(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-213296(P2015-213296A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】ハイパワー高周波数スイッチ素子用バイアス回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/00 20060101AFI20151030BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20151030BHJP
H04B 1/48 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
H03K17/00 D
H03K17/687 G
H04B1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-41269(P2015-41269)
(22)【出願日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】14/196,987
(32)【優先日】2014年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】599034594
【氏名又は名称】トライクイント・セミコンダクター・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TriQuint Semiconductor,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、チャールズ エフ.
【テーマコード(参考)】
5J055
5K011
【Fターム(参考)】
5J055AX06
5J055AX52
5J055AX64
5J055BX17
5J055CX03
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY12
5J055EY21
5J055GX01
5J055GX02
5K011DA02
5K011DA21
5K011FA01
5K011KA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】RF信号をスイッチするための電界効果トランジスタ(FET)のゲート端子におけるリーク電流による挿入損失を削減する方法を提供する。
【解決手段】スイッチ136がオンのとき、ダイオード132a−bはゲート端子120と制御端子124の間に導電的に接続される。ゲート端子でのリーク電流が比較的小さいとき、ダイオードはゲート抵抗より高いインピーダンスを示し、リーク電流はゲート抵抗を通じてゲート端子と制御端子の間を流れる。ゲート端子でのリーク電流が閾値電流を超えるとき、ダイオードはゲート抵抗より低いインピーダンスを示し、リーク電流はダイオードを通じてゲート端子から制御端子へ通過する。ダイオードはゲート端子と制御端子の間でオン電圧の合計にほぼ等しい電圧に降下させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート端子を有するトランジスタと、
前記ゲート端子に接続され、高周波(RF)信号のスイッチングを助けるよう第1状態と第2状態の間で前記トランジスタをスイッチするための制御電圧を受ける制御端子と、
前記ゲート端子と前記制御端子の間に接続されるゲート抵抗と、
前記ゲート端子と前記制御端子の間に前記ゲート抵抗と並列に接続される一以上のダイオードと、を備える回路。
【請求項2】
前記一以上のダイオードに接続され、前記トランジスタが前記第1状態のときに前記一以上のダイオードを前記ゲート抵抗と並列に選択的に接続させるスイッチをさらに備える、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記トランジスタは第1トランジスタであり、前記ゲート端子は第1ゲート端子であり、前記スイッチは、一定のバイアス電圧を受ける第2ゲート端子を有する第2トランジスタを含む、請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記一定のバイアス電圧は、前記第1トランジスタが前記第1状態のときの前記制御電圧の値に等しい値を有する、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記制御電圧は、第1制御電圧であり、
装置は、前記第2トランジスタの前記第2ゲート端子に接続されるゲート回路であって、前記第1制御電圧および前記第1制御電圧と相補的な第2制御電圧に基づいて前記一定のバイアス電圧を生成するゲート回路をさらに含む、請求項4に記載の回路。
【請求項6】
