特開2015-213168(P2015-213168A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-213168ドーパント含有ポリマー膜を用いた基体のドーピング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-213168(P2015-213168A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】ドーパント含有ポリマー膜を用いた基体のドーピング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/225 20060101AFI20151030BHJP
【FI】
   H01L21/225 R
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-88213(P2015-88213)
(22)【出願日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】61/986,395
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル・エイ.セガルマン
(72)【発明者】
【氏名】ボーシャン・シー.ポペル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・トレフォナス・ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ティー.ハイッチ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高真空、酸化物キャッピング層又は酸化工程を伴わない、周囲条件で基体をドーピングする方法を提供する。
【解決手段】ポリマー、ドーパント前駆体及び溶媒を含む組成物のコーティングを基体上に配置し、ポリマーは溶液中にある間は相分離し、かつ、ドーパント前駆体を埋め込むことができ、前記基体を750〜1300℃の温度で0.1秒〜24時間にわたってアニールしてドーパントを前記基体中に拡散させることを含む。また、半導体基体において、直径3〜30ナノメートルの埋め込まれたドーパントドメインを含み、ドメインが第13族又は第15族の原子を含み、埋め込まれた球状のドメインが基体の表面から30ナノメートル以内に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマー、ドーパント前駆体および溶媒を含む組成物のコーティングを基体上に配置し、前記コポリマーは溶液中または前記基体の表面上にある間は相分離しかつ前記ドーパント前駆体を埋め込むことができ、並びに
前記基体を550〜1300℃の温度で0.1秒〜24時間にわたってアニールして前記ドーパントを前記基体中に拡散させる
ことを含む、基体をドーピングする方法。
【請求項2】
前記ドーパントがホウ素、リン、ヒ素、アンチモン、アルミニウム、インジウムおよびガリウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基体が半導体基体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基体がシリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、インジウムヒ素、インジウムリン、およびインジウムガリウムヒ素の1種以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
シングルアニール工程(single annealing step)が行われる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ドーパントが前記基体中に10nm以下の深さまで拡散させられる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コポリマーがブロックコポリマーであって、前記ブロックコポリマーが、前記ドーパント前駆体との水素結合またはイオン結合を受ける少なくとも1つのブロックを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ブロックコポリマーがポリスチレン−b−ポリ(4−ビニルピリジン)である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ドーパント前駆体が4−ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールエステル、フルオロアンチモン酸六水和物、または前述のドーパント前駆体の少なくとも一種を含む組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
直径3〜30ナノメートルの埋め込まれたドーパントドメインを含む半導体基体であって、前記ドメインが第13族または第15族の原子を含み、前記埋め込まれた球状のドメインが前記基体の表面から30ナノメートル以内に位置する、半導体基体。
【請求項11】
シリコンを含む請求項10に記載の半導体基体。
【請求項12】
前記埋め込まれたドーパントドメインが前記基体において周期性を示す、請求項10に記載の半導体基体。
【請求項13】
第13族または第15族の原子の前記ドメインが前記基体にさらに拡散されて、前記球状のドメインを乱すかまたは弱めて、より連続した濃度のドーパント原子群を形成している、請求項10に記載の半導体基体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この米国非仮出願は、2014年4月30日に出願された米国仮出願番号61/986395の利益を主張し、その米国仮出願の全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
本開示は、基体上に配置されるドーパント含有ポリマー膜を用いた基体のドーピングに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスをナノメートル体制(100ナノメートル(nm)未満のサイズ)にスケールダウンする試みの1つは、サブ−10ナノメートルサイズ範囲に制御された半導体材料のドーピングを達成することである。例えば、トランジスタゲート長がまずサブ−10nmサイズ範囲に近づき、このナノメートル長さスケール上の非常に導電性の極浅接合が使用されて、トランジスタサイズをスケールダウンして、より速いトランジスタ速度およびより高い記憶密度を達成する。さらに、様々な提案された小型化されたエレクトロニクス用途は、ドーピングを使用するナノワイヤビルディングブロックまたは他の非平坦導電性ナノ構造体を組み込む。
【0003】
現在の方法は10nm未満の深さにドーピングするのに適していない。イオン注入はシリコン基体と高エネルギードーパントイオンとの衝突を伴い、このドーパントイオンが基体格子におけるシリコン原子と置き換わる。しかし、このプロセスは格子中の点欠陥および空孔も生じさせ、これがドーパントと相互作用して接合プロファイルを拡大し、それによりサブ−10nmのドーピングプロファイルの形成を制限する。さらに、このエネルギーイオンは有意な結晶ダメージを生じさせつつ、格子中に留まることなくナノ構造を貫通するかなりの可能性を有するので、イオン注入は非平坦でナノ構造化された材料には適合しない。一方、ドーピングが10nm未満の深さで行われる場合には、従来の固体ソース拡散手順は制御および均一性に欠けている。
【0004】
