【解決手段】発振器は、第1直線状部と、第1直線状部と平行な第2直線状部を少なくとも有するループ状のスロットライン11が形成された基板1と、第1直線状部においてスロットライン11と交差して基板に設けられた第1負性抵抗素子20と、第2直線状部においてスロットラインと交差して基板に設けられた第2負性抵抗素子30と、を備え、第1負性抵抗素子20が設けられた位置と、第2負性抵抗素子30が設けられた位置との間のスロットライン11の長さが、発振信号の周波数の波長に等しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11は、従来のガンダイオード発振器1100の構成を示す図である。ガンダイオード発振器1100には、基板1110に形成されたスロットライン1120と交差するガンダイオード1130及びガンダイオード1140が装荷されている。スロットライン1120の周長は、発振信号の周波数の波長に等しく、ガンダイオード発振器1100においては、
図11の矢印に示す向きの発振波動場(以下、電界という)が生じる。
【0005】
ガンダイオード発振器1100においては、ガンダイオード1130とガンダイオード1140との間の2箇所における電界の向きが逆向きである。このように、複数の位置における電界の位相、振幅及び向きが同一ではなく、時空間軸において一様な電界が生じないので、所定の向きに電磁放射をさせることはできなかった。したがって、複数のガンダイオード発振器1100を2次元に配置して相互同期させる発振器アレーを構成することが困難であった。
【0006】
図12は、従来のファブリペロー共振器を用いた多素子発振器1200の構成を示す図である。多素子発振器1200は、ガンダイオードが装荷された発振器を含む複数のホーンアンテナ91と、ホーンアンテナ91から出力される発振信号を反射するミラー92と、発振信号の一部を透過するハーフミラー93とを備える。複数のホーンアンテナ91から出力される発振信号が、ミラー92で反射された後に干渉し合うことにより、それぞれのホーンアンテナ91から出力される発振信号の位相が同期し、位相が同期した発振信号の電力が合成されることにより、所定の向きに電磁放射することができる。
【0007】
しかしながら、多素子発振器1200においては、複数のホーンアンテナ91や複数の金属導波路が必要になるので、構成が複雑になり、小型化及び低コスト化が困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、所定の向きに高周波発振信号を放射することを可能にする発振器及び発振器アレーの小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様においては、発振信号を出力する発振器であって、第1直線状部と、前記第1直線状部と平行な第2直線状部を少なくとも有するループ状のスロットラインが形成された基板と、前記第1直線状部において前記スロットラインと交差して前記基板に設けられた第1負性抵抗素子と、前記第2直線状部において前記スロットラインと交差して前記基板に設けられた第2負性抵抗素子と、を備え、前記第1負性抵抗素子が設けられた位置と、前記第2負性抵抗素子が設けられた位置との間の前記スロットラインの長さが、前記発振信号の周波数の波長の整数倍に等しい発振器を提供する。
【0010】
上記の発振器において、前記スロットラインが、前記第1直線状部の一端と前記第2直線状部の一端との間に形成された第1接続部と、前記第1直線状部の他端と前記第2直線状部の他端との間に形成された第2接続部と、を有してもよい。
【0011】
また、上記の発振器において、前記スロットラインが、前記第1直線状部と前記第2直線状部との間に、前記第1負性抵抗素子及び前記第2負性抵抗素子を結ぶ直線に対して第1の側に形成された、互いに平行なk本の第1平行直線状部(ただし、kは偶数)と、前記第1直線状部、前記第2直線状部、及び前記k本の第1平行直線状部を接続するk+1本の第1接続部と、前記第1負性抵抗素子及び前記第2負性抵抗素子を結ぶ直線に対して第1の側と反対の第2の側に形成された、互いに平行なk本の第2平行直線状部と、前記第1直線状部、前記第2直線状部、及び前記k本の第2平行直線状部を接続するk+1本の第2接続部と、を有し、前記第1負性抵抗素子が設けられた位置と、前記第2負性抵抗素子が設けられた位置との間の前記スロットラインの長さが、前記波長の(1+k/2)倍であってもよい。
【0012】
