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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-213401(P2015-213401A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】端子付回路基板
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20151030BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   H02G3/16 A
   B60R16/02 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-95646(P2014-95646)
(22)【出願日】2014年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】堺 達郎
(72)【発明者】
【氏名】蜂矢 賀一
(72)【発明者】
【氏名】永井 護
(72)【発明者】
【氏名】上 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】石 文杰
(72)【発明者】
【氏名】岩田 誠
【テーマコード(参考)】
5G361
【Fターム(参考)】
5G361BA01
5G361BB01
5G361BC03
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で浸水後の車両火災の発生を防止することができる、新規な構造の端子付回路基板を提供すること。
【解決手段】複数の端子12,14が回路基板に立設されてなる端子付回路基板10であって、複数の端子12,14が、電源ラインに接続されたプラス側端子12と、グランドラインに接続されたマイナス側端子14を含んで構成されており、隣接配置されたプラス側端子12とマイナス側端子14の間に仕切り壁18が設けられている一方、仕切り壁18の底面44が回路基板16に圧接された状態で、仕切り壁18が回路基板16に立設されているようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子が回路基板に立設されてなる端子付回路基板であって、
前記複数の端子が、電源ラインに接続されたプラス側端子と、グランドラインに接続されたマイナス側端子を含んで構成されており、
隣接配置された前記プラス側端子と前記マイナス側端子の間に仕切り壁が設けられている一方、前記仕切り壁の底面が前記回路基板に圧接された状態で、前記仕切り壁が前記回路基板に立設されている
ことを特徴とする端子付回路基板。
【請求項2】
前記仕切り壁が複数の平板部が連結されて構成されており、前記仕切り壁が隣接配置された前記プラス側端子と前記マイナス側端子の少なくとも一方を囲むように配設されている請求項1に記載の端子付回路基板。
【請求項3】
前記仕切り壁の前記底面が、未装着時に前記回路基板に向かって円弧状に突出されている請求項1又は2に記載の端子付回路基板。
【請求項4】
前記仕切り壁の前記底面に、長手方向に延びるスリットが開口形成されている請求項3に記載の端子付回路基板。
【請求項5】
前記仕切り壁に嵌合突起が突設されている一方、前記回路基板に前記嵌合突起が嵌合される嵌合孔が貫設されており、前記嵌合突起が前記嵌合孔に嵌合されることで、前記仕切り壁の前記底面が前記回路基板に対して圧接状態に保持されるようになっている請求項1〜4の何れか1項に記載の端子付回路基板。
【請求項6】
前記複数の端子が台座によって支持されている一方、前記仕切り壁に突設された係合突起が前記台座に設けられた係合孔に係合されることにより、前記仕切り壁の前記底面が前記回路基板に対して圧接状態に保持されるようになっている請求項1〜4の何れか1項に記載の端子付回路基板。
【請求項7】
前記仕切り壁の上面が前記台座の台座本体の下面よりも高い位置になるように構成されている請求項6に記載の端子付回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電気接続箱等の内部に収容される端子付回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用電気接続箱の内部には、プリント基板のプリント配線に接続された複数の端子が立設されてなる端子付プリント基板や、布線絶縁板に複数の端子が立設されてなる端子付布線絶縁板等の端子付回路基板が、内部回路として収容されている。そして、バッテリーから各種負荷への電源分配が、端子付回路基板により構成された内部回路を介してスペース効率よく行われるようになっている。