モノレイヤードーピング手順は現在の技術の困難性を克服し、かつ高品質でサブ−5nmのドーピングプロファイルを高い面積均一性で達成する。この手順の際に、ドーパント含有低分子の非常に均一な共有結合したモノレイヤーがシリコン表面上に形成される。その後の熱アニーリング工程において、ドーパント原子はシリコン格子中に拡散される。このアプローチは結果的に、p−およびn−型ドーピングの両方について低いシート抵抗を伴った浅い接合(例えば、表面から5〜10ナノメートル)の実証をもたらし、そしてこのアプローチは非平坦で制限された寸法のナノ構造化基体と適合性である。しかし、このモノレイヤードーピング戦略は面倒な一対の工程を使用する。一つ目は、酸化的汚染を妨げるために、ドーパント含有低分子の堆積が酸素非含有雰囲気で(すなわち、不活性雰囲気でまたは減圧酸素非含有状態で)行われる。さらに、ドーパント原子のシリコン基体への有効な拡散を達成するために、アニーリング工程の前に、酸化ケイ素キャッピング層が表面官能化シリコン基体の上で蒸発させられる。このキャッピング層の蒸発は約〜10−6Torrの高真空を必要とする。
【0005】
特開2005−123431号は、極性有機溶媒若しくは水またはこれらの混合物中に溶解した酸性有機リン酸エステルポリマー(500以下の重合度)の膜を基体上にコーティングし、その後リンの拡散温度より低い第一の温度で一定期間加熱し、次いでこの第一の温度より高いがリンの拡散温度より低い第二の温度で酸化性雰囲気中で一定期間加熱し、その後リンを基体に拡散させるために第二の温度より高い第三の温度で非酸化性雰囲気中で一定期間、例えば、10時間にわたって加熱することにより、n型拡散領域を形成することを開示する。これは、複雑なアプローチであり、3つの異なる加熱サイクルおよびサイクル間での雰囲気の切り替えを必要とする。また、このような極性溶媒の使用は多くの場合、半導体製造において使用される標準のプロセスと非適合性であり、おそらくは劣った膜コーティングを導く。このような膜が不完全に基体上にコーティングされるならば、この基体はおそらくはリンの不均一なドーピングを有するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−123431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、高真空、酸化物キャッピング層、または酸化工程を伴わない、周囲条件で基体をドーピングする方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において開示されるのは、コポリマー、ドーパント前駆体および溶媒を含む組成物のコーティングを基体上に配置し、前記コポリマーは溶液中にある間は相分離しかつ前記ドーパント前駆体を埋め込むことができ、並びに前記基体を750〜1300℃の温度で1秒〜24時間にわたってアニールしてドーパントを前記基体中に拡散させることを含む、基体をドーピングする方法である。
【0009】
また、本明細書において開示されるのは、直径3〜30ナノメートルの埋め込まれたドーパントドメインを含む半導体基体であって、前記ドメインが第13族または第15族の原子を含み、前記埋め込まれた球状のドメインが前記基体の表面から30ナノメートル以内に位置する半導体基体である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、a)封入されたドーパント前駆体を伴った溶液中のPS−b−P4VP集合体、b)Si基体上の、封入されたドーパントを伴う集合体の薄膜、およびc)ラピッドサーマルアニーリング(rapid thermal annealing:RTA)の後のナノ限定(nanoconfined)ドープ領域を描く。
図2A図2Aは、ブロックコポリマーの構造を示す。
図2B図2Bは、ドーパントの構造を示す。
図2C図2Cは、ドーパントの構造を示す。
図3A図3Aは、ポリマー鎖がCDClに溶解している場合の、δ=8.5ppmの化学シフトで起こるP4VPプロトンからの共鳴を示す。クロロホルムはPSおよびP4VPブロック両方の良溶媒であるので、このポリマー鎖は非集合状態であることは明らかであり、ポリマー鎖がd−トルエン中に溶解している場合にはδ=8.5ppmでの上記共鳴は消失していることも示す。トルエンはPSブロックに対する良溶媒であるが、P4VPブロックに対する貧溶媒であるので、このポリマー鎖は集合した状態であり、ここで、このP4VPブロックこれら集合体の内部(コア)を形成し、一方このPSブロックは外側(シェル)を形成する。
図3B図3Bは、d8−トルエン(赤色)およびCDCl3(黒色)中での4−ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールエステル低分子の1H NMRスペクトルを示す。
図4A図4Aは、CDCl3中でのポリマー+SM混合物の1H NMRスペクトルを示す。
図4B図4Bは、d8−トルエン中でのポリマー+SM混合物の1H NMRスペクトルを示す。
図5図5は、ポリマー−SMB系のFT−IRスペクトルの一部分を示す。
図6A図6Aは、ポリマー(P4VP)対SMモル比、1:0.1(正方形)、1:0.25(ダイヤモンド形)、および1:0.5(円形)の関数としての、900℃で1秒間(緑色)、10秒間(青色)および60秒間(赤色)でのスパイク−RTA後の基体上のSIMS濃度プロファイル;a)低分子量(PS27k−b−P4VP7k)ポリマーについてのホウ素濃度プロファイルを示し;灰色データ点は、900℃で30秒間のスパイクRTAの後での、ブランクSi基体から得られたホウ素濃度プロファイルに対応する。
図6B図6Bは、ポリマー(P4VP)対SMモル比、1:0.1(正方形)、1:0.25(ダイヤモンド形)、および1:0.5(円形)の関数としての、900℃で1秒間(緑色)、10秒間(青色)および60秒間(赤色)でのスパイク−RTA後の基体上のSIMS濃度プロファイル;b)中分子量(PS58k−b−P4VP18k)ポリマーについてのホウ素濃度プロファイルを示し;灰色データ点は、900℃で30秒間のスパイクRTAの後での、ブランクSi基体から得られたホウ素濃度プロファイルに対応する。
図6C図6Cは、ポリマー(P4VP)対SMモル比、1:0.1(正方形)、1:0.25(ダイヤモンド形)、および1:0.5(円形)の関数としての、900℃で1秒間(緑色)、10秒間(青色)および60秒間(赤色)でのスパイク−RTA後の基体上のSIMS濃度プロファイル;c)高分子量(PS109k−b−P4VP27k)ポリマーについてのホウ素濃度プロファイルを示し;灰色データ点は、900℃で30秒間のスパイクRTAの後での、ブランクSi基体から得られたホウ素濃度プロファイルに対応する。
図7図7は、四点プローブ測定を用いて測定された表面抵抗のグラフ描画である。
図8A図8Aは、RTAドーピング前の組織化したPS−b−P4VPポリマー薄膜のタッピングモードAFM像を示し、球状集合体が明らかに視認可能であり、具体的な分子量a)PS27k−b−P4VP7kに対応する。
図8B図8Bは、RTAドーピング前の組織化したPS−b−P4VPポリマー薄膜のタッピングモードAFM像を示し、球状集合体が明らかに視認可能であり、具体的な分子量b)PS58k−b−P4VP18kに対応する。
図8C図8Cは、RTAドーピング前の組織化したPS−b−P4VPポリマー薄膜のタッピングモードAFM像を示し、球状集合体が明らかに視認可能であり、具体的な分子量c)PS109k−b−P4VP27kに対応する。
図9A図9Aは、a)Si基体の3D表面形状を示す。
図9B図9Bは、b)スパイクRTAの前のPS58k−b−P4VP18k:SM(1:0.5)膜の3D表面形状を示す。
図9C図9Cは、c)0.1秒にわたる900℃でのスパイクRTA後のPS58k−b−P4VP18k:SM(1:0.5)膜の3D表面形状を示す。
図9D図9Dは、d)1秒にわたる900℃でのスパイクRTA後のPS58k−b−P4VP18k:SM(1:0.5)膜の3D表面形状を示す。
