弾性率に関する要請を満たす限り、特に限定されない。低弾性樹脂(a3)を構成する重合体は一種類であってもよいし、複数種類であってもよい。低弾性樹脂(a3)は、ノルボルネン系樹脂(a1)には相溶しにくく、ポリプロピレン系樹脂(a2)との相溶性が高い樹脂であることが好ましく、低弾性樹脂(a3)はエチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する構成単位を含有する重合体に基づく樹脂であることが好ましい。
【0063】
低弾性樹脂(a3)の具体例として、ポリエチレン系樹脂(a3i)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体およびその変性体からなる群から選ばれた一種または二種以上の重合体に基づく樹脂(SEBS系樹脂)等が挙げられる。
【0064】
以下、低弾性樹脂(a3)の好ましい一例であるポリエチレン系樹脂(a3i)について詳しく説明する。樹脂層(A)がポリエチレン系樹脂(a3i)を含有することにより、樹脂層(A)の引張弾性率を1000MPa以下とすることが容易となる。
【0065】
ポリエチレン系樹脂(a3i)は、低弾性樹脂(a3)の一種であって、エチレンに由来する構成単位を有する重合体(エチレン系重合体)に基づく樹脂である。ポリエチレン系樹脂(a3i)に係るエチレン系重合体の具体例として、エチレンの単独重合体、エチレン―αオレフィン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン共重合体が挙げられる。ポリエチレン系樹脂(a3i)に係るエチレン系重合体は一種類のモノマーからなる単独重合体から構成されていてもよいし、複数種類のモノマーからなる共重合体から構成されていてもよい。
【0066】
ポリエチレン系樹脂(a3i)に係るエチレン系重合体におけるエチレンに由来する構成単位の含有率は、共重合体を形成するための単量体全体に対するエチレンの質量比率として、一般に70質量%以上であり、好ましくは70質量%以上99.9質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上99質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以上98質量%以下である。ポリエチレン系樹脂(a3i)に係るエチレン系重合体が、上記のエチレンの質量比率が上記の範囲のエチレン共重合体を含有する場合には、ポリエチレン系樹脂(a3i)はノルボルネン系樹脂(a1)と相分離構造を形成しやすく、ダイシング工程においてダイシング屑の発生を抑制することがより安定的に実現される。
【0067】
また、ポリエチレン系樹脂(a3i)に係るエチレン系重合体の密度は、0.87g/cm
3以上0.92g/cm
3以下であることが好ましく、0.89g/cm
3以上0.91g/cm
3以下であることがより好ましい。エチレン系重合体の密度が0.87g/cm
3より小さい場合には、樹脂層(A)の粘着性が過度に高まり、基材フィルム21を巻き取った際にブロッキングが生じやすくなることが懸念される。一方、エチレン系重合体の密度が0.92g/cm
3より大きい場合には、樹脂層(A)の柔軟性が失われ、基材フィルム21の取り扱い性が低下したり、エキスパンド工程において基材の破断が生じたりする可能性が高まることが懸念される。
【0068】
ポリエチレン系樹脂(a3i)は熱可塑性樹脂であることが好ましく、この場合には、ポリエチレン系樹脂(a3i)に係るエチレン系重合体は架橋されていない、またはその架橋の程度が適切に制御されている状態にある。ポリエチレン系樹脂(a3i)が熱可塑性樹脂である場合におけるメルトマスフローレイト(MFR)は、樹脂層(A)において、ノルボルネン系樹脂(a1)とポリエチレン系樹脂(a3i)との相分離構造の形成しやすさの観点から、ノルボルネン系樹脂(a1)のメルトマスフローレイト(MFR)以上であることが好ましい。具体的には、温度190℃、荷重2.16kgfで測定した時のメルトマスフローレイト(MFR)は、0.5g/10min以上10g/10min以下であることが好ましく、2.0g/10min以上7.0g/10min以下であることがより好ましい。
【0069】