前記制御電圧は、前記トランジスタが前記第2状態のときに約0Vの値を有し、前記トランジスタが前記第1状態のときに負の電圧値を有し、
前記トランジスタは、前記第1状態の間にオフとなり、前記第2状態の間にオンとなる、請求項1に記載の回路。
【請求項7】
前記トランジスタは、窒化ガリウム(GaN)トランジスタである請求項1に記載の回路。
【請求項8】
前記トランジスタは、RF信号の伝送路に直列に接続される直列トランジスタであり、前記ゲート抵抗および前記一以上のダイオードは、第1バイアス回路に含まれており、
装置は、
前記伝送路に分岐して接続され、ゲート端子を有する分岐トランジスタと、
前記分岐トランジスタの前記ゲート端子に接続される第2バイアス回路と、を含む、請求項1に記載の回路。
【請求項9】
前記一以上のダイオードは、前記ゲート端子と前記制御端子の間に互いに直列に接続される複数のダイオードを含む、請求項1に記載の回路。
【請求項10】
ゲート端子を有するトランジスタと、
前記ゲート端子に接続され、高周波(RF)信号のスイッチングを助けるよう前記トランジスタをオンまたはオフにするための制御電圧を受ける制御端子と、
前記ゲート端子と前記制御端子の間に接続されるバイアス回路であって、前記ゲート端子と前記制御端子の間に接続されるゲート抵抗を含み、前記トランジスタがオフのときに、前記ゲート抵抗の近くで、一以上のダイオードを通る、前記ゲート端子と前記制御端子の間の導電経路を選択的に与えるバイアス回路と、を備えるRFスイッチング装置。
【請求項11】
前記トランジスタは第1トランジスタであり、前記ゲート端子は第1ゲート端子であり、前記バイアス回路は、前記一以上のダイオードに接続される第2トランジスタであって、前記トランジスタがオフのときに前記一以上のダイオードを前記ゲート抵抗と並列に選択的に接続させる第2トランジスタを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第2トランジスタの第2ゲート端子は、前記第1トランジスタがオフのときの前記制御電圧の値に等しい値を有する一定のバイアス電圧を受ける、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記制御電圧は、第1制御電圧であり、
前記装置は、前記第2トランジスタの前記第2ゲート端子に接続されるゲート回路であって、前記第1制御電圧および前記第1制御電圧と相補的な第2制御電圧に基づいて前記一定のバイアス電圧を生成するゲート回路をさらに含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記制御電圧は、前記トランジスタがオンのときに約0Vの値を有し、前記トランジスタがオフのときに負の電圧値を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記トランジスタは、RF信号の伝送路に直列に接続される直列トランジスタであり、前記ゲート抵抗および前記一以上のダイオードは、第1バイアス回路に含まれており、
前記装置は、
前記伝送路に分岐して接続され、ゲート端子を有する分岐トランジスタと、
前記分岐トランジスタの前記ゲート端子に接続される第2バイアス回路と、を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記一以上のダイオードは、前記ゲート端子と前記制御端子の間に互いに直列に接続される複数のダイオードを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
高周波(RF)信号を受けるための入力ポートと、
出力ポートと、
前記入力ポートと前記出力ポートの間に直列に接続される直列トランジスタであって、前記直列トランジスタがオンであるときに前記RF信号を前記出力ポートへ選択的に通過させる直列トランジスタと、
前記直列トランジスタのゲート端子に接続され、前記直列トランジスタをオンまたはオフにするための直列制御電圧を受ける直列制御端子と、
前記直列トランジスタの前記ゲート端子に接続される直列バイアス回路とを備え、
前記直列バイアス回路は、
前記直列トランジスタのゲート端子と前記直列制御端子の間に接続される直列ゲート抵抗と、
前記直列トランジスタのゲート端子と前記直列制御端子の間に前記直列ゲート抵抗と並列に接続される一以上のダイオードと、
前記直列トランジスタのゲート端子と前記直列制御端子の間に前記一以上のダイオードと直列に接続され、前記直列制御電圧に応答して前記一以上のダイオードを前記直列ゲート抵抗と並列に選択的に導電的に接続させるスイッチと、を含むシステム。
【請求項18】
前記入力ポートと前記出力ポートの間の伝送路に分岐して接続される分岐トランジスタと、
前記分岐トランジスタのゲート端子に接続され、前記分岐トランジスタをオンまたはオフにするための分岐制御電圧を受ける分岐制御端子であって、前記分岐制御電圧が前記直列制御電圧と相補的である分岐制御端子と、