図9E図9Eは、e)10秒にわたる900℃でのスパイクRTA後のPS58k−b−P4VP18k:SM(1:0.5)膜の3D表面形状を示す。
図9F図9Fは、f)60秒にわたる900℃でのスパイクRTA後のPS58k−b−P4VP18k:SM(1:0.5)膜の3D表面形状を示す。
図10A図10Aは、900℃(緑色)、950℃(青色)および1000℃(赤色)で1秒間にわたるスパイク−RTA後での基体におけるSIMSアンチモン(Sb)計数を示す。
図10B図10Bは、900℃(緑色)、950℃(青色)および1000℃(赤色)で1秒間にわたるスパイク−RTA後での基体におけるSIMSアンチモン(Sb)計数を示す。
図11A図11Aは、RTA前のポリマー膜に埋め込まれたSbクラスターのTEM像を示す。
図11B図11Bは、900℃でスパイク−RTAした後でのSi上のSbクラスターのTEM像を示す。
図12A図12AおよびBは、スパイクラピッドサーマルアニーリング(RTA)前のPS58k−b−P4VP18k:SMSb膜のタッピングモードAFM(12A)およびTEM(12B)像を比較する顕微鏡写真を示し、疑似六角形(quasi hexagonal)形状が同じ寸法の離散したSbリッチな球状ドメインを有する両方の像に現れている。
図12B図12AおよびBは、スパイクラピッドサーマルアニーリング(RTA)前のPS58k−b−P4VP18k:SMSb膜のタッピングモードAFM(12A)およびTEM(12B)像を比較する顕微鏡写真を示し、疑似六角形(quasi hexagonal)形状が同じ寸法の離散したSbリッチな球状ドメインを有する両方の像に現れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
転換語「含む」は転換語「からなる」および「から本質的になる」を含む。用語「および/または」は本明細書においては、「および」と「または」の両方を意味するために使用される。例えば、「Aおよび/またはB」はA、BまたはAとBを意味するものと解釈される。
【0012】
本明細書において開示されるのは、基体をドーパント含有ポリマー膜でコーティングし、そして前記基体を高温でアニールすることによりドープされた半導体基体を達成する方法である。ポリマー膜はコポリマーを含み、このコポリマーはドーパントを含む。ドーパントはコポリマーに水素結合若しくはイオン結合されている。典型的な実施形態においては、本明細書において開示される方法はブロックコポリマー自己組織化(self−assembly)を使用して、ドーパント前駆体(例えば、B、P、As、Sbなど)をポリマー膜内でナノスケールドメインに限定する。
【0013】
本方法はまず溶液中で、相分離し自己組織化したブロックコポリマーの内側にドーパント前駆体を封入することを含む。この溶液はドーパント前駆体、コポリマーおよび溶媒を含む。ある実施形態においては、相分離し自己組織化したブロックコポリマーは、溶液中にある場合には、球状ドメインの形態である。これらポリマー溶液の薄膜を基体上に堆積させる際に、周期的な最密充填(close−packed)球状集合体が自己組織化して、濃縮されたドーパントのナノメートルサイズの領域を画定する。高濃度のこれら領域は規則的な間隔で位置する。このドーパント含有領域のサイズおよび基体上でのドーパントの間隔の双方はホストポリマーの分子デザインによって制御されうる。膜が乾燥した後で、ラピッドサーマルアニーリング(RTA)によって、ポリマー膜から基体へのドーパント拡散が起こり、結果的に、全三次元中の数ナノメートルに限定された基体の局所的にドープされた領域を生じる。基体を加熱することはコポリマーから基体へのドーパントの拡散を促進する。
【0014】
この方法はこのプロセス中に真空が望まれないという点で有利である。ポリマー膜はそれ自体キャッピング層として機能し、それにより他の商業的に入手可能な比較のプロセスにおいて使用されるキャッピング層を使用する必要性を除く。言い換えれば、本方法は、アニール工程の前にポリマー膜上に酸化物キャッピング層を形成する工程を含まない。低いアニール温度および短いアニール時間を使用することにより、基体の表面から深さ5ナノメートルの浅さおよび20平方ナノメートルの面積内の空間的に限定されたドープされた接合が基体において得られうる。この方法は、例えば、トランジスタゲートおよびソース/ドレインのための高導電性極浅接合を形成するのに、並びにシリコンナノ構造、例えば、ナノワイヤをドープして、様々な小型化電子デバイスを製造するのに特に有利である。本明細書においては、ポリマー膜はポリマーコーティングまたはポリマー層とも称される。
【0015】
基体は半導体基体である。適する半導体基体の例はシリコン、ゲルマニウム、インジウムガリウムヒ素、ガリウムヒ素、ガリウムリン、インジウムリン、窒化インジウム、ヒ化インジウム、非晶質シリコン、シリコンゲルマニウム、炭化ケイ素など、または前述の基体の少なくとも一種を含む組み合わせである。基体として使用するのに典型的な半導体はシリコンである。
【0016】
基体は、この基体がドープされるドーパントを含むポリマー膜でコートされる。ドーパントは第13族および第15族の原子である。ドーパントにはホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、ビスマス、アンチモン、ガリウム、またはこれらの組み合わせが挙げられうる。ドーパントまたはドーパント前駆体はポリマーに水素結合されているかまたはイオン結合されており、以降ドーパント含有ポリマーと称されうる。
【0017】
ドーパント前駆体はコポリマーとの、これら両方が溶液中にある場合に、水素結合またはイオン結合を受けうる。ある実施形態においては、ドーパント前駆体はコポリマーと共有結合されていない。言い換えれば、ドーパント前駆体は溶媒よりもコポリマーとの結合についての優先性を有している。ドーパント前駆体は低分子(例えば、モノマー、ダイマー、トリマー、クアドラマー、もしくはペンタマーなど)であってよく、またはポリマー形態(例えば、5繰り返し単位より多く有する)であってよい。ドーパント前駆体の例はホウ酸、ヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、ボラン、ビニルボラン、ビニルボロン酸、ボラジン、ビニルボラジン、シクロジボラザン、ボロンキノラート、ボロンジケトナート、ピラザボール、ボロンジピロメタン、カルボラン、ナトリウムテトラフェニルボラート、AlXもしくはGaXもしくはAsX塩(式中、Xはハロゲンである)、硫酸アルミニウム、ジメチルアルミニウムi−プロポキシド、リン酸、ピロリン酸、テトラポリリン酸、テトラメタリン酸、リン酸ジフェニル、リン酸ジメチル、(2−ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィン、(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィン、4−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸、4−ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールエステル、フルオロアンチモン酸六水和物、3−(ジフェニルホスフィノ)プロピオン酸、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィン、[ヒドロキシ(3−ヒドロキシフェニル)メチル]トリス(ヒドロキシメチル)−ホスホニウムクロリド、メチル(p−ヒドロキシフェニル)−ジフェニルホスホニウムヨージド、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン2−オキシド、5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オン、亜リン酸ジエチル、フェニルアルソン酸、ジメチルアルシン酸など、または前述の低分子の少なくとも一種を含む組み合わせである。典型的な低分子ドーパント前駆体は4−ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールエステル、フルオロアンチモン酸六水和物、またはこれらの組み合わせである。
