【解決手段】長手方向の一部分10Pが湾曲された状態で、その長手方向の一端側10Mと他端側10Fがそれぞれ往復移動機構の固定部102と移動部104間に配置されて使用される全体として弾性を有する単線状又は帯状の長尺体10であって、その使用時に湾曲される部分に予めその長手方向以外の一方向に成形された迂回部20を有している。
少なくとも長手方向の一部分が湾曲された状態で、前記長手方向の一端側と他端側がそれぞれ移動機構の固定部と第1移動部間又は第1および第2移動部相互間に配置されて使用される全体として弾性を有する単線状又は帯状の長尺体であって、前記長手方向以外の一方向に迂回する迂回部を有することを特徴とする長尺体。
前記迂回部は、前記第1または第2移動部の移動に伴う湾曲部の湾曲において、曲げモーメントが最大になる場所に成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の長尺体。
請求項1に記載の長尺体を含むケーブル等のケーブル等支持装置であって、当該ケーブル等の一部を載置する載置部材を有し、当該載置部材が当該ケーブル等の動きと連動することを特徴とするケーブル等支持装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の第1実施形態の往復移動機構を模式的に示す斜視図である。尚、本実施形態の往復移動機構は、例えば、チップマウンタのモータ等で駆動される可動ユニットとしてのX−Yの2軸で往復移動する機構の移動部と固定部との間に配置されて使用されるものであり、電気ケーブルやエアの流路となるチューブ等を組み合わせた全体として弾性を有する帯状体として構成される。但し、以下の説明では、その往復移動機構の要部のみを模式的に示し、ステージ、フィーダ、モータ等、実際のチップマウンタが備える他の構成は省略している。また、往復移動機構のX軸方向の移動に関してのみ説明している。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の往復移動機構100は、固定部102、X軸方向(紙面の左右方向)に移動可能な移動部104、および長尺体10を有しており、同図においては、移動部104の移動の初期状態を示している。移動部104は、スライドガイド106に沿って、矢印で示すX軸方向に往復移動(摺動)する。長尺体10は、ポリウレタン製のチューブを複数本(本実施形態では3本)、互いに融着する事で、全体として弾性を有する帯状のものであり、長手方向の一部分10Pが湾曲された状態で、長手方向の一端側10Mと他端側10Fがそれぞれ往復移動機構100の固定部102と移動部104間に縦置きの状態(幅方向の一面が設置面と接する状態)で配置されて使用される。本実施形態の長尺体10は、長手方向の一端側10Mが紙面上の左右方向に伸びるように固定部102に固定・配置されるとともに、他端側10Fが紙面上の前後方向に伸
びるように移動部104に固定・配置されている。
【0015】
ここで、本実施形態の大きな特徴として、長尺体10は、長手方向以外の所定の一方向に成形された迂回部20を有している。迂回部20は、往復移動機構100に配置されて使用される前の長尺体10が製作される時に、後述する制作方法により予め成形加工されるものであり、往復移動機構100に配置されて使用される時に、
図1に示すように、上述した一部分10Pにおける移動部104側の一端部において、長尺体10の湾曲に対し内向きの方向に向かって迂回するように成形されている。尚、本発明は、上記の構成に限らず、往復移動機構100の固定部102と、移動部104と、一端が固定部102に接続され他端が移動部104に接続される単線状又は帯状の長尺体10により構成されるモジュールを対象とし、長尺体10は湾曲部を有することにより全体形状がU字状・C字状・S字状等であればよく、更に、その長手方向以外の一方向に迂回する迂回部20を有していれば良い。ここで、湾曲部とは、固定部102と移動部104との間に配置された単線状又は帯状の長尺体10全体のU字状・C字状・S字状等における湾曲した部分のレイアウトに相当する。また、迂回部20は、その単線状又は帯状の長尺体10の一部に成形され、これにより長尺体20の長手方向の長さの総距離が長くなっている部分に相当する。尚、迂回部20は、長尺体10全体のU字状・C字状・S字状等の湾曲部において、移動部104の移動に伴い曲げモーメントがより大きくなる場所に成形することが好ましく、さらには、曲げモーメントが最大になる場所に成形することで、柔軟性の点で最も高い効果が得られる。