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  • 特開2015021351-舗装路面の表面研削装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-21351(P2015-21351A)
(43)【公開日】2015年2月2日
(54)【発明の名称】舗装路面の表面研削装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/12 20060101AFI20150106BHJP
【FI】
   E01C23/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-152279(P2013-152279)
(22)【出願日】2013年7月23日
(11)【特許番号】特許第5367920号(P5367920)
(45)【特許公報発行日】2013年12月11日
(71)【出願人】
【識別番号】592061854
【氏名又は名称】ヒートロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】西田 浩之
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA03
2D053AA22
2D053BA01
2D053BA07
(57)【要約】
【課題】駆動エネルギーが小さく、長期に渡って使用でき、舗装路面を傷めることなく表面を滑らかに研削できる舗装路面の表面研削装置を提供する。
【解決手段】
舗装路面の表面研削装置(1)の研削体(6)は、回転軸(13)と数枚のブレード(14)とから構成する。ブレード(14)は、略長方形の所定板厚のプレート(15)と、その両短辺の縁部に設けられている円弧状の研削片(16)とから構成し、プレート(15)の中心には回転軸(13)に挿通される軸穴(18)を明ける。研削体(6)において、複数枚のブレード(14)は互いに回転方向にずらして重ね合わせ、研削片(16)同士が干渉しないようになっている。研削片(16)はプレート(15)の板厚より厚く、研削体(6)が回転して舗装路面の表面を研削するとき任意の隣り合うブレード(14)の研削片(16)が研削する研削幅は所定の重ね代(26)だけ重複している。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する研削体によって舗装路面の表面を研削する舗装路面の表面研削装置であって、
前記研削体は、回転軸と、該回転軸に設けられている複数枚のブレードとからなり、
前記ブレードは、中心に前記回転軸に挿通される軸穴が明けられた所定板厚の略長方形のプレートと、該プレートの前記長方形の両短辺の縁部に設けられている円弧状の研削片とからなり、
前記研削体において複数枚の前記ブレードは、隣り合うブレードのそれぞれに設けられている前記研削片同士が回転方向にずれるように互いに回転方向にずらして重ね合わされており、
前記研削片は前記プレートの板厚より幅広に形成され、それによって前記研削体が回転して前記舗装路面の表面を研削するとき任意の隣り合うブレードのそれぞれの前記研削片が研削する研削幅は所定の重ね代だけ重複していることを特徴とする舗装路面の表面研削装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面研削装置において、前記研削片はダイヤモンド粒子を含んだ金属材料から焼結によって形成されていることを特徴とする舗装路面の表面研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化した舗装路面の補修に使用され、舗装路面の表面を研削する舗装路面の表面研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト合材によって舗装された舗装路面は、道路の耐久性を高めると共に快適な走行性を提供している。しかしながら、舗装路面は長期間の利用によって表面が劣化したり摩耗する。あるいは轍が形成されて平面度が低下する。従って舗装路面は適宜補修する必要がある。舗装路面が劣化したり摩耗した場合は、舗装路面を全面的に補修する必要があり、この場合にはまず舗装路面の表面を全面的に浅く削り取って劣化したアスファルト合材を除去する。次いで、その上に新しいアスファルト合材によって再舗装する。舗装路面の一部の平面度を回復する比較的簡易な補修をする場合には、凸状に隆起した部分を平面状に削り取り、凹状になっている部分を新しいアスファルト合材で埋める。以下、本明細書においては前者のような補修を舗装路面全面補修、後者のような補修を舗装路面部分補修と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−41319号公報