上記の発振器は、前記第1直線状部において前記スロットラインと交差して、前記波長の半分の長さだけ前記第1負性抵抗素子から離れた位置に設けられた第3負性抵抗素子と、前記第2直線状部において前記スロットラインと交差して、前記波長の半分の長さだけ前記第2負性抵抗素子から離れた位置に設けられた第4負性抵抗素子と、をさらに備え、前記第3負性抵抗素子が設けられた位置と、前記第4負性抵抗素子が設けられた位置との間の前記スロットラインの長さが、前記波長の整数倍に等しくてもよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、前記第1直線状部及び前記第2直線状部と平行な方向に、上記の発振器が複数設けられた発振器アレーを提供する。発振器アレーは、前記第1直線状部及び前記第2直線状部と直交する方向に、上記の発振器が複数設けられていてもよい。発振器アレーは、前記第1直線状部及び前記第2直線状部と平行な方向、及び前記第1直線状部及び前記第2直線状部と直交する方向に、上記の発振器が複数設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定の向きに高周波発振信号を放射することを可能にする発振器及び発振器アレーの小型化を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る発振器100の構成を示す図である。発振器100は、n波長の長さのメアンダー形状の線路に負性抵抗回路を設けることにより、時空間軸において一様な共振波動場を形成する。メアンダー形状の線路は、半波長毎に折り返されている。したがって、発振器100を2次元に展開すると、隣接する複数の発振器間での相互同期を実現し、所定の向きに電磁放射させることができる。以下、
図1を参照して、発振器100の構成について詳細に説明する。
【0017】
発振器100は、基板1と、スロットライン11と、ダイオード20と、ダイオード30とを備え、ミリ波又はテラヘルツ波等の高周波発振信号を出力する。
図1(a)は、発振器100の平面図であり、
図1(b)は、発振器100のA−A線概略断面図である。
【0018】
基板1には、基板1に設けられた導体2の一部の領域を除去することにより、第1直線状部と、第1直線状部と平行な第2直線状部を少なくとも有するループ状のスロットライン11が形成されている。スロットライン11は、第1直線状部の一端と第2直線状部の一端との間に形成された第1接続部を有する。また、スロットライン11は、第1直線状部の他端と第2直線状部の他端との間に形成された第2接続部を有する。
図1における第1接続部及び第2接続部は半円状であるが、第1接続部及び第2接続部は、半円以外の楕円等の曲線の一部であってもよい。
【0019】
ダイオード20が設けられた位置と、ダイオード30が設けられた位置との間のスロットライン11の長さは、発振信号の波長λの整数倍に等しい。スロットライン11の周長は、発振器100の発振信号の波長λの整数倍である。
図1に示す発振器100におけるスロットライン11の周長は、波長λの2倍である。
【0020】
ダイオード20は、第1直線状部においてスロットライン11と交差して基板に設けられた第1負性抵抗素子である。ダイオード30は、第2直線状部においてスロットライン11と交差して基板に設けられた第2負性抵抗素子である。ダイオード20及びダイオード30は、例えばガンダイオードである。ダイオード20及びダイオード30のアノード端子は、スロットライン11の内側にあり、ダイオード20及びダイオード30のカソード端子は、スロットライン11の外側にある。
【0021】
ダイオード20は、第1直線状部の中心位置に設けられており、ダイオード30は、第2直線状部の中心位置に設けられている。スロットライン11の内側にバイアス電圧を印加することにより、ダイオード20及びダイオード30が発振し、発振器100が発振信号を出力する。
【0022】
図1(a)におけるダイオード20と位置aとの間の長さ、ダイオード30と位置aとの長さ、ダイオード20と位置bとの間の長さ、及びダイオード30と位置bとの長さは、それぞれ半波長λ/2に等しい。この場合、負性抵抗素子としてのダイオード20とダイオード30との間で発振波動が発生する。スロットライン11は、ダイオード20とダイオード30との間の長さが1波長λに等しく、ダイオード20及びダイオード30から半波長の位置でメアンダー状に折り返されている。その結果、スロットライン11上の波動がY方向にそろって、電磁放射が実現される。
【0023】
例えば、
図1(a)において矢印で示すある瞬間における電界の向きが示すように、ダイオード20と位置aとの間における電界の向きは、スロットライン11の外側への向きとなり、ダイオード30と位置aとの間における電界の向きは、スロットライン11の内側への向きとなる。すなわち、ダイオード20と位置aとの間における電界の向き、及びダイオード30と位置aとの間における電界の向きとは、等しくダイオード30からダイオード20への向き(以下、「Yの向き」という)となる。また、ダイオード20と位置aとの間における電界の位相及び振幅は、ダイオード30と位置aとの間における電界の位相及び振幅と等しい。
【0024】
同様に、ダイオード20と位置bとの間における電界の向きは、スロットライン11の外側への向きとなり、ダイオード30と位置bとの間における電界の向きは、スロットライン11の内側への向きとなる。すなわち、ダイオード20と位置bとの間における電界の向き、及びダイオード30と位置bとの間における電界の向きは、共にYの向きとなる。また、ダイオード20と位置bとの間における電界の位相及び振幅は、ダイオード30と位置bとの間における電界の位相及び振幅と等しい。