ポリエチレン系樹脂(a3i)が熱可塑性樹脂であって、かつ結晶性である場合において、その融解ピーク温度は90℃以上140℃以下であることが好ましく、100℃以上130℃以下であることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂であってかつ結晶性であるポリエチレン系樹脂(a3i)の融解熱量は50J/g以上160J/g以下であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(a3i)の融解ピーク温度が90℃未満である場合や、その融解熱量が50J/g未満である場合には、ポリエチレン系樹脂(a3i)単独での粘着性が過度に高くなるため、樹脂層(A)を形成するための樹脂組成物をフィルム状に成形する際に問題(作業性の低下など)を生じることが懸念される。一方、ポリエチレン系樹脂(a3i)の融解ピーク温度が140℃を超える場合や、その融解熱量が160J/g未満の場合には、ポリエチレン系樹脂(a3i)に含有される重合体の結晶化度が高いため、樹脂層(A)全体としての柔軟性が失われ、エキスパンド工程の際に問題(基材フィルム2の破断など)が生じることが懸念される。なお、融解ピーク温度および融解熱量は、前述のとおり、示差走査熱量計を用いて測定することができる。
【0070】
ポリエチレン系樹脂(a3i)は、一種類のエチレン系重合体で上記の特性(密度、ならびに熱可塑性樹脂である場合には融解ピーク温度および融解熱量など)を満たしてもよいし、複数種類のエチレン系重合体の混合物として上記の特性を満たしてもよい。特に密度に関し、ポリエチレン系樹脂(a3i)は、上記範囲の中で密度が低いエチレン系重合体と密度が高いエチレン系重合体との混合体に基づく樹脂であることが好ましい。この場合には、基材フィルム2に成形した際に耐ブロッキング性を高めるようにポリエチレン系樹脂(a3i)の特性を調整することが容易であり、また、基材フィルム2と粘着剤層3とを備えたダイシングシート1として被着体に貼付されてダイシング加工される際の加工特性を高めるようにポリエチレン系樹脂(a3i)の特性を調整することも容易である。
【0071】
(1−4)その他の成分
樹脂層(A)は上記の樹脂以外の成分を含有してもよい。そのような成分として、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が例示される。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとして、メラミン樹脂のような有機系材料、ヒュームドシリカのような無機系材料およびニッケル粒子のような金属系材料が例示される。こうした添加剤の含有量は特に限定されないが、樹脂層(A)が所望の機能を発揮し、平滑性や柔軟性を失わない範囲に留めるべきである。
【0072】
(1−5)樹脂層(A)の物性等
本実施形態に係るダイシングシート1用基材フィルム2が備える樹脂層(A)の引張弾性率は、エキスパンド工程において基材フィルム2が破断する可能性を低減させる観点から、1000MPa以下である。この基材フィルム2が破断する可能性をより安定的に低減させる観点から、樹脂層(A)の引張弾性率は900MPa以下とすることが好ましく、500MPa以下とすることがより好ましい。前述のように、樹脂層(A)の引張弾性率を上記の範囲にするためには、ノルボルネン系樹脂(a1)およびポリプロピレン系樹脂(a2)に加えて、低弾性樹脂(a3)を含有させることが好ましい。
【0073】
一方、樹脂層(A)の引張弾性率が低過ぎると、基材フィルム2をロール状に巻いた時に、樹脂層(A)とこれに接する層との間で、ブロッキングが発生し、基材フィルム2をロールから巻き出す時などにおけるハンドリング性が悪くなるおそれがある。したがって、樹脂層(A)の引張弾性率は、50MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましく、150MPa以上であることが特に好ましい。
【0074】
樹脂層(A)が相分離構造を有することに基づいてダイシング加工中にダイシング屑が発生しにくくなることを安定的に実現させる観点、および樹脂層(A)の加工しやすさの観点などから、樹脂層(A)は全体として熱可塑性を有することが好ましい。樹脂層(A)が熱可塑性を有する場合には、樹脂層(A)の流動化温度は、90℃以上120℃以下であることが好ましく、特に100℃以上115℃以下であることが好ましい。樹脂層(A)の流動化温度が90℃以上であることで、基材フィルム2はブロッキングが発生しにくいものとなり、基材フィルム2の良好なハンドリング性を確保することができる。また、樹脂層(A)の流動化温度が120℃超えると、ダイシング後のエキスパンド工程において、基材フィルム2がネッキングしてしまい、均一にチップ間隔を拡張することができなくなるおそれがある。
【0075】
樹脂層(A)の厚さは、10μm以上120μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましく、30μm以上80μm以下であることが特に好ましい。樹脂層(A)の厚さが10μm未満であると、ダイシング屑の発生を抑制することが困難となることが懸念される。一方、樹脂層(A)の厚さが120μmを超えると、基材フィルム2の引張弾性率が過度に高くなってそのエキスパンド性が低下することが懸念される。