【特許文献2】特開2007−284900号公報
【0004】
舗装路面全面補修において、舗装路面の表面の劣化したアスファルト合材を削り取る路面切削装置は周知であり、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の路面切削装置は、回転駆動される回転ドラムとこの回転ドラムの表面に設けられている複数本のカッタビットとを備え、これらのカッタビットは先端が爪状の金属片になっている。従って路面切削装置を低速で移動させながら回転ドラムを回転すると、複数本のカッタビットが舗装路面をひっかいて劣化した表面を削り取ることができる。なお、特許文献1に記載の路面切削装置によって削り取られた切削面は、筋状にひっかき傷が形成された凹凸のある表面になる。
【0005】
舗装路面全面補修において、舗装路面の表面を所定の幅で研磨するように削り取る装置も周知である。このような装置は、舗装路面を研磨する部分が円柱のグラインダー状になっており、路面切削装置と言うこともできるが、グラインダーのように舗装路面を研削して得られる表面が滑らかな面になるので、路面研削装置と言うこともできる。このような路面研削装置は、図6の(ア)、(イ)に示されているような円柱のグラインダー状の研削体50を備えている。この研削体50は、回転軸51と、この回転軸51に設けられている複数枚のブレード52、52、…とからなる。1枚のブレード51は、所定肉厚の鋼板からなる円盤54と、この円盤54の外周部に円周方向に等間隔で設けられている研削片55、55、…とからなる。研削片55、55、…は粒状ダイヤモンドを練り込んだ焼結材から構成され、所定長さの円弧状の小片に形成されている。そしてその幅すなわち厚さは円盤54の板厚と略等しい。このようなブレード52、52、…が複数枚回転軸51に設けられているので、研削体50は全体として円柱のグラインダー状を呈している。このような研削体50を舗装路面に当てて回転すると舗装路面の表面を滑らかに削り取る、あるいは研削することができ、得られる表面は滑らかになる。
【0006】
特許文献2には、本発明と直接関係はないが、舗装路面にライン標識を塗布する前に舗装路面のライン標識に相当する部分を所定深さで切削するライン溝切削装置が記載されている。このライン溝切削装置においても、舗装路面を研削するように削り取るようになっており、研削体は図6に示されている研削体50に類似した形状になっている。すなわち研削体は回転軸と、この回転軸に設けられている複数枚のブレードからなり、それぞれのブレードは所定板厚の円盤と、この円盤の外周面に円周方向に等間隔で設けられている研削片とからなる。しかしながら特許文献2に記載の研削体においては、1枚のブレードに設けられている複数個の研削片は、互いに1個分の研削片の長さだけ間隔を空けて円周方向に設けられ、それらの研削片の幅すなわち厚さは円盤の板厚より大きい。そして複数枚のブレードから研削体が組み立てられるとき、隣り合うブレードを回転方向にずらすようにして、それぞれのブレードに設けられている研削片同士が干渉しないように組み立てられている。研削体がこのように形成されているので、この研削体を回転させて舗装路面を削るとき、任意の1枚のブレードが削り取る幅と、隣接する他のブレードが削り取る幅は、所定の重ね代だけ重複することになる。特許文献2に記載の装置によって、舗装路面を所定の深さだけ切削あるいは研削してライン溝を形成した後に、このライン溝に塗料を塗布してライン標識を描くと、ライン標識は舗装路面と等しい高さに形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の路面切削装置によっても、あるいは前記した従来の路面研削装置によっても、舗装路面全面補修において舗装路面の表面の劣化したアスファルト合材を除去することはでき、その後に新しいアスファルト合材によって再舗装することができる。しかしながら問題も見受けられる。例えば特許文献1に記載の路面切削装置によって舗装路面の表面を切削すると、筋状にひっかき傷が形成された凹凸のある表面になる。そうすると新しいアスファルト合材との接着性が低下して、再舗装後に新しいアスファルト合材が古いアスファルト合材から分離しやすい。