【0003】
ところで、このような電気接続箱の内部に水が浸入すると、端子付回路基板のショート等が発生するおそれがあるため、電気接続箱には、車両使用時に想定される水かかりを考慮したある程度の防水対策がなされている。例えば、特許第4585980号公報(特許文献1)に記載のように、電気接続箱のケースの隙間をシール材等で封止したり、ケース内の適所に排水斜面を設けて内部に浸入した水の排水を促すようにしたものが知られている。
【0004】
しかしながら、従来の電気接続箱の防水構造は、あくまで車両使用時を想定したものであることから、東日本大震災の如き災害時に津波や洪水等で浸水する想定外のケースにおいて、十分な防水効果が発揮され得ないことは当然である。そして、想定外の浸水後に、車両のバッテリー付近の電気接続箱の内部に収容された端子付回路基板が発火し車両火災が発生する事例が多数報告され、問題視されるようになってきている。
【0005】
このような想定外の浸水後に、端子付回路基板が発火しないよう何等かの対策を考案することは急務であるが、津波や洪水等による浸水まで想定した防水構造を電気接続箱に施すことは、電気接続箱の大型化やコスト高を招くばかりでなく、通常の車両使用時における電気接続箱の機能に支障を来すおそれもあり、現実的な対策とは言い難い。それ故、浸水後に端子付回路基板の発火を防止し得る有効な対策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4585980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、簡易な構造で浸水後の車両火災の発生を防止することができる、新規な構造の端子付回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両浸水後の発火原因について本発明者が鋭意研究した結果、特にバッテリーに直結された電気接続箱内の回路基板において、電源ラインに直接又は間接的に接続された銅製のプラス側端子とグランドラインに直接又は間接的に接続された銅製のマイナス側端子が隣接配置された部位において、発火が起こることを見出した。すなわち、車両が塩水等の電解質を含んだ水に浸水した際には、比較的電位差の大きなプラス側端子金具とマイナス側端子金具の間で電気分解が生じ、陽極に銅の酸化物である亜酸化銅(Cu2 O)が析出する。水が引いた際に、析出した亜酸化銅がプラス側端子とマイナス側端子の間に堆積することにより、両者の間に亜酸化銅の堆積物による短絡路が形成され、ある程度温度が上昇した際に亜酸化銅が低抵抗化することでショートが発生する。その際の発熱により絶縁板が燃焼することにより火災が発生することを新たに見出したのである。そして、かかる新たな見地に基づき本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
本発明の第一の態様は、複数の端子が回路基板に立設されてなる端子付回路基板であって、前記複数の端子が、電源ラインに接続されたプラス側端子と、グランドラインに接続されたマイナス側端子を含んで構成されており、隣接配置された前記プラス側端子と前記マイナス側端子の間に仕切り壁が設けられている一方、前記仕切り壁の底面が前記回路基板に圧接された状態で、前記仕切り壁が前記回路基板に立設されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、隣接配置されたプラス側端子とマイナス側端子の間に仕切り壁が設けられ、しかも仕切り壁が回路基板に圧接状態で立設されている。従って、浸水時に隣接するプラス側端子とマイナス側端子の間で電気分解が生じてプラス側端子側の回路基板上に亜酸化銅が堆積したとしても、プラス側端子とマイナス側端子の間に立設された仕切り壁の底面が回路基板に圧接されており、回路基板上に堆積した亜酸化銅がマイナス側端子に至ることが阻止されている。それ故、回路基板上に堆積した亜酸化銅がプラス側端子とマイナス側端子の間を繋ぐ短絡路を形成しショートすることが有利に防止されるのである。このように、既存の端子付回路基板の構造に何らの変更を加えることなく、隣接配置されたプラス側端子とマイナス側端子の間に仕切り壁を設けるという極めて簡単な構造で、浸水時の端子付回路基板の発火、ひいては車両火災の発生を防ぐことができるのである。