【0076】
なお、本実施形態では樹脂層(A)は一層の樹脂層から構成されているが、樹脂層(A)が複数の樹脂層からなる構造を有していてもよい。この場合には、樹脂層(A)を構成する各層が前述の樹脂層(A)の組成上の特徴を有し、複数層からなる樹脂層(A)として、上記の引張弾性率の条件などを満足すればよい。
【0077】
(2)樹脂層(B)
樹脂層(B)は、引張弾性率が50MPa以上500MPa以下であり、かつ破断伸度が100%以上であるものである。このような高い柔軟性(伸長性)を有する樹脂層(B)は、基材フィルム2に優れたエキスパンド性能を付与することができる。
【0078】
樹脂層(B)の引張弾性率が500MPaを超えると、樹脂層(B)の柔軟性が低くなって、樹脂層(B)が破断しやすいため、基材フィルム2が所望のエキスパンド性能を有することが困難となる。一方、樹脂層(B)の引張弾性率が50MPa未満であると、ハンドリング性が悪くなる。樹脂層(B)の好ましい引張弾性率は55MPa以上400MPa以下であり、より好ましい引張弾性率は60MPa以上300MPa以下であり、特に好ましい引張弾性率は65MPa以上200MPa以下である。
【0079】
また、樹脂層(B)の破断伸度が100%未満であると、ダイシングシート1をエキスパンドしたときに樹脂層(B)にて破断が生じやすくなって、基材フィルム2が所望のエキスパンド性能を有することが困難となる。樹脂層(B)の好ましい破断伸度は200%以上であり、特に好ましい破断伸度は、300%以上である。なお、樹脂層(B)の破断伸度の上限は特に限定されないが、一般的には1000%以下であり、800%以下程度であってもよい。
【0080】
樹脂層(B)の引張弾性率に対する樹脂層(A)の引張弾性率の比率(樹脂層(A)の引張弾性率/樹脂層(B)の引張弾性率、本明細書において「弾性率比」ともいう。)は、10以下であることが好ましい。弾性率比が過度に大きい場合には、エキスパンド工程において基材フィルム2を伸長させた際に、樹脂層(A)と樹脂層(B)との間で層間剥離が生じる可能性が高まる。また、相対的に引張弾性率が低い樹脂層(B)において塑性変形(降伏)が生じ、引張力を解除したときに基材フィルム2が、樹脂層(A)側が内側になるようにカールしてしまうことが懸念される。こうした問題が生じる可能性をより安定的に低減させる観点から、弾性率比は8以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。弾性率比の下限は特に限定されないが、通常、1.0以上とされる。1.0未満の場合には、樹脂層(A)の引張弾性率が過度に低くなって基材フィルム2の引張弾性率としても過度に低下する可能性がある。このとき、ダイシングシート1のダイシング工程におけるハンドリング性が低下することが懸念される。また、逆に樹脂層(B)の引張弾性率が過度に高いために弾性率比が1.0未満となる場合もある。この場合には、エキスパンド工程において基材フィルムの破断など不具合が生じる可能性が高まる。
【0081】
樹脂層(B)を構成する樹脂は、上記の物性を満たすものであればよく、特に限定されない。このような樹脂として、例えば、オレフィン化合物を構成単位として含む重合体に基づく樹脂であるオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリウレタン;ポリ塩化ビニル;ポリアミドが挙げられる。
【0082】
これらの樹脂のうち、樹脂層(B)を構成する樹脂としては、オレフィン化合物を構成単位として含む重合体に基づく樹脂であるオレフィン系樹脂が好ましい。樹脂層(B)を構成する樹脂がオレフィン系樹脂である場合には、上述したノルボルネン系樹脂(a1)およびポリプロピレン系樹脂(a2)を含有する樹脂層(A)に対する樹脂層(B)の密着性が高く、樹脂層(A)と樹脂層(B)との間で層間剥離が生じる可能性をより安定的に低減させることができる。
【0083】
上記のオレフィン系樹脂に係る重合体の例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブテン共重合体等のポリオレフィン;オレフィン化合物と、アクリル化合物から選ばれる一種または二種以上とを重合した共重合体が挙げられる。かかる共重合体の具体例として、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。オレフィン系樹脂に係る重合体は、1種単独であってもよいし、2種以上の重合体が混合されてなるものであってもよい。
【0084】