前記分岐トランジスタの前記ゲート端子に接続される分岐バイアス回路と、をさらに備え、
前記分岐バイアス回路は、
前記分岐トランジスタの前記ゲート端子と前記分岐制御端子の間に接続される分岐ゲート抵抗と、
前記分岐トランジスタの前記ゲート端子と前記分岐制御端子の間に前記分岐ゲート抵抗と並列に接続される一以上のダイオードと、
前記分岐トランジスタの前記ゲート端子と前記分岐制御端子の間に前記一以上のダイオードと直列に接続され、前記分岐制御電圧に応答して前記分岐バイアス回路の前記一以上のダイオードを前記分岐制御端子に選択的に導電的に接続させるスイッチと、を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記直列バイアス回路および前記分岐バイアス回路のスイッチは、トランジスタを含み、
前記システムは、前記スイッチのそれぞれのトランジスタのゲート端子に接続される個別のゲート回路を含み、
前記個別のゲート回路は、
前記直列制御電圧および前記分岐制御電圧を受け、
前記スイッチのトランジスタのゲート端子に、前記直列制御電圧の値および前記分岐制御電圧の値の小さい方と等しい値を有する一定のバイアス電圧を通過させる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記一以上のダイオードは、前記直列トランジスタと前記直列制御端子の間に互いに直列に接続される複数のダイオードを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記直列トランジスタは、窒化ガリウム(GaN)トランジスタである、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
無線通信ネットワークを通じた伝送用の前記RF信号をスイッチする請求項17に記載のシステムを含む、ユーザ機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、広く回路の分野に関し、特に、高周波スイッチング素子用のバイアス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波(RF)スイッチング素子は、無線通信システムといった多くの用途に用いられ、RF信号を選択的に通過させる。多くのスイッチング素子は、RF信号をスイッチするための電界効果トランジスタ(FET)を含む。しかしながら、FETのゲート端子におけるリーク電流は、挿入損失を生じさせるおそれがあり、および/または、望まないときにFETをオンまたはオフにさせるおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
実施の形態は、例示を目的とし、添付の図面の記載に限定されないことを目的として例示される。添付の図面において同種の要素には同種の符号が付される。
【0004】
【
図1】様々な実施の形態に係るスイッチング素子の構成を示す回路図である。
【0005】
【
図2】様々な実施の形態に係る別のスイッチング素子の構成を示す回路図である。
【0006】
【
図3】様々な実施の形態に係る単極単投スイッチの構成を示す回路図である。
【0007】
【
図4】様々な実施の形態に係る無線通信装置の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例示される実施の形態に係る様々な態様は、当業者にとって一般的に採用される用語を用いて他の当業者に本発明の本質を伝えるために示される。しかしながら、以下に示されるいくつかの要素のみを用いて代替的な実施の形態を実施しうることは、当業者にとって明らかであろう。説明のために、特定の装置または構成は、例示される実施の形態の詳細な理解を与えるために示される。しかし、当業者にとって、代替的な実施の形態を具体的な細部を省いて実施しうることは明らかであろう。他の例では、例示される実施の形態を不明確としないために、周知な特徴は除外され、もしくは単純化される。
【0009】
さらに、様々な動作は、複数の個別の動作として本開示の理解を最も助ける形で順に示される。しかしながら、記載の順序は、これらの動作が必ずしも順序依存であることを示すものであるとして解釈されるべきはない。特に、これらの動作は、説明される順序で実行される必要はない。
【0010】
「一つの実施の形態において」の語は、繰り返し用いられる。この語は、ほとんどの場合において、同じ実施の形態を参照するものではないが、同じ実施の形態を参照するかもしれない。「備える」、「有する」および「含む」の語は、文脈において別に規定されない限り、同義語である。
【0011】