【0018】
ドーパント前駆体はポリマーの形態であってもよい。ポリマー系ドーパント前駆体の例は、ポリ[2−(ビニル)ペンタボラート]、ポリビニルボラジン、ポリボラジレン、ポリ(シクロジボラザン)、シクロジボラザン含有ポリマー、ボロンキノラートポリマー、ピラザボール含有ポリマー、カルボラン含有ポリマー、ポリ(ビニルボロン酸)など、または前述のポリマーの少なくとも一種を含む組み合わせである。これらポリマーは所望の場合には、置換されていてよい。
【0019】
リン含有ポリマー系ドーパントには、ホスファゼンポリマー、ホスファートポリマー、リン酸ポリマー、ホスホン酸ポリマー(例えば、ポリ(ビニリデン−1,1−ジ−ホスホン酸))など、または前述のリン含有ポリマー系ドーパントの少なくとも一種を含む組み合わせが挙げられる。
【0020】
ホスファゼンポリマー系ドーパントは−P=N−結合を分子中に有する。ホスファゼンポリマーは以下の式(1)で表されるような環式ポリマー、または以下の式(2)で表されるような線状ポリマー、並びに以下の式(1)および(2)で表されるものから選択されるフェノキシホスファゼンの少なくとも一種と、以下の式(1)で表される架橋性基とを架橋させることにより得られる架橋したフェノキシホスファゼン化合物でありうる:
【0021】
【化1】
【0022】
式(1)中、mは3〜25の整数を表し、RおよびRは同じかまたは異なっており、かつ独立して水素、ヒドロキシル、C7−30アリール基、C1−12アルコキシまたはC1−12アルキルである。
【0023】
以下の式(2)で表される鎖状フェノキシホスファゼン:
【0024】
【化2】
【0025】
式(2)中、Xは−N=P(OPh)基または−N=P(O)OPh基を表し、Yは−P(OPh)基または−P(O)(OPh)基を表し、nは3〜10000の整数を表し、Phはフェニル基を表し、RおよびRは同じかまたは異なっており、かつ独立して水素、ハロゲン、C1−12アルコキシまたはC1−12アリールである。
【0026】
フェノキシホスファゼンは以下の式(3)で表される架橋性基も有しうる:
【0027】
【化3】
【0028】
式(3)中、Aは−C(CH−、−SO−、−S−、または−O−を表し、並びにqは0または1である。
【0029】
ある実施形態においては、リン酸ポリマーは式(4)の構造を有する
【0030】
【化4】
【0031】
式中、eは1〜500の整数である。
【0032】
ドーパント含有ポリマー(ポリマー系ドーパント前駆体)が窒素およびシリコンを含まないことが望ましい。ドーパント含有ポリマーがホモポリマーである場合には、それが重合単位として、ヒドロキシル、アミン、アミド、チオールおよびカルボン酸基を含まないモノマーを含むことが好ましい。ドーパント含有ポリマーがコポリマーである場合には、それが重合単位として、ヒドロキシル、アミン、アミド、チオール、カルボン酸およびこれらの組み合わせから選択される置換基を含む何らかのモノマーを50重量%未満含むことが好ましい。有機ヒ素ポリマーが使用されてもよい。
【0033】
ホスホン酸ポリマーの例はポリ(ビニリデン−1,1−ジ−ホスホン酸)またはポリ(ビニルホスホン酸ジエチル)である。典型的なリン含有ポリマーはポリ(ビニルホスホン酸ジエチル)である。
【0034】
ドーパント前駆体は、溶液の全重量を基準にして0.001〜15、好ましくは0.003〜5、およびより好ましくは0.004〜1重量パーセント(重量%)の量で溶液中に存在する。好ましい実施形態においては、ドーパント前駆体は、溶液の全重量を基準にして、0.005〜0.2重量パーセントの量で溶液中に存在する。
【0035】
ドーパント前駆体との水素結合またはイオン結合に使用されるポリマーは、ドーパント前駆体と共に溶媒中に存在する場合に、自己組織化できるコポリマーである。このコポリマーは熱可塑性コポリマー、熱可塑性コポリマーのブレンド、熱硬化性コポリマー、または熱可塑性コポリマーと熱硬化性コポリマーとのブレンドであってもよい。このコポリマーは交互、ブロック、ランダムまたはグラフトコポリマーであってよい。このコポリマーは樹状(dendritic)、星状、分岐もしくは環式などの構造を有していてもよい。典型的な実施形態においては、コポリマーはドーパント前駆体と共に溶媒中に存在する場合に自己組織化を受けうるブロックコポリマーである。
【0036】
溶液中でのコポリマーの自己組織化能力は、結果的に膜中でまたは溶液中で様々な異なる配置の形成をもたらしうる。このような配置の例には、球状ドメイン、棒状(cylindrical)ブロック、ラメラブロックなどが挙げられる。これら配置の1つづつは、それらが自己組織化の繰り返し構造間に周期性を有するという点で特徴付けられる。この周期性は基体上の周期的部位にドーパントの堆積を可能にする。それはこれら周期的部位におけるドーパントの均一な堆積も可能にし、結果としてこれらの部位における均一な濃度のドーパントを生じさせうる。典型的な実施形態においては、コポリマーは膜としてキャストされた場合に、球状ドメインを形成しうる。
【0037】
ある実施形態においては、コポリマーはラピッドサーマルアニーリングにかけられる前で、かつ基体上に配置された後で、または代替的には、基体上に堆積されながらラピッドサーマルアニーリングしている際に、架橋されうる。
【0038】
コポリマーは溶液中でドーパント前駆体と水素結合またはイオン結合する。自己組織化を促進するために使用されるコポリマーは、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリスチレン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタリド、ポリアンハイドライド、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルエステル、ポリスルホナート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー、アクリルポリマー、アルキドポリマー、フェノール−ホルムアルデヒドポリマー、ノボラックポリマー、レゾールポリマー、ヒドロキシメチルフランポリマー、ジアリルフタラートポリマーなど、または前述のポリマーの少なくとも一種を含む組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類のポリマーを含むことができる。上述のように、ブロックコポリマーが好ましい。
【0039】