これらの共重合体の中でも、靭性に優れる樹脂層(B)が得られやすく、かつノルボルネン系樹脂(a1)およびポリプロピレン系樹脂(a2)を含有する樹脂層(A)に対する樹脂層(B)の密着性が高いことから、樹脂層(B)を構成する樹脂に係る重合体として、エチレン−(メタ)アクリル酸共重体が好ましい。
【0085】
上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有率は、共重合体を形成するための単量体全体に対する(メタ)アクリル酸の質量比率として、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、4質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。上記の(メタ)アクリル酸の質量比率が3質量%未満であると、樹脂層(B)の結晶性が高くなり、ダイシング後のエキスパンド時に基材フィルム2がネッキングしてしまい、チップ間隔が均一に拡張しにくくなるおそれがある。一方、上記の(メタ)アクリル酸の質量比率が20質量%を超えると、樹脂層(B)自体にベタツキが発生することがあり、装置を用いてダイシングを行う際に、ダイシングシート1を搬送できなくなってしまうおそれがある。
【0086】
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体において、エチレン、アクリル酸および/またはメタクリル酸に由来する構成単位以外に、本実施形態に係るダイシングシート1の目的を損なわない範囲で、他の化合物に由来する構成単位を含有してもよい。そのような他の化合物として、プロピレン等のα−オレフィン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが例示される。このような他の化合物に由来する構成単位の含有率は、上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体中に、共重合体を形成するための単量体全体に対する当該他の化合物の質量比率として、10質量%未満の割合であることが好ましい。
【0087】
樹脂層(B)に係る重合体は、樹脂層(B)を構成する樹脂全体に対して、上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上以含有することがさらに好ましい。
【0088】
樹脂層(B)は上記の樹脂以外の成分を含有してもよい。そのような成分として、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が例示される。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとして、メラミン樹脂のような有機系材料、ヒュームドシリカのような無機系材料およびニッケル粒子のような金属系材料が例示される。こうした添加剤の含有量は特に限定されないが、樹脂層(B)が所望の機能を発揮し、平滑性や柔軟性を失わない範囲に留めるべきである。
【0089】
樹脂層(B)の厚さは、40μm以上120μm以下であることが好ましく、特に50μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0090】
本実施形態に係るダイシングシート1では樹脂層(B)は一層の樹脂層から構成されているが、樹脂層(B)が複数の樹脂層からなる構造を有していてもよい。この場合には、複数層からなる樹脂層(B)として、上記の引張弾性率の条件および破断伸度の条件を満足すればよい。また、樹脂層(A)と樹脂層(B)との間に接着剤層のような介在層が存在していてもよい。
【0091】
(3)基材フィルム2の物性
本実施形態に係る基材フィルム2の引張弾性率は、70MPa以上500MPa以下であることが好ましく、100MPa以上400MPa以下であることがさらに好ましく、100MPa以上300MPa以下であることが特に好ましい。引張弾性率が70MPa未満であると、ダイシングシート1にウェハを貼着し、リングフレームに固定した場合、基材フィルム2が柔らかいために弛みが発生し、搬送エラーの原因となるおそれがある。一方、引張弾性率が500MPaを超えると、エキスパンド工程時に加わる荷重を大きくしなければならないため、リングフレームからダイシングシート1自体が剥がれたりするなどの問題が発生するおそれがある。
【0092】
基材フィルム2の破断伸度は、100%以上であることが好ましく、特に200%以上であることが好ましい。破断伸度が100%以上である基材フィルム2は、エキスパンド工程の際に破断しにくく、被切断物を切断して形成したチップを離間し易いものとなる。
【0093】
基材フィルム2が上記の好ましい引張弾性率を有することを容易にする観点などから、樹脂層(A)の厚さに対する樹脂層(B)の厚さの比率(樹脂層(A)の厚さ/樹脂層(B)の厚さ)は、0.1以上1.0未満であることが好ましく、0.25以上1.0以下であることがより好ましい。