様々な実施の形態の結合に用いうる用語に対し、文脈上の明確性を与えるため、「A/B」および「Aおよび/またはB」の語は、(A)、(B)または(AおよびB)を意味することとする。また、「A、Bおよび/またはC」の語は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、BおよびC)を意味する。
【0012】
「〜と接続される」の語は、ここでは、派生的に用いられうる。「接続される」は、以下に示す一以上の意味で用いられうる。「接続される」は、二以上の要素が物理的または電気的に直接接触することを意味しうる。しかしながら、「接続される」は、二以上の要素が互いに間接的に接触しつつ互いに協働または相互作用することも意味し、また、一つ以上の他の要素が、上述の意味で互いに接続された要素間において結合または接続されることを意味しうる。
【0013】
図1は、様々な実施の形態に係るスイッチ回路100を示す。スイッチ回路100(以下、回路100ともいう)は、バイアス回路108に接続されるトランジスタ104を含んでもよい。いくつかの実施の形態において、トランジスタ104は、電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。トランジスタ104は、ドレイン端子112、ソース端子116、ゲート端子120を含んでもよい。いくつかの実施の形態において、トランジスタ104は、n型FETであってもよい。追加的または代替的に、トランジスタ104は、デプレッション型FETであってもよい。いくつかの実施の形態において、トランジスタ104は、窒化ガリウム(GaN)またはガリウム砒素(GaAs)FETであってもよい。
【0014】
スイッチ回路100は、制御信号(例えば制御電圧)を受け、伝送信号(例えば、高周波(RF)信号)のスイッチングを助けるようトランジスタ104を第1状態と第2状態の間でスイッチさせる制御端子124をさらに含んでもよい。例えば、いくつかの実施の形態において、トランジスタ104は、第1状態においてオフであり、第2状態においてオンであってもよい。トランジスタ104は、ドレイン端子112にて伝送信号を受け、トランジスタ104がオンの場合に伝送信号をソース端子116へ通過させてもよい。トランジスタ104は、トランジスタ104がオフである場合にドレイン端子112とソース端子116の間の伝送信号の通過を妨げてもよい。
【0015】
いくつかの実施の形態において、トランジスタ104は、伝送経路に直列に接続されて入力ポートから出力ポートへ伝送信号を選択的に通過させてもよい(例えば、アンテナおよび/または他の構造による伝送のため)。他の実施の形態において、トランジスタ104は、伝送経路に分岐して接続されて入力ポートからグランド端子へ伝送信号を選択的に通過させてもよい(例えば、伝送信号を迂回させたり、出力ポートへの通過を妨げたりするため)。
図3を示しながら後述されるように、いくつかの実施の形態は、伝送経路に直列に接続される直列トランジスタと、伝送経路に分岐して接続される分岐トランジスタとを含むスイッチング素子を含んでもよい。スイッチングモジュールの第1状態において、直列トランジスタがオンになり分岐トランジスタがオフになって伝送信号を出力ポートへ通過させてもよい。スイッチングモジュールの第2状態において、直列トランジスタがオフになり分岐トランジスタがオンになって出力ポートへの伝送信号の通過を妨げてもよい。
【0016】
様々な実施の形態において、制御信号は、第1の値と第2の値の間でスイッチ可能であってもよい。制御信号は、トランジスタ104をオフにする第1の値を有してもよく、トランジスタ104をオンにする第2の値を有してもよい。いくつかの実施の形態において、第1および第2の値は、直流(DC)電圧であってもよい。例えば、いくつかの実施の形態において、第1の値はトランジスタ104をオフにする負のDC電圧であり、第2の値はトランジスタ104をオンにする0V(例えばグランド電圧)であってもよい。一つの非限定的な実施の形態において、制御信号の第1の値は、トランジスタ104をオフにする約−20Vから−48Vであってもよい。例えば、トランジスタ104がデプレッション型GaNFETである場合にこのような制御信号が採用されうる。
【0017】
いくつかの実施の形態において、制御端子124に接続される電源126により制御信号が与えられてもよい。いくつかの実施の形態において、電源126は、制御信号の第2の値を与えるためにグランド電位に接続され、制御信号の第1の値を与えるために負の電圧に接続されてもよい。
【0018】