ブロックコポリマーの例には、ポリスチレン−ブロック−ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ブロック−ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ブロック−ポリ(フェニルキノリン)、ポリスチレン−ブロック−ポリ(乳酸)、ポリスチレン−ブロック−ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン−ブロック−ポリ(メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル)、ポリスチレン−ブロック−ポリ(N,N−ジメチルアミノスチレン)、ポリ(メタクリル酸メチル)−ブロック−ポリ(N,N−ジメチルアミノスチレン)、ポリ(メタクリル酸メチル)−ブロック−ポリ(メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)−ブロック−ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸メチル)−ブロック−ポリ(アクリル酸アミノプロピル)、ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリ(メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル)、ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリ(N,N−ジメチルアミノスチレン)、ポリ(スチレン−b−メタクリル酸メチル)、ポリ(スチレン−b−アルケニル芳香族)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−b−カプロラクトン)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−(メタ)アクリル酸t−ブチル)、ポリ(メタクリル酸メチル−b−メタクリル酸t−ブチル)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−テトラヒドロフラン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−メタクリル酸トリメチルシリルメチル)、ポリ(メタクリル酸メチル−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(メタクリル酸メチル−b−メタクリル酸トリメチルシリルメチル)など、または前述のブロックコポリマーの少なくとも一種を含む組み合わせがある。
【0040】
別の実施形態においては、コポリマーはカルボキシル化オレフィンコポリマーである。言い換えれば、コポリマーの1つのブロックがカルボキシル化されたオレフィンコポリマーである。カルボキシル化オレフィンコポリマーは、不飽和カルボン酸、またはその無水物、エステル、アミド、イミドもしくは金属塩(以降、「グラフト化合物」と称される)がグラフトされているエチレンもしくはプロピレンポリマーを含む。このグラフト化合物は好ましくは、脂肪族不飽和ジカルボン酸、またはその酸から生じる無水物、エステル、アミド、イミドもしくは金属塩である。このカルボン酸は好ましくは6個以下、より好ましくは5個以下の炭素原子を含む。
【0041】
不飽和カルボン酸の例はマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびシトラコン酸である。不飽和カルボン酸の誘導体の例には無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、モノマレアミド、ジマレアミド、N,N−ジエチルマレアミド、N−モノブチルマレアミド、N,N−ジブチルマレアミド、モノフマルアミド、ジフマルアミド、N−モノエチルフマルアミド、N,N−ジエチルフマルアミド、N−モノブチルフマルアミド、N,N−ジブチルフマルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、およびメタクリル酸カリウムがある。メタクリル酸グリシジルは好ましいグラフト化合物である。1種以上、好ましくは1種のグラフト化合物がオレフィンポリマーにグラフトされる。
【0042】
ある実施形態においては、コポリマーは、中和されていないかまたは金属塩で中和されている酸基を含むことができる。例としては、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、プロピレン−アクリル酸コポリマー、プロピレン−メタクリル酸コポリマー、オレフィン無水マレイン酸がグラフトしたポリエチレン、ポリスチレン、スルホン酸などのコポリマー、または前述のコポリマーの少なくとも一種を含む組み合わせがある。ある実施形態においては、酸基は金属塩で中和されうる。基体における酸もしくは塩基物質は金属塩で中和されうる。金属塩による中和に使用されるカチオンはLi、Na、K、Zn2+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Pb2+およびMg2+である。アルカリ金属塩が好ましい。
【0043】
各ブロックの重量平均分子量は3000〜250000グラム/モル、好ましくは6000〜175000グラム/モル、およびより好ましくは8000〜135000グラム/モルの範囲である。コポリマーの重量平均分子量は6000〜500000グラム/モル、好ましくは12000〜350000グラム/モル、およびより好ましくは16000〜150000グラム/モルの範囲である。
【0044】
典型的なコポリマーはポリスチレン−ブロック−ポリ(4−ビニルピリジン)である。ポリスチレンブロックは30000〜150000グラム/モル、好ましくは33000〜135000グラム/モルの重量平均分子量を有し、一方、ポリ(4−ビニルピリジン)ブロックの重量平均分子量は2000〜35000グラム/モル、および好ましくは6000〜30000グラム/モルの重量平均分子量を有する。
【0045】
コポリマーは、溶液の全重量を基準にして0.05〜35重量パーセントの量で溶液中に存在する。好ましい実施形態においては、コポリマーは溶液の全重量を基準にして0.1〜0.5重量パーセントの量で溶液中に存在する。
【0046】
半導体基体をドーピングする一方法においては、ドーパント前駆体およびコポリマーが溶媒に可溶化され、そして基体上に配置される。次いで、この基体は、場合によってはスピン乾燥、真空乾燥または熱ベークプロセスによって処理されて、キャスティング溶媒を実質的に蒸発させる。基体上にポリマーを配置した基体は、次いで、ラピッドサーマルアニーリング(加熱とも称される)にかけられて、溶媒を除去しおよび半導体基体のドーピングを促進する。
【0047】
溶媒は極性もしくは非極性溶媒であり得る。溶媒の例としては、ペンタン、シクロペンテン、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなど)、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、キシレン、メシチレン、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、酢酸n−ブチル、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、四塩化炭素、ヘキサン、ジエチルエーテルなど、または前述の少なくとも一種を含む組み合わせがある。所望の場合には、補助溶媒が使用されてもよい。典型的な溶媒はトルエンおよび/またはメタノールである。
【0048】
溶媒は溶液中に、溶液の全重量を基準にして65〜99.95、好ましくは75〜98、およびより具体的には85〜95重量パーセントの量で存在する。好ましい実施形態においては、溶媒は溶液中に、溶液の全重量を基準にして、99.5〜99.0重量パーセントの量で存在する。
【0049】
コポリマーおよびドーパント前駆体は溶媒に添加されて溶液を形成する。ポリマーの溶媒和を促進にするために、この溶液は攪拌におよび高温にかけられうる。次いで、この溶液は基体表面上に配置される。基体表面は、その上に溶液を配置する前に、加熱することによって、または溶媒中で洗浄することによって、あらかじめ清浄化されうる。
【0050】
この溶液はスピンコーティング、ドロップキャスティング、ドクターブレーディング、スプレイコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、ブラシコーティングなどによって基体上に配置されうる。基体をコーティングするのに好ましい方法はスピンコーティングを使用する。溶媒は基体表面から蒸発して、基体上に配置されたコポリマーコーティングを残すことができる。このコポリマーコーティングはドーパントを含む。