また表面を切削するときにひっかくようにして切削するので、舗装路面を傷めてしまうという問題もある。さらには舗装路面部分補修を実施する場合にも、特許文献1に記載の路面切削装置では筋状のひっかき傷が形成されるので利用できない。一方、図6に示されているような研削体50を備えた路面研削装置を使用すれば、これらの問題はある程度は解決する。すなわち舗装路面は滑らかに研削できるので、再舗装される新しいアスファルト合材は古いアスファルト合材に強固に接着されるし、研削時に舗装路面を傷めることがない。また舗装路面部分補修においても、凸状に隆起した部分を滑らかに研削できるので問題はない。しかしながら、この従来の路面研削装置を長期間使用すると、研削片55、55、…は、図6の(C)に示されているように角が摩耗する。そうすると舗装路面を研削したときにこの摩耗した部分が隙間になって研削面に筋が形成されてしまう。他の問題も見受けられる。すなわち研削体50は、全体として円盤状を呈するブレード52、52、…が重ね合わされて円柱状に形成されているので、円柱内部に隙間が無い。従って研削体50は非常に重量が大きい。従って研削体50を駆動するためのエネルギーも要するし、研削時に舗装路面に作用する重量も過度に大きくなり舗装路面に影響を及ぼす。さらには、舗装路面の研削時には摩擦熱が発生するが、研削体50の円柱内部に隙間が無いので摩擦熱は放熱されずに内部にこもって研削片50、50、…の温度が上昇してしまう。そうすると研削片50、50、…が劣化し易い。
【0008】
特許文献3に記載のライン溝切削装置は舗装路面の補修は目的としていないが、これを舗装路面の補修に使用する場合を検討してみる。特許文献3に記載の装置の場合、研削体を回転させて舗装路面を削るとき、任意の1枚のブレードが研削する幅と、隣接する他のブレードが研削する幅は、所定の重ね代だけ重複するようになっている。そうすると長期間使用してブレードが摩耗しても、研削される舗装路面には筋ができず、滑らかになることが保証される。しかしながら、特許文献3に記載の装置の研削体も、円盤状を呈するブレードが複数枚密に重ね合わせられているので、内部に隙間はない。従って前記した研削体50を備えた従来の路面研削装置と同様の問題がある。すなわち研削体の重量が大きいのでこれを駆動するエネルギーを要すると共に、重量によって舗装路面に影響を及ぼしてしまう。また摩擦熱が放熱されにくくブレードが劣化し易い。研削する範囲が比較的小さいライン溝を対象としている限りにおいてはこれらの問題の影響はほとんどないが、広範囲に渡って舗装路面を研削する場合には、これらの問題の影響は大きい。つまり、特許文献3に記載のライン溝切削装置は、舗装路面を補修する用途に利用できない。
【0009】
本発明は、上記したような問題点を解決した、舗装路面の表面研削装置を提供することを目的としている。すなわち、駆動するエネルギーは少なくて済み、長期に渡って安定して使用することができ、舗装路面を傷めることなくその表面を滑らかに研削することができる舗装路面の表面研削装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、舗装路面を補修する際にその表面を研削して劣化したアスファルト合材を除去する、所定の研削体を備えた舗装路面の表面研削装置として構成する。そして研削体は、回転軸と、該回転軸に設けられている複数枚のブレードとから構成する。それぞれのブレードは、略長方形の所定板厚のプレートと、プレートの両短辺の縁部に設けられている円弧状の研削片とから構成し、プレートの中心には回転軸に挿通される軸穴を明ける。そして研削体において、複数枚のブレードは互いに回転方向にずらして重ね合わされ、隣り合うブレードの研削片同士が干渉しないようになっている。研削片はプレートの板厚より厚く形成され、それによって研削体が回転して舗装路面の表面を研削するとき任意の隣り合うブレードのそれぞれの研削片が研削する研削幅は所定の重ね代だけ重複するように構成する。