具体的には、第1実施形態の長尺体10が示すように、移動部104により近い場所に迂回部20を成形することが望ましい。これは、移動部104に接続・固定された長尺体10にかかる曲げモーメントMから導き出したものである。すなわち、長尺体10の一端部である固定部102側の端部おいては、接続・固定という形で一定の力Pがかけられており、移動部104からの距離Xとの関係においては、M=PXという関係式が成り立ち、上記のように力Pは一定であるため、曲げモーメントMが最大になる位置というのは、移動部104から固定部102に至るまでの長尺体10全体の長さとなる。すなわち、第1実施形態の長尺体10においては、移動部104により近い位置に迂回部20を設けることによって、より効果的に上記の柔軟性の効果を得ることができる(
図5および
図6のサンプル4参照)。
【0016】
ここで、本発明の長尺体10における迂回部20が反発力を緩和する機序(原理)について説明しておく。
図2は、本発明の第1の実施形態の長尺体における迂回部が反発力を緩和する機序(原理)を説明するための概念図である。ここで、
図2(a)は前述した迂回部20が整形されていない単なるフラットチューブの一部分を示しており、これに対し
図2(b)は、長尺体10の一部分である迂回部20のみを模式的に示している。
図2(a)および同図(b)においては、支店11と力点(曲げの力の作用点)12、14に符号をつけて示しており、両図における力点12、14の間の距離は互いに同じとする。同図に示すように、支点11・力点(曲げの力の作用点)12又は14間の距離を考えてみると、まず
図2(a)に示すように、迂回していない形状、換言すれば、直線的に伸びた状態の長尺体10の一端(力点)12と他端(力点)14とに矢印方向の力が加わると、てこの原理からは、支点11・力点(曲げの力の作用点)12又は14間の距離d1と力F1の積(d1×F1)の曲げ応力が長尺体10に作用する。
【0017】
これに対し、
図2(b)に示すように、一端(力点)12と他端(力点)14間の直線的な距離は
図2(a)と同じであり、迂回している(湾曲している)形状の長尺体10の一端(力点)12と他端(力点)14に矢印方向の力が加わる場合には、支点11・力点(曲げの力の作用点)12又は14間の距離d2と力F2の積(d2×F2)の曲げ応力が長尺体10に作用する。この場合、d1×F1=d2×F2が成り立つので、
図2(a)に示す場合に比べて、
図2(b)に示すように、支点11・力点(曲げの力の作用点)12又は14間の距離が大きければ(d2>d1)作用点、つまり、長尺体10の一端(力点)12と他端(力点)14における曲げる力は小さくて済む。反対に、長尺体10の迂回部20の一端(力点)12と他端(力点)14とに作用する反発力も小さくて済み、それぞれに接続された往復移動機構100の移動部102と固定部104に加わる負荷も小さくて済むことになる。このように、てこの原理(d1×F1=d2×F2)により、迂回部20が形成された部分をスポットとして見た場合に支点11と作用点12又は14との距離が大きくなるため、応力が低減される。
【0018】
更に、長尺体全体として見た場合について、
図2(c)および同図(d)を用いて説明する。
図2(c)は、前述した迂回部20が成形されていないと仮定した場合の長尺体を概念的に直線的に伸ばした図である。これに対し、
図2(d)は、第1実施形態の長尺体10を同様に伸ばした図である。これらの図においても、前述した
図2(a)および
図2(b)と同様、支点11、力点(曲げの力の作用点)12、14を示し、力点12、14の間の距離は互いに同じである。これによれば、
図2(c)における力点(曲げの力の作用点)12から支点11までの距離の長さ(D1)よりも、
図2(d)に示すように、迂回部20が形成されている場合の一端(側)から他端(側)までの距離の長さ(D2)が大きくなる(D1<D2)。従って、長尺体全体として見た場合にも、迂回部20が形成されたことにより長尺体10の総距離が大きくなるため、てこの原理(D1×F3=D2×F4)により、柔軟性が向上する。
【0019】
以上を踏まえ、