様々な実施の形態において、バイアス回路108は、トランジスタ104のゲート端子120と制御端子124の間に接続されてもよい。バイアス回路108は、ゲート端子120と制御端子124の間に接続されるゲート抵抗128を含んでもよい。バイアス回路108は、ゲート端子120と制御端子124の間にゲート抵抗128と並列に接続される一以上のダイオード132a−bをさらに含んでもよい。ダイオード132a−bは、ゲート端子120から制御端子124へダイオード132a−bを通じてリーク電流を通過させることを可能にしてもよい。ダイオード132a−bは、ダイオード132a−bの順方向が制御端子124に向かって接続され、ダイオード132a−bの逆方向がゲート端子120に向かって接続されるように方向付けられてもよい。
【0019】
いくつかの実施の形態において、バイアス回路108は、一以上のダイオード132a−bに接続されてトランジスタ104が第1状態(例えばオフ)のときに一以上のダイオード132a−bをゲート抵抗128と並列に選択的に接続させるスイッチ136(例えばFET)をさらに含んでもよい。例えば、スイッチ136は、トランジスタ104がオフのときにオン(例えば、制御端子124とダイオード132a−bの間に電流を導通させること)となってもよいし、スイッチ136は、トランジスタ104がオンのときにオフ(例えば、制御端子124とダイオード132a−bの間での電流の通過を妨げること)となってもよい。いくつかの実施の形態において、スイッチ136は、一以上のダイオード132a−bと制御端子124の間に接続されてもよい。他の実施の形態において、スイッチ136は、一以上のダイオード132a−bとゲート端子120の間に接続されてもよい。
【0020】
スイッチ136がオンのとき、ダイオード132a−bは、ゲート端子120と制御端子124の間に導電的に接続されてもよい。ゲート端子120でのリーク電流が比較的小さいとき、ダイオード132a−bはゲート抵抗128より高いインピーダンスを示してもよく、リーク電流はゲート抵抗128を通じてゲート端子120と制御端子124の間を流れてもよい。しかしながら、ゲート端子120でのリーク電流が閾値電流を超えるとき、ダイオード132a−bはゲート抵抗128より低いインピーダンスを示してもよく、リーク電流はダイオード132a−bを通じてゲート端子120から制御端子124へ通過してもよい。ダイオード132a−bは、ゲート端子120と制御端子124の間で、ダイオード132a−bのオン電圧の合計にほぼ等しい電圧降下を提供しうる。例えば、いくつかの実施の形態において、個々のダイオード132a−bのオン電圧は、約1.6Vでありうる。したがって、バイアス回路108が二つのダイオード132a−bを含む実施の形態において、ダイオード132a−bは、ゲート端子120と制御端子124の間に約3.2Vの電圧降下を提供しうる。ダイオード132a−bにより提供される電圧降下は、閾値電流を超えるリーク電流に対して実質的に一定でありうる。
【0021】
対照的に、スイッチングトランジスタのゲート抵抗に並列なダイオードを含まない従来のバイアス回路では、リーク電流の全てがゲート抵抗を通過する。したがって、スイッチングトランジスタがオフであり制御信号が負電圧であるとき、ゲート端子から制御端子までのゲート抵抗にわたる電圧降下は、リーク電流の増加に対して直線的に増大し、その結果、ゲート端子における電圧レベルが絶対値のより小さい負の値(less negative)となってしまう。リーク電流がリーク限界を超える場合、リーク電流によりゲート端子にて増大した電圧レベルは、スイッチングトランジスタをオンにさせうる。したがって、バイアス回路108は、従来のスイッチング回路より大きなリーク電流とともにスイッチ回路100を動作させることを可能にしうる。
【0022】
さらに、ダイオード132a−bは、ドレイン端子112に存在するRF信号を整流し、RF信号をゲート端子120における追加的な負電圧に変換しうる。したがって、ダイオード132a−bは、ゲート端子120と制御端子124の間にダイオードが接続されていない場合よりも、ゲート端子120でのゲート電圧を絶対値のより大きい負の値(more negative)にしうる。ダイオード132a−bにより与えられる整流作用は、スイッチ回路100の圧縮点またはパワー処理(例えば、0.2dB以上の挿入損失といった顕著な挿入損失なしに、FET104によってスイッチされうるドレイン端子112でのRF信号のRFパワー量)を増大させうる。さらに、ダイオード132a−bにより与えられる増大したパワー処理は、リーク電流が増大するにつれて(例えば、1mA/mm、1.5mA/mm、2mA/mm以上のリーク電流にて)実質的に維持されうる。対照的に、ゲート端子と制御端子の間にダイオードが接続されていないスイッチ回路のパワー処理は、一般に、リーク電流が増加するにつれて減少する。
【0023】