【0025】
スロットライン11を構成する第1直線状部と第2直線状部とは電界結合して相互同期することにより、時空間軸において一様な電界を発生する。発生する電界の向きがYとなるので、発振器100は、発振信号を、基板1の面と直交する方向(以下、Z方向という)に放射するアンテナとしても機能する。
【0026】
なお、上記の説明においては、ダイオード20が設けられた位置と、ダイオード30が設けられた位置との間のスロットラインの長さが、発振信号の周波数λの波長に等しい場合について説明したが、これに限らない。ダイオード30が設けられた位置との間のスロットラインの長さが、波長の整数倍であり、半波長毎にメアンダー状に折り返されていれば、電界の向きはYの方向に揃うので、発振器100は、発振信号をZ方向に放射することができる。
【0027】
図2は、第1の実施形態に係る他の例である発振器200の構成を示す図である。発振器200は、スロットライン11の代わりにスロットライン12が基板1に形成されている点で発振器100と異なり、他の点で同じである。スロットライン12は、第1接続部及び第2接続部の部分が直線状である点で、スロットライン11と異なるが、ダイオード20と位置aとの長さ、ダイオード30と位置aとの長さ、ダイオード20と位置bとの長さ、ダイオード30と位置bとの長さが、それぞれλ/2と等しい点では、スロットライン11と同じである。発振器200においても、ダイオード20と位置aとの間、ダイオード30と位置aとの間、ダイオード20と位置bとの間、ダイオード30と位置bとの間のそれぞれにおける電界の向きがYの向きになるので、発振信号をZ方向に放射することができる。
【0028】
以上のとおり、本実施形態に係る発振器100及び発振器200は、発振信号を所定の向きに放射できる。また、発振器100及び発振器200は、閉ループスロット共振回路構造を有するので、複数のダイオードへのバイアス電圧を一括して供給することもできる。
【0029】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係る発振器300の構成を示す図である。発振器300は、スロットライン11の代わりにスロットライン13が基板1に形成されている点で発振器100と異なり、他の点で同じである。スロットライン13は、ダイオード20が交差する第1直線状部とダイオード30が交差する第2直線状部との間において、ダイオード20及びダイオード30を結ぶ直線Lに対して第1の側(右側)に形成された、互いに平行な2本の第1平行直線状部を含む。また、スロットライン13は、第1直線状部の一端、第2直線状部の一端、及び2本の第1平行直線状部を接続する3本の第1接続部を含む。すなわち、スロットライン13は、メアンダーループ形状をしている。
【0030】
また、スロットライン13は、ダイオード20及びダイオード30を結ぶ直線に対して第1の側と反対の第2の側(左側)に形成された、互いに平行な2本の第2平行直線状部を含む。さらに、スロットライン13は、第1直線状部の他端、第2直線状部の他端、及び2本の第2平行直線状部を接続する3本の第2接続部を含む。
【0031】
ダイオード20が設けられた位置とダイオード30が設けられた位置との間のスロットライン13の長さは、波長の2倍であり、スロットライン13の周長は波長の4倍である。具体的には、ダイオード20と位置aとの長さ、位置aと位置cとの長さ、位置cと位置eとの長さ、位置eとダイオード30との長さ、ダイオード30と位置fとの長さ、位置fと位置dとの長さ、位置dと位置bとの長さ、位置bとダイオード20との長さは、それぞれλ/2である。
【0032】
この場合、それぞれの第1平行直線状部及び第2平行直線状部におけるある瞬間における電界の向きは、Yの向きとなる。したがって、発振器300においては、第1直線状部、第2直線状部、及び合計4本の平行直線状部から同位相、同振幅で発振信号が放射されるので、発振器100及び発振器200よりもアンテナ利得が向上し、放射される発振信号の強度を大きくすることができる。
【0033】
図4は、第2の実施形態に係る他の例である発振器400の構成を示す図である。発振器400は、スロットライン13の代わりにスロットライン14が基板1に形成されている点で発振器300と異なり、他の点で同じである。スロットライン14は、ダイオード20が交差する第1直線状部とダイオード30が交差する第2直線状部との間において、ダイオード20及びダイオード30を結ぶ直線Lに対して右側に形成された、互いに平行な4本の第1平行直線状部を含む。また、スロットライン14は、第1直線状部の一端、第2直線状部の一端、及び4本の第1平行直線状部を接続する5本の第1接続部を含む。
【0034】
また、スロットライン14は、ダイオード20及びダイオード30を結ぶ直線に対して左側に形成された、互いに平行な4本の第2平行直線状部を含む。さらに、スロットライン14は、第1直線状部の他端、第2直線状部の他端、及び4本の第2平行直線状部を接続する5本の第2接続部を含む。