【0094】
基材フィルム2の厚さは特に限定されないが、通常、50μm以上400μm以下であることが好ましく、50μm以上300μm以下であることが好ましく、60μm以上200μm以下であることが特に好ましい。
【0095】
2.基材フィルム2の製造方法
基材フィルム2は、共押出し等により樹脂層(A)および樹脂層(B)を製膜すると同時に積層することによって製造してもよいし、樹脂層(A)および樹脂層(B)のそれぞれを製膜した後、それら樹脂層(A)および樹脂層(B)を接着剤等によって積層することによって製造してもよい。
【0096】
なお、樹脂層(A)は、ノルボルネン系樹脂(a1)と、ポリプロピレン系樹脂(a2)と、所望により低弾性樹脂(a3)およびその他の添加剤成分とを混練し、その混練物から直接、または一旦ペレットを製造した後、押出し等により製膜することができる。
【0097】
3.粘着剤層3
ダイシングシート1は、基材フィルム2における樹脂層(A)に接するように形成された粘着剤層3を備える。
粘着剤層3を構成する粘着剤としては、特に限定されず、ダイシングシート1として通常用いられるものを使用することができ、例えば、ゴム系、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の粘着剤が用いられ、エネルギー線硬化型粘着剤(紫外線硬化型粘着剤を含む)や加熱硬化型粘着剤を用いることもできる。また、本実施形態におけるダイシングシート1がダイシング・ダイボンディングシートとして使用される場合には、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた粘接着剤、熱可塑性接着剤、Bステージ接着剤等が用いられる。
粘着剤層3の厚さは特に限定されず、通常は3μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上80μm以下である。
【0098】
4.ダイシングシート1におけるその他の構成要素
ダイシングシート1は基材フィルム2および粘着剤層3以外の構成要素を備えていてもよい。そのようなその他の構成要素の例として、この粘着剤層3の樹脂層(A)に接していない方の面、つまり被切断物に貼付されるための面を保護するための剥離シートが挙げられる。
剥離シートとして、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等を用いることができる。また、これらの架橋フィルムを用いてもよい。さらに、これらのフィルムの複数が積層された積層フィルムであってもよい。
【0099】
上記剥離シートの剥離面(粘着剤層3に対向する側の面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
なお、剥離シートの厚さについては特に限定されず、通常20〜150μm程度である。
【0100】
5.ダイシングシート1の製造方法
本実施形態に係るダイシングシート1は、常法によって製造することができる。例えば、粘着剤層3を構成する材料と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって基材フィルム2の樹脂層(A)の露出面に塗布して乾燥させ、粘着剤層3を形成することにより製造することができる。あるいは、上記塗布剤を、所望の剥離シートの剥離面に塗布して乾燥させ、粘着剤層3を形成した後、その粘着剤層3に基材フィルム2の樹脂層(A)側を圧着することにより製造することもできる。
【0101】
6.ダイシングシート1の用途
本実施形態に係るダイシングシート1は、半導体ウェハ、BGA型パッケージ等のダイシング工程およびエキスパンド工程に使用されるダイシングシートとして好ましく使用することができる。特に、本実施形態に係るダイシングシート1は、ダイシング屑の発生量が多いBGA型パッケージ用のダイシング工程およびエキスパンド工程に使用されるダイシングシートとして好適である。
【0102】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0103】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0104】
〔実施例1〜11,比較例1〜9〕
1.基材フィルムの作製
(1)樹脂層(A)の押出用原材料の調製
表1に示す配合比(質量部)で以下の原材料を混合し、二軸混練機(東洋精機製作所社製,ラボプラストミル)にて溶融混練し、樹脂層(A)用の押出用原材料を得た。
【0105】
<樹脂層(A)用原材料>
・ノルボルネン系樹脂1:ポリプラスチックス社製TOPAS(登録商標)8007,23℃における樹脂密度:1.02g/cm