【0051】
図1は、基体上にドーパントを配置する典型的な方法の概略描写である。この方法においては、ブロックコポリマーおよびドーパント前駆体が溶媒中で位置づけられる。ブロックコポリマーはドーパント前駆体と複合体を形成するかまたはドーパント前駆体を封入することができ、かつ相分離して図1(a)に示されるような溶媒中の球状ドメインを形成する。図1(b)は基体上に配置された後の溶液を示す。図1(b)に認められうるように、ドーパント前駆体がその中に埋め込まれた球状ドメインは、基体の表面上に周期的に間隔の開いた構造を形成するのを促進しうる。膜中での球状の相分離したドメインの形成を促進するために、アニールプロセスが使用されうる。アニールプロセスには、熱アニーリング、溶媒蒸発アニーリング、マイクロ波アニーリング、および勾配熱アニーリングが挙げられる。ポリマーおよび基体を加熱すると、コポリマーは分解して基体内にドーパントの濃縮されたドメインを残す。図1(c)に認められうるように、これらのドメインは周期的に間隔を開けている。
【0052】
コポリマーコーティング(例えば、図1(b)における球状ドメインの層)はそれ自体キャッピング層として機能して、既存のモノレイヤードーピング手順において一般的に使用されるシリカ層のような金属酸化物層の高真空蒸発の必要性をなくする。さらに、半導体基体は共有結合されるのではなくポリマー膜で覆われるので、非酸化性雰囲気条件についての必要性も除かれうる。
【0053】
コポリマーコーティングの厚みは数ナノメートルから数百ナノメートル(nm)、好ましくは3〜250nm、およびより好ましくは5〜200nm、およびさらにより好ましくは6〜120nmの範囲であり得る。しかし、不均一なドーピングをもたらすであろうピンホールを回避するように注意がなされる限りは、より薄い膜が使用されうるであろうことが企図される。望まれる場合には、アニール後の半導体基体上の増大した有機残留物の存在を最小限にすることに注意が払われる場合には、より薄い膜が使用されてもよい。
【0054】
基体上に配置されたコポリマーコーティングを備えた基体は、次いで、0.001秒〜24時間、好ましくは0.01秒〜12時間、およびより好ましくは0.1秒〜3分間の期間での、500〜1500℃、好ましくは700〜1300℃の温度でのアニール(ラピッドサーマルアニーリング:RTA)にかけられる。アニールは、熱対流、熱伝導または放射加熱を用いることによって行われうる。アニールプロセスの際には対流加熱が好ましい。
【0055】
アニールは真空中でまたは不活性雰囲気中で行われうる。適する不活性雰囲気には、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素または二酸化炭素が挙げられる。好ましい実施形態においては、アニールはアルゴンを含む不活性雰囲気中で行われる。
【0056】
基体内に生じるドーパント濃度プロファイルは、拡散のために基体およびポリマーコーティングがかけられるアニール温度および時間の関数である。他の影響因子はアニール温度での半導体基体におけるドーパント分子の溶解性、並びにアニール温度でのドーパント分子の拡散係数である。よって、アニール時間および温度は、所望のドーパントプロファイルを達成するために、必要に応じて変えられることができた。よって、適切に低いアニール温度および短いアニール時間を用いて、サブ−5nmの浅さのドープされた接合が得られうる。
【0057】
アニール中に、ポリマーコーティングから残留溶媒が蒸発し、ポリマーのみを残す。ドーパント含有ポリマーからのドーパントが0.01〜1000nm、好ましくは0.05〜100nm、好ましくは0.09〜50nm、およびより好ましくは0.1〜10nmの深さまで基体に拡散する。ポリマーは分解することもでき、そして分解生成物が基体から蒸発しうる。
【0058】
ある実施形態においては、ドーパントドメインサイズおよびドーパントドメインの周期はコポリマーの分子量に依存する。ドメイン間隔の周期はコポリマーの分子量の増大に伴って大きくなる。このブロックの分子量が増大するにつれて、平均ドーパントドメインはサイズが大きくなりかつ平均周期も大きくなる。
【0059】
ある実施形態においては、平均ドーパントドメインサイズは2〜100ナノメートルである。平均ドーパントドメインサイズはドーパントドメインの平均半径である。別の実施形態においては、ドーパントドメインの平均周期は2〜200ナノメートルである。
【0060】
このドーピングの方法は、速いスイッチング速度および高い記録密度(packing density)を有するトランジスタのような物品および電子デバイス中のソース、ドレインおよびチャンネルエクステンション(channel extension)領域のための接合の形成を容易にする。さらなる用途には、これに限定されないが、トランジスタゲート、ナノ構造、ダイオード、光検出器、フォトセルおよび集積回路が挙げられる。
【0061】
本明細書において詳述されるドーピングの方法は以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0062】
実施例1
この実施例は、ドーパント前駆体と相互作用して球状ドメインを形成する水素結合能力を有するブロックコポリマーを使用した、ドープされた基体の製造を実証する。
【0063】
この実施例においては、ポリスチレン−b−ポリ4−ビニルピリジン(PS−b−P4VP)ポリマーがブロックコポリマーであり、4−ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールエステルおよびフルオロアンチモン酸六水和物がドーパント前駆体として使用される。このポリマーおよびこのドーパントの構造は図2に描かれる。溶媒はトルエンおよびメタノールである。
【0064】
様々な分子量(以下の表1に示される)のポリスチレン−b−ポリ4−ビニルピリジン(PS−b−P4VP)ポリマーがポリマーソースから購入され、そして受け取ったままで使用された。まず、ポリマーが無水トルエン中に溶解され(5mg/mL)、そして50℃で5時間にわたって攪拌された。別のバイアル中で、図2からの適するドーパント前駆体が1mLのメタノールに溶解された。次いで、様々なポリマー対ドーパント前駆体モル比(1:0.1〜1:0.5)の溶液を提供するように、様々な量のこのドーパント前駆体溶液が1mLのポリマー溶液に添加された。この一緒にした溶液が室温で24時間にわたって攪拌され、その後、0.45マイクロメートル(μm)PTFEフィルタを通して濾過された。この合成は、様々なサイズおよびドーパント濃度のドーパント含有PS−b−P4VP球状ドメインを生じさせ、このドメインは基体表面上で組織化されそして熱アニールされる場合にシリコン基体の離散したナノメートル限定された容積をドープするのに有用である。組織化およびアニールプロセスの例は、有用性の根拠と共に以下に提示される。
【0065】
【表1】
【0066】
ポリスチレン−b−ポリ(4−ビニルピリジン)(PS−b−P4VP)は、トルエンのような「非極性」溶媒中で、P4VPコアとPSシェルとを有する球状ミセル様集合体に自己組織化することが知られている標準的なジブロックコポリマーである。自己組織化は溶液相中で起こるので、これら集合体の形態はこの2つのブロックの容積分率から独立しており、かつ全てはトルエン中で球状集合体に組織化する。強く分離したジブロックコポリマーについてのこれら組織化物中での集合体の数は構成ブロックの容積分率に依存することが示されてきた:
【0067】
【数1】
【0068】