【0011】
なお、仕切り壁は、回路基板に圧接状態で立設されるように回路基板よりも低弾性の部材で形成されていればよく、例えば、ゴムやエラストマーや、合成樹脂等により形成することができる。
【0012】
また、端子付回路基板には、プリント配線に接続された複数の端子が立設されたプリント基板や、布線された単芯線に圧接された複数の端子が立設された布線絶縁板が含まれる。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記仕切り壁が複数の平板部が連結されて構成されており、前記仕切り壁が隣接配置された前記プラス側端子と前記マイナス側端子の少なくとも一方を囲むように配設されているものである。
【0014】
本態様によれば、仕切り壁が複数の平板部から構成されており、仕切り壁が隣接配置されたプラス側端子とマイナス側端子の少なくとも一方を囲むように配設されている。従って、浸水後に仮に亜酸化銅が析出した場合でも、隣接配置されたプラス側端子とマイナス側端子の少なくとも一方が仕切り壁によって囲まれていることから、回路基板上に堆積した亜酸化銅が、プラス側端子とマイナス側端子の少なくとも一方に接近することが確実に阻止されている。その結果、プラス側端子およびマイナス側端子間を結んで短絡路が形成されることを、確実に防止して、車両火災の発生を一層有利に防止することができる。
【0015】
なお、仕切り壁は隣接配置されたプラス側端子とマイナス側端子の少なくとも一方を囲むように配設されていればよく、例えば、上面視でL字形状やコの字形状やロの字形状や略円弧状の多角形状等の任意の形状が選択可能である。
【0016】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記仕切り壁の前記底面が、未装着時に前記回路基板に向かって円弧状に突出されているものである。
【0017】
本態様によれば、仕切り壁の底面が回路基板に向かって円弧上に突出されている。従って、一層確実に仕切り壁の底面を回路基板に対して圧接状態で密接させることができる。それ故、浸水後に仮に亜酸化銅が析出した場合でも、回路基板上にプラス側端子およびマイナス側端子間を結んで短絡路が形成されることを一層確実に防止して、車両火災の発生を一層有利に防止することができる。
【0018】
本発明の第四の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記仕切り壁の前記底面に、長手方向に延びるスリットが開口形成されているものである。
【0019】
本態様によれば、仕切り壁の底面に長手方向に延びるスリットが開口形成されている。従って、仕切り壁の底面がより一層容易に弾性変形可能とされることから、少ない弾性変形力で一層確実に仕切り壁を回路基板に対して圧接状態で立設させることができる。それ故、浸水後に仮に亜酸化銅が析出した場合でも、回路基板上にプラス側端子およびマイナス側端子間を結んで短絡路が形成されることをより一層確実に防止して、車両火災の発生を一層有利に防止することができる。
【0020】
本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記仕切り壁に嵌合突起が突設されている一方、前記回路基板に前記嵌合突起が嵌合される嵌合孔が貫設されており、前記嵌合突起が前記嵌合孔に嵌合されることで、前記仕切り壁の前記底面が前記回路基板に対して圧接状態に保持されるようになっているものである。
【0021】
本態様によれば、仕切り壁に設けた嵌合突起を回路基板の嵌合孔に直接嵌合させるという簡単な構造で、仕切り壁の底面を安定して回路基板に圧接させて立設状態に保持することができる。
【0022】
本発明の第六の態様は、前記第一乃至第四の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記複数の端子が台座によって支持されている一方、前記仕切り壁に突設された係合突起が前記台座に設けられた係合孔に係合されることにより、前記仕切り壁の前記底面が前記回路基板に対して圧接状態に保持されるようになっているものである。
【0023】