【0011】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、回転する研削体によって舗装路面の表面を研削する舗装路面の表面研削装置であって、前記研削体は、回転軸と、該回転軸に設けられている複数枚のブレードとからなり、前記ブレードは、中心に前記回転軸に挿通される軸穴が明けられた所定板厚の略長方形のプレートと、該プレートの前記長方形の両短辺の縁部に設けられている円弧状の研削片とからなり、前記研削体において複数枚の前記ブレードは、隣り合うブレードのそれぞれに設けられている前記研削片同士が回転方向にずれるように互いに回転方向にずらして重ね合わされており、前記研削片は前記プレートの板厚より幅広に形成され、それによって前記研削体が回転して前記舗装路面の表面を研削するとき任意の隣り合うブレードのそれぞれの前記研削片が研削する研削幅は所定の重ね代だけ重複していることを特徴とする舗装路面の表面研削装置として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表面研削装置において、前記研削片はダイヤモンド粒子を含んだ金属材料から焼結によって形成されていることを特徴とする舗装路面の表面研削装置として構成される。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明は、回転する研削体によって舗装路面の表面を研削する舗装路面の表面研削装置として構成され、研削体は、回転軸と、該回転軸に設けられている複数枚のブレードとからなる。そしてブレードは、中心に回転軸に挿通される軸穴が明けられた所定板厚の略長方形のプレートと、該プレートの長方形の両短辺の縁部に設けられている円弧状の研削片とからなり、研削体において複数枚のブレードは、隣り合うブレードのそれぞれに設けられている研削片同士が回転方向にずれるように互いに回転方向にずらして重ね合わされている。従って、研削体は隙間が多くなっており、全体として重量が小さい。研削体は重量が小さいのでこれを駆動するエネルギーは小さくて済み、さらには研削する舗装路面に大きな重量を及ぼさないので舗装路面に影響を与えない。このように研削体が隙間が多いことによって他の効果も得られる。まず、研削時に発生する摩擦熱は放熱されやすく、研削片が過度に高温になることを防止して劣化し難い効果があげられる。次に粉塵が吸引されやすくなるという効果もある。すなわち表面切削装置には、研削によって発生する粉塵を吸引する吸引装置が設けられ、その吸引口は研削体の上部に設けられているが、研削体に隙間がほとんど無い場合には、粉塵は研削体の主として後方に掃き出され、次いで上方の吸引口に吸引される。しかしながら本発明の研削体は隙間が多いので、粉塵は隙間を通って直接上方に吸い上げられ吸引口から吸引されることになる。つまり吸引効果が高い。また、舗装路面の研削時に噴霧する所定の液体が分散しやすいという効果もある。すなわち表面研削装置においては、ブレードが加熱され過ぎないように、かつ研削された粉塵が舗装路面に再付着しないように水を主体とした所定の液体を噴霧しながら舗装路面を研削する。本発明の研削体は隙間が多いので噴霧された液体が、隙間を通ることになり適切に分散される。つまりこのような液体の分散効果が高い。そして本発明によると、研削片はプレートの板厚より幅広に形成され、それによって研削体が回転して舗装路面の表面を研削するとき任意の隣り合うブレードのそれぞれの研削片が研削する研削幅は所定の重ね代だけ重複している。従って研削される面は長期間に渡って滑らかになることが保証される。つまり長期間の使用によって研削片が摩耗してそれらの角が丸みを帯びてきても、研削幅は重ね代だけ重複しているので研削される面には筋が形成されない。そして他の発明は、研削片はダイヤモンド粒子を含んだ金属材料から焼結によって形成されている。ダイヤモンドは硬度が高く摩耗しにくいので研削片は劣化し難いという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る舗装路面の表面研削装置を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る研削体を構成するブレードを示す図で、その(A)、(B)は第1の種類のブレードの斜視図と平面図、その(C)、(D)は第2、3の種類のブレードの平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る研削体を示す図で、その(A)は研削体を構成する回転軸の斜視図、その(B)は研削体の側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る研削体を示す図で、その(A)は一部を断面で示す研削体の正面図、その(B)は研削体の一部を示す正面図、その(C)は研削体が回転した状態における研削体の一部を示す正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る研削体の研削片が摩耗した状態を示す、研削片の断面図である。