式中、NおよびNはそれぞれ、「コア」ブロックおよび「シェル」ブロックについての重合度である。PS−b−P4VPについては、Z=1.66、α=1.93およびβ=−0.73である。よって、PSシェルおよびP4VPコアの相対サイズは、NおよびNを20〜60nmの範囲で変えることによって容易に調節されうる。
【0069】
H NMR分光法は局所環境の変化に敏感である。例えば、図3(A)に示される様に、ポリマー鎖がCDClに溶解されている場合には、P4VPプロトンからの共鳴はδ=8.5ppmの化学シフトで起こる。クロロホルムはPSおよびP4VPブロックの双方についての良溶媒であるから、これらポリマー鎖は非集合状態で存在していることは明らかである。一方、d−トルエン中で記録された同じポリマーのH NMRスペクトルはP4VPプロトン共鳴ピークの同じポリマー著しい非存在を示す。これは、ポリマー鎖が主として集合した形態で存在しているトルエン中でのP4VPプロトンの遅延緩和(retarded relaxation)を示すものである。
【0070】
4−ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールエステル低分子(以降、SM)のH NMRスペクトルが図3(B)に示される。予想されるとおり、プロトンについての化学シフトはCDCl中およびd−トルエン中で異なっている。両方の溶媒中で、フェノール性−OHプロトンはδ=4.75ppm(トルエン)およびδ=5.6ppm(クロロホルム)において区別できるシングレットピークとして出現する。CDCl中のPS−b−P4VPとSMBとの混合は結果的に図4に示される様なフェノール性−OHピークの消失から明らかになるような複合化をもたらす。図4は、a)CDCl中でのおよびb)d−トルエン中でのポリマー+SM混合物のH NMRスペクトルを示す。さらに、δ=6.75〜7.75ppm付近の芳香族プロトンからの共鳴はこの複合体中のSMの存在を裏付ける。一方、この複合化がd−トルエン中で行われる場合には、SMの芳香族プロトンからの共鳴ピークは観察されない。これは、SMが、それとP4VPブロックとの複合化のせいで、ポリマー球状ドメインの内側に成功裏に封入されたことを示すものである。
【0071】
SMの成功裏の封入は、異なるP4VP−SM複合体について薄膜形態で記録されたFT−IRスペクトルによってさらに支持される。SM:P4VPの比率が増大するにつれて、特定のピークの強度および周波数の変化が明確に識別されうる。
【0072】
ポリマー−SM系のFT−IRスペクトルの一部分が図5に示される。膜は、ポリマー−SM溶液(上述の様に調製)をNaClペレット上にドロップキャスティングすることによって調製された。3300cm−1周囲のブロードピークはSMに存在するフェノール性−OHの特徴である。しかし、PS−b−P4VPとの複合化は、水素結合またはプロトン化のせいで、このピークの消失をもたらす。これらデータは、4−ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールSMが、固体状態においてフェノール性−OH基を介してポリマーと相互作用することをさらに示す。
【0073】
実施例2
この実施例はスピンキャスティングによってドーパントポリマー膜を組織化させることを実証するために行われた。様々な厚みのポリマー膜(20nm〜30nm)が、濾過されたトルエン/メタノール溶液から、2000〜3000rpmの速度でシリコン基体上にスピンキャストされた。5mgのブロックコポリマーが1mLのトルエンに溶解させられ、そして60℃で4時間にわたって攪拌された。10mgのボロン酸ピナコールエステル(SM)が1mLのメタノール中に溶解させられ、10mg/mLの最終溶液を得た。次いで、この溶液の適量(0.01mL〜0.1mL)がポリマー溶液に添加されて、1:0.1〜1:1で変化するポリマー対ドーパント比率の様々な溶液を提供した。これら溶液は室温で12〜24時間にわたって攪拌され、そして0.45μmのPTFEフィルタを通して濾過された。この適する溶液の75マイクロリットル(μL)が、清浄化されたシリコン基体の1×1cm正方形片の上に配置され、2000〜3000rpmの速度で回転させられた。この溶媒は周囲条件下で蒸発させられて乾燥膜を生じさせた。これら膜の名目厚みは20〜30nmであり、そしてこのブロックコポリマーの分子量に応じて変化することが認められた(使用されるポリマーの分子量については表1を参照)。ドーパント分子を含む球状ドメインP4VPブロックはシリコン基体上で六方最密充填形態で組織化する。ポリスチレンブロックは格子間空間を満たし、球体ドメイン間距離を画定する。表2は、シリコン上に堆積されたPS−b−P4VPポリマー薄膜の球状ドメイン集合体サイズおよび間隔を列挙する。表2に列挙された低分子の組み込みは、PS−P4VP薄膜から組織化した球状ドメインのサイズ、形状もしくは形態を変えなかった。
【0074】
【表2】
【0075】
乾燥ポリマー膜から下にある基体へのドーパントの拡散はスパイクラピッドサーマルアニーリング(RTA)によってもたらされ、結果的にナノメートル長さスケールの限定されたドーピングをもたらす。これら基体は、室温から様々な温度まで(600℃〜1000℃)で5秒間にわたって加熱し、そしてこれらの温度で0.1秒〜60秒のアニール時間にわたって保持することにより、不活性Ar雰囲気下で熱アニールされ、その後室温まで素早く冷却される。
【0076】
下にあるSi基体へのドーパントの拡散深さプロファイルは、イオンスパッタリングを伴う二次イオン質量分析(SIMS)を用いて決定された。図6におけるSIMSスパッタリングプロファイルから明らかなように、ポリマーの全ての分子量、全てのアニール時間(0.1秒〜60秒)、異なるモル濃度における(10mol%〜50mol%)系についてのPS−b−P4VP:SMについての900℃RTAアニールにおけるホウ素濃度は、基体表面の上部15nmに限定される。より正確には、ホウ素侵入深さは表面から約12nmであると推定されうる。それに比べて、ブランク基体はそれ自体RTA後に感知できるドーパント量および侵入を示さなかった。
【0077】
SIMS分析中のイオン収量の絶対値は局所酸素濃度に対して非常に敏感であることに留意されたい。よって、基体の表面の酸化は、多くの場合、誤解の恐れのある高濃度を導く。図6の対照サンプルの場合には、ブランクSi基体は1016〜1018B原子/cmのバックグラウンド濃度を含んでいる。よって、基体の表面において、誤解の恐れのある量のB(灰色のデータ点)が存在する。より適切には、同じ分析条件下で、ドーパント含有ポリマーまたはドーパント非含有ポリマーを用いてアニールされた基体間でのB濃度の相対的な差が、ドーパント含有ポリマーからもたらされるB量の実際の増加の現実的な表れである。
【0078】
SIMS分析から得られた組成情報がイオンビームのスポットサイズ(〜100μm)にわたって平均化されることにも留意されたい。この理由のせいで、ナノメートルスケールでの水平方向に限定されたドープ領域についての情報が失われ、そして報告される濃度は局所的に濃縮されたドーパントドメインの過小評価となる(理論的には、適切な濃度に合わせるために1.75の倍率が使用されうる)。以下のセクションについては、ドーピングの横方向の限定を解明するために電子顕微鏡観察が使用されたが、残念ながらこれはシリコンとホウ素との間のZ−コントラストの欠失のせいでホウ素ドーピングサンプルでは行われることができなかった。
【0079】