3,23℃での引張弾性率:2.0GPa,流動化温度:142℃
・ノルボルネン系樹脂2:ポリプラスチックス社製TOPAS7010,23℃における樹脂密度:1.02g/cm
3,23℃での引張弾性率:2.2GPa,流動化温度:163℃
・ノルボルネン系樹脂3:ポリプラスチックス社製TOPAS5013,23℃における樹脂密度:1.02g/cm
3,23℃での引張弾性率2.3GPa,流動化温度:175℃
・ポリプロピレン系樹脂1:エチレン−ポリプロピレンブロック共重合体(プライムポリマー社製プライムポリプロ(登録商標)F707W,融解熱量ΔH:83.2J/g,23℃での引張弾性率:980MPa)
・ポリプロピレン系樹脂2:エチレン−ポリプロピレンランダム共重合体(プライムポリマー社製プライムポリプロ(登録商標)B241,23℃での引張弾性率:750MPa)
・低弾性率樹脂1:低密度ポリエチレン(住友化学社製スミカセン(登録商標)L705,樹脂密度:0.918g/cm
3,融解熱量ΔH:126.0J/g,23℃での引張弾性率:140MPa)
・低弾性率樹脂2:超低密度ポリエチレン(住友化学社製エクセレン(登録商標)VL700,樹脂密度:0.900g/cm
3,融解熱量ΔH:79.1J/g,23℃での引張弾性率:64MPa)
【0106】
(2)樹脂層(B)の押出用原材料の調製
表1に示す配合比(質量部)で、以下の原材料を二軸混練機(東洋精機製作所社製,ラボプラストミル)にて溶融混練し、樹脂層(B)用の押出用原材料を得た。
【0107】
<樹脂層(B)用原材料>
・エチレン−メタクリル酸共重合体1:三井−デュポンポリケミカル社製ニュクレル(登録商標)AN4214C,23℃における引張弾性率:200MPa
・エチレン−メタクリル酸共重合体2:三井−デュポンポリケミカル社製ニュクレルAN42012C,23℃における引張弾性率:150MPa
・エチレン−メタクリル酸共重合体3:三井−デュポンポリケミカル社製ニュクレルAN1207C,23℃における引張弾性率:140MPa
・エチレン−メタクリル酸共重合体4:三井−デュポンポリケミカル社製ニュクレルN1525,23℃における引張弾性率:83MPa
・エチレン−メタクリル酸共重合体5:住友化学社製アクリフト(登録商標)W201,23℃における引張弾性率:65MPa
・エステル系エラストマー:三菱化学社製プリマロイ(登録商標)B1920N,23℃における引張弾性率:200MPa
・ポリエチレン樹脂:プライムポリマー社製エボリュー(登録商標)SP4030,23℃における引張弾性率:550MPa
・エチレン−酢酸ビニル共重合体1:三井−デュポンポリケミカル社製エバフレックス(登録商標)EV150,酢酸ビニルの含有量:33質量%,23℃における引張弾性率:8MPa
・エチレン−酢酸ビニル共重合体2:東ソー社製ウルトラセン(登録商標)636,酢酸ビニルの含有量:19質量%,23℃における引張弾性率:40MPa
・ノルボルネン系樹脂:ポリプラスチックス社製TOPAS8007,23℃における樹脂密度:1.02g/cm
3,23℃での引張弾性率:2.0GPa,流動化温度:142℃
【0108】
(3)樹脂層の押出成形(基材フィルムの成形)
樹脂層(A)用の押出用原材料と、樹脂層(B)用の押出用原材料とを、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,ラボプラストミル)によって共押出成形し、厚さ40μmの樹脂層(A)と、厚さ60μmの樹脂層(B)とからなる2層構造の基材フィルムを得た。
【0109】
2.粘着剤の調製
n−ブチルアクリレート95質量部およびアクリル酸5質量部を共重合してなる共重合体(Mw:500,000)100質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw:8000)120質量部、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製コロネートL)5質量部、および光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア184)4質量部を混合し、エネルギー線硬化型粘着剤組成物を得た。
【0110】
3.粘着剤層の形成(ダイシングシートの作製)
得られたエネルギー線硬化型粘着剤組成物を、シリコーン処理された剥離シート(リンテック社製SP−PET38111(S))の剥離処理面に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させて粘着剤層を形成し、これを上記基材フィルムの片面に貼り付けることで、粘着剤層を基材フィルム上に転写し、ダイシングシートとした。
【0111】
【表1】
【0112】
〔試験例1〕(引張物性の測定)