図6】従来の路面研削装置の研削体を示す図で、その(A)、(B)はそれぞれ研削体の側面図と正面図であり、その(C)は研削体に設けられている研削片が摩耗した状態を示す研削片の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について説明する。本実施の形態に係る舗装路面の表面研削装置1は、図1に模式的に示されているように、車輪2、3、…によって走行する車両5と、舗装路面を研削するための本発明の実施の形態に係る研削体6と、この研削体6を回転するモータ7と、舗装路面の研削時に発生する粉塵の拡散を防ぐために研削体6を囲んでいる防塵カバー8と、粉塵を吸引して捕集する集塵装置10とから概略構成されている。車両5の後輪2はその位置が固定になっているが、前輪3、3は高さ調整機構11によって高さを変更できるようになっている。次に詳しく説明する研削体6は車両5に対して位置が固定されているが、この高さ調整機構11を調整することによって前輪3、3の高さを変更すると、舗装路面に対する研削体6の高さが変化することになり舗装路面の研削する深さを調整できる。本実施の形態において、車両5にはハンドル12、12が後方に設けられており、ハンドル12、12には操作スイッチ等が設けられており、作業者が立った状態でハンドル12、12を操作して表面研削装置1を運転できるようになっている。なお、本実施の形態においては電気で駆動されるモータ7によって研削体6を回転するようにしているが、エンジンによって駆動するようにしてもよい。
【0015】
本実施の形態に係る研削体6は、図3の(A)に示されている回転軸13に、図2に示されているブレード14が複数枚重ね合わせるようにして形成されている。ブレード14は、図2の(A)、(B)に示されているように、所定板厚の鋼板からなる略長方形状を呈するプレート15と、このプレート15の長方形の両方の短辺に設けられている研削片16、16、…とから構成されている。プレート15には、その中心に回転軸13が挿通される軸穴18が明けられている。回転軸13は、図3の(A)に示されているように、円柱を一方と他方の側面から切り落とされ、その断面が円の両側を切り落とした縦長に形成されいる。このように断面を非円形に形成することによって、いわゆるキー付き回転軸のように回転力が損失無く伝達されることになる。プレート15の軸穴18は、この回転軸13が係合するように同様の形状に明けられているが、ブレード14、14、…によってこの軸穴18の向きは違っている。すなわち図2の(A)に示されている第1の種類のブレード14aにおいては、軸穴18の縦長の方向がプレート15の縦長の方向に一致しているが、第2の種類のブレード14bにおいては軸穴18の縦長の方向は図2の(C)に示されているように45度回転しており、第3の種類のブレード14cにおいては図2の(D)に示されているように90度回転している。このように軸穴18、18、…が回転方向にずれているので、ブレード14a、14b、14cを回転方向にずらした状態で回転軸13に挿通できるようになっている。なお、本実施の形態においてはブレード14a、14b、14cの種類は3種類だけであり、軸穴18が第1の種類のブレード14aに対して135度回転しているものはないが、第2の種類のブレード14bの表裏を反転すると、軸穴18が135度回転しているブレードに相当することになる。
【0016】
研削片16、16、…はダイヤモンド粒子を練り込んだ焼結材から、焼結によって形成されており、直方体を湾曲させた形状を呈している。このように湾曲しているので、軸穴18を中心とした円の円弧を構成している。これによって研削片16、16、…の外側の面は、軸穴18を中心軸とする円柱の円柱面の一部を構成している。このような研削片16、16、…は、その幅あるいは厚さがプレート15の板厚よりも大きい。これによって、後で説明するように、ブレード14、14、…が重ね合わされて形成された研削体6によって舗装路面を研削するとき、研削面が滑らかになることが保証される。なお、本実施の形態においては1枚のブレード14に設けられている研削片16、16、…は一方の短辺に2個、他方の短辺に2個の計4個になっているが、これらはブレード14の短辺に設けられている限り、その個数については制限はない。本実施の形態においては、このように隙間が1箇所形成されているので、1辺の短辺に設けられている研削片16、16は2個になっている。このような研削片16、16、…はプレート15に対して溶着されているが、プレート15の接続部分には切欠20、21、…が形成されている。