本態様によれば、仕切り壁に突設された係合突起が台座に設けられた係合孔に係合されることで、仕切り壁の底面を回路基板に対して圧接状態に保持することができる。従って、基板に嵌合孔を設けるスペースがない場合でも、台座を巧く利用して、仕切り壁の底面を回路基板に圧接することができるのである。なお、係合突起と係合孔の係合位置が、回路基板上に仕切り壁が圧接状態で保持されるように設定されている。
【0024】
本発明の第七の態様は、前記第六の態様に記載のものにおいて、前記仕切り壁の上面が前記台座の台座本体の下面よりも高い位置になるように構成されているものである。
【0025】
本態様によれば、仕切り壁の上面が台座本体の下面よりも高い位置になるように構成されている。浸水後にプラス側端子に亜酸化銅が析出するのは、台座本体の下面よりも低い場所であることから、仕切り壁回路基板の高さを台座本体の下面を超える高さにすることで、プラス側端子およびマイナス側端子間を結んで短絡路が形成されることが仕切り壁によってより一層確実に防止される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、浸水時に隣接するプラス側端子とマイナス側端子の間で電気分解が生じてプラス側端子側の回路基板上に亜酸化銅が堆積したとしても、プラス側端子とマイナス側端子の間に立設された仕切り壁の底面が回路基板に圧接されており、回路基板上に堆積した亜酸化銅がマイナス側端子に至ることが阻止されている。それ故、堆積した亜酸化銅がプラス側端子とマイナス側端子の間を繋ぐ短絡路を形成しショートすることが有利に防止される。このように、既存の端子付回路基板の構造に何らの変更を加えることなく、隣接配置されたプラス側端子とマイナス側端子の間に仕切り壁を設けるという極めて簡単な構造で、浸水時の端子付回路基板の発火、ひいては車両火災の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第一の実施形態としての端子付回路基板を示す斜視図。
図2図1におけるII−II断面拡大図。
図3図1に示した仕切り壁の側面拡大図(未装着時)。
図4図4に示した仕切り壁の底面拡大図。
図5】本発明の第二の実施形態としての端子付回路基板の平面図。
図6】本発明の第三の実施形態としての端子付回路基板の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1〜4に、本発明の第一の実施形態としての端子付回路基板10を示す。図1に示されているように、端子付回路基板10は、電源ラインに接続された2個のプラス側端子12とグランドラインに接続された8個のマイナス側端子14が回路基板16上に立設されてなる構造とされている。加えて、隣接配置されたプラス側端子12とマイナス側端子14の間には仕切り壁18が設けられている。なお、理解を容易とするために、図1において仕切り壁18を仮想線で示している。また、以下の説明において、上方とは、図2中の上方、下方とは、図2中の下方を言うものとする。
【0030】
2個のプラス側端子12と8個のマイナス側端子14はそれぞれ、合成樹脂製の台座20,22に圧入固定された状態で回路基板16上に支持されている。より詳細には、台座20,22はいずれも、図1に示されているように、略矩形ブロック状の台座本体24,26と、台座本体24,26の四隅から下方に向かって突出する脚部28から構成されている。
【0031】
一方、プラス側端子12とマイナス側端子14はいずれも平板状とされており、例えば銅板等の表面に錫等のめっきが施された金属板をプレス打ち抜き加工することにより、形成されている。プラス側端子12はマイナス側端子14に比べて数が少なく、従ってより多くの電流が流れることから、プラス側端子12はマイナス側端子14に比べて幅広に形成されている。プラス側端子12とマイナス側端子14の長さ方向の一方の側(図1中、下側)にはそれぞれ、リード部30が形成されている一方、プラス側端子12とマイナス側端子14の長さ方向の他方の側(図1中、上側)にはそれぞれ、リード部30よりも幅広の接続部32が形成されている。
【0032】