図1の往復移動機構100において、同図の初期位置から移動部104がX軸方向(紙面上の右方向)に移動するのに伴い、長尺体10もその他端側10Fから紙面上の右方向に追従する形で移動する。その際、長尺体10の全体形状において発生する湾曲した部分に対し、曲げ応力が発生するものの、上述した機序(原理)により、長尺体10にかかる曲げ応力が迂回部20によって分散され、長尺体10全体としての対向する二面間の反発力が低減する。これにより、長尺体10にかかる応力を低減しつつ柔軟性を向上させることができるので、往復移動機構の収容のための省スペース化を実現し易くなる上に、湾曲部に作用する応力を低減することができる。
【0020】
次に、
図3を用いて本実施形態の長尺体10において、迂回部20を成形する方法を説明しておく。同図は、本発明の第1の実施形態の長尺体における迂回部の成形方法を説明するための図であり、(a)は、加工用の治具の概略斜視図、(b)は、その治具のローラの斜視図、(c)は、その治具を用いて迂回部が成形される態様を上面から見た図である。即ち、本実施形態の長尺体10に迂回部20を曲げ加工により成形するには、
図3(a)に示すように、迂回部形成前の直線状の長尺体10を加工用の治具30のプレート32に縦置きの状態で通していき、複数のローラ34間を蛇行させることで迂回部20を形成する。尚、
図3(b)に示すように、各ローラ34には、長尺体10を構成する複数本のチューブ10aに対応する溝34aが所定の数(本実施形態では3つ)だけ形成されているので、帯状の長尺体10を構成する複数本のチューブ10a全体に迂回部20を成形することができる。そして、
図3(c)に示すように、加工用の治具30のプレート32上で迂回部20が形成された状態のまま、例えばアニール処理されることにより、迂回部20が成形加工される。尚、アニール処理以外により成形しても良いのは勿論である。例えば、本実施形態では、直線状の長尺体を曲げ加工することにより迂回部20を成形したが、予め迂回部を一体成型するようにしても良い。また、迂回部は、長尺体の全体に亘って形成しても良いし、長尺体の一部分のみに形成しても良い。また、複数の迂回部を連続的に形成しても良いし、非連続的(離散的)に形成しても良い。
【0021】
次に、
図4ないし
図6を用いて本実施形態の長尺体によって往復移動機構の固定部等に対する負荷がどのように軽減されるのかを検証した結果を示す。
図4および
図5は、本発明の第1の実施形態において、長尺体10における迂回部20の加工態様(位置及び個数)を変えたサンプル毎に、往復移動機構の移動部の初期位置、中間位置、最終位置の3段階の位置における長尺体10の湾曲状態の変化を示す図であり、
図4(a)は比較例として未処理(迂回部を成形加工しないもの、以下、サンプル1とする)、
図4(b)は上部のみに加工したもの(以下、サンプル2とする)、
図4(c)は中間部のみに加工したもの(以下、サンプル3とする)、をそれぞれ示す。また、
図5(d)は下部のみに加工したもの(以下、サンプル4とする)、
図5(e)は上下にそれぞれ加工したもの(以下、サンプル5とする)、
図5(f)は全体的に複数(図では上中下にそれぞれ)加工したもの(以下、サンプル6とする)、をそれぞれ示す。
図6は、本発明の第1の実施形態において、長尺体における迂回部の加工態様(位置及び個数)を変えた
図4及び
図5のサンプル毎に、往復移動機構の移動部の移動位置(距離)と長尺体の移動部104に加わる応力との関係を示すグラフである。即ち、サンプル1乃至6の各種のサンプルを作製し、それぞれ移動部104の直線移動に伴う動的形状の変化を観察するとともに、移動部104に加わる応力を測定した。
【0022】
図4に示す往復移動機構のレイアウト及びスペースにおいては、まず、未処理(迂回部なし)のサンプル1では、
図4(a)に示すように、移動部104の初期位置では、長尺体10は、移動部104に近い側10NMと固定部102に近い側10NFはそれぞれ直線形状に近く、中間部10Hが湾曲した全体として略C字状である。移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104に近い側10NMは逆方向に少しずつ湾曲し始め、移動部104が最終位置まで移動すると緩やかな逆C字状に変化する。一方、固定部102に近い側10NFは、移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104の初期位置の時よりも直線部分が長くなり、移動部104が最終位置まで移動すると移動部104の初期位置の時よりも直線部分が短くなる。即ち、移動部104の移動に伴い、固定部102に近い側10NFは、その直線部分が伸長し、反対に短縮するという直線運動をするだけで、略湾曲しない。また、中間部10Hは、移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104の初期位置の時よりも、同じ方向への湾曲度合が増し(曲率が大きくなり)、移動部104が最終位置まで移動すると、緩やかなC字状に変化する(10NMとは逆方向のC字状)。従って、移動部104が最終位置まで移動すると、中間部10Hと移動部104に近い側10NMの両部分で緩やかなS字状に湾曲した状態になる。