さまざまな実施の形態において、バイアス回路108により提供される増大したパワー処理は、ゲートトランジスタに並列なダイオードを含まないバイアス回路と比べて、所与の量のRFパワー処理を与える間の第1の量として(例えば、所与の圧縮点として)、制御信号が絶対値のより小さい負の電圧を有することを可能にしうる。代替的または追加的に、バイアス回路108は、制御信号の所与の第1の量に対して増大したRFパワー処理を提供してもよい。様々な実施の形態において、バイアス回路108のリーク電流の利益が必要でない場合(例えば、回路100に用いられているFETプロセスが低いゲートリーク電流を有する場合)であっても、増大したRFパワー処理の利益のためにバイアス回路108が回路100に用いられてもよい。代わりに、増大したパワー処理が必要でない場合であっても、高いリーク電流を管理するためにバイアス回路108が回路100に用いられてもよい。
【0024】
しかしながら、いくつかの実施の形態において、制御信号が第2の値を有してトランジスタ104をオンにするとき、ダイオード132a−bによる整流作用で生じたゲート端子120での追加の負電圧が望ましくないかもしれない。例えば、制御信号の第2の値が0Vになってトランジスタ104がオンになるとき、整流作用が提供するゲート端子120での追加の負電圧は、(例えば、高いRFパワーレベルにて)トランジスタ104をオフにしうる。したがって、ゲート端子120と制御端子124の間でダイオード132a−bをゲート抵抗128に並列に選択的に接続させるためのスイッチ136がスイッチ回路100に含まれてもよい。スイッチ136は、トランジスタ104がオンのときにオフとなってもよい。したがって、スイッチ136は、制御信号が第2の値を有してトランジスタ104がオンとなるときに、制御端子124および/またはゲート端子120からダイオード132a−bを遮断し、ゲート端子120と制御端子124の間でダイオード132a−bを通じて電流が流れるのを妨げてもよい。トランジスタ104のドレイン端子112、ソース端子116および120の全てがグランド電位となりうることから、ゲート端子120でのリーク電流は、トランジスタ104がオンのときに回路100の性能に顕著な影響を与えないかもしれない。
【0025】
いくつかの実施の形態において、スイッチ136は、FETといったトランジスタであってもよい。スイッチバイアス端子140は、スイッチ136のゲート端子に(例えば、抵抗144を介して)接続されて一定のバイアス電圧を受け、一定のバイアス電圧をスイッチ136のゲート端子に通過させてもよい。いくつかの実施の形態において、一定のバイアス電圧は、スイッチバイアス端子140に接続される電源148により提供されてもよい。
【0026】
いくつかの実施の形態において、スイッチバイアス端子140が受ける一定のバイアス電圧は、制御端子124にて受ける制御電圧の最小値と等しい値を有してもよい。例えば、いくつかの実施の形態において、一定のバイアス電圧の値は、トランジスタがオフのときの制御電圧(例えば、負電圧)の値と等しくてもよい。
【0027】
いくつかの実施の形態において、スイッチ136のドレイン端子は制御端子124と接続されてもよく、スイッチ136のソース端子はダイオード132bに接続されてもよい。したがって、スイッチ136のゲート端子で受ける一定のバイアス電圧とともに、スイッチ136は、制御端子124で受ける制御信号に応答してオンまたはオフとなってもよい。つまり、スイッチ136は、トランジスタ104がオフのときにオンとなってもよく、トランジスタ104がオンのときにオフとなってもよい。
【0028】
様々な実施の形態において、バイアス回路108は、1、2、3もしくはそれ以上のダイオードといった、任意の適した数の一以上のダイオード132a−bを含んでもよい。ダイオードの数は、バイアス回路108にて設計されるダイオード132a−bを通過するリーク電流の大きさや、用いられるFETテクノロジの閾値電圧、ゲート端子120にて要求される最小のRFインピーダンス、および/または、利用可能な負の制御信号の大きさに基づいて選択されうる。
【0029】
図2は、様々な実施の形態に係る別のスイッチ回路200(「回路200」ともいう)を示す。スイッチ回路200は、
図1のトランジスタ104およびバイアス回路108のそれぞれと同様に、トランジスタ204とバイアス回路208を含んでもよい。バイアス回路208は、バイアス回路108のゲート抵抗128、一以上のダイオード132a−b、スイッチ136のそれぞれと同様に、ゲート抵抗228、一以上のダイオード232a−b、スイッチ236を含んでもよい。制御端子224は、バイアス回路208(例えば、ゲート抵抗228とスイッチ236の間)に接続されてもよい。制御端子224は、電源226からDC制御電圧Vcを受けてもよい。制御電圧Vcは、FET204をオフにしてスイッチ236をオンにする第1の値と、FET204をオンにしてスイッチ236をオフにする第2の値とを有してもよい。例えば、いくつかの実施の形態において、第1の値は負のDC電圧であってもよいし、第2の値はグランド電圧(0V)であってもよい。