なお、プラス側端子12とは電源ラインであるバッテリーのプラス端子に直接接続されているものの他、他部材を介して間接的に接続されているものも含む。また、マイナス側端子14とは、グランドラインであるバッテリーのマイナス端子に直接接続されているものの他、他部材を介して間接的に接続されているものも含む。要するに、電位差を有する隣接配置された2種類の端子によって、プラス側端子12とマイナス側端子14が構成されるのである。例えば、プラス側端子12には、12Vの他、24Vや48Vといった電圧が印加される端子や、12V以下の電圧が印加される端子も含まれる。また、マイナス側端子14には、0Vの電圧が印加される端子の他、プラス側端子12よりも低い0V以上の電圧が印加される端子も含まれる。本実施形態では、プラス側端子12に12Vの電圧が印加され、マイナス側端子14に0Vの電圧が印加されている。
【0033】
回路基板16は、ガラスエポキシ樹脂などの公知の絶縁材料で形成された略矩形平板状の絶縁基板において、その表層(表面34および裏面36)や内層に図示しないプリント配線を設けたものである。また、図1に示されているように、回路基板16には、プラス側端子12とマイナス側端子14のリード部30が挿通される略円形断面形状のスルーホール38と、後述する仕切り壁18の嵌合突起46が挿通嵌合される嵌合孔40、が上下方向に向かって貫設されている。
【0034】
そして、このような構造とされた回路基板16のスルーホール38に対して、上方から台座20,22に支持されたプラス側端子12とマイナス側端子14のリード部30が挿入される。プラス側端子12とマイナス側端子14のリード部30のスルーホール38への差し込み量は、台座20,22に設けられた4本の脚部28が回路基板16の表面34に当接されることで規定されるようになっている。
【0035】
かかるスルーホール38への挿入の際には、プラス側端子12とマイナス側端子14のリード部30は、その先端部が回路基板16の裏面36側から突出した状態で位置決め保持されるようになっている。そして、図示しない半田付けにより、かかるリード部30がスルーホール38に対して固定されると共に、回路基板16の図示しないプリント配線と各端子12,14が導通されるようになっている。なお、各端子12,14の接続部32は、例えば図示しない相手側のコネクタ端子と接続されるようになっていることから、プラス側端子12とマイナス側端子14の台座20,22の台座本体24,26の下面42から下方に突出する部分以外の箇所は、台座20,22の台座本体24,26や相手側のコネクタのハウジングによって覆われている。
【0036】
仕切り壁18は、図1〜4に示されているように略矩形平板状とされており、例えばゴムやエラストマーや合成樹脂等の回路基板16よりも低弾性の部材で形成されている。また、図3に示されているように、仕切り壁18の底面44は、未装着時において回路基板16(図3中、下方)に向かって円弧状に突出して形成されている一方、仕切り壁18の底面44には、長さ方向の両端部において嵌合突起46が下方に向かって突設されている。図2及び図3に示されているように、嵌合突起46は、略矢印形状とされており、棒状の延出部48の先端に略逆三角錐形状の突部50が形成された構造とされている。嵌合孔40は、嵌合突起46の延出部48の断面形状よりも大きく且つ嵌合突起46の突部50の基端部の断面形状よりも小さい断面形状を以て形成されている。また、嵌合突起46の延出部48の長さ寸法が嵌合孔40の深さ寸法よりも短くされている。加えて、図4に示されているように、仕切り壁18の底面44には、嵌合突起46間において長さ方向に延びるスリット52が外方(図1〜3中、下方)に開口して形成されている。
【0037】
このような構成とされた仕切り壁18を回路基板16上に装着する。より詳細には、まず、仕切り壁18の嵌合突起46を回路基板16の嵌合孔40に挿入する。この際、嵌合突起46の突部50が弾性変形することにより、嵌合突起46が嵌合孔40に挿入される。引き続き嵌合突起46を嵌合孔40の奥方(図1〜3中、下方)に向かって押し込むことにより、仕切り壁18の底面44の円弧状に突出した長さ方向中央部分が回路基板16に当接する。さらに嵌合突起46を押し込むと、仕切り壁18の底面44が弾性変形して略平らな面となることにより、仕切り壁18の底面44を回路基板16の両方の嵌合孔40の上方開口部の周縁部に当接させることができる。この結果、仕切り壁18の両方の嵌合突起46の突部50が弾性復帰されて、両方の嵌合突起46を嵌合孔40に嵌合することができる。かかる嵌合状態では、嵌合突起46の延出部48の長さ寸法が嵌合孔40の深さ寸法よりも短くされていることから、仕切り壁18の底面44が回路基板16に対して圧接状態に保持されるようになっている。