四点プローブ測定を用いて、拡散したドーパントの電気的活性化が調べられ、データが図7にまとめられる。シート抵抗(R)がSIMSで分析された全てのサンプルについて測定された。まず、低、中および高分子量ブロックコポリマーテンプレートを用いて、ドープされた基体についてのR値の間に明確な差異が存在する。低分子量ブロックコポリマー(セット1、PS27k−b−P4VP7k)についてのR値が最も低く、一方で、高分子量ブロックコポリマー(セット3、PS109k−b−P4VP27k)についてのこの値が最も低く、中分子量ブロックコポリマー(セット2、PS58k−b−P4VP18k)についてのR値は上記2つの極値の間にある。第二に、接合の高抵抗の性質のせいで、非常に短いアニール時間、つまり0.1秒によって形成されるセット2およびセット3の接合については、シート抵抗は測定されることができなかった。Si中でのホウ素の拡散はアニール時間および温度の関数であるから、我々は、セット2およびセット3における、より高い抵抗は、隣りのドメインからのホウ素の制限された拡散のせいであることを仮定する。これは劣って接続されたドメインをもたらす。ポリマー前駆体膜中でのホウ素の豊富なドメインは、低分子量PS−b−P4VP膜においてはかなり狭い間隔で位置しており、分子量の増大と共に徐々にさらに離れる(表2参照)ということを考慮するとこれは合理的である。
【0080】
図8はRTAドーピングの前の組織化したPS−b−P4VPポリマー薄膜のタッピングモードAFM像を示し、様々なサイズおよび間隔の球状集合体が明瞭に目に見え、それぞれの像は特定の分子量a)PS27k−b−P4VP7k、b)PS58k−b−P4VP18k、c)PS109k−b−P4VP27kに対応する。
【0081】
図9はa)Si基体、b)スパイクRTA前のPS58k−b−P4VP18k:SM(1:0.5)膜、c)0.1秒、d)1秒、e)10秒およびf)60秒にわたる900℃でのスパイクRTA後でのPS58k−b−P4VP18k:SM(1:0.5)膜の3D表面形状を示す。清浄なシリコン(Si)基体は高さ〜1nmの表面ラフネスフィーチャを有するが、PS58k−b−P4VP18k:SMポリマーが堆積された後では、平均15nmのフィーチャサイズが観察された。RTAアニール後、(C−F)表面フィーチャが高さ〜5nmまで低下し、球状ドメインの緻密化を示す。これらAFM像と四点プローブ分析およびSIM分析とを相互に関連づけると、PS58k−b−P4VP18k:SMからのBが下のSiに組み込まれ、そしてナノメートルの閉じ込めを有する電子的に(および同様に物理的に)離散した領域を保持するという明らかな証拠が存在する。
【0082】
実施例3
この実施例は、ブロックコポリマーのスパイクラピッドサーマルアニーリングによるアンチモンでのドーピングを実証するために行われた。超分子ブロックコポリマーRTAドーピングアプローチを用いたドーパント包接の多様性を実証するために、および電子顕微鏡観察特性付けを助けるために、PS−b−P4VP:フルオロアンチモン酸六水和物(以降、SMSb)ドーピング系が上述の様に開発された。PS−b−P4VP:SM系と同様に、膜形成の際に、PS−b−P4VP:SMSbはシリコン基体上で六方最密充填相に組織化した。さらに、900℃または1000℃で0.1秒間にわたるRTAの際に、SIMS深さプロファイリング分析はシリコン基体へのSb拡散を示す(図10)。図10は、900℃(緑色)、950℃(青色)および1000℃(赤色)で1秒間にわたるスパイク−RTA後の基体における、SIMSアンチモン(Sb)濃度プロファイルを示し、円のデータ点は1:0.5のポリマー対SMSb比率でのPS27k−b−P4VP7k:フルオロアンチモン酸六水和物SMに対する表面からの深さの関数としてのアンチモンの濃度プロファイルに対応し、灰色のデータ点はブランク基体のSb濃度に対応する。
【0083】
1000℃の高いアニール温度で、Sbのより多くの量(表面およびより深い侵入深さの双方でのより高い濃度)のSbがSiに拡散することが観察された。正確なRTA条件下(900℃で1秒間)でのホウ素拡散と比較して、より少ないアンチモンがSi基体に熱拡散することが観察された。これは、表3に示される様な、BまたはPに対してより低い、Sbのバルク溶解性および拡散係数に関連する。
【0084】
【表3】
【0085】
RTA前および後でのSbドーパント含有領域についての空間的情報を決定するために、電子顕微鏡観察技術(TEM−透過型電子顕微鏡法、SEM−走査型電子顕微鏡法)が使用された。すでに述べたように、我々のナノ限定されたドープ領域の電子イメージングを容易にするために、我々は、我々のP4VP集合体内にアンチモン(Sb)前駆体を組み込んだ。単結晶Si基体上のドーピングとは異なり、得られた膜内のSbドーパント含有球状ドメインは15nm厚みの多結晶Siウィンドウ上でスパイクRTAにかけられた。アニール前および後でのTEM像が図11に示される。図11は、RTA前のポリマー膜に埋め込まれたSbクラスター(左側)、Si上の900℃でのスパイクRTA後のSbクラスター(右側)のTEM像を示す。
【0086】
ポリマー膜の顕微鏡写真(左側)と、アニール後のTEM基体の顕微鏡写真との間の差は非常に明確である。前者においては、ポリマー膜中に埋め込まれたSbクラスター(暗い円)が充分に画定されており、疑似六方充填秩序(quasi−hexagonally packed order)を示す。この形態はAFMで観察されたのと同じである。これらクラスターは約20nmの平均直径および約30nmの最も近い隣り合う中心間距離を有する。アニール後の基体においては、Sbクラスターはその一般的な形状および六方充填秩序を維持しているが、わずかに変形している。あらかじめのAFM測定はRTA後の基体の表面形状が平坦ではなくナノメートルサイズのドメインを示すことを示していると思われる。しかし、図9に示された様に、RTA前(図9B)および後(図9C〜F)での表面フィーチャの高さの差は10nmを超えていた。SIMSデータと共に、スパイクRTA拡散前に膜に組み込まれたホウ素の過半量は下にある基体に拡散することが結論づけられることができる。さらに、RTA後の残留する表面フィーチャの離散した性質はドープ領域の離散性も示す。
【0087】
図12は、スパイクRTA前のPS58k−b−P4VP18k:SMSb膜のタッピングモードAFM(左側)およびTEM(右側)像を比較した顕微鏡写真を示し、この疑似六方形状は、同じ寸法の離散したSb豊富な球状ドメインを伴って、両方の像に表れている。
【0088】
PS−b−P4VP:SM、およびPS27k−bP4VP7k:SMSbドーピング系のSIM深さプロファイリング、AFMイメージング、四点プローブ分析およびTEM像分析(Sbのみ)を組み合わせると、これらRTA条件下でのシリコン中のBおよびSbドーピングはBおよびSbを10nm未満の深さに限定するだけでなく、BおよびSbが二次元で離散したナノメートルサイズの領域に水平方向に限定されることを示す充分な証拠が存在する。我々が知る限り、これはRTAドーピングプロセスを用いて製造された3Dナノメートル限定ドーパント領域の最初の実証である。これは、様々な電子デバイスのための具体的なドーピング領域を画定することへ向かう重要なステップである。
【0089】
図11および12におけるデータから認められうる様に、基体におけるドーパントのサイズおよび周期は、ブロックコポリマーの分子量が増大するにつれて増大する。このドーパント濃度は1018〜1021原子/平方センチメートルの範囲である。
【0090】
本明細書に記載されたドーピングは2次元ドープされた基体または三次元基体を生じさせるために使用されうる。例えば、それは、テクスチャ化された基体および突出部を有する3次元基体に適用されうる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
【外国語明細書】
2015213168000001.pdf
2015213168000002.pdf
2015213168000003.pdf
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