【0023】
次に、上加工のサンプル2では、
図4(b)に示すように、移動部104の初期位置では、長尺体10は、固定部102に近い側10NFに波状の迂回部20を有する以外は、
図4(a)に示したサンプル1と略同様に、全体として略C字状である。移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104に近い側10NMは逆方向に少しずつ湾曲し始め、移動部104が最終位置まで移動すると逆C字状に変化する。一方、固定部102に近い側10NFは、移動部104が中間位置まで移動しても、移動部104の初期位置の時と略変わらず、移動部104が最終位置まで移動すると、波状の迂回部20の位置が下がり、小さなS字状を呈する。また、中間部10Hは、移動部104が中間位置まで移動するにつれて、く字状に湾曲し)、移動部104が最終位置まで移動すると、C字状に変化する(10NMとは逆方向のC字状)。従って、移動部104が最終位置まで移動すると、中
間部10Hと移動部104に近い側10NMの両部分でS字状に湾曲した状態になる。
【0024】
次に、中間加工のサンプル3では、
図4(c)に示すように、移動部104の初期位置では、長尺体10は、中間部10Hに波状の迂回部20を有する以外は、
図4(a)に示したサンプル1と略同様に、全体として略C字状である。移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104に近い側10NMは逆方向への傾きが大きくなり、移動部104が最終位置まで移動すると逆方向へ反り返った形状になる。一方、固定部102に近い側10NFは、移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104の初期位置の時よりも直線部分が長くなり、移動部104が最終位置まで移動すると移動部104の初期位置の時よりも直線部分が短くなる。即ち、移動部104の移動に伴い、固定部102に近い側10NFは、その直線部分が伸長し、反対に短縮するという直線運動をするだけで、略湾曲しない。
【0025】
次に、下加工のサンプル4では、
図5(d)に示すように、移動部104の初期位置では、長尺体10は、移動部104に近い側10NMに波状の迂回部20を有する以外は、
図4(a)に示したサンプル1と略同様に、全体として略C字状である。移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104に近い側10NMは、その迂回部20が左に旋回するようにやや上昇し、移動部104が最終位置まで移動すると、その迂回部20の位置は上記の中間位置の時と略変わらず、その開口部が狭くなった状態になる。一方、固定部102に近い側10NFは、移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104の初期位置の時よりも直線部分が長くなり、移動部104が最終位置まで移動すると移動部104の初期位置の時よりも直線部分が短くなる。即ち、移動部104の移動に伴い、固定部102に近い側10NFは、その直線部分が伸長し、反対に短縮するという直線運動をするだけで、略湾曲しない。また、中間部10Hは、移動部104が中間位置まで移動するにつれて、大きく緩やかなC字状に湾曲し、移動部104が最終位置まで移動すると、そのC字状部の下半分の傾きがなくなり、移動部104に近い側10NMの一部と略直線状を形成する。
【0026】
次に、上下加工のサンプル5では、
図5(e)に示すように、移動部104の初期位置では、長尺体10は、固定部102に近い側10NFと移動部104に近い側10NMに、それぞれ波状の迂回部20U、20Lを有する以外は、