しかも、仕切り壁18の底面44の円弧状に突出した状態へ弾性復帰しようとする力によって、仕切り壁18の底面44が特に長さ方向中央部分において強い圧接力でもって回路基板16に対して圧接状態に保持されている。なお、本実施形態では、仕切り壁18の底面44に長手方向に延びるスリット52が開口形成されていることから、仕切り壁18の底面44をより一層容易に弾性変形可能とすることができるようになっている。それ故、より少ない押込み力でもって仕切り壁18の底面44を略平らな面となるように弾性変形させることができるので、一層確実に仕切り壁18を回路基板16に対して圧接状態で立設させることができる。
【0038】
なお、図1に示されているように、仕切り壁18が回路基板16に装着された状態において、仕切り壁18の上面54の回路基板16からの突出寸法:L1は、台座20,22の台座本体24,26の下面42と回路基板16との離隔寸法:L2よりも大きくされている。すなわち、仕切り壁18の上面54が台座20,22の台座本体24,26の下面42よりも高い位置になるように構成されているのである。プラス側端子12とマイナス側端子14の台座20,22の台座本体24,26の下面42から下方に突出する部分以外の箇所は、台座20,22の台座本体24,26や相手側のコネクタのハウジングによって覆われるようになっていることから、浸水後にプラス側端子12に亜酸化銅が析出する箇所よりも仕切り壁18を高く形成することができる。従って、プラス側端子12およびマイナス側端子14間を結んで短絡路が形成されることが仕切り壁18によってより一層確実に防止されるのである。
【0039】
このような構造とされた端子付回路基板10によれば、隣接配置されたプラス側端子12とマイナス側端子14の間に仕切り壁18が立設され、しかも仕切り壁18が回路基板16に対して圧接状態で保持されている。それ故、浸水時に隣接するプラス側端子12とマイナス側端子14の間で電気分解が生じてプラス側端子12側の回路基板16上に亜酸化銅が堆積したとしても、かかる亜酸化銅がマイナス側端子14に至ることが阻止されている。従って、亜酸化銅によってプラス側端子12とマイナス側端子14の間を繋ぐ短絡路が形成されることが有利に防止される。以上のことから明らかなように、既存の端子付回路基板の構造に何らの変更を加えることなく、隣接配置されたプラス側端子12とマイナス側端子14の間に仕切り壁18を設けるという極めて簡単な構造を採用することで、浸水時の端子付回路基板10の発火、ひいては車両火災の発生を防ぐことができるのである。
【0040】
次に、図5を用いて、本発明の第二の実施形態としての端子付回路基板56について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、仕切り壁58が3つの平板部60が連結されて構成されており、仕切り壁58がマイナス側端子14を囲むように配設されている点に関して、上記実施形態と異なる実施形態を示すものである。
【0041】
より詳細には、本実施形態では、上記実施形態と異なり、仕切り壁58が3つの平板部60を横方向に連結することにより構成されている。そして、図5に示されているように、上面視において、逆コの字状とされており、隣接配置されたプラス側端子12とマイナス側端子14のうちマイナス側端子14を囲むように配設されている。それ故、浸水後に仮に亜酸化銅が析出した場合でも、隣接配置されたプラス側端子12とマイナス側端子14のうちマイナス側端子14が仕切り壁58によって囲まれていることから、回路基板16上に堆積した亜酸化銅が、マイナス側端子14に接近することが確実に阻止されている。従って、亜酸化銅によってプラス側端子12とマイナス側端子14の間を繋ぐ短絡路が形成されることを確実に防止して、車両火災の発生を一層有利に防止することができるのである。
【0042】
続いて、図6を用いて、本発明の第三の実施形態としての端子付回路基板62について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、仕切り壁64に突設された係合突起66がマイナス側端子14の台座22の台座本体70に設けられた係合孔72に係合されることにより、仕切り壁64の底面44が回路基板16に対して圧接状態に保持されるようになっている点に関して、上記第一の実施形態と異なる実施形態を示すものである。
【0043】