【0030】
スイッチ回路200は、スイッチ236のゲート端子に(例えば抵抗244を介して)接続されるスイッチバイアス端子240をさらに含んでもよい。ゲート回路252は、スイッチバイアス端子240に接続され、スイッチバイアス端子240に一定のバイアス電圧を与えてもよい。一定のバイアス電圧は、制御電圧Vcの第1および第2の値の小さい方(例えば、第1の値が負電圧である場合には第1の値)と等しい値を有してもよい。いくつかの実施の形態において、ゲート回路252は、制御電圧Vcおよび制御電圧Vcと相補的な補完電圧V’c(例えば、Vcが第2の値を有する場合にV’cは第1の値を有し、Vcが第1の値を有する場合にV’cは第2の値を有しうる)に基づいて一定のバイアス電圧を生成してもよい。補完電圧V’cは、電源256により提供されてもよい。
【0031】
いくつかの実施の形態において、ゲート回路252はNORゲートを形成し、制御電圧Vcまたは補完電圧V’cの低い方の電圧と等しい電圧を有する一定のバイアス電圧を出力してもよい。例えば、ゲート回路252は、スイッチバイアス端子240と電源226の間に互いに直列に接続される抵抗260およびダイオード264を含んでもよく、さらに、スイッチバイアス端子240および電源256の間に互いに直列に接続される抵抗268およびダイオード272を含んでもよい。
【0032】
図3は、直列トランジスタ304と分岐トランジスタ308を含む様々な実施の形態に係るスイッチ回路300(以下、スイッチ素子または回路300ともいう)を示す。回路300は、第1状態と第2状態の間でスイッチ可能でありうる。回路300は、(例えば、送信器から)RF信号を受ける入力端子312を含んでもよい。回路300は、回路300が第1状態であればRF信号を出力端子316に通過させてもよく、回路300が第2状態であればRF信号をグランド端子320に通過させてもよい。いくつかの実施の形態において、出力端子316は、RF信号を送信するためのアンテナ(不図示)と接続されてもよい。
【0033】
直列トランジスタ304は、入力端子312と出力端子316の間に直列に接続されうる。直列トランジスタ304は、入力端子312から出力端子316へ向かう伝送路318と直列に接続されるようにも記載されうる。直列トランジスタ304は、スイッチ回路300が第1状態であればRF信号を出力端子へ選択的に通過させてもよい。
【0034】
分岐トランジスタ308は、入力端子312とグランド端子320の間に接続されうる。分岐トランジスタ308は、伝送路318および/または入力端子312に分岐するようにも記載されうる。分岐トランジスタ308は、スイッチ回路300が第2状態であればRF信号をグランド端子320に選択的に短絡させうる(したがって、出力端子316へのRF信号の通過が妨げられる)。
【0035】
スイッチ回路300は、直列トランジスタ304のゲート端子に接続される直列バイアス回路324と、分岐トランジスタ308のゲート端子に接続される分岐バイアス回路328をさらに含んでもよい。直列バイアス回路324および/または分岐バイアス回路328は、本書に記載されるバイアス回路108またはバイアス回路208と同様であってもよい。直列バイアス回路324は、直列制御信号を受けるための制御端子332と、一定のバイアス電圧を受けるためのスイッチバイアス端子336を含んでもよい。分岐バイアス回路328は、分岐制御信号を受けるための制御端子340と、一定のバイアス電圧を受けるためのスイッチバイアス端子344を含んでもよい。直列制御信号は、分岐制御信号と相補的であってもよい。いくつかの実施の形態においてスイッチバイアス端子336により受ける一定のバイアス電圧は、スイッチバイアス端子344により受ける一定のバイアス電圧と同じであってもよい。
【0036】
いくつかの実施の形態において、入力端子312と出力端子316の間に接続される複数のトランジスタのスタック(例えば、複数の直列FET)に直列トランジスタ304が含まれうることが理解されるであろう。追加的または代替的に、入力端子312とグランド端子320の間に接続される複数のトランジスタのスタック(例えば、複数の分岐FET)に分岐トランジスタ308が含まれてもよい。
【0037】
図4は、いくつかの実施の形態に係る無線通信デバイス400の例におけるブロック図を示す。無線通信デバイス400は、一以上のRFパワー増幅器(PA)408を含むRFPAモジュール404を有してもよい。RFPAモジュール404は、一以上のRFPA408と接続される一以上のRFスイッチ412をさらに含んでもよい。RFスイッチ412は、スイッチ回路100,200および/または300と同様であってもよいし、これらを含んでもよい。
【0038】