図4(a)に示したサンプル1と略同様に、全体として略C字状である。移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104に近い側10NMは、その迂回部20Lが左に旋回するようにやや上昇し、移動部104が最終位置まで移動すると、その迂回部20Lの位置は上記の中間位置の時と略変わらず、その開口部が狭くなった状態になる。一方、固定部102に近い側10NFは、移動部104が中間位置まで移動しても、その迂回部20Uの位置と形状は上記の初期位置の時と略変わらず、移動部104が最終位置まで移動すると、波状の迂回部20の位置が下がり、小さなS字状を呈する。また、中間部10Hは、移動部104が中間位置まで移動するにつれて、大きなC字状に湾曲し、移動部104が最終位置まで移動すると、そのC字状部が左に旋回するように傾いて、そのC字状部の下半分の傾きがなくなり、移動部104に近い側10NMの一部と緩やかな湾曲状を形成する。
【0027】
次に、全体加工のサンプル6では、
図5(f)に示すように、移動部104の初期位置では、長尺体10は、固定部102に近い側10NF、中間部10H、移動部104に近い側10NMに、それぞれ波状の迂回部20U、20C1、20C2、20Lを有するが、全体として略C字状である。移動部104が中間位置まで移動するにつれて、移動部104に近い側10NMは、その迂回部20Lが左に旋回するようにやや上昇し、移動部104が最終位置まで移動すると、その迂回部20Lの位置は上記の中間位置の時と略変わらず、その開口部が狭くなった状態になる。一方、固定部102に近い側10NFは、移動部104が中間位置まで移動しても、その迂回部20Uの位置と形状は上記の初期位置の時と略変わらず、移動部104が最終位置まで移動すると、波状の迂回部20Uの位置が下がり、小さなS字状を呈する。また、中間部10Hは、移動部104が中間位置まで移動するにつれて、その波状の迂回部20C1と20C2が衝突するように、複雑なカエデ状に変形し、移動部104が最終位置まで移動すると、そのカエデ状部が左に旋回するように傾いて、移動部104に近い側10NMの一部と連続的な迂回部群を形成する。
【0028】
図6は、上述した実施形態において、長尺体における迂回部の加工態様(位置及び個数)を変えた
図4及び
図5の各サンプル1〜6毎に、往復移動機構100の移動部104の移動位置(距離)と長尺体の移動部104に加わる応力との関係を示すグラフである。
図6に示すように、移動距離が0から100(mm)までは、サンプル1〜6のいずれも、応力(kg)は急角度で上昇する。移動距離が100(mm)から200(mm)の間は、未処理のサンプル1以外では、応力(kg)が減少する。その後、移動距離が200(mm)から450(mm)の間は、未処理のサンプル1以外では、いずれも、応力(kg)が比較的低い値に抑えられている。全体として、いずれかの箇所に迂回部を有するサンプル2〜6では、移動距離が100(mm)を超えた後も応力(kg)が低い値に抑えられており、未処理のサンプル1に比べて大変良好な成績が得られているが、特に、下加工のサンプル4、上下加工のサンプル5及び全体加工のサンプル6では、上加工のサンプル2及び中間加工のサンプル3以上に良好な成績が得られており、少なくとも下加工、即ち、移動部104に近い側に迂回部を有することが望ましく、さらには曲げモーメントがより大きくなる移動部104付近に成形することが最も好ましいことが確認された。
【0029】
以上のように、本実施形態の長尺体10は、長手方向の一部分が湾曲された状態で、一端側と他端側がそれぞれ往復移動機構100の固定部102と移動部104間に配置されて使用される全体として弾性を有する単線状又は帯状の長尺体であり、長手方向以外の方向に成形された迂回部20を有するので、移動部104の移動に伴い長尺体10全体が湾曲することにより生じる反発力を、長尺体10の一部に集中させることなく迂回部20に逃がすことが可能になるので、長尺体10の長手方向の柔軟性を高めることができ、移動部104等に加わる応力を低減することが可能である。従って、かかる往復移動機構を含むモジュールの収容のための省スペース化を実現し易くなる上に、往復移動機構100の図示しないモータ等の可動ユニットに対する負荷も低減することができる。
【0030】
図7は、本発明の第2実施形態の往復移動機構を模式的に示す図である。本実施形態の往復移動機構は、チップマウンタのモータ等で駆動される可動ユニットとして、その移動部と固定部との間に長尺体が配置されて使用されるのは、上述した第1実施形態と同様であり、同様の部分には同様の参照符号を付し、詳しい説明は省略する。本施形態の特徴は、上述した第1実施形態と異なり、往復移動機構200の全体のレイアウトがU字状であり、迂回部が2つ成形されている。また、長尺体10の移動部側の端部を固定する方向が第1実施形態とは異なり、X軸方向に固定されている。