より詳細には、本実施形態では、上記第一の実施形態と異なり、仕切り壁64には、仕切り壁64の台座本体70側の側面74の上端部に連結されて下方に向かって片持ち状に突出する係合突起66が設けられており、係合突起66の突出端部には仕切り壁64の側面74側に向かって突出する略三角断面形状の突部76が設けられている。一方、マイナス側端子14の台座本体70の仕切り壁64側には、上方に開口する略矩形断面形状の係合孔72が形成されている。係合孔72の上方開口部には、仕切り壁64から離隔する方向(図6中、右方)に向かって突出する略矩形断面形状の突起78が設けられている。
【0044】
仕切り壁64をマイナス側端子14の台座本体70に装着する際には、先ず、仕切り壁64の係合突起66の先端部を係合孔72に挿入する。係合突起66の先端部には、突部76が形成されている一方、突部76の先端部には、仕切り壁64と台座本体70の組付方向において、先端側から基端側に向かうに従って次第に外方に突出するテーパ面80が形成されている。それ故、仕切り壁64の係合突起66の先端部を下方に向って押し込むことで、テーパ面80の作用により、係合突起66が仕切り壁64から離隔する方向(図6中、右方)に向かって撓み変形されて、係合孔72に挿入されるのである。そして、係合突起66の先端部に形成された突部76が係合孔72の上方開口部に突設された突起78を越えると係合突起66が弾性復帰する。これにより、係合突起66の突部76が係合孔72の突起78と係合され、台座22に対して仕切り壁64が嵌合されるようになっている。
【0045】
なお、本実施形態では、仕切り壁64が台座22に未装着の状態で、係合突起66の突部76の上面82と仕切り壁64の底面44間の上下方向の離隔距離が、係合孔72の突起78の下面84と台座22の脚部28の底面86間の上下方向の離隔距離よりも小さくなるように構成されている。これにより、仕切り壁64を台座22に装着した状態で、仕切り壁64の底面44を回路基板16に対して圧接状態に保持することができるようになっている。それ故、回路基板16に嵌合孔40を設けるスペースがない場合でも、台座22を巧く利用して、仕切り壁64の底面44を回路基板16に圧接することができるのである。この際、仕切り壁64の底面44は、上記第一の実施形態のように未装着時に回路基板16に向かって円弧状に突出されていたり長手方向に延びるスリット52が開口形成されている必要は必ずしもない。
【0046】
以上、本発明の複数の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの具体的な記載によって限定されない。例えば、上記第二の実施形態では、仕切り壁58は隣接配置されたプラス側端子12とマイナス側端子14のうちマイナス側端子14を囲むように配設されていたが、プラス側端子12あるいは両端子12,14を囲むように構成されていてもよい。また、上記第二の実施形態では、上面視でコの字形状の仕切り壁58を例示して説明を行ったが、それ以外にも例えば、上面視でL字形状やロの字形状や略円弧状の多角形状等の任意の形状が選択可能である。
【0047】
上記第一の実施形態では、仕切り壁64の底面44は、未装着時に回路基板16に向かって円弧状に突出されていたり長手方向に延びるスリット52が開口形成されていたが、仕切り壁64の底面44は平らな面でもよいし、スリット52も必須ではない。また、仕切り壁18,58,64の底面44を回路基板16に圧接された状態で保持する手段については、本実施形態で例示した以外に、例えばアッパケースのコネクタ装着部の底面などによって、仕切り壁18,58,64の底面44を回路基板16側に圧接するようにしてもよい。加えて、端子付回路基板10,56,62には、プリント配線に接続された複数の端子が立設されたプリント基板や、布線された単芯線に圧接された複数の端子が立設された布線絶縁板なども勿論含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10,56,62:端子付回路基板、12:プラス側端子(端子)、14:マイナス側端子(端子)、16:回路基板、18,58,64:仕切り壁、20:台座、22:台座、40:嵌合孔、42:下面、44:底面、46:嵌合突起、52:スリット、54:上面、60:平板部、66:係合突起、72:係合孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6