【0035】
このように、発振信号を放射する平行直線状部の数は、任意の数とすることができる。すなわち、スロットライン14は、ダイオード20が交差する第1直線状部とダイオード30が交差する第2直線状部との間において、ダイオード20及びダイオード30を結ぶ直線に対して第1の側に形成された、互いに平行なk本の第1平行直線状部(ただし、kは偶数)を含むとともに、第1直線状部、第2直線状部、及びk本の第1平行直線状部を接続するk+1本の第1接続部を含んでもよい。また、スロットライン14は、ダイオード20及びダイオード30を結ぶ直線に対して第1の側と反対の第2の側に形成された、互いに平行なk本の第2平行直線状部を含むとともに、第1直線状部、第2直線状部、及びk本の第2平行直線状部を接続するk+1本の第2接続部を含んでもよい。ダイオード20が設けられた位置とダイオード30が設けられた位置との間のスロットライン14の長さは、波長λの(1+k/2)倍である。このようなスロットライン14を基板1に形成することで、発振信号を所定の向きに放射させることができる発振器を構成することができる。
【0036】
<第3の実施形態>
図5は、第3の実施形態に係る発振器500の構成を示す図である。発振器500は、第3負性抵抗素子としてのダイオード40及び第4負性抵抗素子としてのダイオード50をさらに備えるとともに、スロットライン11の代わりにスロットライン15が基板1に形成されている点で発振器100と異なる。ダイオード40及びダイオード50は、例えばガンダイオードである。
【0037】
ダイオード40は、第1直線状部においてスロットラインと交差して、波長λの半分の長さλ/2だけダイオード20から離れた位置に設けられている。また、ダイオード50は、第2直線状部においてスロットラインと交差して、波長λの半分の長さλ/2だけダイオード30から離れた位置に設けられている。ダイオード40が設けられた位置と、ダイオード50が設けられた位置との間のスロットラインの長さのうち短い方の長さは、波長λに等しい。ダイオード20と位置aとの間の長さ、ダイオード30と位置aとの間の長さ、ダイオード40と位置bとの間の長さ、ダイオード50と位置bとの間の長さは、それぞれλ/2である。
【0038】
ダイオード20、ダイオード30、ダイオード40及びダイオード50の位置とスロットライン15との位置関係が上記のようになっている場合、ダイオード20と位置aとの間、ダイオード30と位置aとの間、ダイオード30とダイオード50との間、ダイオード50と位置bとの間、ダイオード40と位置bとの間、及びダイオード20とダイオード40との間における電界の向きは、全てYの向きとなる。発振器500は、4個のガンダイオードを備えるので、スロットライン15の内側にバイアス電圧を印加することにより、発振器100、発振器200、発振器300及び発振器400よりも大きなパワーで、Z方向に発振信号を放射することができる。
【0039】
<第4の実施形態>
図6(a)は、第4の実施形態に係る発振器600の構成を示す図である。上記の実施形態における発振器は、負性抵抗素子としてガンダイオードを備えていたが、本実施形態に係る発振器600は、負性抵抗回路60及び負性抵抗回路70を備える。
図6(b)は、負性抵抗回路60の構成を示す図である。負性抵抗回路60及び負性抵抗回路70は、例えば、HEMTのような3端子素子により構成される回路である。負性抵抗回路60及び負性抵抗回路70は、負性抵抗MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)であってもよい。
【0040】
スロットライン16の周長は波長λに等しく、負性抵抗回路60と負性抵抗回路70との間の長さはλ/2である。発振器600において、負性抵抗回路60の位置及び負性抵抗回路70の位置において電界強度が最大になり、電界の向きはYの向きである。このように、負性抵抗素子としてHEMT等の三端子素子を用いても、所定の向きに発振信号を放射する発振器を構成することができる。
【0041】
<第5の実施形態>
図7は、第5の実施形態に係る発振器アレー700の構成を示す図である。発振器アレー700は、複数の発振器100(発振器100−1、発振器100−2、発振器100−3、発振器100−4、発振器100−5)を備える。発振器アレー700においては、第1直線状部及び第2直線状部と平行な方向、及び当該方向に直交する方向に、発振器100が複数設けられている。
【0042】
具体的には、発振器100−1及び発振器100−4、並びに発振器100−2及び発振器100−5は、第1の方向(X方向)に並んで、同じ向きに配置されている。発振器100−1及び発振器100−2、並びに発振器100−4及び発振器100−5は、第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)に並んで、同じ向きに配置されている。