実施例および比較例において調製した樹脂層(A)用の押出用原材料および樹脂層(B)用の押出用原材料を用いて、上記の基材フィルムと同様の方法でそれぞれ100μm厚の単層の樹脂フィルムを製造した。
【0113】
上記の樹脂層(A)用の押出用原材料から作製した樹脂フィルムおよび樹脂層(B)用の押出用原材料から作製した樹脂フィルム、ならびに実施例および比較例において作製した基材フィルム(厚さ100μm)のそれぞれについて、15mm×140mmの試験片に裁断し、JIS K7161:1994(ISO 5271:1993)およびJIS K7127:1999(ISO 5273:1995)に準拠して、23℃における引張弾性率を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(島津製作所製オートグラフAG−IS 500N)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率(単位:MPa)を測定した。なお、引張弾性率の測定は、樹脂フィルムまたは基材フィルムの成形時の押出方向(MD)およびこれに直角の方向(CD)の双方で行い、これらの測定結果の平均値をその樹脂フィルムまたは基材フィルムの引張弾性率とした。
【0114】
樹脂層(B)用の押出用原材料から作製した樹脂フィルムのそれぞれについては、上記の引張弾性率の測定の際に、同時に破断伸度(単位:%)の測定も行った。具体的には、試験片が破断した際のチャック間距離を試験前の当該距離である100mmで除することにより破断伸度を求めた。なお、破断伸度については、樹脂フィルムの成形時の押出方向(MD)およびこれに直角の方向(CD)の双方で行った測定結果の最小値を、その樹脂フィルムの破断伸度とした。結果を表2に示す。
【0115】
〔試験例2〕(ダイシング屑観察)
実施例および比較例で製造したダイシングシートの粘着剤層をBGA型パッケージモジュールに貼付した後、ダイシング装置(DISCO社製DFD−651)にセットし、以下の条件でダイシングを行った。
・ワーク(被着体):シリコンウエハBGA型パッケージモジュール(京セラケミカル社製,KE−G1250)
・ワークサイズ:6インチ径,厚さ350μm
・ダイシングブレード:ディスコ社製 Z1110LS3
・ブレード回転数:30,000rpm
・ダイシングスピード:10mm/秒
・切り込み深さ:基材フィルムを粘着剤層の界面より20μmの深さまで切り込み
・ダイシングサイズ:10mm×10mm
【0116】
その後、基材フィルム側から紫外線を照射(160mJ/cm
2)して、切断されたチップを剥離した。縦および横のダイシングラインのうち、それぞれの中央付近における縦の1ラインおよび横の1ラインに発生した長さ100μm以上の糸状屑の個数を、デジタル顕微鏡(キーエンス社製VHX−100,倍率:100倍)を用いてカウントした。計測結果を次の基準で評価した。
A:糸状屑の個数が0〜10個
B:11〜15個
C:16個以上
AおよびBを良好と判定し、Cを不良と判定した。結果を表2に示す。
【0117】
〔試験例3〕(エキスパンド性試験)
実施例および比較例で製造したダイシングシートの粘着剤層に6インチウェハを貼付した後、当該ダイシングシートをフラットフレームに装着し、20μm厚のダイヤモンドブレードにより、ウェハを10mm角のチップにフルカットした。次に、エキスパンディング冶具(NECマシナリー社製ダイボンダーCSP−100VX)を用いて、ダイシングシートを速度300mm/分で5mmと600mm/分で10mmの2条件で引き落とした。このときのダイシングシートの破断の有無について確認を行った。その結果を次の基準で評価した。
A:2条件ともに破断が確認されない場合
B:どちらか1条件で破断が確認された場合
C:両条件共に破断が確認された場合
AおよびBを良好と判定し、Cを不良と判定した。結果を表2に示す。
【0118】
〔試験例4〕(ハンドリング性評価)
上記の試験例2(ダイシング屑観察)を実施するにあたり、ダイシング装置(DISCO社製DFD−651)にてダイシングを行ったが、このときのハンドリング性に関し、次の基準で評価した。
A:特段の問題が生じなかった場合
B:搬送エラーが生じた場合および/またはウェハカセットに再度装着された際、半導体シートがたわみ、下の段に設置してある別のダイシングシートと触れた場合
Aを良好と判定し、Bを不良と判定した。結果を表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
表1から明らかなように、実施例で製造したダイシングシートは、ダイシング工程の際にダイシング屑の発生が少なく、エキスパンド工程の際のエキスパンド性にも優れ、さらにダイシング工程におけるハンドリング性にも優れていた。