図7に示すように、本実施形態の往復移動機構200は、固定部202、X軸方向に移動可能な移動部104、および長尺体10を有している。移動部104は、スライドガイド(図示せず)に沿って、矢印で示すX軸方向に往復移動(摺動)する。長尺体10は、全体がU字状に湾曲された状態で、長手方向の一端側10Mと他端側10Fがそれぞれ往復移動機構200の固定部102と移動部104間に配置されて使用される。本実施形態の長尺体10は、長手方向の一端側10Mが紙面上の左右方向に伸びるように固定部102に固定・配置されるとともに、他端側10Fも紙面上の左右方向に伸びるように移動部104に固定・配置されている。また、長尺体10の固定部102近傍位置と移動部104近傍位置に、それぞれ迂回部20U、20Lが形成されている。
【0031】
本実施形態でも、長尺体10によって往復移動機構200の移動部104に対する負荷がどのように軽減されるのかを検証したので、その結果を
図8に示す。
図8は、本実施形態の長尺体10、即ち、
図7に示した迂回部20U、20Lを有するサンプル12と、比較例として、全体として同様にU字状に湾曲しながらも迂回部を形成しないサンプル11について、往復移動機構200の移動部104の移動距離と移動部104に加わる応力との関係を示すグラフである。
図8に示すように、サンプル11では、応力(kg)は、移動距離が0から50(mm)までは急角度で上昇し、50から100(mm)までは比較的緩やかな角度で上昇する。その後、移動距離が100(mm)から250(mm)の間は、応力(kg)は殆ど減少せず、250(mm)を超えると再び上昇し、300(mm)を超えると略0.20(kg)に達してしまう。これに対して、迂回部20U、20Lを有するサンプル12では、移動距離が0から100(mm)までも、応力(kg)の上昇は緩やかで、0.08(kg)未満に留まる。その後、移動距離が100(mm)から200(mm)の間に、応力(kg)は緩やかに減少し、200(mm)を超えた後も、略一定の応力(kg)に維持されている。このように、U字状のレイアウトであっても、長尺体10に迂回部(20U、20L)が形成されることにより、柔軟性が向上することが確認された。従って、かかるU字状のレイアウトの往復移動機構200を含むモジュールの収容のための省スペース化を実現し易くなる上に、往復移動機構200の図示しないモータ等の可動ユニットに対する負荷も低減することができる。
【0032】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図9は、本発明の第3実施形態において、第1実施形態の往復移動機構にガイドをさらに設けた往復移動機構300を模式的に示す斜視図である。上記ガイドを設けた点以外の基本的な構成は、上述した第1実施形態と同様であり、同様の部分には同様の参照符号を付し、詳しい説明は省略する。即ち、本施形態では、
図9に示すように、長尺体10の固定部102側の一端部には、長尺体10のX軸およびY軸方向の移動を規制するためのガイド90が設けられている。このガイド90は、可撓性を有する素材、例えばステンレス鋼(SUS301EH)で構成された板状のガイド板90Aと、高密度ポリエチレンで構成された全体形状がL字状に形成された規制部90Bによって構成されている。ガイド板90Aは、長尺体10の外側に沿った状態で配置されるとともに、一端部が長尺体10と固定部102によって挟持されている。また、規制部90Bは、L字状の短尺部90b1がガイド板90Aの他端部に取り付けられることによって、L字状の長尺部90b2とガイド板90Aによって長尺体10を挟持している。
【0033】
これにより、移動部104の移動に伴い、長尺体10の長さ如何により発生するY軸方向(紙面の上下方向)に対する長尺体10の横揺れが規制されるため、所望のスペース内での使用をより確実に行う事ができ、さらなる省スペース化が図られる。また、ガイド90は、往復移動機構300の一部に設けられるものであり、仮に、長尺体10のY軸方向の移動を規制するために、往復移動機構300の全体の下面に板状のガイドを設けた場合と比較しても、より簡易な構成で省スペース化を達成することができる。
【0034】
尚、以上の実施形態では、
図1(
図9)及び
図7に示すように、長尺体10は、往復移動機構100(300)又は200に沿って縦置きに、且つC字状(又はU字状)のレイアウトで配置したが、長尺体全体のレイアウトは、C字状及びU字状に限られず、S字状、