RFPAモジュール404に加えて、無線通信デバイス400は、少なくとも図示されるように接続されるアンテナ構造414、Tx/Rxスイッチ418、トランシーバ422、メインプロセッサ426、メモリ430を有してもよい。無線通信デバイス400は、送信および受信機能を有するように示されるが、他の実施の形態では、送信または受信機能のみを有する装置を含んでもよい。RFスイッチ412がRFPAモジュール404に含まれるように図示されるが、他の実施の形態において、RFスイッチ412は、RFPAモジュール404に加えて又は代えて、Tx/Rxスイッチ418および/またはトランシーバ422といった無線通信デバイス400の他の構成要素に含まれてもよい。
【0039】
様々な実施の形態において、無線通信デバイス400は、携帯電話、ページングデバイス、パーソナルデジタルアシスタント、テキストメッセージデバイス、ポータブルコンピュータ、デスクトップコンピュータ、基地局、加入者局、アクセスポイント、レーダ、衛星通信デバイスであってもよいし、これらに限定されないRF信号の無線送信/受信が可能な他のいかなるデバイスであってもよい。
【0040】
メインプロセッサ426は、メモリ430に記憶され、無線通信デバイス400の全般的な動作を制御するための基本的なオペレーティングシステムプログラムを実行してもよい。例えば、メインプロセッサ426は、トランシーバ422による信号の受信および信号の送信を制御してもよい。メインプロセッサ426は、メモリ430に常駐する他のプロセスを実行する能力を有してもよく、実行するプロセスの要求に応じてデータをメモリ430に移動させたりメモリ430から移動させたりしてもよい。
【0041】
トランシーバ422は、メインプロセッサ426からの出力用データ(例えば、音声データ、ウェブデータ、Eメール、信号データなど)を受信し、出力用データを表すRF入力(RFin)信号を生成し、RFin信号をRFPAモジュール404に提供してもよい。トランシーバ422はまた、RFPAモジュール404を選択された帯域で動作させ、かつ、フルパワーもしくはバックパワーモードのいずれかで動作させるように制御してもよい。いくつかの実施の形態において、トランシーバ422は、直交周波数分割多重変調(OFDM)を用いるRFin信号を生成してもよい。
【0042】
RFPAモジュール404は、本書で記載されるように、RFin信号を増幅してRF出力(RFout)信号を提供してもよい。RFout信号は、Tx/Rxスイッチ418に送られた後、無線(OTA;over-the-air)伝送のためにアンテナ構造414に送られてもよい。いくつかの実施の形態において、Tx/Rxスイッチ418は、デュプレクサを含んでもよい。同様の手法において、トランシーバ422は、Tx/Rxスイッチ418を通じてアンテナ構造414からの入力用OTA信号を受信してもよい。トランシーバ422は、入力用信号を処理してさらなる処理のためにメインプロセッサ426に送ってもよい。
【0043】
一以上のRFスイッチ412は、無線通信デバイス400の構成要素へのRF信号、これら構成要素からのRF信号、および/または、これら構成要素内のRF信号(例えば、RFin信号および/またはRFout信号)を選択的に通過させるために用いられてもよい。
【0044】
様々な実施の形態において、アンテナ構造414は、例えば、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、パッチアンテナ、ループアンテナ、マイクロストリップアンテナ、または、RF信号のOTA伝送/受信に適したいかなる他の種類のアンテナを含む、一以上の指向性および/または無指向性アンテナを含んでもよい。
【0045】
当業者であれば、無線通信デバイス400が例示として与えられ、単純化および明確化のために、実施の形態の理解に必要な限りにおいて、無線通信デバイス400の限られた構成および動作のみが図示および記載されていることが理解されよう。様々な実施の形態は、特定の要求にしたがって、無線通信デバイス400に関連した任意の適切なタスクを実行するいかなる適切な構成要素または構成要素の組み合わせを考慮する。さらに言えば、無線通信デバイス400は、実施の形態が実施されうるデバイスの種類を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されよう。
【0046】
本開示は、上述の実施の形態の観点から示されたが、本開示の範囲を逸脱しない限りにおいて、同様の目的を実現すると考えられるさまざまな代替的および/または等価な実施の形態により、上述した特定の実施の形態が置換されてもよいことは、当業者によって理解されるであろう。当業者であれば、本開示によって示された内容が、様々な実施の形態として実施されてもよいことは、すぐに理解されるであろう。本記載は、制限的であるとみなされるのではなく、例示的であるとみなされることを意図する。
【外国語明細書】