【0043】
発振器100−3を介して相互結合したそれぞれの発振器100の発振信号の電界は時空間軸において一様であり、全てYの向きであり、発振器アレー700は、複数の発振器100から発振信号を同じ向きに同時に放射することができる。具体的には、発振器100−1は、発振器100−3を介して発振器100−2からの電磁界の影響を受け、発振器100−1の発振信号の位相は、発振器100−2の発振信号の位相に同期する。同様に、発振器100−4は、発振器100−3を介して発振器100−5からの電磁界の影響を受け、発振器100−4の発振信号の位相は、発振器100−5の発振信号の位相に同期する。
【0044】
このように、発振器100−3を介してすべての発振器が電磁結合するために、相互同期した発振を実現することができる。
【0045】
このように、発振器アレー700においては、発振信号を同一の向きに放射する複数の発振器100が、互いに電磁結合することにより、発振器100の相互同期機能が2次元展開される。その結果、複数の発振器100から構成される発振器アレー700の全体の相互同期が実現し、同じ位相の発振信号を同じ向きに放射することができる。その結果、発振器アレー700は、簡易な構成で鋭いビーム放射が可能な、ハイパワーで低雑音のミリ波帯及び短ミリ波帯等の超高周波信号源として利用することができる。また、発振器アレー700においては、各ダイオードを分散して配置できるので、発熱処理を要するガンダイオードを用いる場合、実装上の優位性がある。
【0046】
<第6の実施形態>
図8は、第6の実施形態に係る発振器アレー800の構成を示す図である。発振器アレー800は、
図3に示した発振器300を複数備える。複数の発振器300は、X方向及びY方向に並べられている。発振器アレー800においても、発振器アレー700における複数の発振器100と同様に、複数の発振器300が、X方向およびY方向において互いに電磁結合することで、それぞれの発振器300が出力する発振信号の位相が同期する。
【0047】
<第7の実施形態>
図9は、第7の実施形態に係る発振器900の構成を示す図である。発振器900は、
図3に示した発振器300におけるダイオード20及びダイオード30の代わりに、負性抵抗を形成するHEMT等の3端子素子により構成される負性抵抗回路60及び負性抵抗回路70を備える。スロットライン17の周長は、波長λの5倍である。
【0048】
具体的には、位置aと位置cとの間の長さ、及び位置bと位置dとの間の長さは、発振器300と同様に2λである。位置aと負性抵抗回路60との間の長さ、負性抵抗回路60と位置bとの間の長さ、位置cと負性抵抗回路70との間の長さ、負性抵抗回路70と位置dとの間の長さは、それぞれλ/4である。この第7の実施形態は、第4の実施形態に係る発振器600におけるスロットライン16の長さを1波長から5波長に伸ばしてアンテナ利得の向上を図る構成である。
【0049】
ガンダイオードと異なり、HEMTなどの3端子素子で構成する負性抵抗の装荷部は、一般に発振電界が最大ポイントとなる。そこで、スロットライン17の長さを伸ばす場合、負性抵抗回路60及び負性抵抗回路70の近傍のスロットライン上の電界が左右逆向きとなるように構成することで、この領域の放射機能を抑圧している。このようにすることで、
図9に示すように、スロットライン17の発振波動場は、時空間軸の一様性を確保することができる。
【0050】
位置aと位置cとの間の4本の直線状の部分及び位置bと位置dとの間の4本の直線状の部分における電界の向きは、Yの向きである。したがって、発振信号は、Y方向の直線偏波としてZ方向に放射される。
【0051】
図10は、複数の発振器900を備える発振器アレー1000の構成を示す図である。発振器アレー1000においては、第1の方向及び第2の方向に複数の発振器900が配置されており、複数の発振器900が、互いに電磁結合している。その結果、それぞれの発振器900の発振信号の位相が同期し、Y方向の直線偏波がZ方向に放射される。
【0052】
上記の各実施形態で説明した発振器及び発振器アレーを、ファブリペロー共振系や可変反射係数の反射鏡等と組み合わせることによって、周波数可変制御やFSK等のRF直接変調機能を実現することができる。
【0053】
以上のとおり、本発明によれば、ミリ波、短ミリ波帯の高周波信号帯で、簡易で低コストの構成で、多素子同期発振による低雑音化やハイパワー化を実現できる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。例えば、各実施形態における波長が、負性抵抗素子や負性抵抗回路の高調波発振周波数の波長であってもよい。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0055】
例えば、上記の実施形態における直線状部は、厳密な意味での直線である必要はなく、概ね特定の方向の線分であればよい。また、上記の実施形態における接続部は、任意の曲線であればよい。