半円状や半楕円状等、移動可能なレイアウトであれば、その形状を問わない。また、長尺体10は、往復移動機構100の固定部102と移動部104間に配置したが、固定部102ではなく、第1移動部と第2移動部から成る2つの移動部間に配置するものでも良い。更に、以上の実施形態では、長尺体10は、移動部がX軸等の一軸に沿って往復移動する機構に配置する例について説明したが、移動機構の動きは、往復移動(運動)に限られず、移動部(第1及び/又は第2移動部)が、例えば、(長尺体の捻じれが生じない範囲で)周回運動する等、他の動きをする機構を含む。また、上述した実施形態では、
図1に示すように、長尺体10の幅方向の面を縦置きする形態について説明したが、横置きでも良いし、中空に配される等、長尺体の幅方向(及び/又は厚さ方向)の面がチップマウンタ等の装置の主面と接しないレイアウトでも良い。更に、湾曲されて使用される帯(フラット)状の長尺体10に対して迂回部20を成形したが、帯(フラット)状ではなく、単線状の長尺体でも良いのは勿論である。尚、迂回部は、1個だけでも良いし、複数個でも良く、その個数は問わないが、迂回部同士が相互に衝突して悪影響を及ぼし合わないのが望ましい。また、本実施形態の迂回部20の側断面形状は、
図1等に示すとおり、滑らかな曲線を描くΩ状のものであるが、これに限らず、前述したd1×F1=d2×F2の関係式において、迂回部を形成しない長尺体の支点11と力点12、14との距離(d1)よりも大きな距離(d2)を有するような構成であればよく、例えば、
図11(a)〜(d)に示すとおり、種々の形状が考えられる。また、各迂回部の大きさが相違していても良いし、例えば、ひとつの迂回部の端部(開始箇所)に、より小さな迂回部を形成する等も可能である。更に、長尺体は、電気ケーブル・光ファイバケーブル・エア・液体等の流体を流すチューブ又は固体を挿通するチューブでも良い。
【0035】
図10は、本発明の他の実施形態の長尺体60の構成の一例であり、複合電気ケーブル、光ファイバケーブル、同軸ケーブル及びエアチューブの組み合わせから成る長尺体の一例を示す。即ち、他の実施形態の長尺体60は、例えば、3本の複合電気ケーブル62aから成る帯状物62、2本の光ファイバケーブル64aから成る帯状物64、4本の同軸ケーブル66aから成る帯状物66及び3本のエアチューブ68aから成る帯状物68の組み合わせから成り、
図10では、各ケーブルやチューブ同士、各帯状物62、64、66、68同士を離間して示しているが、実際は略相互に接触するような組み合わせ体として構成されている。尚、各ケーブルやチューブ同士は相互に固定され、或いは一体成型されているが、各帯状物同士は固定されておらず、相互に摺動可能である。このように、本発明の長尺体は、複数本のケーブルやチューブから成る帯状物同士の組み合わせ体により構成することができる。この場合でも、その長尺体60の長手方向以外の方向に迂回部を成形しておくことで、長尺体60全体として長手方向の柔軟性を高めることができる。また、迂回部は、帯状物同士を組み合わせた長尺体60全体に形成しても良いし、一部の帯状部のみに形成しても良い。例えば、各チューブの外径が大きく、エア耐圧等のために剛性が比較的大きいエアチューブ68aから成る帯状物68のみに、迂回部を成形するようにしても良い。この場合、
図1及び
図5等から分かるように、例えば、エアチューブ68aから成る帯状物68が内側にくるように長尺体60を往復移動機構等に配置すれば良い。
【0036】
図12は、本発明に係る載置部材110を表す。長尺体を中空に配し、チップマウンタ等の装置の主面と接しないレイアウトをとる場合、重力により垂れた長尺体の一部分が前記主面とこすれて発塵することがある。長尺体を前記載置部材110の連動部112に搭載することで、長尺体の垂れは防止できる。接続部111は、往復移動機構の移動部に載置部材110を接続させるものである。前記連動部112は、往復移動機構の移動部の運動に伴う長尺体の変形に連動して、接続部111との相対的位置関係が変化する。位置決め部材113は、長尺体が連動部112からこぼれ落ちないようにするストッパーである。なお、載置部材は往復移動機構の固定部に取り付けられることもあるし、接続部を設けずに、連動部を往復移動機構の移動部又は固定部に直接に取り付けることもある。
図13は、往復移動機構における長尺体10及び載置部材110の動きを表す。図では、便宜上 迂回部の記載を省略している。