【0017】
本実施の形態に係る研削体6は、図3の(A)に示されている回転軸13に、第1〜3の種類のブレード14a、14b、14c、…を順次挿通して重ね合わせるようにして組み立てられている。すなわち図3の(B)に示されているように、回転軸13に第1の種類のブレード14aを挿通し、その次に第2の種類のブレード14bを挿通し、次いで第3の種類のブレード14cを挿通する。そしてその次に第2の種類のブレード14bを表裏を反転して挿通する。図3の(B)には、この状態を側面すなわち軸方向から見た様子が示されている。このように4枚のブレード14a、14b、…を回転軸13に挿通すると、側面から見て複数の研削片16、16、…が均等に円周上に配置されることになる。また、隣り合うブレード14、14、…に属するそれぞれの研削片16、16、…は、回転方向にずれている。従って研削片16、16、…の厚さがプレート15の板厚より大きくても、互いに干渉することがない。引き続き、順次第1〜3の種類のブレード14a、14b、14cを挿通すると、研削体6が得られる。なお、回転軸13にブレード14、14、…を挿通するときに任意のブレード14、14の間に薄板からなるスペーサを挟むようにしてもよい。
【0018】
図4の(A)には、組み立てられた研削体6を正面から見た様子が示されている。この例においては隣り合うブレード14、14、…の間には薄板のスペーサ23、23…が挿入されている。図4の(B)には、図4の(A)において符号25で示されている部分が拡大して示されているが、隣り合うブレード14、14、…のそれぞれに設けられている研削片16、16、…は、軸方向の幅が所定の幅26だけ、重複している。これによって研削体6を回転して舗装路面を研削するとき、任意のブレード14の研削片16、16、…が研削する研削幅と、その隣のブレード14の研削片16、16、…が研削する研削幅は、図4の(C)に示されているように重ね代26だけ重複することになる。
【0019】
本実施の形態に係る切削体6を備えた本実施の形態に係る舗装路面の表面研削装置1の作用を説明する。本実施の形態に係る表面研削装置1によって表面が劣化した舗装路面を研削するには次のようにする。高さ調整機構11によって前輪2の高さを調整し、研削体6が舗装路面に当たるようにする。この状態でモータ7によって研削体6を回転する。そうすると舗装路面の表面が所定の深さで研削される。車両5を一定の速度で移動させると、研削体6の幅で舗装路面を研削することができる。このとき、研削体6は上記で説明したように隣り合うブレード14、14のそれぞれに設けられている研削片16、16、…が研削する研削幅同士が重ね代26だけ重複しているので、研削されて得られる研削面には筋が形成されず滑らかになる。表面研削装置1を移動させ、舗装路面の全面に渡って表面を研削する。これによって劣化したアスファルト合材を除去することができる。その後、新しいアスファルト合材によって再舗装すると舗装路面の補修が完了する。
【0020】
本実施の形態に係る研削体6を長期間使用すると、研削片16、16、…は図5に示されているように、角28、28が摩耗して丸みを帯びる。本実施の形態に係る研削体6は前記したように隣り合うブレード14、14のそれぞれに設けられている研削片16、16、…が研削する研削幅同士が重ね代26だけ重複しているので、個々の研削片16、16、…の角28、28、…が丸みを帯びても性能は劣化しない。すなわち研削面は筋が形成されることなく滑らかになる。
【0021】
上記において、研削する対象はアスファルト合材として説明したが、舗装路面にはコンクリートや樹脂系合材からなるものもある。このような他の材料からなる舗装路面に対しても、本実施の形態に係る表面研削装置1によって当然に研削して、その後再舗装することができる。また上記においては、舗装路面の補修は、舗装路面の表面を研削し、その後再舗装するように説明したが、必ずしも再舗装は必要ではない。すなわち舗装路面に轍のようなこぶが形成されている場合には、このこぶを本実施の形態に係る表面研削装置1によって滑らかに研削して補修を完了することもできる。
【符号の説明】
【0022】
1 表面研削装置 5 車両
6 研削体 8 防塵カバー
13 回転軸 14 ブレード
15 プレート 16 研削片
18 軸穴 20 切欠
23 スペーサ 26 重ね代
図1
図2
図3
図4
図5
図6